説明

導電性熱硬化型接着テープ

【課題】小さな貼付面積で貼付した場合であっても、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、極めて安定した電気伝導性を発揮できる導電性接着テープを提供する。
【解決手段】本発明の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、前記熱硬化型接着剤層の硬化前接着力が2N/20mm以上であり、前記熱硬化型接着剤層の硬化後接着力が10N/20mm以上であることを特徴とする。本発明の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に前記熱硬化型接着剤層を有し、前記熱硬化型接着剤層側の表面に露出した端子部を有する熱硬化型接着テープであって、前記熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.1〜5mm2であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性熱硬化型接着テープに関する。より詳しくは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途等に使用するための導電性熱硬化型接着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性接着テープは電気伝導性(特に、厚み方向の電気伝導性)を有し、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電磁波シールド用途等に利用されている。このような導電性接着テープとしては、従来、例えば、金属箔と該金属箔の片面に設けた粘着剤層(感圧性接着剤層)とからなり、前記金属箔の粘着剤層被覆側には前記粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を持つ導通部が設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献1〜4参照)や、ニッケル粉などの導電性フィラーが分散された粘着剤層が金属箔上に設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献5、6参照)などが知られている。
【0003】
近年の電子機器の高機能化や使用態様の多様化に伴って、このような電子機器等に使用される導電性接着テープには、より長い期間、より過酷な環境条件下で使用された場合であっても、安定した電気伝導性を発揮することが要求されるようになってきた。しかしながら、上記電子機器の内部配線等に上述の導電性粘着テープを用いた場合、導電性粘着テープを貼付した部分の接触抵抗が徐々に高くなり、電気伝導性が経時で低下するという問題が生じていた。このように、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、安定した電気伝導性を発揮できる導電性接着テープは得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−46980号公報
【特許文献2】特開平8−185714号公報
【特許文献3】特開平10−292155号公報
【特許文献4】特開平11−302615号公報
【特許文献5】特開2004−263030号公報
【特許文献6】特開2005−277145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、上記の安定した電気伝導性に対する要求レベルは、近年ますます厳しくなってきており、より小さな貼付面積でより安定した電気伝導性が求められてきている。
【0006】
従って、本発明の目的は、小さな貼付面積で貼付した場合であっても、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、極めて安定した電気伝導性を発揮できる導電性接着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、隔離した2カ所間を電気的に導通させる用途に使用される導電性接着テープにおいて、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する構成として、さらに、上記熱硬化型接着剤層の硬化前接着力を2N/20mm以上とし、且つ硬化後接着力を10N/20mm以上とすると、小さな貼付面積で貼付した場合であっても、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、極めて安定した電気伝導性を発揮できる導電性熱硬化型接着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。また、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する構成として、さらに、熱硬化型接着剤層の単位面積あたりに存在する端子部の総面積を特定範囲に制御することによって、小さな貼付面積で貼付した場合であっても、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、極めて安定した電気伝導性を発揮できる導電性熱硬化型接着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、上記熱硬化型接着剤層の硬化前接着力が2N/20mm以上であり、上記熱硬化型接着剤層の硬化後接着力が10N/20mm以上であることを特徴とする。
【0009】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に上記熱硬化型接着剤層を有し、上記熱硬化型接着剤層側の表面に露出した端子部を有する熱硬化型接着テープであって、上記熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.1〜5mm2であることが好ましい。
【0010】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記端子部が、上記金属箔側から貫通孔を開け、上記熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が50,000〜500,000μm2であることが好ましい。
【0012】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記熱硬化型接着剤層が、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつエーテル化フェノール樹脂(Y)を含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層であることが好ましい。
【0013】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記アクリル系ポリマー(X)が、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0014】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記アクリル系ポリマー(X)が、さらに、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0015】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記熱硬化型接着剤層が、導電性フィラーを含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層であることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明は、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、前記熱硬化型接着剤層側の表面に露出した端子部を有する熱硬化型接着テープであって、上記熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.1〜5mm2であることを特徴とする導電性熱硬化型接着テープを提供する。
【0017】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記端子部が、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。
【0018】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記前記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が、50,000〜500,000μm2であることが好ましい。
【0019】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記熱硬化型接着剤層が、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつエーテル化フェノール樹脂(Y)を含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層であることが好ましい。
【0020】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記アクリル系ポリマー(X)が、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0021】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記アクリル系ポリマー(X)が、さらに、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0022】
さらに、上記の導電性熱硬化型接着テープは、上記熱硬化型接着剤層が、導電性フィラーを含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、小さな貼付面積で貼付した場合であっても、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、極めて安定した電気伝導性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の導電性熱硬化型接着テープのヒートサイクル試験において用いられる評価用基板の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の導電性熱硬化型接着テープのヒートサイクル試験において用いられる評価用基板における電気回路の等価回路を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の導電性熱硬化型接着テープのヒートサイクル試験において用いられる抵抗評価用サンプルの一例を示す模式図(図1の貼付部分13における断面図)である。
【図4】図4は、本発明の導電性熱硬化型接着テープのヒートサイクル試験における設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す図である。
【図5】図5は、実施例のヒートサイクル試験において測定された、チャンバー内雰囲気温度(槽内温度)および導電性熱硬化型接着テープの表面温度(テープ温度)プロファイルの一例を部分的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の一例を示す模式図(端子部における断面図)である。
【図7】図7は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の一例を示す模式図(平面図)である。
【図8】図8は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造方法の一例を部分的に示す模式図である
【図9】図9は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造に用いられるピンの一例を示す模式図(平面図)である。
【図10】図10は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造に用いられるピンの一例を示す模式図(側面図)である。
【図11】図11は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造に用いられるピンの配置の一例を部分的に示す模式図(平面図)である。
【図12】図12は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造に用いられる、メス型の表面に形成される円柱状の穴の一例を示す模式図(断面図)である。
【図13】図13は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造における、オス型とメス型を用いた打ち抜き(貫通孔の形成)の際の、ピンと円柱状の穴の位置関係の一例を示す模式図(断面図)である。
【図14】図14は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造方法の工程1において、菱形四角錐形状のピンを有するオス型と、円柱状の穴を有するメス型を用いて貫通孔を形成した際の、突出部の形状の一例を示す模式図である。
【図15】図15は、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の製造方法の工程2において、スキージを用いて突出部を折り返し、端子部を形成する態様の一例を示す模式図である。
【図16】図16は、従来の導電性接着テープの製造方法において、突出部をプレス加工することによって端子部を形成する態様の一例を示す模式図である。
【図17】図17は、実施例のヒートサイクル試験において用いた評価用基板を示す模式図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する片面接着テープである。本発明の導電性熱硬化型接着テープは、隔離した2カ所間を電気的に導通させる用途に使用することができる。なお、本明細書においては、「導電性熱硬化型接着テープ」という場合には、シート状のもの、即ち「導電性熱硬化型接着シート」も含まれるものとする。
【0026】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値が0.03Ω以下であることが好ましく、より好ましくは0.0001〜0.01Ω、さらにより好ましくは0.0001〜0.008Ωである。上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を0.03Ω以下とすることにより、導電性熱硬化型接着テープとしての十分な電気伝導性を発揮することができる。なお、上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を、「初期抵抗値」と称する場合がある。
【0027】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される200サイクル目の抵抗値の最大値が0.03Ω以下であることが好ましく、より好ましくは0.0001〜0.01Ω、さらにより好ましくは0.0001〜0.008Ωである。上記の200サイクル目の抵抗値の最大値を0.03Ω以下とすることにより、導電性熱硬化型接着テープとしての十分な電気伝導性を発揮することができる。なお、上記の200サイクル目の抵抗値の最大値を、「200サイクル抵抗値」と称する場合がある。
【0028】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される400サイクル目の抵抗値の最大値が0.03Ω以下であることが好ましく、より好ましくは0.0001〜0.01Ω、さらにより好ましくは0.0001〜0.008Ωである。上記の400サイクル目の抵抗値の最大値を0.03Ω以下とすることにより、導電性熱硬化型接着テープとしての十分な電気伝導性を発揮することができる。なお、上記の400サイクル目の抵抗値の最大値を、「400サイクル抵抗値」と称する場合がある。
【0029】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される、200サイクル目の抵抗値の最大値が、特に限定されないが、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)の2倍以下(例えば、1〜2倍)であることが好ましく、より好ましくは1〜1.8倍、さらに好ましくは1〜1.6倍である。なお、本明細書では、1サイクル目の抵抗値の最大値に対する200サイクル目の抵抗値の最大値の値[(200サイクル目の抵抗値の最大値)/(1サイクル目の抵抗値の最大値)](倍)を、「抵抗値倍率(200サイクル)」と称する場合がある。
【0030】
また、本発明の導電性熱硬化型接着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される、400サイクル目の抵抗値の最大値が、特に限定されないが、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)の2倍以下(例えば、1〜2倍)であることが好ましく、より好ましくは1〜1.8倍、さらに好ましくは1〜1.6倍である。なお、本明細書では、1サイクル目の抵抗値の最大値に対する400サイクル目の抵抗値の最大値の値[(400サイクル目の抵抗値の最大値)/(1サイクル目の抵抗値の最大値)](倍)を、「抵抗値倍率(400サイクル)」と称する場合がある。
【0031】
上記の抵抗値倍率(抵抗値倍率(200サイクル)や抵抗値倍率(400サイクル)ななど)は、導電性熱硬化型接着テープを、小さな貼付面積で貼り付け、なおかつ長期間使用した場合や過酷な環境条件下で使用した場合に、当該導電性熱硬化型接着テープがどれだけ安定した電気伝導性を発揮できるかの指標となる。抵抗値倍率が小さく2倍以下である場合には、導電性熱硬化型接着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下しにくく、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用に対しても極めて安定して電流が流れ続けると考えられるため、当該導電性熱硬化型接着テープを用いた製品は高い信頼性を発揮することができる。一方、上記抵抗値倍率が大きく2倍を超える場合には、導電性熱硬化型接着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下し、特に、長期間、過酷な環境条件下で使用した場合には、急激に抵抗値が上昇する危険があり、導通不良が発生し得るため、当該導電性熱硬化型接着テープが用いられた製品の信頼性が低下する。
【0032】
上記ヒートサイクル試験は、銀メッキが施された導体パターンに導電性熱硬化型接着テープを貼付して形成された電気回路を有する評価用基板において、前記電気回路に定電流を流しながら、前記評価用基板を低温と高温とを周期的に変化させる温度雰囲気条件下に暴露し、導電性熱硬化型接着テープの金属箔と銀メッキが施された導体パターンの間の抵抗(即ち、導電性熱硬化型接着テープと銀メッキが施された導体パターンとの貼り合わせ部分(貼付部分)の接触抵抗)を連続的に測定する試験である。
上記の1サイクル目の抵抗値の最大値、200サイクル目の抵抗値の最大値および400サイクル目の抵抗値の最大値は、次のようにして測定することができる。導電性熱硬化型接着テープを、貼付部分のサイズが2mm×3mm(面積:6mm2)となるように銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に、130℃でラミネートし、160℃、2MPaで120秒間加熱圧着して貼付し、さらに150℃で30分間熱硬化した後、貼付部分を含む導電性熱硬化型接着テープと銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度(ヒートサイクル条件)を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値(接触抵抗値)を連続的に測定する。より具体的には、下記の[ヒートサイクル試験]に従って測定することができる。なお、導電性熱硬化型接着テープにおける上記の貼付部分(サイズが2mm×3mm(面積:6mm2)の貼付部分)には、端子部が、少なくとも1、好ましくは1存在する。
[ヒートサイクル試験]
(評価用基板の作製)
銀メッキが施された導体パターンが形成されたガラスエポキシ基板を用い、前記銀メッキが施された導体パターンに導電性熱硬化型接着テープを貼り合わせ、さらに、前記銀メッキが施された導体パターンに定電流電源および電位計を接続することによって電気回路を形成して、評価用基板を作製する。図1には、具体的な評価用基板の構成の一例を示す。ガラスエポキシ基板18a上に、銀メッキが施された導体パターン(以下、単に「導体パターン」と称する場合がある)11a〜dが形成されており、導体パターン11a〜11dに対して、導電性熱硬化型接着テープ12(幅:2mm)を、130℃でラミネートした後、160℃、2MPaで120秒間加熱圧着して貼付する。この際、導体パターン11bと導電性熱硬化型接着テープとの貼付部分13のサイズが2mm×3mm(面積:6mm2)となるように貼付する。この貼付部分13により、導体パターン11bと導電性熱硬化型接着テープ12の金属箔との間の電気的導通(厚み方向の電気的導通)が確保される。
なお、導電性熱硬化型接着テープの幅が2mmに満たない場合には、トータルで幅が3mmとなるように貼り付ける(例えば、導電性熱硬化型接着テープが1mm幅の場合には、2枚を貼り付ける)ことによって、評価を実施することができる。
次いで、導体パターン11bと11dを定電流電源14に接続し、導体パターン11aと11bを電位計15に接続して電気回路を形成し、これを評価用基板とする。なお、特に限定されないが、例えば、前記導体パターンと定電流電源、電位計の接続は、リード線の使用やはんだ付け等の通常の接続手段を利用することによって実施することができる。図2には、図1に示す評価用基板における電気回路の等価回路を示す。図2における17は、図1における貼付部分13の抵抗(接触抵抗)を表している。
(抵抗評価用サンプルの作製)
上記評価用基板における電気回路のうち、少なくとも導体パターンと導電性熱硬化型接着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)を、ガラスエポキシ基板とガラス板の間でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)により封止し、抵抗評価用サンプルを作製する。図3には、抵抗評価用サンプルの模式図(図1の貼付部分13における断面図)を示す。抵抗評価用サンプルは、少なくとも導体パターン11bと導電性熱硬化型接着テープ12による貼り合わせ部分(貼付部分)13が、ガラスエポキシ基板18aおよびガラス板18bの間で、EVA(EVAの硬化物)19によって封止された構成を有する。なお、図1には、EVA(EVAの硬化物)によって封止される領域(封止領域)16の一例を示す。上述のEVAによる封止は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして実施することができる。図1に示す評価用基板における封止領域16上に、熱硬化性エチレン−酢酸ビニル共重合体のフィルム(EVAフィルム)(例えば、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化性EVAフィルム)をのせ、さらにその上からガラス板を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体とする。前記積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引きを行い、次いで、真空引きをしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後真空プレス機から前記積層体を取り出して、150℃で30分間加熱し、熱硬化型接着剤層及びEVAを熱硬化させる。
このように、少なくとも導体パターンと導電性熱硬化型接着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)をEVAによって封止することによって、貼付部分が固定されるため、誤差が小さく安定した測定結果を得ることができる。
(チャンバー(恒温槽)内の雰囲気温度設定)
チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のようにする。なお、特に限定されないが、下記設定にてチャンバー内の雰囲気温度を変化させる間には、チャンバー内の湿度(相対湿度)の制御は行わなくてもよい。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを少なくとも200回、あるいは少なくとも400回繰り返す設定とする。なお、1サイクルに要する時間は170分である。図4には、上記のチャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す。なお、この設定温度(ヒートサイクル条件)は、IEC規格のIEC61215(第2版)、IEC61646(第2版)に準じたものである。
上記のチャンバー(恒温槽)としては、公知慣用のチャンバーを用いることができ、特に限定されないが、例えば、商品名「PL−3KP」(エスペック(株)製)、商品名「PWL−3KP」(エスペック(株)製)などの市販品を用いることができる。図5には、後述の(評価)の「(1)抵抗値(ヒートサイクル試験)」で用いたチャンバー(エスペック(株)製、商品名「PL−3KP」)内の温度を上記設定にて制御した場合の、チャンバー(恒温槽)の槽内温度(槽内雰囲気温度)および評価用基板における導電性熱硬化型接着テープの表面温度プロファイルの一例を示した。チャンバーの槽内温度は設定条件にあわせて変化し、最高温度は設定とほぼ同じ約85℃、最低温度は設定よりもやや高い約−30℃を示した。また、導電性熱硬化型接着テープの表面温度は、チャンバーの槽内温度とほぼ同様の変化を示した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルにおける電気回路に対し、定電流電源(図1における定電流電源14)によって2Aの定電流を流し(即ち、図1における貼付部分13に2Aの定電流を流し)、抵抗評価用サンプルを槽内の雰囲気温度を25℃としたチャンバー内に入れる。次に、上記の設定温度(ヒートサイクル条件)により、抵抗評価用サンプルの冷却および加熱を繰り返し、この間、電位計15によって電圧を連続的に測定(例えば、サンプリング周期:5〜10回/10分)することにより、貼付部分13の抵抗値を連続的に取得する。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、200サイクル目の抵抗値の最大値、400サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、上記の抵抗値倍率を算出する。
【0033】
従来、導電性接着テープ(導電性粘着テープ等)がどれだけ安定した電気伝導性を発揮するかは、導電性接着テープを導体(電気伝導体)に貼付して前記導電性接着テープの金属箔と前記導体の間に電気的導通を確保した状態で、これを高温と低温とを繰り返す雰囲気温度条件に暴露し、暴露前後の導電性接着テープの貼付部分の電気伝導性(即ち、抵抗(接触抵抗))がどれだけ変化するかによって評価されていた。しかしながら、上記雰囲気温度条件に暴露前後の電気伝導性の変化は、暴露前の常温で測定される抵抗値と、暴露後に常温で測定される抵抗値とを比較することによって評価していたため、高温や低温条件に暴露されている最中にも常に安定した電気伝導性を発揮しているかどうかは不明であった。そこで、本発明者は、高温や低温条件に暴露する間においても連続的に導電性接着テープ貼付部分の抵抗(接触抵抗)を測定する上記のヒートサイクル試験を採用し、導電性接着テープの電気伝導性を評価した。その結果、従来の導電性接着テープにおいては、常温環境下で測定される抵抗値の経時的な上昇は小さいものの、特に高温環境下での抵抗値が徐々に増大して経時で電気伝導性が低下することが判明した。これに対して、本発明の導電性熱硬化型接着テープが、上記のヒートサイクル試験において測定される抵抗値倍率が2倍以下であると、高温環境下で測定される抵抗値の上昇が抑制され、長期の使用や過酷な環境条件下での使用に対しても極めて安定した電気伝導性を発揮できる。しかも、貼付面積:2mm×3mm(6mm2)のような小さな貼付面積で貼付した場合であっても、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用において、極めて安定した電気伝導性を発揮できる。
【0034】
(金属箔)
本発明の導電性熱硬化型接着テープを構成する金属箔としては、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などの金属箔を使用することができる。中でも、導電性、コスト、加工性の観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、より好ましくは銅箔である。なお、上記金属箔は、錫メッキや銀メッキ、金メッキ等の各種表面処理が施されていてもよい。即ち、腐食による抵抗値上昇を抑制する観点で、錫メッキが施された銅箔が特に好ましい。
【0035】
上記金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。厚みを10μm以上とすることにより、十分な強度を有するため、作業性が向上する。一方、厚みを100μm以下とすることにより、コスト面で有利となる。また、厚みが100μm以下であると、特に、後述の貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の場合には貫通孔を形成しやすいため、生産性が向上する。
【0036】
(熱硬化型接着剤層)
本発明の導電性熱硬化型接着テープを構成する熱硬化型接着剤層における硬化前接着力は、2N/20mm以上であり、好ましくは2.5N/20mm以上、より好ましくは3N/20mm以上である。本発明の導電性熱硬化型接着テープは、上記硬化前接着力が2N/20mm以上であるので、被着体に仮止め固定することが可能となる。なお、上記硬化前接着力の上限値は、特に限定されないが、15N/20mmが好ましく、より好ましくは20N/20mmである。上記の硬化前接着力は、加熱硬化処理(150℃で35分の加熱処理)前の熱硬化型接着剤層の接着力である。本明細書において、「硬化前接着力」を「初期接着力」と称する場合がある。
【0037】
また、本発明の導電性熱硬化型接着テープを構成する熱硬化型接着剤層における硬化後接着力は、10N/20mm以上であり、好ましくは12N/20mm以上、より好ましくは15N/20mm以上である。本発明の導電性熱硬化型接着テープは、上記硬化後接着力が10N/20mm以上であるので、被着体に強靱に接着でき、長期間にわたる使用や過酷な環境下での使用において、極めて安定した電気伝導性を発揮できる。なお、上記硬化後接着力の上限値は、特に限定されないが、70N/20mmが好ましく、より好ましくは50N/20mmである。本明細書において、上記の硬化後接着力は、熱硬化型接着剤層を加熱硬化処理(150℃で35分の加熱処理)した後の熱硬化型接着剤層の接着力である。
【0038】
本発明の導電性熱硬化型接着テープを構成する熱硬化型接着剤層を形成するための接着剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、ビニルアルキルエーテル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ウレタン系接着剤、フッ素系接着剤、エポキシ系接着剤などの公知の接着剤を挙げることができる。これらの接着剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
中でも、上記熱硬化型接着剤層を形成するための接着剤としては、アクリル系接着剤が好ましい。すなわち、本発明の導電性熱硬化型接着テープは、熱硬化型アクリル系接着剤層を有する導電性熱硬化型アクリル系接着テープであることが好ましい。
【0040】
上記熱硬化型アクリル系接着剤層は、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつ熱硬化型性樹脂を含有する熱硬化型アクリル系接着剤組成物から形成されることが好ましい。なお、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物には、アクリル系ポリマー(X)及び熱硬化性樹脂に加えて、必要に応じて、その他の成分(添加剤)が含まれていてもよい。
【0041】
本明細書案において、「アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有する」とは、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物の全不揮発分(100重量%)中の、アクリル系ポリマー(X)の含有量が30重量%以上であることを意味する。
【0042】
上記アクリル系ポリマー(X)は、特に限定されないが、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須のモノマー成分として構成(又は形成)されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。なお、本明細書においては、上記「炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)」を、「(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)」又は単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)」と称する場合がある。また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち一方又は両方)を意味し、以下も同様である。
【0043】
上記アクリル系ポリマー(X)は、特に、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。中でも、上記アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分全量(100重量%)中の、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)の含有量が50〜95重量%、シアノ基含有モノマー(b)の含有量が9〜49.5重量%、カルボキシル基含有モノマー(c)の含有量が0.3〜10重量%であることが好ましい。なお、アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分としては、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)以外のモノマー成分(他のモノマー成分)が用いられてもよい。上記アクリル系ポリマー(X)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
上記アクリル系ポリマー(X)は、ゴム弾性(エラストマー性)を発現するアクリル系ポリマー(アクリル系エラストマー)であることが好ましい。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。中でも、炭素数が4〜12である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステル)が好ましく、さらに好ましくはアクリル酸n−ブチルである。なお、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分中の、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)の含有量(含有割合)は、特に限定されないが、熱硬化型アクリル系接着剤層の接着力の点から、アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは50〜90重量%、さらにより好ましくは55〜75重量%、最も好ましくは60〜72重量%である。
【0047】
上記シアノ基含有モノマー(b)は、シアノ基を有するモノマーであり、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。中でも、アクリロニトリルが好ましい。上記シアノ基含有モノマー(b)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。シアノ基含有モノマー(b)を用いることにより、熱硬化型アクリル系接着剤層の強度(バルク強度)を向上させことができるので、長期間にわたる使用の点や過酷な環境条件下での使用の点から好ましい。
【0048】
アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分中の、シアノ基含有モノマー(b)の含有量は、アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、1〜50重量%が好ましい。上記シアノ基含有モノマー(b)の含有量の下限値は、1重量%が好ましく、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは9重量%、さらにより好ましくは24重量%、最も好ましくは26重量%である。一方、上記シアノ基含有モノマー(b)の含有量の上限値は、50重量%が好ましく、より好ましくは49.5重量%、さらに好ましくは40重量%、さらにより好ましくは35重量%、最も好ましくは30重量%である。中でも、上記シアノ基含有モノマー(b)の含有量は、5〜30重量%が特に好ましい。上記含有量が5重量%以上であることにより、熱硬化型アクリル系接着剤層の強度(バルク強度)がより向上するため好ましい。一方、上記含有量が49.5重量%を超えると、熱硬化型アクリル系接着剤層の接着力が低下する場合がある。
【0049】
上記カルボキシル基含有モノマー(c)は、カルボキシル基を有するモノマーであり、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、これらのカルボキシル基含有モノマーの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー)も、カルボキシル基含有モノマーに含まれるものとする。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、特に好ましくはアクリル酸である。上記カルボキシル基含有モノマー(c)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。カルボキシル基含有モノマー(c)を用いることにより、本発明の導電性熱硬化型接着テープの接着力を向上させることができるため好ましい。
【0050】
アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分中の、カルボキシル基含有モノマー(c)の含有量は、アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.3〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。上記含有量が0.5重量%以上であることにより、熱硬化型アクリル系接着剤層の接着力が向上するため好ましい。一方、上記含有量が10重量%を超えると、熱硬化型アクリル系接着剤層の接着力が低下する場合がある。
【0051】
アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分としては、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)の他に、他のモノマー成分(共重合性モノマー)が用いられていてもよい。上記他のモノマー成分(共重合性モノマー)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。上記他のモノマー成分(共重合性モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の炭素数が15〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸C15-20アルキルエステル);(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]や(メタ)アクリル酸イソボルニル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル[(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなど]、(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルエステルなど]等の芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等のオレフィン系モノマー;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどが挙げられる。
【0052】
また、上記他のモノマー成分(共重合性モノマー)としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーを用いることもできる。
【0053】
言い換えると、アクリル系ポリマー(X)は、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)に由来する構成単位、シアノ基含有モノマー(b)に由来する構成単位、及びカルボキシル基含有モノマー(c)に由来する構成単位を少なくとも含むアクリル系ポリマーであることが好ましい。各構成単位は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。アクリル系ポリマー(X)(100重量%)中の、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル(a)に由来する構成単位の含有量は、50重量%以上が好ましく、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは50〜90重量%、さらにより好ましくは55〜75重量%、最も好ましくは60〜72重量%である。シアノ基含有モノマー(b)に由来する構成単位の含有量は、9〜49.5重量%が好ましく、より好ましくは24〜40重量%、さらに好ましくは26〜35重量%である。カルボキシル基含有モノマー(c)に由来する構成単位の含有量は0.3〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。
【0054】
上記アクリル系ポリマー(X)は、公知乃至慣用の重合方法(例えば、溶液重合方法、エマルション重合方法、懸濁重合方法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法など)により調製することができる。
【0055】
なお、アクリル系ポリマー(X)の重合に際して必要に応じて用いられる重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤などは、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。より具体的には、上記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。上記重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。上記重合開始剤の使用量は、特に限定されず、通常の使用量の範囲から適宜選択することができる。
【0056】
上記連鎖移動剤としては、例えば、ドデカンチオール(ラウリルメルカプタン)、2−メルカプトエタノール、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。上記乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。上記連鎖移動剤及び上記乳化剤は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
なお、溶液重合では、各種の一般的な溶剤を用いることができる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。上記溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
上記アクリル系ポリマー(X)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、 上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物の塗工性を向上させ生産性を向上させる点や上記熱硬化型アクリル系接着剤層の強度を向上させて、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用での使用においても安定した電気導電性を発揮させる点から、20万〜160万が好ましく、より好ましくは30万〜140万、さらに好ましくは30万〜70万である。アクリル系ポリマー(X)の重量平均分子量は、重合開始剤や連鎖移動剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0059】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、例えば、以下の<GPCの測定方法>で測定して求めることができる。
<GPCの測定方法>
(サンプルの調製)
測定対象であるアクリル系ポリマーを溶離液に溶解して、該アクリル系ポリマーの0.1%THF溶液を調製し、1日放置した後、0.45μmメンブレンフィルターにてろ過し、得られたろ液をサンプルとして、下記測定条件でGPC測定を行う。
(測定条件)
GPC装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel superAWM−H,TSKgel superAW4000,TSKgel superAW2500(東ソー株式会社製)
カラムサイズ:各6mmφ×15cm、計45cm
カラム温度:40℃
溶離液:10mM−LiBr、10mM−りん酸/THF(テトラヒドロフラン)
流速:0.4mL/min
入口圧:4.6MPa
注入量:20μL
検出器:示差屈折計
標準試料:ポリエチレンオキサイド
データ処理装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
【0060】
上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物中の、上記アクリル系ポリマー(X)の含有量(含有割合、配合割合)は、特に限定されないが、接着力の点から、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物の全不揮発分(100重量%)に対して、30重量%以上が好ましく、より好ましく30〜95重量%、さらに好ましくは40〜90重量%である。
【0061】
また、上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、加熱により硬化して接着作用を発揮する公知慣用の熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂は、熱硬化性を付与するために用いられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。中でも、上記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂及び/又はエポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはフェノール樹脂である。上記熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0062】
上記フェノール樹脂としては、特に限定されず、公知慣用のフェノール樹脂を用いることができる。例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂や、各種の変性フェノール樹脂(例えば、アルキル変性フェノール樹脂等)などが挙げられる。上記フェノール樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。上記フェノール樹脂としては、エーテル化フェノール樹脂が特に好ましい。エーテル化フェノール樹脂は加熱硬化時の反応性に優れるため、熱硬化性樹脂としてエーテル化フェノール樹脂を用いる場合には、接着力向上の効果が特に優れる。なお、本明細書では、熱硬化性樹脂として好ましく用いられるエーテル化フェノール樹脂を、「エーテル化フェノール樹脂(Y)」と称する場合がある。
【0063】
上記エーテル化フェノール樹脂(Y)は、フェノール樹脂の有するメチロール基(フェノール樹脂中のメチロール基)の一部がエーテル化されているフェノール樹脂である。即ち、エーテル化されていないメチロール基及びエーテル化されたメチロール基を少なくとも有するフェノール樹脂である。
【0064】
さらに、上記エーテル化フェノール樹脂(Y)は、フェノール樹脂の有するメチロール基の一部がアルキル基でエーテル化されているフェノール樹脂である、アルキルエーテル化フェノール樹脂が好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などの炭素数が1〜20のアルキル基が挙げられる。中でも、n−ブチル基が好ましい。
【0065】
上記エーテル化フェノール樹脂(Y)において、骨格となるフェノール樹脂は、特に限定されない。エーテル化フェノール樹脂(Y)としては、例えば、エーテル化ノボラック型フェノール樹脂、エーテル化レゾール型フェノール樹脂、エーテル化クレゾール樹脂などが挙げられる。中でも、エーテル化クレゾール樹脂が好ましく、より好ましくはブチルエーテル化クレゾール樹脂(メチロール基の一部がブチルエーテル化されたクレゾール樹脂)である。エーテル化フェノール樹脂(Y)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
上記エーテル化フェノール樹脂(Y)における、エーテル化されたメチロール基の割合としては、例えば、エーテル化されたメチロール基とエーテル化されていないメチロール基の合計(100モル%)に対する、エーテル化されたメチロール基の割合が、50モル%以上であることが好ましい。エーテル化されたメチロール基の割合が50モル%未満では、エーテル化フェノール樹脂の常温での反応が促進されたり、加熱硬化時の反応性が低下する場合がある。
【0067】
上記エーテル化フェノール樹脂(Y)としては、市販されているエーテル化フェノール樹脂を使用することもでき、例えば、商品名「スミライトレジンPR−55317」(住友ベークライト株式会社製、ブチルエーテル化クレゾール樹脂、エーテル化されたメチロール基の割合:90モル%)、商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製、ブチルエーテル化クレゾール樹脂)などを使用することができる。
【0068】
上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物中の、熱硬化性樹脂(特に上記エーテル化フェノール樹脂(Y))の含有量(含有割合、配合割合)は、特に限定されないが、アクリル系ポリマー(X)100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、より好ましくは10〜150重量部、さらにより好ましくは10〜130重量部、最も好ましくは10〜100重量部である。上記エーテル化フェノール樹脂(Y)の含有量1重量部以上とすることにより、熱硬化型アクリル系接着剤層の熱硬化性が向上する。なお、200重量部以下とすることにより、高温プレス時に接着剤がはみ出さないことから好ましい。
【0069】
また、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物中の、熱硬化性樹脂の含有量、特に上記エーテル化フェノール樹脂(Y)の含有量を、アクリル系ポリマー(X)100重量部に対して、20重量部以上とすると、硬化前の熱硬化型アクリル系接着剤層のタックを大きくすることができるので、仮止めができる。
【0070】
また、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物には、溶剤が含まれていることが好ましい。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。上記溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、上記溶剤には分散媒の意味も含むものとする。
【0071】
さらに、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物には、必要に応じて、老化防止剤、充填剤(フィラー)、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。上記添加剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0072】
特に、上記熱硬化型接着剤層を形成する熱硬化型接着剤組成物(特に、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物)には、導電性フィラーが含まれていてもよい。つまり、本発明の導電性熱硬化型接着テープを構成する熱硬化型接着剤層(特に、熱硬化型アクリル系接着剤層)には、導電性フィラーが添加されていてもよい。導電性フィラーを添加することで、本発明の導電性熱硬化型接着テープにおける電気伝導性の信頼性を更に向上させることができる。なお、導電性フィラーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0073】
すなわち、本発明の導電性熱硬化型接着テープの熱硬化型接着剤層は、電気伝導性の信頼性の点から、導電性フィラーを含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層であってもよい。
【0074】
上記導電性フィラーとしては、特に限定されないが、公知慣用のものが挙げられる。例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、アンチモン、モリブデン、銅、銀、白金、金などの金属からなるフィラー;これらの金属の合金若しくは酸化物からなるフィラー;カーボンブラックなどのカーボンからなるフィラー;これら(上記金属、上記金属の合金若しくは酸化物、上記のカーボンからなるフィラー)を、ポリマービーズ、樹脂などに被覆したフィラーなどが挙げられる。
【0075】
中でも、上記導電性フィラーは、金属フィラー、金属被覆フィラー(例えば、金属をポリマービーズ、樹脂などに被覆したフィラー)が好ましい。特に、長期間の導通信頼性の点から、金フィラーや銀フィラーが好ましい。
【0076】
上記導電性フィラーの形状としては、特に限定されないが、球状やスパイク状が好ましく挙げられ、より好ましくは球状である。球状やスパイク状の導電性フィラーであると、熱硬化型接着剤層中で均一分散しやすくなるため、導電性熱硬化型接着テープにおいて接着性と電気伝導性とを両立させやすくなる。
【0077】
なお、上記導電性フィラーは、形状の異なるものが混合していてもよい。例えば、上記導電性フィラーは、球状の導電性フィラー及びスパイク状の導電性フィラーが混合していてもよい。
【0078】
また、上記導電性フィラーのアスペクト比は、特に限定されないが、例えば、1.0〜2.0が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。なお、上記アスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0079】
上記導電性フィラーは、市販品が用いられてもよい。例えば、商品名「Ag−HWQ−400」(福田金属箔粉工業株式会社製、銀フィラー)などが挙げられる。
【0080】
上記熱硬化型接着剤組成物(特に上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物)中の、上記導電性フィラーの含有量は、特に限定されないが、導電性フィラーを除く上記熱硬化型接着剤組成物の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部が好ましく、より好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは35〜100重量部である。導電性フィラーの含有量を25重量部以上とすることにより、電気伝導性が向上する。一方、導電性フィラーの含有量を250重量部以下とすることにより、導電性フィラーの凝集が抑制され、熱硬化型接着剤層の表面が粗くなり過ぎないため、長期導通信頼性と接着力を両立できる。さらに、コスト面でも有利である。
【0081】
特に、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物は、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつエーテル化フェノール樹脂(Y)を含有することが好ましい。すなわち、本発明の導電性熱硬化型接着テープは、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつエーテル化フェノール樹脂(Y)を含有する熱硬化型アクリル系接着剤組成物から形成された熱硬化型アクリル系接着剤層を有する導電性熱硬化型アクリル系接着テープであることが好ましい。
【0082】
上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物は、例えば、アクリル系ポリマー(X)、熱硬化性樹脂(特にエーテル化フェノール樹脂(Y))と、必要に応じて各種添加剤等を混合することにより調製することができる。なお、アクリル系ポリマー(X)、熱硬化性樹脂は、溶剤に溶解させることにより溶液の状態として、又は分散媒に分散させることにより分散液の状態として、上記熱硬化型アクリル系接着剤組成物の調製に用いることもできる。
【0083】
上記熱硬化型接着剤層は、熱硬化型接着剤組成物から形成される。上記熱硬化型接着剤層は、単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。
【0084】
上記熱硬化型接着剤層(硬化前)のゲル分率、特に上記熱硬化型アクリル系接着剤層(硬化前)のゲル分率は、特に限定されないが、熱硬化型接着剤層の柔軟性の点から、70%(重量%)未満(例えば、0%以上70%未満)が好ましく、より好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満である。上記ゲル分率は、メチルエチルケトン不溶分として求めることができ、具体的には、メチルエチルケトン中に室温(23℃)で7日間浸漬した後の不溶分の浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。上記ゲル分率が70%未満であることにより、上記熱硬化型接着剤層(特に上記熱硬化型アクリル系接着剤層)の柔軟性が向上し接着力が向上するため好ましい。
【0085】
上記ゲル分率(メチルエチルケトン不溶分の割合)は、具体的には、例えば、以下の<ゲル分率の測定方法>により測定し、算出できる。
<ゲル分率の測定方法>
本発明の導電性熱硬化型接着テープより、熱硬化型接着剤層を約0.1g採取し、ゲル分率測定用の熱硬化型接着剤層とする。上記ゲル分率測定用の熱硬化型接着剤層を、平均孔径0.2μmの孔を有する多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、熱硬化型接着剤層と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、上記の熱硬化型接着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、メチルエチルケトンで満たした50mL容器に入れ、室温(23℃)にて1週間(7日間)静置する。その後、容器からサンプル(メチルエチルケトン処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥してメチルエチルケトンを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B) × 100
(上記式において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0086】
上記熱硬化型接着剤層の150℃1時間の硬化処理後のゲル分率、特に上記熱硬化型アクリル系接着剤層の150℃1時間の硬化処理後のゲル分率は、特に限定されないが、90%(重量%)以上が好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは96%以上である。上記熱硬化型接着剤層の150℃1時間の硬化処理後のゲル分率の上限については、特に限定されず、例えば、100%である。上記ゲル分率が90%以上であることにより、上記熱硬化型接着剤層の硬化処理をすばやく十分に進行させることができ、硬化後の接着性により優れるため好ましい。上記ゲル分率が90%未満では、150℃1時間の硬化処理では硬化反応の進行が十分でなく、硬化後の接着力が不足する場合があり、十分に接着させるためにさらに高い硬化温度や長い硬化時間を必要とするためコストが高くなる場合がある。
【0087】
なお、上記熱硬化型接着剤層の150℃1時間の硬化処理後のゲル分率は、具体的には、例えば、本発明の導電性熱硬化型接着テープを150℃で1時間加熱し、硬化処理を施した後の導電性熱硬化型接着テープから採取した熱硬化型接着剤層(硬化後の熱硬化型接着剤層)を「ゲル分率測定用の熱硬化型接着剤層」として、上記の<ゲル分率の測定方法>と同様にして、測定し算出できる。
【0088】
上記熱硬化型接着剤層の厚みは、特に限定されないが、10〜80μmが好ましく、より好ましくは20〜60μm、特に好ましくは25〜50μmである。厚みを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚みを80μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる。特に、後述の貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープa)の場合には、熱硬化型接着剤層の厚みが厚すぎると、貫通孔を開けて形成した突出部が沈み込んでしまう(即ち、突出部が貫通孔を塞ぐ方向に倒れ込む)ことにより、金属箔が熱硬化型接着剤層側の表面に露出できず(当該現象を「熱硬化型接着剤層による侵食」と称する)、端子部の面積を大きくすることが困難となる傾向がある。厚みを80μm以下とすることによって、上述のような熱硬化型接着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を効率的に大きくすることができるため、安定した電気伝導性を発揮させることができる。
【0089】
[導電性熱硬化型接着テープ]
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する。なお、本発明の導電性接着性テープは、上記の金属箔、熱硬化型接着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0090】
本発明の導電性熱硬化型接着テープにおける接着面には、セパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。上記の中でも、セパレータの浮き(セパレータが粘着面から部分的に剥離する現象)を抑制する観点で、ポリエチレン又はポリプロピレンからなるセパレータを用いることが好ましい。なお、セパレータは公知慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚み等も特に限定されない。
【0091】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に、熱硬化型接着剤層を形成することにより作製することができる。上記熱硬化型接着剤層の形成方法としては、熱硬化型接着剤組成物を、金属箔又はセパレータに塗布(塗工し)、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法を挙げることができる。
【0092】
なお、上記熱硬化型接着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0093】
本発明の導電性熱硬化型接着テープの厚みは、特に限定されないが、20〜180μmが好ましく、より好ましくは40〜140μm、さらに好ましくは50〜110μmである。上記厚みを20μm以上とすることにより、十分なテープ強度を有し、作業性が向上する。一方、上記厚みを180μm以下とすることにより、製品の薄膜化や小型化に有利となる。なお、上記「導電性熱硬化型接着テープの厚み」とは、導電性熱硬化型接着テープにおける金属箔表面(金属箔表面のうち熱硬化型接着剤層を有しない側の表面)から接着面までの厚みを意味する。
【0094】
本発明の導電性熱硬化型接着テープ及び上記熱硬化型接着剤層は、加熱によって硬化反応を進行(熱硬化)させることにより、優れた接着力を発揮することができる。本発明の導電性熱硬化型接着テープを加熱して上記熱硬化型接着剤層を硬化させる(熱硬化する)ことにより、強固な接着力を有する接着テープ(熱硬化された導電性熱硬化型接着テープ)が得られる。上記硬化条件(加熱条件)は、特に限定されないが、100℃以上(例えば、100〜200℃)の温度にて30分以上(例えば、30〜360分)加熱することが好ましく、より好ましくは150℃以上(例えば、150〜200℃)の温度にて60分以上(例えば、60〜360分)である。
【0095】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、上記熱硬化型接着剤層の硬化前接着力が2N/20mm以上であり、上記熱硬化型接着剤層の硬化後接着力が10N/20mm以上であればよく、特に限定されないが、その具体的態様としては、例えば、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、熱硬化型接着剤層側の表面に露出した端子部を有する熱硬化型接着テープであって、熱硬化型接着剤層(導電性熱硬化型接着テープにおける熱硬化型接着剤層側の表面)30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.1〜5mm2に制御された導電性熱硬化型接着テープ(以下、当該具体的態様の導電性熱硬化型接着テープを「導電性熱硬化型接着テープA」と称する)を挙げることができる。
【0096】
上記「端子部」とは、導電性熱硬化型接着テープAの熱硬化型接着剤層側の表面に露出している金属部分(金属部分の表面が酸化されている場合も含む)であり、かつ、導電性熱硬化型接着テープAにおける金属箔と電気的に導通する部分である。具体的には、導電性熱硬化型接着テープAを熱硬化型接着剤層表面側から観察した時に、露出している金属部分をいう。
【0097】
導電性熱硬化型接着テープAはこのような端子部を有するため、被着体に貼付する際には上記端子部の少なくとも一部が被着体と接触することによって、被着体と導電性熱硬化型接着テープAの金属箔との間の電気的導通が確保される。即ち、上記端子部は、導電性熱硬化型接着テープAにおいて、厚み方向の電気伝導性を発揮させる役割を担う。中でも、上記端子部としては、厚み方向に安定した導電性を発揮させる観点から、導電性熱硬化型接着テープを構成する金属箔の一部により形成された端子部であること、即ち、導電性熱硬化型接着テープを構成する金属箔の一部が熱硬化型接着剤層側の表面に露出することによって形成された端子部であることが好ましい。
【0098】
導電性熱硬化型接着テープAにおける、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積(熱硬化型接着剤層側の表面30mm2あたりに存在する端子部の総面積)(以下、単に「端子部の総面積」と称する場合がある)は、0.1〜5mm2であることが好ましい。端子部の総面積の上限としては、5mm2が好ましく、より好ましくは2.5mm2、さらに好ましくは1mm2、特に好ましくは0.5mm2である。また、端子部の総面積の下限としては、0.1mm2が好ましく、より好ましくは0.12mm2、さらに好ましくは0.15mm2である。上記端子部の総面積を0.1mm2以上とすることにより、長期の使用や過酷な環境下での使用による、端子部と被着体との接触面積(以下、単に「接触面積」と称する場合がある)の低下に伴う急激な抵抗値上昇を防ぎ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、上記端子部の総面積を5mm2以下とすることにより、被着体に対する接着性が向上する。なお、「端子部の面積」とは、導電性熱硬化型接着テープAの熱硬化型接着剤層側の表面を熱硬化型接着剤層表面に対して垂直方向から観察した時に、露出している金属部分(端子部)の面積をいう。即ち、熱硬化型接着剤層側の表面を熱硬化型接着剤層表面に対して垂直方向から観察した時の、端子部の投影面積のことを指す。
【0099】
上記端子部の総面積は、特に限定されないが、例えば、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの面積(投影面積)を測定し、これらを合計することによって測定することができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定することができる。
[端子部の総面積の測定方法]
導電性熱硬化型接着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの熱硬化型接着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(熱硬化型接着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、前記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在するすべての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
より詳しくは、後述の(評価)の「(2)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
なお、導電性熱硬化型接着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、熱硬化型接着剤層の面積が30mm2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、熱硬化型接着剤層の面積が30mm2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を熱硬化型接着剤層30mm2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
【0100】
なお、上記端子部の総面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm2など)の熱硬化型接着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、熱硬化型接着剤層30mm2あたりの数値に換算する方法を用いることもできる。
【0101】
導電性熱硬化型接着テープAにおいて、上記端子部を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔側からエンボス加工を施して前記金属箔の一部を熱硬化型接着剤層側の表面に露出させ、これを端子部とする方法や、金属箔側から貫通孔を開け、熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法などが挙げられる。中でも、金属箔側から貫通孔を開け、熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法が好ましく、さらに安定した電気伝導性を発揮させる観点からは、金属箔側から貫通孔を開け、熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法が好ましい。即ち、導電性熱硬化型接着テープAにおける端子部としては、金属箔側から貫通孔を開け、熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。端子部を上記方法により形成すると、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を、上記範囲に制御することが容易となるため、好ましい。
【0102】
以下では、上述の金属箔側から貫通孔を開け、熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法により得られる導電性熱硬化型接着テープを、「導電性熱硬化型接着テープa」と称する。即ち、導電性熱硬化型接着テープaは、端子部が、金属箔側から貫通孔を開け、熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である導電性熱硬化型接着テープである。以下に、導電性熱硬化型接着テープaについて詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。なお、前記「突出部」とは、前記貫通孔を設けた時に熱硬化型接着剤層側の表面に突き出した金属箔のことをいい、「バリ」ということもある。また、本明細書において「突出部を折り返す」とは、突出部を構成する金属箔が熱硬化型接着剤層側の表面に露出するように、前記突出部を折り曲げることを指す。
【0103】
導電性熱硬化型接着テープaは、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、前記金属箔並びに熱硬化型接着剤層を貫通する孔(貫通孔)が設けられ、前記貫通孔を通して金属箔の一部が熱硬化型接着剤層側の表面に露出し、これを端子部とする構成を有する片面接着テープである。このような端子部を有することにより、金属箔と被着体に対する接着面との間で電気伝導性(厚み方向の電気伝導性)が確保される。図6および図7は、導電性熱硬化型接着テープaの構成の一例を示す模式図である。図6(導電性熱硬化型接着テープaの模式図(端子部における断面図))において、導電性熱硬化型接着テープ23は、金属箔21の片面側に熱硬化型接着剤層22を有しており、金属箔21並びに熱硬化型接着剤層22には貫通孔25が設けられ、貫通孔25を通して金属箔21の一部が熱硬化型接着剤層側の表面に露出することによって端子部24が形成されている。このように、導電性熱硬化型接着テープaにおいては、貫通孔25と端子部24とにより、金属箔21と端子部24との間を通電させる役割を果たす導通部26が形成されている。
図7は、導電性熱硬化型接着テープaの一例を示す模式図(平面図)である。図7における貫通孔25の位置パターンは、いわゆる、散点パターンであり、例えば、長手方向の配置間隔がxの列を間隔yで配列し、かつ互いに隣り合う列間において半ピッチずらしたものを使用できる。上記配置間隔xとしては、特に限定されないが、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、上記間隔yとしては、特に限定されないが、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0104】
導電性熱硬化型接着テープaにおける、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する貫通孔の数(密度)(熱硬化型接着剤層側の表面30mm2あたりに存在する貫通孔の数)としては、特に限定されないが、例えば、3〜10個/30mm2が好ましく、より好ましくは3〜6個/30mm2である。上記貫通孔の数を3個/30mm2以上とすることにより、被着体に対する導電性熱硬化型接着テープの端子部の接触箇所が多くなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって端子部それぞれの接触面積が低下した場合であっても、十分な接触箇所を保持することにより電気的導通を確保し、急激な抵抗値上昇を抑えることができる。一方、上記貫通孔の数を10個/30mm2以下とすることにより、導電性熱硬化型接着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0105】
上記貫通孔の数(密度)は、特に限定されないが、例えば、任意の面積(例えば、30mm2、100cm2など)の熱硬化型接着剤層あたりに存在する貫通孔の数を、目視又はデジタルマイクロスコープ等を用いて数え、必要に応じて熱硬化型接着剤層30mm2あたりの数に換算することにより、測定することができる。
【0106】
導電性熱硬化型接着テープaにおける、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積(以下、単に「端子部の平均面積」と称する場合がある)は、50,000〜500,000μm2が好ましく、より好ましくは100,000〜400,000μm2であり、さらに好ましくは100,000〜300,000μm2である。端子部の平均面積を50,000μm2以上とすることにより、被着体に対する端子部の接触面積が大きくなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって接触面積が低下した場合であっても、電気伝導性の確保には十分な接触面積を保持することができ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、端子部の平均面積を500,000μm2以下とすることにより、貫通孔が大きくなり過ぎることがないため、導電性熱硬化型接着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0107】
上記端子部の平均面積は、特に限定されないが、例えば、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの投影面積を測定し、これらを合計した面積(熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積)を、該熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する貫通孔の数で割ることによって求めることができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定することができる。
[端子部の平均面積の測定方法]
導電性熱硬化型接着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの熱硬化型接着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(熱硬化型接着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、前記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
上記で計測した端子部の総面積を、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数(目視又やデジタルマイクロスコープ等により数えることができる)で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を求めることができる。
なお、導電性熱硬化型接着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、熱硬化型接着剤層の面積が30mm2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、熱硬化型接着剤層の面積が30mm2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を熱硬化型接着剤層30mm2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
なお、より詳しくは、後述の(評価)の「(2)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
【0108】
なお、上記端子部の平均面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm2など)の熱硬化型接着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、上記の熱硬化型接着剤層(任意の面積の熱硬化型接着剤層)あたりに存在する貫通孔の数で割る方法を用いることもできる。
【0109】
導電性熱硬化型接着テープaを構成する金属箔としては、上記で例示したものを好ましく使用することができる。また、上記金属箔の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性熱硬化型接着テープaにおける「金属箔の厚み」とは、導電性熱硬化型接着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の金属箔の厚みのことをいう。
【0110】
導電性熱硬化型接着テープaを構成する熱硬化型接着剤層としては、上記で例示したものを好ましく使用することができる。また、熱硬化型接着剤層の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性熱硬化型接着テープaにおける「熱硬化型接着剤層の厚み」とは、導電性熱硬化型接着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の熱硬化型接着剤層の厚みのことをいう。
【0111】
導電性熱硬化型接着テープaにおける、上記金属箔の厚みに対する上記熱硬化型接着剤層の厚みの比[(熱硬化型接着剤層の厚み)/(金属箔の厚み)]としては、0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.2〜9、さらに好ましくは0.3〜8である。上記の金属箔の厚みに対する熱硬化型接着剤層の厚みの比を0.1以上とすることにより、基材(金属箔)の剛性に対して十分な接着力を得ることが出来る。一方、上記の金属箔の厚みに対する熱硬化型接着剤層の厚みの比を10以下とすることにより、上記の熱硬化型接着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を広くすることができる。
【0112】
導電性熱硬化型接着テープaの具体的な製造方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する積層体に、上記金属箔側から貫通孔を開け、上記熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成する工程(当該工程を「工程1」と称する場合がある)、次いで、前記突出部を折り返す工程(当該工程を「工程2」と称する場合がある)を少なくとも含む製造方法が挙げられる。上記工程2の後には、必要に応じて、プレス加工を施す工程(当該工程を「工程3」と称する場合がある)を含んでいてもよい。図8は、導電性熱硬化型接着テープaの製造方法の一例を示す模式図である。図中の21は金属箔を、22は熱硬化型接着剤層を表している。また、25は貫通孔を、27は突出部を表し、24は端子部を表している。
【0113】
上記の金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する積層体は、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を形成することによって製造してもよいし、市販品を使用してもよい。なお、前記の金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を形成する工程は、導電性熱硬化型接着テープaの製造とは別に実施してもよいし、導電性熱硬化型接着テープaの製造と一連の工程として(即ち、インラインで)実施してもよい。上記積層体を製造する際の金属箔の片面側への熱硬化型接着剤層の形成方法としては、公知慣用の熱硬化型接着剤層の形成方法を用いることができ、特に限定されず、例えば、上記の熱硬化型接着剤層の形成方法を用いることができる。なお、この際、金属箔の表面に上記熱硬化型接着剤層を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上に熱硬化型接着剤層を形成した後、これを金属箔に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属箔の表面に熱硬化型接着剤層を設けてもよい(転写法)。
【0114】
[工程1]
工程1では、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する積層体に、前記金属箔側から貫通孔を開け、上記熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成する。前記貫通孔を開ける方法としては、公知慣用の穿孔方法を用いることができ、特に限定されない。中でも、均一な貫通孔を形成する観点で、表面に貫通孔を形成するためのピンが設けられたオス型を用いた貫通孔形成方法が好ましい。
【0115】
上記ピンの形状としては、貫通孔を形成可能な突起形状であればよく、特に限定されないが、例えば、円錐、三角錐、四角錐等の角錐(多角錐)、円柱、三角柱、四角柱等の角柱(多角柱)やこれらに類似した形状などを挙げることができる。中でも、上記ピンの形状としては、均一な貫通孔を形成する観点で、角錐形状が好ましい。
【0116】
上記オス型における上記ピンの配置としては、特に限定されず、導電性熱硬化型接着テープaが有する貫通孔の配置に応じて、適宜選択することができる。例えば、導電性熱硬化型接着テープaの長手方向(MD)に対応するピンの間隔としては、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、導電性熱硬化型接着テープaの幅方向(TD)に対応するピンの間隔としては、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。上記ピンの位置パターンについても、特に限定されないが、例えば、図7に示す導電性熱硬化型接着テープaにおける貫通孔の位置パターンと同様の散点パターンで配置することができる。
【0117】
より具体的には、前記貫通孔を設ける際に用いるオス型としては、例えば、図9および図10に示すような菱形四角錐形状のピンを、図11に示すような位置パターン(長手方向(導電性熱硬化型接着テープの長手方向)の配置間隔がiの列を間隔hで配列し、かつ互いに隣り合う列間で半ピッチずらした散点パターン)で配置したものを使用することができる。このようなピンの底面形状(菱形)のサイズとしては、例えば、図9におけるcが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、図9におけるdが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmのものを使用することができる。また、図9における底面の角度eとしては、例えば、30〜120°が好ましく、より好ましくは40〜100°である。
また、図10におけるf(ピンの高さ)としては、例えば、0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは1〜2mmである。図10におけるgとしては、例えば、0.01〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.4mmである。
さらに、図11における間隔iとしては、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、図11における間隔hとしては、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0118】
特に限定されないが、上記オス型を用いて貫通孔を形成する場合には、オス型が有するピンの形状に対応した凹部分を有するメス型を併せて用いることが好ましい。このようなメス型を用いることにより、より折り返しやすい突出部を形成することができ、端子部の面積を大きくできる傾向にある。上記メス型が有する凹部分の形状やサイズは、特に限定されず、オス型が有するピンの形状やサイズによって適宜選択することができる。具体的には、例えば、図12に示す断面形状の円柱状の穴などを挙げることができる。図12に示す円柱状の穴のサイズとしては、特に限定されないが、例えば、図12におけるj(底辺の直径)が0.5〜3mm、図12におけるk(深さ)が0.5〜3mmのものを使用することができる。
【0119】
図13には、図9、10に示すピンを有するオス型31と、図12に示す円柱状の穴を有するメス型32を用いた打ち抜きの際の、ピンと円柱状の穴の配置の一例を示す。
【0120】
図14は、上記で例示した菱形四角錐形状のピンを有するオス型と円柱状の穴を有するメス型を用いた打ち抜き加工によって形成された、貫通孔および突出部の形状の一例を示す模式図である。当該例では、貫通孔の形状は菱形であり、当該貫通孔1個あたりに4つの突出部が形成されている。
【0121】
上述のピンが設けられたオス型を用いた打ち抜きによる、具体的な貫通孔形成方法としては、例えば、金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有する積層体を、ピンが所望の配置で表面に形成されたロール(「オス型ロール」と称する場合がある)と、ロール表面に凹部分(穴や溝など)が形成されたロール(「メス型ロール」と称する場合がある)の間を、上記積層体の金属箔側がオス型ロールと接触するようにして通過させる方法を挙げることができる。
【0122】
[工程2]
工程2では、前記突出部(工程1で形成した突出部)を折り返して端子部を形成する。突出部を折り返すことによって、端子部の面積を大きくすることができる。突出部を折り返す方法としては、特に限定されないが、効果的に端子部の面積を大きくできる観点で、スキージを用いる方法が好ましい。スキージを用いることにより、一度に多くの突出部を折り返すことができ、さらにこれらをきれいに折り返すことができる。このため、熱硬化型接着剤層側の表面に露出する金属箔の面積、即ち、端子部の面積を大きくすることができる。特に、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることが容易となるため、効率的に熱硬化型接着剤層30mm2あたりの端子部の総面積を大きくすることができる。
【0123】
図15には、導電性熱硬化型接着テープaの製造方法において、スキージを用いて突出部を折り返し端子部を形成する態様を示す模式図を示す。図15における「進行方向」とは、工程1にて得られた貫通孔および突出部を有する積層体の進行方向を示し、図16についても同様である。図15に示すように、工程1で得られる貫通孔25および突出部27を有する積層体の熱硬化型接着剤層22の表面と、スキージ41の先端とが対向するように配置し、スキージ41に対して熱硬化型接着剤層22を移動させることによって、スキージ41の先端によって突出部27が折り返される。この場合、突出部27の中でも、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部27aは、通常、貫通孔25を塞ぐ方向に折り曲げられるため、突出部27aの金属箔は熱硬化型接着剤層側の表面には露出せず、端子部を形成しない。これに対し、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部27bは、貫通孔25を塞ぐ方向とは反対側の方向に折り返されるため、突出部27bの金属箔が熱硬化型接着剤層側の表面に露出する。即ち、突出部27bによって端子部24が形成される。このように、スキージを用いて突出部を折り返すことによって、貫通孔1個あたりの端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0124】
図16には、従来の導電性接着テープ(導電性粘着テープ)において端子部を形成する態様を示す模式図を示す。従来の導電性接着テープにおける端子部は、例えば、図16に示すようなプレスロール28を用いて、貫通孔25および突出部27を有する積層体の突出部27を押し潰すことによって形成されていた。この場合、突出部27のうち貫通孔25に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部27aは、通常、接着剤層(粘着剤層)によって突出部27aの金属箔が覆われる形で押し潰されるため、突出部27aの金属箔は接着剤層(粘着剤層)の表面にはほとんど露出しない。一方、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部27bは、プレスロールによって金属箔が接着剤層(粘着剤層)側の表面に露出するように折り曲げられるが、同時に押し潰されるため、突出部27bの金属箔の大部分は接着剤層(粘着剤層)によって被覆され、結果的に接着剤層(粘着剤層)側の表面にはわずかな金属箔しか露出しない。このように、従来の製造方法では、貫通孔1個あたりの端子部の面積を大きくすることができなかったため、かかる方法により得られた導電性接着テープは、接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を上述の範囲に制御することができず、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。
【0125】
上記スキージの材質としては、公知慣用のスキージを用いることができ、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス等を挙げることができる。中でも、剛性の観点で、鉄製のスキージが好ましい。
【0126】
上記スキージの形状としては、特に限定されず、例えば、公知慣用の形状のスキージを用いることができる。中でも、突出部を折り返しやすい観点で、図15に示す、断面が台形形状であり、かつ、先端が尖ったスキージ(いわゆる剣スキージ)を用いることが好ましい。
【0127】
例えば、スキージとして上記の剣スキージを用いる場合、その先端角度としては、特に限定されないが、10〜80°が好ましく、より好ましくは20〜60°である。また、上記スキージの先端半径(先端R)としては、0.1〜1が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8である。なお、上記「先端角度」とは、剣スキージの断面形状における先端の角度のことであり、例えば、図15においては42で表される角度のことをいう。
【0128】
上記突出部を折り返す際には、特に限定されないが、熱硬化型接着剤層表面に対してスキージの先端を完全に接触させることが好ましい。熱硬化型接着剤層表面とスキージの先端を完全に接触させることによって、突出部を根元から折り曲げることができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0129】
上記突出部を折り返す際の、熱硬化型接着剤層表面とスキージ先端のなす角度は、特に限定されないが、例えば、30〜80°が好ましく、より好ましくは40〜80°である。なお、上記の熱硬化型接着剤層表面とスキージ先端のなす角度とは、例えば、図15において43で表される角度のことをいう。上記角度を30°以上とすることにより、突出部を根元から折り返すことができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。上記角度を30°未満とすると、スキージの先端が突出部の先端を撫でるように滑ってしまい、折り返しが不十分となって端子部の面積を大きくできない傾向がある。一方、上記角度を80°以下とすることにより、突出部を折り返す際に発生する導電性熱硬化型接着テープのやぶれが防止される。
【0130】
上記突出部を折り返す際の、スキージに対して熱硬化型接着剤層(積層体)を移動させる速度は、特に限定されないが、例えば、1〜20m/分が好ましく、より好ましくは2〜10m/分である。上記速度を1m/分以上とすることにより、生産性が向上する。一方、上記速度を20m/分以下とすることにより、スキージによる突出部の折り返しを安定して行うことができる。なお、上記突出部を折り返す際には、上述のようにスキージに対して熱硬化型接着剤層(積層体)を移動させてもよいし、熱硬化型接着剤層(積層体)に対してスキージを移動させてもよい。熱硬化型接着剤層(積層体)に対してスキージを移動させる速度についても、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0131】
(工程3)
工程3では、必要に応じて、上記工程2で折り返した突出部にプレス加工を施す。当該工程3を経ることにより、端子部と熱硬化型接着剤層表面を平滑とすることができるため、被着体に対して端子部を接触させやすくすることができ、なおかつ、被着体に対する導電性熱硬化型接着テープの接着性を高めることができる。
【0132】
上記プレス加工の方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、ロール、単板等を用いたプレス加工方法が挙げられる。中でも、生産性向上の観点で、ロールプレス装置を用いたプレス加工が好ましい。なお、プレス加工の際には、熱硬化型接着剤層をセパレータにより保護することが好ましい。
【0133】
上記の導電性熱硬化型接着テープaの製造方法においては、必要に応じて、工程2又は工程3の後に、導電性熱硬化型接着テープを適切な製品幅にスリットする工程、導電性熱硬化型接着テープをロール状に巻き取る工程などの各種工程が設けられていてもよい。
【0134】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、接着剤層として熱硬化型接着剤層を用い、熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を0.1〜5.0mm2に制御することによって、上記ヒートサイクル試験において測定される抵抗値倍率が2倍以下に制御でき、長期間の使用や過酷な環境下での使用に対して安定した電気伝導性を発揮することができる。これは、主に、熱硬化型接着剤層を用いることにより接着力が向上したことに加え、以下の(1)(2)の理由によるものと推定される。(1)端子部一つ一つの面積を大きくする、即ち、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において接触面積が多少低下した場合であっても、電気的導通を確保するのに十分な接触面積を保持することができる。(2)単位面積の熱硬化型接着剤層あたりに存在する端子部の数を多くすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において接触面積が低下した場合であっても、電気的導通を確保するのに十分な接触箇所を保持することができる。特に、本発明においては、端子部の形成にスキージを用いることによって、従来の製造方法では形成し得ない大きさ(面積)の端子部を形成できる(即ち、上記(1)の効果を得ることができる)ため、端子部の総面積が上述の範囲に制御された導電性熱硬化型接着テープを効率よく得ることができる。
【0135】
これに対して、従来の導電性接着テープにおいては、端子部一つ一つの面積を大きくすることができず(具体的には、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を50,000μm2以上とすることができず)、さらに、端子部の数を増量して端子部の総面積を大きくしようとした場合には非常に多くの貫通孔を設ける必要があり、これによって導電性接着テープの強度と接着性とが著しく低下してしまう等の理由によって、接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を0.1〜5.0mm2に制御することができなかった。従って、従来の導電性接着テープは、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、導通を妨げる程度まで被着体と端子部との接触面積が低下してしまうことにより、徐々に抵抗値が上昇し、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。このような被着体と端子部との接触面積の低下は、導電性接着テープの製造時や被着体への貼付の際に微細な気泡が接着剤層層中に発生(又は混入)し、雰囲気温度の変化等によって端子部付近に存在する気泡が膨張や収縮を繰り返し、これによって被着体と端子部との接触面に応力がかかることによって生じる現象であると推定される。
【0136】
また、粘着剤層(感圧性接着剤層)は熱硬化型接着剤層と比べて接着力が劣るので、従来の導電性接着テープとしての導電性粘着テープは、特に貼付部分のサイズが小さい場合に、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、導通を妨げる程度まで被着体と端子部との接触面積が低下してしまうことにより、徐々に抵抗値が上昇し、安定した電気伝導性を発揮することができないことがあった。
【0137】
本発明の導電性熱硬化型接着テープは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等に好適に使用される。特に、様々な環境下での使用や長期間の使用において、抵抗値が上昇することなく、安定な電気伝導性を発揮することが要求される用途、具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用のアース取り、電源装置や電子機器等(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置、太陽電池など)の内部配線等に使用することができる。
【実施例】
【0138】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0139】
表1には、アクリル系ポリマーのモノマー組成、熱硬化型接着剤組成物あるいは非熱硬化型接着剤組成物中の含有量(配合量)、エーテル化フェノール樹脂の種類、熱硬化型接着剤組成物あるいは非熱硬化型接着剤組成物中の含有量(配合量)、並びに、架橋剤の種類、熱硬化型接着剤組成物あるいは非熱硬化型接着剤組成物中の含有量(配合量)を示した。なお、アクリル系ポリマー、エーテル化フェノール樹脂、粘着付与樹脂、並びに、架橋剤の含有量は、不揮発分の含有量(重量部)で表した。
【0140】
(実施例1)
アクリル系ポリマーの製造例
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応器に、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド(商品名「VA−060」、和光純薬工業株式会社製)(重合開始剤)0.279g、イオン交換水100gを投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。これを60℃に保ち、ここにブチルアクリレート(アクリル酸n−ブチル)(BA)66重量部、アクリロニトリル(AN)29重量部、アクリル酸(AA)5重量部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.04重量部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(乳化剤)2重量部をイオン交換水41重量部に添加して乳化したもの(モノマー原料のエマルション)400gを3時間かけて徐々に滴下して、乳化重合反応を進行させた。モノマー原料のエマルションの滴下終了後、さらに3時間同温度に保持して熟成させた。このようにして重合したアクリル系ポリマーの水分散液(エマルション)を乾燥し、アクリル系ポリマー(重量平均分子量50万)を得た。
【0141】
熱硬化型接着剤組成物の調製例
上記アクリル系ポリマー[ブチルアクリレート(BA)66重量部、アクリロニトリル(AN)29重量部、アクリル酸(AA)5重量部をモノマー成分として構成された共重合体]:100重量部が溶解された酢酸エチル溶液に、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製):10重量部(不揮発分)が溶解されたブタノール溶液を混合し攪拌して、熱硬化型接着剤組成物(溶液)を調製した。
【0142】
熱硬化型接着テープ巻回体の製造例
シリコーンが塗布された剥離紙に、上記熱硬化型接着剤組成物(A)を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥して、熱硬化型接着剤層(厚み25μm)を形成した。そして、該熱硬化型接着剤層上に、錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせた。
続いてこれをロール状に巻き取ることにより、「錫コート銅箔/熱硬化型接着剤層/剥離紙」の構成を有する熱硬化型接着テープのロール状巻回体を得た。
【0143】
導電性熱硬化型接着テープの製造例
上記で得た熱硬化型接着テープのロール状巻回体から、熱硬化型接着テープを繰り出し、図9および図10に示す形状のピン(c=1.0427mm、d=1.8061mm、e=60°、f=1.2mm、g=0.1mm)が、図11に示すパターン(h=2.598mm、i=1.5mm)で表面に配置されたオス型ロールと、図12に示す直径1.6mmφ×深さ1.4mmの円柱状の穴が表面に形成されたメス型ロールとを用い、上記熱硬化型接着テープの金属箔側がオス型ロールと接触するように前記ロール(オス型ロールおよびメス型ロール)間を通過させて打ち抜き、貫通孔および熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部(バリ)を形成した。
次いで、剥離紙を剥離し、図15に示すように、スキージ(材質:鉄(FK4)、先端角度:45°、先端R(先端半径):0.5)を、熱硬化型接着剤層表面と前記スキージの先端がなす角度(図15における角度43)が20°となるように、熱硬化型接着剤層表面と前記スキージの先端が接触するように配置し(即ち、スキージ先端を熱硬化型接着剤層表面に押し当て)、熱硬化型接着剤層を1m/分の速度で移動させる(擦る)ことによって、前記突出部を折り返した。
さらに、熱硬化型接着剤層表面にセパレータを貼り合わせた後、プレスロール間を通過させることにより、セパレータのラミネートを行うと同時に、折り返した突出部と熱硬化型接着剤層とが平滑となるようにプレス加工を施して、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0144】
(実施例2)
上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから35μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0145】
(実施例3)
上記の実施例1の熱硬化型接着剤組成物の調製例における、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製)の量を10重量部から80重量部(不揮発分)に変更し、さらに、上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから30μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0146】
(実施例4)
上記の実施例1の熱硬化型接着剤組成物の調製例における、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製)の量を10重量部から60重量部(不揮発分)に変更し、さらに、上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから30μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0147】
(実施例5)
上記の実施例1の熱硬化型接着剤組成物の調製例における、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製)の量を10重量部から100重量部(不揮発分)に変更し、さらに、上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから30μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0148】
(実施例6)
上記の実施例1の熱硬化型接着剤組成物の調製例における、ブチルアクリレート(アクリル酸n−ブチル)(BA)の量を66重量部から91重量部に変更し、アクリロニトリル(AN)の量を29重量部から5重量部に変更し、アクリル酸(AA)の量を5重量部から4重量部に変更し、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製)の量を10重量部から100重量部(不揮発分)に変更し、さらに、上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから30μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0149】
(実施例7)
上記の実施例1の熱硬化型接着剤組成物の調製例における、ブチルアクリレート(アクリル酸n−ブチル)(BA)の量を66重量部から72重量部に変更し、アクリロニトリル(AN)の量を29重量部から27重量部に変更し、アクリル酸(AA)の量を5重量部から1重量部に変更し、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製)の量を10重量部から100重量部(不揮発分)に変更し、さらに、上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから30μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0150】
(実施例8)
上記の実施例1の熱硬化型接着剤組成物の調製例における、ブチルアクリレート(アクリル酸n−ブチル)(BA)の量を66重量部から80重量部に変更し、アクリロニトリル(AN)の量を29重量部から14重量部に変更し、アクリル酸(AA)の量を5重量部から6重量部に変更し、エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製)の量を10重量部から100重量部(不揮発分)に変更し、さらに、上記の実施例1の熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における熱硬化型接着剤層の厚みを25μmから30μmに変更し、実施例1と同様にして、熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性熱硬化型接着テープ)を得た。
【0151】
(比較例1)
アクリル系ポリマーの製造例
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応器に、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド(商品名「VA−060」、和光純薬工業株式会社製)(重合開始剤)0.279g、イオン交換水100gを投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。これを60℃に保ち、ここにブチルアクリレート(アクリル酸n−ブチル)(BA)70重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(アクリル酸2−エチルヘキシル)(2EHA)30重量部、アクリル酸(AA)3重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.05重量部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.04重量部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(乳化剤)2重量部をイオン交換水41重量部に添加して乳化したもの(モノマー原料のエマルション)400gを3時間かけて徐々に滴下して、乳化重合反応を進行させた。モノマー原料のエマルションの滴下終了後、さらに3時間同温度に保持して熟成させた。このようにして重合したアクリル系ポリマーの水分散液(エマルション)を乾燥し、アクリル系ポリマー(重量平均分子量50万)を得た。
【0152】
非熱硬化型接着剤組成物(粘着剤組成物)の調製例
上記アクリル系ポリマー[ブチルアクリレート(BA)70重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)30重量部、アクリル酸(AA)3重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.05重量部をモノマー成分として構成された共重合体]:100重量部が溶解された酢酸エチル溶液に、粘着付与樹脂(商品名「ペンセルD−125」、荒川化学工業株式会社製、ロジンエステル):30重量部(不揮発分)、架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート化合物):2重量部(不揮発分)を混合し攪拌して、非熱硬化型接着剤組成物(溶液)を調製した。
非熱硬化型接着剤組成物の調製例で得られた非熱硬化型接着剤組成物を、「非熱硬化型接着剤組成物(A)」とした。
【0153】
非熱硬化型接着テープ巻回体の製造例
シリコーンが塗布された剥離紙に、上記非熱硬化型接着剤組成物を乾燥後の厚みが45μmとなるように塗布し、これを130℃で3分間オーブンで乾燥させて、非熱硬化型接着剤層(粘着剤層)を形成した。次に、得られた非熱硬化型接着剤層表面に錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせ、続いてこれをロール状に巻き取ることによって、「錫コート銅箔/粘着剤層/剥離紙」の構成を有する非熱硬化型接着テープ巻回体を得た。
【0154】
導電性非熱硬化型接着テープ(導電性粘着テープ)の製造例
上記の熱硬化型接着テープのロール状巻回体を上記非熱硬化型接着テープ巻回体に変更し、上記の実施例1の導電性熱硬化型接着テープの製造例と同様にして、非熱硬化型接着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性非熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性非熱硬化型接着テープ(導電性粘着テープ))を得た。
【0155】
(比較例2)
上記の比較例1の非熱硬化型接着剤組成物の調製例における、ブチルアクリレート(アクリル酸n−ブチル)(BA)の量を70重量部から100重量部に変更し、2−エチルヘキシルアクリレート(アクリル酸2−エチルヘキシル)(2EHA)の量を30重量部から0重量部に変更し、アクリル酸(AA)の量を3重量部から5重量部に変更し、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の量を0.05重量部から0重量部に変更し、粘着付与樹脂(商品名「ペンセルD−125」、荒川化学工業株式会社製、ロジンエステル)(不揮発分)の量を35重量部から0重量部に変更し、さらに、上記の比較例1の非熱硬化型接着テープ巻回体の製造例における非熱硬化型接着剤層の厚みを45μmから30μmに変更し、比較例1と同様にして、非熱硬化型接着剤層の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性非熱硬化型接着テープ(貫通孔を有する導電性非熱硬化型接着テープ(導電性粘着テープ))を得た。
【0156】
[評価]
実施例及び比較例で得られた導電性接着テープ(導電性熱硬化型接着テープあるいは導電性非熱硬化型接着テープ)について以下の評価を行った。結果は表1に示した。
【0157】
(1)抵抗値(ヒートサイクル試験)
(評価用基板の作製)(図17参照)
導電性接着テープを、幅2mm×長さ60mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して導電性接着テープ片を得た。
銀メッキが施された導体パターン(Cu18μm/Ni3〜7μm/Au0.03μm/Ag5μm)51a〜hが、図17に示す配置で形成されたガラスエポキシ基板(厚み:1.6mm)を用い、前記導体パターンへの導電性接着テープの貼付部分53a〜dのサイズが2mm×3mm(面積:6mm2)となるように、130℃でラミネートし、160℃、2MPaで120秒間加熱圧着して貼付した。
なお、実施例3は、160℃、2MPaで120秒間加熱圧着を行わず、130℃でラミネートのみを行い、貼付した。
また、上記の貼付部分(サイズが2mm×3mm(面積:6mm2)の貼付部分)には、端子部が、1存在する。
次いで、前記導体パターン51a〜hに定電流電源(54a、54b)および電位計(55a〜d)を、リード線を用いてはんだ付けによって接続した。
なお、図17に示す評価用基板における電気回路は、図1の評価用基板における電気回路を2個配列したものに相当する。
(抵抗評価用サンプルの作製)
図17に示す評価用基板における領域56に、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化型EVAフィルム(厚み:0.6mm)を重ね、さらに上からガラス板(厚み:3.2mm)を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体を得た。当該積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引き行い、その後真空引きしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後プレス機から前記積層体を取り出して、150℃オーブンで30分間加熱して、EVA及び実施例においては熱硬化型接着剤層を熱硬化させることにより、抵抗評価用サンプルを得た。
(チャンバー内の雰囲気温度設定)
チャンバーとして、商品名「PL−3K」(エスペック(株)製)を用い、チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のように設定した。なお、下記条件にて冷却および加熱を繰り返す間、チャンバー内に湿度(相対湿度)については特に制御を行わず、開始時点におけるチャンバー内の相対湿度は50%RHであった。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを200回繰り返す設定とした。
図5には、上記設定温度(ヒートサイクル条件)にてチャンバー内の温度を制御した場合の、チャンバー(恒温槽)の槽内温度(雰囲気温度)および導電性粘着テープの表面温度プロファイルの一例を示した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルを、定電流電源(54a、54b)によって2Aの定電流を流した状態(即ち、図17における貼付部分53a〜dに2Aの定電流を流した状態)で、槽内の雰囲気温度を25℃に調整した上記チャンバー内に入れ、上記ヒートサイクル条件にて冷却および加熱を繰り返した。この間、電位計(55a〜d)によって電圧を連続的に測定し(サンプリング周期:1回/1分)、貼付部分53a〜dの抵抗値(接触抵抗値)を連続的に取得した。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、200サイクル目の抵抗値の最大値および400サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、抵抗値倍率(200サイクル抵抗値、400サイクル抵抗値)を算出した。表1には、貼付部分53a〜dのそれぞれにおいて測定された、抵抗値および抵抗値倍率の平均値(N=4)を示した。
【0158】
(2)端子部の面積(端子部の総面積、端子部の平均面積)
実施例および比較例で得られた導電性接着テープを幅5mm×長さ6mmのサイズ(面積:30mm2)に切り出し、セパレータを剥離して、これを測定サンプルとした。
上記測定サンプルの接着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズ:VH−Z20)にて端子部の画像(投影面の画像)を観察した。次いで、計測モードにて、前記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって、端子部の面積を計測した。同様にして、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を算出した。
また、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数を数え、前記で算出した接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積を、前記貫通孔の数で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を算出した。
【0159】
(3)接着力
(シートサンプルの作製)
実施例で得られた、「錫コート銅箔/熱硬化型接着剤層/剥離紙」の構成を有する熱硬化型接着テープ巻回体、及び、比較例で得られた、「錫コート銅箔/粘着剤層/剥離紙」の構成を有する非熱硬化型接着テープ巻回体から、幅20mm×長さ100mmのシート状サンプルを切り出し、セパレータを剥離して、これをシートサンプルとした。
(硬化前接着力(初期接着力))
幅50mm×長さ100mmのアルミニウム板に、シートサンプルを、2kgローラー、1往復、ローラーの速さ5mm/秒の条件で、貼り合わせ、貼り合わせ試験体を得た。次に、この貼り合わせ試験体を23℃の温度雰囲気下で30分間放置した。放置後、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機(ミネベア社製)を用いて、貼り合わせ試験体からシートサンプルを、剥離角度90°、引張速度300mm/分の条件でアルミニウム板から剥離し、接着力(90°ピール接着力)(N/20mm)を測定した。
(硬化後接着力)
幅100mm×長さ100mmのアルミニウム板(100mm角のアルミニウム板)に、シートサンプルを、ハンドローラーで圧着し、150℃、0.1MPaで5分間加熱圧着(プレス)して、貼り合わせた。さらに、150℃で30分間加熱処理(キュアー、加熱硬化処理)して、試験体を得た。次に、この試験体を23℃の温度雰囲気下で30分間放置した。放置後、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機(ミネベア社製)を用いて、試験体からシートサンプルを、剥離角度180°、引張速度50mm/分の条件でアルミニウム板から剥離し、接着力(180°ピール接着力)(N/20mm)を測定した。
【0160】
【表1】

【0161】
なお、表1において、「CKS−3898」は「エーテル化フェノール樹脂(商品名「CKS−3898」(昭和電工株式会社製))であり、「ペンセルD−125」は「粘着付与樹脂(商品名「ペンセルD−125」、荒川化学工業株式会社製)」であり、「C/L」は「架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業株式会社製)」である。
また、比較例1及び比較例2の硬化後接着力は、測定することができなかった。比較例1及び比較例2は、導電性非熱硬化型接着テープであり、熱により硬化しないためである。
【0162】
表1の結果から明らかのように、本発明の導電性熱硬化型接着テープ(実施例)は、小さな貼付面積でも、抵抗値倍率が低く、常時安定した電気導電性を発揮した。
一方、比較例1の導電性非熱硬化型接着テープ(導電性粘着テープ)は、貼付面積が小さくなると、常時安定した電気導電性を発揮することはできなかった。
なお、実施例3の導電性熱硬化型接着テープは、エーテル化フェノール樹脂の量が多く、硬化前の熱硬化型接着剤層がタックを有するので、「(1)抵抗値(ヒートサイクル試験)(評価用基板の作製)」において、160℃、2MPaで120秒間加熱圧着をすることなく、130℃でラミネートすることのみで、貼付できた。
【符号の説明】
【0163】
11a〜d 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
12 導電性熱硬化型接着テープ
13 貼付部分
14 定電流電源
15 電位計
16 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)
17 貼付部分の抵抗(接触抵抗)
18a ガラスエポキシ基板
18b ガラス板
19 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の硬化物
21 金属箔
22 熱硬化型接着剤層
22′ 粘着剤層
23 導電性熱硬化型接着テープ
24 端子部
25 貫通孔
26 導通部
27 突出部(バリ)
27a 貫通孔25に対して熱硬化型接着剤層の進行方向側に位置する突出部
27b 貫通孔25に対して熱硬化型接着剤層の進行方向とは反対側に位置する突出部
28 プレスロール
31 オス型
32 メス型
41 スキージ(剣スキージ)
42 先端角度
43 熱硬化型接着剤層表面とスキージ先端がなす角度
51a〜h 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
52a、52b 導電性熱硬化型接着テープ(導電性熱硬化型接着テープ片)
53a〜d 貼付部分(導電性熱硬化型接着テープと導体パターンの貼り合わせ部分)
54a、54b 定電流電源
55a〜d 電位計
56 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、
前記熱硬化型接着剤層の硬化前接着力が2N/20mm以上であり、
前記熱硬化型接着剤層の硬化後接着力が10N/20mm以上であることを特徴とする導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項2】
金属箔の片面側に前記熱硬化型接着剤層を有し、前記熱硬化型接着剤層側の表面に露出した端子部を有する熱硬化型接着テープであって、前記熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.1〜5mm2である請求項1に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項3】
前記端子部が、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である請求項2に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項4】
前記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が50,000〜500,000μm2である請求項3に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項5】
前記熱硬化型接着剤層が、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつエーテル化フェノール樹脂(Y)を含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項6】
前記アクリル系ポリマー(X)が、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである請求項5に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマー(X)が、さらに、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである請求項5又は6に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項8】
前記熱硬化型接着剤層が、導電性フィラーを含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層である請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項9】
金属箔の片面側に熱硬化型接着剤層を有し、前記熱硬化型接着剤層側の表面に露出した端子部を有する熱硬化型接着テープであって、前記熱硬化型接着剤層30mm2あたりに存在する端子部の総面積が0.1〜5mm2であることを特徴とする導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項10】
前記端子部が、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記熱硬化型接着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である請求項9に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項11】
前記貫通孔1個あたりの端子部の平均面積が50,000〜500,000μm2である請求項10に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項12】
前記熱硬化型接着剤層が、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有し、かつエーテル化フェノール樹脂(Y)を含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層である請求項9〜11のいずれか1項に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項13】
前記アクリル系ポリマー(X)が、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである請求項12に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項14】
前記アクリル系ポリマー(X)が、さらに、シアノ基含有モノマー(b)及びカルボキシル基含有モノマー(c)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーである請求項12又は13に記載の導電性熱硬化型接着テープ。
【請求項15】
前記熱硬化型接着剤層が、導電性フィラーを含有する熱硬化型接着剤組成物から形成された熱硬化型接着剤層である請求項9〜14のいずれか1項に記載の導電性熱硬化型接着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−28787(P2013−28787A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110074(P2012−110074)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】