説明

導電性ゴムローラ

【課題】 電気抵抗を均一化できると共にトナー等の付着物への帯電性に優れ、かつその帯電性を持続可能であり、さらにトナーなどの付着物に与えるストレスを軽減できる、現像ローラに特に好適な導電性ゴムローラを得る。
【解決手段】 導電性ゴム層1を最外層に備えた導電性ゴムローラ10においてゴム層の表層部分を酸化膜とし、かつ、5V、周波数100Hzで交流電圧を印加した際の誘電正接を0.1〜1.5、摩擦係数を0.1〜1.5としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ゴムローラに関し、詳しくは良好な帯電特性を有し、かつ表面粗さがきわめて低く、特にレーザービームプリンター等の画像形成機構においてトナーを感光体に付着させるための現像ローラとして好適に用いられる導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年レーザープリンター等の電子写真装置においては高速化、高画質化が急速に進んでいる。高画質化に対応するためトナーの粒径は小さくなる傾向にあり、現在では粒径10μm以下のトナーが主流であるが、粒径が5〜8μm程度のトナーも広く用いられるようになってきた。そのため、感光体上に描かれた潜像にトナーを供給する現像ローラにはきわめて低い表面粗さが求められる。
【0003】
レーザープリンター等の電子写真装置が普及するにつれて、高速化および高画質化だけでなく低価格化も進んできている。これらの要求を満たすために、フェライト粉または鉄粉等からなるキャリアとトナーの2種類で構成されている2成分系のトナーに代わり、非磁性重合トナーのみからなる1成分のトナーが広く用いられるようになってきている。それに伴い、現像ローラも従来主流であったマグネット方式によるものから、ゴム弾性を有する半導電性ロールに移行しつつある。かかる半導電性ロールとしては、トナーが感光体に搬送される際に生じる電圧降下と現像ロールに印可される電圧とのバランスを鑑みて、抵抗値が10〜10Ωのロールが広く用いられている。
【0004】
電子写真装置における現像方式としては、感光体と現像ロールの関係により大きく分けて2種類の方式がある。すなわち、約200μm程度のギャップを有しながらトナーを現像ロールから感光体にジャンピングさせる非接触式と、現像ロール上のトナーと感光体が接触しながら感光体に搬送する直接式である。
いずれの方式にしても現像ロールには、
(1)トナーを均一な量搬送すること、
(2)搬送するトナーを均一に帯電させること、
(3)感光体にトナーを均一に受け渡すことが要求される。
【0005】
キャリアを用いた2成分系のトナーを用いる場合には電気的および磁気的な作用によりトナーの帯電および感光体への搬送は比較的容易であるが、1成分系のトナーを用いる場合には磁気的な作用を利用することができない。そのため、現像ロールに課せられた上記3つの要求を満たすためには電極端面となる現像ローラ表面が均一に形成されているという高い表面精度が要求され、さらには現像ローラに対しバイアス電位をかけた場合に極めて均一な電位分布となるように抵抗値等の電気的な特性がローラ内で極めて均一であることが要求される。
【0006】
また、1成分系のトナーはキャリアを含まないために、現像ローラにはトナーの帯電性をコントロールする機能が求められている。トナーの帯電量が不十分であると、静電気力が不足してトナーが感光体の潜像に忠実に搬送されない。そのために例えば現像ローラの周回による濃度変化や現像ゴースト、かぶり等の様々な画像不良が生じる。
【0007】
このような問題の解決のために従来より種々の提案がなされている。例えば、特開2002−194203号公報(特許文献1)では、電気抵抗の均一性を得るために導電性フィラーによる電子導電ではなくイオン導電で制御し、粒子径を規定した炭酸カルシウムをイオン導電性ゴムであるエピクロルヒドリンゴム中に分散させたゴム材料が提案されている。また、特開2001−357735号公報(特許文献2)では、トナーへの帯電性をコントロールするためにアミン化合物を有する処理剤により導電性部材の表面を処理することが提案されている。
【0008】
上記特許文献1では、研磨時の表面粗さの低減は可能であり、粒径が10μmを下回るトナーを均一に搬送することができる。さらにゴム層の電気抵抗をある程度均一にできる。しかし、研磨して得られたロール表面においてはエピクロルヒドリンゴムが有する粘着性が摩擦係数の上昇という問題を引き起こす。さらには炭酸カルシウムの添加が悪影響を及ぼす場合もある。例えば、ゴムの表面の粘着性が炭酸カルシウムの未添加時に比べ格段に上昇し、結果として摩擦係数が高いレベルに陥る場合がある。また摩擦係数を下げる要素が極めて少ない。そのうえトナーへの帯電性やその帯電性能の持続性が良くなく、現像ローラ等として用いた場合に良好な印刷画が得られないという問題がある。
【0009】
上記特許文献2では、表層の材料がコーティングにより形成されるためその材料を適宜選択することが可能であり、トナーの帯電性の調整や摩擦係数の調整が容易になる。しかし表層の材料のコーティング時における塗りむらが問題となる。すなわち、表層の厚みが厚すぎるとコーティング材のたれ等が生じて外径精度が得にくく、逆に表層の厚みが薄いと塗りむらが抵抗値のばらつきに直結するためトナーの運搬およびトナーへの帯電性が不均一となり、良好な画像を得られない。その結果、製造時の歩留まりが極めて悪くコスト高になる。また、基材と表面処理のコーティング剤とは材料が異なるため、製造時および使用時におけるコーティング剤の剥離発生という問題がある。また特にトナー漏れ防止用のシール部では基材との硬度差によってコーティング材の亀裂のおそれがあり、その結果高い耐久性が得られないという問題もある。
【0010】
以上のように、トナーの搬送性とトナーの帯電性のコントロールを両立するのは困難である。そこで本発明者は、かかる従来の問題点を解決すべく鋭意検討し、電気抵抗を均一化できると共にトナー等の付着物への帯電性に優れ、かつその帯電性を持続することができる導電性ゴムローラを開発し、特願2002−338968号(特許文献3)で提供している。
【0011】
前記導電性ゴムローラを用いた場合、初期は極めて良好な画像が得られるようになってきた。しかし、良好な画像を維持するという点でさらなる改良の余地があった。
すなわちトナーは、トナー供給ロールや量規制ブレードと現像ロールとの間でせん断力などの力を受けながら、数千枚程度の画像寿命が尽きるまで使用され続ける。また、潜像部分においてのみ現像ロールから感光体へトナーが搬送されるために、現像ロールにのっても紙まで移行されずに再びカートリッジに戻ってくるトナーも数多く存在する。そういった多大なストレスをともなう長期間の使用を経ることで、トナーの付着を防止するために添加されている外添材や感光体より搬送される紙の成分がトナー粒子へめり込み、さらにはトナー自体の割れや変形を生じる。このようにトナー表面は長期間使用しているうちに初期の帯電しやすい表面とは大きく変わってしまう。そのためトナーの帯電量が低下し、その結果、本来白い印字面にトナーがのる、いわゆるかぶりなどの画像障害が発生し得る。
【0012】
【特許文献1】特開2002−194203号公報
【特許文献2】特開2001−357735号公報
【特許文献3】特願2002−338968
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電気抵抗を均一化できると共にトナー等の付着物への帯電性に優れ、かつその帯電性を持続することができ、さらに表面粗さが極めて低い導電性ゴムロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は少なくとも導電性ゴム層を最外層に備えている導電性ゴムローラであって、上記ゴム層の表層部分は酸化膜とされており、かつ、電圧5V、周波数100Hzで交流電圧を印加した際の誘電正接が0.1〜1.5、摩擦係数が0.1〜1.5であることを特徴とする導電性ゴムローラを提供している。
【0015】
本発明では、トナーを感光体に付着させるための現像ローラ等に好適に使用される導電性ゴムローラにおいて、誘電正接が帯電特性に大きな影響を及ぼすことに鑑み、ローラの誘電正接を上記範囲に低減すれば、電気抵抗の均一化とトナーの帯電性のコントロールを両立させることができ、結果、良好な帯電特性を奏することを見出した。よって本発明の導電性ゴムローラを現像ローラ等に用いた場合、感光体接触前の現像ローラ表面に存在するトナーの帯電量を高いレベルに保持することができる。
さらに、ローラの摩擦係数を上記範囲に低減すればトナーに与えるストレスを軽減でき、その結果トナーの劣化を遅らせることができるため長期使用期間に渡り良好な画像を維持することができる。また、トナーの小径化にも対応できるという利点もある。
【0016】
上記のように、本発明の導電性ゴムローラは前記条件下で測定した誘電正接を約0.1〜1.5としている。
ゴムローラの電気特性において誘電正接とは、電気の流し易さ(導電率)とコンデンサー成分(静電容量)の影響度を示す指標であり、交流電流を印加した際の位相遅れを示すパラメータでもあり、電圧をかけた時のコンデンサー成分割合の大きさを示している。即ち、誘電正接はトナーが量規制ブレードにより高圧で現像ローラに接触した際に生成される帯電量と、感光体へ搬送されるまでにローラ上に逃げる帯電量とにより表され、感光体接触直前の帯電量を示す指標となる。誘電正接が大きいと電気(電荷)を通しやすく分極は進みにくいが、逆に誘電正接が小さいと電気(電荷)を通しにくく分極が進むことになる。
よって、誘電正接が小さい方がロールのコンデンサー的特性が高く、摩擦帯電で生じたトナーの帯電をロールから逃すことなく維持できる。すなわち、トナーに帯電性を付加でき、付加した帯電性を維持することができる。かかる効果を得るためには誘電正接は1.5以下としている。
また、充填材の量が多くなり硬くなるのを避けるため、または過度な酸化膜の形成により表面が劣化するのを避けるために、誘電正接は約0.1以上としている。該誘電正接はより好ましくは0.2〜1.0である。
なお、誘電正接の測定条件で、電圧を5Vの微小電圧としているのは、ゴムローラがトナーを保持した際、また、トナーが感光体に搬送された際には極めて微小は電圧変動を生じるためである。さらに、周波数を100Hzとしているのは、現像ローラの回転数、嵌合体やブレード、トナー供給ローラとのニップを鑑みると周波数100Hz程度の低周波数が極めて事象にマッチングするためである。
【0017】
さらに、本発明の導電性ゴムローラは摩擦係数が約0.1〜1.5としている。上述したように、トナーはトナー供給ロールや量規制ブレードと現像ロールとの間でせん断力などのストレスを受ける。かかるストレスを軽減するために導電性ゴムローラの摩擦係数は約1.5以下であることが好ましい。また、トナーが滑らず十分な量のトナーを搬送するためには導電性ゴムローラの摩擦係数は約0.1以上であることが好ましい。該摩擦係数はより好ましくは下限は0.25以上である。一方、上限は好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下で、特に0.55以下が好ましい。
ここでの摩擦係数は、導電性ゴムローラ表面の摩擦係数であり、市販のポリエステル製のOHPフィルムを、幅50mmで接触させて導電性ゴムローラの表面の一部に接触させて等速移動時の動摩擦力を測定し、この動摩擦力をオイラーの式に導入して計算することで摩擦係数を求めた。市販のポリエステル製のOHPフィルムを対象としたのはトナーの材質に近い樹脂製品であり、かつ、表面が平坦均一であることによる。
【0018】
本発明の導電性ゴムローラは、上記のような物性に加えて、表面粗さRzが約5μm以下であることが好ましい。このように導電性ゴムローラの表面粗さRzを小さくすることにより、導電性ゴムローラの表面にはトナーの粒径より小さな凹凸が存在するにすぎなくなるため、均一なトナーの搬送ができるだけでなくトナーの流動性がよくなり、結果としてトナーに帯電性を与える効率がきわめて高くなる。なお表面粗さRzは、JIS B 0601(1994)にしたがって測定する。
また、本発明の導電性ゴムローラにおいてはローラの抵抗値が約10〜10Ωであることが好ましい。
【0019】
上記導電性ゴムロールの最外層を形成する導電性ゴム層は、導電性を有していればいかなる構成成分を有していてもよいが、ゴム成分、充填材、または導電剤、加硫剤、可塑剤もしくは受酸剤などの添加剤を含む。
導電性ゴム層における導電性はカーボンブラックを配合した電子導電性またはエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムを用いたイオン導電性のいずれでもよく、また、電子導電性とイオン導電性とを併用することが好ましい。
【0020】
上記誘電正接を低減させるためには、イオン導電性ゴムを用いると共に、カーボンブラックを配合することが好ましく、ゴム成分100重量部に対して一次粒径80nm以上500nm以下の弱導電性カーボンブラックを5〜70重量部配合している。
【0021】
上記弱導電性カーボンブラックとは粒径が大きくストラクチャーの発達が小さく導電性への寄与が小さいカーボンブラックであり、これを配合することにより導電性を高めることなく分極作用によるコンデンサー的な働きを得ることができ、電気抵抗の均一化を損なうことなく帯電性のコントロールを実現できる。
上記弱導電性カーボンブラックとして、一次粒径が約80nm以上、好ましくは約100nm以上のものを用いれば、より有効に上記効果が得られる。また、250nm以下であると表面粗さが極めて小さくできる。
弱導電性カーボンブラックの配合量をゴム成分100重量部に対して約5〜70重量部程度としているのは、5重量部未満であると誘電正接を低減する硬化が乏しく、70重量部を越えると、硬度が上昇し接触する他の部材を損傷させるためである。
弱導電性カーボンブラックとしては種々の選択が可能であるが、中でも大粒径を得やすいファーネス法、サーマル法により製造されたカーボンブラックが好ましく、不純物の少ないサーマルカーボンブラックが最も好ましい。カーボンの分類で言うとSRFやFT、MTが好ましい。また顔料で用いられるカーボンブラックを用いても良い。
【0022】
なお、導電剤はカーボンブラックに限定されず、公知の無機導電性材料または有機導電性材料を使用することができる。
無機導電性材料としては、ケッチェンブラック、ファーネスブラックもしくはアセチレンブラック等の公知の導電性カーボンブラック;酸化亜鉛、チタン酸カリウム、アンチモンドープ酸化チタン、酸化スズもしくはグラファイト等の導電性金属酸化物;LiClO、LiCFSO、NaC1O、LiAsF、LiBF、NaSCN,KSCN,NaC1等の金属塩;あるいは各種4級アンモニウム塩、燐酸塩等の電解質が挙げられる。
有機導電性材料としては、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム等のアルコール変性脂肪酸塩、過塩素酸塩、ハロゲン塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、エトサルフェート塩等の4級アンモニウム塩であるカチオン性界面活性剤;脂肪族スルホン酸、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加リン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤;各種ベタイン等の両性界面活性剤;高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤等の帯電防止剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0023】
導電性ゴム層のゴム成分は上記したようにイオン導電性ゴムが好適に用いられ、該イオン導電性ゴムに極性ゴムをブレンドしてもよい。
上記ゴム成分としては、各種不飽和ゴムまたは熱可塑性ゴム等が用いることができ、共重合ゴムやブレンドゴム等の種々の形態で使用することができる。
具体的にはエピハロヒドリンゴム(特に、エピクロルヒドリンゴム)、アクリロニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができ、これらは単体で用いてもよいし2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0024】
特に導電性ゴム層のゴム成分としては極性ゴム、ハロゲン系ゴムが好ましい。ハロゲン系ゴムとしては、エピクロルヒドリンゴムまたはエピクロルヒドリン系重合体が好適な例として挙げられる。具体的には、例えばエピクロルヒドリン(EP)単独重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド(EO)共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド(PO)共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。ハロゲン系ゴム、特にエピクロルヒドリンゴムは、他のゴム成分と組み合わせてもよく、その場合全ゴム成分に対して約20重量%以上100重量%未満の割合で配合することが好ましい。
【0025】
導電性ゴム層に配合する充填材は、上記導電剤の他に、加硫剤、加工助剤、可塑剤、受酸剤、劣化防止剤等を含み、これらの充填材の総量はゴム成分100重量部に対して約30〜70重量部程度が好ましい。
上記30〜70重量部としているのは、誘電正接を効率的に調整し、研磨性(加工性)を良くして加工精度を向上させるために充填材の総量は約30重量部以上が好ましい。一方、硬度が上昇し接触する他の部材を損傷させるのを防ぐために、充填材の総量は約70重量部以下が好ましい。
【0026】
配合する加硫剤しては硫黄系、トリアジン誘導体系、チオウレア系、各種モノマー等が使用できる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。硫黄系加硫剤としては粉末硫黄、またはテトラメチルチウラムジスルフィドもしくはN,N−ジチオビスモルホリンなどの有機含硫黄化合物等が挙げられる。チオウレア系加硫剤としてはテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレアおよび(CnH2n+1NH)2C=S(式中、nは1〜10の整数を表す。)で示されるチオウレア等よりなる群から選択される1種又は複数種のチオウレアを用いることができる。
加硫剤の添加量はゴム成分100重量部に対して約0.5重量部以上約5重量部以下、好ましくは約1重量部以上約3重量部以下が良い。
【0027】
エピクロルヒドリンゴムまたはエピクロルヒドリン系重合体をチオウレア系加硫剤、特にエチレンチオウレアで加硫したゴムは、圧縮永久ひずみが約15%以下となり耐久性が良好となる上に、研磨加工時の精度確保を容易にすることができ、さらには紫外線による酸化膜形成効果も高めることができるから、本発明において特に好適に用いることができる。この場合、ゴム成分100重量部に対してチオウレア系加硫剤を約0.2重量部以上約3重量部以下、好ましくは約1重量部以上約2重量部以下の割合で配合するのが良い。
【0028】
上記各種加工助剤や可塑剤としては、ジブチルフタレート(DBP)やジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルフォスフェート等の各種可塑剤のほかに、導電剤や加工助剤として用いられる物質の中にも可塑成分を有するものが多数ある。例えば加工助剤として用いられるステアリン酸等の脂肪酸、またはイオン導電剤として用いられる第4級アンモニウム塩等である。これら可塑成分は、上記ゴム層のゴム成分100重量部に対して約5重量部以下の割合で配合されていることが好ましい。酸化膜を形成する際にブリードが生じたり、プリンター装着時や運転時に感光体を汚染したりするのを防ぐためである。
【0029】
また、酸化膜形成に影響を及ぼさない範囲で導電性ゴム層の劣化防止のために各種老化防止剤を配合することもできる。
ゴム成分としてハロゲン系ゴム、特にエピクロルヒドリンゴムまたはエピクロルヒドリン系重合体を用いる場合にはその重量に対し受酸剤を約1重量%以上約10重量%以下、好ましくは3重量%程度の割合で配合するのが好ましい。加硫阻害および感光体汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は約1重量%以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は約10重量%以下であることが好ましい。受酸剤としては、分散性にも優れるので特にハイドロタルサイト類、マグサラットが好ましい。その他、受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができる。
【0030】
さらに、上述した添加剤のほかに、誘電正接を本発明で規定されている範囲に調整するために、脂肪酸処理された炭酸カルシウム、クレー、有機/無機顔料等を配合してもよい。
脂肪酸処理された炭酸カルシウムは脂肪酸が炭酸カルシウムの界面に存在することにより通常の炭酸カルシウムに比べ活性が高く、また易滑性であることから高分散化が容易かつ安定して実現できる。また、処理により分極作用が促されると、この両作用によりゴム内のコンデンサー的な働きが強まるため誘電正接を効率良く低減することができる。
【0031】
本発明の導電性ゴム層の表層部分は酸化膜とされている。酸化膜としては多数のC=O基またはC−O基等を有する酸化膜が好ましい。かかる酸化膜は本発明の導電性ゴムロールにおける摩擦係数の低減および誘電正接の調整により有効である。酸化膜はゴム層の表面に紫外線照射あるいは/およびオゾン照射等の処理を施しゴム層を酸化することでゴム層の表層部分に形成できる。なかでも紫外線照射により酸化膜を形成することが処理時間も早く、コストが低いことから好ましい。上記酸化膜を形成するための処理は公知の方法に従って行うことができる。例えば、紫外線照射を行う場合にはゴム層の表面と紫外線ランプとの距離やゴムの種類等により異なるが、波長が約100nm〜400nm、より好ましくは約100nm〜200nmの紫外線を30秒〜30分、好ましくは1分〜10分程度照射することが好ましい。なお、紫外線の強度や照射条件(時間、槽内温度、距離)は本発明における誘電正接、摩擦係数とする範囲内で選定される。
【0032】
酸化膜形成前の導電性ゴムローラに電圧50Vを印加した時のローラ抵抗をR50とし、酸化膜形成後の印加電圧50Vにおけるローラ抵抗をR50aとしたとき、logR50a−logR50=約0.2〜1.5程度であることが、耐久性の向上、トナーへのストレスの低減や感光体崩れ対策の観点から好ましい。
【0033】
上記した物性を有する本発明の導電性ゴムローラは、少なくとも導電性ゴム層を最外層に備えていればその構造は特に問わず、要求性能に応じて、2層等の複数構造としてもよいが、芯金の外周面上に上記した物性を有する導電性ゴム層を一層設けた構造とすると、物性のばらつきが少なく、安価に製造できるため好ましい。
【0034】
上記導電性ゴムローラには芯金を取り付け、該芯金としてはアルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製またはセラミック製等の芯金を用いている。
【0035】
導電性ゴム層の肉厚は約0.5mm〜10mm程度、さらには約1mm〜7mm程度であるのが好ましい。適当なニップを得るため肉厚は約0.5mm以上であることが好ましく、小型軽量化を図るため肉厚は約10mm以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の導電性ローラはレーザービームプリンター、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリ、ATMなどのOA機器における電子写真装置の画像形成機構等に好適に用いることができる。具体的には、非磁性1成分のトナーを感光体に付着させるための現像ローラとして好適に用いられる。
電子写真装置の画像形成機構における現像方式としては感光体と現像ロールの関係で分類すると接触式または非接触式に大別されるが、本発明の導電性ローラはいずれの方式にも利用できる。なかでも本発明の現像ローラは感光体に概接触していることが好ましい。 本発明の導電性ローラは、その他、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ロール、トナー像を感光体から転写ベルトや用紙に転写するための転写ロール、トナーを搬送させるためのトナー供給ロール、転写ベルトを内側から駆動するための駆動ロール等として用いることもできる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の導電性ゴムロールは、最外層の導電性ゴム層の表層部分が酸化膜とされており、かつ、所定の範囲の誘電正接および摩擦係数を有するので電気抵抗の均一化とトナーの帯電性のコントロールを両立でき、良好な帯電特性を得ることができる上、トナーなどの付着物に与えるストレスを軽減できる。よって本発明の導電性ゴムローラを現像ローラ等に用いた場合、感光体接触前の現像ローラ表面に存在するトナーの帯電量を高いレベルに保持することができ良好な初期画像が得られるとともに、トナーの劣化を遅らせて長期使用期間に渡り良好な画像を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように導電性ゴムローラ10は円筒形状の肉厚10mmのゴム層1と、その中空部に圧入された直径10mmの円柱形状の芯金(シャフト)2を備えている。
上記ゴム層1と芯金2とは導電性接着剤で接合されている。ゴム層1の表層部分はゴムが紫外線照射により酸化された酸化膜とされている。
【0039】
上記酸化膜とした表層部分を備えるゴム層1は、ゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを100重量部〜5重量部を含み、100重量部未満の場合には他の極性ゴムをブレンドしている。また、ゴム成分100重量部に対してカーボンブラック5〜70重量部配合している。該カーボンブラックは一次粒径80nm以上500nm以下としている。
さらに、上記導電剤の他に、加硫剤、可塑剤、受酸剤等の添加材を含み、上記カーボンブラックからなる導電剤と上記加硫剤等含む充填剤は、ゴム成分100重量部に対して、30重量部以上70重量部以下で配合している。
【0040】
導電性ゴムローラ10は、上記酸化膜とした表層部分に、電圧5V、周波数100Hzの交流電圧で印加した際の誘電正接を0.1〜1.5、摩擦係数を0.1〜1.5とし、表面粗さRzが5μm以下としている。また、ローラの抵抗値を10〜10Ωとしている。
【0041】
上記構成からなるゴムローラ10は、画像形成装置内において、非磁性1成分のトナーを感光体に付着させるための現像ローラとして用いている。
【実施例】
【0042】
各実施例および比較例の導電性ゴムロールにおける構成成分としては以下のものを用いた。
ゴム成分としては、エピクロルヒドリンゴム(GECO)(ダイソー(株)製「エピクロマーCG102」)を用いた。かかるゴム成分はエチレンオキサイド(EO)/エピクロルヒドリン(EP)/アリルグリシジルエーテル(AGE)の共重合比率が56モル%/40モル%/4モル%であるエピクロルヒドリン系重合体である。また、実施例7ではエピクロルヒドリンゴム(ECO)(ダイソー(株)製「エピクロマーD」)75重量部とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(日本ゼオン製「ニッポール401LL」)25重量部のブレンドゴムを用いた。
【0043】
実施例1では、充填材として脂肪酸処理炭酸カルシウムを用い、実施例2〜6では弱電性カーボンブラック(旭カーボン(株)製「旭#15」)を用い、比較例1では脂肪酸処理されていない炭酸カルシウムを用いた。配合量は表1に示すとおりである。
加硫剤としては硫黄をゴム成分100重量部に対して0.5重量部、エチレンチオウレア(川口化学製アクセル22−S)をゴム成分100重量部に対して1.4重量部を用いた。
実施例1〜6では受酸剤としてハイドロタルサイト(DHT−4A−2)をエピクロルヒドリンゴム(GECO)100重量部に対して3重量部用いた。
【0044】
各実施例および比較例の導電性ゴムロールの製造方法について以下に述べる。
上記および表1に記載の配合材料をバンバリーミキサで混練り後、押出機にて外径φ21mm、内径φ9.5mmのチューブ状に押し出し加工を施した。該チューブを加硫用のシャフトに装着し、加硫缶にて160℃で1時間加硫を行った後、導電性接着剤を塗布したφ10mmのシャフトに装着して160℃のオーブン内で接着した。その後、端部を成型し、円筒研磨機でトラバース研磨、仕上げ研磨として鏡面研磨を施し、φ20mm(公差0.05)で各々所定の表面粗さに仕上げた。各実施例および比較例の導電性ゴムロールの表面粗さRzは表1に示す。
【0045】
ローラ表面を水洗いした後、さらに実施例1〜8および比較例2においては紫外線照射を行い表層に酸化層を形成した。これは紫外線照射機(セン特殊光源(株)製「PL21−200」)を用い、ローラと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を所定の時間、照射することによって行い、ローラを4回回転させてローラ全周(360度)に酸化膜を形成させた。表1中の照射時間は一面当たり(90度範囲)の照射時間を指す。
【0046】
上記のように作製した各実施例および比較例の導電性ゴムローラについて下記の特性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(ローラ電気抵抗の測定)
図2に示すように芯金2を通したゴム層1をアルミドラム3上に当接搭載し、電源4の+側に接続した内部抵抗r(100Ω)の導線の先端をアルミドラム3の一端面に接続すると共に電源4の−側に接続した導線の先端を導電性ローラ1の他端面に接続して測定した。
上記電線の内部抵抗rにかかる電圧を検出し、検出電圧Vとした。
この装置において印加電圧をEとすると、ローラ抵抗RはR=r×E/(V−r)となるが、今回−rの項は微少とみなし、R=r×E/Vとした。
芯金2の両端に500gずつの荷重Fをかけ30rpmで回転させた状態で、印加電圧Eを500Vとした時の検出電圧Vを4秒間で100個測定し、上式によりRを算出した。なお、上記測定は温度23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下で行った。
【0049】
(誘電正接の測定)
図3に示すようにゴムローラ51を載置している金属板53とシャフト52とを電極とし、ゴムローラ51に、電圧5V、周波数100Hzで交流電圧を印加し、LCRメータ(安藤電気製「AG−4311B」)にてR(抵抗)成分とC(コンデンサー)成分を分離して測定した。このRとCの値から以下の式により誘電正接やインピーダンス、位相角度等を求めた。測定温度は23℃〜24℃(室温)で行った。
誘電正接(tanδ)=G/(ωC)
G=1/R
このように、誘電正接は1本のローラの電気特性をローラの抵抗成分とコンデンサー成分の2種の並列等価回路としてモデル化した際に、G/ωCとして求まる値である。
【0050】
(摩擦係数の測定)
図4に示すように、デジタルフォースゲージ((株)イマダ製「Model PPX−2T」)41と、摩擦片(市販のポリエステル製のOHPフィルム、ロール長手方向との接触幅;50mm)42と、20gの重り44と、導電性ゴムローラ43とからなる図4に示した装置においてデジタルフォースゲージ41で測定された数値をオイラーの式に代入し、摩擦係数を算出した。
【0051】
(表面粗さRzの測定)
表面粗さRzは、JIS B 0601(1994)にしたがって測定した。
【0052】
(耐久使用時の画像評価)
各実施例および比較例の導電性ゴムロールをプリンタ(非磁性1成分のプラス帯電性のトナーを使用した市販のプリンタ)に現像ローラとして装着し、かぶりが生じるまでの枚数を測定した。
【0053】
比較例1の導電性ゴムロールはゴム層の表層に酸化膜が形成されておらず、誘電正接および摩擦係数も本発明の範囲よりも大きい。この場合、4000枚を印刷したところで、かぶりが生じるまえにシール部が破壊した。
比較例2の導電性ゴムロールはゴム層の表層に酸化膜が形成されているが、誘電正接および摩擦係数が本発明の範囲よりも大きい。この場合、4000枚でかぶりが生じた。
実施例1〜の導電性ゴムロールはかぶりが生じるまでの枚数が6000枚〜12000枚と、比較例2の導電性ゴムロールに比して1.5〜3倍の使用耐久性を有する。
表1の下段の総合評価は、◎は実用上で極めて優れた耐久性を示すと共に高画質が長期にわたり維持されたことを示し、○は実用上で優れた耐久性を示すと共に高画質が維持されたことを示し、×は実用上採用するのに不適であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の導電性ゴムローラの概略図である。
【図2】導電性ゴムローラの電気抵抗の測定方法を示す図である。
【図3】導電性ゴムローラの誘電正接の測定方法を示す図である。
【図4】導電性ゴムローラの摩擦係数の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 導電性ゴム層
2 芯金
10 導電性ゴムローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性ゴム層を最外層に備えている導電性ゴムローラであって、
前記ゴム層の表層部分は酸化膜とされており、かつ、電圧5V、周波数100Hzで交流電圧を印加した際の誘電正接が0.1〜1.5、摩擦係数が0.1〜1.5であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記導電性ゴム層が、イオン導電性ゴム成分100重量部に対して一次粒径80nm以上500nm以下の弱導電性カーボンブラックを5〜70重量部含有している請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記酸化膜が紫外線照射あるいは/およびオゾン照射により形成されている請求項1または請求項2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記最外層の導電性ゴム層の表面粗さRzが5μm以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
前記導電性ゴムローラに芯金が装着されて、電子写真装置の画像形成機構において、非磁性1成分のトナーを感光体に付着させるための現像ローラとして用いられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項6】
前記ロールの抵抗値が10〜10Ωである請求項5に記載の導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−171021(P2006−171021A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358964(P2004−358964)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】