説明

導電性材料、その製造方法、導電性材料を含む電子機器、発光装置

【課題】 低い電気抵抗値を生じる導電性材料であって、接着剤を含まない安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀より線膨張係数の小さな無機物フィラーならびに銀コーティングが施された銀より線膨張係数の小さな無機物フィラーとを含む導電性材料用組成物を酸素、オゾン又は大気雰囲気下あるいは非酸化雰囲気下に金属酸化物存在下に150℃〜320℃の範囲の温度で焼成して、導電性材料を得ることを含む製造方法により、導電性材料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料の製造方法、その方法により得られた導電性材料、その導電性材料を含む電子機器、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅箔を基板に張り合わせ、エッチングにより銅配線を製造する方法が主流である。しかしながら、この方法ではエッチングをするため、廃液、廃棄物等が大量に生じるという問題があった。
【0003】
そこで、エッチングを用いない配線基板としては、粒径がミクロンオーダーの金属(例えば、銀、銅など)粒子と、接着剤(例えば、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系など)とを含むペースト状導電性組成物を基板の上に塗布し、150℃〜180℃で加熱して製造する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この製造方法によれば、加熱して接着剤が固化する際、導電性ペースト内の金属粒子の間隔が狭まり、その結果金属粒子が密集して電流が流れ、配線が製造される。ただし、この方法では、実用的には得られる電気抵抗値が5×10−5Ωcm程度と高めであり、さらに低い電気抵抗値が望まれていた。
【0004】
また、酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布し200℃付近で加熱し配線を製造する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法によれば、前記組成物を200℃付近で加熱するとペースト中の酸化銀等の銀化合物の微粒子が銀に変化し、その結果、銀粒子が接続されて電流が流れ、配線が製造される。ただし、この製造方法では、酸化銀等の銀化合物の微粒子の定量的還元反応をともなうため還元性有機溶剤と激しく反応し、還元性有機溶剤の分解ガスや銀化合物の還元によって発生する酸素ガス等の大量発生により導電性組成物中に不規則なボイドが形成され応力集中点となり容易に導電性組成物が破壊されやすく、また取り扱い上の危険性があるという問題点があった。これらを解決するためミクロンオーダーの銀粒子を前記組成物へ混在させる方法も知られているが、酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元することにより金属接続することを原理とするため程度の差はあれ僅かな改善としかならない。
【0005】
また、酸化銀微粒子とこれを還元する還元剤とを含む導電性組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。この導電性組成物も上記と同様に高い反応熱が発生するためガスが発生するという問題点がある。
【0006】
炭素原子1〜8の有機化合物が粒子表面に付着されてなる粒子状銀化合物が知られている(例えば、特許文献3参照)。この銀化合物を加熱すると、表面の有機化合物が還元剤として作用し、その結果、粒子状銀化合物を銀に還元することができる。しかしながら、この粒子状銀化合物にも上記と同様に高い反応熱が発生するためガスが発生するという問題点がある。
【0007】
銀と、酸化銀と、酸化銀を還元する性質をもった有機化合物とから構成されている導電性ペーストが知られている(例えば、特許文献4参照)。この導電性ペーストも上記と同様に高い反応熱が発生するためガスが発生するという問題点がある。
【0008】
酸化銀(I)AgOより成る組成物を加熱処理することにより酸化銀を銀に変換することにより得た、空隙率20〜60%の多孔質であり、かつ質量に対する有機物の含量が20%以下である導電性材料に、さらにめっき処理を施す、導電性材料の作製方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
また、粒径がミクロンオーダーの低結晶化銀フィラーと銀ナノ粒子とを含むペースト状導電性組成物を基板の上に塗布し、200℃付近で加熱して配線を製造する方法も知られている(例えば、特許文献6参照)。この製造方法によれば、前記組成物を200℃付近で加熱すると銀ナノ粒子が溶融または焼結し、互いに融着して電流が流れ、配線が製造される。ただしこの製造方法では、銀ナノ粒子の値段が高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−309352号公報
【特許文献2】特開2004−253251号公報
【特許文献3】特開2005−200604号公報
【特許文献4】特開2005−267900号公報
【特許文献5】特開2006−24808号公報
【特許文献6】特開2005−129303号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yi Li, C.P. Wong,“Recent advances of conductive adhesives as a lead-free alternative in electronic packaging: Materials, processing, reliability and applications”, Materials Science and Engineering, 2006年、R 51、pp.1−35.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これら前記の製造方法は、電気抵抗値を下げることが困難となる接着剤を使用するか、還元反応性に富む不安定な酸化銀等の銀化合物の微粒子を主な原料として使用するか、または高価格な銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いる必要があった。
【0013】
一方、半導体装置等に用いられる基板やパッケージのような線膨張係数の小さな材料に対して、線膨張係数の小さな導電性材料が求められている。しかしながら、前記の導電性材料の製造方法では、線膨張係数が銀と同等若しくはそれ以上であり、線膨張係数の小さな導電性材料を製造することができなかった。
【0014】
さらに、近年の発光素子の高出力化の要求に伴い高電流を投入するため接着剤が熱や光等で変色したり、電気抵抗値の経時変化が発生したりする問題があった。とりわけ接合を接着剤の接着力に完全に頼る方法では、電子部品のはんだ実装時に接合材料がはんだ溶融温度下に接着力を失い剥離し、不灯に至る致命的問題の懸念があった。
【0015】
本発明は、低い電気抵抗値を生じる導電性材料であって、接着剤を含まない安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
銀ナノ粒子が低温で融着することは従来、よく知られていたが、ミクロンオーダーの銀粒子が低温で融着することは知られていなかった。本発明者らは、酸化物または酸素等の酸化条件下で低温加熱すると、ミクロンオーダーの銀粒子が融着することを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0017】
本発明に係る導電性材料の製造方法は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、銀より線膨張係数の小さな無機物と、を含む導電性材料用組成物を焼成する工程を有する。
前記無機物は、0より大きく80重量%以下であることが好ましい。
前記無機物は、銀のコーティングが施されていることが好ましい。
前記無機物は、鉄及びその合金、コバルト及びその合金、ニッケル及びその合金からなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
前記無機物は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する粒子状、若しくは、繊維径0.1μm〜15μmである繊維状のものが含有されていることが好ましい。
【0018】
前記導電性材料用組成物は、前記銀粒子と前記無機物とを、沸点300℃以下の有機溶剤または水の中に浸積することもできる。
前記有機溶剤は、低級アルコール、または、低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコール、の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
前記導電性材料用組成物は、更に、金属酸化物を含むことが好ましい。
【0019】
前記金属酸化物が、AgO、AgO及びAgからなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
前記金属酸化物は、前記銀粒子に対して5重量%〜40重量%であることが好ましい。
前記金属酸化物が、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有することが好ましい。
前記焼成は、酸素、オゾン又は大気雰囲気下で行われることが好ましい。
前記焼成は、150℃〜320℃の範囲の温度で行われることが好ましい。
【0020】
本発明に係る導電性材料は、前記の製造方法により得られ、空隙率が5体積%〜35体積%である。
前記導電性材料は、線膨張係数が1.4×10−6〜16×10−6である。
前記導電性材料は、電気抵抗値が5.0×10−5Ω・cm以下であり、好ましくは、4.0×10−5Ω・cm以下である。
【0021】
本発明に係る電子機器は、前記の製造方法により得られた導電性材料を含み、前記導電性材料が、電気配線、部品電極、ダイアタッチ接合材または微細バンプの材料として使用されることが好ましい。
本発明に係る発光装置は、前記の製造方法により得られた導電性材料を含み、前記導電性材料が、配線基板又はリードフレームと、発光素子との接合材料として使用されることが好ましい。
前記配線基板が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板及びBTレジン基板からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る導電性材料の製造方法は、電気抵抗値の低い導電性材料を製造することができるという利点がある。また、接着剤を含まない安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料を製造することができるという利点がある。さらに、銀よりも線膨張係数の小さい導電性材料を製造することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】発光装置を示す概略斜視図である。
【図2】発光装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<発光装置>
本発明に係る発光装置の一例を、図面を参照して説明する。図1は、発光装置を示す概略斜視図であり、図2は、発光装置を示す概略断面図である。
発光装置は、発光素子10と、発光素子10を載置するパッケージ20と、発光素子10を覆う封止部材30と、発光素子10を実装するための導電性材料40と、を有する。パッケージ20には導電性を有する一対のリード21が一体成形されている。パッケージ20は底面と側面を有するカップ形状の凹部を有しており、底面に導電性リード21の表面が露出している。リード21は鉄または銅等を母材とし、表面が銀メッキされている。発光素子10は導電性材料40を介して一のリード21に接合されており、また、発光素子10はワイヤー50を介して他のリード21に接合されている。他のリード21にツェナーなどの保護素子11を載置してもよい。保護素子11も導電性材料40を介して実装されている。封止部材30は発光素子10からの光を吸収し及び波長変換する蛍光物質60を含有していても良い。
【0025】
発光素子10としては、窒化ガリウム(GaN)系半導体からなる青色発光のLEDチップや、紫外発光のLEDチップ、レーザダイオードなどが用いられる。その他、例えば、MOCVD法等によって基板上にInN、AlN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体を発光層として形成させたものも使用できる。発光素子10は、同一平面上にn側電極とp側電極を持つ発光素子の他、一方の面にn側電極、反対の面にp側電極を持つ発光素子も使用することができる。
【0026】
パッケージとしてはリードが一体成型されているものの他、パッケージを成型した後にメッキなどにより回路配線を設けたものであってよい。パッケージの凹部の形状は、平板状など種々の形態を採ることができる。パッケージを構成する樹脂としては、耐光性、耐熱性に優れた電気絶縁性のものが好適に用いられ、例えばポリフタルアミドなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ガラスエポキシ、セラミックスなどを用いることができる。また、発光素子からの光を効率よく反射させるためにこれらの樹脂に酸化チタンなどの白色顔料などを混合させることができる。パッケージの成形法としては、リードを予め金型内に設置して行うインサート成形、射出成形、押出成形、トランスファ成型などを用いることができる。
【0027】
リードは、発光素子と電気的に接続され、例えば、パッケージにインサートされた板状のリードや、ガラスエポキシやセラミックなどの基板に形成された導電パターンであってよい。リードの材質は、銀若しくは銀を含有した合金の他、銅や鉄などを主成分とするリードの一部に銀若しくは銀を含有した合金がメッキされているものを用いることができる。
【0028】
封止部材30は、発光素子からの光を効率よく外部に透過させると共に、外力、埃などから発光素子やワイヤーなどを保護する。封止部材30は、蛍光物質60及び光拡散部材などを含有してもよい。蛍光物質60としては、発光素子からの光を吸収し、該光とは異なる波長の蛍光を発するものであればよく、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体または酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体、又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくとも1以上であることが好ましい。より好ましくは、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、CaAlSiN:Euなどが使用される。
【0029】
上記のような発光装置の他、発光を伴わない電子機器の分野の製品についても半導体素子を実装する際に導電性材料及びその製造方法を適用することができる。
【0030】
<導電性材料>
導電性材料は、発光素子や保護素子などの半導体素子を、銀若しくは銀合金を施したリード上等に実装するために用いられる。以下において、平均粒径(メジアン径)はレーザー方法により、比表面積はBET法により測定した値である。
本発明者らは、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、銀よりも線膨張係数の小さな無機物と、を含む導電性材料用組成物を所定の温度で焼成することにより銀粒子が融着して、導電性材料を得ることができることを見出した。これにより銀より線膨張係数の小さな導電性材料を提供することができる。酸化銀等の銀化合物の微粒子と還元性有機溶剤とを用いる従来の導電性材料を製造する方法によれば、高い反応熱が発生するためガスが発生するという問題点があった。一方、本発明に係る導電性材料を製造する方法によれば、急激な反応熱による分解ガス発生という問題なく導電性材料を製造することができる。
【0031】
本発明に係る導電性材料を製造する方法において、導電性材料が形成されるメカニズムは明確ではないが、以下のように推測できる。酸化剤である酸素、オゾンもしくは大気雰囲気下で、0.1μm〜15μmの平均粒径を有する銀粒子ならびに銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーを含む組成物を焼成すると、銀粒子と銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラー表面の銀の一部が局部的に酸化され、その酸化により形成した酸化銀が、銀粒子と接触する部分において、酸素を触媒的にやり取りし、酸化還元反応を繰り返す工程を経て、導電性材料が形成されると推測できる。酸化剤である金属酸化物存在下で、0.1μm〜15μmの平均粒径を有する銀粒子と銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーを含む組成物を焼成する場合には、既に含まれている金属酸化物が、銀粒子と銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラー表面の銀とに接触する部分において、酸素を触媒的にやり取りし、酸化還元反応を繰り返す工程を経て、導電性材料が形成されると推測できる。このような推測メカニズムにより、導電性材料が製造されるため、本発明に係る導電性材料を製造する方法によれば、接着剤を含む導電性材料用組成物を用いる必要がなく、安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて、低い電気抵抗値を生じる導電性材料を得ることができるのである。
【0032】
また、本発明に係る発光装置を製造する方法は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、銀粒子に対して銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーを20重量%〜80重量%とを含む導電性材料用組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を酸素、オゾン又は大気雰囲気下で150℃〜320℃で焼成して、導電性材料を有する発光装置を得ることができる。
【0033】
また、本発明に係る発光装置を製造する方法は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、銀粒子に対して銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーを20重量%〜80重量%と金属酸化物とを含む導電性材料用組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を非酸化雰囲気下で150℃〜320℃で焼成して、導電性材料を有する発光装置を得ることができる。
【0034】
本発明における銀粒子は、平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。銀粒子が1種類の場合、平均粒径(メジアン径)が0.1μm〜15μmであり、好ましくは0.1μm〜10μmであり、より好ましくは0.3μm〜5μmである。銀粒子を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、例えば0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜15μmのものとの組み合わせ、好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜10μmのものとの組み合わせ、より好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.3μm〜5μmのものとの組み合わせである。銀粒子を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm〜15μmのものの含有率は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。これにより電気抵抗値を小さくすることができる。
【0035】
また、銀粒子は、比表面積が0.5m/g〜3m/gであり、好ましくは0.6m/g〜2.5m/gであり、より好ましくは0.6m/g〜2m/gである。これにより隣接する銀粒子の接合面積を大きくすることができる。銀粒子の比表面積は、BETの方法により測定することができる。
【0036】
銀粒子の形態は限定されないが、例えば、球状、扁平な形状、多面体等が挙げられる。銀粒子の形態は、平均粒径(メジアン径)が所定の範囲内の銀粒子に関して、均等であるのが好ましい。銀粒子は、平均粒径(メジアン径)が2種類以上のものを混合する場合、それぞれの平均粒径(メジアン径)の銀粒子の形態は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、平均粒径(メジアン径)が3μmである銀粒子と平均粒径(メジアン径)が0.3μmである銀粒子の2種類を混合する場合、平均粒径(メジアン径)が0.3μmである銀粒子は球状であり、平均粒径(メジアン径)が3μmである銀粒子は扁平な形状であってもよい。
【0037】
無機物は、0より大きく80重量%以下であることが好ましい。特に、無機物は、20重量%〜80重量%含む無機フィラーであることが好ましい。この製造方法によれば、電気抵抗が低く線膨張係数が銀より小さい1.4×10−6〜16×10−6となる導電性材料を提供することができる。また、この製造方法によれば、特に加工を必要としないミクロンオーダー銀粒子をそのまま融着させることができるため、簡易に導電性材料を製造することができる。また、この製造方法によれば、入手容易でかつ安価な銀粒子を用いて、導電性材料を製造することができる。また、この製造方法によれば、接着剤、不安定な銀化合物の微粒子等を原料として用いる必要が無いという利点がある。また、この製造方法によれば、焼成により銀粒子が互いに隣接する部分のみが融着するため、空隙が発生し、柔軟性に富んだ膜状の導電性材料を形成することが可能であるという利点がある。また、この製造方法によれば銀以外の安価な材料を原料として利用できるため更に安価な導電性材料を簡便な方法で提供することができる。
無機物は、銀のコーティングが施されていることが好ましい。
【0038】
線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーとしては、鉄ならびにその合金、コバルトならびにその合金、ニッケルならびにその合金からなる群から選択される1つ以上であることが好ましいが、これら以外にも、タングステンならびにその合金、チタンならびにその合金、モリブデンならびにその合金、シリコンならびにその合金、アルミニウムならびにその合金、銅ならびにその合金、アルミナ、シリカ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、チタン酸カリウム、マイカ、ケイ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ガラスフレークならびに繊維を用いることができる。電気抵抗の小さな無機物フィラーが好ましいが線膨張係数が大きい傾向にあり導電性材料を所定の線膨張係数とするためには添加量を増やす必要がある。線膨張係数の小さな無機物フィラーは少量添加で導電性材料を所定の線膨張係数とすることができるがシリカ等本来絶縁体である場合があり電気抵抗が上昇してしまう。また、銀と極端に線膨張係数の異なる無機物フィラーは導電性材料中で熱応力発生させ導電性材料の凝集強度を低下させてしまう。電気抵抗と線膨張係数の小ささのバランスからは鉄ならびにその合金、コバルトならびにその合金、ニッケルならびにその合金、タングステンならびにその合金、チタンならびにその合金が好ましい。単に低コスト化と言う観点からはアルミニウムならびにその合金、銅ならびにその合金が好ましい。銀コーティングの膜厚は粒子全体で粒径が0.1μm〜15μmとなるようすることさえできれば特に制限はないが、容易に調製可能な0.01μm〜1μmが好ましい。
【0039】
無機物は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する粒子状、若しくは、繊維径0.1μm〜15μmである繊維状のものが含有されていることが好ましい。
無機物フィラーは平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。無機物フィラーが1種類の場合、無機物フィラーは、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するのが好ましい。これらは作業性に富み、安価に製造することができるからである。また、無機物フィラーが1種類の場合、平均粒径(メジアン径)が好ましくは0.1μm〜10μmである。無機物フィラーを2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、例えば0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜15μmのものとの組み合わせ、好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜10μmのものとの組み合わせ、より好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.3μm〜5μmのものとの組み合わせである。無機物フィラーを2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm〜15μmのものの含有率は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、よりこのましくは90重量%以上である。
【0040】
導電性材料の製造方法においては、導電性材料用組成物は、沸点300℃以下の有機溶剤または水中に浸積していることが好ましい。より好ましくは150℃〜250℃である。有機溶剤揮発による導電性材料用組成物の室温時粘度変化を抑制することができ作業性が良好であり、さらには加熱により完全に揮発させることができる。有機溶剤または水は、銀粒子ならびに銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラー間のなじみを良くし、銀粒子と銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラー表面の銀との反応を促進するからである。導電性材料の製造方法において、銀粒子ならびに銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーを有機溶剤または水中に、作業性を損なうことなく高度に充填することが可能であるため、焼成した後の材料の体積収縮が少ない。従って、得られる導電性材料の寸法を予測することが容易である。また、有機溶剤は、低級アルコール、または、低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールを含むのが好ましい。このような有機溶剤は、揮発性が高いため、導電性材料用組成物を焼成した後に、得られた導電性材料中の有機溶剤の残留を減らすことができるからである。
【0041】
低級アルコールは、例えば、炭素原子1〜6個を有するアルキル基と、水酸基1〜3個、好ましくは1〜2個を含むものが挙げられる。
低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、および1−エチル−1−メチルプロピル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0042】
炭素原子1〜6個を有するアルキル基と水酸基1〜3個とを有する低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、i−プロパノール、トリエチレングリコール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、2−メチルブタノール、n−ヘキサノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、1−エチルブタノール、2−エチルブタノール、1,1−ジメチルブタノール、2,2−ジメチルブタノール、3,3−ジメチルブタノール、および1−エチル−1−メチルプロパノール等が挙げられる。
【0043】
低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールにおいて、置換基については以下のとおりである。
低級アルコキシとしては、低級アルキル基に−O−が置換された基が挙げられる。低級アルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ等が挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素が挙げられる。
【0044】
低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールとしては、例えば、メトキシメタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−クロロエタノール、エタノールアミン等が挙げられる。
【0045】
有機溶剤の添加量は、導電性材料用組成物の塗布方法により必要粘度が変化するため特に限定するものではないが、導電性材料の空隙率を抑制するため30重量%を上限とすることが好ましい。
【0046】
導電性材料用組成物における金属酸化物としては、例えば、酸化銀(例えばAgO、AgO、Agなど)を用いることが好ましいが、亜塩素酸塩類(例えば、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸銅など)、塩素酸塩類、塩素酸塩類(例えば、塩素酸カリウム 、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸アンモニウムなど)、過塩素酸塩類(例えば、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムなど)、臭素酸塩類(例えば、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸マグネシウムなど)、ヨウ素酸塩類(例えば、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸アンモニウムなど)、無機過酸化物(例えば、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化リチウムなど)、硝酸塩類(例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ウラニル、硝酸カルシウム、硝酸銀、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸銅(II)、硝酸鉛(II)、硝酸バリウムなど)、過マンガン酸、過マンガン酸塩類(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸バリウムなど)、重クロム酸塩類(例えば、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウムなど)、過ヨウ素酸塩類(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムなど)、過ヨウ素酸類(例えば、メタ過ヨウ素酸など)、クロム酸化物類(例えば、三酸化クロムなど)、鉛酸化物類(例えば、二酸化鉛など)、ヨウ素の酸化物類、亜硝酸塩類(例えば、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウムなど)、次亜塩素酸塩類(例えば、次亜塩素酸カルシウムなど)、塩素化イソシアヌル酸類(例えば、三塩素化イソシアヌル酸など)、ペルオキソ二硫酸塩類(例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなど)、ペルオキソほう酸塩類(例えば、ペルオキソほう酸カリウム、ペルオキソほう酸ナトリウム、ペルオキソほう酸アンモニウムなど)等も用いることができる。
【0047】
このうち、金属酸化物は、AgO、AgO及びAgからなる群から選択される1つ以上であるのが好ましい。これらの金属酸化物によれば、銀粒子の酸化反応が促進され、その結果、比較的低温で金属接合できるからである。また、これらの金属酸化物は、焼成により熱分解され、その後、銀になるため、好ましい。また、金属酸化物としてAgOは、酸化力が強く、そのため、金属酸化物の添加量を抑制することができる。その結果、得られる導電性材料の電気抵抗値がより低くなり、かつ導電性材料の機械的強度が向上するからである。
【0048】
金属酸化物は平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。金属酸化物が1種類の場合、金属酸化物は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するのが好ましい。これにより、作業性に富み、安価に製造することができるからである。また、金属酸化物が1種類の場合、平均粒径(メジアン径)が好ましくは0.1μm〜10μmであり、より好ましくは0.3μm〜5μmである。金属酸化物を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、例えば0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜15μmのものとの組み合わせ、好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.1μm〜10μmのものとの組み合わせ、より好ましくは0.1μm〜15μmのものと、0.3μm〜5μmのものとの組み合わせである。金属酸化物を2種類以上混合する場合、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm〜15μmのものの含有率は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、よりこのましくは90重量%以上である。
【0049】
金属酸化物の含有量は、銀粒子に対して5重量%〜40重量%であるのが好ましく、5重量%〜30重量%であるのがより好ましく、10重量%であるのがさらに好ましい。得られる導電性材料のせん断強度が高くなるからである。
【0050】
発光装置や電子機器に用いられる配線基板としては、その表面に導電性材料用組成物または導電性ペーストを塗布することが可能であれば特に限定されない。例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板、BTレジン基板、ガラス基板、樹脂基板、紙等が挙げられる。このような配線基板を用いることにより、耐熱性に優れるからである。また、本発明に係る製造方法によれば、加熱温度が低温でも可能なため、熱可塑性樹脂のような加熱に弱い配線基板も用いることができる。
【0051】
配線基板がセラミック基板であれば、発光素子が線膨張係数の小さな単結晶である場合、配線基板と発光素子との接合部に熱応力がかかるのを抑制することが可能だからである。また、セラミック基板では、酸化アルミニウムを含むものがより好ましい。発光装置のコストを抑制することが可能だからである。
【0052】
発光装置や電子機器に用いられるリードフレームとしては、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン又はそれらの合金より形成される金属フレ−ムが挙げられ、銅、鉄又はそれらの合金が好ましい。リードフレームとしては、放熱性が必要な発光装置では銅合金、半導体素子との接合信頼性が必要な発光装置では鉄合金であるのがより好ましい。
【0053】
配線基板又はリードフレームは、その導電性材料塗布部分表面が、銀、銀の酸化物、銀合金、銀合金の酸化物、Pt、Pt合金、Sn、Sn合金、金、金合金、Cu、Cu合金、Rh、Rh合金等により、被覆されていてもよく、銀の酸化物(酸化銀)で被覆されているのが好ましい。導電性材料塗布部分表面が銀を主体とするため、酸化銀で被覆されていると、導電性材料塗布部分表面との融着性が良好だからである。また、これらの被覆は、メッキ、蒸着、スパッタ、塗布等により行うことができる。
【0054】
なお、発光素子は、その導電性材料と融着する面が、銀、銀の合金、Pt、Ptの合金、Sn、Snの合金、金、金の合金、銅、銅の合金、Rh、Rhの合金等により、被覆されていてもよく、銀で被覆されているのが好ましい。導電性材料塗布部分表面が銀を主体とするため、銀で被覆されていると、導電性材料塗布部分表面との融着性が良好だからである。また、これらの被覆は、メッキ、蒸着、スパッタ、塗布等により行うことができる。
【0055】
導電性材料の製造方法において、焼成は、酸素、オゾン、大気雰囲気下で行うことが好ましいが、金属酸化物を用いる場合は、上述に加えて真空雰囲気下、非酸素雰囲気下で行うこともできる。大気雰囲気下で焼成を行うのが製造コスト面よりも好ましい。ただし、リードフレーム、半導体素子等が実装される樹脂パッケージ他の周辺部材が酸化劣化起こしやすい場合は、酸素濃度を周辺部材の酸化劣化を最小とするレベルまで制限してもよい。金属酸化物が存在しない導電性材料用組成物では、酸素、オゾン、大気雰囲気下で焼成すれば、焼成の際に酸化反応が促進されるからである。
【0056】
焼成は、150℃〜320℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。半導体素子等が実装される樹脂パッケージの融点よりも低い温度で、金属接合が可能だからである。また、焼成は、160℃〜260℃の範囲の温度で行われるのがより好ましく、180℃〜200℃の範囲の温度で行われるのがさらに好ましい。
【0057】
本発明に係る導電性材料は、銀粒子が互いに融着されており、空隙率が5体積%〜35体積%である。導電性材料は、接合強度が高いという利点を有する。
【0058】
本発明に係る導電性材料は、電気抵抗値が5.0×10−5Ω・cm以下であるのが好ましい。電気抵抗値は、1.0×10−5 Ω・cm以下であるのがより好ましく、7.0×10−6 Ω・cm以下であるのがさらに好ましい。
【0059】
また、導電性材料用組成物へエラストマー状有機粒子を導電性材料の電気抵抗、熱伝導率が悪化しない程度に少量添加することもできる。導電性材料を形成する際の有機溶剤の揮発により発生する体積収縮を抑制したり、銀にコーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーや銀粒子が融着することにより発生する収縮応力を緩和軽減したりすることができるからである。エラストマー状有機粒子としてはシリコーン樹脂粒子、変性シリコーン樹脂粒子、変成シリコーン樹脂粒子、アクリルゴム粒子が好ましくシリコーン樹脂が耐光性、耐熱性に優れるためより好ましい。
【0060】
また、本発明に係る電子機器は、本発明に係る製造方法により得られた導電性材料を含む電子機器であって、導電性材料が、電気配線、部品電極、ダイアタッチ接合材または微細バンプの材料として使用することができる。導電性材料を用いることにより、得られる電子機器は、電気抵抗値が十分小さく経時変化が少ないという利点がある。また、得られる電子機器は、半導体素子であるシリコン、化合物半導体と熱的整合性が良好であり熱衝撃による接合部剥離の懸念のない信頼性が高いという利点がある。
【0061】
発光装置は、本発明に係る導電性材料を接合材料として用い、配線基板若しくはリードと発光素子とを金属接合している。発光素子と配線基板等とを接合する方法には、一般に、絶縁接着剤、導電性金属フィラーを分散した導電性接着剤等の有機接合材料、または高温鉛はんだ、AuSn共晶等の金属接合材料を使用する方法がある。このような有機接合材料を用いる方法は、有機接合材料中の有機成分が、光および熱により劣化し、その結果、着色および強度が低下するという、発光装置の寿命を低下させる問題がある。また、金属接合材料を用いる方法は、接合時に300℃超える高温に曝されるため発光装置プラスチック部材の熱劣化が甚だしいという問題がある。これに対し、本発明に係る製造方法は、導電性材料用組成物が金属と無機物を主成分とし、接着剤を必要としない。そのため、光および熱による影響が殆ど無く、また、接合時温度も150〜320℃の範囲が可能となるため、発光装置におけるプラスチック部材の熱劣化を防止することができる。また、本発明に係る導電性材料を製造する方法によれば、急激な反応熱による分解ガス発生という問題はなく、従って、得られた導電性材料には、不規則なボイドの形成が抑制されており、接合材料として良好である。
【0062】
導電性材料を用いることにより、得られる発光装置は、電気抵抗値が十分小さく経時変化が少ないという利点がある。また、導電性材料を用いることにより、得られる発光装置は、配線基板又はリードフレームの劣化、変色が抑制されるという利点がある。さらに、本発明に係る発光装置は、長時間の駆動でも光出力の経時的減少が少なく長寿命であるという利点がある。
【0063】
また、本発明は、発光装置を製造する方法であって、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、金属酸化物とを含む導電性材料用組成物を、配線基板またはリードフレームに塗布する工程と、発光素子を導電性材料用組成物上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、発光装置前駆体を焼成して、発光装置を得る工程とを含む。発光装置を製造する方法によれば、配線基板またはリードフレームにおける有機材料の劣化および変色を抑制でき、簡易に量産性よく品質のよい発光装置を製造することができる。
【0064】
発光装置を製造する方法において、導電性材料用組成物を基板上に塗布する工程は、基板表面に導電性材料用組成物を塗布することが可能であれば特に限定されないが、例えば、印刷法、コーティング法等により行ってもよい。印刷法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキ−ジ印刷、シルクスクリ−ン印刷、噴霧、刷毛塗り等が挙げられ、スクリーン印刷法、スタンピングおよびディスペンスが好ましい。塗布された導電性材料用組成物の厚さは、例えば、3μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μm、より好ましくは5μm〜20μmである。特に発光素子の寸法が0.5mm角を超えないものについてはスタンピング、ディスペンスが好ましく、より好ましくはスタンピングである。スタンピングによれば、微小領域へ正確な塗布が可能であるうえ作業速度を速くできるからである。
【0065】
発光装置を製造する方法は、さらに、金属ワイヤーにより発光素子の電極と配線基板又はリードフレームの配線部とに配線される工程を含むことができる。この際、金属ワイヤーは金、銀、銅、アルミが好ましく、金がより好ましい。金属ワイヤーが金の場合、安定した接合性が得られ腐食の懸念が低いからである。
【0066】
また、発光装置を製造する方法は、さらに、樹脂又は気密カバー又は非気密カバーにより封止または封着される工程を含んでもよい。封止工程に使用される樹脂は、例えば、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ポリイミド系、シリコーン系、ウレタン系、熱可塑性系等が挙げられる。中でもシリコーン系が耐熱・耐光性に優れ長寿命な発光装置を作製できるため好ましい。気密カバー又は非気密カバーとしては無機ガラス、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等が挙げられる。中でも無機ガラスが耐熱・耐光性に優れ長寿命な発光装置を作製できるため好ましい。
【実施例】
【0067】
<参考例1−6>
参考例1−6において、銀粒子のみで得られた導電性材料のせん断強度を測定し、せん断強度に優れた銀粒子の粒子組成を求めた。用いた銀粒子は、以下のとおりである。製品名「AgC−239」(福田金属箔粉工業株式会社製)。「AgC−239」は平均粒径(メジアン径)が2.0〜3.2μm、比表面積が0.6〜0.9m/gである。製品名「FHD」(三井金属鉱業株式会社製)。「FHD」は、平均粒径(メジアン径)が0.3μm、比表面積が2.54m/gである。
【0068】
せん断強度の測定法は以下のとおりである。
平均粒径の異なる銀粉を所定量混合した銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電ペーストを得た。得られた導電ペーストをアルミナ基板上の銀メッキ面にスタンピングし、片面に銀メタライズされた600μm×600μm×厚さ100μmのサファイアダイスをマウントした。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。室温でアルミナ基板からダイスを剥す方向にせん断力をかけ、剥離したときの強度をせん断強度(ダイシェア強度)として測定した。表1に測定結果を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
この測定結果から参考例3の銀粉組成がせん断強度の最大値をとることが確認できた。また参考例1−6の導電性材料の表面観察から参考例3が密に銀粉が充填されていることが確認できた。すなわち、せん断強度は融着した銀粉の凝集強度を示すものと推測される。
【0071】
<実施例1−8>
(ダイシェア強度、線膨張係数)
せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成と、銀より線膨張係数が小さな無機物フィラー若しくは銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーと、を所定量混合した導電性材料用組成物を作製した。これらの導電性材料用組成物を用いたダイシェア強度ならびに線膨張係数を確認した。
【0072】
銀より線膨張係数が小さな無機物フィラーは以下のとおりである。
平均粒径(メジアン径)が8μmのコバール(アトマイズ粉)を使用する(以下、「コバール」と略する)。
平均粒径(メジアン径)が8μmのコバール(アトマイズ粉)は、製品名「センシタイザー(奥野製薬株式会社製)にて表面をスズ付加した後、製品名「アクチベータ」(奥野製薬株式会社製)にてパラジウム置換し、更に無電解メッキにより銀を0.5μmコーティングしたものである(以下、「銀メッキコバール」と略する)。
【0073】
ダイシェア強度の測定法は以下のとおりである。
銀粉と、コバール若しくは銀メッキコバールと、を含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電ペーストを得た。得られた導電ペーストをアルミナ基板上の銀メッキ面にスタンピングし、片面に銀メタライズされた600μm×600μm×厚さ100μmのサファイアダイスをマウントした。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。室温でアルミナ基板からダイスを剥す方向にせん断力をかけ、剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。
【0074】
線膨張係数の測定法は以下のとおりである。
銀粉と、コバール若しくは銀メッキコバールと、を含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電ペーストを得た。得られた導電ペーストを、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み1000μmとなるように塗布した。その導電ペーストが塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線を製品名「EXSTAR6000 TMA/SS6000」(セイコーインスツルメント製)を用い、昇温速度5℃/分にて250℃まで測定し、100℃〜200℃の膨張挙動より線膨張係数を算出した。表2に測定結果を示す。
【0075】
【表2】

【0076】
コバールならびに銀メッキコバールの添加量が増加するに従いダイシェア強度の低下が認められた。超音波ワイヤーボンディングによる安定した電気配線を施すためにはダイシェア強度が500gfは必要であり、実用的にはコバールの添加量は40重量%〜50重量%、銀メッキコバールの添加量は80重量%が限界であること確認できた。一方、線膨張係数もコバールならびに銀メッキコバールの添加量が増加するに従い小さくなることが確認できたが、銀メッキの有無は大きく影響せず添加した無機物の重量%で一律決まることが確認できた。同じ線膨張係数を得るのであれば銀コーティングを施すことによってより強固な導電性材料を形成することができる。また、銀コーティングを施すことにより添加量を増やすことができるため、より小さな線膨張係数を有する導電性材料を調製することが可能である。
【0077】
(ダイシェア強度の測定)
半導体部品は、製造工程ならびにはんだ実装を含む広い温度範囲に耐える必要があるため、ダイシェア強度の温度特性を確認した。実施例4と参考例3の導電ペーストを、銅合金リードフレーム上の銀メッキ面にスタンピングし、片面に銀メタライズされた600μm×600μm×厚さ100μmのサファイアダイスをマウントした。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。実施例4と参考例3の導電ペーストそれぞれについて、室温(25℃)、150℃、200℃の3水準に加温した銅合金リードフレームからダイスを剥す方向にせん断力をかけ、各温度で剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。表3に測定結果を示す。
【0078】
【表3】

【0079】
参考例3ではダイシェア強度がほぼ半減する傾向が見られたにもかかわらず、実施例4ではダイシェア強度が約25%程度しか低下しておらず、特に200℃では実施例4の方が高いダイシェア強度を示した。破壊モードが全て接合材の凝集破壊であったことより、銅合金リードフレーム上の銀メッキ面の接合性による影響ではなく、被接合体であるサファイアダイスと銅合金リードフレームの線膨張係数の大きな差が影響しているものと推測される。温度特性も実施例4、参考例3ともに温度が高くなるにつれ低下する傾向であることが確認された。これも温度が上昇することにより被接合材間で発生する熱応力による影響と推測される。ここで実施例4は参考例3に比べて室温ダイシェア強度は劣るがダイシェア強度温度依存性が小さく、200℃ではダイシェア強度が参考例3を上回り逆転している。銀メッキコバールを添加することによる線膨張係数の低減により、熱応力を減少させ広い温度領域での接合安定性が得られることを確認できた。
【0080】
(電気抵抗の測定)
実施例1−8、参考例3の電気抵抗を確認した。
電気抵抗の測定法は以下のとおりである。
銀粉と、コバール若しくは銀メッキコバールと、を含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電ペーストを得た。得られた導電ペーストを、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み200μmに塗布した。導電ペーストが塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線を製品名「MCP−T600」(三菱化学株式会社製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。表4に測定結果を示す。
【0081】
【表4】

【0082】
コバールならびに銀メッキコバールの添加量が増加するに従い電気抵抗が増加することが確認できた。良導電性材料として必要な電気抵抗5×10−5Ω・cm以下を満たすためには実用的にはコバールの添加量は60重量%〜70重量%、銀メッキコバールの添加量は80重量%が限界であること確認できた。
一方、線膨張係数はコバールならびに銀メッキコバールの添加量が増加するに従い小さくなり、銀メッキの有無は大きく影響せず添加したフィラーの体積%で一律決まることが確認できている。同じ線膨張係数を得るのであれば、銀コーティングを施すことによって、より電気抵抗の低い導電性材料を形成することができる。また、銀コーティングを施すことにより添加量を増やすことができるため、より小さな線膨張係数を有する導電性材料を調製することが可能である。
【0083】
<実施例9−12>
せん断強度が最大となる参考例3の銀粉組成と、銀より線膨張係数が小さな無機物フィラー若しくは銀コーティングを施してなる線膨張係数が銀より小さな無機物フィラーと、を所定量混合した導電性材料用組成物を作製した。その導電性材料のダイシェア強度ならびに線膨張係数を確認した。これらの導電性材料用組成物を用いたダイシェア強度ならびに線膨張係数を確認した。
【0084】
銀より線膨張係数が小さな無機物フィラーは平均粒径(メジアン径)が6μmの溶融シリカである(以下、「シリカ」と略する)。尚、溶融シリカは無機物の中で最も小さな線膨張係数を有する。
平均粒径(メジアン径)が6μmの溶融シリカを製品名「センシタイザー」(奥野製薬株式会社製)にて表面をスズ付加した後、製品名「アクチベータ」(奥野製薬株式会社製)にてパラジウム置換し、更に無電解メッキにより銀を0.15μmコーティングしたものである(以下、「銀メッキシリカ」と略する)。
【0085】
ダイシェア強度の測定法は以下のとおりである。
銀粉と、シリカ若しくは銀メッキシリカと、を含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電ペーストを得た。得られた導電ペーストをアルミナ基板上の銀メッキ面にスタンピングし、片面に銀メタライズされた600μm×600μm×厚さ100μmのサファイアダイスをマウントした。これを200℃の大気雰囲気下で加熱した。室温でアルミナ基板からダイスを剥す方向にせん断力をかけ、剥離したときの強度をダイシェア強度として測定した。
【0086】
線膨張係数の測定法は以下のとおりである。
銀粉と、シリカ若しくは銀メッキシリカと、を含む混合銀粉2gを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル0.16g中に25℃で混合して導電ペーストを得た。得られた導電ペーストをガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み1000μmに塗布した。導電ペーストが塗布されたガラス基板を、200℃の大気雰囲気下で加熱した。得られた配線を製品名「EXSTAR6000 TMA/SS6000」(セイコーインスツルメント製)を用い、昇温速度5℃/分にて250℃まで測定し、100℃〜200℃の膨張挙動より線膨張係数を算出した。表5に測定結果を示す。
【0087】
【表5】

【0088】
シリカならびに銀メッキシリカの添加量が増加するに従いダイシェア強度の低下が認められた。超音波ワイヤーボンディングによる安定した電気配線を施すためにはダイシェア強度が500gfは必要であり、実用的にはシリカの添加量は20重量%、銀メッキシリカの添加量は20重量%〜30重量%が限界であること確認できた。一方、線膨張係数もシリカならびに銀メッキシリカの添加量が増加するに従い小さくなることが確認できたが、銀メッキの有無は大きく影響せず添加した無機物の重量%で一律決まることが確認できた。同じ線膨張係数を得るのであれば銀コーティングを施すことによってより強固な導電性材料を形成することができる。また、銀コーティングを施すことにより添加量を増やすことができるため、より小さな線膨張係数を有する導電性材料を調製することが可能である。
【0089】
シリカならびに銀メッキシリカでは、コバールならびに銀メッキコバールに比べ、ダイシェア強度の低下が激しく実用的な線膨張係数の下げ幅が小さい。これはシリカと銀の線膨張係数が大きく異なるため応力集中点が数多く存在し、導電性材料自体の凝集強度が低下していることが原因と推測される。
【0090】
<通電試験1>
(実施例2)
実施例2で作製した導電性材料用組成物を、スタンピング法により凹型のリフレクター構造を側面に有する発光装置用酸化アルミニウム基板へ塗布し、600μm角の発光素子をマウントした。発光素子と導電性材料用組成物とが接する面には、蒸着により金属膜が形成されており、その最表面は銀(厚み:0.2μm)となっていた。導電性材料用組成物を介して発光素子がマウントされた基板を、大気雰囲気下で200℃、1時間加熱し、その後、冷却した。このように作製された発光素子と基板とは、十分な接合強度を示していた。また、発光素子と基板との接合部分を顕微鏡観察により、接合材料中の粒子の融着が確認できた。発光素子が接合された基板について、ダイシェア強度を室温で測定したところ、強度は約1.9kgfであった。
【0091】
(比較例1)
実施例2で作製した導電性材料用組成物に代えて、比較例1は絶縁性無色透明のエポキシ樹脂用いた。比較例1のダイシェア強度は、約0.9kgfであった。
【0092】
(比較例2)
実施例2で作製した導電性材料用組成物に代えて、比較例2はフレーク状銀フィラー80wt%−エポキシ樹脂20wt%の銀ペーストを用いた。比較例2のダイシェア強度は、約1.5kgfであった。
【0093】
次いで、実施例2、比較例1、比較例2のそれぞれを、発光素子の電極と基板の電極とを金ワイヤーで配線し、シリコーン樹脂で封止した。この状態で通電試験(試験条件25℃、50mA)を、500時間経過後、1000時間経過後、および2000時間経過後に行った。表6に初期出力に対する出力結果を示す。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例2で得られた接合は、2000時間経過後も高い出力を維持できていることが確認できた。一方、比較例1および2で得られた接合は、2000時間経過後に著しく出力が低下していることが確認できた。
【0096】
また、2000時間経過後、発光素子と基板との間の実施例2の導電性材料の接合は、変色が見られないことを確認した。
それに対し、2000時間経過後、発光素子と基板との間の比較例1の絶縁性無色透明のエポキシ樹脂の接合ならびにフィレット部は、黒茶褐色に変色が生じていることを確認した。また、2000時間経過後、発光素子と基板との間の比較例2のフレーク状銀フィラー80wt%−エポキシ樹脂20wt%の銀ペーストの接合ならびにフィレット部は、黒茶褐色に変色が生じていることを確認した。
【0097】
<通電試験2>
(実施例4)
実施例4で作製した導電性材料用組成物を、スタンピング法により銀メッキ銅合金リードフレームを白色エポキシ樹脂にて凹型のリフレクター構造を側面に有するよう一体成形してなる発光装置用リードフレームへ塗布し、600μm角の発光素子をマウントした。発光素子と導電性材料用組成物とが接する面には、蒸着により金属膜が形成されており、その最表面は銀(厚み:0.2μm)となっていた。導電性材料用組成物を介して発光素子がマウントされたリードフレームを、大気雰囲気下で200℃、1時間加熱し、その後、冷却した。このように作製された発光素子とリードフレームとは、十分な接合強度を示していた。また、発光素子とリードフレームとの接合部分を顕微鏡観察により、接合材料中の粒子の融着が確認できた。発光素子が接合されたリードフレームについて、ダイシェア強度を室温で測定したところ、強度は約0.7kgfであった。
【0098】
(比較例3)
実施例4で作製した導電性材料用組成物に代えて、比較例3は絶縁性無色透明のエポキシ樹脂用いた。比較例1のダイシェア強度は、約0.8kgfであった。
【0099】
(比較例4)
実施例4で作製した導電性材料用組成物に代えて、比較例4はフレーク状銀フィラー80wt%−エポキシ樹脂20wt%の銀ペーストを用いた。比較例4のダイシェア強度は、約1.3kgfであった。
【0100】
次いで、実施例4、比較例3、比較例4のそれぞれを、発光素子の電極とリードフレームの電極とを金ワイヤーで配線し、シリコーン樹脂で封止した。この状態で通電試験(試験条件25℃、50mA)を、500時間経過後、1000時間経過後、および2000時間経過後に行った。表7に初期出力に対する出力結果を示す。
【0101】
【表7】

【0102】
実施例4で得られた接合は、2000時間経過後も高い出力を維持できていることが確認できた。一方、比較例3および4で得られた接合は、2000時間経過後に著しく出力が低下していることが確認できた。
【0103】
また、2000時間経過後、発光素子とリードフレームとの間の実施例4の導電性材料の接合は、変色が見られないことを確認した。
それに対し、2000時間経過後、発光素子とリードフレームとの間の比較例3の絶縁性無色透明のエポキシ樹脂の接合ならびにフィレット部は、絶縁性無色透明エポキシ樹脂が僅かに黄変していることを確認した。また、2000時間経過後、発光素子とリードフレームとの間の比較例2のフレーク状銀フィラー80wt%−エポキシ樹脂20wt%の銀ペーストの接合ならびにフィレット部は、黒茶褐色に変色が生じていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係る導電性材料の製造方法は、例えば、耐熱パワー配線、部品電極、ダイアタッチ、微細バンプ、フラットパネル、ソーラ配線等の製造用途およびウェハ接続等の用途、またこれらを組み合わせて製造する電子部品の製造に適用できる。また、本発明に係る導電性材料の製造方法は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子を用いた発光装置を製造する際にも適用できる。
【符号の説明】
【0105】
10 発光素子
11 保護素子
20 パッケージ
21 リード
30 封止樹脂
40 導電性材料
50 ワイヤー
60 蛍光物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、銀より線膨張係数の小さな無機物と、を含む導電性材料用組成物を焼成する工程を有する導電性材料の製造方法。
【請求項2】
前記無機物は、0より大きく80重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項3】
前記無機物は、銀のコーティングが施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項4】
前記無機物は、鉄及びその合金、コバルト及びその合金、ニッケル及びその合金からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項5】
前記無機物は、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有する粒子状、若しくは、繊維径0.1μm〜15μmである繊維状のものが含有されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項6】
前記導電性材料用組成物は、前記銀粒子と前記無機物とを、沸点300℃以下の有機溶剤または水の中に浸積していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤は、低級アルコール、または、低級アルコキシ、アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコール、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項6に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項8】
前記導電性材料用組成物は、更に、金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物が、AgO、AgO及びAgからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物は、前記銀粒子に対して5重量%〜40重量%であることを特徴とする請求項8又は9に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物が、0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項12】
前記焼成は、酸素、オゾン又は大気雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項13】
前記焼成は、150℃〜320℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法により得られた導電性材料であり、空隙率が5体積%〜35体積%である導電性材料。
【請求項15】
前記導電性材料は、線膨張係数が1.4×10−6〜16×10−6であることを特徴とする請求項15に記載の導電性材料。
【請求項16】
前記導電性材料は、電気抵抗値が5.0×10−5Ω・cm以下であることを特徴とする請求項15又は16に記載の導電性材料。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法により得られた導電性材料を含む電子機器であって、
前記導電性材料が、電気配線、部品電極、ダイアタッチ接合材または微細バンプの材料として使用されることを特徴とする電子機器。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法により得られた導電性材料を含む発光装置であって、
前記導電性材料が、配線基板又はリードフレームと、発光素子との接合材料として使用されることを特徴とする発光装置。
【請求項19】
前記配線基板が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板及びBTレジン基板からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項19に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−170916(P2010−170916A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13711(P2009−13711)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】