説明

導電性領域を有する絶縁層、及び電子部品、並びにこれらの製造方法

【課題】安価で、かつ信頼性が高い導電性領域を有する絶縁層、及び電子部品、並びにこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る導電性領域を有する絶縁層10は、表裏両主面を電気的に接続する導電性領域40と、表裏両主面を電気的に絶縁する絶縁性領域41とを備える。導電性領域40は、絶縁性樹脂2中に含有する導電性粒子3を接触、若しくは融着させることによって形成される。一方、絶縁性領域41は、絶縁性樹脂2中に複数の空隙4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性領域を有する絶縁層、及びこれを備える電子部品に関する。さらに、導電性領域を有する絶縁層と電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージなどに用いられる多層高密度配線の一般的な形成方法として、セミアディティブ法がある。図12A〜図12Gに、セミアディティブ法による多層高密度配線の製造工程断面図を示す。
【0003】
まず、図12Aに示すように、表面に電極111を形成した基板130上に、絶縁性樹脂を用いて層間絶縁膜101を形成する。次に、電極111が配された層間絶縁膜101の所望の位置に、レーザ等を用いて穴102を開ける(図12B参照)。続いて、メッキのシード層103をスパッタ等で成膜し(図12C参照)、配線、ビア、ランドなどのメッキを析出させたいパターン部以外を、メッキレジスト104で覆う(図12D参照)。メッキレジスト104は、一般的に感光性の樹脂を用い、基板表面に塗布後、フォトマスクにて露光し、現像後に露光部以外を除去することで形成する。
【0004】
その後、Cuなど所望の金属のメッキ処理を行い、パターン部にメッキ層112を形成する(図12E参照)。メッキレジスト104を除去した後(図12F参照)、エッチングして不要な部分のシード層103を除去する(図12G参照)。上記工程を経て、ビア部112Aを介して配線部112Bと電極111が電気的に接続された多層配線が完成する。
【0005】
多層配線形成方法としては、上述したセミアディティブ法以外にも様々な製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1においては、誘電層の中に複数のパターン開口とビア孔を形成し、さらにパターン開口とビア孔に導電金属を埋める方法が提案されている。
【0007】
特許文献2においては、樹脂に導電性フィラーが含まれた導電性ペーストを配線基板の導通箇所に利用する技術が提案されている。図13A〜図13Eに、特許文献2に開示された配線基板の製造工程断面図を示す。
【0008】
まず、半硬化状の絶縁絶縁層201に穴あけ加工を施し、ビアホール202を設ける(図13A参照)。次に、そのビアホール202内に導電性ペースト203を充填する(図13B参照)。その後、導電性ペースト203を充填したビアホール202の片側或いは両端部に、樹脂フィルム204に接着剤205を介して接着された金属箔からなる配線層211を位置あわせし、加熱と加圧を施す(図13C参照)。そして、接着剤205と共に樹脂フィルム204を剥がすことで配線層211が絶縁絶縁層201に埋設される(図13D参照)。 このようにして作製された配線ユニットa(図13E参照)を複数作製する。そして、配線ユニットaを積層させて、絶縁層中の熱硬化性樹脂が硬化するように加熱と加圧を施すことにより配線基板を作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−324559号公報
【特許文献2】特開2005−71825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
セミアディティブ法においては、シード層103をエッチングする工程(図12F参照)において、基板表面全体をエッチング液に浸す。このため、シード層103とともにビア部112A及び配線部112Bも浸食されてしまうという問題があった。配線部112Bの浸食は、配線が微細になるほど深刻となる。
【0011】
また、セミアディティブ法や特許文献1に記載の方法においては、以下のような問題があった。すなわち、ビアを埋める際にメッキ時間を延ばしたり、ビア中に樹脂を埋め込む作業によって、工程増やコスト高が生じたりするという問題があった。また、複雑な工程を必要とするために、初期設備投資が多大となるという問題があった。さらに、多数の製造工程を必要とする点からも、コストアップが避けられないという問題があった。
【0012】
一方、特許文献2のように導電性ペーストを用いて配線を形成した場合、導電性ペーストと版があれば導電パターンを形成することが可能となる。このため、製造工程が簡素で、設備投資も少ないというメリットがある。しかしながら、導電性ペーストを基材に印刷するため、印刷後の滲みなどにより、版と比較して配線が太くなったり、配線形状が崩れたりするという問題があった。また、予め配線が形成されている基板に印刷配線を形成して両者を接続する場合には、配線上に導電性ペーストを乗り上げて印刷する必要がある。この際、段差部で断線が発生する恐れもあった。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価で、かつ信頼性が高い導電性領域を有する絶縁層、及び電子部品、並びにこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る導電性領域を有する絶縁層は、表裏両主面を電気的に接続する導電性領域と、前記表裏両主面を電気的に絶縁する絶縁性領域とを備え、前記導電性領域は、絶縁性樹脂中に含有する導電性粒子を接触、若しくは融着させることによって形成され、前記絶縁性領域は、前記絶縁性樹脂中に複数の空隙が形成されているものである。
【0015】
本発明に係る電子部品は、絶縁性樹脂中に、表裏両主面間を電気的に接続する導電性領域を有する絶縁層と、前記絶縁層の前記表裏両主面のうちの少なくとも一方に形成され、前記導電性領域と接続された導電層とを備える。そして、前記絶縁層中の導電性領域は、絶縁性樹脂中に含有する導電性粒子を接触、若しくは融着させることによって形成された領域であり、前記絶縁層中の導電性領域以外には、複数の空隙が形成されているものである。
【0016】
本発明に係る導電性領域を有する絶縁層の製造方法は、電性領域を有する絶縁層の製造方法であって、導電性粒子が分散された未硬化の絶縁性樹脂層を用意し、前記絶縁性樹脂層を硬化することによって、前記導電性粒子を接触、若しくは融着させて当該絶縁性樹脂層に導電性を付与し、導電性領域を形成したい領域以外について、実質的に前記導電性粒子を除去するものである。
【0017】
本発明に係る電子部品の製造方法は、導電性領域を有する絶縁層を備える電子部品の製造方法であって、導電性粒子が分散された未硬化の絶縁性樹脂層を用意し、前記絶縁性樹脂層を硬化することによって、前記導電性粒子を接触、若しくは融着させて当該絶縁性樹脂層に導電性を付与し、前記導電性領域を形成したい領域以外について、実質的に前記導電性粒子を除去することにより絶縁性領域を得、前記絶縁層の少なくとも片側主面上に、前記導電性領域と電気的に接続する導電層を配設するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価で、かつ信頼性が高い導電性領域を有する絶縁層、及び電子部品、並びにこれらの製造方法を提供することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る導電性領域を有する絶縁層の模式的断面図。
【図2A】実施形態1に係る導電性領域を有する絶縁層の製造工程断面図。
【図2B】実施形態1に係る導電性領域を有する絶縁層の製造工程断面図。
【図2C】実施形態1に係る導電性領域を有する絶縁層の製造工程断面図。
【図2D】実施形態1に係る導電性領域を有する絶縁層の製造工程断面図。
【図3】実施形態2に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図4】実施形態3に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図5】実施形態4に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図6A】実施形態4に係る電子部品の要部の製造工程断面図。
【図6B】実施形態4に係る電子部品の要部の製造工程断面図。
【図6C】実施形態4に係る電子部品の要部の製造工程断面図。
【図6D】実施形態4に係る電子部品の要部の製造工程断面図。
【図7】実施形態5に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図8】実施形態6に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図9】実施形態7に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図10】実施形態8に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図11】実施形態9に係る電子部品の要部を示す模式的断面図。
【図12A】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図12B】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図12C】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図12D】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図12E】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図12F】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図12G】セミアディティブ法に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図13A】特許文献2に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図13B】特許文献2に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図13C】特許文献2に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図13D】特許文献2に係る多層配線体の製造工程断面図。
【図13E】特許文献2に係る多層配線体の製造工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる。
[実施形態1]
【0021】
図1に、本実施形態1に係る導電性領域を有する絶縁層(以下、単に「絶縁層」と略記する)の一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態1に係る絶縁層10は、図1に示すように、絶縁性樹脂2、導電性粒子3を備える。
【0022】
絶縁層10は、表側主面10A及び裏側主面10Bの両主面間を電気的に接続する導電性領域40と、両主面間を電気的に絶縁する絶縁性領域41を有する。絶縁性領域41中の絶縁性樹脂2中には、複数の空隙4が設けられている。
【0023】
導電性領域40は、絶縁性樹脂2中に含有する導電性粒子3を接触、若しくは融着させることによって形成されている。換言すると、導電性領域40には、接触、若しくは融着された導電性粒子3が、表側主面10Aから裏側主面10Bに亘って形成されている。この導電性領域40が、層間導電路5として機能する。
【0024】
絶縁性領域41は、絶縁層10中に含有する導電性粒子3を実質的に除去した領域である。導電性粒子3が除去された領域は、複数の空隙4が形成されている。なお、図1においては、層間導電路5が1つ配設されている例を示しているが、説明の便宜上のものであって、絶縁層10中に設ける層間導電路5の数は限定されず、任意の箇所に任意の数だけ設けることができる。
【0025】
絶縁性樹脂2の材料は、成膜性に優れ、絶縁性を示す材料であればよく、特に限定されない。好適な例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂のいずれか1つ、或いはこれらの複数の組合せを挙げることができる。
【0026】
導電性粒子3は、必要な導電性が確保できればよく、材質は特に限定されない。好適な一例としては、銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、白金のいずれかから選ばれる単一金属、或いは合金を挙げることができる。また、銅、銅合金、及びニッケル、ニッケル合金などを銀で被覆したもののうちのいずれか1つ、或いは複数の組合せからなるものも好適な例として挙げることができる。また、導電性粒子3として、金属以外に導電性カーボン粒子、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどや、これらと金属の組み合わせからなるものであってもよい。低抵抗化を図る観点からは、導電性粒子3として、金属ナノ粒子焼結体を用いることが好ましい。
【0027】
導電性粒子3の形状は、特に限定されないが、好適な例として球状、燐片状、針状のいずれか1つ、或いは複数の組合せを挙げることができる。
【0028】
導電性粒子3の粒子径は、5μm以下が好ましく、100nm以下の金属微粒子とすることがより好ましい。導電性粒子3の粒子径が5μmを超えると、絶縁性領域41において導電性粒子を除去して形成する空隙4のサイズが大きくなり、膜強度が低下する恐れがあるためである。
【0029】
導電性粒子3の粒度分布のピークは、1つであっても、複数であってもよい。例えば、ミクロンオーダの粒度分布のピークを有する導電性粒子と、100nm以下の粒度分布のピークを有する導電性粒子3をともに含有していてもよい。導電性粒子3としてナノサイズの金属微粒子を用いると、低温で融着させることができる。このため、ナノサイズの金属微粒子を用いることにより、導電性粒子3間の接触を金属結合とし、低抵抗化を図ることができる。
【0030】
以下、本実施形態1に係る絶縁層10の製造方法の一例について、図2A〜図2Dの製造工程断面図を用いつつ説明する。なお、絶縁層10の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の方法を採用することができる。
【0031】
まず、導電性粒子3が分散された未硬化樹脂層11を用意する(図2A参照)。未硬化樹脂層11は、名称の如く、絶縁性樹脂2が硬化されていないものとする。導電性粒子3が分散された未硬化樹脂層11の作製方法は、特に限定はされない。例えば、導電性粒子3が分散された液状タイプ、フィルムタイプなどの未硬化の絶縁性樹脂2を用いることができる。
【0032】
次に、未硬化樹脂層11を硬化することにより、硬化樹脂層12を得る(図2B参照)。未硬化樹脂層11の硬化方法は、特に限定されず、種々の方法を適用することができる。取り扱い容易性の観点からは、熱硬化タイプ、紫外線等の光照射による硬化タイプなど、物理的刺激により硬化する樹脂が好適である。導電性粒子3が熱により融着するタイプであれば、熱硬化性の樹脂を用いることが好ましい。導電性粒子同士を融着させる場合には、融着条件と絶縁性樹脂2の硬化条件を合わせることが、工程数を削減する観点から好ましい。
【0033】
絶縁性樹脂2の硬化工程において、導電性粒子3は、未硬化樹脂層11の硬化収縮によりお互いが接近する。導電性粒子3の粒径が比較的大きい場合には、未硬化樹脂層11の硬化収縮により、導電性粒子3同士が接触する。また、導電性粒子3の粒子径が100nm以下の場合には、導電性粒子3同士が融着する。これらにより、導電性粒子3が互いに電気的に接続される。従って、硬化処理後の硬化樹脂層12は、導電性膜となる。
【0034】
続いて、層間導電路5を形成したい所望の位置の硬化樹脂層12の表側主面10A及び裏側主面10Bにレジスト7を形成する(図2C参照)。その後、硬化樹脂層12をエッチング処理することにより、レジスト7で保護されていない領域の導電性粒子3を除去する。換言すると、層間導電路5以外の部分の導電性粒子3が除去されて空隙4が形成される(図2D参照)。その後、レジスト7を剥離する。これらの工程を経て、図1に示すような絶縁層10が完成する。
【0035】
本実施形態1に係る絶縁層10の製造方法によれば、上述したように導電性粒子3を含有する未硬化樹脂膜11を硬化すると同時に、導電性粒子3同士の接触、融着を図る。その後、層間導電路5を形成したい所望の箇所(導電性領域40としたい個所)以外の導電性粒子3を実質的に除去することで、絶縁性領域41を形成する。従って、製造工程の簡便化を図ることができる。
【0036】
上述したセミアディティブ法においては、ビア部112Aを埋める際にメッキ時間を延ばしたり、ビア部112A中に樹脂を埋め込んだりする作業が必要であった。一方、本実施形態1によれば、導電性粒子3を含有する未硬化樹脂層11を硬化して、絶縁性領域41の導電性粒子3をエッチングにより除去するという工程により製造するので、製造工程の簡便化を図ることができる。従って、セミアディティブ法や特許文献1の製造工程に比して、初期設備投資の費用を抑えることができるのみならず、工程数削減によるコストアップ抑制を図ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態1においては、ビアの穴埋めに導電性ペーストや絶縁性樹脂を用いないので、樹脂の滲みやビア部のボイド発生を抑制できる。
【0038】
従って、本実施形態1によれば、信頼性の高い導電性領域を有する絶縁層10を安価に提供することができる。
【0039】
[実施形態2]
次に、上記導電性領域を有する絶縁層10を備える電子部品50の一例について説明する。図3に、本実施形態2に係る電子部品50の絶縁層10近傍を部分拡大した模式的断面図を示す。なお、以降の図において、前述の図面と同一の要素部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0040】
本実施形態2に係る電子部品50は、図3に示すように、絶縁層10の表側主面10Aに導電層たる第1配線21、絶縁層10の裏側主面10Bに導電層たる第2配線22が配設されている。第1配線21は、層間導電路5と電気的に接続されるように、層間導電路5の表面5Aの少なくとも一部と当接するように配設されている。第2配線22は、層間導電路5と電気的に接続されるように、層間導電路5の裏面5Bの少なくとも一部と当接するように配設されている。
【0041】
第1配線21及び第2配線22の材料は、配線形成が可能な材料であればよく、特に限定はされない。一例として、Cu,Ni,Au,Pdなどの単層、或いは積層からなるメッキ層を挙げることができる。
【0042】
なお、図3においては、第1配線21、第2配線22が各々1つ設けられている例について説明しているが、説明の便宜上のものであって、これらの配線の本数は限定されない。また、絶縁層10の表側主面10A側のみに第1配線21を設ける構成や、絶縁層10の裏側主面10B側のみに第2配線22を設ける構成であってもよい。また、絶縁層10の表側主面10A、又は/及び裏側主面10Bに配設する導電層は、配線に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、導電層は、電極パッド、半田等の導電性接合部などとすることができる。
【0043】
セミアディティブ法においては、シード層103をエッチングする工程(図12F参照)において、基板表面全体をエッチング液に浸すため、シード層103とともにビア部112A及び配線部112Bも浸食されてしまうという問題があった。一方、本実施形態2においては、絶縁層10を形成した後に、導電層である第1配線21等を設けているので、配線が絶縁層10の層間導電路5を形成する際に浸食されない。従って、信頼性の高い配線構造を有する電子部品50を提供することができる。
【0044】
また、絶縁層10の絶縁性領域41に空隙4が存在するため、アンカー効果により表面に形成する第1配線21及び第2配線22の密着性を向上させることができる。また、絶縁層10に空隙4が存在するために低誘電率となる。その結果、配線の信号特性を向上させることができる。これらの効果により、安価で信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【0045】
[実施形態3]
図4に、本実施形態3に係る電子部品50aの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態3に係る電子部品50aは、第1配線21a及び第2配線22aの材料が導電性樹脂である点を特徴とする。
【0046】
第1配線21a及び第2配線22aは、導電性樹脂23を印刷することにより形成することができる。
【0047】
第1配線21a及び第2配線22aを形成する導電性樹脂23中の導電粒子24は、必要な導電性が確保できれば材質は特に限定されない。好適な一例としては、銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、白金いずれかの単一金属、或いは合金を挙げることができる。また、銅、銅合金、及びニッケル、ニッケル合金などを銀で被覆したもののいずれか1つ、或いは複数の組合せからなるものも好適な例として挙げることができる。
【0048】
導電粒子24の形状は、特に限定されないが、好適な例として球状、燐片状、針状のいずれか1つ、或いは複数の組合せを挙げることができる。
【0049】
導電粒子24の粒子径は、導電性や印刷性の観点から5μm以下とすることが好ましい。また、導電粒子24の粒度分布のピークは、1つであっても複数であってもよい。導電粒子24として、例えば、100nm以下の金属微粒子を用いてもよい。ナノサイズの導電粒子24として金属微粒子を用いると、低温で融着させることができる。このため、ナノサイズの金属微粒子を用いることにより、導電粒子24間の接触を金属結合とし、低抵抗化を図ることができる。
【0050】
高密度配線化を図るには、配線間を狭ピッチ化することが有効である。そのためには、導電性樹脂23の導電粒子24が、粒子径100nm程度以下の金属微粒子を少なくとも部分的に含有する導電性ペースト又は導電性インクを原料として用いることが好ましい。なお、導電粒子24として、金属以外に導電性カーボン粒子、導電性カーボンファイバーを用いることもできる。
【0051】
導電性樹脂23を構成するバインダー樹脂についても、特に限定はされない。好適な一例として、エポキシ、アクリル、フェノール、シリコーン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドのいずれか1つ、或いは複数の組合せを挙げることができる。
【0052】
上記特許文献2においては、導電性樹脂23の印刷により配線を形成する際、導電性樹脂のダレや滲みにより、所望の配線幅よりも太くなったり、配線形状が崩れたりする問題があった。一方、本実施形態3によれば、導電性樹脂23の溶剤、及び樹脂が空隙4に適度に吸収され、浸透部6を形成する。これにより、配線が横に広がって太くなったり、配線形状が崩れたりすることを抑制できる。従って、本実施形態3によれば、特に狭ピッチの配線形成に有利である。
【0053】
また、通常のメッキビアや貫通ビアを用いた多層配線基板では、絶縁層表面にランドを形成するため、ビア及びランドの比較的大きな凹凸により導電性樹脂の印刷性が悪化し、最悪の場合には、段差部で配線切れを起こす可能性があった。一方、本実施形態3によれば、絶縁層10の表面に大きな段差が無く、凹凸による配線切れを抑制することができる。
【0054】
また、絶縁層10の絶縁性領域41に空隙4が存在するため、アンカー効果により表面に形成する配線の密着性を向上させることができる。特に、本実施形態3のように、配線を導電性樹脂により形成する場合には、ダレ、滲みによる配線の太り、形状崩れを抑制することができる。加えて、絶縁層10に空隙4が存在するために低誘電率となり、配線の信号特性を向上させることができる。これらの効果により、安価で信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【0055】
[実施形態4]
図5に、本実施形態4に係る電子部品50bの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態4に係る電子部品50bは、基板30上に形成された基板上配線25と、第1配線21b、絶縁層10を備える。基板上配線25と第1配線21bの材料は、導電性樹脂により形成されている。
【0056】
基板上配線25と第1配線21bは、層間導電路5により電気的に接続されている。なお、第1配線21bと基板上配線25は、通常のメッキ配線等により構成してもよいことは言うまでもない。
【0057】
以下、本実施形態4に係る絶縁層10の製造方法の一例について、図6A〜図6Eの製造工程断面図を用いつつ説明する。なお、絶縁層10の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の方法を採用することができる。
【0058】
まず、基板30の上に基板上配線25等を形成する。そして、基板30及び基板上配線25の表面に、導電性粒子3を含む未硬化樹脂層11bを形成する(図6A参照)。絶縁性樹脂2は、液状の場合にはスピンコータやバーコータ等により、フィルムタイプの場合には、熱圧着などにより基板30表面に形成することができる。なお、未硬化樹脂層11bは、その名称の如く、絶縁性樹脂2が硬化されていないものとする。
【0059】
次に、未硬化樹脂層11bを硬化することにより、硬化樹脂層12bを得る(図6B)。硬化手段、硬化方法等は、上記実施形態1で述べたとおりである。硬化処理後の硬化樹脂層12bは、導電性膜となる。
【0060】
続いて、層間導電路5を形成したい所望の位置の硬化樹脂層12bの表側主面10Aにレジスト7bを形成する(図6C参照)。その後、硬化樹脂層12をエッチング処理することにより、レジスト7bで保護されていない領域の導電性粒子3を実質的に除去する。換言すると、層間導電路5以外の部分の導電性粒子3が形成されていた個所に空隙4が形成される(図6D参照)。その後、レジスト7bを剥離する。これらの工程を経て、図5に示すような電子部品50bが完成する。
【0061】
電子部品50bによれば、簡便に層間導電路5を有する絶縁層10と接続する配線等の導電層を有する構造を提供することができる。また、予め用意した基板30上に絶縁層10を積層する構造であるため、基板30の剛性を絶縁層10よりも高いものとすることが容易となる。絶縁層10よりも基板30を高剛性とすることで、空隙からなる空隙4の膜強度低下を補うことができる。同様の観点から、ニーズに応じた材料の選定が可能となるという優れたメリットを有する。
【0062】
また、基板30をコアとして、空隙を含む低弾性な絶縁層10を積層する構造であるため、絶縁層10の熱膨張時に発生する応力を基板30で吸収することができ、電子部品50bの反りを抑制することができる。
【0063】
また、絶縁層10の絶縁性領域41に空隙4が存在するため、アンカー効果により表面に形成する配線の密着性を向上させることができる。特に、本実施形態4のように、配線を導電性樹脂により形成する場合には、ダレ、滲みによる配線の太り、形状崩れを抑制することができる。加えて、絶縁層10に空隙4が存在するために低誘電率となり、配線の信号特性を向上させることができる。これらの効果により、安価で信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【0064】
[実施形態5]
図7に、本実施形態5に係る電子部品50cの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態5に係る電子部品50cは、多層配線構造を有する。具体的には、3層の絶縁層10とこれらの表面、及び間隙に形成された配線を有する。
【0065】
電子部品50cは、図3に示すような絶縁層10の主面に第1配線21、第2配線22が形成されたものを1つ用意する。また、絶縁層10の表側主面10Aに第1配線21を設けたものを2つ用意する。そして、これらを積層し、例えば、熱圧着により一体化する。熱圧着の際、配線部の凸部によりその周辺近傍の絶縁性樹脂2が押圧されることにより空隙4がつぶれる可能性がある。しかしながら、この工程では、既に絶縁性樹脂2は硬化されているので、特性上の大きな影響はない。
【0066】
なお、本実施形態5においては、絶縁層10を3層積層する例について述べたが、一例であって、積層数は任意であることは言うまでもない。また、上記例に代えて、上記図3に示すような絶縁層10の両主面に配線を形成したものを複数層、積層することにより多層配線構造を製造してもよい。
【0067】
本実施形態5によれば、簡便に層間導電路を有する多層配線構造を提供することができる。また、絶縁層10の絶縁性領域分に空隙4が存在するため、アンカー効果により表面に形成する配線の密着性を向上させることができる。加えて、絶縁層10に空隙4が存在するために低誘電率となり、配線の信号特性が向上する。これらの効果により、安価で信頼性の高い電子部品を提供することが可能となる。
【0068】
[実施形態6]
図8に、本実施形態6に係る電子部品50dの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態6に係る電子部品50dは、以下の点を除く基本的な構成は上記実施形態5と同様である。すなわち、上記実施形態5においては、多層配線構造体を熱圧着により形成していたのに対し、本実施形態6においては、接着材を用いて、多層配線構造体を形成している点において相違する。
【0069】
隣接する絶縁層10間の導電層が配設されていない領域には、接着材31を配設する。接着材31の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。絶縁層10の表面に配線を形成した後、予め接着材31を形成しておき、積層段階において、紫外線照射や加熱処理等により接着性を誘起させるようにしてもよい。
【0070】
本実施形態6によれば、上記実施形態5と同様の効果を得ることができる。
[実施形態7]
図9に、本実施形態7に係る電子部品50eの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。
本実施形態7に係る電子部品50eは、絶縁層10、LSIチップ32、UBM(Under Bump Metallization)33、回路保護層34等を備える。
【0071】
UBM33は、LSIチップ32の素子形成面に形成された電極(不図示)上に配設されている。
【0072】
回路保護層34は、LSIチップ32の素子形成面上に、例えば、8μm程度の厚みで形成されている。回路保護層34の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリイミドなどにより形成されている。
【0073】
絶縁層10は、UBM33及び回路保護層34の上に配設される。絶縁層10の積層方法は、特に限定されないが、例えば、回路保護層34上に接着材(不図示)を形成して圧着することにより行う。接着材を用いずに、絶縁層10を回路保護層34及びUBM33の上に熱圧着により積層してもよい。圧着工程により、層間導電路5の導電性粒子3及び絶縁性樹脂2がUBM33の内部空間に入り込む(図9参照)。上記構成により、LSIチップ32の素子形成面に設けられた電極(不図示)と、層間導電路5がUBM33を介して電気的に接続される。
【0074】
本実施形態7によれば、空隙からなる空隙4を含む絶縁性樹脂2からなる絶縁層10を介する構造を採用しているので、LSIチップ32を基板(不図示)上に実装した場合に、LSIチップ32表面に掛かる応力を緩和することができる。
【0075】
[実施形態8]
図10に、本実施形態8に係る電子部品50fの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態8に係る電子部品50fは、絶縁層10、LSIチップ32、UBM33、回路保護層34、パッド35、はんだ36等を備える。
【0076】
パッド35は、層間導電路5の上面に形成されている。はんだ36は、パッド35上に形成されている。このような構成により、LSIチップ32の素子形成面に形成された電極(不図示)とはんだ36が電気的に接続される。絶縁層10は、これらの電気的接続を仲介すると同時に応力緩和層として機能する。
【0077】
本実施形態8によれば、LSIチップ32とはんだ36との間に絶縁層10を設けることにより、これらのクリアランスを取ることができる。また、空隙からなる空隙4を含む絶縁性樹脂2からなる絶縁層10を介する構造を採用しているので、LSIチップ32を基板(不図示)上に実装した場合に、LSIチップ32表面に掛かる応力を緩和することができる。
【0078】
[実施形態9]
図11に、本実施形態9に係る電子部品50gの一例を部分拡大した模式的断面図を示す。本実施形態9に係る電子部品50gは、絶縁層10、LSIチップ32、UBM33、回路保護層34、第1配線21f等を備える。第1配線21fは、導電性樹脂層により形成する。
【0079】
本実施形態9によれば、LSIチップ32の上面に形成された第1配線21fの他端に、LSIチップ32の電極(不図示)ピッチよりも広いピッチのパッド(不図示)を形成することにより、LSIチップ32の基板(不図示)への実装性を向上させることができる。
【0080】
また、LSIチップ32と第1配線21fとのクリアランスを取ることができる。また、空隙からなる空隙4を含む絶縁性樹脂2を介する構造を採用しているので、LSIチップ32を基板(不図示)上に実装した場合に、LSIチップ32に掛かる応力を緩和することができる。また、空隙4によるアンカー効果により、絶縁層10の表面に形成する配線の密着性を向上させることができる。さらに、導電性樹脂から配線を形成する場合には、ダレ、滲みによる配線の太り、形状崩れを抑制することができる。さらに、絶縁性領域41(図1参照)が、低誘電率となり、配線の信号特性を向上させることができる。これらの効果により、安価で信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【0081】
なお、絶縁層10及び導電層は、1層である必要はなく、複数層設けることができる。また、第1配線層21fを導電性樹脂層により形成した例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、メッキ配線としてもよい。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得る。本発明に係る絶縁層は、上記実施形態の構造例、用途例に限定されるものではなく、種々の構造、用途に制限なく用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
2 絶縁性樹脂
3 導電性粒子
4 空隙
5 層間導電路
7 レジスト
10 絶縁層
11 未硬化樹脂層
12 硬化樹脂層
21 第1配線
22 第2配線
23 導電性樹脂層
24 導電粒子
25 基板上配線
30 基板
31 接着材
32 LSIチップ
33 UBM
34 回路保護層
35 パッド
36 はんだ
40 導電性領域
41 絶縁性領域
50 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両主面を電気的に接続する導電性領域と、前記表裏両主面を電気的に絶縁する絶縁性領域とを備え、
前記導電性領域は、絶縁性樹脂中に含有する導電性粒子を接触、若しくは融着させることによって形成され、
前記絶縁性領域は、前記絶縁性樹脂中に複数の空隙が形成されている、
導電性領域を有する絶縁層。
【請求項2】
前記空隙は、前記絶縁性樹脂中に含有する前記導電性粒子を実質的に除去することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性領域を有する絶縁層。
【請求項3】
前記導電性粒子の径が、実質的に5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
絶縁性樹脂中に、表裏両主面間を電気的に接続する導電性領域を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記表裏両主面のうちの少なくとも一方に形成され、前記導電性領域と接続された導電層と
を備え、
前記絶縁層中の導電性領域は、絶縁性樹脂中に含有する導電性粒子を接触、若しくは融着させることによって形成された領域であり、
前記絶縁層中の導電性領域以外には、複数の空隙が形成されている電子部品。
【請求項5】
前記絶縁層と前記導電層が、膜厚方向に複数積層されていることを特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記絶縁層と前記導電層は、基板の少なくとも一主面上に配設されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記導電性粒子の径が、5μm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
導電性領域を有する絶縁層の製造方法であって、
導電性粒子が分散された未硬化の絶縁性樹脂層を用意し、
前記絶縁性樹脂層を硬化することによって、前記導電性粒子を接触、若しくは融着させて当該絶縁性樹脂層に導電性を付与し、
導電性領域を形成したい領域以外について、実質的に前記導電性粒子を除去する導電性領域を有する絶縁層の製造方法。
【請求項9】
前記導電性粒子を除去する工程は、前記導電性領域にエッチングレジストを形成し、その後、エッチング処理を実施することによって行うことを特徴とする請求項8に記載の導電性領域を有する絶縁層の製造方法。
【請求項10】
導電性領域を有する絶縁層を備える電子部品の製造方法であって、
導電性粒子が分散された未硬化の絶縁性樹脂層を用意し、
前記絶縁性樹脂層を硬化することによって、前記導電性粒子を接触、若しくは融着させて当該絶縁性樹脂層に導電性を付与し、
前記導電性領域を形成したい領域以外について、実質的に前記導電性粒子を除去することにより絶縁性領域を得、
前記絶縁層の少なくとも片側主面上に、前記導電性領域と電気的に接続する導電層を配設する電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層、及び前記導電層を複数積層することを特徴とする請求項10に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記導電層は、メッキ処理、若しくは、導電性樹脂の印刷にて形成することを特徴とする請求項10又は11に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【公開番号】特開2011−82203(P2011−82203A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230679(P2009−230679)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】