説明

導電性積層体、タッチパネル及び表示装置

【課題】同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンであっても、モアレの発生を抑制可能な導電性積層体、タッチパネル及び表示装置を提供する。
【解決手段】透明基体12の一方の主面の上に設けられた、第1導電部14aを被覆する第1保護層26aと、透明基体12の他方の主面の上に設けられた、第2導電部14bを被覆する第2保護層26bとを有する。第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1、及び/又は第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2を0.86〜1.15にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性積層体及びこれを備えたタッチパネル並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、タッチパネルを組み込んだ電子機器が広く普及しつつある。タッチパネルは、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の小サイズ画面を備える機器に多く搭載されている。今後、PC(Personal Computer)用ディスプレイ等の大サイズ画面を備える機器にも組み込まれることが十分想定される。
【0003】
従来のタッチパネル電極には、透光性の観点から、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)が主に用いられる。ITOの単位面積当たりの電気抵抗は、金属等と比べて相対的に高いことが知られている。すなわち、ITOの場合、画面のサイズ(タッチパネルの総面積)が大きくなるにつれて、電極全体での表面抵抗が高くなる。その結果、電極間での電流の伝達速度が遅くなり、タッチパネルへの接触後から接触位置を検出するまでの時間(すなわち応答速度)が遅くなるという課題が顕在化する。
【0004】
そこで、電気抵抗が低い金属からなる細線(金属細線)で格子を多数形成し、電極を構成することで、表面抵抗を低下させる技術が種々提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第1995/27334号パンフレット
【特許文献2】国際公開第1997/18508号パンフレット
【特許文献3】特開2003−099185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タッチパネルの電極として非透光性材質である金属を用いる場合、金属細線の有無に応じて電極を透過する光量の差が大きくなる。これにより、電極が形成するパターンの形状に応じた濃淡が顕著になり、ユーザに視認され易くなる。特に、同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンの場合、モアレ(干渉縞)が発生し易くなるという不都合があった。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンであっても、モアレの発生を抑制可能な導電性積層体、タッチパネル及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る導電性積層体は、基体と、前記基体の一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第1導電部と、前記基体の他方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第2導電部と、前記一方の主面の上に設けられた、前記第1導電部を被覆する第1保護層と、前記他方の主面の上に設けられた、前記第2導電部を被覆する第2保護層と、を有し、前記第1導電部及び第2導電部を組み合わせることで、平面視で、同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンが形成され、前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び/又は前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は0.86〜1.15であることを特徴とする。
【0009】
このように、第1保護層に対する基体の相対屈折率、及び/又は第2保護層に対する基体の相対屈折率を0.86〜1.15にしたので、前記基体の法線方向に対して僅かに斜入する光のうち、前記基体と前記第1保護層との界面、及び/又は前記基体と前記第2保護層との界面において直進する光量が相対的に増加する。すなわち、散乱されることなく基体内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線の位置によらず一律に増加する。これにより、金属細線に起因する光学濃度のコントラストを低減可能であり、観察者(ユーザ)に視認され難くなる。特に、同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンでは、モアレの発生を抑制できるので一層効果的である。
【0010】
また、前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び/又は前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は0.91〜1.08であることが好ましい。
【0011】
さらに、前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は1に略等しいことが好ましい。
【0012】
さらに、前記第1保護層及び/又は前記第2保護層は、前記基体と同一の材料からなることが好ましい。
【0013】
さらに、前記第1導電部は、それぞれ第1方向に延在し、且つ、前記第1方向と直交する第2方向に配列された2以上の第1導電パターンを有し、前記第2導電部は、それぞれ前記第2方向に延在し、且つ、前記第1方向に配列された2以上の第2導電パターンを有し、前記第1導電パターンは、2以上の第1大格子が前記第1方向に直列に接続されて構成され、前記第2導電パターンは、2以上の第2大格子が前記第2方向に直列に接続されて構成され、各前記第1大格子及び各前記第2大格子は、それぞれ2以上の小格子が組み合わされて構成されていることが好ましい。
【0014】
さらに、各前記小格子は、それぞれ菱形状を有し、各前記小格子における少なくとも1つの辺と前記第1方向とのなす角が30°〜60°であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るタッチパネルは、上記したいずれかの導電性積層体と、前記導電性積層体の一面上の接触位置又は近接位置を検出する検出制御部とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る表示装置は、上記したタッチパネルを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る導電性積層体、タッチパネル及び表示装置によれば、第1保護層に対する基体の相対屈折率、及び/又は第2保護層に対する基体の相対屈折率を0.86〜1.15にしたので、前記基体の法線方向に対して僅かに斜入する光のうち、前記基体と前記第1保護層との界面、及び/又は前記基体と前記第2保護層との界面において直進する光量が相対的に増加する。すなわち、散乱されることなく基体内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線の位置によらず一律に増加する。これにより、金属細線に起因する光学濃度のコントラストを低減可能であり、観察者(ユーザ)に視認され難くなる。特に、同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンでは、モアレの発生を抑制できるので一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る導電性積層体の一例を表す概略平面図である。
【図2】図1の導電性積層体の一部省略断面図である。
【図3】表示ユニットの画素配列を表す概略説明図である。
【図4】図3の表示ユニット上に図1の導電性積層体を配置した例を示す概略説明図である。
【図5】図1の導電性積層体を組み込んだ表示装置の概略断面図である。
【図6】図6Aは、図1の第1積層部に形成される第1導電部のパターン例を示す平面図である。図6Bは、図1の第2積層部に形成される第2導電部のパターン例を示す平面図である。
【図7】図6Aの第1センサ部の部分拡大平面図である。
【図8】図6Bの第2センサ部の部分拡大平面図である。
【図9】第1導電部と第2導電部とを組み合わせた状態での導電性積層体の概略平面図である。
【図10】図10Aは、金属細線に向けて照射された平行光の経路を表す概略説明図である。図10Bは、金属細線に向けて照射された斜入光の経路を表す概略説明図である。図10Cは、図10Bにおける透過光の強度分布を表すグラフである。
【図11】図11Aは、本発明に係る構成において、金属細線に向けて照射された斜入光の経路を表す概略説明図である。図11Bは、図11Aにおける透過光の強度分布を表すグラフである。
【図12】本実施の形態に係る導電性積層体の製造方法を示すフローチャートである。
【図13】図13Aは、作製された感光材料を一部省略して示す断面図である。図13Bは、感光材料に対する両面同時露光を示す概略説明図である。
【図14】第1露光処理及び第2露光処理の実行状態を示す概略説明図である。
【図15】別の実施形態に係る導電性積層体の一部省略断面図である。
【図16】図16Aは、別の実施形態に係る第1センサ部の部分拡大平面図である。図16Bは、別の実施形態に係る第2センサ部の部分拡大平面図である。
【図17】本実施例に係る官能評価の結果を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る導電性積層体について、それを実施するタッチパネル及び表示装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0020】
本実施の形態に係る導電性積層体10は、図1及び図2に示すように、透明基体12(基体)を有する。透光性が高い透明基体12は、樹脂、ガラス、シリコン等の材料からなる。樹脂としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、PP(polypropylene)、PS(polystyrene)等が挙げられる。
【0021】
透明基体12の一方の主面(図2の矢印s1方向側)には、第1導電部14aが形成されている。第1導電部14aは、金属製の細線{以下、金属細線16と記す。また、金属細線16q(16r)と記す場合がある。}と開口部18によるメッシュパターン20とを有する。金属細線16は、例えば、金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)からなる。
【0022】
第1導電部14aは、詳細には、矢印q方向に延び、且つ、矢印r方向にピッチPsで並ぶ複数の金属細線16qと、矢印r方向に延び、且つ、矢印q方向にピッチPsで並ぶ複数の金属細線16rとがそれぞれ交差して形成されたメッシュパターン20を有する。この場合、矢印q方向は基準方向(水平方向)に対して+30°以上+60°以下の角度で傾斜し、矢印r方向は基準方向に対して−30°以上−60°以下の角度で傾斜している。したがって、メッシュパターン20の1つのメッシュ形状22、すなわち、1つの開口部18と、該1つの開口部18を囲む4つの金属細線16の組み合わせ形状は、頂角部が60°以上120°以下の菱形状となる。
【0023】
ここで、ピッチPsは、100μm以上400μm以下から選択可能である。また、金属細線16の線幅は、30μm以下から選択可能である。導電性積層体10をタッチパネルに適用する場合には、金属細線16の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。
【0024】
第1導電部14aの略全面には、第1導電部14a(金属細線16)を被覆するように、第1接着層24aを介して第1保護層26aが接着されている。第1接着層24aの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0025】
第1保護層26aは、透明基体12と同様に、樹脂、ガラス、シリコンを含む透光性が高い材料からなる。第1保護層26aの屈折率n1は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1は1に近い値である。
【0026】
ここで、本明細書における屈折率は、波長589.3nm(ナトリウムのD線)の光における屈折率を意味し、例えば樹脂では、国際標準規格であるISO 14782:1999(JIS K 7105に対応)で定義される。また、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1は、nr1=(n1/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr1は、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
【0027】
以下、透明基体12の一方の主面(図2の矢印s1方向側)に形成された各部(第1導電部14a、第1接着層24a及び第1保護層26aを含む。)を総称して第1積層部28aという場合がある。
【0028】
ところで、透明基体12の他方の主面(図2の矢印s2方向側)には、第2導電部14bが形成されている。第2導電部14bは、第1導電部14aと同様に、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20を有する。
【0029】
第2導電部14bの略全面には、第2導電部14b(金属細線16)を被覆するように、第2接着層24bを介して第2保護層26bが接着されている。第2接着層24bの材質は、第1接着層24aと同一であってもよいし異なってもよい。第2保護層26bの材質は、第1保護層26aと同一であってもよいし異なってもよい。
【0030】
第2保護層26bの屈折率n2は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2は1に近い値である。ここで、屈折率及び相対屈折率の定義は上記の通りとする。また、第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2は、nr2=(n2/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr2は、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
【0031】
以下、透明基体12の他方の主面(図2の矢印s2方向側)に形成された各部(第2導電部14b、第2接着層24b及び第2保護層26bを含む。)を総称して第2積層部28bという場合がある。
【0032】
この導電性積層体10は、例えば、表示ユニット30のタッチパネルに適用される。この表示ユニット30は、液晶パネル、プラズマパネル、有機EL(Electro-Luminescence)パネル、無機ELパネル等で構成されてもよい。
【0033】
図3に一部を省略して示すように、表示ユニット30は、複数の画素32がマトリクス状に配列されて構成されている。1つの画素32は3つの副画素(赤色副画素32r、緑色副画素32g及び青色副画素32b)が水平方向に配列されて構成されている。1つの副画素は垂直方向に縦長とされた長方形状とされている。画素32の水平方向の配列ピッチ(水平画素ピッチPh)と画素32の垂直方向の配列ピッチ(垂直画素ピッチPv)は略同じとされている。つまり、1つの画素32と該1つの画素32を囲むブラックマトリクス34(遮光材)にて構成される形状(網掛けにて示す領域36を参照)は正方形となっている。また、1つの画素32のアスペクト比は1ではなく、水平方向(横)の長さ>垂直方向(縦)の長さとなっている。
【0034】
図1に示したように、導電性積層体10において、メッシュパターン20の複数の交点をそれぞれ水平方向に結ぶ仮想線23と、金属細線16とのなす角θを30°以上60°以下としている。そして、上記した画素配列を有する表示ユニット30の表示パネル上に導電性積層体10を配置する場合を考える。
【0035】
図4に示すように、金属細線16は、表示ユニット30における画素32の水平の配列方向(矢印X方向の配列)に対して30°〜60°の傾きを持つことになる。また、導電性積層体10におけるピッチPsと、表示ユニット30における1つの画素32の対角線の長さLa1(あるいは矢印Y方向に隣接する2つの画素32の対角線の長さLa2)とが略同じあるいは近接した値となる。さらに、導電性積層体10における金属細線16の配列方向と、表示ユニット30における1つの画素32の対角線(あるいは矢印Y方向に隣接する2つの画素32の対角線)の方向も略同じあるいは近接することとなる。その結果、画素32の配列周期と金属細線16の配列周期とのずれが小さくなり、モアレの発生が抑制されることになる。
【0036】
次に、本実施の形態に係る導電性積層体10を組み込んだ表示装置40について、図5〜図9を参照しながら説明する。ここでは、投影型静電容量方式のタッチパネルを例に挙げて説明する。
【0037】
図5に示すように、表示装置40は、カラー画像及び/又はモノクロ画像を表示可能な表示ユニット30(図3及び図4参照)と、入力面42(矢印Z1方向側)からの接触位置を検出するタッチパネル44と、表示ユニット30及びタッチパネル44を収容する筐体46とを有する。筐体46の一面(矢印Z1方向側)に設けられた大きな開口部を介して、ユーザは、タッチパネル44にアクセス可能である。
【0038】
タッチパネル44は、上記した導電性積層体10(図1及び図2参照)の他、導電性積層体10の一面(矢印Z1方向側)に積層されたカバー部材48と、ケーブル50を介して導電性積層体10に電気的に接続されたフレキシブル基板52と、フレキシブル基板52上に配置された検出制御部54とを備える。
【0039】
表示ユニット30の一面(矢印Z1方向側)には、接着層56を介して、導電性積層体10が接着されている。モアレ抑制の観点から、表示ユニット30及び導電性積層体10は、図4に示す配置関係下にある。
【0040】
カバー部材48は、導電性積層体10の一面を被覆することで、入力面42としての機能を発揮する。また、接触体58(例えば、指やスタイラスペン)による直接的な接触を防止することで、擦り傷の発生や、塵埃の付着等を抑止可能であり、導電性積層体10の導電性を安定させることができる。
【0041】
カバー部材48の材質は、例えば、ガラス、樹脂フイルムであってもよい。カバー部材48の一面(矢印Z2方向側)を酸化珪素等でコートした状態で、導電性積層体10の一面(矢印Z1方向側)に密着させてもよい。また、擦れ等による損傷を防止するため、導電性積層体10及びカバー部材48を貼り合わせて構成してもよい。
【0042】
フレキシブル基板52は、可撓性を備える電子基板である。本図例では、筐体46の側面内壁に固定されているが、配設位置は種々変更してもよい。検出制御部54は、導体である接触体58を入力面42に接触する(又は近づける)際に、その接触位置(又は近接位置)を検出する電子回路を構成する。
【0043】
図6Aに示すように、導電性積層体10の第1積層部28aには、矢印Z2方向側への平面視で、表示ユニット30(図3〜図5参照)の表示領域に配された第1センサ部60aと、前記表示領域の外周領域に配された第1端子配線部62a(いわゆる額縁)とが設けられている。
【0044】
第1積層部28aの外形は平面視で矩形状を有するとともに、第1センサ部60aの外形も長方形状を有する。第1端子配線部62aのうち、第1積層部28aの矢印Y方向に平行する一辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第1端子64aが矢印Y方向に配列形成されている。第1センサ部60aの一辺(本図例では矢印Y方向に平行する辺)に沿って、複数の第1結線部66aが略一列に配列されている。各第1結線部66aから導出された第1端子配線パターン68aは、第1積層部28aの第1端子64aに向かって引き回されており、それぞれ対応する第1端子64aに電気的に接続されている。
【0045】
第1センサ部60aに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第1導電パターン70a(メッシュパターン)を有する。第1導電パターン70aは、矢印X方向(第1方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向(第2方向)に配列されている。また、各第1導電パターン70aは、2以上の第1大格子72aが矢印X方向に直列に接続されている。隣接する第1大格子72a間には、これら第1大格子72aを電気的に接続する第1接続部74aが形成されている。
【0046】
各第1導電パターン70aの一方の端部側において、第1大格子72aの開放端には、第1接続部74aが形成されていない。各第1導電パターン70aの他方の端部側において、第1大格子72aの端部には、第1結線部66aがそれぞれ設けられている。そして、各第1導電パターン70aは、各第1結線部66aを介して、第1端子配線パターン68aに電気的に接続されている。
【0047】
図7に示すように、各第1大格子72aは、それぞれ2以上の第1小格子76aを組み合わせて構成されている。第1小格子76aの形状は、ここでは最も小さい菱形であり、上述した1つのメッシュ形状22(図1参照)と同一の又は相似する形状である。隣接する第1大格子72a間を接続する第1接続部74aは、第1小格子76a以上の面積であって、且つ、第1大格子72aよりも小さい面積を有する第1中格子78aから構成されている。
【0048】
第1大格子72aの矢印q方向に沿った辺のうち、第1中格子78aと隣接する部分には、第1小格子76aの1つの辺が欠除した第1欠除部80aが形成されている。第1中格子78aは、本図例では、3個分の第1小格子76aが矢印r方向に配列された大きさを有する。
【0049】
また、隣接する第1導電パターン70a間には、電気的に絶縁された第1絶縁部82aがそれぞれ配されている。
【0050】
各第1導電パターン70aの周辺には、複数の金属細線16(図1参照)からなる複数の第1補助パターン84aがそれぞれ配置されている。第1補助パターン84aは、第1大格子72aの辺のうち、矢印q方向に平行する辺に沿って配列された複数の第1補助線86aと、第1大格子72aの辺のうち、矢印r方向に平行する辺に沿って配列された複数の第1補助線88aと、それぞれ2つの第1補助線86a、88aがL字状に組み合わされた2つの第1L字状パターン90aが互いに対向して配置されたパターンとから構成される。
【0051】
一方、図6Bに示すように、導電性積層体10の第2積層部28bには、矢印Z1方向側への平面視で、表示ユニット30(図3〜図5参照)の表示領域に配された第2センサ部60bと、前記表示領域の外周領域に配された第2端子配線部62b(いわゆる額縁)とが設けられている。
【0052】
第2積層部28bの外形は平面視で矩形状を有するとともに、第2センサ部60bの外形も長方形状を有する。第2端子配線部62bのうち、第2積層部28bの矢印Y方向に平行する一辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第2端子64bが矢印Y方向に配列形成されている。第2センサ部60bの一辺(本図例では矢印X方向に平行する辺)に沿って、複数の第2結線部66b(例えば、奇数番目の第2結線部66b)が略一列に配列されている。第2センサ部60bの他辺(前記一辺に対向する辺)に沿って、複数の第2結線部66b(例えば、偶数番目の第2結線部66b)が略一列に配列されている。各第2結線部66bから導出された第2端子配線パターン68bは、第2積層部28bの第2端子64bに向かって引き回されており、それぞれ対応する第2端子64bに電気的に接続されている。
【0053】
第2センサ部60bに対応した部位には、複数の金属細線16(図1参照)で形成された2以上の第2導電パターン70b(メッシュパターン)を有する。第2導電パターン70bは、矢印Y方向(第2方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向(第1方向)に配列されている。各第2導電パターン70bは、2以上の第2大格子72bが矢印Y方向に直列に接続されている。隣接する第2大格子72b間には、これら第2大格子72bを電気的に接続する第2接続部74bが形成されている。
【0054】
各第2導電パターン70bの一方の端部側において、第2大格子72bの開放端には、第2接続部74bが形成されていない。各第2導電パターン70bの他方の端部側において、第2大格子72bの端部には、第2結線部66bがそれぞれ設けられている。そして、各第2導電パターン70bは、各第2結線部66bを介して、第2端子配線パターン68bに電気的に接続されている。
【0055】
図8に示すように、各第2大格子72bは、それぞれ2以上の第2小格子76bを組み合わせて構成されている。第2小格子76bの形状は、ここでは最も小さい菱形であり、上述した1つのメッシュ形状22(図1参照)と同一の又は相似する形状である。隣接する第2大格子72b間を接続する第2接続部74bは、第2小格子76b以上の面積であって、且つ、第2大格子72bよりも小さい面積を有する第2中格子78bから構成されている。
【0056】
第2大格子72bの矢印q方向に沿った辺のうち、第2中格子78bと隣接する部分には、第2小格子76bの1つの辺が欠除した第2欠除部80bが形成されている。第2中格子78bは、本図例では、3個分の第2小格子76bが矢印q方向に配列された大きさを有する。
【0057】
また、隣接する第2導電パターン70b間には、電気的に絶縁された第2絶縁部82bがそれぞれ配されている。
【0058】
各第2導電パターン70bの周辺には、複数の金属細線16(図1参照)からなる複数の第2補助パターン84bがそれぞれ配置されている。第2補助パターン84bは、第2大格子72bの辺のうち、矢印q方向に平行する辺に沿って配列された複数の第2補助線86bと、第2大格子72bの辺のうち、矢印r方向に平行する辺に沿って配列された複数の第2補助線88bと、それぞれ2つの第2補助線86b、88bがL字状に組み合わされた2つの第2L字状パターン90bが互いに対向して配置されたパターンとから構成される。
【0059】
図9に示すように、導電性積層体10の平面視において、第1積層部28aに形成された第1大格子72aの隙間を埋めるように、第2積層部28bの第2大格子72bが配列された形態となる。このとき、第1補助パターン84aと第2補助パターン84bとが対向することで、第1大格子72aと第2大格子72bとの隙間に、組合せパターン92が形成される。組合せパターン92は、少なくとも1つの第1小格子76a(メッシュ形状)と、少なくとも1つの第2小格子76b(メッシュ形状)が組み合わされた形態となる。その結果、導電性積層体10の平面視において、多数の小格子94(メッシュ形状)が敷き詰められた形態となる。
【0060】
第1大格子72a(及び第2大格子72b)の一辺の長さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。一辺の平均長さが、上記下限値未満であると、導電性積層体10をタッチパネルに適用した場合、検出時の第1大格子72a(及び第2大格子72b)の静電容量が減るため、検出不良になる可能性が高くなる。他方、上記上限値を超えると、接触位置の検出精度が低下するおそれがある。同様の観点から、小格子94(第1小格子76a、第2小格子76b)の一辺の長さは、上述したように、100〜400μmであることが好ましく、150〜300μmであることがさらに好ましく、最も好ましくは210〜250μm以下である。小格子94が上記範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、表示ユニット30の前面に取り付けた際に、違和感なく表示を視認することができる。
【0061】
続いて、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1を1に近い値にすることで得られる作用効果について、図10A〜図11Bを参照しながら詳細に説明する。理解の容易のため、導電性積層体10の一部の構成を省略し、透明基体12、第1導電部14a及び第1保護層26aのみを表記している。
【0062】
図10Aに示すように、表示ユニット30(図5参照)側から照射された平行光100は、透明基体12の内部に入射し、矢印Z1方向に沿って直進する。そして、平行光100は、透明基体12と金属細線16との第1界面102で、反射成分104として、矢印Z2方向に略全て反射される。すなわち、非透光性材料である金属細線16の有無に応じて、導電性積層体10を透過する光量の差が大きくなる。その結果、メッシュパターン20の形状に応じた濃淡が顕著になり、モアレが発生し易くなる。これに対して、透光性が高い導電性材料(典型的には、ITO)を用いた導電性積層体の場合、上記した影響を殆ど受けることはない。
【0063】
以下、透明基体12と第1保護層26aとの屈折率差が大きい場合、すなわち、相対屈折率nr1が1から離れている場合での光学的現象について、図10B及び図10Cを用いて説明する。
【0064】
図10Bに示すように、矢印Z1方向に対し僅かながら斜入する光(斜入光106)は、透明基体12の内部に入射し、第1導電部14a(開口部18)と第1保護層26aとの第2界面108まで直進する。そして、斜入光106は、第2界面108による屈折現象により、一部の光(直進成分110)は透過されるとともに、残余の光(反射成分112)は反射される。このとき、相対屈折率nr1が1から離れているので界面透過率が低下し、直進成分110(あるいは反射成分112)の光量は相対的に減少(あるいは増加)する。
【0065】
例えば、図10Cに示すように、開口部18に対応する位置においてI=Iwの光量が、金属細線16に対応する位置においてI=Ibの光量が、導電性積層体10をそれぞれ透過して検出されたとする。この場合、金属細線16に起因する光学濃度は、開口部18での検出光量を基準として、ΔD1=−log(Ib/Iw)で表される。
【0066】
次いで、透明基体12と第1保護層26aとの屈折率差が小さい場合、すなわち、相対屈折率nr1が1に近い値である場合での光学的現象について、図11A及び図11Bを用いて説明する。
【0067】
相対屈折率nr1が1に近い値である場合、光学的考察から容易に導き出せるように、界面透過率が1(界面反射率が0)に近づく。したがって、直進成分114(あるいは反射成分116)の光量は、図10Bの場合と比べて相対的に増加(あるいは減少)する。換言すれば、散乱されることなく透明基体12内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線16の位置によらず一律に増加する。以下、説明の便宜のため、検出光量がε(正値)だけ増加したとする。
【0068】
このとき、図11A及び図11Bに示すように、開口部18に対応する位置においてI=Iw+εの光量が、金属細線16に対応する位置においてI=Ib+εの光量が、それぞれ透過して検出される。金属細線16に起因する光学濃度は、開口部18での検出光量を基準として、ΔD2=−log{(Ib+ε)/(Iw+ε)}で表される。
【0069】
Iw>Ib≧0、且つ、ε>0のとき、(Ib/Iw)<(Ib+ε)/(Iw+ε)の不等式を満たすので、ΔD1>ΔD2の関係が常に成り立つ。すなわち、透明基体12及び第1保護層26aの相対屈折率nr1を1に近い値にすることで、金属細線16に起因する光学濃度のコントラストを低減できる。これにより、表示装置40の平面視において、金属細線16の模様がユーザに視認され難くなる。
【0070】
なお、透明基体12と第1保護層26aとの関係のみならず、透明基体12と第2保護層26bとの関係においても上記と同様である。また、相対屈折率nr1、nr2が0.86〜1.15であれば好ましく、0.91〜1.08であることが一層好ましい。特に、第1保護層26a及び/又は第2保護層26bは、透明基体12と同一の材料であれば、nr1=1(nr2=1)となるので、更に好ましい。
【0071】
このように、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1、及び/又は第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2を0.86〜1.15にしたので、透明基体12の法線方向(矢印Z1方向)に対して僅かに斜入する光(斜入光106)のうち、透明基体12と第1保護層26aとの界面、及び/又は透明基体12と第2保護層26bとの界面において直進する光量(直進成分114)が相対的に増加する。すなわち、散乱されることなく透明基体12内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線16の位置によらず一律に増加する。これにより、金属細線16に起因する光学濃度のコントラストを低減可能であり、観察者(ユーザ)に視認され難くなる。特に、同一のメッシュ形状22を規則的に配列したメッシュパターン20では、モアレの発生を抑制できるので一層効果的である。なお、メッシュ形状22は、図1に示す形状(菱形)に限定されず、種々の形状を採り得ることはいうまでもない。
【0072】
次に、第1導電部14aや第2導電部14bを形成する方法としては、例えば、透明基体12上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ金属銀部及び光透過性部を形成して第1導電部14a及び第2導電部14bを形成するようにしてもよい。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。図2に示す導電性積層体10に関し、以下に示す製造方法を好ましく採用することができる。すなわち、透明基体12の両面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層に対して一括露光を行って、透明基体12の一主面に第1導電部14aを形成し、透明基体12の他主面に第2導電部14bを形成する。
【0073】
この製造方法の具体例を、図12〜図14を参照しながら説明する。
【0074】
先ず、図12のステップS1において、長尺の感光材料140を作製する。感光材料140は、図13Aに示すように、透明基体12と、該透明基体12の一方の主面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層(以下、第1感光層142aという)と、透明基体12の他方の主面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層(以下、第2感光層142bという)とを有する。
【0075】
図12のステップS2において、感光材料140を露光する。この露光処理では、第1感光層142aに対し、透明基体12に向かって光を照射して第1感光層142aを第1露光パターンに沿って露光する第1露光処理と、第2感光層142bに対し、透明基体12に向かって光を照射して第2感光層142bを第2露光パターンに沿って露光する第2露光処理とが行われる(両面同時露光)。図13Bの例では、長尺の感光材料140を一方向に搬送しながら、第1感光層142aに第1光144a(平行光)を第1フォトマスク146aを介して照射すると共に、第2感光層142bに第2光144b(平行光)を第2フォトマスク146bを介して照射する。第1光144aは、第1光源148aから出射された光を途中の第1コリメータレンズ150aにて平行光に変換されることにより得られ、第2光144bは、第2光源148bから出射された光を途中の第2コリメータレンズ150bにて平行光に変換されることにより得られる。
【0076】
図13Bの例では、2つの光源(第1光源148a及び第2光源148b)を使用した場合を示しているが、1つの光源から出射した光を光学系を介して分割して、第1光144a及び第2光144bとして第1感光層142a及び第2感光層142bに照射してもよい。
【0077】
そして、図12のステップS3において、露光後の感光材料140を現像処理する。第1感光層142a及び第2感光層142bの露光時間及び現像時間は、第1光源148a及び第2光源148bの種類や現像液の種類等で様々に変化するため、好ましい数値範囲は一概に決定することができないが、現像率が100%となる露光時間及び現像時間に調整されている。
【0078】
そして、本実施の形態に係る製造方法のうち、第1露光処理は、図14に示すように、第1感光層142a上に第1フォトマスク146aを例えば密着配置し、該第1フォトマスク146aに対向して配置された第1光源148aから第1フォトマスク146aに向かって第1光144aを照射することで、第1感光層142aを露光する。第1フォトマスク146aは、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第1露光パターン152a)とで構成されている。従って、この第1露光処理によって、第1感光層142aのうち、第1フォトマスク146aに形成された第1露光パターン152aに沿った部分が露光される。第1感光層142aと第1フォトマスク146aとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
【0079】
同様に、第2露光処理は、第2感光層142b上に第2フォトマスク146bを例えば密着配置し、該第2フォトマスク146bに対向して配置された第2光源148bから第2フォトマスク146bに向かって第2光144bを照射することで、第2感光層142bを露光する。第2フォトマスク146bは、第1フォトマスク146aと同様に、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第2露光パターン152b)とで構成されている。従って、この第2露光処理によって、第2感光層142bのうち、第2フォトマスク146bに形成された第2露光パターン152bに沿った部分が露光される。この場合、第2感光層142bと第2フォトマスク146bとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
【0080】
第1露光処理及び第2露光処理は、第1光源148aからの第1光144aの出射タイミングと、第2光源148bからの第2光144bの出射タイミングを同時にしてもよいし、異ならせてもよい。同時であれば、1度の露光処理で、第1感光層142a及び第2感光層142bを同時に露光することができ、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0081】
そして、図12のステップS4において、現像処理後の感光材料140にラミネート処理を施すことで、導電性積層体10が完成する。具体的には、第1感光層142a側に第1保護層26aを形成するとともに、第2感光層142b側に第2保護層26bを形成する。これにより、第1センサ部60a、第2センサ部60bの保護になる。
【0082】
このように、上述の両面一括露光を用いた製造方法を用いることで、タッチパネル44の電極を容易に形成可能であり、タッチパネル44の薄型化(低背化)を図ることができる。
【0083】
上述した例は、感光性ハロゲン化銀乳剤層を用いて第1導電部14a及び第2導電部14bを形成する製造方法であるが、その他の製造方法としては、以下のような製造方法がある。
【0084】
例えば、透明基体12上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、第1導電部14a及び第2導電部14bを形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に金属微粒子を含むペーストを印刷し、ペーストに金属めっきを行うことによって、第1導電部14a及び第2導電部14bを形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に、第1導電部14a及び第2導電部14bをスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に、第1導電部14a及び第2導電部14bをインクジェットにより形成するようにしてもよい。
【0085】
本実施の形態に係る導電性積層体10において、透明基体12の一主面に第1導電部14aを形成し、透明基体12の他主面に第2導電部14bを形成しているが、この形態に限られない。例えば、図15に示すように、導電性積層体160を構成してもよい。
【0086】
導電性積層体160は、下方から順番に、第2導電シート162b、第1導電シート162a、第1接着層24a及び第1保護層26aを積層して構成されている。第1導電シート162aは、第1透明基体12aの一主面(矢印s1方向側)に形成された第1導電部14aを有する。第2導電シート162bは、第2透明基体12bの一主面(矢印s1方向側)に形成された第2導電部14bを有する。ここで、第1導電シート162aと第2導電シート162bとの間に他の層が介在してもよい。また、第1導電部14aと第2導電部14bとが絶縁状態であれば、それらが対向して配置されてもよい。
【0087】
このように構成された導電性積層体160では、第1透明基体12aに対する第1保護層26aの相対屈折率nr1を1に近い値にすることが好ましい。また、第2透明基体12bに対する第2透明基体12bの相対屈折率nr2を1に近い値にしてもよい。
【0088】
別の実施形態において、第1導電パターン70a及び/又は第2導電パターン70bの形状を種々変更してもよい。例えば、第1大格子72a及び/又は第2大格子72bの形状は、頂点数が3以上の多角形状、円形状であってもよい。以下、第1大格子72a及び第2大格子72bを形成することなく、平面視において巨視的に概略格子状の模様を有する導電性積層体について、図16A及び図16Bを参照しながら説明する。
【0089】
図16Aは第1センサ部170a(第1導電部14a)の部分拡大図であり、図16Bは第2センサ部170b(第2導電部14b)の部分拡大図である。説明の便宜のため、図16A及び図16Bにおいて、複数の金属細線16で形成されるメッシュパターン20の輪郭のみを単線で表記している。すなわち、図16A及び図16Bに示す各単線の一部を拡大すると、図1に示すメッシュパターン20の構造が現れることとなる。
【0090】
図16Aに示すように、第1センサ部170aに対応する部位には、複数の金属細線16で形成された2以上の第1導電パターン172aを有する。第1導電パターン172aは、矢印Y方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向に等間隔で配列されている。また、第1導電パターン172aは、第2導電パターン70b(図6B参照)とは異なり、略一定の線幅を有している。各第1導電パターン172aの間には、格子状の第1ダミーパターン174がそれぞれ配置されている。第1ダミーパターン174は、矢印Y方向に延在し且つ等間隔で配置された4本の長線パターン176と、4本の長線パターン176にそれぞれ交差して配置された多数の短線パターン178とから構成される。各短線パターン178はいずれも同じ長さを有しており、4本を繰り返し単位として、矢印Y方向に対し等間隔に並設されている。
【0091】
図16Bに示すように、第2センサ部170bに対応する部位には、複数の金属細線16で形成された2以上の第2導電パターン172bを有する。第2導電パターン172bは、矢印X方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向に等間隔で配列されている。また、第2導電パターン172bは、第1導電パターン70a(図6A参照)とは異なり、略一定の線幅を有している。各第2導電パターン172bの間には、矢印X方向に伸びる直線状の第2ダミーパターン180が多数配置されている。各第2ダミーパターン180はいずれも同じ長さを有しており、4本を繰り返し単位として、矢印Y方向に対し等間隔に並設されている。
【0092】
すなわち、平面視において、第1センサ部170a(図16A参照)及び第2センサ部170b(図16B参照)に形成される模様が相互に補完することで、格子要素182を単位とする格子形状が完成する。このように構成しても、本発明と同様の作用効果が得られる。
【0093】
次に、本実施の形態に係る導電性積層体10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる方法を中心にして述べる。
【0094】
本実施の形態に係る導電性積層体10の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
【0095】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0096】
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0097】
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0098】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0099】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面の小さい球形である。
【0100】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0101】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0102】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0103】
ここで、本実施の形態に係る導電性積層体10の各層の構成について、以下に詳細に説明する。
【0104】
[透明基体12]
透明基体12としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。
【0105】
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)を含むポリエステル類、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0106】
透明基体12としては、融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。
【0107】
[銀塩乳剤層]
第1積層部28a及び第2積層部28bの金属細線16となる銀塩乳剤層は、銀塩とバインダの他、溶媒や染料等の添加剤を含有する。
【0108】
<1.銀塩>
本実施の形態に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0109】
銀塩乳剤層の塗布銀量(銀塩の塗布量)は、銀に換算して1〜30g/mが好ましく、1〜25g/mがより好ましく、5〜20g/mがさらに好ましい。この塗布銀量を上記範囲とすることで、導電性積層体10とした場合に所望の表面抵抗を得ることができる。
【0110】
<2.バインダ>
本実施の形態に用いられるバインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0111】
本実施の形態の銀塩乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩乳剤層中のバインダの含有量は、銀/バインダ体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。銀/バインダ体積比は、100/1以下が好ましく、50/1以下がより好ましい。また、銀/バインダ体積比は1/1〜4/1であることがさらに好ましい。1/1〜3/1であることが最も好ましい。銀塩乳剤層中の銀/バインダ体積比をこの範囲にすることで、塗布銀量を調整した場合でも抵抗値のばらつきを抑制し、均一な表面抵抗を有する導電性積層体10を得ることができる。なお、銀/バインダ体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(重量比)に変換し、さらに、銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(体積比)に変換することで求めることができる。
【0112】
<3.溶媒>
銀塩乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0113】
<4.その他の添加剤>
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。
【0114】
[第1保護層26a、第2保護層26b]
第1保護層26a及び第2保護層26bとしては、透明基体12と同様に、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、PET、PEN、PMMA、PP、PS、TAC等を用いることができる。
【0115】
第1保護層26a及び第2保護層26bの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
【0116】
次に、導電性積層体10の作製方法の各工程について説明する。
【0117】
[露光]
本実施の形態では、第1導電部14a及び第2導電部14bを印刷方式によって施す場合を含むが、印刷方式以外は、第1導電部14a及第2導電部14bを露光と現像等によって形成する。すなわち、透明基体12上に設けられた銀塩含有層を有する感光材料又はフォトリソグラフィ用フォトポリマーを塗工した感光材料への露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0118】
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
【0119】
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0120】
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。
【0121】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0122】
以上の工程を経て、導電性積層体10は得られる。現像処理後の導電性積層体10に対しては、さらにカレンダー処理を行ってもよく、カレンダー処理により所望の表面抵抗に調整することができる。得られた導電性積層体10の表面抵抗は0.1〜300オーム/sq.の範囲にあることが好ましい。
【0123】
なお、表面抵抗は、導電性積層体10の用途によって異なる。例えば、タッチパネル用途の場合には、1〜70オーム/sq.であることが好ましく、5〜50オーム/sq.であることがより好ましく、5〜30オーム/sq.であることがさらに好ましい。また、電磁波シールド用途の場合には、10オーム/sq.以下であることが好ましく、0.1〜3オーム/sq.であることがより好ましい。
【0124】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を向上させる目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよく、物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよい。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを含めて「導電性金属部」と称する。
【0125】
本実施の形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
【0126】
本実施の形態において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。本実施の形態における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができ、例えば、プリント配線板等で用いられている無電解めっき技術を用いることができ、無電解めっきは無電解銅めっきであることが好ましい。
【0127】
なお、本実施の形態に係る導電性積層体10の製造方法では、めっき等の工程は必ずしも行う必要はない。本製造方法では銀塩乳剤層の塗布銀量、銀/バインダ体積比を調整することで所望の表面抵抗を得ることができるからである。
【0128】
[酸化処理]
本実施の形態では、現像処理後の金属銀部、並びに、物理現像及び/又はめっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性を略100%にすることができる。
【0129】
[現像処理後の硬膜処理]
銀塩乳剤層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号公報に記載のものを挙げることができる。
【0130】
本実施の形態に係る導電性積層体10には、反射防止層やハードコート層等の機能層を付与してもよい。
【0131】
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
【0132】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
【0133】
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0134】
[ラミネート処理]
第1センサ部60a、第2センサ部60bの保護のため、銀塩乳剤層上に保護層を形成してもよい。保護層と銀塩乳剤層との間に第1接着層24a(又は第2接着層24b)を設けることで、接着性の調整が自在となる。
【0135】
第1接着層24a及び第2接着層24bの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。特に、接着可能な材料の種類が豊富であり、且つ、貼り合わせ速度も早いドライラミネート接着剤が好ましい。ドライラミネート接着剤として、具体的には、アミノ樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、クロロプレンゴム接着剤、ニトリルゴム接着剤、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤、反応型アクリル接着剤等を用いることができる。その中でも、アクリル系低酸価接着剤である住友スリーエム社製のOCA(Optical Clear Adhesive;登録商標)を用いることが好ましい。
【0136】
乾燥条件は、30〜150℃の温度環境下で、1〜30分間であることが好ましい。乾燥温度は、50〜120℃が特に好ましい。
【0137】
また、上記した接着層に代替して、透明基体12及び保護層の少なくともいずれかを表面処理することにより、層間接着力を調整することができる。前記銀塩乳剤層との接着力を高めるため、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波照射処理、グロー放電照射処理、活性プラズマ照射処理、レーザ光線照射処理等を施してもよい。
【0138】
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組み合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【実施例】
【0141】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0142】
この実施例では、実施例1〜6、並びに比較例1、2に係る導電性積層体10について、これらを組み込んだ表示装置40でのモアレ及び輝度変化率を評価した。
【0143】
<実施例1〜6、比較例1、2>
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg150gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
【0144】
また、この乳剤中にはKRhBr及びKIrClを濃度が10−7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNaPdClを添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が10g/mとなるように透明基体(ここでは、屈折率n0=1.64であるポリエチレンテレフタレート(PET))上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とした。
【0145】
幅300mmのPET支持体に250mmの幅で20m分だけ塗布し、塗布幅の中央部240mmを残すように両端を30mmずつ切り落とし、ロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0146】
(露光パターンの作成)
図6A及び図7に示す配線形状に対応する第1露光パターンと、図6B及び図8に示す配線形状に対応する第2露光パターンとをそれぞれ作成した。各露光パターンの形状の決定方法は以下の通りである。
【0147】
図1に示すピッチPs(小格子94の一辺の長さ)の範囲を200〜400μmとし、矢印q方向(小格子94の一辺)と仮想線23(第1方向)とのなす角θの範囲を30〜45°とした上で、各値を独立に且つランダムに抽出し、これらを無作為に組み合せた20種類の異なる露光パターンを決定した。なお、20種類の全露光パターンにおいて、金属細線16(小格子94)の線幅を6μmとし、第1大格子72a及び第2大格子72b(図6A及び図6B参照)の一辺の長さを5mmとした。
【0148】
(露光)
A4判サイズ(210mm×297mm)の透明基体12の両面に向けてそれぞれ露光を行った。露光は上記した第1露光パターン(第1導電部14a側に対応)及び第2露光パターン(第2導電部14b側に対応)のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。
【0149】
(現像処理)
・現像液1L処方
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
・定着液1L処方
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行った。
【0150】
(ラミネート処理)
現像済み感材の両面に、同一の材質からなる第1保護層26a及び第2保護層26bをそれぞれ貼り付けた。後述するように、導電性積層体10のサンプル毎に、屈折率n1がそれぞれ異なる保護膜を用いた。また、第1接着層24a及び第2保護層26b(図2参照)として、市販の粘着テープ(NSS50−1310;新タック化成社製、厚さ50μm)を用いた。そして、第1保護層26a及び第2保護層26bを貼り付けた後、気泡の発生を防止するため、0.5気圧、40℃の環境下で20分間加熱し、オートクレーブ処理を施した。
【0151】
なお、評価の便宜のため、シートの一部を切り欠いた第1保護層26aを用いた。すなわち、第1保護層26aを形成した場合(屈折率n1)と、第1保護層26aを形成しない場合(屈折率1.00の空気層)との差異を一度に視認できるようにした。以下、第1保護層26aの切り欠き部に対応する表示箇所をA領域、残余の表示箇所をB領域という。
【0152】
(実施例1)
屈折率n1=1.42であるポリクロロトリフルオロエチレン(PCTTE)を第1保護層26aとして用い、実施例1に係る導電性積層体10を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.42/1.64)=0.86である。
【0153】
(実施例2)
屈折率n1=1.50であるポリメチルメタクリレート(PMMA)を第1保護層26aとして用い、実施例2に係る導電性積層体10を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.50/1.64)=0.91である。
【0154】
(実施例3)
屈折率n1=1.60であるポリスチレン(PS)を第1保護層26aとして用い、実施例3に係る導電性積層体10を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.60/1.64)=0.97である。
【0155】
(実施例4)
屈折率n1=1.70であるポリチオウレタン(PTU)を第1保護層26aとして用い、実施例4に係る導電性積層体10を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.70/1.64)=1.03である。
【0156】
(実施例5)
屈折率n1=1.78である高屈折率ガラスを第1保護層26aとして用い、実施例5に係る導電性積層体10を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.78/1.64)=1.08である。
【0157】
(実施例6)
屈折率n1=1.90である超高屈折率ガラスを第1保護層26aとして用い、実施例6に係る導電性積層体10を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.90/1.64)=1.15である。
【0158】
(比較例1)
屈折率n1=1.34であるテトラフルオロエチレン(FEP)を第1保護層として用い、比較例1に係る導電性積層体を20種類作製した。この場合、相対屈折率n12は、nr1=(1.34/1.64)=0.81である。
【0159】
(比較例2)
屈折率n1=1.98である超高屈折率ガラスを第1保護層として用い、比較例2に係る導電性積層体を20種類作製した。この場合、相対屈折率nr1は、nr1=(1.98/1.64)=1.20である。
【0160】
[評価]
実施例1〜6、及び比較例1、2に係る各サンプルを、表示ユニット30の表示画面上にそれぞれ貼り付けた。表示ユニット30として、市販のカラー液晶ディスプレイ(画面サイズ11.6型、1366×768ドット、画素ピッチは縦横とも約192μm)を用いた。
【0161】
(モアレ)
表示ユニット30を表示制御して白色(最高輝度)を表示させた状態下で、3名の研究員は、モアレの官能評価をそれぞれ実施した。なお、表示画面からの観察距離を300mmに、室内照度を300lxにそれぞれ設定した。
【0162】
今回の官能評価では、A領域(第1保護層26aを形成しない表示領域)での視認結果に対する対比観察を行った。具体的には、A領域に対して、B領域でのモアレが顕著に改善した場合は5点、改善した場合は4点、変化がない場合は3点、悪化した場合は2点、顕著に悪化した場合は1点にそれぞれ設定した。そして、種類毎(20種類)、研究員毎(3名)の得点の平均値を、モアレの評価値とした。すなわち、この評価値は、全60通りの評価組合せにおける得点の平均値に相当する。
【0163】
(輝度変化率)
表示ユニット30を表示制御して白色(最高輝度)を表示させた状態下で、表示画面上の輝度を測定した。輝度計は、LS−100(コニカミノルタ社製)を用いた。なお、表示画面からの計測距離を300mmに、測定角を2°に、室内照度を1lx以下にそれぞれ設定した。
【0164】
A領域での輝度をLa[cd/m]、B領域での輝度をLb[cd/m]とするとき、輝度変化率(単位%)を100×(Lb−La)/Laとして算出した。なお、面内の均一性を考慮し、B領域内の測定位置を、A領域の境界近傍に設定した。
【0165】
[結果]
(モアレ)
図17に示すように、実施例1〜6、比較例1、2のいずれも評価値が3を超えており、空気層を無くすることで、モアレの低減効果が得られた。その中でも、実施例1〜6に関して評価値がいずれも4を超えており、比較例1、2と比べて顕著な効果がみられた。すなわち、相対屈折率nr1が、0.86≦nr1≦1.15の関係を満たす場合、モアレを抑制可能である結論を得た。
【0166】
(輝度変化率)
表3に示すように、実施例1〜6、比較例1、2のいずれも輝度変化率が正値であり、空気層(エアギャップ)を無くすることで、表示画面上の輝度が向上した。
【0167】
【表3】

【0168】
その中でも、実施例2〜5に関して輝度変化率がいずれも20%を超えており、実施例1、6等と比較して、目視で識別可能程度の差異がみられた。すなわち、相対屈折率nr1が、0.91≦nr1≦1.08の関係を満たす場合、更には表示輝度を向上可能である結論を得た。
【0169】
[補足説明]
上記した実施例の他、導電性積層体10の作製条件を種々変更して同様の評価を行った結果、以下の知見が得られた。
【0170】
(1)透明基体12の材料はPETに限られず、上記した相対屈折率nr1、nr2の関係を満たす範囲においては、材料を問わず同様の実験結果が得られた。また、第2保護層26bが第1保護層26aと異なる材料であっても、前記関係を満たす範囲においては同様であった。
【0171】
(2)相対屈折率nr1、nr2のいずれか一方を0.86以上1.15以下にすることで、モアレを低減する効果が得られた。そして、相対屈折率nr1、nr2の両方を0.86以上1.15以下にすることで、顕著な低減効果が得られた。
【0172】
(3)相対屈折率nr1、nr2のいずれか一方を0.91以上1.08以下にすることで、表示画面を介して外部に放射される光量、すなわち表示輝度が向上する効果が得られた。そして、相対屈折率nr1、nr2の両方を0.91以上1.08以下にすることで、顕著な低減効果が得られた。
【0173】
(4)表裏を反転した状態で導電性積層体10を配置しても、上記と略同様の評価結果が得られた。
【0174】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0175】
10、160…導電性積層体 12…透明基体
12a…第1透明基体 12b…第2透明基体
14a…第1導電部 14b…第2導電部
16…金属細線 18…開口部
20…メッシュパターン 22…メッシュ形状
26a…第1保護層 26b…第2保護層
28a…第1積層部 28b…第2積層部
30…表示ユニット 32…画素
40…表示装置 44…タッチパネル
70a、172a…第1導電パターン 70b、172b…第2導電パターン
72a…第1大格子 72b…第2大格子
76a…第1小格子 76b…第2小格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第1導電部と、
前記基体の他方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第2導電部と、
前記一方の主面の上に設けられた、前記第1導電部を被覆する第1保護層と、
前記他方の主面の上に設けられた、前記第2導電部を被覆する第2保護層と、
を有し、
前記第1導電部及び第2導電部を組み合わせることで、平面視で、同一のメッシュ形状を規則的に配列したメッシュパターンが形成され、
前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び/又は前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は0.86〜1.15である
ことを特徴とする導電性積層体。
【請求項2】
請求項1記載の導電性積層体において、
前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び/又は前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は0.91〜1.08であることを特徴とする導電性積層体。
【請求項3】
請求項1記載の導電性積層体において、
前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は1に略等しいことを特徴とする導電性積層体。
【請求項4】
請求項3記載の導電性積層体において、
前記第1保護層及び/又は前記第2保護層は、前記基体と同一の材料からなることを特徴とする導電性積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性積層体において、
前記第1導電部は、それぞれ第1方向に延在し、且つ、前記第1方向と直交する第2方向に配列された2以上の第1導電パターンを有し、
前記第2導電部は、それぞれ前記第2方向に延在し、且つ、前記第1方向に配列された2以上の第2導電パターンを有し、
前記第1導電パターンは、2以上の第1大格子が前記第1方向に直列に接続されて構成され、
前記第2導電パターンは、2以上の第2大格子が前記第2方向に直列に接続されて構成され、
各前記第1大格子及び各前記第2大格子は、それぞれ2以上の小格子が組み合わされて構成されている
ことを特徴とする導電性積層体。
【請求項6】
請求項5記載の導電性積層体において、
各前記小格子は、それぞれ菱形状を有し、
各前記小格子における少なくとも1つの辺と前記第1方向とのなす角が30°〜60°である
ことを特徴とする導電性積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性積層体と、
前記導電性積層体の一面上の接触位置又は近接位置を検出する検出制御部と
を備えることを特徴とするタッチパネル。
【請求項8】
請求項7記載のタッチパネルを備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−20785(P2013−20785A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152648(P2011−152648)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】