説明

導電性ペーストおよびそれを用いた配線基板

【課題】高導電性を有するファインパターンの形成精度に優れた導電性ペーストおよびそれを用いた配線基板を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の導電性ペーストは、金属粉末、ガラスフリットおよび有機ビヒクルを主成分とする導電性ペーストであって、金属粉末は、一次粒子の平均粒径が0.1〜1μmの球状粒子(A)が金属粉末全体の50〜99重量%と、一次粒子の平均粒径が50nm以下の球状粒子(B)が金属粉末全体の1〜50重量%からなる。また、E型回転粘度計により、常温(25℃)で測定した回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)と回転数10rpmにおける粘度(V10rpm)との比(V1rpm/V10rpm)が4以上10以下であり、回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)が400Pa・s以上1200Pa・s以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配線回路を形成する際に用いられる導電性ペースト、および当該導電性ペーストを用いて得られる配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
固形分として主に金属粉末を含有する導電性ペーストは、良好な導電性を示すことから、電子機器部品に幅広く使用されており、例えば、配線基板の電気回路を形成する場合に導電路として使用されている。この導電性ペーストとしては、例えば、金属粉末とガラスフリットとを、有機ビヒクルに分散してペースト状にしたものが使用される。そして、当該導電性ペーストを、スクリーン印刷等の印刷法により、セラミックやガラス基板等にパターニングして塗布し、次いで、高温で焼成することにより、有機ビヒクルを蒸散させ、金属粉末間を焼結させて連続膜を形成する。このような導電性ペーストは、金属粉末間が焼結され、連続膜が形成されるため、良好な導電性を得ることができる。
【0003】
ここで、導電性ペーストが使用される電子機器部品の高密度化を図るためには、微細な配線パターン(または、ファインパターン)を効率よく形成する必要がある。そこで、形成されるファインパターンの形成精度を向上させるための導電性ペーストが開示されている。
【0004】
例えば、平均粒子径が0.8μm以下の球状の導電性粉末と、有機ビヒクルとを含有し、導電性粉末の粒子径の中央値D50と検出可能な粒子径の最小値Dminとの比(D50/Dmin)が2〜5である導電性ペーストが提案されている。この導電性ペーストを使用することにより、導体パターンの表面のうねり等が低減され、形状精度に優れたファインパターンを形成することができると記載されている。また、当該導電性ペーストにおいて、ブルックフィールド回転粘度計により、4番スピンドルを用いて1rpmの条件で測定した粘度V1rpmと10rpmの条件で測定した粘度V10rpmとの比(V1rpm/V10rpm)が2〜5であることが好ましいとの記載がある。このような粘度特性を有する導電性ペーストを使用することにより、所定のパターンに塗布された導電性ペーストが垂れにくくなり、形状維持性が良好になると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、粒子径100μm以下である球状の金属粉末と、バインダー樹脂として、熱硬化型フェノール樹脂を含有し、金属粉末100重量部に対してポリエチレン樹脂を0.01〜5wt%含む導電性ペーストが提案されている。この導電性ペーストを使用することにより、形状精度が良好なファインパターンが形成でき、高品質で高精細な導体回路の製造が可能になると記載されている(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開2004−139838号公報
【特許文献2】特開平9−310006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般に、スクリーン印刷により、配線基板上にファインパターンを形成する際には、細かい開口径からなるメッシュを有するスクリーン版を使用する。従って、上記従来技術のごとく、金属粉末の粒径が大きいと、版詰まりが生じる、ラインエッジ部において金属粉末が粗密になる部分が生じる等の不都合が発生するため、金属粉末の粒径を小さくする必要がある。しかし、一般に、金属粉末の粒径が小さくなると、二次凝集を生じやすく、ペースト化が難しくなり、導電性が悪くなる等の問題があるため、高導電性とファインパターン印刷性を両立できる導電性ペーストが求められていた。
【0007】
また、ファインパターン印刷を行うためには、導電性ペーストのレオロジーの調整や版抜け性、版離れ性といった印刷性を改善する必要があるため、一般に、チクソトロピー剤等の添加剤が使用されている。しかし、例えば、当該チクソトロピー剤として使用されるエアロジルやカーボンブラック等の無機粉末は、金属粉末に比し、導電性が劣るため、当該添加剤を使用すると導電性ペースト全体の導電性が低下してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、高導電性を有するファインパターンの形成精度に優れた導電性ペーストおよびそれを用いた配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、金属粉末、ガラスフリットおよび有機ビヒクルを主成分とする導電性ペーストであって、金属粉末は、一次粒子の平均粒径が0.1〜3μmの球状粒子(A)が金属粉末全体の50〜99重量%と、一次粒子の平均粒径が50nm以下の球状粒子(B)が金属粉末全体の1〜50重量%を主成分とし、かつE型回転粘度計により、25℃で測定した回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)と回転数10rpmにおける粘度(V10rpm)との比(V1rpm/V10rpm)が4以上10以下であり、回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)が400Pa・s以上1200Pa・s以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の構成によれば、比較的粒径の大きい球状粒子(A)の粒子間に粒径の小さい球状粒子(B)が充填されるため、金属粉末の充填密度が高くなり、結果として、導電性を向上させることが可能になる。また、導電性ペーストを基材上に印刷し、ファインパターンにより配線を形成する際に、配線中の金属粉末の密度をより均一にできるため、ファインラインのラインエッジ部において、金属粉末が低密度になる部分ができるのを回避することができる。従って、体積抵抗の上昇を抑制することが可能になり、結果として、高導電性を有するファインパターンを形成することが可能になる。また、導電性ペーストを印刷する際に、スクリーン版からの導電性ペーストの版抜け性を良くすることができ、塗布されたペーストを垂れにくくすることが可能になる。従って、最適なレベリング性能を維持した状態で、ファインパターンの形成精度を向上させることが可能になるため、結果として、印刷性が向上することになる。さらに、分散性に優れ、比表面積が大きい球状粒子(B)がチクソトロピー剤として作用するため、金属粉末に比し、導電性が劣る添加剤を使用する必要がなくなり、結果として、添加剤付与により導電性ペースト全体の導電性が低下するという不都合を回避することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導電性ペーストであって、有機ビヒクルを構成する溶剤の沸点が200℃以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の構成によれば、使用する溶剤の沸点が高いため、例えば、スクリーン印刷によりファインパターンを形成する際に、導電性ペーストの耐乾燥性が向上し、スクリーン版の目詰まりを起こしにくくなる。従って、連続印刷を行う際にもファインパターンの形成精度を向上させることが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の導電性ペーストであって、有機ビヒクルは樹脂と溶剤との混合物であり、樹脂の構成成分として、エチルセルロースを樹脂成分の合計値に対して60重量%以上含有することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の構成によれば、スクリーン印刷等により、導電性ペーストを基材へ塗布する際に、導電性ペーストを均質にし、印刷パターンのにじみや流れを抑えることが可能になり、結果として、スクリーン版からの導電性ペーストの版抜け性や版離れ性を良くすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の導電性ペーストであって、フタレート系可塑剤を含有するとともに、導電性ペースト全体に対するフタレート系可塑剤の含有量が0.1重量%以上3重量%以下であることを特徴とする。なお、ここでの可塑剤とは、導電性ペーストのレオロジーを調整するために使用されるものをいい、有機ビヒクルを構成する溶剤とは異なる特性を有するものである。
【0016】
請求項4に記載の構成によれば、スクリーン印刷等により連続印刷を行う際に、耐乾燥性を向上させることが可能になる。
【0017】
なお、本発明の金属粉末は、金属単体、合金および複合金属から選ばれるものであれば良く、請求項5に記載の発明のように、金属粉末が、白金、金、銀、銅、ニッケル、およびパラジウムから選ばれる1種以上の金属または合金であることが好ましい。特に、導電性、信頼性等の観点から、銀を使用することがより好ましい。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の導電性ペーストであって、球状粒子(B)のBET比表面積が4.0m/g以上であることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の構成によれば、球状粒子(B)の分散性が良好で、ペースト中の球状粒子(B)の分散を均一にすることができるため、局所的な体積抵抗の上昇を抑制することが可能になり、導電性を向上させることが可能になる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性ペーストであって、ガラスフリットが粉末状であり、その平均粒径が2μm以下であることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の構成によれば、ガラスフリットが偏析しにくく、また導電性ペースト中での分散性にも優れるため高導電性を得ることができるとともに、ファインパターンを形成する際に、ガラスフリットがメッシュに目詰まりするのを回避することが可能になる。
【0022】
なお、この場合、環境への配慮から、請求項8に記載の発明のように、鉛を含まないガラスフリットを使用することが好ましい。
【0023】
請求項9に記載の発明は、基材上に、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の導電性ペーストを印刷し、配線を形成したことを特徴とする配線基板である。
【0024】
請求項9に記載の構成によれば、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の導電性ペーストを使用するため、例えば、スクリーン印刷等の方法により、基材上に、高導電性を有する配線が形成された配線基板を得ることができる。
【0025】
また、本発明の請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の導電性ペーストは、高導電性を有するファインパターンの形成精度に優れるという特性を備えているため、基材上に、導電性が高く、配線の幅が100μm以下のファインパターンが形成される配線基板に好適に使用される。特に、請求項10に記載の発明のように、請求項9に記載の配線基板であって、配線の幅が25μm以上100μm以下であり、かつ体積抵抗率が7μΩ・cm以下である配線基板に好適に使用される。
【0026】
なお、この場合、配線基板上の全ての配線の幅を25μm以上100μm以下にする必要はなく、本発明の配線基板は、幅が25μm以上100μm以下の配線を含むものであれば良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高導電性を有するファインパターンを形成することが可能になるとともに、ファインパターンの形成精度を向上させることが可能になるため、結果として、印刷性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明の金属粉末には、一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3μm以下の球状粒子(A)と、一次粒子の平均粒径が50nm以下の球状粒子(B)の2種類が使用される。このうち、球状粒子(A)については市販されているものを使用することができる。なお、球状粒子(A)の一次粒子の平均粒径は、0.1μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは、0.1μm〜1μmのものを用いるのが良い。なお、平均粒子径とは、50%粒径(D50)を指し、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置(日機装(株)製、ナノトラック(登録商標)粒度分布測定装置UPA−EX150)等により測定できる。
【0029】
一方、球状粒子(B)は、金属化合物を湿式還元処理することにより作製することができる。より具体的には、水もしくは水と低級アルコールの混合物に水溶性の金属化合物を加えて溶解し、その後、還元剤と表面処理剤を溶解した水溶液を加え、30℃以下で攪拌することにより作製できる。
【0030】
例えば、金属粉末として、銀粉末を用いる場合においては、純水とエタノールを等量で混合した液に硝酸銀を溶解し、アンモニア水を加えてpHを11.3に調整し、溶液を透明にする。次いで、別に純水とエタノールを等量で混合した液に、還元剤としてL−アスコルビン酸、分散剤としてポリアクリル酸を溶解する。また、分散剤を使用するのは、還元反応により析出する銀の微粒子の析出反応の進行を緩やかに制御することにより、複数個の微粒子が凝集して大粒径化するのを防止するためである。次いで、還元剤と分散剤を溶解した溶液を25℃に保ち、当該溶液を攪拌しながら、先に作製した硝酸銀の溶液を徐々に滴下することにより、銀の微粒子を析出させ、その後、洗浄回収することにより、平均粒径20nmの球状銀粒子(B)を得ることができる。なお、他の金属粉末についても、同様の操作により、微小な金属粉末を得ることができる。
【0031】
そして、本発明においては、2種類の大きさの異なる球状粒子(A)および(B)を一定比率で混合した金属粉末を用いる構成としている。ここで、金属粉末全体における、球状粒子(B)の含有割合が1重量%未満であると、球状粒子(A)の周りに球状粒子(B)が十分に行き渡らないため、焼結時に十分な導電経路が形成されない。一方、球状粒子(B)が金属粉末全体の50重量%を超えると、球状粒子(A)を球状粒子(B)が完全に取り囲んだ状態となり、導電性を十分に向上させることができるが、球状粒子(B)の使用量が多くなるため、コストが高くなる。従って、球状粒子(A)を金属粉末全体の50〜99重量%、球状粒子(B)を金属粉末全体の1〜50重量%の範囲で使用するのが良いと言え、球状粒子(A)を金属粉末全体の90〜97重量%、球状粒子(B)を金属粉末全体の3〜10重量%の範囲で用いるのがさらに好ましい。
【0032】
このような構成とすることにより、比較的粒径の大きい球状粒子(A)の粒子間に粒径が50nm以下である小さい球状粒子(B)が充填されるため、金属粉末の充填密度が高くなり、結果として、低温の焼結温度(例えば、450℃以下)で導電性を向上させることが可能になる。また、導電性ペーストをスクリーン印刷法等により基材上に印刷し、ファインパターンにより配線を形成する際に、配線中の金属粉末の密度をより均一にできるため、ファインラインのラインエッジ部において、金属粉末が低密度になる部分ができるのを回避することができる。従って、体積抵抗の上昇を抑制することが可能になり、結果として、高導電性を有するファインパターンを形成することが可能になる。また、ファインパターンを形成する際に、金属粉末がスクリーンのメッシュに目詰まりするのを回避することができるため、ファインパターンの形成精度を向上させることが可能になる。さらに、球状粒子(A)と球状粒子(B)を上述の範囲で用いることにより、コストを抑制することが可能になる。なお、導電性ペースト全体に対する金属粉末の含有量は、導電性を確保する観点から、60重量%以上であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の導電性ペーストは、E型回転粘度計により、25℃でローターNo.7を用いて測定した回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)が400Pa・s以上1200Pa・s以下(好ましくは、600Pa・s以上900Pa・s以下)のものを使用するのが良い。導電性ペーストの粘度が高すぎると、導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、スクリーン版からの導電性ペーストの版抜け性が悪くなり、また、導電性ペーストの粘度が低すぎると、塗布されたペーストが垂れやすくなり、いずれの場合も、ファインパターンを形成するのが困難になるからである。
【0034】
また、本発明の導電性ペーストは、E型回転粘度計により、常温でローターNo.7を用いて測定した回転数1rpmにおける粘度と、回転数10rpmにおける粘度(V10rpm)との比(V1rpm/V10rpm)が、4以上10以下(好ましくは、6以上8以下)であるものを用いる構成としている。このような粘度比の範囲内において、回転数が10rpmにおける粘度(V10rpm)を低くすることにより、導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、スクリーン版からの導電性ペーストの版抜け性が良くなり、また、上述の範囲内(400Pa・s以上1200Pa・s以下)で回転数が1rpmにおける粘度(V1rpm)を高くすることにより、塗布されたペーストが垂れにくくなる。従って、最適なレベリング性能を維持した状態で、ファインパターンの形成精度を向上させることが可能になるため、結果として、印刷性が向上することになる。
【0035】
また、一般に、これらの粘度、または粘度比を調整する際に、上述のチクソトロピー剤等の添加剤を使用するが、本発明においては、分散性に優れ、比表面積が大きい、一次粒子の平均粒径が50nm以下の球状粒子(B)を使用する構成としている。従って、当該球状粒子(B)がチクソトロピー剤として作用するため、金属粉末に比し、導電性が劣る添加剤を使用する必要がなくなり、結果として、導電性ペースト全体の導電性を低下させることなく、粘度、または粘度比を調整する(即ち、上述の、回転数10rpmの粘度を低くできるとともに、1rpmの粘度を高くする)ことが可能になる。なお、これらの粘度、または粘度比の調整は、有機ビヒクルを構成する溶剤の種類、有機ビヒクルを構成する樹脂の種類、これらの配合割合、および導電性ペースト全体に対する有機ビヒクルの含有量等によっても調整することができる。
【0036】
また、球状粒子(B)のBET比表面積は、使用する球状粒子(B)の分散性を良好にし、ペースト中の球状粒子(B)の分散を均一にして、局所的な体積抵抗の上昇を抑制することにより、導電性を向上させる観点から、4.0m/g以上である必要がある。このBET比表面積の調整は、球状粒子(B)の平均粒径である50nm以下において、当該球状粒子(B)の平均粒径を調整することにより行うことができる。なお、BET比表面積の上限については特に限定されないが、200m/g以下であることが好ましい。BET比表面積が、この上限値を超えると、球状粒子(B)の平均粒径が小さくなりすぎて、却って凝集させないで取り扱うことが困難になるからである。
【0037】
ガラスフリットは、形成されたパターンと基材との密着力を向上させることを目的として使用される結合剤である。このガラスフリットの種類は、市販品から選択することができ、また、環境への配慮から鉛を含まないガラスフリットを使用するのが良い。このような鉛フリーのガラスフリットで、かつ、作業点が450℃以下と低温なものとしては、Bi系のガラスフリットが挙げられる。
【0038】
また、ガラスフリットのサイズに関しては、使用する金属粉末の粒径が小さいため、ガラスフリットの粒径が大きくなると偏析しやすくなり、結果として、導電性に影響を与える場合がある。また、スクリーン印刷により、ファインパターンを形成する際には、細かい開口径からなるメッシュを有するスクリーン版を使用するため、ファインパターンを形成する際に、当該ガラスフリットがメッシュに目詰まりする場合がある。従って、使用するガラスフリットのサイズは、平均粒径が2μm以下であり、また粒径バラツキがあるため、最大粒径が50μm以下のものを使用するのが良い。このようなガラスフリットを使用することにより、偏析しにくく、また導電性ペースト中での分散性にも優れるため高導電性を得ることができるとともに、ファインパターンを形成する際に、ガラスフリットがメッシュに目詰まりするのを回避することが可能になる。
【0039】
なお、ガラスフリットの配合量は、微量から使用できるが、金属粉末とガラスフリットの合計値に対して、0.1重量%以上15重量%以下の配合量で使用すると、導電性ペーストと基材の密着力が確保でき、好ましい。
【0040】
また、本発明において使用される有機ビヒクルは、樹脂と溶剤との混合物であり、金属粉末とガラスフリットを均一に混合した状態を維持し、かつ、スクリーン印刷等により、導電性ペーストを基材へ塗布する際に、導電性ペーストを均質にし、印刷パターンのにじみや流れを抑え、スクリーン版からの導電性ペーストの版抜け性や版離れ性を良くする特性を必要とする。従って、これらの特性を維持する観点から、セルロース系樹脂やアクリル系樹脂を溶剤に溶解したものを好適に使用することができる。より具体的には、例えば、エチルセルロースやニトロセルロースが好ましく、安全性、安定性等の観点から、エチルセルロースが特に好ましい。また、これらの樹脂を混合して使用することもできるが、上述の特性を維持する観点から、有機ビヒクルを構成する溶剤に溶解される樹脂の構成成分として、エチルセルロースを樹脂成分の合計値に対して60重量%以上含有することが好ましく、80重量%以上98重量%以下が特に好ましい。
【0041】
溶剤としては、樹脂が可溶であり、ペーストを塗布する基材に対して非腐食性であり、かつ、揮発性の低いものを用いると、耐乾燥性が向上し、印刷作業性が良くなる。従って、これらの特性を維持する観点から、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール、フタル酸ジエチル等の有機溶媒が好適である。また、スクリーン印刷でパターンを形成する際には、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール等の、沸点が200℃以上であり、揮発しにくいものが好ましい。このような沸点の高い溶剤を使用することにより、例えば、スクリーン印刷によりファインパターンを形成する際に、導電性ペーストの耐乾燥性が向上し、スクリーン版の目詰まりを起こしにくくなるため、連続印刷を行う際にもファインパターンの形成精度を向上させることが可能になる。
【0042】
なお、導電性ペースト全体に対する有機ビヒクルの含有量は特に制限されず、スクリーン印刷等の印刷方法に応じて、適宜調整することが可能である。例えば、スクリーン印刷において、印刷される配線の線幅が200μm以下であるようなパターンを描く場合においては、有機ビヒクルとして、分子量10000〜20000のエチルセルロースをブチルカルビトールアセテート等に10〜20重量%溶解したものを好適に使用することができる。
【0043】
また、本発明においては、導電性ペーストのレオロジーを調整するために、従来、導電性ペーストに用いられているチクソトロピー剤、レベリング剤、可塑剤等の各種添加剤を使用することができる。例えば、スクリーン印刷等により連続印刷を行う際には、耐乾燥性が重要な特性となるが、可塑剤を添加することにより、耐乾燥性を向上させることができる。この可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット誘導体、ピロメリット誘導体、ステアリン酸誘導体、オレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、リシノール誘導体、水素添加ヒマシ油およびその誘導体が好適に使用できる。また、これらの可塑剤のうち、耐乾燥性を向上させる観点から、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体等のフタレート系可塑剤が特に好ましい。より具体的には、フタル酸誘導体としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート等が好ましく、イソフタル酸誘導体としては、例えば、ジメチルイソフタレート等が好ましい。導電性ペースト全体に対する可塑剤の含有量は、0.1重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上3重量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
また、本発明の導電性ペーストは、例えば、基材(ガラス基材等)の上に、高導電性を有する配線や電極等の電気回路を形成する場合に好適に使用される。より具体的には、本発明の導電性ペーストを、従来、公知の印刷方法(特に、好ましくはスクリーン印刷法)により、基材上にパターニングにより塗布して印刷し、次いで、高温で焼成することにより、金属粉末間を焼結させて、基材上に所望の配線や電極等の電気回路が形成された配線基板を得ることができる。
【0045】
また、本発明の導電性ペーストは、上述のごとく、形成精度に優れ、高導電性を有するファインパターンを形成するという優れた特性を備えている。従って、本発明の導電性ペーストは、基材上に複数の配線が形成された配線基板を製造する場合であって、導電性が高く、配線の幅(ライン幅)が100μm以下のファインパターンを形成する場合に好適に使用され、配線の幅が25μm以上100μm以下(好ましくは、25μm以上50μm以下)で、当該配線の体積抵抗率が7μΩ・cm以下のファインパターンを形成する場合に特に好適に使用される。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0047】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
有機ビヒクルとして、ブチルカルビトールアセテートに分子量18000のエチルセルロースを加熱溶解し、導電性ペースト全体に対する含有量が12重量%の溶液を作製した。さらに、この溶液に、導電性ペースト全体に対する含有量が3重量%となるように、ジオクチルフタレートを加えた。なお、この場合の、溶剤であるブチルカルビトールアセテートに溶解される樹脂成分(エチルセルロースとジオクチルフタレート)の合計値に対するエチルセルロースの含有量は80重量%である。次いで、この溶液に、金属粉末として、表1に示す種類、および量の銀粉末を加え、回転攪拌脱泡機を用いて、均一に混合し、さらに表1に示す種類、および量のガラスフリットを加えて混合を継続し、観察により均一と判断してから、この溶液を三本ロールミルに通過させて、表1の実施例1〜4、比較例1〜2に示す導電性ペーストを作製した。なお、実施例1〜4、および比較例1の作製において使用された球状粒子(C)のBET比表面積を自動比表面積測定装置(マルバーン社製、ジェミニ2375)を用いて測定したところ、5.7m/gであった。各導電性ペーストは、実施例1〜4、および比較例1〜2の全てにおいて、常態における外観の異常等は観察されなかった。次いで、各導電性ペーストにおける回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)と回転数10rpmにおける粘度(V10rpm)の測定を行い、粘度比(V1rpm/V10rpm)を計算した。なお、粘度は、E型回転粘度計(東機産業(株)製、TV−20型粘度計 コンプレートタイプ(TVE−20H))により、ローターNo.7を用いて常温(25℃)にて測定した。
【0048】
次いで、実施例1〜4、および比較例1〜2の導電性ペーストを、スクリーン印刷機(ニューロング(株)製、LS−150TVA)により、ガラス基材(旭硝子(株)製、PD200)の上に、所定のパターンを印刷し、配線を形成した。このスクリーン印刷には、SUS500メッシュ(径18mm、目開き33μm)のスクリーン版(東京プロセスサービス(株)製)を使用した。また、スクリーン版のパターンは、配線(ライン)の幅が25μm、30μm、40μmおよび50μm(スクリーン版の設計値)であり、配線間隔(ライン間隔)は100μm、配線長さは25mmである。次いで、恒温槽を用いて、150℃で30分間加熱して溶剤を揮発させた後に、450℃の焼結温度の焼結炉に移して30分間加熱焼結した。焼結後、ライン幅が30μmの配線に対して、ライン長さ25mmでの抵抗値を4端子法により測定した。さらに、レーザ顕微鏡(KEYENCE製、VK−8510)を用いてラインの断面積を測定し、体積抵抗率を算出した。
【0049】
また、光学顕微鏡(LEICA社製、MZ12)を用いて、各導電性ペーストの各ライン幅における配線形成性についての評価を行った。具体的には、光学顕微鏡により、印刷欠陥の有無(導電性ペーストの均質性、配線における断線の有無)について観察した。評価指標は、各ライン幅において形成された66本の配線のうち、◎:印刷欠陥が0本、○:印刷欠陥が1〜6本、△:印刷欠陥が7〜20本、×:印刷欠陥が21本以上で行った。なお、光学顕微鏡の倍率は、ライン幅が25μm、30μmの配線については157.5倍、40μm、50μmの配線については125倍で行った。以上の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

表1から判るように、ライン幅が40μm、および50μmの場合は、実施例1〜4、および、比較例1〜2のいずれの場合においても、優れた配線形成性を示した。また、ライン幅が30μmの場合は、実施例1、2において、優れた配線形成性を示し、実施例3、4においては良好な配線形成性を示したが、比較例1〜2においては、ライン幅が40μm、および50μmの場合に比し、配線形成性が低下した。また、ライン幅が25μmの場合は、実施例1〜4においては良好な配線形成性を示したが、比較例1においては、ライン幅が30μmの場合より、配線形成性が更に低下し、比較例2においては、ライン幅が30μmの場合と同様に低い配線形成性が示された。これは、比較例1においては、回転数1rpmにおける粘度が1200Pa・sを超えており、高い値となっているためであると考えられる。また、実施例1〜4においては、ライン幅30μmの配線における体積抵抗率が、判断基準である7μΩ・cm以下の値が得られ、高い導電性を示しており、後述の図1(実施例1の導電性ペーストを用いて形成されたライン幅50μmの配線の光学顕微鏡写真)に示す様に、緻密で均質なラインが形成されている。しかし、比較例1においては、体積抵抗率が、7μΩ・cmを超え、十分な導電性が得られていない。また、比較例2においては、後述の図2(ライン幅50μmの配線の光学顕微鏡写真)に示す様に、ラインが不均質で、特に銀が粗密になる部分が生じており、ライン幅30μmの配線において、ライン抵抗を測定することができず、体積抵抗値を算出することができなかった。即ち、比較例2の体積抵抗率は、実施例1〜4、比較例1よりも大きいことが示された。以上より、実施例1〜4の導電性ペーストは、ファインパターンの形成精度に優れているとともに、実施例1〜4の導電性ペーストにより形成された配線は、低温の焼結温度(450℃)で高い導電性を示すことが判る。
【0051】
また、実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線(ライン幅50μm)の光学顕微鏡写真を図1に、比較例2の導電性ペーストを用いて形成された配線(ライン幅50μm)の光学顕微鏡写真を図2に示す。図1と図2の比較からも判るように、実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線は、比較例2の導電性ペーストを用いて形成された配線に比べて、より緻密かつ均質な状態で形成されており、ファインパターンの形成精度が良好であることが判る。
【0052】
(実施例5)
導電性ペーストを用いて形成された配線における、ライン幅に対する体積抵抗率を測定し、導電性の評価を行った。具体的には、上述の実施例1、および比較例2の導電性ペーストを、スクリーン印刷機(ニューロング(株)製、LS−150TVA)を用いて、ガラス基材(旭硝子(株)製、PD200基板)の上に印刷し、配線を形成した。このスクリーン印刷には、SUS500メッシュ(径18mm、目開き33μm)のスクリーン版(東京プロセスサービス(株)製)を使用した。また、実施例1の導電性ペーストの印刷には、配線(ライン)の幅が、25μm、30μm、40μm、50μm、60μm、80μm、100μm、および150μm(スクリーン版の設計値)であり、配線間隔(ライン間隔)が100μm、配線長さが25mmであるスクリーン版を使用した。また、比較例2の導電性ペーストの印刷には、配線(ライン)の幅が、60μm、80μm、100μm、および150μm(スクリーン版の設計値)であり、配線間隔(ライン間隔)が100μm、配線長さが25mmであるスクリーン版を使用した。次いで、恒温槽を用いて、150℃で30分加熱して溶剤を揮発させた後に、450℃の焼結温度の焼結炉に移して30分間加熱焼結した。焼結後、各ライン幅の配線に対して、ライン長さ25mmでの抵抗値を4端子法により測定した。さらに、レーザ顕微鏡(KEYENCE製、VK−8510)を用いてラインの断面積を測定し、体積抵抗率を算出した。以上の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

表2から判るように、実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線は、全てのライン幅の場合で体積抵抗率が7μΩ・cm以下となっている。一方、比較例2においては、ライン幅が100μm、150μmの場合は、体積抵抗率が7μΩ・cm以下となっているが、ライン幅が60μm、80μmの場合は、体積抵抗率が高く、十分な導電性が得られていない。このことから、実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線は、比較例2の導電性ペーストを用いて形成された配線に比べて、体積抵抗率が低く、実施例1の導電性ペーストは高導電性を有するファインパターンの形成に優れており、特に、ライン幅が100μm以下のファインパターンを形成する際に好適に使用できることが判る。
【0054】
(実施例6)
スクリーン印刷法により連続して(繰り返して)導電性ペーストを基材上に印刷し、この際、形成されるファインパターンのライン幅を測定することにより、ファインパターンの形成精度を検討した。より具体的には、実施例1の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷機(ニューロング(株)製、LS−150TVA)により、ガラス基材(旭硝子(株)製、PD200基板)の上に、連続印刷を行い、配線を形成した。このスクリーン印刷には、SUS325メッシュ(径28mm、目開き41μm)のスクリーン版(東京プロセスサービス(株)製)を使用した。また、スクリーン版のパターンは、配線(ライン)の幅が60μm(スクリーン版の設計値)であり、配線間隔(ライン間隔)は100μm、配線長さは25mmである。なお、ファインパターン形成精度の評価には、ガラス基材への印刷回数が1回目と500回目の導電性ペーストにより形成された配線を使用した。なお、連続印刷試験における印刷回数については、最初の1回目はスクリーン版にペーストが充填されておらず、ラインが形成されなかったため、この最初の1回目を除き、2回目を連続印刷試験の1回目とした。後述の実施例7においても同様である。次いで、恒温槽を用いて、150℃で30分加熱して溶剤を揮発させた後に、450℃の焼結温度の焼結炉に移して30分間加熱焼結した。焼結後、印刷回数が1回目と500回目の導電性ペーストにより形成された配線におけるライン幅の最大値と最小値を測定するとともに、これらの平均値を算出し、連続印刷におけるファインパターン形成精度を評価した。その結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

表3から判るように、実施例1の導電性ペーストによれば、スクリーン印刷法により連続して印刷を行った場合においても、ライン幅の最大値、最小値、およびこれらの平均値が殆ど変化しておらず、形状精度に優れたファインパターンを形成することができることが判る。これは、実施例1の導電性ペーストが、表1に示す粘度、および粘度比を有するため、実施例1の導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、スクリーン版からの導電性ペーストの版抜け性を良くすることができ、また、塗布された導電性ペーストを垂れにくくすることが可能になるためであると考えられる。また、実施例1の導電性ペーストにおいて使用される銀粉末に、一次粒子の平均粒径が50nm以下(20nm)の球状粒子(B)を使用しているため、ファインパターンを形成する際に、銀粉末がメッシュに目詰まりするのを回避することが可能になるためであると考えられる。
【0056】
(実施例7)
スクリーン印刷法により連続して導電性ペーストを印刷することにより形成された配線における、ライン幅に対する体積抵抗率を測定し、導電性の評価を行った。具体的には、実施例1の導電性ペーストを、スクリーン印刷機(ニューロング(株)製、LS−150TVA)を用いて、ガラス基材(旭硝子(株)製、PD200基板)の上に、連続印刷を行い、配線を形成した。このスクリーン印刷には、SUS325メッシュ(径28mm、目開き41μm)のスクリーン版(東京プロセスサービス(株)製)を使用した。また、スクリーン版のパターンは、配線(ライン)の幅が60μm、80μm、100μm、120μm、および150μm(スクリーン版の設計値)であり、配線間隔(ライン間隔)は100μm、配線長さは25mmである。そして、印刷回数が1回目、100回目、200回目、300回目、400回目、および500回目の配線基板について、下記の評価を行った。
【0057】
配線形成後、恒温槽を用いて、150℃で30分加熱して溶剤を揮発させた後に、450℃の焼結温度の焼結炉に移して30分間加熱焼結した。焼結後、上記各印刷回数の導電性ペーストにより形成された各ライン幅の配線に対して、ライン長さ25mmでの抵抗値を4端子法により測定した。さらに、レーザ顕微鏡(KEYENCE製、VK−8510)を用いてラインの断面積を測定し、体積抵抗率を算出した。そして、各ライン幅における平均体積抵抗率(例えば、ライン幅60μmについては、1回目、100回目、200回目、300回目、400回目、および500回目の導電性ペーストにより形成されたライン幅60μmの各配線における体積抵抗率の平均値)を算出して導電性の評価を行った。以上の結果を、上述の実施例5における比較例2の導電性ペーストの体積抵抗率とともに表4に示す。
【0058】
【表4】

表4から判るように、実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線は、スクリーン印刷法により連続して印刷を行った場合においても、体積抵抗率が4μΩ・cm以下となっており、特に、配線の幅が100μm以上150μm以下のファインパターンの場合には、体積抵抗率が3μΩ・cm以下となっている。即ち、このことから、実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線は、スクリーン印刷法により連続して印刷を行った場合においても、体積抵抗率が低く、実施例1の導電性ペーストは高導電性を有するファインパターンの形成に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活用例としては、高導電性を必要とする配線基板上に電気回路を形成する際に用いられる導電性ペーストが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1の導電性ペーストを用いて形成された配線の光学顕微鏡写真である。
【図2】比較例2の導電性ペーストを用いて形成された配線の光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末、ガラスフリットおよび有機ビヒクルを主成分とする導電性ペーストであって、前記金属粉末は、一次粒子の平均粒径が0.1〜3μmの球状粒子(A)が金属粉末全体の50〜99重量%と、一次粒子の平均粒径が50nm以下の球状粒子(B)が金属粉末全体の1〜50重量%を主成分とし、かつE型回転粘度計により、25℃で測定した回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)と回転数10rpmにおける粘度(V10rpm)との比(V1rpm/V10rpm)が4以上10以下であり、前記回転数1rpmにおける粘度(V1rpm)が400Pa・s以上1200Pa・s以下であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記有機ビヒクルを構成する溶剤の沸点が200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記有機ビヒクルは樹脂と溶剤との混合物であり、前記樹脂の構成成分として、エチルセルロースを樹脂成分の合計値に対して60重量%以上含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
フタレート系可塑剤を含有するとともに、導電性ペースト全体に対する前記フタレート系可塑剤の含有量が0.1重量%以上3重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記金属粉末が、白金、金、銀、銅、ニッケル、およびパラジウムから選ばれる1種以上の金属または合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記球状粒子(B)のBET比表面積が4.0m/g以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記ガラスフリットが粉末状であり、その平均粒径が2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記ガラスフリットが鉛を含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項9】
基材上に、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の導電性ペーストを印刷し、配線を形成したことを特徴とする配線基板。
【請求項10】
前記配線の幅が25μm以上100μm以下であり、かつ体積抵抗率が7μΩ・cm以下であることを特徴とする請求項9に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−216389(P2006−216389A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28239(P2005−28239)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】