説明

導電性ボール搭載方法及び装置

【課題】パッドを備えた基板に導電性ボールを搭載する方法であって、容器によるボールの投げ上げ動作を適切に制御することにより、短時間に且つ精度良く基板のパッド上に導電性ボールを搭載できるようにする。
【解決手段】粘着剤18を塗布したパッド14bを有する基板10を、パッド面を下向きにして、上部が開放のボール収容容器32の上方に配置し、容器を上方へ所定のストロークで移動させ、上昇動作のストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止して容器内のボール22を一括して上方へ投げ出して、粘着剤に付着させる。容器を停止または下方へ移動させて、付着しなかったボールを容器内に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ボールの基板への搭載方法と搭載装置に関し、より詳しく言えば、基板(例えば、配線基板、パッケージ基板、ウエハなど)に設けた外部接続用のパッドに導電性ボールを搭載する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板あるいはウエハなどの基板に形成したパッドに、ほかの電子部品などとの接続用のはんだバンプを形成する場合、従来は印刷によりパッド上にはんだペーストを転写し、加熱により半球状のバンプにしていた。電子部品類の高密度化に伴いパッドのピッチが狭くなるにつれて、この方法では隣接バンプどうしがブリッジにより短絡されてしまうなどの問題が顕在化してきた。印刷法でのバンプの形成は、200μm程度のバンプピッチが限界とされている。
【0003】
より狭いピッチでバンプを形成する場合、前もって球状に形成したはんだボールを利用する技術が用いられている。この技術によれば、例えば特許文献1に記載されたように、基板の各パッドに対応する位置にはんだボール1個が入る貫通孔を有するメタルマスクを位置合せして基板に重ね、マスク上に載せた多数のはんだボールをその貫通孔に1個ずつ落とし込んで、パッドに予め塗布されたフラックスに付着させ、マスク上の余分なはんだボールをスキージで除去後にマスクを取り除くことで、基板にはんだボールを搭載する。
【0004】
200μm以下のような狭ピッチのパッドの基板にバンプ形成用のはんだボールなどの導電性ボールを搭載するのに、上述の特許文献1のように、メタルマスクの貫通孔に1個ずつボールを落とし込む技術による場合は、落とし込みによるパッド上へのボールの配置と、マスク上に残ったボールの除去を、別々の工程で行う必要があり、搭載作業に要する時間が長くなるのが難点である。また、マスク上に残ったボールを除去する際に、マスクとの摩擦のためにボール表面に傷が付きやすく、そうするとボールが酸化しやすくなって、回収したボールを再利用するのに支障を生じる問題もある。
【0005】
また、特許文献2には、吸着治具にボールを吸着させる方法として、ボールを収容した容器を上昇させ、急停止させることにより、ボールを浮遊させる方法が記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、吸着治具にボールを吸着させる方法として、ボールを収容した容器を振動させ、ボールを跳躍させる方法が記載されている。また、ボール収容容器の外辺部を傾斜させた構造についての記載がある。
【0007】
上記の特許文献2〜3においては、吸着治具を用いているため、治具から基板へ再度ボールを搬送して搭載する必要があり、基板へのボールの搭載についての効率及びボールの搭載位置精度が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本願の発明者らは、各パッドに対応する位置にはんだボール1個が入る貫通孔を有するメタルマスクを重ねたはんだボール搭載面を下向きにした基板の下に、はんだボールを入れた容器を配置し、容器の底部にあけた孔から空気を吹き出す、あるいは容器に振動を加えることにより浮上したはんだボールをマスクの貫通孔を通して、パッドに予め塗布されたフラックスに付着させ、その後マスクを取り除くことで、基板にはんだボールを搭載する技術を開発し、これについて特許出願した(特許文献4)。
【0009】
更に、本願の発明者らは、粘着剤を塗布したパッドを有する基板をパッド面を下向きにして配置し、基板のボール搭載面の下にはんだ(導電性)ボールを入れた容器を配置し、容器を上方へ所定のストロークで移動させることにより、ボールを上方に投げ出してパッドに導電性ボールを付着させる方法を提案した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−297886号公報
【特許文献2】特開2001−338942号公報
【特許文献3】特開平9−275109号公報
【特許文献4】特開2009−4732号公報
【特許文献5】特願2008−179477号(特願2007−187229号)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
空気の吹き出しによりボールを浮上させる技術を用いた場合には、吹き出す空気の勢いを強くするとボールが容器の外に飛び出してしまうため、ボールを高密度に一度に浮上させることが難しい。そのため、この場合にはボールの搭載率の向上が求められている。
【0012】
振動によるボールの浮上を利用する場合は、ボールは均一に浮上するが、高密度のパッドパターンになると、浮上したボールどうしが衝突して所定のパッドにうまくボールを供給できないという問題がある。また、容器内のボールの量を増加させると、ボールが浮上しなくなるという問題もある。
【0013】
このように、狭ピッチのパッドの基板にはんだボールなどの導電性ボールを搭載する従来の技術では、搭載時間の短縮、搭載率の向上、搭載されずに回収したボールの簡単な再利用の必要性を同時に満たすことができなかった。
【0014】
本発明の目的は、これらの必要性を同時に満たすことができる、狭パッドピッチ基板への導電性ボールの効率的な搭載を可能にする方法と装置を提供することである。特に、本発明では、先に出願した、特願2008−179477号(特願2007−187229号)明細書において提案した、導電性ボール搭載方法及び装置を更に改良し、容器による導電性ボールの「投げ上げ」についての動作を適切に制御することにより、いっそう短時間に且つ精度良く基板のパッド上に導電性ボールを搭載できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の導電性ボール搭載方法は、
パッドを備えた基板に導電性ボールを搭載する方法であって、
a)粘着剤を塗布したパッドを有する基板を、該パッドの面を下向きにして、導電性ボールを入れた、上部が開放の容器の上方に配置する工程、
b)前記容器を上方へ所定のストロークで移動させ、該上昇動作のストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止することにより、容器内の導電性ボールを一括して上方へ投げ出して、パッドに塗布した粘着剤に付着させる工程、
c)前記容器を停止または下方へ移動させて、落下してくる導電性ボールを容器内に収容する工程、
d)前記容器を所定の下方位置とする工程、
により導電性ボールを搭載することを特徴とする。
【0016】
容器内に収容され、又は容器内に落下した導電性ボールを均一に分布させる工程を含むことを特徴とする。この工程としては、例えば、容器により再度導電性ボールの投げ上げ動作を開始する前に、容器をわずかに上下動させる、或いはわずかに前後左右に移動させる、或いはバイプレータを動作させて容器にわずかな振動を与える、等の方法がある。この動作を行うには、導電性ボールを投げ上げのために容器を上下動させるための駆動手段を用いてもよいが、この動作のために使用する専用のアクチュエータを用いても良い。これにより、容器内の導電性ボールの分布が均一化され、導電性ボールを一括して投げ上げることができる。
【0017】
上記b)−d)の工程を複数回繰り返す場合もある。この場合において、繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作を初回の上昇動作より速くすることが好ましい。或いは、又はそれに加えて、繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作の減速度を初回の上昇動作の減速度より遅くすることが好ましい。
【0018】
各パッドに対応する位置に導電性ボール1個が入る貫通孔を有するマスクを前記基板の導電性ボールを搭載する面に重ねて使用することも可能である。
【0019】
前記各工程を、減圧下、あるいは不活性ガスが充填された雰囲気下で行うことが好ましい。
【0020】
本発明の導電性ボール搭載装置は、パッドを備えた基板に導電性ボールを搭載する装置であって、上部を開放した、導電性ボール収容容器、粘着剤を塗布したパッドを有する基板を、該パッドの面を下向きにして、前記導電性ボール収容容器の上方で保持する基板保持機構と、前記容器を上方へ所定のストロークで移動させ、該上昇動作のストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止することにより、容器内の導電性ボールを一括して上方へ投げ出して、パッドに塗布した粘着剤に付着させるための導電性ボール収容容器の作動機構、を具備することを特徴とする。
【0021】
前記導電性ボール収容容器の作動機構は、容器内に収容され、又は容器内に落下した導電性ボールを均一に分布させるように、該容器の動作を制御する制御部を具備するのが好ましい。
【0022】
前記導電性ボール収容容器の作動機構は、容器の上昇及び下降動作を繰り返すように制御する制御部を具備し、該制御部は、繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作を初回の上昇動作より速くするように制御するのが好ましい。
【0023】
前記導電性ボール収容容器の作動機構は、容器の上昇及び下降動作を繰り返すように制御する制御部を具備し、該制御部は、繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作の減速度を初回の上昇動作の減速度より遅くするように制御するのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板に導電性ボールを短い所要時間で、且つ向上した搭載率で、搭載することが可能になる。特に本発明では、導電性ボールの「投げ上げ」についての定義を明確にした。即ち、容器の上昇動作ストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止するように、容器の動作を制御する。これにより、いっそう短時間に且つ精度良く基板のパッド上に導電性ボールを搭載できるようにするものである。
また、ボールの搭載にマスクを使用した場合、マスク上にボールが付着して残ることがあっても、ボールはマスクの下面に付着しているので、簡単に除去して再利用可能である(メタルマスク貫通孔への落とし込みによりボールを搭載する従来法の場合、ボールはマスクの上面を擦過して回収されるため、表面に傷が付きやすく、傷の部分で酸化し易いことが、回収したボールの再利用を妨げる要因となっている)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】導電性ボールを搭載する基板の例を説明する模式図である。
【図2】本発明による基板への導電性ボール搭載の例を説明する図である。
【図3】導電性ボール搭載後にマスク上に残ったボールを説明する図である。
【図4】本発明による基板への導電性ボール搭載のもう一つの例を説明する図である。
【図5】容器の動作(その1)を示す。
【図6】容器の動作(その2)を示す。
【図7】容器の動作(その3)を示す。
【図8】容器の動作(その4)を示す。
【図9】容器の動作(その5)を示す。
【図10】容器の動作(その6)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明では、粘着剤を塗布したパッドを下向きにして配置した基板に、導電性ボールを下方から投げ上げることにより供給し、導電性ボールを粘着剤に付着させることにより、基板への導電性ボールの搭載を行う。粘着剤としては、フラックスや接着剤、導電性ペースト等を用いることができる。以下においては、粘着剤の一例としてフラックスを使用して、本発明を説明することにする。
【0027】
導電性ボールを搭載する基板は、搭載した導電性ボールから形成したバンプを利用して外部回路へ接続される各種の基板でよい。このような基板の例として、配線基板、パッケージ基板、ウエハなどを挙げることができる。また、パッケージ基板には、ボールグリッドアレイ(BGA)パッケージなども含まれる。
【0028】
基板は、所定のパターンで形成したパッドを有し、パッドの上面にフラックスが塗布される。パッドパターンのピッチは特に限定されないが、本発明では、200μm以下の狭いピッチにも対応可能であり、例えばパッドピッチが100〜200μm程度の基板に導電性ボールを効率よく搭載することができる。フラックスは、搭載する導電性ボールの種類に応じたものが使用される。
【0029】
導電性ボールの径は、例えば140μm、120μm、100μm、80μm、60μm等が可能である。この場合において、パッドの径は、導電性ボールの径に対して約10μm程度大きいのが好適である。また、マスクを使用する場合は、貫通孔の径が導電性ボールの径に対して約20μm程度大きくするのが好適である。
【0030】
図1に、本発明により導電性ボールを搭載する基板の例を示す。この図の基板は、後に切り離される複数(この図では3つ)の個別の基板10の集合体として作製されている。個別の基板10は、本発明により導電性ボールを搭載して加熱(リフロー)した後、図中のAで示した破線の箇所で切り離される。各個別基板10は、コア基板11の上面と下面にそれぞれ形成した上部配線12a及び下部配線12bを有し、上部配線12aと下部配線12bは、コア基板11を貫通するビア13で接続されている。上部配線12a及び下部配線12bは、その一部分として、外部接続のためのパッド14a、14bを含んでいる。パッド14a、14bの部分を除いて、上部配線12a、下部配線12bはソルダレジスト層15a、15bにより覆われている。本発明により導電性ボール20を搭載する下部配線のパッド14bの表面に、粘着剤としてのフラックス18が塗布されている。
【0031】
基板に搭載する導電性ボールの代表例は、はんだボールである。とは言え、本発明では、それ以外の導電性ボールとして、例えば樹脂のコア材をはんだ材料で被覆したものなどを使用することも可能である。
【0032】
次に、図面を参照して、本発明による基板への導電性ボールの搭載を説明する。ここでは、先に図1を参照して説明した両面に配線を形成した基板の片面に、導電性ボールを搭載する例を説明するが、以下で参照する図においては、簡単にするため、ボール搭載面(下面)に形成した配線12bとパッド14b、ソルダレジスト層15b、パッド14b上のフラックス18のみを図示し、そのほかの部材は図示を割愛する。また、以下の説明で参照する図には、導電性ボール搭載後に切り離す個別の基板を2つ有する基板を示すことにする。
【0033】
フラックス18は、例えば、印刷、ドッティング、インクジェット等によりパッド14b上に塗布することができる。なお、図1では、フラックス18はソルダレジスト層15bから突出しているが、フラックス18の厚みは、ソルダレジスト層15の厚さと同じか又はより薄い場合もある。フラックス18は、図1のようにパッド14b上のみに塗布されているのが好ましい。
【0034】
図2(a)に示したように、2つの個別基板10が一緒になった被処理基板に、各パッド14bに対応する位置に導電性ボール1個が入る貫通孔25を有するマスク21を位置合せして重ね、マスク21を重ねた側を下向きにして、基板を保持装置31により保持する。基板保持装置31は、吸着や、機械的な保持手段(例えばクランプなど)によって、上方から基板を保持することができる。
【0035】
保持装置31で保持した基板を、導電性ボール22を収容し、上部を開放した導電性ボール収容容器32の上方に配置する。図示した導電性ボール収容容器32は、上部の開放面積が1つの個別基板10の面積に相当するように設計して、各個別基板10ごとに導電性ボールを搭載するように作製されているが、複数の個別基板、あるいは集合体の全ての個別基板に同時にボールを搭載するように設計することも可能である。
【0036】
導電性ボール収容容器32は、個別基板10のパッド12bの表面のフラックス18に付着するようボール22を供給するために、ボール22を上方へ投げ上げるための導電性ボール投げ上げ装置33に連結している。
【0037】
図示の導電性ボール収容容器32は、底面が平面であって、側壁は落下して来る飛散した導電性ボールが容器内へ収容しやすくなるために上部が外側へ傾斜している。導電性ボール収容容器32の底面形状は、容器内の導電性ボールの分布を均一にするために、平面の他に、角錐面、円錐面、球面、放物面等、或いはこの形状を組み合わせた形状等とすることができる。導電性ボール収容容器の材質としては、SUS等の金属、セラミック及び樹脂等が可能である。絶縁材料の場合は、その表面に導電性の皮膜をコーティングをすることにより、静電気による導電性ボールの偏り、張り付き等が軽減される。
【0038】
次いで、図2(b)に示したように、投げ上げ装置33を作動させて容器32を急上昇させ、投げ上げストロークの上端付近に達したところで、急減速又は急停止する。ここで急減速又は急停止の程度は、重力加速度以上の加速度で容器を減速又は停止させる。これにより、ボール22は一括して上方へ投げ出される。容器32から投げ出されたボール22の一部がマスク21の貫通孔25に入り込み、フラックス18に付着する。投げ上げ装置33が下降動作に移行することで、容器32は下向きに移動し、その容器32内に、フラックス18に付着しなかったボール22が落下して戻る。この場合において、容器32によるボールの投げ上げ後、ボール22の落下前又は落下中に容器32を基板10に近づけることで、容器32内へ落下するボール22の飛散を軽減することができる。
【0039】
このボール22の投げ上げ操作を、全ての貫通孔25内にボール22が入り込んでフラックス18に付着するまで繰り返す。続いて、もう一つの個別基板10について、やはり全ての貫通孔25内にボール22が入り込んでフラックス18に付着するまで、ボールの投げ上げを繰り返す。一回の投げ上げでほぼ全ての貫通孔25内にボール22が入り込んでフラックス18に付着する場合は、投げ上げを繰り返さなくてもよい。
【0040】
導電性ボール22の搭載は、導電性ボール22の融点以下(通常は常温)にて行う。
基板の保持装置31、導電性ボール収容容器32、導電性ボール投げ上げ装置33を含めたボール搭載装置は、大気中に置くことができる。ボール搭載装置は、減圧下、あるいは不活性ガスが充填された雰囲気下に置いてもよく、それにより基板へのゴミの付着、パッド又は導電性ボールの酸化を防止することができる。
【0041】
基板を保持した保持装置31は、ボール22が基板10にぶつかるときの衝撃をやわらげるように、投げ上げ装置33によるボール22の投げ上げ動作に合わせて上下動させてもよい。これにより、基板10又は導電性ボール22の破損を防止することができる。
図2(a)、2(b)には1つの投げ上げ装置33だけを示しているが、ボールを搭載する1つの基板10に対しボール投げ上げ装置33を複数設けて、交互に投げ上げ動作を行ってもよい。これにより、生産効率を高めることができる。
【0042】
投げ上げによる導電性ボール搭載の過程で、フラックス18に付着しなかったボール22は落下して容器32へ戻るが、一部のボール22が、図3に示したようにマスク21上に残ることがある。場合により、ボール22は基板10に付着して残ることもある。マスク21や基板10上に残ったボール22は、全ての個別基板10へのボールの搭載完了後に、一括して除去することができる。そのためには、マスク又は基板上のボールを、空気を吹き付けて飛ばす、吸着ヘッドで吸引して取り除く、刷毛で払い落とす、といった方法を利用することができる。あるいは、保持装置31(図2(a)、2(b))、基板10、マスク21のいずれかに衝撃を加え、マスク21又は基板10に付着した余剰ボールを落とすことにより除去してもよい。
【0043】
本発明で用いる、容器32を所定のストロークで上下方向に移動させることで導電性ボールの投げ上げを可能にする導電性ボール投げ上げ装置33は、例えば、カム機構や、ピストン運動を可能にするシリンダーを利用することにより、ボールの投げ上げを可能にする。ボールの投げ上げのため容器32を移動させる投げ上げ装置33のストロークが長いと動作時間が長くなって生産効率が低下し、ストロークが短いとボールが十分な高さまで上がらない。そのため、投げ上げ装置33のストロークは、一般には0.5〜1000mm、好ましくは10〜50mmとすることができる。投げ上げ装置33による投げ上げ動作の周期が長いと動作時間が長くなって生産効率が低下し、周期が短いと装置の負荷(パワー)が大きくなる。そのため、投げ上げ装置33による投げ上げ動作の周期は、一般には1秒間に0.01〜20回(0.01〜20Hz)、好ましくは1秒間に0.1〜10回(0.1〜10Hz)とすることができる。このような投げ上げ動作によって、容器32内のボール22を一括して基板に向け上方に供給することができる。このため、パッドを高密度パターンで形成した基板であっても、導電性ボールを短時間で搭載することができる。容器32の上死点での基板10と容器32(上面)との間隔は、一般には0.1〜100mm、好ましくは50mm以下とするのが適当である。
【0044】
それに対し、先行技術に示されたように、ボールを入れた容器に振動を加えてボールを浮上させることで基板にボールを搭載する場合、一般に、振動の周期は100〜150Hz程度、振幅は150μm未満である。ボールは、ランダムな動きをして均一に浮上するが、浮上したボールどうしの衝突が起きるため、高密度のパッドパターンになると所定のパッドにうまくボールを供給するのが困難になる。また、容器内のボールの量を増加させると、ボールを浮上させることができなくなってしまう。
【0045】
先に説明した例では、投げ上げたボール22が各パッド14bのフラックス18に付着するのをより確実にする目的で、各パッド14bに対応する位置に導電性ボール1個が入る貫通孔25を有するマスク21を基板に位置合せして重ねて使用した。マスク21は、基板10から離間させて設置してもよい。この場合は、基板10との相対的な位置がずれないように、マスク21は基板10又は保持装置31(図2(a)、2(b))に固定する。場合によっては、このようなマスクは、導電性ボール収容容器32側に設けることも可能である。マスク21を設けた導電性ボール収容容器32を用いて基板10に導電性ボールを搭載する例を、図4(a)、4(b)に示す。
【0046】
また、マスクの使用を省くことも可能である。この場合は、直接、容器32から投げ上げられたボール22が各パッド14bのフラックス18に付着する。この場合において、容器32の上死点での基板10と容器32(上面)との間隔は、一般には0.1〜100mm、好ましくは50mm以下とするのが適当である。
【0047】
ボールを搭載した基板をボール搭載装置から取り出し、ボールのリフロー処理を行う。リフロー処理により加熱されることで、ボールが溶融してパッドに固定される。
【0048】
図5〜図10は導電性ボールを投げ上げるための容器の動作形態を示す。縦軸が導電性ボール収容容器の上下動ストローク(H)、横軸が時間(T)である。図5の例では、導電性ボール収容容器は、上昇動作は短時間で動作し、急停止してボールを回収し、下降時は上昇時に比べゆるやかに動作する例である。この例では、1ストロークの動作を短時間で行える。
【0049】
図6の例では、図5の例の場合の上死点と同じ高さで急減速し、更に上の上死点で停止し、導電性ボールを回収後、下降する。この例では、搭載されなかった導電性ボールの飛び散りを少なく出来る。
【0050】
図7の例では、上昇時に急減速後、上死点で直ちに下降し、途中で停止して導電性ボールを回収し、回収後再度下降する。この例では、図5及び図6の例より下の位置で導電性ボールを回収するために、落下によるエネルギーが大きく容器内の導電性ボールの分布が均一化される。
【0051】
図8の例では、上昇時に急減速後、上死点で直ちに下降し、下死点で停止して導電性ボールを回収する。この例では、短時間で動作でき、また、図5及び図6の例よりも下で導電性ボールを回収するために、容器内の導電性ボールの分布が均一化される。
【0052】
図9の例では、図6に示した例において、2回目の上昇時の速度を1回目の上昇時の速度より速くした例である。2回目は、より強く導電性ボールを投げ上げることが出来、導電性ボールが搭載されていないパッドに確実に導電性ボールを搭載できる。また、基板に付着した余剰の導電性ボールを除去出来る。
【0053】
図10の例では、図6に示した例において、2回目の急減速時の速度を1回目の急減速時の速度より遅くした例である。2回目は、より強く導電性ボールを投げ上げることにより、導電性ボールが搭載されていないパッドに確実に導電性ボールを搭載できる。また、基板に付着した余剰の導電性ボールを除去出来る。
【0054】
以上添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神ないし範囲内において種々の形態、変形、修正等が可能である。例えば、容器について、その底面にボールの径より小さな径の吸引孔を設け、ボールの投げ上げ後に、これらの吸引孔により空気吸引することにより、ボールを飛散させることなく、容器の底面上に回収することができる。
【0055】
また、容器について、ボールを上方へ投げ上げることが出来る空間を確保しながら、側面の外周全面を伸縮性のある素材で覆い、基板に密着させることで投げ上げたボールが周囲に飛散しないようにすることもできる。また、このような伸縮性のある素材を用いる代わりにジャバラを用いることも出来るが、容器上昇時にジャバラの間にボールが挟まる可能性がある。また、このような伸縮性のある素材又はジャバラを用いて容器の周囲を覆う場合は、投げ上げストロークの中間で、基板に密着させることでボール収容容器内は大気圧に近くなる。伸縮性のある素材としては、天然ゴム等を使用できる。
【0056】
ボールを帯電させることにより、ボールの搭載が容易になる。例えば、容器をマイナスに、基板パッドをプラスになるように電圧をかけた状態でボールを投げ上げることで、ボールが帯電し搭載しやすくなる。
【実施例】
【0057】
以下に示す例により、本発明を更に説明する。
【0058】
〔比較例〕
150μmのピッチで直径90μmのパッド(フラックスを塗布したもの)を4000個設けた配線基板に、特許文献2に記載された振動によりボールを浮上させて基板に搭載する方法を用いて、直径60μm、80μm、100μmの3種類のSn/Agはんだボールを搭載した。搭載時には、はんだボールの各直径に応じて、開口径がそれぞれ80μm、100μm、120μmのマスクを、基板の搭載面に重ねて使用した。はんだボールを入れた容器を100Hz、100μmの振幅で10秒間振動させて基板にボールを搭載した後に、ボールが搭載されなかった(ボールがフラックスに付着しなかった)パッドの数を調べた。
【0059】
〔実施例〕
本発明に従ってはんだボールを上方へ投げ上げることで基板に搭載したことを除いて、比較例と同じ実験を繰り返した。はんだボールの投げ上げは、1秒間に2回(2Hz)の周期、及び20mmのストロークで行った。投げ上げを行った時間は、比較例と同じ10秒間であった。
【0060】
比較例と実施例の結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
この結果から明らかなように、本発明によれば、短い時間で、確実に、導電性ボールを基板に搭載することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明では、導電性ボールの「投げ上げ」の動作制御について、容器の上昇動作ストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止する。これにより、短い所要時間で且つ向上した搭載率で、基板に導電性ボールを搭載することが可能となった。したがって、本発明は、ばんだボール等の導電性ボールを配線基板、パッケージ基板、ウエハ等あらゆる基板のパッドに搭載する場合について好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 基板
11 コア基板
12a 上部配線
12b 下部配線
13 ビア
14a、14b パッド
15a、15b ソルダレジスト層
18 フラックス(粘着剤)
20、22 導電性ボール
21 マスク
25 マスクの貫通孔
32 導電性ボール収容容器
33 導電性ボール投げ上げ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドを備えた基板に導電性ボールを搭載する方法であって、
a)粘着剤を塗布したパッドを有する基板を、該パッドの面を下向きにして、導電性ボールを入れた、上部が開放の容器の上方に配置する工程、
b)前記容器を上方へ所定のストロークで移動させ、該上昇動作のストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止することにより、容器内の導電性ボールを一括して上方へ投げ出して、パッドに塗布した粘着剤に付着させる工程、
c)前記容器を停止または下方へ移動させて、落下してくる導電性ボールを容器内に収容する工程、
d)前記容器を所定の下方位置とする工程、
により導電性ボールを搭載することを特徴とする導電性ボール搭載方法。
【請求項2】
容器内に収容され、又は容器内に落下した導電性ボールを均一に分布させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ボール搭載方法。
【請求項3】
前記b)−d)の工程を複数回繰り返す工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ボール搭載方法。
【請求項4】
繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作を初回の上昇動作より速くすることを特徴とする請求項3に記載の導電性ボール搭載方法。
【請求項5】
繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作の減速度を初回の上昇動作の減速度より遅くすることを特徴とする請求項3のいずれか1項に記載の導電性ボール搭載方法。
【請求項6】
各パッドに対応する位置に導電性ボール1個が入る貫通孔を有するマスクを前記基板の導電性ボールを搭載する面に重ねて使用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ボール搭載方法。
【請求項7】
前記各工程を、減圧下、あるいは不活性ガスが充填された雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の導電性ボール搭載方法。
【請求項8】
パッドを備えた基板に導電性ボールを搭載する装置であって、
上部を開放した、導電性ボール収容容器、
粘着剤を塗布したパッドを有する基板を、該パッドの面を下向きにして、前記導電性ボール収容容器の上方で保持する基板保持機構と、
前記容器を上方へ所定のストロークで移動させ、該上昇動作のストローク終盤で重力加速度以上の加速度で減速または停止することにより、容器内の導電性ボールを一括して上方へ投げ出して、パッドに塗布した粘着剤に付着させるための導電性ボール収容容器の作動機構、
を具備することを特徴とする導電性ボール搭載装置。
【請求項9】
前記導電性ボール収容容器の作動機構は、容器内に収容され、又は容器内に落下した導電性ボールを均一に分布させるように、該容器の動作を制御する制御部を具備することを特徴とする請求項8に記載の導電性ボール搭載装置。
【請求項10】
前記導電性ボール収容容器の作動機構は、容器の上昇及び下降動作を繰り返すように制御する制御部を具備し、該制御部は、繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作を初回の上昇動作より速くするように制御することを特徴とする請求項8又は9に記載の導電性ボール搭載装置。
【請求項11】
前記導電性ボール収容容器の作動機構は、容器の上昇及び下降動作を繰り返すように制御する制御部を具備し、該制御部は、繰り返し動作の何回目かには、前記容器の上昇動作の減速度を初回の上昇動作の減速度より遅くするように制御することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の導電性ボール搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−171147(P2010−171147A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11363(P2009−11363)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】