説明

導電性微粒子及び異方性導電材料

【課題】耐酸化性に優れた導電性微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、導電性金属層の最外層が、ニッケル、銅、銀及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)を含み、導電性微粒子を、空気雰囲気下、温度200℃で2時間酸化処理した後、導電性金属層をX線光電子分光分析したとき、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークが観測されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子に関するものであり、特に耐酸化性に優れた導電性微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の組み立てにおいて、対向する多数の電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続方式が採用されている。異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、例えば異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電インク、異方性導電シート等がある。また、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、金属粒子や基材となる樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。例えば、特許文献1には、樹脂微粒子の表面に金属層を形成した導電性微粒子が記載されている。このような樹脂微粒子と金属層から構成される導電性微粒子は、表面に形成された導電性を有する金属層によって、電極や配線間の電気的接続を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−260446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器は作動中に発熱を伴うことがあり、この場合、電子回路が高温雰囲気に曝され、導電性微粒子も高温に曝されることとなる。また、電子機器内には空気が存在しているため、酸化性雰囲気である。そのため、電子機器を作動させると導電性微粒子が高温の酸化性雰囲気に曝されることとなり、従来の導電性微粒子(例えば、最外金属層がニッケル層のもの)では、金属層が酸化されてしまい、電極間の抵抗値が上昇してしまうという問題があった。
特に最外金属層がニッケル等の易酸化性金属元素から形成されている場合や、ニッケル等の易酸化性金属元素からなる層の表面に金等の難酸化性金属からなる層が形成されていてもその厚さが薄い場合は、上述した酸化による導通性能の低下は顕著である。さらに、金等の難酸化性金属は高価であり、また資源的にも希少価値が高いため、その使用量は少ないほど好ましい。そのため、上述した問題の解決策の提案はますます重要である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、導電性微粒子を構成する導電性金属層における最外金属層が易酸化性金属元素を含む金属層であっても、耐酸化性に優れた導電性微粒子並びに導通安定性に優れた(抵抗値上昇の抑制された)異方性導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、前記導電性金属層の最外層が、ニッケル、銅、銀及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)を含み、導電性微粒子を、空気雰囲気下、温度200℃で2時間酸化処理した後、導電性金属層をX線光電子分光分析したとき、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークが観測されることを特徴とする。前記X線光電子分光分析で観測されるピークにおいて、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)と前記金属元素(M)の酸化状態に対応するピークのピーク面積(Soxide)との合計(Smetal+Soxide)に対する前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)の面積比率は1%以上であることが好ましい。前記金属元素(M)としては、ニッケル及び/又は銅が好適である。また、前記導電性金属を含む層が多層である場合、その最外層がニッケル及び/又は銅を含むことが好ましい。
また、本発明には、上記導電性微粒子を含む異方性導電材料も含まれる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電性微粒子は、導電性微粒子が酸化雰囲気に曝された場合でも、導電性金属層に含まれる金属元素(M)が酸化しにくいため、酸化雰囲気での使用においても優れた電気導電性を発揮する。そのため、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料は、酸化性雰囲気での使用においても抵抗値上昇が抑制され、導通安定性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】製造例1における熱処理前の導電性微粒子のX線光電子分光分析結果を示す図である。
【図2】導電性微粒子1の酸化処理後のX線光電子分光分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層(以下、「金属層」と称する場合がある。)とを有し、前記導電性金属層の最外金属層がニッケル、銅、銀及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)を含む層であって、酸化処理を施した後でも、最外金属層に含まれる金属元素(M)が金属状態として存在することを特徴とする。具体的には、導電性微粒子を、空気雰囲気下、温度200℃で2時間酸化処理した後、導電性金属層をX線光電子分光分析したとき、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークが観測される。このように酸化処理後でも金属元素(M)の一部が金属状態のまま存在するため、酸化雰囲気で使用した場合でも優れた導電性を発揮する。
【0009】
なお、本発明の導電性微粒子において、酸化処理後にも導電性金属が金属状態として存在する理由は明らかでないが、導電性金属層を形成した後に後述する特定の熱処理を施すことによって耐酸化性が向上するためと考えられる。
なお、本発明の導電性微粒子において、「最外金属層がニッケル、銅、銀及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)を含む層である」とは、導電性微粒子をX線光電子分光分析した場合に、金属元素(M)の少なくとも1種が検出されるものを意味する。したがって、導電性金属層の最表面に金層等のように、金属元素(M)を含まない金属層が形成されていても、X線光電子分光分析した場合に、金属元素(M)が検出される程度に、該金属層が薄膜であれば、本発明の導電性微粒子に含まれる。導電性金属層は、シランカップリング剤や有機化合物等で表面処理されていても上述した条件を満足するものであれば本発明の導電性微粒子に含まれる。
【0010】
前記導電性微粒子は、前記X線光電子分光分析において観測されるピークにおいて、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)と前記金属元素(M)の酸化状態に対応するピークのピーク面積(Soxide)との合計(Smetal+Soxide)に対する前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)の面積比率が1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上である。前記面積比率が高い、すなわち金属状態で存在する金属元素(M)が多いほど、電気導電性が良好となり、安定した導通性能(優れた抵抗値安定性)を有する異方性導電材料が得られる。
なお、最外金属層が2種類以上の金属元素(M)を含む場合、それぞれの金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)の総和と、酸化状態に対応するピークのピーク面積(Soxide)の総和との合計に対する金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)の総和の面積比率で評価するものとし、該面積比率の好適な範囲は、上述した範囲と同様である。
【0011】
前記ピークの具体例としては、例えば、導電性金属がニッケルである場合、Niの2P2/3軌道に帰属するピークを観測すればよい。この場合、X線光電子分光分析のX線源がMgKα線であれば、導電性金属の金属状態に対応するピークは、金属状態ニッケルに対応するピーク(結合エネルギー852〜854eV)であり、導電性金属の酸化状態に対応するピークは、酸素原子と結合したニッケル(NiO、Ni23)に対応するピーク(結合エネルギー854〜857eV)である。なお、酸化状態として存在する金属元素に由来するピークが複数存在する場合には、これらのピーク面積の合計を、酸化状態に対応するピークのピーク面積(Soxide)とする。
【0012】
前記導電性微粒子の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。また前記導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下である。
【0013】
1−1.金属層
前記導電性金属層を構成する金属元素としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム等が挙げられる。ただし、本発明の導電性微粒子においては、最外金属層が、ニッケル、銅、銀及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)を含む層であることが必要であり、導電性金属層として、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、銀、銀合金、錫、錫合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成された金属層であることが好ましい。ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、銀、銀合金、錫、錫合金の中でも、ニッケル、ニッケル合金、銅又は銅合金が好ましく、特に好ましくは、ニッケル又はニッケル合金である。さらに、最外金属層が、ニッケル、ニッケル合金、銅又は銅合金等の導電性金属層であることが好ましい。
【0014】
また、前述したように、最外金属層の条件(X線光電子分光分析した場合に、金属元素(M)が検出されるという条件)を満足すれば、最外金属層が、金等の他の金属で被覆されているもの(例えばニッケル合金層の表面に金層が形成されているもの)や、他の金属が混在するもの(例えばニッケル合金と金とが混在するもの)であってもよい。ただし、最外金属層が、金や白金等の難酸化性金属からなる層で被覆されていないものが、導電性微粒子が安価であり好ましい。
【0015】
前記ニッケル合金としては、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−W、Ni−Ti等が好ましい。前記銅合金としては、CuとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Ag、Au、Bi、Al、Mn、Mg,P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金が好ましく、より好ましくはAg、Ni、Sn、Znとの合金である。前記銀合金としては、AgとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Ag、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金が好ましく、より好ましくはAg−Ni,Ag−Sn,Ag−Znである。前記錫合金としては、Sn−Ag、Sn−Cu,Sn−Cu−Ag,Sn−Zn、Sn−Sb、Sn―Bi―Ag、Sn―Bi―In、Sn−Au、Sn―Pb等が好ましい。なお、ニッケル合金を使用する場合、ニッケル合金中のニッケル含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。銅合金を使用する場合、銅合金中の銅含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。銀合金を使用する場合、銀合金中の銀含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。錫合金を使用する場合、錫合金中の錫含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0016】
前記金属層の厚さは、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、0.20μm以下が好ましく、より好ましくは0.18μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下である。前記金属層の厚さが上記範囲内であれは、導電性微粒子を異方性導電材料として用いる際に、安定した電気的接続が維持できる。
【0017】
1−2.基材粒子
前記基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。基材粒子としては、有機材料のみから構成される樹脂粒子に限られず、有機無機複合材料から構成される樹脂粒子でもよい。
【0018】
前記樹脂粒子を構成する有機材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;メラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;等が挙げられる。また、有機無機複合材料としては、シリコーン樹脂、前記有機材料とポリシロキサン骨格とを含む材料(例えば、ポリシロキサン骨格とビニル重合体が複合化されてなる材料等)が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
前記樹脂粒子を構成する材料の中でも、ビニル重合体及び/又はポリシロキサン骨格を含むものが好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼンを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。また、ポリシロキサン骨格を含む材料は、加圧接続時において被接続体に対する接触圧が優れる。特にポリシロキサン骨格とビニル重合体を複合化した材料は、弾性変形性及び接触圧に優れ、得られる導電性微粒子の接続信頼性がより優れたものとなるため好ましい。
【0020】
前記ビニル重合体はビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。また前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。
【0021】
なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0022】
前記樹脂粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0023】
前記樹脂粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格を含む有機無機複合材料からなる場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0024】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、または、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0025】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類の中でも、前記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが特に好ましく、さらにその中でも、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0028】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマーを含む態様、スチレン系単官能モノマーと1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体とを含む態様、スチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様が好ましい。中でも、スチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様が好ましい。
【0030】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を加水分解し縮合反応によりシロキサン結合を生じさせることで形成され、特にシラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、有機重合体骨格(例えば、ビニル系重合体骨格)と有機重合体骨格とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);有機重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0031】
第一の形態(有機重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(有機重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(有機重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0034】
前記樹脂粒子の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、シード重合、ゾルゲルシード重合法等が採用できるが、シード重合やゾルゲルシード重合法は粒度分布を小さくすることができるため好ましい。なお、上記ゾルゲルシード重合法とは、シード重合の一態様であって、特に、シード粒子がゾルゲル法により合成される場合を意味する。例えば、アルコキシシランの加水分解縮合反応により得られたポリシロキサンをシード粒子とする場合等が挙げられる。したがって、シード重合には、シード粒子が、有機材料からなる場合と、有機材料と無機材料とが複合された材料からなる場合(ゾルゲルシード重合法の場合)とが存在する。
【0035】
上述したように、前記樹脂粒子としては、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格を有するものが好ましい。よって、樹脂粒子の製造方法としては、ラジカル重合性基を有する架橋性シラン単量体を加水分解、縮合反応を行って重合性ポリシロキサン粒子を調製した後、該重合性ポリシロキサン粒子に前記ビニル系有単量体等を吸収させ重合する方法が好ましい。
【0036】
また、前記ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機無機複合粒子の場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0037】
前記基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。前記基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である。
【0038】
1−3.導電性微粒子の製法
本発明の導電性微粒子は、例えば、前記基材粒子表面に金属層を形成した後、熱処理することにより製造できる。
金属層の形成方法は特に限定されず、例えば、基材粒子表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により金属層を形成する方法;等により形成できる。これらの中でも特に無電解メッキ法が、後述する熱処理を組合せることで耐酸化性に優れる導電性金属層を備える、本発明の導電性微粒子を得られやすい点で好ましい。また、大掛かりな装置を必要とせず容易に金属層を形成できる点でも好ましい。無電解メッキ法は、従来公知の方法を採用すればよい。
【0039】
前記熱処理の温度は200℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上、さらに好ましくは270℃以上である。熱処理温度が高いほど、金属層の耐酸化性が向上する。一方、熱処理温度が高くなり過ぎると、基材粒子が劣化してしまうため、熱処理温度は350℃以下が好ましく、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。
【0040】
前記熱処理の時間は、0.3時間以上が好ましく、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは0.7時間以上である。熱処理時間が長いほど、金属層の耐酸化性が向上する。一方、熱処理時間が長くなり過ぎると、基材粒子が劣化してしまうため、熱処理時間は、10時間以下が好ましく、より好ましくは5.0時間以下、さらに好ましくは3.0時間以下である。
【0041】
前記熱処理は、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で行う。前記不活性雰囲気としては窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。前記還元性雰囲気としては、水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガス雰囲気が挙げられる。これらの中でも、不活性雰囲気下で熱処理することが好ましい。
【0042】
2.絶縁性樹脂層
前記導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有することもできる。つまり、前記導電性金属層の表面にさらに絶縁性樹脂層を設けた態様であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁性樹脂層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時などに生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0043】
3.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。
前記異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インクなど様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサーおよびその組成物)も含まれる。
【0044】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーおよびイソシアネートなどの硬化剤との反応により硬化する硬化性樹脂組成物;光や熱により硬化する硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
なお、前記異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0045】
前記異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して1体積%以上が好ましく、より好ましくは2体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0046】
前記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0048】
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
<シード粒子、基材粒子(樹脂粒子)>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、基材粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
【0049】
<導電性微粒子>
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、導電性微粒子3000個の粒子径(μm)を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、上記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
【0050】
1−2.導電性金属層膜厚
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA−3000」)を用いて、基材粒子3000個の粒子径、導電性微粒子3000個の粒子径を測定し、基材粒子の個数平均粒子径X(μm)、導電性微粒子の個数平均粒子径Y(μm)を求めた。そして、下記式に従って導電性金属層の膜厚を算出した。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2
【0051】
1−3.X線光電子分光分析
X線光電子分光分析装置(ESCA)(日本電子社製、「JPS−9000MC」)を使用して行った。X線源としてMgKα線を使用し、管電圧:10.0kV、管電流:10.0mA、スキャン回数40の条件で行った。
具体的には、得られたスペクトルについて、Ni 2p3/2軌道に帰属するピークを検出し、金属状態ニッケルに対応するピーク(結合エネルギー852〜854eV)、酸素原子と結合したニッケル(NiO、Ni23)に対応するピーク(結合エネルギー854〜857eV)にピーク分離を行った。分離後の各ピークについて、金属状態ニッケルに対応するピークのピーク面積(Smetal)、酸素原子と結合したニッケルに対応するピークのピーク面積(Soxide)を求め、下式により金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率を算出した。
【0052】
【数1】

【0053】
1−4.異方性導電フィルム(ACF)の導電性評価
導電性微粒子10質量部にバインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学製、「JER828」)100質量部に硬化剤(三新化学社製、「サンエイド(登録商標) SI−150」)2質量部及びトルエン100質量部を加えた。この混合物にさらに1mmのジルコニアビーズ50質量部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間分散を行い、ペースト状組成物を得た。得られたペースト状組成物をバーコーターで剥離処理PETフィルム上に塗布し、乾燥させ異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と100μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板間に挟み込み、5MPa、200℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の抵抗値(初期抵抗値)を評価した。また、90℃で500時間放置した後の電極間の抵抗値(90℃ 500時間後抵抗値)についても同様に測定し、下記式により抵抗値上昇率を求め、A、B、Cの3段階に分けて評価した。抵抗値上昇率が1%未満を「A」、1%以上5%未満を「B」、5%以上を「C」とした。
【0054】
【数2】

【0055】
2.基材粒子の製造
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は3.04μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液10部をイオン交換水400部で溶解した溶液に、スチレン200部及びDVB960(新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%)200部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0056】
前記混合液に、前記ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96部、イオン交換水500部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得、これを基材粒子とした。この基材粒子の個数平均粒子径は6.05μm、変動係数(CV値)は3.5%であった。
【0057】
3.導電性微粒子の製造
3−1.製造例1
基材粒子に水酸化ナトリウムによるエッチング処理を施した後、二塩化スズ溶液に接触させることによりセンシタイジングし、次いで二塩化パラジウム溶液に浸漬させることによりアクチベーティングする方法(センシタイジング−アクチベーション法)によって、パラジウム核を形成させた。
パラジウム核を形成させた基材粒子10部をイオン交換水400部に添加し、超音波分散処理を行った後、70℃の温浴で基材粒子懸濁液を加温した。懸濁液を加温した状態で、別途70℃に加温した無電解めっき液(日本カニゼン(株)製、「シューマーS680」)300部を加えることにより、無電解ニッケルめっき反応を生じさせた。水素ガスの発生が終了したことを確認した後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、100℃で2時間真空乾燥して、ニッケルめっきを施した導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子の個数平均粒子径は6.29μmであり、ニッケルめっき厚は0.12μmであった。得られた導電性微粒子についてのX線光電子分光分析を行い、得られたスペクトルを図1に示した。該スペクトル解析より得られた金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率(金属状態ニッケルに対応するピークのピーク面積(Smetal)、酸素原子と結合したニッケルに対応するピークのピーク面積(Soxide)を用いて前記式により求めた金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率)は14.5%であった。
得られた導電性微粒子を、窒素(不活性)雰囲気下、280℃で2時間熱処理を行い、導電性微粒子1を得た。得られた導電性微粒子1について、異方性導電フィルムの導電性評価を行った。また、導電性微粒子1を、空気雰囲気下、200℃で2時間、酸化処理を行った後、X線光電子分光分析を行った。X線光電子分光分析により得られたスペクトルを図2に示した。該スペクトル解析により求めた金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率は19.2%であった。
【0058】
3−2.製造例2
製造例1において、導電性微粒子に施す熱処理条件を、窒素雰囲気下、260℃で2時間の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子2を得た。
得られた導電性微粒子2について、異方性導電フィルムの導電性評価を行った。また、導電性微粒子2を、空気雰囲気下、200℃で2時間、酸化処理を行った後、X線光電子分光分析を行った。該スペクトル解析により求めた金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率は2.1%であった。
【0059】
3−3.製造例3
製造例1において、めっき後の導電性微粒子に熱処理を施さなかったこと以外は製造例1と同様にして導電性微粒子3を得た。
得られた導電性微粒子3について、異方性導電フィルムの導電性評価を行った。また、導電性微粒子3を、空気雰囲気下、200℃で2時間、酸化処理を行った後、X線光電子分光分析を行った。該スペクトル解析により求めた金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率は0%であった。
【0060】
製造例1〜3で得られた導電性微粒子1〜3における酸化処理試験後の金属状態ニッケルに対応するピークの面積比率、及び、異方性導電フィルムの導電性評価結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1及び図1に示したように、ニッケルメッキ層を形成した後、熱処理及び酸化処理を施していない導電性微粒子では、X線光電子分光分析において、導電性金属の酸化状態に対応するピークOと導電性金属の金属状態に対応するピークMが観測されている。
そして、酸化処理後にも導電性金属の金属状態に対応するピークMが観測された導電性微粒子1、2は、ACF評価が「A」、「B」と良好である。また、これら導電性微粒子1、2を比較すると、ピーク面積比率が高い導電性微粒子1の方が、ACF評価がより良好であることがわかる。
これに対して、酸化処理後に導電性金属の金属状態に対応するピークMが観測されない導電性微粒子3では、ACF評価が劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の導電性微粒子は、特に酸化性雰囲気での使用に有用である。
【符号の説明】
【0064】
O:導電性金属の酸化状態に対応するピーク
M:導電性金属の金属状態に対応するピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記導電性金属層の最外層が、ニッケル、銅、銀及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素(M)を含み、
導電性微粒子を、空気雰囲気下、温度200℃で2時間酸化処理した後、導電性金属層をX線光電子分光分析したとき、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークが観測されることを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
前記X線光電子分光分析で観測されるピークにおいて、前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)と前記金属元素(M)の酸化状態に対応するピークのピーク面積(Soxide)との合計(Smetal+Soxide)に対する前記金属元素(M)の金属状態に対応するピークのピーク面積(Smetal)の面積比率が1%以上である請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項3】
前記金属元素(M)が、ニッケル及び/又は銅である請求項1又は2に記載の導電性微粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性微粒子を含むことを特徴とする異方性導電材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−4428(P2013−4428A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136791(P2011−136791)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】