説明

導電性ペースト、その製造方法、これを用いた回路配線、及びその製造方法

【課題】電気抵抗が低く、配線材料として好適な導電性ペースト及びその製造方法を提供する。更に、資源の浪費を回避し、環境負荷の低減、製造工程の簡素化、コストの低減を図ることができる回路配線やその製造方法を提供する。
【解決手段】 導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む導電性ペーストであって、カーボンナノチューブを含み、前記溶媒が式(1)
【化1】


(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線や電子部品の接合に用いられる導電性ペースト、その製造方法、これを用いた回路配線、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等に用いられる配線は、フォトリソグラフィーを用いて作製されている。フォトリソグラフィーによる配線は概略以下のように作製されている。図4(a)に示すように、表面が絶縁樹脂3で被覆された基板に、その絶縁樹脂の被覆の一部を除去し、内部回路(図示せず)に接続された電極2を露出させる。この電極の露出部及び絶縁樹脂3上の全面に、配線となる銅膜4をスパッタリング等により形成する。続いて、感光性樹脂5をスピンコータ等を用いて塗布し、レジスト膜を形成する(図4(b))。その後、図4(c)に示すように、作製する配線パターンに形成されたフォトマスク6を介して露光し(図4(c))、レジスト膜にネガ又はポジとして未露光部5aと露光部5bを形成する(図4(d))。レジスト膜を現像して未露光部又は露光部を除去し、例えば、レジスト膜をポジ画像に形成する(図4(e))。その後、ウェットエッチング等によりレジスト膜を除去した部分の銅膜を除去し、銅膜を配線パターンに形成する(図4(f))。その後、銅膜上のレジストを除去し、銅配線7の作製を完了する(図4(g))。
【0003】
更に、特許文献1には、配線の一部をフォトマスクを使用しないフォトリソグラフィーにより形成し、その配線パターンの変更を容易にできるようにした半導体装置の製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、フォトリソグラフィーによる配線の作製は、配線材料層を基板全面に形成し、配線部分以外の配線材料を除去することから、廃棄される配線材料が多いこと、製造工程数が多く配線作製のための消費エネルギーが大きいこと、使用済みのエッチング液が廃液となり、その廃液処理にもエネルギー資源を必要とする等、資源を浪費し環境保護の観点から問題がある。また、前述のように複雑な工程を必要とするため初期設備投資が多大となること、多数の製造工程を必要とするためにコストアップが避けられないことなどの問題もある。
【0005】
このような環境問題を回避するため、配線材料として導電性ペーストを用いて、印刷塗布による配線の作製が試みられている。この方法は、導電性ペーストを配線のパターン形状に供給する方法であって、配線材料を必要な箇所にのみ供給し、必要な量のみ使用することから、環境保護の観点、設備投資、コストの観点においてフォトリソグラフィー法と比較して優位である。しかし、導電性ペーストは樹脂と無機物の導電性粒子を主成分とするため、これを用いた配線において、フォトリソグラフィー法等による金属配線と比較して電気抵抗が大きくなる欠点がある。
【0006】
導電性ペーストの中でもナノサイズの金属微粒子を300℃以下の比較的低温で焼成するペーストやインクも提案されており、微粒子同士が融着するために抵抗率は金属バルク並みを示すが、1μm以上の膜厚に形成することが困難であり、結果として配線抵抗が高くなる傾向にある。高い導電性を有する導電性ペーストが要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−174118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、電気抵抗が低く、配線材料として好適な導電性ペースト及びその製造方法を提供することにある。更に、資源の浪費を回避し、環境負荷の低減、製造工程の簡素化、コストの低減を図ることができる回路配線やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、導電性が高いもののその分散性が低いことにより、導電性物質として導電性ペーストに使用が困難であったカーボンナノチューブに対し、その分散性を向上させ樹脂中に均一に分散させることができる特定の構造のポリエーテル系溶媒を見出した。そして、カーボンナノチューブは導電性粒子相互を接続し導電パスを形成することによりこれを含む導電性ペーストの低抵抗化を図ることができることの知見を得て、かる知見に基き本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、 導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む導電性ペーストであって、カーボンナノチューブを含み、前記溶媒が式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含むことを特徴とする導電性ペーストに関する。
【0013】
また、本発明は、導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む混合物と、カーボンナノチューブ及び式(1)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液とを混合することを特徴とする導電性ペーストの製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、カーボンナノチューブ及び式(1)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液に、バインダー樹脂又はその溶液を加え得られた液状混合物に、導電性粒子を加えて混合することを特徴とする導電性ペーストの製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、上記導電性ペーストを用いて形成されたことを特徴とする回路配線や、この回路配線の製造方法であって、基材上に導電性ペーストを回路配線の形状に塗布する工程と、塗布した導電性ペーストを導電性を発現するように硬化する工程とを含むことを特徴とする回路配線の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導電性ペーストは電気抵抗が低く、配線材料として好適である。本発明の導電性ペーストの製造方法は、電気抵抗が低い導電性ペーストを効率よく製造することができる。また、本発明の回路配線やその製造方法は、資源の浪費を回避し、環境負荷の低減、製造工程の簡素化、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の導電性ペーストの一実施例の抵抗率の低下を示す図である。
【図2】本発明の導電性ペーストの一実施例の走査型電子顕微鏡による画像を示す図である。
【図3】本発明の導電性ペーストについて使用するポリエーテル系溶媒の式(1)中のnの相違による抵抗率の変化を示す図である。
【図4】従来の配線回路の製造方法の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の導電性ペーストは、導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む導電性ペーストであって、カーボンナノチューブを含み、前記溶媒が式(1)
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含むことを特徴とする。
【0025】
上記導電性ペーストに含まれる導電性粒子は、導電性を有する金属粒子や、カーボン粉末、カーボンファイバー等を用いることができる。金属粒子としては、銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、又は白金の単一金属粒子、少なくともこれらの金属の1種を含む合金の粒子を挙げることができる。その他、銅、ニッケル、銅合金、ニッケル合金の粒子に銀被覆を設けた粒子を用いることができ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
金属粒子の形状は、球状、燐片状、針状等いずれであってもよい。金属粒子の粒子径は、カーボンナノチューブ等との関連において選択することができ、導電性や印刷性の観点から5μm以下であることが好ましい。また、金属粒子は、粒度分布のピークが1つのものに限らず、複数を有するものであってもよく、更に、100nm以下の粒子径の粒子を含有していてもよい。ナノサイズの金属粒子は低温で融着する性質があり、金属粒子が融着して金属結合が形成されることにより導電性ペーストの低抵抗化を図ことができる。
【0027】
上記導電性粒子として導電性カーボン粒子や導電性カーボンファイバーを用いることもできる。導電性カーボンとしては、層状の結晶構造を有するグラファイト、ダイヤモンド微粒子等も挙げることができる。
【0028】
導電性粒子として用いる導電性カーボンファイバーは、アクリル繊維を原料とするPAN系、石油、石炭、コールタール等のピッチを原料とするPITCH系等いずれであってもよい。その平均繊維長、平均直径は特に限定されないが、平均直径として、例えば、1μm〜20μmを挙げることができ、カーボンナノファイバーも用いることができる。
【0029】
上記導電性ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、導電性ペーストが適用される配線や接続が置かれる環境に対抗性を有するように、好適なガラス転移温度、硬度、靭性等を有する樹脂を適宜選択することができる。具体的には、エポキシ、アクリル、フェノール、シリコーン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記導電性ペーストに用いるバインダー樹脂を溶解する溶媒は、バインダー樹脂を溶解可能であって、常温において揮発せず、バインダー樹脂の硬化時に容易に揮発し、バインダー樹脂中に残留しないものが好ましい。溶媒が常温において揮発するものであると溶液中のバインダー樹脂が高濃度となり高粘度に推移し、作業性が低下してしまう。溶媒の沸点が、100℃以上、250℃以下であることが好ましい。更に、溶媒は、式(1)で示されるポリエーテル系溶媒と相溶性を有することが好ましい。
【0031】
バインダー樹脂を溶解する溶媒としては、常温で液体であるものが、作業性の点から好ましい。具体的には、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ターピネオール、ビスエトキシエタン、トルエン、キシレン、プロピレングリコール等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
バインダー樹脂を溶解する溶媒には、式(1)で表されるポリエーテル系溶媒を含むことが好ましい。式(1)で表されるポリエーテル系溶媒は、カーボンナノチューブの分散性に優れるものである。このポリエーテル系溶媒はバインダー樹脂を溶解する溶媒と相溶であることが好ましい。
【0033】
式(1)中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。R及びR´が独立して表す炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等を挙げることができる。これらの中、エチル基、プロピル基、ブチル基を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0034】
更に、これらの炭素数1〜18のアルキル基が有する置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を挙げることができる。これらの置換基の数は特に限定されず、パーハロゲノ基であってもよい。
【0035】
式(1)中、Xが示す炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基を挙げることができるが、中でもエチレン基がカーボンナノチューブの分散性に優れた溶媒を与えることから好ましい。
【0036】
式(1)中、nが示す正の整数として、9以下であることが、溶媒が室温で液体であり取り扱いが容易であることから、好ましく、より好ましくは2以下である。
【0037】
上記導電性ペーストに用いるカーボンナノチューブ(CNT)は、導電性粒子が融着して形成される金属結合に加え、導電性粒子間に接続を形成し得るものである。導電性粒子間のカーボンナノチューブにより形成される接続により、導電性ペーストを用いて得られる配線や接続の電気抵抗を著しく低下させることができ、フォトリソグラフィーによる金属配線の代換品として導電性ペーストを使用することができる。
【0038】
カーボンナノチューブは、グラフェンシートが筒状になり、電界を付加されたときに電子の放出を容易に行い得る5員環を含むフラーレンの半球のような構造でその端部が閉じられたものであり、シングルウォールナノチューブ(単層型)、ダブルウォールナノチューブ(二層型)、マルチウォールナノチューブ(多層型)や、これを金属に担持させた金属担持カーボンナノチューブ等いずれであってもよい。また、カーボンナノチューブの先端を尖らせたカーボンナノホーン等であってもよい。
【0039】
カーボンナノチューブとしては特に制限をされず、アーク法、レーザーアブレーション法、CVD法、HiPCO法、スーパーグロースCVD法等により作製されたものを用いることができる。
【0040】
カーボンナノチューブは直径が数nm、長さが数nmから数μmであることが好ましい。
【0041】
上記各物質の導電性ペースト中の含有量は、特に限定されるものではないが、導電性粒子が70質量%以上、99質量%以下、バインダー樹脂が1質量%以上、30質量%以下、溶媒が1質量%以上、30質量%以下、CNTが0.01質量%以上、10質量%以下であることが、導電性が高く、回路配線を形成する基板との接着性が良好であることから好ましい。
【0042】
上記導電性ペーストの製造方法としては、以下の本発明の導電性ペーストの製造方法によることができる。
【0043】
本発明の導電性ペーストの製造方法としては、カーボンナノチューブ及び上記式(1)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液と、導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む混合物とを混合することを特徴とする。
【0044】
また、本発明の導電性ペーストの製造方法としては、カーボンナノチューブ及び上記式(1)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液に、バインダー樹脂又はその溶液を加えて得られた液状混合物に、導電性粒子を加えて混合することを特徴とする。
【0045】
上記導電性ペーストの第1の製造方法としては、予め、導電性粒子と、バインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解する溶媒とを含む混合物(ベース混合物ともいう。)を調製し、一方、カーボンナノチューブ及び上記式(1)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液(CNT分散液ともいう。)を調製し、これらを混合する方法である。
【0046】
まず、導電性粒子とバインダー樹脂を混錬し、導電性ペーストのベースとなるベース混合物を作製する。バインダー樹脂に粒径の小さい導電性粒子が混錬されると粘度が上昇するため、適宜バインダー樹脂を溶解する溶媒を加え、混練する。この際、導電性粒子と樹脂との濡れ性を改善するためにカップリング剤を加えてもよい。
【0047】
導電性粒子とバインダー樹脂の混錬方法は、バインダー樹脂中に導電性粒子を均一に分散できる方法であればよく、例えば、三本ロール、ニーダー、ディスパース等の混練装置を用いることができる。導電性粒子とバインダー樹脂との混合割合は、得られる導電性ペースト中のこれらの上記含有量に相当する割合とすることが好ましい。
【0048】
一方、CNTを式(1)で表されるポリエーテル系溶媒に分散させてCNT分散液を調整する。式(1)で表されるポリエーテル系溶媒にCNTを分散させる方法としては、攪拌法、混練法、超音波法等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。攪拌法としては、攪拌装置を用いて攪拌する方法を挙げることができる。混練法としては、上記例示の混練装置を用いて混練する方法を挙げることができる。CNTと式(1)で表されるポリエーテル系溶媒との混合割合は、得られる導電性ペースト中のこれらの上記含有量に相当する割合とすることが好ましい。
【0049】
このようにして得られたCNT分散液とベース混合物とを混合する方法としては、これらを均一に分散可能な方法であればいずれも採用することができ、具体的には、上記混練装置を用いた混練方法を用いることができる。CNT分散液とベース混合物との混合前に、混合後に得られる導電性ペーストが低粘度になることを抑制するために、CNT分散液の分散媒を揮発させて、CNT分散液の粘度を調整してもよい。
【0050】
混合後、真空脱泡法、遠心分離法等の脱泡処理を行うこともできる。更に、得られた導電性ペーストの粘度が高ければ、適宜溶媒を加えて粘度を調整することが好ましい。
【0051】
また、上記導電性ペーストの第2の製造方法としては、CNTを式(1)で表されるポリエーテル系溶媒に分散させたCNT分散液に、順次、バインダー樹脂を加え混合して得られた液状混合物に、導電性粒子を加え混合する方法である。
【0052】
CNT分散液の調製は上記第1の方法におけるCNT分散液の調製と同様に行うことができる。CNT分散液にバインダー樹脂を加え混合して液状混合物を調製する方法、得られた液状混合物に導電性粒子を混合する方法としては、上記例示の混練装置を用いた混練方法と同様の方法によることができる。
【0053】
CNT分散液にバインダー樹脂を加える前に、得られる導電性ペーストの粘度が低粘度になるのを抑制するため、CNT分散液から、溶媒を揮発により除去することもよい。バインダー樹脂や導電性粒子の混合割合は、上記と同様に得られる導電性ペースト中のこれらの上記含有量に相当する割合とすることが好ましい。また、導電性粒子を混合する際、バインダー樹脂との濡れ性を向上するため、カップリング剤を加えることもでき、導電性ペーストの粘度を調整するために、式(1)で表されるポリエーテル系溶媒や、バインダー樹脂を溶解する上記例示の溶媒を使用してもよい。
【0054】
このようにして得られる導電性ペーストは、CNTによる導電性粒子間の架橋により導電経路を増加させることが可能であり、導電性の高い導電性を有する。更に、粘度の調整が可能であり、塗布に適した粘度に調整した導電性ペーストを得ることができる。
【0055】
本発明の回路配線は、上記導電性ペーストを用いて形成されたことを特徴とする。本発明の回路配線としては、半導体素子の電極間を接続する配線や、半導体素子や電子部品を相互に接続するはんだバンプも挙げることができる。
【0056】
本発明の回路配線の製造方法は、上記回路配線の製造方法であって、基材上に導電性ペーストを回路配線の形状に塗布する工程と、塗布した導電性ペーストを導電性を発現するように硬化する工程とを含むことを特徴とする。
【0057】
上記回路配線の製造方法における塗布工程は、基材上に導電性ペーストを回路配線の形状に塗布することから、必要量の導電性ペーストのみを使用し、資源の浪費を回避することができる。塗布方法としては、版式印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。
【0058】
版式印刷法は、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷等を挙げることができる。凸版印刷や、凹版印刷は、版の凹凸を利用する印刷法であり、凸版印刷は配線部を凸にして凸部に導電性ペーストをつけ、基材上にプレスして転写する方法であり、凹版印刷は非配線部の凸部の導電性ペーストを掻き取り、凹部についた導電性ペーストを基材上にプレスして転写する方法である。また、版からゴム版へ転写して行う凸版オフセットや凹版オフセット等も挙げることができる。平版印刷は、親油性の配線部と親水性の非配線部を作製し、配線部に導電性ペーストを乗せ、基材上にプレスして転写する方法である。孔版印刷は、シルク等の版に微細な孔を多数開け、圧力によって孔を通過した導電性ペーストを基材に転写する方法である。また、インクジェット印刷法は圧電体の変位や、熱膨張によりインクを吐出して印刷する方法である。また、ディスペンス法は画像処理により導電性ペーストの塗布量をコントロールして配線を形成する方法である。
【0059】
上記基材としては、前記塗布工程及び硬化工程に耐えるものであればどのようなものでも用いることができる。例としてはポリイミドやPETなどのプラスチック材料、あるいはガラスエポキシ樹脂、紙フェノールなどの複合材料の他、ガラスや表面に絶縁加工を施した金属板などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0060】
上記回路配線は、上記導電性ペーストを用いて形成するため、電気抵抗が低く、良導電性である。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明の導電性ペーストを具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
式(1)で表されるポリエーテル系溶媒として、ビス(エトキシ)エタンを2ml、単層型CNTを20mg計量し、容量5mlの容器中にて投げ込み型超音波処理機を使い、50Wの出力で60分間超音波照射を行った。得られたCNT分散液を、銀−エポキシ系ペースト20gに投入して5分間攪拌を続け、導電性ペーストを得た。
【0063】
得られた導電性ペーストを用いて、パターンを形成し、抵抗率を測定した。パターンは、幅0.5mm、長さ45mmの直線とし、スクリーン印刷法にてガラスエポキシ基材上に形成した。このパターンを150℃、180℃、200℃にて各々30分熱硬化させることにより、測定サンプルを得た。各測定サンプルについて、抵抗値及び断面積を測定し、抵抗率を算出した。得られた抵抗値Rと断面積Sから、抵抗率R/Sを算出した。以下の比較例により得られた基準抵抗率に対する、各硬化温度における抵抗率の減少比を求めた。結果を図1に示す。
【0064】
180℃硬化により、得られた測定サンプルの走査型電子顕微鏡による画像を図2に示す。導電性粒子間を架橋するようにCNT(矢印で示す)が分散しており、導電経路が増加し、低抵抗となることが分かった。
【0065】
[比較例]
更に、CNTを使用しない他は上記と同様にして導電性ペーストを調製し、これを用いてスクリーン印刷法により形成したパターンを、150℃、180℃、200℃にて硬化し、測定サンプルを調製し、基準抵抗率R/Sを得た。
【0066】
結果より、本発明の導電性ペーストは、導電性ペーストの各硬化温度において抵抗率の低減が認められ、CNTによる抵抗率低減効果が確認できた。
【0067】
[実施例2]
式(1)中のnの数が異なるポリエーテル系溶媒を用いた他は実施例1と同様に導電性ペーストを調製し、これを用いてスクリーン印刷法により形成したパターンを、150℃、180℃、200℃にて硬化し、測定サンプルを調製し、抵抗率R/Sを得た。結果を図3に示す。
【0068】
結果より、硬化温度によらず、nが小さいほど抵抗率が低減される傾向を確認した。従って、CNTの分散媒としては室温で液体であることが取り扱いの容易さから好ましく、nは9までの正の整数であることが好ましく、抵抗率低減の観点から2以下であることが好ましいことが分かる。
【0069】
[実施例3]
実施例1で得られた導電性ペーストを用いて、ポリイミド樹脂基材上へ、メッシュ数325、メッシュ線径18μm、乳剤厚15μm、配線部の乳剤開口幅25μm、厚さ5μmのパターンをスクリーン印刷し、150℃、120分加熱し、配線パターンを形成した。形成した配線パターンにおいて良好な導電性が確認できた。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
2 電極
3 絶縁樹脂
4 銅膜
5、5c 感光性樹脂
5a 未露光部
5b 露光部
6 フォトマスク
7 銅配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む導電性ペーストであって、カーボンナノチューブを含み、前記溶媒が式(1)
【化1】

(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含むことを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性粒子が、銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、若しくは白金の単一金属粒子、少なくともこれらの金属の1種を含む合金の粒子、又は、銀被覆を有する、銅、ニッケル、銅合金、若しくはニッケル合金の粒子であることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性粒子が、導電性カーボン粉末、又は導電性カーボンファイバーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む混合物と、カーボンナノチューブ及び式(1)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液とを混合して形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
式(1)中、R及びR´が、独立して、無置換若しくは置換基を有する炭素数2〜4のアルキル基を表し、Xがエチレン基を表し、nが1又は2を表すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む混合物と、カーボンナノチューブ及び式(1)
【化2】

(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液とを混合することを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項7】
カーボンナノチューブ及び式(1)
【化3】

(式中、R及びR´は、独立して、水素原子、又は、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液に、バインダー樹脂又はその溶液を加え得られた液状混合物に、導電性粒子を加えて混合することを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項8】
カーボンナノチューブ及び式(1)で表されるポリエーテル系溶媒を含む分散液から溶媒の一部を揮発させた後、前記混合物又はバインダー樹脂を加えることを特徴とする請求項6又は7に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項9】
式(1)中、R及びR´が、独立して、無置換若しくは置換基を有する炭素数2〜4のアルキル基を表し、Xがエチレン基を表し、nが1又は2を表すことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成されたことを特徴とする回路配線。
【請求項11】
請求項10記載の回路配線の製造方法であって、基材上に導電性ペーストを回路配線の形状に塗布する工程と、塗布した導電性ペーストを導電性を発現するように硬化する工程とを含むことを特徴とする回路配線の製造方法。
【請求項12】
塗布工程が、版式印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法及びディスペンス法の1種又は2種以上を用いることを特徴とする請求項11記載の回路配線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−165594(P2010−165594A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8033(P2009−8033)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】