説明

導電性ローラ及びそれを備えた画像形成装置

【課題】金属製シャフトと弾性層とを備え、高温、高湿下における金属製シャフト上での錆の発生が抑制された導電性ローラを提供する。
【解決手段】金属製シャフト2A,4A,5A,7Aと、該金属製シャフトの外周に形成された発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーからなる弾性層2B,4B,5B,7Bとを備えた導電性ローラにおいて、前記弾性層に1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有させる。前記1価のテトラフルオロホウ酸塩としては、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム及びテトラフルオロホウ酸カリウムが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製シャフトと弾性層とを有する導電性ローラ及び該導電性ローラを備えた画像形成装置に関し、特に金属製シャフトにおける錆の発生が抑制された導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として、ロール形状の導電性部材、即ち導電性ローラが多用されており、該導電性ローラは、通常、シャフトと、該シャフトの外周に配設された弾性層とを備えている。
【0003】
上記導電性ローラのシャフトは、通常、金属からなるため、防錆処理が施されている。従来、金属製のシャフトの防錆処理方法としては、クロム酸処理が一般的であったが、昨今の環境及び健康への関心の高まりによって、他の処理が検討されている。しかしながら、他の処理は防錆効果が不十分であるため、金属製シャフトの表面に錆が発生しやすいという問題がある。
【0004】
また、上記導電性ローラの弾性層には、ポリウレタン、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)等のエラストマーやこれらを発泡させた発泡体を主成分とし、これに導電性を付与するためにカーボンブラック等の電子導電剤及び過塩素酸塩や4級アンモニウム塩等のイオン導電剤を添加した組成物が使用されている。ここで、カーボンブラック等の電子導電剤を弾性層に使用した場合、弾性層の導電性が使用環境に大きく依存するという問題がある。一方、イオン導電剤を弾性層に使用した場合は、弾性層の導電性の環境依存性を低減できる利点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−10764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、従来、イオン導電剤として使用されている過塩素酸塩や4級アンモニウム塩は、酸化力が強いため、これらのイオン導電剤を添加した弾性層と金属製シャフトとを備える導電性ローラは、高温、高湿下で放置された場合に、シャフトの表面に錆が発生する問題があることが分った。ここで、シャフトの表面に錆が発生すると、シャフトと弾性層の密着性が低下したり、更にはシャフトと弾性層とが剥離したりして、ローラの導電不良や形状不良を引き起こすという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、金属製シャフトと弾性層とを備え、高温、高湿下における金属製シャフト上での錆の発生が抑制された導電性ローラを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる導電性ローラを備え、該ローラの導電不良及び形状不良が防止されているため、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、金属製シャフトと、発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーからなる弾性層とを備えた導電性ローラにおいて、弾性層に添加するイオン導電剤として酸化力が弱い1価のテトラフルオロホウ酸塩を選択することで、導電性ローラを高温、高湿下で放置しても、金属製シャフトの表面に錆が発生することがなく、導電性ローラの導電不良及び形状不良を防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の導電性ローラは、金属製シャフトと、該金属製シャフトの外周に形成された発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーからなる弾性層とを備えた導電性ローラにおいて、前記弾性層が1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の導電性ローラの好適例においては、前記1価のテトラフルオロホウ酸塩が、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム及びテトラフルオロホウ酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0011】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、前記弾性層が、ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー100質量部に対して、ポリオール1〜50質量部と、1価のテトラフルオロホウ酸塩0.1〜10質量部とを含有してなるポリウレタン原料を用いてプレポリマー法で形成されたものである。
【0012】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、前記弾性層が、ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート1〜50質量部と、1価のテトラフルオロホウ酸塩0.1〜10質量部とを含有してなるポリウレタン原料を用いてワンショット法で形成されたものである。
【0013】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、前記弾性層が、ポリウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ポリウレタンからなる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、上記の導電性ローラを備えることを特徴とし、該導電性ローラを、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ及び転写ローラの少なくともいずれかとして備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属製シャフトと、イオン導電剤として1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有する発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマー製の弾性層とを備え、高温、高湿下での金属製シャフト上における錆の発生が抑制された導電性ローラを提供することができる。また、かかる導電性ローラを備え、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<導電性ローラ>
以下に、本発明の導電性ローラを詳細に説明する。本発明の導電性ローラは、金属製シャフトと、該金属製シャフトの外周に形成された弾性層とを備え、該弾性層が発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーからなり、更に該弾性層が1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有することを特徴とする。本発明の導電性ローラの弾性層は、イオン導電剤を含むため、導電性の環境依存性が小さい。また、本発明の導電性ローラの弾性層は、イオン導電剤として酸化力の弱い1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有するため、高温・高湿の環境下に長期間放置されても、金属製シャフトの表面に錆が発生しにくい。このため、環境に悪いクロム酸処理を排除することができる。
【0017】
本発明の導電性ローラにおいて、上記金属製シャフトの材質としては、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等を例示することができる。また、該金属製シャフトは、金属製の中実体からなる芯金であってもよいし、内部を中空にくりぬいた金属製の円筒体であってもよい。
【0018】
本発明の導電性ローラの弾性層は、1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有する発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーからなり、更に触媒、整泡剤、電子導電剤等の公知の添加剤を含むことができる。
【0019】
ここで、上記弾性層は、ウレタンプレポリマー及びポリオールを含むポリウレタン原料を用いてプレポリマー法で形成されたものであってもよいし、ポリオール及びポリイソシアネートを含むポリウレタン原料を用いてワンショット法で形成されたものであってもよい。なお、発泡ポリウレタンからなる弾性層を形成する場合は、ポリウレタン原料を機械撹拌発泡して形成することが好ましい(メカニカルフロス法)。
【0020】
上記ポリウレタン原料として用いるポリオールは、水酸基を複数有する化合物であって、該ポリオールとして、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、アルキレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。なお、上記ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られ、また、上記ポリエステルポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多塩基カルボン酸とから得られる。これらポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0021】
上記ポリウレタン原料として用いることができるポリイソシアネートは、イソシアネート基を複数有する化合物であって、該ポリイソシアネートとして、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等が挙げられる。これらポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0022】
上記ポリウレタン原料として用いることができるウレタンプレポリマーは、上記のポリオール及びポリイソシアネートから合成される。ウレタンプレポリマーの合成においては、目的に応じて、ポリオールとポリイソシアネートとの割合を適宜選択することができる。なお、該ウレタンプレポリマーは、NCO(イソシアネート基)含有率が1〜10%の範囲にあることが好ましい。
【0023】
上記ポリイソシアネート又はウレタンプレポリマーの使用量は、該ポリイソシアネート又はウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)と上記ポリオールの水酸基(OH)との比(NCO/OH)が90/100〜120/100の範囲になるよう適宜選択されることが好ましい。
【0024】
本発明の導電性ローラの弾性層は、1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有することを要する。ここで、1価のテトラフルオロホウ酸塩としては、弾性層の導電性向上効果の観点から、アルカリ金属のテトラフルオロホウ酸塩が好ましく、より具体的には、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)及びテトラフルオロホウ酸カリウム(KBF4)が好ましい。これら1価のテトラフルオロホウ酸塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
上記弾性層をプレポリマー法で形成する場合、使用するポリウレタン原料は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、ポリオール1〜50質量部と、1価のテトラフルオロホウ酸塩0.1〜10質量部とを含有することが好ましい。また、上記弾性層をワンショット法で形成する場合、使用するポリウレタン原料は、上記ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート1〜50質量部と、1価のテトラフルオロホウ酸塩0.1〜10質量部とを含有することが好ましい。1価のテトラフルオロホウ酸塩の使用量が0.1質量部未満では、弾性層の環境依存性を十分に低減することができず、一方、10質量部を超えると、ポリウレタン中に溶解できずに析出し、外径精度が悪くなる恐れがある。
【0026】
上記ポリウレタン原料は、ウレタンプレポリマー、ポリオール、ポリイソシアネート、1価のテトラフルオロホウ酸塩の他、更に、触媒、整泡剤、電子導電剤等を含むことができる。
【0027】
上記ポリウレタン原料に用いることができる触媒は、ウレタン化反応用の触媒であり、具体的には、ジブチルスズジラウレート,ジブチルスズジアセテート,ジブチルスズチオカルボキシレート,ジブチルスズジマレエート,ジオクチルスズチオカルボキシレート,オクテン酸スズ等の有機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン,テトラメチルプロパンジアミン,テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類;ペンタメチルジエチレントリアミン,ペンタメチルジプロピレントリアミン,テトラメチルグアニジン等のトリアミン類;トリエチレンジアミン,ジメチルピペラジン,メチルエチルピペラジン,メチルモルホリン,ジメチルアミノエチルモルホリン,ジメチルイミダゾール等の環状アミン類;ジメチルアミノエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノール,トリメチルアミノエチルエタノールアミン,メチルヒドロキシエチルピペラジン,ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル,エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類等が挙げられる。これら触媒の中でも、有機スズ化合物が好ましい。これら触媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記触媒の使用量は、ワンショット法の場合は、上記ポリオール100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましく、プレポリマー法の場合は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。尚、スズ系触媒は活性が高いので少量で反応が進行するが、アミン系触媒は多めに添加する必要がある。
【0028】
上記ポリウレタン原料に用いることができる整泡剤としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーン系整泡剤の他、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活剤等を挙げることができる。該整泡剤の使用量は、ワンショット法の場合は、上記ポリオール100質量部に対して3〜10質量部の範囲が好ましく、プレポリマー法の場合は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して3〜10質量部の範囲が好ましい。
【0029】
上記ポリウレタン原料に用いることができる電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウィスカー、黒鉛ウィスカー、炭化チタンウィスカー、導電性チタン酸カリウムウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー、導電性酸化チタンウィスカー、導電性酸化亜鉛ウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。上記電子導電剤の配合量は、ワンショット法の場合は、上記ポリオール100質量部に対して1〜5質量部の範囲が好ましく、プレポリマー法の場合は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して1〜5質量部の範囲が好ましい。なお、本発明の導電性ローラは、導電剤として電子導電剤を含まなくてもよく、導電剤として1価のテトラフルオロホウ酸塩のみを含んでもよい。
【0030】
上記弾性層は、上記1価のテトラフルオロホウ酸塩及び電子導電剤の配合により、その抵抗値を102〜107Ωの範囲とすることが好ましい。弾性層の抵抗値が102Ω未満では、例えば、導電性ローラを現像ローラとして使用した場合、電荷が感光ドラム等にリークしたり、電圧により現像ローラ自体が破壊する場合があり、107Ωを超えると、地かぶりが発生しやすくなる。
【0031】
本発明の導電性ローラは、例えば、中心部に金属製のシャフトを配置した所望の形状の金型内に上記ポリウレタン原料を混合撹拌して注入し、硬化させて製造することができ、更に、該導電性ローラの外表面には、樹脂層等を形成してもよい。
【0032】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した導電性ローラを備えることを特徴とし、該導電性ローラを現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ及び転写ローラの少なくともいずれかとして備えることが好ましい。本発明の画像形成装置は、上記導電性ローラを用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0033】
以下に、図を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図1は、本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、静電潜像を保持した感光ドラム1と、感光ドラム1の近傍(図では上方)に位置し感光ドラム1を帯電させるための帯電ローラ2と、トナー3を供給するためのトナー供給ローラ4と、トナー供給ローラ4と感光ドラム1との間に配置された現像ローラ5と、現像ローラ5の近傍(図では上方)に設けられた成層ブレード6と、感光ドラム1の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ7と、感光ドラム1に隣接して設けられたクリーニング部8とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画像形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。なお、図示例の画像形成装置の帯電ローラ2、トナー供給ローラ4、現像ローラ5及び転写ローラ7は、それぞれシャフト2A,4A,5A,7Aと、該シャフトの外周に形成された弾性層2B,4B,5B,7Bとを備える。
【0034】
図示例の画像形成装置においては、感光ドラム1に帯電ローラ2を当接させて、感光ドラム1と帯電ローラ2との間に電圧を印加して、感光ドラム1を一定電位に帯電させた後、露光機(図示せず)により静電潜像を感光ドラム1上に形成する。次に、感光ドラム1と、トナー供給ローラ4と、現像ローラ5とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ4上のトナー3が現像ローラ5を経て感光ドラム1に送られる。現像ローラ5上のトナー3は、成層ブレード6により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ5と感光ドラム1とが接触しながら回転することにより、トナー3が現像ローラ5から感光ドラム1の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー3は、転写ローラ7で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光ドラム1上に残留するトナー3は、クリーニング部8のクリーニングブレード9によって除去される。ここで、本発明の画像形成装置においては、帯電ローラ2、トナー供給ローラ4、現像ローラ5及び転写ローラ7の少なくともいずれかに、上述した導電不良及び形状不良が防止された本発明の導電性ローラを用いることで、優れた画像を安定的に形成することが可能となる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(比較例1)
トリレンジイソシアネート(TDI)とポリエーテルポリオールとから合成したウレタンプレポリマー100質量部と、アセチレンブラック2質量部とを混合して、アセチレンブラックが分散したウレタンプレポリマーを調製し、これをA成分とした。一方、ポリエーテルポリオール30質量部と、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)0.1質量部とを70℃に加熱しながら混合し、更にポリエーテル変性シリコーンオイル(整泡剤)4.5質量部と、ジブチルスズジラウレート(触媒)0.2質量部とを混合して混合物を調製し、これをB成分とした。次に、上記A成分とB成分とをメカニカルフロス法により発泡させて、更に、芯金をセットした円筒形状の金型に注入し、RIM成形によって、発泡ポリウレタンからなる弾性層を有する導電性ローラを作製した。
【0037】
(実施例1)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、テトラフルオロホウ酸ナトリウム0.1質量部[テトラフルオロホウ酸ナトリウムをジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性ローラを作製した。
【0038】
(実施例2)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、テトラフルオロホウ酸ナトリウム0.1質量部[テトラフルオロホウ酸ナトリウムをポリエーテルポリオール(PPG)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性ローラを作製した。
【0039】
(比較例2)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、N3576(日華化学製)(4級アンモニウム塩)[4級アンモニウム塩をジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性ローラを作製した。
【0040】
(比較例3)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、N3576(日華化学製)(4級アンモニウム塩)[4級アンモニウム塩をポリエーテルポリオール(PPG)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性ローラを作製した。
【0041】
上記のようにして得られた比較例1〜3及び実施例1〜2の導電性ローラは、弾性層の抵抗が103〜104Ωであった。また、各導電性ローラを32.5℃、85%RHの高温・高湿環境下で保管し、一定期間保管後に弾性層を剥がして、芯金表面における錆の発生の有無を目視観察した。結果を表1に示す。なお、表中、
「○」は、錆が発生せず良好であったことを示し、
「×」は、錆が発生したことを示し、
「××」は、錆が大量に発生したことを示す。
【0042】
【表1】

【0043】
(比較例4)
ポリエーテルポリオール100質量部と、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)0.1質量部とを70℃に加熱しながら混合し、更にケッチェンブラック2質量部と、ジブチルスズジラウレート(触媒)0.02質量部とを混合して混合物を調製し、これを2成分タイプのウレタン注型機のA成分(ポリオール成分)のタンクに仕込んだ。一方、トリレンジイソシアネート(TDI)をウレタン注型機のB成分(イソシアネート成分)のタンクに仕込んだ。A成分/B成分の比率が102.12質量部/9質量部になるよう流量を調整し、更に、芯金をセットした円筒形状の金型に注入し、RIM成形によって、ポリウレタンエラストマーからなる弾性層を有する導電性ローラを作製した。
【0044】
(実施例3)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、テトラフルオロホウ酸ナトリウム0.1質量部[テトラフルオロホウ酸ナトリウムをジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例4と同様にして導電性ローラを作製した。
【0045】
(実施例4)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、テトラフルオロホウ酸ナトリウム0.1質量部[テトラフルオロホウ酸ナトリウムをポリエーテルポリオール(PPG)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例4と同様にして導電性ローラを作製した。
【0046】
(比較例5)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、N3576(日華化学製)(4級アンモニウム塩)[4級アンモニウム塩をジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例4と同様にして導電性ローラを作製した。
【0047】
(比較例6)
過塩素酸ナトリウム0.1質量部に代えて、N3576(日華化学製)(4級アンモニウム塩)[4級アンモニウム塩をポリエーテルポリオール(PPG)に溶解させたものを使用]を使用した以外は、比較例4と同様にして導電性ローラを作製した。
【0048】
上記のようにして得られた比較例4〜6及び実施例3〜4の導電性ローラは、弾性層の抵抗が105〜106Ωであった。また、各導電性ローラを32.5℃、85%RHの高温・高湿環境下に保管して、種々の保管期間後の芯金表面における錆の発生の有無を目視観察した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表1及び表2の結果から明らかなように、イオン導電剤として過塩素酸塩や4級アンモニウム塩を選択した比較例の導電性ローラでは、高温・高湿条件下での保管期間が長くなると芯金表面に錆が発生したのに対して、イオン導電剤として1価のテトラフルオロホウ酸塩を選択した実施例の導電性ローラでは、高温・高湿条件下で長期間保管しても、芯金表面に錆が発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 トナー
4 トナー供給ローラ
5 現像ローラ
6 成層ブレード
7 転写ローラ
8 クリーニング部
9 クリーニングブレード
2A,4A,5A,7A シャフト
2B,4B,5B,7B 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製シャフトと、該金属製シャフトの外周に形成された発泡ポリウレタン又はポリウレタンエラストマーからなる弾性層とを備えた導電性ローラにおいて、
前記弾性層が1価のテトラフルオロホウ酸塩を含有することを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記1価のテトラフルオロホウ酸塩が、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム及びテトラフルオロホウ酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記弾性層が、ポリオール及びポリイソシアネートから合成したウレタンプレポリマー100質量部に対して、ポリオール1〜50質量部と、1価のテトラフルオロホウ酸塩0.1〜10質量部とを含有してなるポリウレタン原料を用いてプレポリマー法で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記弾性層が、ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート1〜50質量部と、1価のテトラフルオロホウ酸塩0.1〜10質量部とを含有してなるポリウレタン原料を用いてワンショット法で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記弾性層が、ポリウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ポリウレタンからなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ローラを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記導電性ローラが、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ及び転写ローラの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−47568(P2007−47568A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233214(P2005−233214)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】