説明

導電性ゴムローラ及びカラー用画像形成装置

【課題】成形が効率的に行われるとともに、ローラの抵抗値が均一で長時間にわたって安定しており、低抵抗でかつ低硬度であり、環境変動の小さい、カラー用画像形成装置等にも使用される導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】発泡弾性体層が、ゴム成分として、NBR、エピクロルヒドリン系ゴム及びEO−PO−AGE3元共重合体を併用したものであり、発泡剤がOBSHのみであり、尿素系発泡助剤なしに、化学発泡により形成されており、かつ、該化学発泡が、マイクロ波照射及び熱風加熱によるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラに関し、該導電性ゴムローラを一次転写ローラとするカラー用画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、静電記録装置等の画像形成装置では、電圧印加した導電性ゴムローラを感光体表面に押し当て、帯電する接触帯電方式が主流となっており、画像形成の中心である感光体廻りに帯電、転写などの各工程別に導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
従来、電子写真方式の画像形成装置の多くは、有害とされているオゾンの発生が非常に少ない接触帯電方式を採用しており、さらに、耐摩耗性や転写部での転写材搬送性などから導電性ローラが用いられている。この導電性ローラは、通常導電性芯材上に導電性のゴムからなる弾性体層が形成されて、接触性等が図られている。そして、この弾性体層には、導電剤等が配され、使用目的に応じて適宜変わるが、通常抵抗が107Ω・cm乃至109Ω・cmとされている。しかしながら、導電剤を用いると、弾性体層からブリードや、弾性体層内での導電剤の偏在等が発生することがあるので、自身が導電性を有するアクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムが用いられている。なお、この極性ゴムは、カーボンブラック等の導電性充填材を添加しなくても抵抗値が106Ω・cm乃至1010Ω・cmであるので、加工条件等による抵抗値のばらつきや印加電圧による抵抗値の変動が小さく、導電性ゴムローラ用に適している。
【0004】
なお、極性ゴムのうち、NBR単独では、加硫後の体積固有抵抗が2×109Ω・cm乃至1×1010Ω・cmであり、導電性が不十分であり、NBRは耐オゾン性に劣るため、十分な耐久性も得られない。そこで、加硫後の体積固有抵抗が1×107Ω・cm乃至3×109Ω・cmとなるエピクロルヒドリン系ゴムを、NBRにブレンドして導電性を調整することが一般的に行われ、現状では好ましい結果が得られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、このようにして得られた導電性ゴムローラを転写ローラとすると、以下のような点に改善が必要とされている。
【0006】
すなわち、近年、画像形成装置のカラー化がされ、ユニットとしては単色の画像形成装置を複数組み合わせてカラー化に対応している。このカラー画像形成装置は、それぞれの色のトナー画像を転写紙上に順次転写する方式、一旦中間転写ベルト、中間転写ローラ上に順次転写してカラートナー像を形成し、これを一括転写紙上へ転写する方式がある。中では、高画質化に対応するのに適していることから、中間転写ベルトを用いることが好ましい。しかし、中間転写ベルトにトナー像を転写するためにその内側に一次転写ローラが設けられているが、高画質化、高速化の要求に対して、より低抵抗で低硬度な導電性ゴムローラが求められている。
【0007】
上記したように、低抵抗を実現するだけであれば、エピクロルヒドリン系ゴムを単独で用いたり、導電剤を使用したりすればよい。しかし、特にエピクロルヒドリン系ゴムは湿度の影響を受けやすく、抵抗値の環境変動が大きくなるとともに、さらには圧縮永久歪も大きくなるという問題も有しているため単独で使用するのは好ましくない。
【0008】
また、導電剤を用いて低抵抗を実現する方法として、過塩素酸イオンや塩化物イオンを含む第4級アンモニウム塩など各種イオン導電剤を添加する方法がある(例えば特許文献2)。しかし、通電により各種イオン導電剤がローラ表面へ移行しやすい。すなわち、感光体に接触して用いる導電性ゴムローラにおいては、感光体を汚染する。また、一次転写ローラとして用いられた時には、中間転写ベルトに染み出して蓄積して、粘着力が生じ、駆動トルクが大きくなり、正常な動作が出来なくなったり、粘着してローラのゴム層が剥がれて蓄積したりして、異常画像が発生することがあった。
【0009】
一方、弾性体層を有するゴムローラは、弾性体層を発泡ゴムチューブとして形成し、それに芯材を挿入する、芯材を収めた金型中に弾性体層原料を注入しそこで発泡加硫する、あるいは、芯材と弾性体層原料を同時に押し出し後発泡加硫する等で製造できる。
【0010】
これらの製造方法では、発泡ゴムチューブによる方法が、精度よく、また、簡便であるので好ましい。この発泡ゴムチューブの製造は、従来から、チューブ状に押し出された原料組成物を高圧蒸気による加硫缶加硫する(特許文献3)、原料組成物を金型に注入し加硫する(特許文献4)あるいはマイクロ波照射によりUHF加硫する(特許文献5)などがある。
【0011】
なお、加硫缶加硫では比較的微細なセルを得ることは容易であるが、加硫発泡チューブの径方向で発泡体のセルが不均一であり、所望のセルを表面に出すために多量の研磨が必要になってしまうという問題がある。
【0012】
また、金型加硫においては、用いる金型は通常二つ以上の金型を合わせたもの(割型)となっている。つまり、金型(割型)には合わせ目が存在する。化学発泡剤を含むゴム組成物をこのような金型を使用して加硫発泡を行った場合、この合わせ目の影響が加硫発泡チューブに影響が現れやすい。すなわち、合わせ目でのゴム組成物の漏れ(パーティングライン)、加硫状況の異方性等が発生し、電気抵抗、硬度、セル形状などに異常(不均質性)が生じやすい。したがって、これらの特性が均質であることが望まれる発泡ゴムローラにおいては、該特性の不均質化は大きな問題となる。さらに段取りに時間が掛かり、且つ金型洗浄を行う必要があるため量を数多く作るのには不向きであった。
【0013】
UHF加硫は、押し出し直後に連続してマイクロ波で加硫発泡を行うため、非常に効率の良い生産が可能である。さらにマイクロ波を用いて連続的に押し出し後の未加硫チューブを均質に加熱するため、均一な抵抗値、硬度、セル径を有する加硫チューブを得ることができる。特許文献5に従って、製造される導電性ローラは電気抵抗値のばらつきが抑制されており、優れている。この特許文献5では、実際に実施例、比較例として、エピクロルヒドリンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムなどのイオン導電性ポリマーを用い、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用し、発泡助剤として尿素系発泡助剤を使用したものが開示されている。しかしながら、これらの発泡剤、発泡助剤はイオン導電性ポリマーを主成分とするゴム材料に使用した場合、ローラの抵抗値が経時で著しく上昇してしまうという問題が知られている。電子写真用の導電性ゴムローラにおいては、ローラの抵抗値が均一であり、かつ経時で変化しないことが要求されており、ローラ抵抗値が均一で長時間にわたって変化しない導電性ゴムローラの製造方法を確立することが望まれている。
【特許文献1】特開2000−17118号公報
【特許文献2】特開2002−212413号広報
【特許文献3】特開平11−114978号公報
【特許文献4】特開2002−115714号公報
【特許文献5】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、成形が効率的に行われるとともに、ローラの抵抗値が均一で長時間にわたって安定しており、低抵抗でかつ低硬度であり環境変動の小さい、カラー用画像形成装置等に使用される導電性ゴムローラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討し、ついに本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、導電性芯材上に発泡弾性体層が形成されている導電性ゴムローラであって、
該発泡弾性体層が、ゴム成分として、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリン系ゴム及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を併用したものであり、発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみであり、ゴム成分100質量部に対して0.8質量部以上5質量部以下であって、尿素系発泡助剤なしに、化学発泡により形成されており、かつ、該化学発泡が、マイクロ波照射及び熱風加熱によるものであることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0017】
そして、前記エピクロルヒドリン系ゴムが、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイドPO−アリルグリシジルエーテル3元共重合体ゴムであることが好ましい。
【0018】
また、ゴム成分中のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体の量が、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0019】
導電性ゴムローラのローラ硬さが、アスカーC硬度で15度以上28度以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、感光体と中間転写ベルトを介して相対に設置される一次転写ローラが、上記導電性ゴムローラであることを特徴とするカラー用画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の導電性ゴムローラは、モノクロ用電子写真装置の転写ローラ、又はカラー用電子写真装置の1次転写ローラとして利用することできるものである。本発明の導電性ゴムローラは、製造がマイクロ波を照射し短時間で加熱し、加硫発泡(化学発泡)にて効率的に行われ、そのローラの抵抗値が均一で長時間にわたって安定しており、低抵抗でかつ低硬度であり、環境変動が小さく、その利用価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、上記したように、導電性芯材上に発泡弾性体層(以下、単に「発泡弾性体層」ということがある。)が形成されている導電性ゴムローラである。そして、該発泡弾性体層が、ゴム成分として、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリン系ゴム及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を併用したものである。そして、該発泡弾性体層は、発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみであり、尿素系発泡助剤なしに、化学発泡により形成される。また、該化学発泡が、マイクロ波照射及び熱風加熱によるものである。
【0023】
以下、本発明について、さらに、詳細に説明する。
【0024】
本発明に係る導電性ゴムローラを用いた画像形成装置の一例の模式図を図2に示す。この画像形成装置は、電子写真感光体1を画像形成に必要な現像剤の数具備したもので、フルカラープリントに用いうるもの、すなわちカラー用画像形成装置である。
【0025】
この画像形成装置は、4つの画像形成部41〜44があり、それぞれは同じ構成をとっている。すなわち、該画像形成部41〜44は電子写真感光体1、帯電ローラ2、画像情報書込みビーム3、現像装置4、感光体1上の各色トナー像を中間転写ベルト5に転写するための一次転写ローラ6からなる。さらに、感光体1上の各色トナー像を転写した後に感光体1に残留するトナーを除去するために、感光体1に当接して、クリーニング部材7が設けられている。そして、必要に応じて、感光体1の帯電を除くために除電部材(不図示)が設けられていることもある。なお、ここで、各画像形成部において共通する構成には、簡便のため、同一の符号を付してある。また、本画像形成装置は、トナーとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Br)を使用したものである。さらに繊細な色構成とするために、画像形成部を増やして、色構成を増すことも可能である。さらに、本例では、感光体1、帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング部材7を一体として組み合わせ、プロセスカートリッジとすることも可能である。なお、これらは適宜の組合せで、カートリッジとすることも可能である。
【0026】
本画像形成装置は、中間転写ベルト5を使用したものであり、該中間転写ベルト5は、電子写真感光体1と一次転写ローラ6に挟持され、さらに駆動ローラ8、テンションローラ9及び従動ローラ10に掛け回されたエンドレスベルトとなっている。
【0027】
テンションローラ9に対峙し、かつ、中間転写ベルト5を挟持して、中間転写ベルト5に同期して挿入される転写材Pに中間転写ベルト5上のフルカラートナー像を転写するための二次転写ローラ11が設けられている。さらに、中間転写ベルト5に残留するトナーを除去するために、中間転写ベルト5に当接して、従動ローラ10に対峙するように中間転写ベルト用クリーニング装置12が設けられている。
【0028】
一方、転写材P上に転写されたフルカラートナー像を転写材Pに定着するために、内部に加熱装置を備えたローラ対からなる定着装置13が、転写材Pの搬送下手に設けられている。なお、図において、14は転写材Pを二次転写部に送る送りローラ対であり、15は転写材Pを二次転写部に送るために設けられたガイドである。
【0029】
さらに、帯電ローラ2、一次転写ローラ6及び二次転写ローラ11には、それぞれに電荷を調整するための電源が設けられている。なお、図2において、2aが帯電ローラ用電源であり、6aが1次転写ローラ用電源であり、11aが二次転写ローラ用電源である。また、本例では、帯電ローラ2、一次転写ローラ6及び二次転写ローラ11は、いずれも導電性ローラ形式のものを示したが、少なくとも、一次転写ローラ6が本発明の導電性ゴムローラであれば、他は放電形式のものであっても構わない。
【0030】
なお、本例では、現像装置4には、感光体1に対峙して現像ローラ(「現像スリーブ」ともいう)があり、この現像ローラに当接して、感光体1で使われず戻ってきたトナーを掻き取り、新しいトナーを現像ローラへ供給するトナー供給ローラが設けられている。また、トナーを均一に帯電し、現像ローラ上のトナーの担持量を均すために、現像ブレードが設けられている。なお、トナーは、非磁性一成分トナーが用いられている。なお、トナーのカラーにより現像ローラ、現像ブレード等の仕様は異なり、また、現像ローラから感光体へトナーを飛ばし、現像するために現像ローラに対して印加する電圧も最適のものとされている。さらに、現像装置4内には、感光体から戻ったトナーを均一に新規トナーと混合し、装置でのトナーの帯電を均一に保つために、撹拌翼(不図示)が設けられている。
【0031】
このカラー用画像形成装置による画像形成について説明する。
【0032】
まず、感光体1上の矢印の方向に所定の速度で回転している感光体1は、帯電ローラ2により、帯電される。なお、この帯電は直流電圧の印加のみでもよいし、さらに交番電圧を重畳して印加してもよい。帯電された感光体1は回転して、画像情報書込みビーム3の照射位置で、それぞれの色に応じて形成された画像情報が付与された画像情報書込みビームが照射され、画像情報に応じた静電潜像が感光体1表面に形成される。次いで、感光体1の回転に伴いこの静電潜像は現像装置4の位置に来、その位置で、現像装置4からカラートナーが供給されて、感光体1表面上でトナー像(可視画像)となる。
【0033】
感光体1表面に形成されたトナー像は、感光体1と一次転写ローラ6の位置に来たときに、感光体1表面から中間転写ベルト5の表面に転写される。一方、トナー像を転写した後の感光体1はさらに回転して、必要により除電された後、除電前にクリーニング部材7により表面上に残るトナーやごみくずが除去され、次の画像形成に供される。
【0034】
各画像形成部は、プロセススピードにあわせて稼動し、中間転写ベルト5上に、各画像形成部で形成されたトナー像は順次転写され、重ね合わされ、カラートナー像が形成される。その後、カラートナー像を担持した中間転写ベルト5は矢印方向に移動し、二次転写ローラ7で、カラートナー像の移動と同期して供給された転写材Pの上に一括転写される。中間転写ベルト5上に残留したトナー及びごみくずは、クリーニング装置18で除去され、中間転写ベルト5は画像形成部に戻り、再び、トナー像の重ね合わせに供される。
【0035】
一括転写されたカラートナー像を担持した転写材Pは、中間転写ベルト5から離れ、定着装置13に送られ、そこで加熱されたカラートナー像は転写材Pにカラー画像として定着される。その後、転写材Pはカラー用画像形成装置本体から画像形成物(コピー)として取り出される。
【0036】
上記は、タンデム形式のカラー用画像形成装置について示したが、本発明の導電性ゴムローラはモノクロ画像形成装置の導電性ローラ、特に、転写ローラとして有用である。該モノクロ画像形成装置の一例の模式図を図3に示す。
【0037】
図3に示す画像形成装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザプリンタである。なお、上記カラー用画像形成装置と共通する部材には、同一の符号を付した。
【0038】
像担持体として、ドラム型の電子写真感光体1を備えている。感光体1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光体1は、駆動手段(不図示)により、矢印方向に所定のプロセススピード、例えば50mm/秒で回転駆動されている。感光体1表面は、帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光体1表面に接触配置されており、感光体1の回転に伴って従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)2aにより振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光体1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光体1表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光(書き込みビーム)3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光体1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0039】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0040】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材Pが、転写ガイドにガイドされて、感光体1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光体1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材Pは、転写バイアス印加電源6aにより転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光体1上のトナー像が転写される。このとき、転写材Pに転写されないで感光体1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置7によって除去される。
【0041】
転写部Tを通った転写材Pは、感光体1から分離されて定着装置13へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【0042】
本発明の導電性ゴムローラは、上記したように、導電性芯材上に発泡弾性体層が形成されているものである。転写ローラとして有用な導電性ゴムローラについて、その斜視図を図1に示す。
【0043】
図1において、本発明にかかる導電性ゴムローラである転写ローラ6は、導電性芯材61上に発泡弾性体層62が形成されている。
【0044】
導電性芯材61は、表面が導電性であれば特に限定されないが、鉄、銅、真鍮、SUS等の金属、導電性カーボンブラック等の導電性材料を含む樹脂等の導電性樹脂、樹脂製の棒あるいはパイプの表面に金属で導電性を付与したもの等が使用可能である。なお、金属製の棒、パイプが好ましく、表面をニッケル等でメッキしたものがより好ましい。また、導電性芯材61の外径としては、導電性ゴムローラの使用目的により適宜変えられるが、画像形成装置の転写ローラに使用する場合、通常、2mmから6mmの範囲とするのが適当である。
【0045】
発泡弾性体層62は、ゴム成分が、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム及びエチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)3元共重合体の併用である。そして、発泡剤としてOBSHのみを使用し、尿素系発泡助剤なしに、化学発泡により形成されている。かつ、その化学発泡が、マイクロ波照射及び熱風加熱によるものである。
【0046】
なお、NBRとしては、平均アクリロニトリル含量が15質量%乃至35質量%である低乃至中高ニトリルであり、Mwが10000以上であるものが好ましい。液状NBRのように低分子量成分が多いものは染み出しの原因となり、転写ベルトの裏面に蓄積し画像不良の原因となるため好ましくない。また、平均アクリロニトリル含量が15質量%未満では、所定の抵抗値を得ることが難しく、35質量%を超えると抵抗の環境依存性が大きくなる傾向にあるため、本発明では、上記範囲の平均アクリル含量のものが好ましい。
【0047】
アクリロニトリル−ブタジエンゴムと共に、エピクロルヒドリン系ゴム及びEO−PO−AGE3元共重合体ゴムを用いるのは、それ自体の導電性が高いので、好ましい。なお、エピクロルヒドリン系ゴム及びEO−PO−AGE3元共重合体ゴムを併用するのは、以下の理由による。
【0048】
エピクロルヒドリン系ゴムには、エピクロルヒドリン(ECH)単独重合体(CO)、ECH−EO共重合体(ECO)及びECH−EO−AGE3元共重合体(GECO)がある。COやECOは、GECO中のAGE単位のように架橋可能な側鎖を持っていないため、単独の使用では圧縮永久歪が悪くなってしまう等の問題がある。それに対し、GECOはEO単位と共にAGE単位を有しているため体積固有抵抗がより低くなり、硫黄加硫が可能なとなり、感光体汚染も防止できるので、その使用は好ましいものである。
【0049】
また、本発明で使用するEO−PO−AGE3元共重合体は、多量に配合すると染み出しが発生するため、全ゴム成分100質量部に対して1質量部以上15質量部以下とするのが好ましい。
【0050】
本発明では、上記ゴム成分に対して、発泡剤としてOBSHのみを使用する。そして、一般に発泡をコントロールするために併用する発泡助剤は使用しない。なお、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いると、その分解生成物としてアンモニアやシアン酸等の物質が生成する。これらの分解生成物が材料中でイオン導電剤として作用したり、材料中の極性を変化させたりすることにより経時でローラ抵抗値が上昇してしまうという問題が生じる。特に高温高湿環境(例えば、32.5℃/80%RH)におけるローラ抵抗値の上昇が大きくなるという問題がある。また、尿素系発泡助剤を用いた場合もアンモニア等が生成し、ADCAを用いた場合と同様に経時でローラ抵抗値が大きく上昇してしまい実用には適さないという問題が生じてしまう。
【0051】
その他の発泡剤として、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)や炭酸水素ナトリウムがあるが、特に、DPTは分解時に有害なホルムアルデヒドが発生し、そのもの自体も変異原性の疑いがあり、人体への安全性に劣るという欠点がある。炭酸水素ナトリウムは均一な発泡を得難く、ローラ抵抗値の環境変動を悪化させるという欠点がある。
【0052】
本発明では、ゴム成分中のOBSHはゴム成分100質量部に対して、0.8質量部以上5質量部以下を配合する。OBSHの配合量が、0.8質量部より少ないと発泡ガス量が少なすぎるため良好な発泡状態を得ることができず、5質量部より多いとOBSH自体による加硫阻害により、汚染性等の問題が生じることがある。
【0053】
本発明では、OBSHと共に、NBRやエピクロルヒドリン系ゴムの加硫に用いられる一般の加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等の加硫系薬品が用いられる。この加硫系薬品としては、硫黄、有機過酸化物、トリアジン、ポリアミン等の加硫剤、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、又はその数種の混合物の加硫促進剤から選択される。
【0054】
本発明では、ゴム成分が、イオン導電性ゴムであるNBR、エピクロルヒドリン系ゴムを使用しているので、必ずしも必要でないが、導電性を安定化させるため、また、導電性を調整するために、発泡性を阻害しない範囲で、導電剤を適宜配合することもできる。なお、導電剤としては、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、導電性金属酸化物、樹脂粉末の表面を導電化したもの、イオン導電性化合物等が使用可能である。
【0055】
また、本発明では、発泡弾性体層の硬さを調整するためや加工性を改良するために、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等の充填剤を使用しても構わない。なお、発泡弾性体層の硬さ、すなわち、導電性ゴムローラのローラ硬さは、通常、アスカーC硬度で15度以上28度以下であることが好ましい。
【0056】
本発明では、上記したように、導電性芯材上の発泡弾性体層は、発泡剤がOBSHのみで、尿素系発泡助剤なしに、マイクロ波照射及び熱風加熱による化学発泡で形成されている。
【0057】
本発明の導電性ゴムローラは、通常、以下のようにして製造される。すなわち、上記ゴム原料が混練された後、押出機でチューブ状に押出され、次いでマイクロ波加硫炉でマイクロ波照射が行われ、次いで熱風加熱されて、加硫発泡が完結され、発泡ゴムチューブとされる。なお、マイクロ波照射と熱風加熱は通常この順で行うが、同時に行われても良い。この発泡ゴムチューブは、目的とする導電性ゴムローラの発泡弾性体層として必要な長さに切断され、その後、導電性芯材が挿入され、発泡弾性体層を有する導電性ゴムローラとなる。なお、導電性芯材を挿入した後に発泡弾性体層の厚みを調整するため、或いは発泡弾性体層の表面を目的の表面状態にするために、さらに研磨されることがある。また、その後に、導電剤、表面粗し剤等を含む樹脂層が表面機能を整えるため表面上に表面層として形成されることもある。
【0058】
図4に、この加硫発泡に適したマイクロ波照射、熱風加熱を用いる連続発泡ゴムチューブ製造装置の説明図を示す。
【0059】
この連続発泡ゴムチューブ製造装置は、押出機51、マイクロ波照射(UHF加硫)装置52、熱風加熱(HAV加硫)装置53、引取機54及び定尺切断機55からなる。例えば、UHF加硫装置52から引取機54まで、それぞれ、順に4m、6m、1mとすることができ、各装置間は、0.1m乃至1.0mと調節することができる。さらに、装置内、装置間に、フッ素樹脂をコーティングしたメッシュ状ベルト、又はフッ素樹脂を被服したコロが備えることで、押出機51より押出されたゴム原料組成物が搬送されるようになっている。
【0060】
この装置を用いた発泡ゴムチューブの製造について、以下、説明する。
【0061】
上記ゴム成分に、炭酸カルシウムやカーボン等の充填剤、その他の助剤等の資材を加え、バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機とオープンロールを用い混練し、その後、さらに加硫系薬品及び発泡剤を加え、オープンロールを用いて混練する。得られたゴム原料組成物をさらにリボン成形分出し機によりリボン状に成形し、押出機51に連続投入する。押出機11からゴム原料組成物が外径8mmから15mmで、内径2mmから8mmでるチューブ状に成形され押出され、UHF加硫装置12に搬送される。チューブ状に成形されたゴム原料組成物はUHF加硫装置12内で0.5kWから3.0kWの範囲でマイクロ波が照射され、加硫発泡される。通常、このUHF加硫装置内は160℃乃至230℃の範囲の発泡を阻害しない温度とされている。なお、UHF加硫装置12内ではフッ素樹脂でコートされたメッシュ状ベルトあるいはフッ素樹脂で被覆されたコロが設けられており、チューブ状に成形されたゴム原料組成物はこのベルト(コロ)上で加硫発泡される。
【0062】
UHF加硫装置52内で発泡加硫された発泡ゴムチューブはさらにHAV加硫装置53に搬送され、さらに160℃乃至230℃で発泡加硫が完結される。なお、この発泡加硫の温度は、ゴム原料組成物の組成により、搬送速度により、適宜最適の温度に調整される。なお、搬送速度としては、通常、0.5m/minから5.0m/minの範囲が適当である。
【0063】
発泡加硫後に巻引取機54により引き取られ、HAV加硫装置から取り出される。その後、定尺切断機55により所望の寸法に切断され、導電性ゴムローラの発泡弾性体層として必要な長さを有する発泡チューブとされる。
【0064】
次いで、この発泡チューブに、ホットメルト接着剤、又は加硫接着剤を所望の領域に塗布した径4mm乃至10mmの導電性芯材が圧入され、導電性ゴムローラとされる。この後、必要により、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にて、通常、回転速度2000RPM、送り速度500mm/分で研磨され、例えば、外径15mmになるように研磨される。
【0065】
上記して示したような製造方法で得られた導電性ゴムローラは、必要によりさらに表面層が設けられた後、電子写真画像形成装置の帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の感光体に当接して用いられる、柔軟性と共に導電性が必要なローラとして用いられうる。特に、カラー用画像形成装置における、感光体と中間転写ベルトを介して相対に設置される一次転写ローラとして有用である。もちろん、中間転写ベルト上のカラートナー像を転写材への転写に用いる二次転写ローラとしても用いうる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0067】
なお、本発明の実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
【0068】
・ゴム成分
DN401LL:アクリロニトリル−ブタジエンゴム「Nipol DN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製)、(アクリロニトリル量 18質量%)
EPION301:エピクロルヒドリン系ゴム「EPION 301」(商品名、ダイソー株式会社製)、EO含量 73.5mol%
C2000:エピクロルヒドリン系ゴム「Hydrin C2000L」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
Zeospan:エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体「Zeospan8010」(商品名、日本ゼオン株式会社製)、EO−PO−AGE共重合比率(mol%)=87:1:12、数平均分子量 6万
【0069】
・発泡剤等
CB:カーボンブラック「旭#35」(商品名、旭カーボン株式会社製)
イオウ:イオウ(S)「レノグランS−80」(商品名、ラインケミー株式会社製)
DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学工業株式会社製
TET:テトラエチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTET」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(ハクスイテック株式会社製)
ステアリン酸:ステアリン酸「ルナックS」(商品名、花王株式会社製)
OBSH:p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)「EH−80」(商品名、永和化成株式会社製)
ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC#LQ」(商品名、永和化成株式会社製)
発泡助剤:尿素「セルペーストA」(商品名、永和化成株式会社製)
【0070】
[導電性ゴムローラの作成法]
連続ゴムチューブ製造装置において、押出機11に上記原料をバンバリーミキサー等で混練して得た発泡弾性体層用原料組成物を供給し、外径8mm乃至15mm、内径2mm乃至8mmのチューブ状に押出す。なお、この外径、内径は発泡倍率等により変わり、発泡完了後に内径約6mm、外径約18mmの発泡ゴムチューブとなるように設定する。押し出されたゴムチューブは、マイクロ波強度0.5kW乃至3.0kW、炉内温度160℃乃至230℃に設定されたUHF加硫装置12内に、搬送速度0.5m/min乃至3.0m/minで搬送され、マイクロ波照射による発泡加硫を行う。続いて160℃乃至230℃に設定したHAV加硫装置13に搬送し、発泡加硫を完了させる。なお、マイクロ波強度、雰囲気温度についても、原料組成により適宜最適の条件に変更する。
【0071】
発泡加硫後に、引取機14により発泡ゴムチューブは引き取られ、定尺切断機15に供給され、そこで切断され、導電性ゴムローラの発泡弾性体層用発泡ゴムチューブとされる。次いで、ホットメルト接着剤又は加硫接着剤を必要な領域に塗布した径6mmの導電性芯材を前記チューブに圧入し、ローラ状の成形体を得る。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500mm/分で研磨し、外径15mmの導電性ゴムローラを作成する。
【0072】
上記の様にして作成した導電性ゴムローラのローラ硬さ、ローラ抵抗及びローラ抵抗の径時変化並びに環境依存性の測定、及び該導電性ゴムローラをカラー用画像成形装置の一次転写ローラとして用いた時の画像評価を、以下により行った。
【0073】
<ローラ硬さ>
製造後1週間23℃/55%RH(N/N)環境に置いた導電性ゴムローラを回転しないように架台に固定し、アスカーC硬度計にて、荷重4.9N(500gf)、5秒後の値を読み取った。測定を5箇所で行い、その平均値を当該ローラのローラ硬さとした。
【0074】
<ローラ抵抗測定>
製造後1週間N/N環境に置いた導電性ゴムローラをφ30mmのステンレススチール製ドラムに当て、導電性ゴムローラの両端に片側荷重4.9Nをかけ、ステンレススチール製ドラムを30rpmで回転させ、連れ回りさせた。その状態で、導電性芯材とステンレススチール製ドラムとの間に内部抵抗1kΩで1kVの電圧を印加し、1分間電圧値を測定し、その平均値を求め、その値からオームの法則により抵抗値を算出した。なお、電圧の測定は、それぞれの測定項目に応じて、N/N環境、10℃/15%RH(L/L)環境及び32.5℃/80%RH(H/H)環境で行った。また、L/L環境及びH/H環境での測定は、被測定試料を予め当該環境に半日以上置いたものを測定試料とした。
【0075】
・ローラ抵抗
上記により、N/N環境で測定した抵抗値が、当該導電性ゴムローラのローラ抵抗である。
【0076】
・ローラ抵抗の径時変化
上記により、H/H環境でまず抵抗値(初期抵抗値:RB)を測定し、このH/H環境に600時間置いた後、再び抵抗値(経時後抵抗値:RA)を測定した。これらの抵抗値の比(RA/RB)の対数の絶対値を、当該導電性ゴムローラのローラ抵抗の径時変化とする。なお、この値が小さいほど、導電性ゴムローラが経時的に抵抗が安定性していると判断できる。なお、この値は0.15以下であることが好ましい。
【0077】
・ローラ抵抗の環境依存性
L/L環境で測定した抵抗値をH/H環境で測定した抵抗値で除し、その値を対数変換したものを、当該導電性ゴムローラのローラ抵抗の環境依存性とした。なお、ローラ抵抗の環境依存性は、下記基準で評価した。
○:1.4以下(環境依存性小)
×:1.4超(環境依存性大)
【0078】
<画像判定>
導電性ゴムローラを、カラーレーザープリンター「カラーレーザージェット 3500N」(商品名、HP社製)のITBユニットの一次転写ローラとして組み込み、N/N環境下で各色ベタ画像を印刷した。得られた出力画像を目視により観察し、下記基準で評価した。
○:転写ローラピッチで、白抜け等の画像不良がない。
×:転写ローラピッチで、白抜け等の画像不良が発生した。
【0079】
実施例1
発泡弾性体層用原料組成物として、下記組成のものを用意し、上記導電性ゴムローラの作成法に従い、導電性ゴムローラを作成した。なお、発泡加硫条件は、マイクロ波出力1.5kW、UHF加硫装置内温度200℃及びHAV加硫装置内温度230℃とした。
DN401LL 30質量部
EPION301 60質量部
Zeospan 10質量部
CB 30質量部
イオウ 2.0質量部
DM 1.5質量部
TET 1.5質量部
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸 1質量部
OBSH 1質量部
ADCA 不使用
尿素 不使用
【0080】
実施例2〜4
OBSHの使用量をそれぞれ、2質量部、4質量部、6質量部と増やす以外は、実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0081】
実施例5、6
ゴム成分を、表1に示すように変更する以外は、実施例2と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0082】
実施例7
EPION301に替えて、C2000 60質量部用いる以外は、実施例2と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0083】
比較例1、2
OBSHの使用量をそれぞれ、0.7質量部、8質量部とする以外は、実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0084】
比較例3
Zeospanを使用せず、EPION301を70質量部に増やす以外は、実施例2と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0085】
比較例4
OBSHに替えて、ADCA2質量部を使用する以外は、実施例2と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0086】
比較例5
OBSHに替えて、ADCA4質量部と尿素2質量部を使用する以外は、実施例5と同様にして、導電性ゴムローラを作成した。
【0087】
以上で作成した導電性ゴムローラについて、各種評価を行い、得られた結果を表1にまとめた。
【0088】
【表1】

【0089】
上記表1に見られるように、ゴム成分がNBR、エピクロルヒドリン系ゴム及びEO−PO−AGE3元共重合体からなり、発泡剤がOBSHのみである原料組成物から構成されたものを用いた実施例1〜7では、いずれの評価結果も問題が無かった。なお、エピクロルヒドリン系ゴムとして、AGEが含まれないもの(C2000)を用いた実施例7では若干抵抗値が大きくなる傾向にあった。
【0090】
一方、比較例1では、OBSHの配合量が0.7質量部と少なすぎて、ローラ硬さが12度となり、中間転写ベルトとのニップ領域が広すぎ、電界の影響を受けてしまい画像不良となってしった。また、比較例2では、OBSHの配合量が8質量部と多すぎ、結果としてローラ硬さが35度と硬くなってしまい、中間転写ベルトに対してうまくニップがとれず、部分的に転写白抜けの画像不良となってしまった。
【0091】
比較例3では、EO−PO−AGE3元共重合体を使用しなかったので、エピクロルヒドリン系ゴムを増やしたが、そのために、環境依存性が1.42と大きくなってしまい、L/L環境やH/H環境での画像不良が発生してしまうおそれがある。
【0092】
比較例4、5では、発泡剤としてADCAを使用しているので、加熱発泡する際にアンモニアやシアン酸が生成し、ローラ抵抗値変動量がそれぞれ0.57、0.63と大きすぎる値となってしまった。
【0093】
以上より、導電性芯材上に導電性弾性体層が設けられた導電性ゴムローラであって、該導電性弾性体層のゴム成分が、NBR、エピクロルヒドリン系ゴム及びEO−PO−AGE3元共重合体であり、発泡剤がOBSHのみであることが有用であることがわかる。なお、OBSHの使用量がゴム成分100質量部に対して0.8質量部以上6質量部以下であること、マイクロ波照射/加熱加硫で加硫発泡を行うこと等によって、成形が効率的に行われることもわかる。さらに、製造された導電性ゴムローラは、ローラ硬さがアスカーC硬度で15度以上28度以下であること、ローラの抵抗値が均一で長時間にわたって安定している。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの斜視図である。
【図2】カラー用画像形成装置の説明のための模式図である。
【図3】モノクロ用画像形成装置の説明のための模式図である。
【図4】マイクロ波照射による連続発泡ゴムチューブ製造装置の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 電子写真感光体(感光体)
2 帯電ローラ
2a 電源〔帯電ローラ用〕
3 書き込みビーム(レーザ光)
4 現像装置
5 中間転写ベルト
6 一次転写ローラ(転写ローラ)
6a 電源〔一次転写ローラ(転写ローラ)用〕
7 クリーニング部材
8 駆動ローラ
9 テンションローラ
10 従動ローラ
11 二次転写ローラ
11a 電源〔二次転写ローラ用〕
41〜44 画像形成部
51 押出機
52 マイクロ波照射(UHF加硫)装置
53 熱風加熱(HAV加硫)装置
54 引取機
55 定尺切断機
61 導電性芯材
62 導電性弾性体層
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に発泡弾性体層が形成されている導電性ゴムローラであって、
該発泡弾性体層が、ゴム成分として、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリン系ゴム及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を併用したものであり、発泡剤がp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみであり、ゴム成分100質量部に対して0.8質量部以上5質量部以下であって、尿素系発泡助剤なしに、化学発泡により形成されており、かつ、該化学発泡が、マイクロ波照射及び熱風加熱によるものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記エピクロルヒドリン系ゴムが、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
ゴム成分中のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体の量が、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
ローラ硬さが、アスカーC硬度で15度以上28度以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
感光体と中間転写ベルトを介して相対に設置される一次転写ローラが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とするカラー用画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−151001(P2009−151001A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327482(P2007−327482)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】