説明

導電性ローラの製造方法、導電性ローラ、帯電ローラ及び電子写真装置

【課題】大電流通電条件(例えば、直流電流0.2mA以上かつ交流電流2mA以上)で高温高湿環境(例えば、30℃相対湿度80%)における帯電ローラの通電劣化を解決することのできる導電性ローラを提供すること。
【解決手段】支持体上に無機粒子の層を表面に有する未加硫ゴムの層を形成し、この無機粒子の層に型を押し当てながら、型の押し当て場所を一定間隔で該無機粒子の層の全体に押し当てるように変化させつつ、未加硫ゴムを加硫して、無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成することにより製造される導電性ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子写真装置に用いられる導電性ローラの製造方法、及び、該製造方法で製造した導電性ローラ、及び、該導電性ローラを有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等の電子写真装置では、その本体内部に画像形成部が設置され、画像がクリーニング、帯電、潜像、現像、転写、定着プロセスを経て形成される。画像形成部は、電子写真感光体である感光ドラムを備えており、クリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部及び転写部を備えている。この画像形成部で形成された感光ドラム上の画像は転写部で、記録材に転写され、定着部に搬送された後に定着部にて加熱及び加圧され、記録材に定着された記録画像として出力される。
【0003】
次に、クリーニング、帯電、潜像、現像、転写、定着プロセス内の、帯電、潜像形成、現像、転写プロセスについて説明する。
【0004】
帯電部では、帯電部材により感光ドラムの表面に対して、所定の極性で、電位が一様になるように一次帯電を行う。次に、目的画像情報の露光を受けることで、感光ドラム表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像部にて現像部材や現像剤によりトナー画像として可視化される。可視化されたトナー画像は、転写部において転写部材よって感光ドラム表面から記録材に転写される。転写された未定着のトナー画像は、定着部に搬送されて、定着部で定着されて記録画像として出力される。
【0005】
電子写真装置に用いられる帯電方式として、コロナ帯電方式とローラ帯電方式がある。コロナ帯電方式はコロナワイヤーなどに電圧を印加して、帯電生成物を形成し、感光ドラム表面を帯電生成物によって帯電させる帯電方法である。一方、ローラ帯電方式は、帯電ローラを感光ドラムに接触もしくは、近接(ローラドラム間距離が数十μmと近いが接触してない)させて、感光ドラム表面を放電によって帯電させる帯電方法である。
【0006】
ローラ帯電方式は、コロナ帯電方式に比べて発生するオゾンや放電生成物の量が圧倒的に少ない。よって、ローラ帯電を用いることでオゾンフィルターをつけるスペースを削減することや、放電生成物による画像ボケ等を軽減させることが可能である。
【0007】
ローラ帯電方式は直流電流(DC)に交流電流(AC)を重畳したAC+DC帯電とDCのみのDC帯電に分別される。DC帯電は小型化、ローコストを達成するには好適な技術である一方、感光体ドラム電位を一定にする帯電バイアス域が狭く、ローラ抵抗の周ムラや汚れによる微小な抵抗ムラ、ローラの不均一性による帯電不均一性など技術課題がある。このような技術課題を補い、画質の維持を向上させるのが、AC+DC帯電である。しかし、ACを重畳するため、帯電音が発生することやDC帯電よりも放電電流量が多くなり、条件によっては画像ボケが発生するという課題がある。
【0008】
また、ローラ帯電における課題としては、通電劣化が挙げられる。通電劣化とは、ローラに電流を流すことにより、電気抵抗が変化して所望のドラム電位を与えることができなくなる現象である。一般的には、通電劣化は電気抵抗の上昇により、ドラム電位が低下する現象である。
【0009】
近年、電子写真装置には高画質、長寿命化が要求されつつある。高画質化を満たすための電子写真感光体からのアプローチとしては、電子写真感光体の薄膜化により電子写真感光体の静電容量を増加させて潜像のコントラストをより鮮明にする方法がある。また、短波長のレーザー(特に380〜500nm)対応の電子写真感光体の使用なども挙げられる。また、長寿命化を満たすための電子写真感光体からのアプローチとしては、アモルファスシリコン感光体を用いる方法や、感光層を保護する表面保護層を設ける方法などが挙げられる。
【0010】
アモルファスシリコン感光体や薄膜感光体を使用した電子写真プロセスにおいて、ローラ帯電方式を採用すると、感光体の静電容量が大きいために帯電に必要な電流が大電流となる。従って、帯電ローラに大電流が流れて、帯電ローラの高抵抗化(通電劣化)が発生する。特に高温高湿環境(例えば、30℃相対湿度80%)では、通電劣化が更に厳しくなる。高温高湿環境における通電劣化のメカニズムについて検討した結果、原因は帯電ローラ表面の酸化劣化であることが判明している。すなわち、大電流通電により、帯電ローラ表面と感光体ドラム表面間に発生した放電と水分によって帯電ローラ表面が酸化劣化して、高抵抗化を引き起こすのである。
【0011】
帯電ローラの酸化劣化を抑制して通電劣化を良化させる先行技術として、特許文献1は、特定の化学構造式を有する酸化防止剤を含有する電子写真用導電性部材の発明である。通電時に発生するラジカルを酸化防止剤で捕獲して、通電劣化を抑制する技術である。
【0012】
特許文献2及び3は、ヒドリンゴム等の極性ポリマー中に、特定の化学構造式を有するイオン導電性材料を含有した導電性材料に関する発明である。ブリードしにくく、通電劣化しにくいイオン導電性物質を用いることで、通電劣化を抑制する技術である。
【0013】
特許文献4、5、及び6には、帯電ローラの表面に粉(無機粒子、絶縁性層状化合物、トナー)を付着させることで帯電ローラの汚れ、張り付き防止等の諸課題を解決する発明が報告されている。
【0014】
また、特許文献7、特許文献8、特許文献9には、帯電ローラの被覆層に無機粒子を含有することで、帯電均一性等の諸課題を解決する発明が報告されている。
【特許文献1】特開2006−47560号公報
【特許文献2】特開2001−273815号公報
【特許文献3】特開2004−258277号公報
【特許文献4】特開平09−179375号公報
【特許文献5】特開2005−338168号公報
【特許文献6】特開2006−301107号公報
【特許文献7】特開平08−262843号公報
【特許文献8】特開2003−316110号公報
【特許文献9】特開2004−004146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に記載される方法も有効であるが、大電流を必要とする電子写真プロセスにおいては、帯電ローラ内部の劣化よりも表面近傍における酸化劣化の進行が速く、酸化防止剤の効果が発揮されない。
【0016】
また、特許文献2及び3に記載されるイオン導電系の材料を用いた場合、大電流を必要とする電子写真プロセスにおいては、低湿環境における通電劣化が発生すると共に、高湿環境では通電時にブリードが発生するという弊害がある。この原因が極性ポリマーの分子運動性にあるために、イオン導電性材料の化学構造式を特定しても通電劣化に対する効果がない。
【0017】
また、特許文献4、5及び6に記載される発明は、表面における酸化劣化の発生を抑制することはできる点で有効な手段であるが、酸化劣化の内部への進行を抑制することができないために、大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化に対する効果は小さい。
【0018】
また、特許文献7、8及び9に記載される発明も有効な手段である。しかし、この発明では、被覆層全体に分散されて表面に局在しないため、大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化に対する効果は小さい。
【0019】
本発明は、大電流通電条件(例えば、直流電流0.2mA以上かつ交流電流2mA以上)で高温高湿環境(例えば、30℃相対湿度80%)における帯電ローラの通電劣化を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
表面近傍に無機粒子層を局在的に形成した導電性ローラを発明し、実際に帯電ローラとして用いた結果、大電流通電条件で高温高湿環境における帯電ローラの通電劣化を解決することを見出した。表面近傍に無機粒子層を局在的に形成するための導電性ローラの製造方法を発明した。
【0021】
本発明にかかる第一の導電性ローラ製造方法は、
(i)支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程と、
(ii)該未加硫ゴムの層の表面に無機粒子の層を形成する工程と、
(iii)該無機粒子の層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を一定間隔で該無機粒子の層の全体に押し当てるように変化させつつ、該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程と、
を有する導電性ローラの製造方法である。
【0022】
また、本発明にかかる第二の導電性ローラ製造方法は、
(i)支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程と、
(ii)該未加硫ゴムの層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を一定間隔で該未加硫ゴムの層の全体に押し当てるように変化させつつ、該未加硫ゴムの層に押し当てられていない領域の該型の表面に無機粒子を供給し、かつ該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程と、
を有する導電性ローラの製造方法である。
【0023】
また、本発明にかかる電子写真装置は、上記の導電性ローラの製造方法で製造した導電性ローラを帯電ローラとして用いたことを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る導電性ローラによれば、表面に埋め込まれた粒子層が、放電と水分によって引き起こされる導電性ゴムの酸化劣化の防止層となる。その結果、大電流通電条件を必要とする電子写真プロセス(アモルファスシリコン感光体、薄膜OPC搭載プロセス)において、高温高湿環境における課題である通電劣化を解決する手段となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第一の導電性ローラ製造方法)
本発明の第一の導電性ローラ製造方法は、導電性ローラの表面に無機粒子層を形成するために、
(i)支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程
(ii)該未加硫ゴムの層の表面に無機粒子の層を形成する工程
(iii)該無機粒子の層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を一定間隔で該無機粒子の層の全体に押し当てるように変化させつつ、該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程
を有する。
【0026】
本発明の工程である支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程について説明する。ポリマー原料と添加剤を配合し混練して調製された未加硫ゴムを、支持体とともに押し出すことで支持体上に未加硫ゴム層を被覆させることができる。ただし、本工程はこの方法に限定されるものではなく、例えば、未加硫ゴム層を円筒状に成形した後に支持体を挿入することで、未加硫ゴム層を被覆させた支持体を作製してもよい。図1は工程(i)を模式的に示した説明図の一例である。押出し機1は、クロスヘッド2を備える。クロスヘッド2には、矢印方向に回転している芯金送りローラ3によって送られた支持体を後ろから挿入し、支持体と同時に円筒状の未加硫ゴム層を一体的に押出すことにより周囲を未加硫ゴム層で被覆された支持体が得られる。ここでは、得られた支持体周囲の未加硫ゴム層の端部を定尺で切り取ったものを、未加硫ゴムローラ4とした。本発明で使用される支持体は、剛性のあるものであるならどんな材料でもよく、例えば、アルミ、鉄、SUS等の金属類や、エンジニアリングプラスチック、カーボンコンポジット材料等が挙げられる。帯電ローラのように、支持体から電圧を印加して、感光体を帯電させる部材においては、剛性と導電性と成形性の観点から、SUSが望ましい。
【0027】
本発明で使用されるポリマー原料としては、以下のものが挙げられる。天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴムなど。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化に対する効果を考えると、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)が、より好ましい。本発明で使用される添加剤としては、導電剤、加硫剤、加硫促進剤が挙げられる。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、CNT、導電性金属酸化物(酸素欠損タイプ)、ITO、アンチモンドープ酸化スズ、アンモニウム塩系のイオン導電剤、イオン性液体等が挙げられる。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化に対する効果を考えると、下記(1)〜(3)から選ばれる少なくとも1つのカーボンブラックが好ましい。
(1)BET(窒素吸着比表面積)が小さくかつDBP(ジブチルフタレート)吸油量が小さいカーボンブラック、
(2)BET(窒素吸着比表面積)が小さくかつDBP(ジブチルフタレート)吸油量が大きいカーボンブラック、
(3)BET(窒素吸着比表面積)が大きくかつDBP(ジブチルフタレート)吸油量が大きいカーボンブラック。
【0028】
加硫剤、加硫促進剤としては、硫黄、チアゾール系、チウラム系、ジチオカルバミン塩酸系等が挙げられる。また、その他、充填剤、可塑剤等適宜添加してもよい。
【0029】
次に本発明の工程である未加硫ゴムの層の表面に無機粒子の層を形成する工程について説明する。図2が工程(ii)を模式的に示した説明図の一例である。工程(i)で作成した未加硫ゴムローラ4を保持し、回転させる保持冶具5に未加硫ゴムローラ4を設置する。未加硫ゴムローラ4の表面に垂直する方向に、粉体塗布装置6を設置する。粉体塗布装置は、未加硫ゴムローラ4の長手方向に水平に移動可能である。粉体塗布装置6としては、静電塗装装置やスプレー塗装装置等が挙げられる。静電塗装装置を用いると、無機粒子を静電気的に帯電させ、クーロン力により未加硫ゴム層表面に吸着させることで、無機粒子が多数重なる層を形成することができるため、無機粒子の層を所望の厚さに調整することができる。また、帯電した無機粒子は未加硫ゴム層表面に保持することができる。未加硫ゴムローラ4の表面と粉体塗布装置6との距離、粉体塗布装置6の移動速度、未加硫ゴムローラ4の回転速度等に関しては適宜に設定し、均一に粉体が塗布できる条件に設定した。未加硫ゴムローラ4を回転させながら、粉体塗布装置6から無機粒子を噴霧させかつ長手方向に水平移動させることで、無機粒子の層を形成した未加硫ゴムローラ7を得ることができる。
【0030】
無機粒子としては、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銀、酸化銅、酸化セレン、カーボン類、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等が挙げられる。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化の観点から特に望ましいのは、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)である。これらの無機粒子は、粉末状の微細な粒子であることが好ましく、一次粒径が10nm〜100nmのものを好適に用いることができる。また、これら無機粒子を疎水化処理すると、通電劣化の抑制効果がさらに大きくなる。疎水化処理剤としては、以下のものが挙げられる。トリメチルシラン、トリエチルシラン等のシラン化合物、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等のシリコーンオイル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩等。疎水化処理を行うことで、酸化劣化の原因である水分の吸収や吸着を抑制できるからである。
【0031】
次に本発明の工程である無機粒子層の表面に型を押し当て、該型の押し当て場所を変化させつつ、未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程について説明する。図3が工程を模式的に示した説明図の一例である。図3(a)が正面図、図3(b)が側面図である。工程(ii)で得られた粉体塗布未加硫ゴムローラ7の表面に対して、型を押し当て、且つ該粉体塗布未加硫ゴム層の表面に対する該型の押し当て場所を変化させつつ、該未加硫のゴムを加硫せしめ、表面の無機粒子を押しこみながら加硫ゴム層を形成する工程である。ここで、型とは、未加硫ゴム層の表面の無機粒子層を押し込み、未加硫ゴム層の内部に埋め込むための圧接部材である。また、型の押し当て場所を変化させる際は、無機粒子の層の全体を押し当てる対象として含み、一定の間隔で層の全体に押し当てることが層全体に均等に押し当られるため望ましい。
【0032】
図3は、当該工程(iii)に用いられる、回転可能に保持されている円筒状の型(圧接部材)を有する圧接加硫装置の説明図である。回転している円筒状の圧接部材8と、未加硫ゴムローラ7の中心軸は平行に保持され、未加硫ゴムローラ両端部の支持体の露出部に加圧のための保持部材9を圧接させ、軸が左右にずれることないように保持している。圧接部材8に内部にヒータを内蔵して所定温度に設定するか、或いは装置全体を恒温槽の中に構築するなどして全体を所定温度に保っておくか、または両者を同時に行っても良い。また、圧接部材8の温度を雰囲気の温度より高くするなど、圧接部材と雰囲気の温度に差があっても良い。さらに、モータ10によって圧接部材を回転させる事で、未加硫ゴムローラ7を従動回転させることができる。支持体への保持部材は上下方向に容易に可動するレール11に支持され、未加硫ゴムローラ7の外径の変化に追従する事が可能である。また、加圧力は重り12の重量を変更する事で調整可能である。
【0033】
また、未加硫ゴム層の厚さが薄い場合には、加圧に伴う未加硫ゴム組成物層の変形によって、未加硫ゴム組成物層を支持する支持体と圧接部材が干渉することがあるので、未加硫ゴム層の厚さは、0.25mm以上であることが好ましい。また、本発明の方法により層の厚さは5.0mm以下のものであれば製造することができるがこの範囲に限定されない。未加硫ゴム層の粘度が低すぎると、圧接時に変形が大きくなりすぎて回転に伴って未加硫ゴムローラ7が円筒形状を維持できなくなる。また、未加硫ゴム層の粘度が高くなりすぎると、無機粒子の埋め込みが不十分になる。そのような場合には、圧接部材の温度、雰囲気温度、圧接圧力、未加硫ゴム層の材料組成等で適宜調整することが可能である。また、上記の観点から、未加硫ゴムの好ましい粘度は、JIS K6300-1に規定されるムーニ−粘度測定で10から100ML(1+4)100℃の範囲内に調整するのが好ましい。
【0034】
圧接部材8は、型として未加硫ゴムの表面の無機粒子を押しこみながら、未加硫ゴムを加硫するための部材であるため、熱伝導性の良いSUS、ニッケルなどの金属類が好ましい。また、無機粒子の押しこみ効率を向上させるために、圧接部材8に、クロームメッキ、ニッケルメッキ、フッ素含有ニッケルメッキ等のメッキ類を施してもよい。また、フッ素コーティング、フッ素樹脂・シリコーン樹脂等をコーティングしたものや、フッ素系・シリコーン系の離型剤を塗布したものを用いることもできる。更に、その他公知の金属の表面処理を施したものを用いてもよい。特に望ましいのは、フッ素コーティング、フッ素樹脂・シリコーン樹脂等の離型性の表面処理である。離型性の表面処理を行うことで、未加硫ゴム表面に埋め込まれる無機粒子の効率が向上し、圧接部材上に無機粒子が残存する確率が減少する。圧接部材8の幅は、未加硫ゴムの層の幅と等しいかもしくは長い部材を用いることが好ましい。圧接部材8の形態としては、円筒状、平面状、無端ベルト状等が望ましい。(図は円筒状の模式図である。)また、得られるローラ部材を長手方向で径が異なるクラウン形状や逆クラウン形状にするために、逆クラウン形状(中央部の径が端部の径よりも小さい)、或いはクラウン形状(中央部の径が端部の径よりも大きい)の圧接部材を用いても良い。また、未加硫ゴムローラは加硫の最後まで圧接回転させつづけなくてもよく、粒子の埋め込みが進行するまで行えば、その後は熱風炉の中などで圧接回転しない状態で加熱しても良い。
【0035】
(第二の導電性ローラ製造方法)
次に本発明の第二の導電性ローラ製造方法は、導電性ローラの表面に無機粒子層を形成するために、
(i)支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程
(ii)該未加硫ゴムの層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を一定間隔で該未加硫ゴムの層の全体に押し当てられるように変化させつつ、該未加硫ゴムの層に押し当てられていない領域の該型の表面に無機粒子を供給し、かつ該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程
を有する。
【0036】
本発明の工程である支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程について説明する。ポリマー原料と添加剤を配合し混練して調製された未加硫ゴムを、支持体とともに押し出すことで支持体上に未加硫ゴム層を被覆させることができる。ただし、本工程はこの方法に限定されるものではなく、例えば、未加硫ゴム層を円筒状に成形した後に支持体を挿入することで、未加硫ゴム層を被覆させた支持体を作製してもよい。図1は工程(i)を模式的に示した説明図の一例である。押出し機1は、クロスヘッド2を備える。クロスヘッド2には、矢印方向に回転している芯金送りローラ3によって送られた支持体を後ろから挿入し、支持体と同時に円筒状の未加硫ゴム層を一体的に押出すことにより周囲を未加硫ゴム層で被覆された支持体が得られる。ここでは、得られた支持体周囲の未加硫ゴム層の端部を定尺で切り取ったものを、未加硫ゴムローラ4とした。
【0037】
本発明で使用される支持体は、剛性のあるものであるならどんな材料でもよく、例えば、アルミ、鉄、SUS等の金属類や、エンジニアリングプラスチック、カーボンコンポジット材料等が挙げられる。帯電ローラのように、支持体から電圧を印加して、感光体を帯電させる部材においては、剛性と導電性と成形性の観点から、SUSが望ましい。
【0038】
本発明で使用されるポリマー原料としては、以下のものが挙げられる。天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴムなど。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化に対する効果を考えると、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)が、より好ましい。
【0039】
本発明で使用される添加剤としては、導電剤、加硫剤、加硫促進剤が挙げられる。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、CNT、導電性金属酸化物(酸素欠損タイプ)、ITO、アンチモンドープ酸化スズ、アンモニウム塩系のイオン導電剤、イオン性液体等が挙げられる。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化に対する効果を考えると、下記(1)〜(3)から選ばれる少なくとも1つのカーボンブラックが好適に用いられる。
(1)BET(窒素吸着比表面積)が小さくかつDBP(ジブチルフタレート)吸油量が小さいカーボンブラック、
(2)BET(窒素吸着比表面積)が小さくかつDBP(ジブチルフタレート)吸油量が大きいカーボンブラック、
(3)BET(窒素吸着比表面積)が大きくかつDBP(ジブチルフタレート)吸油量が大きいカーボンブラック。
【0040】
加硫剤、加硫促進剤としては、硫黄、チアゾール系、チウラム系、ジチオカルバミン塩酸系等が挙げられる。また、その他、充填剤、可塑剤等適宜添加してもよい。
【0041】
次に本発明の工程である未加硫ゴムの層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を変化させつつ、該型の表面に無機粒子を供給しながら、該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程について説明する。ここで、型とは、第一の製造方法と同様に、未加硫ゴム層の表面の無機粒子層を押し込み、未加硫ゴム層の内部に埋め込むための圧接部材である。また、型の押し当て場所を変化させる際は、無機粒子の層の全体を押し当てる対象として含み、一定の間隔で層の全体に押し当てるようにすることが層全体に均等に押し当られるため望ましい。図4が工程(ii)を模式的に示した説明図の一例である。図4(a)が正面図、図4(b)が側面図である。工程(i)で作成した未加硫ゴムローラ4の表面に対して、型として圧接部材8を押し当てる。そして、圧接部材の全面に粉体を塗布できるように、粉体塗布装置6を圧接部材8の上方に設置する。図中では、粉体塗布装置を5つ設置したが、粉体塗布装置に設置数は任意に設定してよい。また、1つの粉体塗布装置を圧接部材8の上方で水平にトラバースさせてもよい。前述のように粉体塗布装置6から無機粒子を塗布しながら、未加硫ゴムローラ4をローラ保持部材13で保持し、加圧部材14で圧接部材8に押し当て、圧接部材8を圧接部材回転冶具15で回転させながら、無機粒子を未加硫ゴム層の表面に埋め込み、加硫ゴムを形成する。圧接部材8の内部にヒーターを設置して、無機粒子の埋め込みと加硫を行ってもよい。また、装置内部の熱風など加熱して加硫を行ってもよい。
【0042】
加圧部材14は、バネ加圧で行うのが好ましい。無機粒子としては、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銀、酸化銅、酸化セレン、カーボン類、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等が挙げられる。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化の観点から特に望ましいのは、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)である。これらの無機粒子は、粉末状の微細な粒子であることが好ましく、一次粒径が10nm〜100nmのものを好適に用いることができる。また、これら無機粒子を疎水化処理すると、通電劣化の抑制効果がさらに大きくなる。疎水化処理剤としては以下のものが挙げられる。トリメチルシラン、トリエチルシラン等のシラン化合物、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等のシリコーンオイル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩等。疎水化処理を行うことで、酸化劣化の原因である水分の吸水や吸着を抑制できるからである。未加硫ゴム層の厚さが薄い場合には、加圧に伴う未加硫ゴム組成物層の変形によって、未加硫ゴム組成物層を支持する支持体と圧接部材が干渉することがあるので、未加硫ゴム層の厚さは、0.25mm以上であることが好ましい。また、本発明の方法により層の厚さは5.0mm以下のものであれば製造することができるがこの範囲に限定されない。未加硫ゴム層の粘度が低すぎると、圧接時に変形が大きくなりすぎて回転に伴って未加硫ゴムローラ7が円筒形状を維持できなくなる。また、未加硫ゴム層の粘度が高くなりすぎると、無機粒子の埋め込みが不十分になる。そのような場合には、圧接部材の温度、雰囲気温度、圧接圧力、未加硫ゴム層の材料組成等で適宜調整することが可能である。また、上記の観点から、未加硫ゴムの好ましい粘度は、JIS K6300-1に記載されるムーニ−粘度測定で10から100ML(1+4)100℃の範囲内に調整するのが好ましい。
【0043】
圧接部材8は、型として未加硫ゴムの表面の無機粒子を押しこみながら、未加硫ゴムを加硫するための部材であるため、熱伝導性の良いSUS、ニッケルなどの金属類が好ましい。
【0044】
また、無機粒子の押しこみ効率を向上させるために、圧接部材8に、クロームメッキ、ニッケルメッキ、フッ素含有ニッケルメッキ等のメッキ類の他に、フッ素コーティング、フッ素樹脂・シリコーン樹脂等をコーティングしたものを用いることができる。また、フッ素系・シリコーン系の離型剤を塗布したもの、その他公知の金属の表面処理を施したものを用いてもよい。特に望ましいのは、フッ素コーティング、フッ素樹脂・シリコーン樹脂等の離型性の表面処理である。離型性の表面処理を行うことで、未加硫ゴム表面に埋め込まれる無機粒子の効率が向上し、圧接部材上に無機粒子が残存する確率が減少する。圧接部材8の幅は、未加硫ゴムの層の幅と等しいかもしくは長い部材を用いることが好ましい。圧接部材8の形態としては、円筒状、平面状、無端ベルト状等が望ましい(図は円筒状の模式図である)。また、得られるローラ部材を長手方向で径が異なるクラウン形状や逆クラウン形状にするために、逆クラウン形状(中央部の径が端部の径よりも小さい)、或いはクラウン形状(中央部の径が端部の径よりも大きい)の圧接部材を用いても良い。また、未加硫ゴムローラは加硫の最後まで圧接回転させつづけなくてもよく、粒子の埋め込みが進行するまで行えば、その後は熱風炉の中などで圧接回転しない状態で加熱しても良い。
【0045】
本発明の第二の製造方法は、第一の製造方法に比べて、製造工程の数を短縮することができるだけでなく、表面に埋め込む粒子の供給量を制御することで、無機粒子の層の層厚を任意に変えることができる利点がある。
【0046】
また、前記第一、第二の製造方法において、該型の温度を制御して、該無機粒子の埋め込みを進行させた後に未加硫ゴムの加硫を行うことが好ましい。具体的には、圧接部材の初期の温度を加硫が進行しない温度、例えば80℃〜120℃に制御して所定の時間、圧接して無機粒子の埋め込みを促進させる。そのような温度で圧接する理由は、未加硫ゴムの粘度が熱よって低粘度化して、より均一に無機粒子の埋め込むことできるからである。その後、加硫を進行させるために、圧接部材の温度を加硫が進行する温度、例えば140℃〜220℃に制御する。このような工程を経ることで、埋め込まれた無機粒子をゴム内部に固定することが可能である。また、加硫開始温度に関しては、加硫剤、加硫促進剤の配合処方にも依存する。加硫剤については、硫黄が好ましく、加硫促進剤については、硫黄加硫促進剤が好ましい。加硫促進剤に関しては、チアゾール系、チウラム系、ジチオカルバミン酸系、チオウレア系、グアニジン系、スルファンアミド系等の硫黄加硫促進剤を、1種類、または複数併用するのが好ましい。加硫剤、加硫促進剤の種類、配合量を組み合わせて、加硫の進行しない温度と加硫が進行する温度の境界線を明瞭にすることが望ましい。そのための指標として、JIS K6300-1に記載される未加硫ゴムのスコーチタイムや、JIS K6300-2に記載される未加硫ゴムの加硫曲線の測定等が挙げられる。例えば、100℃におけるスコーチタイムt5が20(分)以上、160℃おける加硫曲線のtC(50)が15分以内である未加硫ゴムは、型の温度を段階的に変化させる製造方法に好ましい配合である。
【0047】
(導電性ローラ)
次に本発明の製造方法で得られた導電性ローラについて説明する。図5は前述の製造方法により得られた導電性ローラの模式図である。導電性ローラのゴム層の表面には、無機粒子が埋め込まれ層を形成している。埋め込められるとは、付着と異なり、無機粒子がゴム層の内部に達し、厚さを持った層を形成していることを示す。無機粒子の層の層厚は、SEM、TEM等の断面観察手法、ESCA、EDX等の表面元素分析手法で測定可能である。無機粒子の層厚としては10μm以内であれば、導電性ローラの導電性に影響を及ぼすが小さい。10μm超では導電性ローラの抵抗が高抵抗化して、導電性が必須となる用途(例えば、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ)には適用できなくなる。大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化の観点から、無機粒子の層厚が30nm以上であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0048】
表面に埋め込まれた無機粒子の層の通電劣化に対する効果について説明する。無機粒子は放電による酸化劣化することなく、かつ、表面に付着した有機物や放電生成物が酸化劣化して活性ラジカルが発生したとしても、無機粒子の層が内部に酸化劣化が進行するのを阻止する働きをする。すなわち、無機粒子の層が帯電ローラ表面の放電劣化の阻止層となって、大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化を向上させることができる。また、無機粒子に疎水化処理を行うことで、表面に付着する有機物や放電生成物の付着量を抑制し、活性ラジカルの発生を減少させて、無機粒子層の阻止層効果を助ける働きがある。これにより、一層大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化を向上させることができる。
【0049】
無機粒子の種類に対する効果について説明する。無機粒子はトナー外添剤と同種類の無機粒子を用いることが好ましい。電子写真プロセスにおいて、トナー外添剤は転写残トナーのクリーニングシステムを成立させるために重要な役割を果たす。しかし、クリーニングブレード等のクリーニング手段をすり抜け、帯電ローラ表面を汚染する弊害が発生する可能性がある。このような帯電ローラ汚染に対して、外添剤と同種類の無機粒子を用いることで、大電流通電条件で高温高湿環境における通電劣化の抑制効果だけでなく、帯電ローラ汚染に起因する画像不良の抑制効果も期待できる。従って、トナー外添剤として、好適な材料であるシリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を無機粒子として、1種類もしくは複数併用することがより好ましい。
【0050】
(電子写真装置)
次に、本発明の導電性ローラを帯電ローラとして具備した電子写真装置について説明する。図6は、本発明の電子写真装置の模式的に示した説明図の一例である。当該電子写真装置は、下記(1)〜(7)を有する。
(1)電子写真感光体17(図6では軸18を有する)、
(2)感光体表面を帯電する帯電手段(図6では帯電ローラ16)、
(3)感光体を露光して潜像を形成する潜像形成手段(図6では露光手段19)、
(4)トナーを感光体上に供給する現像手段20、
(5)感光体上のトナー像を被転写体に転写する転写手段21、
(6)感光体上の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段22、
(7)トナー像が形成された被転写体を定着する定着手段23。
【0051】
電子写真感光体としては、珪素原子を主成分とする非晶質材料で形成した光導電層有する電子写真感光体、または表面保護層と感光層の合計の層厚が20μm以下の有機感光体を好適に用いることができる。帯電手段としては、近接または接触方式による本発明の帯電ローラを用いたローラ帯電を用いるのが望ましい。通電劣化の抑制する効果があるからである。
【0052】
珪素原子を主成分とする非晶質材料で形成した光導電層有する電子写真感光体としては、例えばAl、ステンレスなどの導電性材料からなる基体上に、光導電層および表面保護層を順次積層したものである。なお、これら層の他に、阻止層、反射防止層ないし界面層などの種々の機能層を必要に応じて設けてもよい。例えば、阻止層、界面層などを設けそのドーパントをIII族元素、V族元素など選択することにより、正帯電、負帯電といった帯電極性の制御も可能となる。本発明においては、帯電性生成物による画像ボケ等の画像不良の観点から、正帯電性のシリコンドラムが望ましい。基体形状は電子写真感光体の駆動方式などに応じた所望のものとしてよい。基体材質としては上記Alやステンレスのような導電性材料が一般的であるが、例えば各種のプラスチックやセラミックスなど、特には導電性を有しないものにこれら導電性材料を蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。光導電層としては、シリコン原子が水素原子およびハロゲン原子を含む非晶質材料(「a―Si(H,X)」と略記する)が挙げられる。また、光導電層の層厚としては特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると、15〜50μm程度が適当である。さらに、特性を向上させるために下部光導電層と上部光導電層のように複数の層構成にしてもよい。特に、半導体レーザーのように、比較的長い波長であって且つ波長バラツキのほとんどない光源に対しては、こうした層構成の工夫によって画期的な効果が現れる。表面保護層は、一般的にa―SiC(H, X)で形成されるが、a―C(H,X)としてもよい。また、光導電層と表面保護層の界面組成を連続的に変化させ、当該部分の界面反射を抑制させるように制御することが好ましい。
【0053】
表面保護層と感光層の合計の層厚が20μm以下の有機感光体としては、例えばAl、ステンレスなどの導電性材料からなる基体上に導電層、中間層、感光層、表面保護層をこの順に設けてなる電子写真感光体である。導電層の結着樹脂としては、熱硬化性フェノール樹脂が好ましい。中間層としては、導電層から感光層への電荷注入を阻止するために、中間層の体積抵抗率を1×109〜1×1013Ω・cmに設定することが好ましい。非結晶性の共重合性ナイロンなどが好ましい。中間層の膜厚は0.1〜2μmであることが好ましい。感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型感光層であってもよい。電子写真特性の観点から積層型感光層の方が好ましい。また、積層型感光層には支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層と、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層があるが、電子写真特性の観点から順層型感光層が好ましい。感光層の膜厚は、15μm以下であることが望ましい。表面保護層としては、不飽和二重結合を有する連鎖重合性化合物を、感光層上に塗布後硬化することで形成される。連鎖重合性化合物は熱でも硬化反応を行うこともできるが、紫外線あるいは電子線などを使用して硬化することも可能である。保護層の膜厚は1〜5μmであること望ましい。潜像形成手段としては、半導体レーザーを用いたレーザー露光装置を採用するのが好ましい。また、潜像形成方式については、例えば、アモルファスシリコン感光体を用いる場合にはバックスキャン方式を、薄膜有機感光体を用いる場合にはイメージスキャン方式を採用するのが好ましい。現像手段としては、アモルファスシリコン感光体の場合は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を用いるのが好ましい。トナーはスチレン共重合体、エステルワックスを含有する粉砕トナーで負帯電性である。また、外添剤としては酸化チタン、シリカ、チタン酸ストロンチウムを用いるのが好ましい。キャリアとしては、磁性分散型キャリア粒子を用いるのが望ましい。現像方式に関しては、アモルファスシリコン感光体を用いた電子写真装置の場合は、正帯電感光体と負帯電性トナーを用いた正規現像方式を、薄膜有機感光体の電子写真装置の場合は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を採用するのが好ましい。トナーは、結着樹脂、着色剤、そして、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子と、コロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている着色粒子とを有している。そして、トナーは、負帯電性のポリエテスル系樹脂であり、体積平均粒径は5μm以上かつ8μm以下が好ましい。キャリアは、例えば表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが好適に使用可能であり、これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。そして、キャリアは、重量平均粒径が20〜50μm、好ましくは30〜40μmであり、抵抗率が107Ωcm以上、好ましくは108Ωcm以上である。本発明における薄膜有機感光体を用いた電子写真装置の現像方式は、負帯電感光体と負帯電性トナーを用いた反転現像方式である。転写手段としては、転写ローラを用いて被転写体(紙・OHP等のメディア)に直接転写する転写手段か、または転写ベルト等の中間転写体に一次転写する転写手段を用いるのが好ましい。クリーニング手段としては、ブレード状の部材によるブレードクリーニングや、ブラシ状の部材によるブラシクリーニング、その両方を用いる方法を用いるのが好ましい。定着手段としては、転写材24に転写されたトナー画像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであれば特に制限はない。
【0054】
本発明の導電性ローラを帯電ローラとして用いる時の電気抵抗値について述べる。図7は導電性ローラを金属ドラムに圧接させた状態で回転させながら直流電圧を印加して測定する方法の説明図の一例である。300V印加で測定した電気抵抗値が1.0×104Ω以上1.0×107Ω以下であることが望ましい。1.0×104Ω未満では、感光体リークを引き起こしやすくなり、1.0×107Ω超では、帯電不良が発生して感光体上に所望の電位を乗せることが困難になるからである。より好ましい電気抵抗値の範囲は5.0×104Ω以上1.0×106Ω以下である。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を実施例に沿って説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0056】
「実施例1」
下記の材料をオープンロールにて混合して未加硫ゴム組成物を調製した。
・未加硫ゴムとしてスチレン−ブタジエンゴム(JSR社製、JSR1502):100部、
・酸化亜鉛(酸化亜鉛JIS2、正同化学製):5部、
・炭酸カルシウム(白石カルシウム製、シルバーW):20部、
・カーボンブラック(ケッチェンブラックとMTカーボンの混合):45部、
・ステアリン酸亜鉛:1部、
・可塑剤としてアジピン酸エステル(大日本インキ化学工業製、ポリサイザーW305ELS):10部、
・加硫剤として硫黄:1部、
・架橋助剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(大内新興化学工業製、ノクセラーTRA):2部
図1に模式的に示す押出し機に内径がφ12mmであるダイをセットし、あらかじめクロスヘッドの温度を80℃に温調した。次に図8に示すSUS製の支持体を用意して、上記の未加硫ゴム組成物ととともに押出すことで、芯金の周囲に円筒状の未加硫ゴム組成物の層を成形した。その後、図9に示す形になるように端部の余分な未加硫ゴム組層を切断、除去処理を行い、未加硫ゴムローラを調製した。
【0057】
次に、図2に模式的に示す粉体塗布装置を用いて未加硫ゴムローラに無機粒子の層を形成する工程を行った。粉体塗布装置としては、静電塗装装置を用いた。無機粒子として、以下の3種を用いた。
・シリカ(日本アエロジル社製疎水化処理品:(商品名)AEROSIL RX200、一次粒径12nm)、
・酸化チタン(テイカ社製疎水化処理品:(商品名)MT−100T、一次粒径15nm)、
・チタン酸ストロンチウム(チタン工業社製:(商品名)SW−360/ステアリン酸亜鉛3%処理品、一次粒径50nm)。
【0058】
こうして、上記の各々の無機粒子の層を形成した未加硫ゴムローラを得た。
【0059】
次に、粉体塗布した未加硫ゴムローラの各々を、図3に模式的に示す圧接加硫装置を用いて、無機粒子の押しこみと加硫を行った。圧接部材の表面をシリコーン系離型剤でコーティングした。圧接部材の内部にIHヒーターを搭載した。粉体塗布した未加硫ゴムローラを圧接部材に当接しながら、15分間80℃で表面を加熱した。その後、圧接部材の温度を160℃に変更し、30分間加熱した。圧接加重は、片側1kgの重りで加重した。その後、圧接部材からローラを離し、圧接加硫装置内部の温度を熱風により160℃に1時間保温し、加硫を完了させた。このような工程を経て、シリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムの三種類の無機粒子が表面に埋め込まれた導電性ローラを作製した。そのうちの1本の表面から断面切片を切り出しで、透過電子顕微鏡(日立社製:H−9500)で断面観察を行い、ローラ表面を基準とした無機粒子の層厚を求めた。シリカの場合、層厚は120nmであった。酸化チタンの場合、層厚は150nmであった。チタン酸ストロンチウムの場合、層厚は500nmであった。
【0060】
(通電劣化試験)
キヤノン社製複写機GP405を改造し、プロセス速度を400mm/sに設定した。また、帯電バイアスは外部電源から供給した。帯電条件、露光方式、現像手段は、感光体ドラムにあわせて下記に記した方式/条件に設定した。改造機は図6に示す。感光体について、二種類の感光体を用いて試験を行った。アモルファスシリコン(a−Si)感光体については、正帯電のa−Si系感光体として、φ80mmのAlからなる導電性支持体の表面に順次積層させたもので、負電荷阻止層、光導電層、表面保護層から構成される感光体ドラムを用いた。トナー及びキャリアについては、トナーはスチレン共重合体にエステルワックス、着色剤を分散させた負帯電性の粉砕トナーであり、外添剤は、シリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムを用いた。トナーの平均粒径は6.8μmであった。キャリアは、フェノール樹脂にマグネタイトを分散させた磁性粒子分散型キャリア粒子を用いた。キャリアの平均粒径は35μm、抵抗率は109Ωcmであった。現像手段は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を用いた。帯電条件はDC電圧+600V、AC電圧1.5kV、AC周波数3.5kHzである。露光方式は、バックスキャン方式に変更した。
【0061】
薄膜有機感光体は、アルミシリンダーと、感光層と保護層とを有する。該感光層は、電子輸送性有機化合物を含有する層厚1μmの中間層、フタロシアニン系電荷発生物質を含有する層厚0.15μmの電荷発生層、及びトリアリールアミン系の電荷輸送材料を願ゆする層厚10μmの電荷輸送層からなる。また、該保護層は、層厚5μmの光重合性化合物からなる層厚5μmの保護層である。トナーはシリカと酸化チタンを外添した負帯電性のポリエテスル系樹脂に着色剤としてカーボンブラックを分散させた粉砕トナーを用いた。トナーの平均粒径は7.0μmであった。キャリアは、酸化物フェライトを使用した。キャリアの平均粒径は30μmであり、抵抗率は108Ωcmであった。現像手段は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を用いた。帯電条件はDC電圧−750V、AC電圧2.0kV、AC周波数3.2kHzに設定し、露光方式はイメージスキャン方式を採用した。実施例1で作製したシリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムを埋め込んだ導電性ローラを帯電ローラと感光体を搭載して、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)において、通紙耐久試験を行った。電気抵抗値の測定は図7の装置を用いて行った。耐久前の電気抵抗値は5.0×104Ω〜2.0×105Ωの範囲に入る導電性ローラを選択して搭載し、25万枚後の帯電ローラの電気抵抗値を測定した。通電劣化の評価は以下の基準で行った。
◎:25万枚耐久後の帯電ローラの電気抵抗値が5.0×104Ω以上5.0×106Ω未満である。非常に良好な通電耐久性を示した。
○:25万枚耐久後の帯電ローラの電気抵抗値が5.0×106Ω以上1.0×107Ω未満である。若干、通電耐久性は劣るが、実用上問題のないレベルであった。
×:25万枚耐久後の帯電ローラの電気抵抗値が1.0×107Ω以上である。通電耐久性が良くなく、実用に耐えうるレベルではなかった。
【0062】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0063】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/◎
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/◎
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/◎
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/◎
無機粒子/理酸化チタン:通電劣化の評価/◎
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/◎
以上のように、本発明の製造方法で無理粒子を埋め込んだ導電性ローラは通電劣化に対して十分な効果が得られた。
【0064】
「実施例2」
下記の材料をオープンロールで混合した。
・未加硫ゴムとしてスチレン−ブタジエンゴム(JSR社製、JSR1502)100部、
・酸化亜鉛(酸化亜鉛JIS2、正同化学製)5部、
・炭酸カルシウム(白石カルシウム製、シルバーW)20部、
・カーボンブラック(ケッチェンブラックとMTカーボンの混合)45部、
・ステアリン酸亜鉛1部、
・可塑剤としてアジピン酸エステル(大日本インキ化学工業製、ポリサイザーW305ELS)10部、
・加硫剤として硫黄1部、
・架橋助剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(大内新興化学工業製、ノクセラーTRA)2部。
【0065】
得られた未加硫ゴムの層を支持体の周囲に成形するために、図1に模式的に示す押出し機に内径がφ12mmであるダイをセットし、あらかじめクロスヘッドを80度に温調した。次に図8に示すSUS製の支持体を用意してゴムととともに押出すことで、芯金の周囲に円筒状の未加硫ゴム組成物層を成形した。その後、図9に示す形になるように端部の余分な未加硫ゴム組層を切断、除去処理を行い、未加硫ゴムローラを調製した。
【0066】
次に、図4に模式的に示す粉体塗布と圧接加硫を同時に行える装置を用いて未加硫ゴムローラに無機粒子を埋め込みながら加硫する工程を行った。粉体塗布装置としては、スプレー塗装装置を用いた。無機粒子には、実施例1と同じ3種を用いた。
【0067】
各々の無機粒子の層を形成した3本の未加硫ゴムローラを作製した。圧接部材の表面をシリコーン系離型剤でコーティングした。圧接部材の内部にIHヒーターを搭載した。粉体塗布した未加硫ゴムローラを圧接部材に当接しながら、15分間80℃で表面を加熱した。その後、圧接部材の温度を160℃に変更し、30分間加熱した。圧接加重は、片側1kgの重りで加重した。その後、圧接部材からローラを離し、圧接加硫装置内部の温度を熱風により160℃に1時間保温し、加硫を完了させた。このような工程を経て、シリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムの三種類の無機粒子が表面に埋め込まれた導電性ローラを3本ずつ作製した。そのうちの1本の表面から断面切片を切り出しで、TEMで断面観察を行い、ローラ表面を基準とした無機粒子の層厚を求めた。シリカの場合、層厚は180nmであった。酸化チタンの場合、層厚は225nmであった。チタン酸ストロンチウムの場合、層厚は750nmであった。
【0068】
(通電劣化試験)
実施例2の製法で作製した導電性ローラを帯電ローラとして搭載した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
【0069】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0070】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/◎
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/◎
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/◎
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/◎
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/◎
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/◎
以上のように、本発明の製造方法で無理粒子を埋め込んだ導電性ローラは通電劣化に対して十分な効果が得られた。
【0071】
「実施例3」
圧接部材の加熱温度を80℃15分、その後160℃30分という設定を、160℃45分に変更した以外は、実施例1と同様の製造方法で、無機粒子の埋め込まれた導電性ローラを作製し帯電ローラとして用いて、実施例1と同様の通電劣化試験を行った。TEMで断面観察を行い、ローラ表面を基準とした無機粒子の層厚を求めた。シリカの場合、層厚は60nmであった。酸化チタンの場合、層厚は75nmであった。チタン酸ストロンチウムの場合、層厚は250nmであった。
【0072】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0073】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
以上のように、本発明の製造方法で無理粒子を埋め込んだ導電性ローラは通電劣化に対して実用上問題のない程度の効果が得られた。
【0074】
「実施例4」
圧接部材の加熱温度を80℃15分、その後160℃30分という設定を、160℃45分に変更した以外は、実施例2と同様の製造方法で、無機粒子の埋め込まれた導電性ローラを作製し帯電ローラとして用いて、実施例2と同様の通電劣化試験を行った。TEMで断面観察を行い、ローラ表面を基準とした無機粒子の層厚を求めた。シリカの場合、層厚は85nmであった。酸化チタンの場合、層厚は100nmであった。チタン酸ストロンチウムの場合、層厚は350nmであった。
【0075】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0076】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
以上のように、本発明の製造方法で無理粒子を埋め込んだ導電性ローラは通電劣化に対して実用上問題のない程度の効果が得られた。
【0077】
「実施例5」
塗布する無機粒子を、以下の3種とした以外は、実施例1と同様の製造方法で、無機粒子の埋め込まれた導電性ローラを作製し帯電ローラとして用いて、実施例1と同様の通電劣化試験を行った。
・シリカ(日本アエロジル社製:(商品名)AEROSIL 200、一次粒径12nm)
・酸化チタン(テイカ社製:(商品名)MT−150W、一次粒径15nm)
・チタン酸ストロンチウム(チタン工業社製:(商品名)SW−360/未処理、一次粒径50nm)に変更した以外は、TEMで断面観察を行い、ローラ表面を基準とした無機粒子の層厚を求めた。シリカの場合、層厚は70nmであった。酸化チタンの場合、層厚は85nmであった。チタン酸ストロンチウムの場合、層厚は300nmであった。
【0078】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0079】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
以上のように、本発明の製造方法で無理粒子を埋め込んだ導電性ローラは通電劣化に対して実用上問題のない程度の効果が得られた。
【0080】
「実施例6」
供給する無機粒子を、下記の3種に変えた以外は、実施例2と同様にして導電性ローラを製造した。
・シリカ(日本アエロジル社製:(商品名)AEROSIL 200、一次粒径12nm)
・酸化チタン(テイカ社製:(商品名)MT−150W、一次粒径15nm)
・チタン酸ストロンチウム(チタン工業社製:(商品名)SW−360/未処理、一次粒径50nm)
得られた導電性ローラを、帯電ローラとして用いて、実施例2と同様の通電劣化試験を行った。また、TEMで断面観察を行い、ローラ表面を基準とした無機粒子の層厚を求めた。シリカの場合、層厚は90nmであった。酸化チタンの場合、層厚は110nmであった。チタン酸ストロンチウムの場合、層厚は400nmであった。
【0081】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0082】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/シリカ:通電劣化の評価/○
無機粒子/酸化チタン:通電劣化の評価/○
無機粒子/チタン酸ストロンチウム:通電劣化の評価/○
以上のように、本発明の製造方法で無理粒子を埋め込んだ導電性ローラは通電劣化に対して実用上問題のない程度の効果が得られた。
【0083】
「比較例1」
実施例1と同様の製造方法で工程(ii)を行わず、無機粒子の層がない導電性ローラを
作製し、帯電ローラとして用いて、実施例1と同様の通電劣化試験を行った。
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0084】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/無し:通電劣化の評価/×
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/無し:通電劣化の評価/×
以上のように、無理粒子を埋め込まれてない導電性ローラは通電劣化に対して十分な効果が得られていない。
【0085】
「比較例2」
実施例2と同様の製法で無機粒子の供給を行わず、無機粒子の層がない導電性ローラを作製し、帯電ローラとして用いて、同様の通電劣化試験を行った。
【0086】
通電劣化試験の結果は以下の通りであった。
【0087】
感光体がアモルファスシリコンの場合
無機粒子/無し:通電劣化の評価/×
感光体が薄膜有機感光体の場合
無機粒子/無し:通電劣化の評価/×
以上のように、無理粒子を埋め込まれてない導電性ローラは通電劣化に対して十分な効果が得られていない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程の模式図である。
【図2】未加硫ゴムの層の表面に無機粒子の層を形成する工程の模式図である。
【図3】無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程の模式図である。(a)が正面図、(b)が側面図である。
【図4】型に無機粒子を供給しながら、無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程の模式図である。(a)が正面図、(b)が側面図である。
【図5】埋め込まれた無機粒子の層の模式図である。
【図6】本発明の電子写真装置の模式図である。
【図7】本発明で用いた電気抵抗測定装置の模式図である。
【図8】本発明で用いた支持体の模式図である。
【図9】本発明で用いた導電性ローラの模式図である。
【符号の説明】
【0089】
1.押出機
2.クロスヘッド
3.送りローラ
4.未加硫ゴムローラ
5.保持冶具
6.粉体塗布装置
7.無機粒子の層を形成した未加硫ゴムローラ
8.圧接部材
9.保持部材
10.モーター
11.レール
12.重り
13.ローラ保持部材
14.加圧装置
15.圧接部材回転冶具
16.帯電ローラ
17.電子写真感光体
18.軸
19.露光手段
20.現像手段
21.転写手段
22.クリーニング手段
23.定着手段
24.転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程と、
(ii)該未加硫ゴムの層の表面に無機粒子の層を形成する工程と、
(iii)該無機粒子の層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を一定間隔で該無機粒子の層の全体に押し当てるように変化させつつ、該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程と、
を有する導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
(i)支持体上に導電性の未加硫ゴムの層を形成する工程と、
(ii)該未加硫ゴムの層の表面に型を押し当てながら、該型の押し当て場所を一定間隔で該未加硫ゴムの層の全体に押し当てるように変化させつつ、該未加硫ゴムの層に押し当てられていない領域の該型の表面に無機粒子を供給し、かつ該未加硫ゴムを加硫して、該無機粒子が埋め込まれたゴム層を形成する工程と、
を有する導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
該未加硫ゴムの層の表面に押し当てる型を制御して、該無機粒子の埋め込みを進行させた後に未加硫ゴムの加硫を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
該型に離型性の表面処理を施したこと特徴とする請求項1乃至3何れか記載の製造方法。
【請求項5】
該無機粒子に疎水化処理を施したことを特徴とする請求項1乃至4何れか記載の製造方法。
【請求項6】
該無機粒子がシリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムの何れかであること特徴とする請求項1乃至5何れか記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6何れか記載の製造方法で製造した導電性ローラを帯電ローラとして用いたことを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−76205(P2010−76205A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246066(P2008−246066)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】