説明

導電性マイエナイト化合物の製造方法

【課題】本発明では、比較的大きな部材にも適用することが可能な、導電性マイエナイト化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、(1)カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合した原料粉末を用いて、マイエナイト化合物粉末を調製する工程と、(2)前記マイエナイト化合物粉末を、300℃以上1200℃未満の温度に保持し、焼結体を得る工程と、(3)前記焼結体を、還元性雰囲気下で1200℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程と、を含むことを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性マイエナイト化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイエナイト化合物は、12CaO・7Alで表される代表組成を有し、三次元的に連結された直径約0.4nmの空隙(ケージ)を有する特徴的な結晶構造を持つ。このケージを構成する骨格は、正電荷を帯びており、単位格子当たり12個のケージを形成する。このケージの1/6は、結晶の電気的中性条件を満たすため、内部が酸素イオンで占められている。しかしながら、このケージ内の酸素イオンは、骨格を構成する他の酸素イオンとは化学的に異なる特性を有しており、このため、ケージ内の酸素イオンは、特にフリー酸素イオンと呼ばれている。マイエナイト化合物は、[Ca24Al2864]4+・2O2−とも表記される(非特許文献1)。
マイエナイト化合物のケージ中のフリー酸素イオンの一部または全部を電子と置換した場合、マイエナイト化合物に導電性が付与される。これは、マイエナイト化合物のケージ内に包接された電子は、ケージにあまり拘束されず、結晶中を自由に動くことができるためである(特許文献1)。このような導電性を有するマイエナイト化合物は、特に、「導電性マイエナイト化合物」と称される。
【0003】
なお、導電性マイエナイト化合物は、通常、(a)マイエナイト化合物の粉末の調製、(b)マイエナイト化合物の焼結体の調製、および(c)マイエナイト化合物への導電性の付与(すなわち、フリー酸素イオンと電子の置換反応処理)、の各工程を経て製造することができる(特許文献2)。
【0004】
ここで、(a)の工程では、炭酸カルシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とが所定の割合で混合され、得られた混合物が大気中で高温に保持される。これにより、マイエナイト化合物粉末が得られる。また、(b)の工程では、得られたマイエナイト化合物粉末が、大気下1200℃〜1350℃程度で焼成され、これによりマイエナイト化合物の焼結体が形成される。さらに、(c)の工程では、得られた焼結体がCO(一酸化炭素)を含む還元性雰囲気で、600℃〜1415℃に保持される。これにより、ゲージ中のフリー酸素イオンが電子に置換され、導電性マイエナイト化合物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006−129675号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009−145200号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.M.Lea,C.H.Desch,The Chemistryof Cement and Concrete,2nd ed.,p.52,Edward Arnold&Co.,London,1956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、導電性マイエナイト化合物は、(a)マイエナイト化合物の粉末の調製、(b)マイエナイト化合物の焼結体の調製、および(c)マイエナイト化合物中のフリー酸素イオンと電子との間の置換反応処理、の各工程を経て製造することができる。
【0008】
しかしながら、このような従来の製造方法は、比較的小さなマイエナイト化合物製の部材の製造には適するものの、以下のように、比較的大きなマイエナイト化合物製の部材の製造には、適用することが難しいという問題がある。
【0009】
一般に、フリー酸素イオンと電子の間の置換反応は、COガスのような反応ガスと接する焼結体の表面から進行する。このとき、焼結体に開気孔(表面の気孔)が存在せず、閉気孔(内部の気孔)のみが存在すると、置換反応の際に放出されるCOガスが閉気孔に溜まり、焼結体全体が発泡するという問題がある。また開気孔および閉気孔がほとんど存在しない、ち密な焼結体の場合、焼結体の極表面では結晶構造が乱れているため、置換反応が進み難くなる。このため、置換反応を進行させるには、焼結体が適度な開気孔を有することが好ましい。
【0010】
以上のことから、マイエナイト化合物製の大きな部材を製造するためには、(b)の工程において、大きな焼結体を形成した場合、(c)の工程において、焼結体の内部まで、反応ガスを十分に浸透させることが必要になる。
【0011】
また、このような反応ガスの供給が不十分な状態で(c)の置換反応処理を行うと、得られる部材は、表面側と内部側とで、材料特性が異なる不均一な状態となってしまうという問題が生じる。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、比較的大きな部材にも適用することが可能な、導電性マイエナイト化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合した原料粉末を用いて、マイエナイト化合物粉末を調製する工程と、
(2)前記マイエナイト化合物粉末を、300℃以上1200℃未満の温度に保持し、焼結体を得る工程と、
(3)前記焼結体を、還元性雰囲気下で1200℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0014】
ここで、本発明による製造方法において、前記(3)の工程は、前記焼結体をカーボンを含む坩堝中に入れた状態で行われても良い。
【0015】
また、本発明による製造方法において、前記(3)の工程は、1250℃〜1400℃の温度範囲で行われても良い。
【0016】
また、本発明による製造方法において、前記(2)の工程は、800℃から1200℃未満の範囲の温度で行われても良い。
【0017】
また、本発明による製造方法において、前記原料粉末は、カルシウム化合物およびアルミニウム化合物を含み、および/またはカルシウムアルミネートを含んでも良い。
【0018】
この場合、前記カルシウム化合物は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムからなる群から選定された少なくとも一つの化合物を含んでも良い。
【0019】
また、前記アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つの化合物を含んでも良い。
【0020】
また、本発明による製造方法において、前記(1)の工程は、原料粉末を1200℃〜1415℃の範囲に保持し、マイエナイト化合物を合成する工程を有しても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、比較的大きな部材にも適用することが可能な、導電性マイエナイト化合物の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるマイエナイト化合物の製造方法の一例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合した原料粉末を用いて、マイエナイト化合物粉末を調製する工程と、
(2)前記マイエナイト化合物粉末を、300℃以上1200℃未満の温度に保持し、焼結体を得る工程と、
(3)前記焼結体を、還元性雰囲気下で1200℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0024】
ここで、本願において、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。またマイエナイト化合物は、800℃以下では、サブミクロンオーダー以下の超微粒子しか焼結することはないが、本願では「焼結」と表現する。さらに、マイエナイト化合物の成形体を、800℃以下の温度で保持して得られるものは、「焼結体」と表現する。
【0025】
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1015cm−3以上のマイエナイト化合物を表す。
【0026】
本発明では、「導電性マイエナイト化合物」の電子密度は、1.0×1018cm−3以上であることが好ましく、1.0×1019cm−3以上であることがより好ましく、1.0×1020cm−3以上であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、本願において、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度が1.0×1018cm−3未満では、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から算出される。なお、ESRにおける測定下限界は、1.0×1014cm−3である。電子密度が1.0×1018cm−3以上では、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射測定から求められる2.8eV(波長443nm)の吸光度を、クベルカムンク変換させた値から算出される。
【0028】
なお、本発明において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および/または銅(Cu)などの原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、セリウム(Ce)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および/またはテリビウム(Tb)などで置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
【0029】
さらに、開気孔を増やす目的で、原料粉末の一部または全部に、比較的平均粒径の大きなマイエナイト化合物粉末を使用したり、酸化タンタルのような難焼結性粉末を原料粉末に少量添加しても良い。
【0030】
前述のように、通常、導電性マイエナイト化合物は、(a)マイエナイト化合物の粉末の調製(粉末調製工程)、(b)マイエナイト化合物の焼結体の調製(焼成工程)、および(c)マイエナイト化合物中のフリー酸素イオンと電子との間の置換反応処理(置換反応工程)、の各工程を経て製造することができる。
【0031】
しかしながら、このような従来の製造方法は、比較的小さなマイエナイト化合物製の部材の製造には適するものの、以下のように、比較的大きな導電性マイエナイト化合物製の部材の製造には、適用することが難しいという問題がある。
【0032】
一般に、フリー酸素イオンと電子の間の置換反応は、雰囲気中のCOガスのような反応ガスと接する焼結体の表面から進行する。このとき、焼結体に開気孔(表面の気孔)が存在せず、閉気孔(内部の気孔)のみが存在すると、置換反応の際に放出されるCOガスが閉気孔に溜まり、焼結体全体が発泡するという問題がある。また開気孔および閉気孔がほとんど存在しない、ち密な焼結体の場合、焼結体の極表面では結晶構造が乱れているため、置換反応が進み難くなる。このため、置換反応を進行させるには、焼結体が適度な開気孔を有することが好ましい。以上のことから、マイエナイト化合物製の大きな部材を製造するためには、(b)の工程において、大きな焼結体を形成した場合、(c)の工程において、焼結体の内部まで、反応ガスを十分に浸透させることが必要になる。
【0033】
また、このような反応ガスの供給が不十分な状態で(c)の処理を行うと、得られる部材は、表面側と内部側とで、材料特性が異なる不均一な状態となってしまうという問題が生じる。
【0034】
これに対して、本発明では、(b)の工程、すなわちマイエナイト化合物粉末からマイエナイト化合物の焼結体を得るための焼成工程は、300℃以上1200℃未満の温度で行われると言う特徴を有する。
【0035】
このような温度範囲でマイエナイト化合物粉末の焼成処理を行った場合、得られる焼結体は、多くの開気孔を有するようになる。ここで、「開気孔」とは、焼結体に含まれる気孔のうち、表面に開口を有する気孔を意味する。従って、「開気孔」は、焼結体の内部に存在する密閉された「閉気孔」とは異なり、周囲雰囲気と気体連通することができる。
【0036】
本発明の焼成工程では、得られる焼結体は、このような「開気孔」を多く有するようになるため、この「開気孔」を介して、次の(c)の置換反応工程において、反応ガスを比較的容易に、焼結体の内部にまで供給することが可能となる。
【0037】
従って、本発明の製造方法では、(b)の焼成工程によって得られる焼結体が比較的大きな寸法形状を有する場合であっても、次工程(c)の置換反応工程において、焼結体の全体にわたって、置換反応を十分に行うことができる。またこれにより、全体にわたって、材料組成や材料特性の均一な導電性マイエナイト化合物部材を得ることができる。
【0038】
なお、本願において、焼結体サンプルの開気孔率P(%)は、開気孔が多い場合(開気孔率P≧30%)と、少ない場合(開気孔率P<30%)とによって異なる以下の2通りの方法で測定することができる:
(1)開気孔が多い場合(開気孔率P≧30%)
焼結体サンプルの開気孔が多い場合、開気孔率Pは、ポロシメータ(ThermoFinnigan社、パスカル140、およびパスカル440)を用いた水銀圧入法により測定される。
【0039】
(2)開気孔が少ない場合(開気孔率P<30%)
焼結体サンプルの開気孔が少ない場合、開気孔率Pは、以下の方法で測定される。焼結体サンプルを水中に完全に浸漬し、この状態で一定時間(気泡が出なくなるまで)保持する。その後、焼結体サンプルを水中から取り出し、以下の(1)式から、焼結体サンプルの開気孔率P(%)を算出する。

開気孔率P(%)={(W2−W1)/W1}×100 (1)式

ここで、W1は、焼結体サンプルの初期重量(g)であり、W2は、水を含んだ焼結体サンプルの重量(g)である。
【0040】
(本発明による導電性マイエナイト化合物の製造方法)
以下、図面を参照して、本発明の製造方法について、詳しく説明する。
【0041】
図1には、本発明による導電性マイエナイト化合物の製造方法を示す。
【0042】
図1に示すように、本発明による製造方法は、(1)カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合した原料粉末を用いて、マイエナイト化合物粉末を調製する工程(ステップS110)と、(2)前記マイエナイト化合物粉末を、300℃以上1200℃未満の温度に保持し、焼結体を得る工程(ステップS120)と、(3)前記焼結体を、還元性雰囲気下で800℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程(ステップS130)とを有する。以下、それぞれの工程について説明する。
【0043】
(工程S110:粉末調製工程)
まず、マイエナイト化合物粉末を合成するための原料粉末が調合される。
【0044】
原料粉末は、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合される。CaO:Al(モル比)は、約12:7であることが好ましい。
【0045】
なお、原料粉末に使用される化合物は、前記割合が維持される限り、特に限られない。原料粉末は、例えば、カルシウム化合物とアルミニウム化合物とを含む混合粉末であっても良い。原料粉末は、例えば、カルシウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。また、原料粉末は、例えば、アルミニウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。また、原料粉末は、例えば、カルシウム化合物と、アルミニウム化合物と、カルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。さらに、原料粉末は、例えば、カルシウムアルミネートのみを含む混合粉末であっても良い。
【0046】
カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、および水酸化カルシウムが好ましい。
【0047】
アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムが好ましい。
【0048】
次に、原料粉末が高温に保持され、マイエナイト化合物が合成される。合成温度は、特に限られないが、例えば、1200℃〜1415℃の範囲であり、1250℃〜1400℃の範囲であることが好ましく、1300℃〜1350℃の範囲であることがより好ましい。1200℃〜1415℃の温度範囲で合成した場合、C12A7の結晶構造を多く含むマイエナイト化合物が得られ易くなる。合成温度が1200℃未満では、C12A7結晶構造が少なくなり易い。一方、合成温度が1415℃を超えると、マイエナイト化合物の融点を超えるため、この場合も、C12A7の結晶構造が少なくなる。
【0049】
高温の保持時間は、特に限られず、これは、合成量および保持温度等によっても変動する。保持時間は、例えば、2時間〜10時間程度である。保持時間は、例えば、4時間〜8時間程度であることが好ましい。原料粉末を2時間以上、高温で保持することにより、固相反応が十分に進行し、均質なマイエナイト化合物を得ることができる。
【0050】
合成により得られるマイエナイト化合物は、一部または全てが焼結した塊状である。塊状のマイエナイト化合物は、スタンプミル等で、例えば、5mm程度の大きさまで粉砕処理される。さらに、自動乳鉢や乾式ボールミルで、平均粒径が10μm〜100μm程度まで粉砕処理が行われる。ここで、「平均粒径」は、レーザ回折散乱法で測定して得た値を意味するものとする。以下、粉末の平均粒径は、同様の方法で測定した値を意味するものとする。
【0051】
さらに微細で均一な粉末を得たい場合は、例えば、イソプロピルアルコールを溶媒として用いた、湿式ボールミル、または循環式ビーズミルなどを用いることにより、粉末の平均粒径を0.5μm〜50μmまで微細化することができる。
【0052】
以上の工程により、マイエナイト化合物の粉末が調製される。
【0053】
(工程S120:焼成工程)
次に、得られたマイエナイト化合物の粉末を焼成処理することにより、マイエナイト化合物の焼結体が製造される。
【0054】
通常の場合、焼成処理の前に、マイエナイト化合物の成形体が調製される。マイエナイト化合物の成形体は、ペースト(またはスラリー。以下同じ)を介して、あるいは粉末またはペーストの加圧成形により、調製しても良い。
【0055】
例えば、マイエナイト化合物の粉末をバインダとともに溶媒中に添加、撹拌することにより、ペーストを調製しても良い。バインダには、有機バインダおよび無機バインダのいずれも使用することができる。有機バインダとしては、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどが使用できる。また、溶媒としては、酢酸ブチル、テルピネオール、化学式C2n+1OH(n=1〜4)で表されるアルコール等が使用できる。
【0056】
その後、ペーストを押出成形、射出成形することにより、成形体を得ることができる。
【0057】
あるいは、前述の調製粉末またはペーストを金型に入れ、この金型を加圧することにより、所望の形状の成形体を形成しても良い。金型の加圧には、例えば、等方静水圧プレス(CIP)処理を利用しても良い。CIP処理の際の圧力は、特に限られないが、例えば、
50MPa〜200MPaの範囲である。
【0058】
また、成形体を調製した場合であって、成形体が溶媒を含む場合は、予め成形体を50℃〜200℃の温度範囲で20〜30分程度保持し、溶媒を揮発させて除去しても良い。また、成形体がバインダを含む場合は、予め成形体を200〜800℃の温度範囲で20〜30分程度保持し、バインダを除去しても良い。あるいは、両者の処理を同時に行っても良い。
【0059】
その後、得られたマイエナイト化合物成形体は、300℃以上1200℃未満の温度で焼成され、これによりマイエナイト化合物の焼結体が形成される。
【0060】
焼成温度がこの温度範囲で実施されるのは、得られる焼結体に多くの開気孔を導入するためである。すなわち、焼成温度が1200℃以上の場合、焼結反応が過度に進行して、得られる焼結体に含まれる開気孔が少なくなってしまうという問題が生じる。また、焼成温度が300℃未満の場合は、次工程の置換反応工程において、導電性マイエナイト化合物焼結体の閉気孔が消失する前に、開気孔が消失してしまい、焼結体内部が置換されることにより放出されるCOガスが焼結体内部に溜まるため、発泡現象が生じるという問題がある。
【0061】
ちなみに、本願発明者らの実験では、温度が1200℃〜1415℃の範囲で焼成処理を行った場合、焼結体に含まれる開気孔の割合は、0〜20%しかないのに対して、300℃以上1200℃未満の温度で焼成処理を行った場合、焼結体に含まれる開気孔の割合は、20%〜49%に増加することが確認されている。
【0062】
なお、焼成処理の時間は、焼成温度、焼結体の体積(寸法)および形状等にも依存するが、例えば1時間〜10時間である。
【0063】
次に、得られた焼結体は、必要に応じて、所望の形状に加工される。加工方法は、特に限られず、機械加工、放電加工、レーザ加工等が適用されても良い。
【0064】
なお、前述のように、本発明の製造方法では、焼成工程によって得られるマイエナイト化合物の焼結体は、比較的大きな寸法形状を有しても良いことに留意する必要がある。
【0065】
(工程S130:置換反応工程)
次に、マイエナイト化合物の焼結体を用いて置換反応処理が行われる。
【0066】
置換反応処理は、マイエナイト化合物の焼結体を、高温の還元性雰囲気に保持することにより、実施される。
【0067】
ここで、「還元性雰囲気」とは、酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気、または酸素分圧が10−3Pa以下の減圧環境(例えば真空環境)の総称を意味し、不活性ガスを含む雰囲気などを包含することに留意する必要がある。例えば、「還元性雰囲気」は、CO(一酸化炭素)を含む雰囲気であっても良い。
【0068】
酸素分圧は、例えば10−5Pa以下であり、10−10Pa以下であることが好ましく、10−15Paであることがより好ましい。酸素分圧が10−3Pa以上の場合、十分な導電性を得ることができなくなるおそれがある。
【0069】
また、「還元性雰囲気」には、還元剤が存在しても良い。還元剤は、例えば、カーボン、金属カルシウム、金属アルミニウム、および/または金属チタン等であっても良い。
【0070】
還元剤がカーボンの場合、例えば、焼結体をカーボン容器に入れて、これを減圧下で焼成しても良い。この場合、焼結体の高温保持中に、カーボン容器側からCOガスが生じる。従って、ケージ内のフリー酸素イオンとCOガスとを以下の反応式のように反応させることにより、マイエナイト化合物のケージの中に電子を導入することができる:

2−+CO → CO+2e (2)式

焼結体を保持する温度は、例えば、1200℃〜1415℃の範囲であり、特に、1250℃〜1400℃の範囲であることが好ましく、1300℃〜1350℃の範囲であることがより好ましい。処理温度が1200℃よりも低い場合、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。また、処理温度が1415℃よりも高い場合、焼結体の溶融が進行し、焼結体の形状が維持できなくなるおそれがある。
【0071】
高温の保持時間は、5分〜12時間の範囲であることが好ましく、30分〜8時間の範囲であることがさらに好ましく、1時間〜6時間の範囲であることがさらに好ましい。保持時間が5分未満の場合、十分な導電性を得ることができなくなるおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製コストを考えると、保持時間は、6時間以内が好ましい。
【0072】
以上の工程により、例えば、電子密度が1.0×1018cm−3〜4×1020cm−3の範囲の導電性マイエナイト化合物が得られる。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0074】
(実施例1)
以下の方法で、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0075】
(マイエナイト化合物の合成)
酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(Al)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1350℃まで加熱し、1350℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色塊体を得た。
【0076】
次に、アルミナ製スタンプミルにより、この白色塊体を大きさが約5mmの破片になるよう粉砕した後、さらに、アルミナ製自動乳鉢で粗粉砕し、白色粒子(以下、粒子「A1」と称する)を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた粒子A1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。
【0077】
次に、粒子A1を350gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕溶媒としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール350mlとを、2リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度94rpmで、16時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
【0078】
処理後、得られたスラリーを用いて吸引ろ過を行い、粉砕溶媒を除去した。また、残りの物質を80℃のオーブンに入れ、10時間乾燥させた。これにより、白色粉末(以下、粉末「B1」と称する)を得た。X線回折分析の結果、得られた粉末B1は、C12A7構造であることが確認された。また、前述のレーザ回折散乱法により得られた粉末B1の平均粒径は、3.3μmであることがわかった。
【0079】
(マイエナイト化合物の焼成)
前述の方法で得られた粉末B1(13g)を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理し、縦約40mm×横約20mm×高さ約10mmの寸法の成形体C1を得た。
【0080】
次に、以下の条件で、得られた成形体C1を焼成処理した。
【0081】
成形体C1を大気下、300℃/時間の昇温速度で1180℃まで加熱し、この温度に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で、室温まで降温した。これにより、白色の焼結体(以下、焼結体「D1」と称する)が形成された。
【0082】
アルキメデス法により、得られた焼結体D1の比重を測定したところ、比重は、2.37であった。マイエナイト化合物の真密度を2.69とすると、得られた焼結体D1の相対密度は、88.1%であった。
【0083】
前述の(2)の方法により、焼結体D1の開気孔率P(%)を測定した。測定の結果、焼結体D1の開気孔率は、24.5%であった。
【0084】
(導電性マイエナイト化合物の作製)
次に、焼結体D1の置換反応処理により、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0085】
まず、焼結体D1をダイヤモンドカッターで、長さ10mm×幅10mm×厚さ10mmの立方体形状に切断した。この立方体を、外径50mm×内径40mm×高さ50mmの炭素製坩堝に入れてから、坩堝に炭素製の蓋をした。
【0086】
この坩堝を、酸素量1ppmの窒素を500mL/分の流速で流した窒素雰囲気中に置き、このまま1時間で1310℃まで加熱した。1310℃に2時間保持した後、坩堝を2時間で室温まで冷却させた。これにより、黒色物質(以下、黒色物質「E1」と称する)が得られた。
【0087】
この黒色物質E1の相対密度は、97.2%であり、開気孔率は、0.3%であった。
【0088】
この黒色物質E1の電子密度測定を行うため、アルミナ製スタンプミルにより、黒色物質E1を、大きさが約5mmの破片になるよう粉砕した後、アルミナ製自動乳鉢で粗粉砕した。
【0089】
得られた粉末は、暗緑色をしており、X線回折分析の結果、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク法により求められた電子密度は、3.5×1020cm−3であり、導電率は、0.8S/cmであった。このことから、黒色物質E1は、導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0090】
表1の実施例1の欄には、成形体C1の焼成処理温度、焼結体D1の開気孔率、置換反応処理用の焼結体D1の寸法および置換反応条件、ならびに黒色物質E1の電子密度をまとめて示した。
【0091】
【表1】

(実施例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例2では、前述の(マイエナイト化合物の焼成)の工程において、等方静水圧プレス処理により得られた成形体(成形体「C2」と称する)の焼成処理の温度は、800℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0092】
得られた焼結体(焼結体「D2」と称する)の開気孔率P(%)を前述の(1)の方法で測定した。得られた焼結体D2の開気孔率P(%)は、40.0%であった。
【0093】
また、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に得られた黒色物質(黒色物質「E2」と称する)の相対密度は、97.2%であり、開気孔率は0.1%であった。さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質E2を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質E2は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質E2の電子密度は、3.6×1020cm−3であり、導電率は0.9S/cmであった。
【0094】
このことから、黒色物質E2は、導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0095】
前述の表1の実施例2の欄には、成形体C2の焼成処理温度、焼結体D2の開気孔率、置換反応処理用の焼結体D2の寸法および置換反応条件、ならびに黒色物質E2の電子密度をまとめて示した。
【0096】
(実施例3)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例3では、前述の(マイエナイト化合物の焼成)の工程における、等方静水圧プレス処理により得られた成形体(成形体「C3」と称する)の焼成処理の温度は、300℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0097】
得られた焼結体(焼結体「D3」と称する)の開気孔率P(%)を前述の(1)の方法で測定した。得られた焼結体D3の開気孔率P(%)は、49.0%であった。
【0098】
また、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に得られた黒色物質(黒色物質「E3」と称する)の相対密度は、95.2%であり、開気孔率は0.4%であった。さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質E3を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質E3は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質E3の電子密度は、3.5×1020cm−3であり、導電率は0.9S/cmであった。
【0099】
このことから、黒色物質E3は、導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0100】
前述の表1の実施例3の欄には、成形体C3の焼成処理温度、焼結体D3の開気孔率、置換反応処理用の焼結体D3の寸法および置換反応条件、ならびに黒色物質E3の電子密度をまとめて示した。
【0101】
(実施例4)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例4では、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程における、焼結体(焼結体「D4」と称する)の置換反応条件は、10−4Pa以下の真空環境とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0102】
(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程後に得られた黒色物質(黒色物質「E4」と称する)の相対密度は、97.2%であり、開気孔率は0.1%であった。さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質E4を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質E4は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質E4の電子密度は、2.5×1020cm−3であり、導電率は0.8S/cmであった。
【0103】
このことから、黒色物質E4は、導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0104】
前述の表1の実施例4の欄には、成形体(C4)の焼成処理温度、焼結体D4の開気孔率、置換反応処理用の焼結体D4の寸法および置換反応条件、ならびに黒色物質E4の電子密度をまとめて示した。
【0105】
(実施例5)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例5では、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程に使用される焼結体(焼結体「D5」と称する)の寸法は、長さ40mm×幅40mm×厚さ5mmとした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0106】
前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に得られた黒色物質(黒色物質「E5」と称する)の相対密度は、96.7%であり、開気孔率は0.3%であった。さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質E5を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質E5は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質E5の電子密度は、3.2×1020cm−3であり、導電率は0.9S/cmであった。
【0107】
前述の表1の実施例5の欄には、成形体(C5)の焼成処理温度、焼結体D5の開気孔率、置換反応処理用の焼結体D5の寸法および置換反応条件、ならびに黒色物質E5の電子密度をまとめて示した。
【0108】
(比較例1)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この比較例1では、前述の(マイエナイト化合物の焼成)の工程において、等方静水圧プレス処理により得られた成形体(成形体「C6」と称する)の焼成処理の温度は、1330℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0109】
得られた焼結体(焼結体「D6」と称する)の開気孔率P(%)を前述の(2)の方法で測定した。得られた焼結体D6の開気孔率P(%)は、0%であった。
【0110】
また、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)に記載の工程後には、淡灰色の物質(以下、物質「E6」と称する)が得られた。物質E6の相対密度は、93.4%であり、開気孔率は0.1%であった。
【0111】
さらに、実施例1と同様の方法により、この物質E6を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、物質E6は、C12A7構造のみを有することがわかった。しかしながら、物質E6の電子密度は、ESRの測定限界以下であり、1.0×1014cm−3未満であった。導電率は4.0×10−5S/cmであった。従って、この方法では、良好な導電性を有する導電性マイエナイト化合物を作製することはできないことがわかった。
【0112】
前述の表1の比較例1の欄には、成形体C6の焼成処理温度、焼結体D6の開気孔率、置換反応処理用の焼結体D6の寸法および置換反応条件、ならびに物質E6の電子密度をまとめて示した。
【0113】
(比較例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この比較例2では、前述の(マイエナイト化合物の焼成)の工程において、等方静水圧プレス処理により得られた成形体(成形体「C7」と称する)の焼成処理は、実施しなかった。すなわち、比較例2では、成形体C7をそのまま使用して、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)に記載の処理を行った。ちなみに、成形体C7の開気孔率P(%)は、50.0%であった。
【0114】
これにより、黒色の物質(以下、物質「E7」と称する)が得られた。物質E7は、発泡しており、元の形が確認できないほど大きく変形していた。なお、物質E7については、電子密度の測定は、実施しなかった。
【0115】
このように、比較例2の方法では、適正に導電性マイエナイト化合物の焼結体を作製することができないことがわかった。
【0116】
前述の表1の比較例2の欄には、成形体C7の開気孔率、置換反応処理用の成形体C7の寸法および置換反応条件、ならびに物質E7の電子密度をまとめて示した。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、蛍光ランプおよびスパッタリング用ターゲット等に使用され得る、導電性マイエナイト化合物の製造方法に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合した原料粉末を用いて、マイエナイト化合物粉末を調製する工程と、
(2)前記マイエナイト化合物粉末を、300℃以上1200℃未満の温度に保持し、焼結体を得る工程と、
(3)前記焼結体を、還元性雰囲気下で1200℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記(3)の工程は、前記焼結体をカーボンを含む坩堝中に入れた状態で行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(3)の工程は、1250℃〜1400℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(2)の工程は、800℃から1200℃未満の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記原料粉末は、カルシウム化合物およびアルミニウム化合物を含み、および/またはカルシウムアルミネートを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記カルシウム化合物は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムからなる群から選定された少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記(1)の工程は、原料粉末を1200℃〜1415℃の範囲に保持し、マイエナイト化合物を合成する工程を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−126618(P2012−126618A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280943(P2010−280943)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】