説明

小型セルのための銀含有層を有する多層正極構造

銀含有アルカリ電気化学セル及びセルを生成する方法を提供する。銀含有アルカリ電気化学セル(10)及びセルを生成する方法において、セルは、負極(40)、正極(20)、電極間に配置されたセパレータ(30)、及びアルカリ電解質を含み、正極は、銀含有酸化物層(22)と、セパレータ及び負極への銀イオンの移動を実質的に軽減するために銀含有酸化物層とセパレータの間に配置された最初は銀含有物質を含まない障壁層(24)とを含む多層複合体として形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀含有アルカリ電気化学セル及びセルを生成する方法に関し、セルは、負極、正極、電極間に配置されたセパレータ、及びアルカリ電解質を含み、正極は、銀含有酸化物層と、セパレータ及び負極への銀イオンの移動を軽減するために銀含有酸化物層とセパレータの間に配置された最初は銀含有物質を含まない障壁層とを含む多層複合体として形成される。
【背景技術】
【0002】
銀酸化物のような金属酸化物を含む正極を有するアルカリセルのような電気化学セルは、電気エネルギ源として一般的に用いられる。このバッテリは、カメラ、ラジオ、玩具、ゲーム、補聴器、インシュリンポンプのような医療器具、腕時計、プリンタ、及び計算機などのような多くの携帯用電子装置のための1次電源である。
【0003】
金属酸化物を含有するセルは、通常は、放電中の良好な電圧安定性が知られている。しかし、貯蔵中に、特に高温において、セルロース系材料のようなセパレータ層は、銀イオンが活物質により還元されて金属粒子として表面上に堆積する可能性があるセパレータへ並びに負極へ移動する例えば正極からの銀イオンのような金属イオンにより攻撃されて劣化又は破壊される可能性があることが見出されている。負極は、酸化され、それによってセルの全容量を低減する可能性がある自己放電を行う可能性がある。セパレータの劣化と戦うために、利用されている1つの構成は、ポリエチレン及びセロファンのような多層劣化耐性セパレータであった。しかし、そのようなセパレータは、比較的高価である可能性があり、かつセルに収容することができる活物質の量を低減するある一定の容積を更に有する可能性がある。
【0004】
様々な層状又は複合材料を含む正極が当業技術で開示されている。
【0005】
米国特許第3、630、780号は、重量で10から40パーセントの粉状銀酸化物と60から90パーセントの粉状ニッケルとの混合物を圧縮し、生じた圧縮層を好ましくは銅又は銀の担持構造体上に一般的に約100℃から約300℃である銀酸化物の解離温度未満のホットプレス温度における酸化又は不活性雰囲気中で約0.5から約1.4t/cm2の圧力で強く押圧することによって生成された、バッテリ、特に、報告によれば高い一時的電流出力を送出することができる1次バッテリのための銀酸化物電極に関する。
【0006】
米国特許第4、038、467号は、負亜鉛電極及びAgOの正極を有するガルバニ電池に関し、AgOは、AG2Oに表面還元されて、多孔質銀層によってのみ接続が行われる電流取出部から絶縁される。
【0007】
米国特許第4、172、183号は、広い粒度範囲を有する6−16%のグラファイト粉末が導電性添加剤として付加された電解質γ−二酸化マンガンの負極に向いた上層を有する正極を含むアルカリ1次セルに関する。この上層の下に配置されているのは、下層よりも高い見掛け比重を有するγ−二酸化マンガン、水銀酸化物、又は一価銀酸化物を含有する少なくとも1つの更に別の層である。少なくとも1つの膜層を含むセパレータが、正極の上方に置かれる。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0058903号は、1つ又はそれよりも多くの金属及び五価ビスマスを含有する酸化物を有するカソード、アノード、カソードとアノードの間のセパレータ、並びにアルカリ電解質を含むバッテリに関する。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、及び/又は主族金属とすることができる。セパレータは、報告によればイオン選択性とすることができ、又は可溶性ビスマスイオン種がカソードからアノードへ実質的に拡散しないようにすることができる。
【0009】
日本特許出願公開第56−06378号は、3次元ネットワークの多孔質ニッケル材料と銀などの多孔質材料とを含み、かつ二価銀酸化物から主に構成された正極と正極ケースの間の電流コレクタとして特定の構造を有する部材を用いることによりセルの放電率及び貯蔵能を報告によれば改良することに関する。
【0010】
日本特許出願公開第56−015561号は、グラファイトを銀酸化物の代用としてのニッケルオキシ水酸化物と混合することにより、報告によれば高放電電圧及び低コストを長期間維持するバッテリの取得に関する。
【0011】
日本特許出願公開第58−163151号は、粒状形態で銀酸化物の表面上に形成されたグラファイト上の二酸化マンガンで作られた付加された層から正極ブラックミックスを構成することにより報告によれば重負荷の放電特性を改良することに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3、630、780号
【特許文献2】米国特許第4、038、467号
【特許文献3】米国特許第4、172、183号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0058903号
【特許文献5】日本特許出願公開第56−06378号
【特許文献6】日本特許出願公開第56−015561号
【特許文献7】日本特許出願公開第58−163151号
【特許文献8】米国特許第6、602、629号
【特許文献9】米国特許第5、464、709号
【特許文献10】米国特許第5、312、476号
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0106461号A1
【特許文献12】米国特許第6、256、853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、放電中に良好な電圧安定性及び高作動電圧を有する銀含有酸化物を含む電気化学セルを提供することが本発明の目的である。
【0014】
本発明の更に別の目的は、良好な貯蔵寿命を示す銀酸化物及び銀ニッケル酸化物のような銀含有酸化物を含むセルを提供することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、セパレータ及び負極への銀イオン移動を抑制するセル構成を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、銀含有酸化物及び少なくとも1つの他の高価でない活物質を含む正極を有するセルを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、比較的廉価なセパレータを利用することを可能にするセル構成を提供することである。
【0018】
更に別の目的は、比較的薄いセパレータを利用し、それによってより大量の活物質をセル内に収容することを可能にするセルを提供することである。
【0019】
更に別の目的は、電極ペレットのような複数の層を有する正極を生成し、セル内に挿入する前にその電極の表面が識別可能であり、それによってセルケーシング内の電極の設置を助けるような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの態様では、水性アルカリ電解質、負のケーシングと電気接触した負極、正のケーシングと電気接触した正極、負のケーシングと正のケーシングの間に配置された絶縁ガスケット、及び負極と正極の間に配置されたセパレータを含む1次電気化学セルを開示する。正極は、正のケーシングと電気接触して1つ又はそれよりも多くの銀含有酸化物を含む第1の層を含み、正極は、第1の層とセパレータの間で第1の層上に配置された1つ又はそれよりも多くの障壁層を含み、1つ又はそれよりも多くの障壁層の少なくとも1つは、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くを含み、第1の層に隣接した障壁層は、電解質の存在下で第1の層に対して実質的に非反応性である。
【0021】
本発明の第2の態様では、水性アルカリ電解質、負のケーシングと電気接触した負極、正のケーシングと電気接触した正極、負のケーシングと正のケーシングの間に配置された絶縁ガスケット、及び負極と正極の間に配置されたセパレータを含む1次電気化学セルを開示する。正極は、正のケーシングと電気接触し、銀ニッケル酸化物を含み、かつ唯一の金属として銀を含有する銀含有酸化物化合物を含まない第1の層を含む。正極はまた、第1の層とセパレータの間で第1の層上に配置され、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料の少なくとも一方を含み、かつ銀含有酸化物を含まない単一障壁層を含む。
【0022】
本発明の第3の態様では、水性アルカリ電解質、負のケーシングと電気接触した負極、正のケーシングと電気接触した正極、負のケーシングと正のケーシングの間に配置された絶縁ガスケット、及び負極と正極の間に配置されたセパレータを含む1次電気化学セルを開示する。正極は、正のケーシングと電気接触して銀含有酸化物を含む第1の層を含む。正極はまた、第1の層とセパレータの間に配置された2つ又はそれよりも多くの障壁層と、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの少なくとも一方を含み、かつ銀含有酸化物を含まないセパレータに隣接した1つの障壁層と、電解質の存在下で全ての隣接する正極層に対して実質的に非反応性である、第1の層とセパレータに隣接した障壁層との間の少なくとも1つの中間障壁層とを含む。
【0023】
本発明の別の態様では、1つ又はそれよりも多くの銀含有酸化物を含む正極に対して第1の層を準備する段階と、第1の層の表面に1つ又はそれよりも多くの障壁層を設ける段階と、正極及び負極間にセパレータを置き、1つ又はそれよりも多くの障壁層を正極の第1の層とセパレータとの間に配置して、正極、負極、及び水性アルカリ電解質を組み合わせる段階とを含み、1つ又はそれよりも多くの障壁層のうちの少なくとも1つが、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くを含み、第1の層に隣接した障壁層が、電解質の存在下で第1の層に対して実質的に非反応性である、電気化学セルを調製する方法を開示する。
【0024】
本明細書で用いられる場合、別の正極層に対して実質的に非反応性である障壁層とは、室温で1年間当たり活物質の放電容量の約5パーセントよりも多い損失をもたらすほど十分に高い速度でセル電解質の存在下で隣接する第1の層における電極材料のいずれかと反応すると考えられる活物質を含まない障壁層である。
【0025】
本発明は、図面と共に本発明の詳細説明を読むことにより一層良く理解され、かつ他の特徴及び利点も明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】正極が2つの層を有するように示す本発明の電気化学セルの一実施形態の断面立面図である。
【図2】正極が3つの層を有するように示す本発明の電気化学セルの更に別の実施形態に対する断面立面図である。
【図3】露出面を有する層に変色指示薬を含む正極ペレットの一実施形態の断面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、正極及び正極を含む電気化学セルに関する。本発明は、以下に限定されるものではないが、ボタン型セルのような円形セル、平面セル、及びプリズムセルのような全てのタイプのケーシング構造に適用可能であるが、以下の説明は、ボタン型セルに対して説明される。ボタン型セルは、ほぼ円筒形であり、これらの全長よりも大きい最大直径を有する。平面セル又はプリズムセルは、典型的には、限定はしないが、矩形であり、正方形としてセルの幅と実質的に等しい長さを有することができ、又はそうでなければ非円形とすることができる。好ましいセル型は、負極活物質として亜鉛及び正極活物質として少なくとも1つの銀含有酸化物を含有するアルカリセルを含む。
【0028】
ボタン型セル10の一実施形態は、図1に示されている。セル10は、正極ケーシング12、負極ケーシング14、及びケーシング12、14間に配置された絶縁材料を含むガスケット16を含む。正極20及び負極40は、セル10内に収容されてセパレータ30により分離される。
【0029】
正のケーシング12は、一般的には金属であり、1つ又はそれよりも多くの同じか又は異なる金属の層で形成することができ、その例は、以下に限定されるものではないが、ニッケル、ニッケルメッキを付加した冷延鋼板、ステンレス鋼、及びニッケルメッキを付加したステンレス鋼を含み、ニッケルメッキを付加した冷延鋼板が好ましい。
【0030】
正極20は、正極ケーシング12と電気接触し、セル10’の正極20’に対して図1に示す2層構成22、24と、図2に示す3層構成22、24、26とを有する2つ又はそれよりも多くの層を含む。正極20の第1の層22は、正のケーシング12の基部に向いており、障壁層24を第1の層22とセパレータ30の間に配置して、好ましくは、直接に正のケーシング12と電気的に接続される。3層構成では、中間障壁層26が、第1の層22と障壁層24の間に配置される。3つよりも多くの層を有する構成では、第1の層22と障壁層24の間に1つよりも多くの中間障壁層がある。
【0031】
セパレータ30から正極障壁層によって分離された第1の層22又はあらゆる他の層は、活物質として1つ又はそれよりも多くの銀含有酸化物を含むことができる。銀含有酸化物は、一般的には化学式AgXy2を有し、Mは、以下に限定されるものではないが、ニッケル、銅、鉄、クロム、及びコバルトのような1つ又はそれよりも多くの金属であり、ニッケルが好ましく、xは、ゼロよりも大きいものから4まで、及び好ましくは、1から3であり、yは、ゼロから4であるが4は含まず、及び好ましくは、1から3である。好ましい実施形態では、銀含有酸化物は、銀酸化物(AgO、Ag2O、及び/又はyがゼロである他の銀酸化物)及び銀ニッケル酸化物のうちの1つ又はそれよりも多くであり、Mは、ニッケルを含み、yはゼロよりも大きい。銀含有酸化物は、銀含有酸化物層22の電解質に不溶性の固体の乾燥重量の総重量、すなわち、100重量パーセントに基づいて、約40から97.9重量パーセント、及び好ましくは、約85から約94重量パーセントの量で第1の層22中に存在する。一実施形態では、Ag2O対AgNiO2の重量比は、約96:4であり、銀含有酸化物層22は、AgNiO2がAg2Oよりも導電性であるので非活性導電材料を含有しない。一価銀酸化物(Ag2O)は、米国ニューヨーク州グレンズ・フォールズ所在のエイムズ・ゴールドスミス・コーポレーションから入手可能である。銀ニッケル酸化物(AgNiO2)は、日本東京所在の同和金属鉱業株式会社から入手可能である。
【0032】
第1の層22は、任意的に、二酸化マンガン、ニッケルオキシ水酸化物、ニッケルオキシ水酸化物含有材料、及び銅酸化物(例えば、Cu2O又は好ましくはCuO)のような1つ又はそれよりも多くの他の活物質を含む。二酸化マンガンは、約0から約50重量パーセント、及び好ましくは、約0から約30重量パーセントの量で存在する。二酸化マンガンは、日本東京所在の東ソー・コーポレーションから入手可能なもののような電解質性二酸化マンガンとすることができる。アルカリ電解質の存在下で銀酸化物に対して各々反応性であるニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くは、約40重量パーセントまでの総量で存在する場合があり、好ましくは、第1の層には存在しない。ニッケルオキシ水酸化物は、日本福井所在のタナカ・ケミカル・コーポレーションから入手可能である。γ及びβ等級ニッケルオキシ水酸化物は、本発明で用いるのに適切である。ニッケルオキシ水酸化物及び銀ニッケル酸化物のうちの1つ又はそれよりも多くのような球状物質粒子は、本発明の一実施形態の正極で用いられて、充填密度を低下させる。好ましい実施形態では、第1の層22に直接に隣接した障壁又は中間障壁層は、セル内で利用する電解質の存在下で銀含有物質と反応性である活物質を含まないか又は実質的に含まない。
【0033】
銀含有酸化物が比較的不良導体であるので、第1の層は、一般的には、約2から約10重量パーセント、及び好ましくは、約2から6重量パーセントの量でグラファイト、カーボンブラック、及びアセチレンブラックのうちの1つ又はそれよりも多くのような導電材料を含むことが好ましい。適切なグラファイトは、米国カリフォルニア州バレンシア所在のSGL・テクニック・インコーポレーテッドから入手可能である。結合剤も、第1の層22で利用することができ、かつ一般的には、約0.1から3重量パーセント、及び好ましくは、0.5から1重量パーセントの量で存在することができる。結合剤を追加して、層の個々の粒子間の接着を促進することなどにより、層の構造一体性が高まる。結合剤材料の例は、米国ニュージャージー州ソロフェアー所在のソルベイ・ソレクシスからのPOLYMIST(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を含む。
【0034】
正極の1つ又はそれよりも多くの障壁層は、第1の層22とセパレータ30の間に配置される。本発明の重要な態様では、セパレータ30に直接に隣接して配置された少なくとも障壁層24は、銀含有物質を含まない。上述のように、水酸化カリウムのようなアルカリ電解質の存在下で銀含有物質の銀は水溶性であり、銀イオンが、セパレータ及びセルの負極側へ移動することができることは、従来技術のセル構成において公知である。銀イオンは、ある一定のセパレータを攻撃して劣化又は破壊し、それによってセル寿命を縮める可能性がある。更に、銀イオンは、これらが、亜鉛のような活物質により化学的に還元されて、金属粒子としてその表面に堆積される負極に拡散することができ、かつ負極は、酸化される可能性があるので、セルは、それによってセルの全容量を低下させる可能性がある自己放電を受ける。負極活物質上に形成された金属粒子は、負極活物質の表面からカソードに向って外向きに成長し、セパレータを貫通することができる樹枝状結晶を堆積させて形成することができ、かつセル中に内部短絡をもたらすことができる。その結果、移動可能銀イオンを有するアルカリセルの在庫保存期間は、特に、高温における貯蔵中に大きく低下する可能性がある。セパレータ及びセルの負極側への銀イオン移動は、セルが、銀含有物質を含まない障壁層24を有するセパレータ30に隣接した障壁層24を含んでいる時に著しく軽減される。
【0035】
障壁層24又は複数の障壁層24及び26は、正極20の一部であり、セルセパレータ30とは明確に異なっている。各障壁層は、活物質及び導電材料のうちの1つ又はそれよりも多くを含む。1つ又はそれよりも多くの障壁及び中間障壁層24及び26のうちの少なくとも1つは、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料(すなわち、ニッケルの一部分が、別の金属で置換された置換ニッケルオキシ水酸化化合物)のうちの1つ又はそれよりも多くを含む。ニッケルオキシ水酸化物は、それがアルカリ電解質中で不溶性であり、二酸化マンガンに比較して放電時に比較的均一な電圧を維持し、銀酸化物に比較して廉価であるので望ましい。ニッケルオキシ水酸化物も、電解質の溶液中の銀イオンに対してスカベンジャーとして作用することができる。
【0036】
障壁及び中間障壁層24及び26は、独立に、好ましくは障壁層24を通る銀イオンの移動を阻止するか又は減速させるセパレータに隣接した障壁層24の機能に実質的に影響を与えない結合剤、導電材料、変色指示薬などのような1つ又はそれよりも多くの他の成分を含めることに対しても自由である。各障壁及び中間障壁層24及び26に適切な活物質は、独立に、以下に限定されるものではないが、二酸化マンガン及び銅酸化物、ニッケルオキシ水酸化物、並びにニッケルオキシ水酸化物含有材料のような金属酸化物を含む。第1の層22について上述した導電材料及び結合剤も、障壁及び中間障壁層24及び26で用いるのに適切である。障壁及び中間障壁層24及び26に活物質が利用され、直接に隣接する層における物質に対してアルカリ電解質の存在下で非反応性であることが望ましい。上述のように、ニッケルオキシ水酸化物は、アルカリ電解質の存在下で銀酸化物と反応性である。従って、そのような活物質は、正極の層状構成で同じ層又は互いに隣接した層のいずれの中にもないことが望ましい。
【0037】
図1に示すようなセパレータ30と第1の層22との間に配置された単一障壁層24に対する例示的な実施形態は、以下の通りである。一実施形態では、第1の層22は、活物質銀ニッケル酸化物を含む。障壁層24が設けられ、これは、ニッケルオキシ水酸化物又はニッケルオキシ水酸化物含有材料のような活物質を含有する。好ましくは、導電材料、より好ましくは、結合剤は、第1の層22及び障壁層24の両方の中に存在する。第1の層22における銀ニッケル酸化物と、障壁層24におけるニッケルオキシ水酸化物との組合せは、ニッケルオキシ水酸化物が、銀ニッケル酸化物に対して実質的に非反応性であるので、単一障壁層を有する実施形態に好ましい組合せである。
【0038】
銀ニッケル酸化物は、第1の層22の電解質に不溶性の固体の乾燥重量の総重量に基づいて、約40から約97.9重量パーセント、及び好ましくは、約80から97.9重量パーセントの量で第1の層22中に存在する。第1の層22は、任意的に、0から約50重量パーセント、及び好ましくは、0から約30重量パーセントの量で二酸化マンガンを含むことができる。ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くは、任意的に、10重量パーセント未満の総量で存在することができ、好ましくは、第1の層22中には存在しない。導電材料は、約2から約10重量パーセント、及び好ましくは、約2から約6重量パーセントの量で存在する。結合剤は、約0.1から約3重量パーセント、及び好ましくは、約0.5から約1重量パーセントの量で存在する。第1の層22上に配置されてセパレータ層30に隣接した障壁層24は、一実施形態では、0から約27.9重量パーセント、好ましくは、10重量パーセント未満の量の二酸化マンガンと、総量で約70から約97.9重量パーセント、及び好ましくは、約80から約96重量パーセントのニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くと、約2から約10重量パーセント、及び好ましくは、約2から約6重量パーセントの量の導電材料と、約0.1から約3重量パーセント、及び好ましくは、約0.5から約1重量パーセントの量の結合剤とを含む。二層構成の好ましい実施形態では、第1の層22対障壁層24の重量比は、好ましくは、約0.2:1から約0.9:1である。
【0039】
2つの障壁層24及び26を含む3つの層の正極20の一実施形態は、図2に示されている。好ましい実施形態では、第1の層22は、上述のような銀酸化物含有層である。第1の層22上に配置された中間障壁層26は、一般的には、約70から約97.9重量パーセント、及び好ましくは、約90から約96重量パーセントの量の二酸化マンガンと、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くを総量で5重量パーセント未満で含み、好ましくはニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料を含まず、更に、約2から約10重量パーセント、及び好ましくは、約2から約6重量パーセントの量の導電材料と、0.1から約3重量パーセント、及び好ましくは、0.5から1重量パーセントの量の結合剤とを含む。中間障壁層26上に配置されてセパレータ層30に隣接した障壁層24は、一般的には、0から約27.9重量パーセント、好ましくは、10重量パーセント未満の量の二酸化マンガンと、総量で約70から約97.9重量パーセント、好ましくは、80から96重量パーセントのニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くと、約2から約10重量パーセント、好ましくは、約2から約6重量パーセントの量の導電材料と、約0.1から約3重量パーセント、及び好ましくは、約0.5から約1重量パーセントの量の結合剤とを含む。この実施形態では、障壁層24及び26の両方は、銀含有物質を含まない。二酸化マンガンの利点は、銀酸化物の存在下でアルカリ電解質中のその安定性及び銀酸化物と比較したその低費用を含む。好ましくは、中間障壁層26は、中間障壁層26が銀酸化物含有第1の層22をニッケルオキシ水酸化物障壁層22から分離して銀酸化物とニッケルオキシ水酸化物の反応を実質的に阻止するように、二酸化マンガンを含有し、ニッケルオキシ水酸化物もニッケルオキシ水酸化物含有材料も含有しない。代替的な実施形態では、中間障壁層26は、障壁層24及び第1の層22(例えば、それぞれNiOOH及びAg2O)における活物質に対して実質的に非反応性である導電材料を含有する。
【0040】
第1の層22及び障壁層24は、一般的には、正極の総重量に基づいて約20から約95重量パーセント、及び好ましくは、約70から約85重量パーセントの量で存在し、残りの重量パーセントは、1つ又はそれよりも多くの中間障壁層26である。第1の層22対障壁層24の重量比は、好ましくは、約0.2:1から10:1である。
【0041】
変色指示薬は、一実施形態では、例えば、正極20の側面又は表面の識別に役立つように正極20の1つ又はそれよりも多くの層、好ましくは、表面層に含めることができる。変色指示薬は、好ましくは指示薬を付加する層の成分に対して非反応性の色素、染料、又は他の着色剤のようなあらゆる適切な成分とすることができる。以下に説明するような好ましい実施形態では、正極20’’は、図3に示すような多層ペレットに形成されて、図示のような障壁層24のような表面層内の変色指示薬28の存在は、正極ケーシング12内のペレットの設置を助けることができる。変色指示薬は、1つ又はそれよりも多くの周囲条件又は紫外線などの下で見ることができ、かつ裸眼又は適切な検出器で見ることができる。適切な変色指示薬の例は、ベルギーのルーベン所在のキャボット・コーポレーションから入手可能な白色及び青色色素の配合物を含有するポリスチレンベースのマスターバッチ、「PLASWITE(登録商標)PS7231」である。
【0042】
本発明の正極20は、一実施形態では、以下のように製作することができる。セパレータ30に隣接して配置される第1の層22又は障壁層24のような電極の表面層の成分は、望ましい成分を混合することにより、好ましくは、分散混合物を得るように形成される。分散混合物は、望ましいサイズのある一定の形態に置かれて、少なくとも部分的に、好ましくは、亀裂を誘導することなく圧密される(例えば、多層電極の最終圧密に用いる力の約5パーセントで)。第1の圧密段階後に、好ましくは、実質的に混合により分散された望ましい成分を含有する付加的な層は、前に圧密した層上の形態に付加されて、別の圧密段階が実施される。その後に、あらゆる付加的な層が、必要に応じて圧密構造に付加される。複合構造は、全ての望ましい層が、必要に応じてそれに付加されて圧密された後に、好ましくは、図3に示すように最後に圧縮され、それによってペレットを形成し、これは、その形態から除去されて適切な正極ケーシング12内に挿入されるか又は置かれるようになっている。銀酸化物の劣化を最小にするために、セルアセンブリにおいて正及び負極を組み合わせる前に、混合及び電極製造中に暗い場所において銀含有物質を乾いた状態に保ってそれを貯蔵することが好ましい。
【0043】
セパレータ30は、正極20と負極40の間にあって、1つ又はそれよりも多くの層のイオン伝導性構造である。セパレータの様々なタイプ及び組合せが、銀含有セルで用いられている。例えば、セパレータシステムは、セロファン及び日本大阪所在の日東電工からのPERMIONのようなグラフトポリエチレンの二層材料のような障壁セパレータと、ポリマー配合物、例えば、米国ウイスコンシン州ニーナ所在のキンバリー−クラークからのS3703を含むことができるセルロイド不織材料のような電解質吸収セパレータとの組合せを含んできた。
【0044】
有利な態様においては、本発明の正極20は、別の正極層を用いてセパレータから銀含有物質を分離することにより、セパレータ30を攻撃する攻撃的銀イオンの機能を低下させて、他のタイプの水性アルカリセルで一般的に用いる比較的廉価な単層セパレータ30を本発明のセル10で利用することを可能にする。単層セパレータ30又は薄い多層セパレータを用いることによって得られる別の利点は、より多くの容量を活物質に対してセルケーシング12及び14内で利用することができることである。適切なセパレータの例は、以下に限定されるものではないが、レーヨン、綿及び木質繊維(例えば、紙)、並びにこれらの組合せのようなセルロースセパレータ材料(織又は不織のいずれか)を含む。好ましいセパレータ材料の例は、ドイツのワインハイム所在のカール・フロインデベルグKGからのFS22824AB等級セパレータ、及び米国マサチューセッツ州イーストウォルポール所在のホリングスワース・アンド・ボースからの「BVA 02530」等級セパレータのようなポリアクリル酸で結合されたレーヨンを含む。ポリエチレン及びポリビニルアセテートのような任意的に表面処理されたポリマーセパレータ材料も利用することができる。そのようなセパレータ材料の使用は、典型的には、従来技術の銀酸化物セルにおいて用いるセパレータに比較して全体の厚みが低減した適切なセパレータを提供することができる。例えば、約0.20mm(0.008インチ)の全体の厚みを有する2つのセパレータ層ではなく、約0.10mm(0.004インチ)及び場合によっては0.025−0.056mm(0.001−0.002インチ)厚ほどの小さな単層セパレータを用いることが可能な場合がある。
【0045】
セル10及び10’は、図1及び2に示すようにセル10及び10’の上部を形成する負極ケーシング14を含む。ケーシング14は、好ましくは、意図する用途に十分な機械的強度を有する材料を含む基板で形成される。負極ケーシング14は、好ましくは、1つ又はそれよりも多くの層の金属である。一実施形態では、負極ケーシング14は、例えば、外部層から内部層まで、ニッケル/ステンレス鋼/銅、錫/ニッケル/ステンレス鋼/銅/錫、ステンレス鋼/銅、錫/ステンレス鋼/銅/錫、又はこれらの変形を含む積層体である。好ましい実施形態では、負極ケーシングは、ニッケル/ステンレス鋼/銅である。適切なケーシングは、米国ロードアイランド洲リンカーン所在のTMI、及び米国イリノイ州ショームバーグ所在のNeomaxから入手可能である。
【0046】
当業技術で公知のように、負極ケーシング14は、負極ケーシング内の開口部又は再折り畳み負極ケーシングを形成する終端を有する直線的な壁で囲まれたアノードケーシングとすることができる。再折り畳み負極ケーシングは、一般的には、その中に開口部を形成する端部において実質的にU字形である円形リムを有し、かつ一般的には、一実施形態では、ケーシング内の開口部が折り畳みリムによって形成されるように、ケーシングの壁の一部分をそれ自体の上に戻して折り畳むことによって形成される。形成されたケーシングには、別の金属又は合金で前及び/又は後メッキを付加し、セル内の水素ガス化を最小にし、及び/又はケーシングの外面の耐食性又は外観を改善することができる。水素ガス化を低減するのに好ましいメッキを付加した金属は、銅、錫、亜鉛、並びにこれらの組合せ及び合金のような高水素過電圧を有する金属である。負極ケーシング14に用いる金属タイプ及び厚みは、ケーシング14がセル組み立て中に印加された力に耐えて良好なシールを維持するのに十分な強度を有するようなものであることになる。
【0047】
電解質溶液は、アルカリバッテリにおいて一般的に用いる電解質溶液のいずれかとすることができる。電解質溶液は、水性アルカリ金属水酸化物溶液、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアルカリ金属水酸化物溶液の混合物、例えば、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの混合物のようなアルカリ溶液とすることができる。一部の実施形態では、電解質溶液は、亜鉛酸化物のような少量の添加剤及びポリエチレングリコールベース成分のようなグリコールを含むことができる。一実施形態では、電解質組成は、水並びに水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム溶質の総量に基づいて、約10重量パーセントの水酸化ナトリウム溶液及び約90重量パーセントの水酸化カリウム溶液の混合物である。
【0048】
負極40は、一般的には、アルカリセル負極で利用するあらゆる亜鉛材料で形成することができる。アノード混合物は、好ましくは、亜鉛金属又は亜鉛合金とすることができる亜鉛粉末を含む。利用する亜鉛は、アマルガムにすることができ、又は非アマルガムにすることもできる。アマルガム亜鉛は、例えば、約3重量パーセントの水銀を含有することができる。非アマルガム亜鉛の例は、本明細書において引用により組み込まれている米国特許第6、602、629号(Guo他)、第5、464、709号(Getz他)、第5、312、476号(ウエムラ)、及び米国特許出願公開第2005/0106461号A1に記載されており、ジンク・コーポレーション・オブ・アメリカ(米国ペンシルベニア州モナカ所在)からの1230等級亜鉛、並びにN.V.Umicore、S.A.(ベルギーのブリュッセル所在)からの等級BIA、「NGBIA 100」、「NGBIA 110」、及び「NGBIA 115」を含む。
【0049】
上述のように、負極混合物も、電解質溶液を含む。更に、1つ又はそれよりも多くのゲル化剤、結合剤、及びガス化防止剤のような添加剤を負極内に含めることができる。適切なゲル化剤又は結合剤の例は、以下に限定されるものではないが、ポリアクリク酸又はそれらの塩、グラフト澱粉物質、ポリアクリレート及びカルボキシメチルセルロースを含む。カルボキシメチルセルロースは、米国デラウエア州ウィルミントン所在のアクアロン・コーポレーションから7H3SFとして入手可能である。ガス化防止剤は、燐酸エステル、イオン性界面活性剤、非イオン性表面活性剤、亜鉛との合金を含むビスマス、錫、鉛又はインジウム、又は酢酸インジウム、水酸化インジウム、硫酸インジウム、酸化ビスマス及び水酸化バリウムのような水溶性化合物のような1つ又はそれよりも多くの有機又は無機材料とすることができる。
【0050】
ガスケット16は、正極ケーシング12と負極ケーシング14の間でシールとして機能を果たす誘電体、好ましくは、ポリマー又はエラストマー材料から作られる。一実施形態では、ガスケットは、ナイロン−6、6で形成される。ガスケット16の下縁は、一般的には、負極ケーシング14のリムに当接するリップを有するように形成される。任意的に、シーラントは、ガスケット、正極ケーシング12、及び/又は負極ケーシング14の密封表面に付加することができる。適切なシーラント材料は、当業者によって認識されるであろう。例には、単独で又はエラストマー材料又はエチレンビニルアセテートを伴ったアスファルト、脂肪族又は脂肪酸ポリアミド、ポリエチレン又はポリプロプレンのようなポリオレフィン、ポリアミド、及びポリイソブチレンが含まれる。
【0051】
セル10又は10’の組み立て中に、正極ケーシング12は、望ましい量の電解質で充填され、正極ペレット20、20’又は20’’は、正極ケーシング12に付加され、銀含有物質を含まない障壁層24は、上方に向いて、セパレータ30に隣接して配置されるようになっている。セパレータ30は、正極ペレット20、20’、又は20’’上に置かれる。ガスケット16は、正極12内に配置される。比較的厚い又はゲル化材料である負極40は、負極ケーシング14がそのリムを下方に向けて正極ケーシングに挿入され、そのリムがガスケット16のリップに対して当接し、かつそれに対して圧縮され、ガスケット16が正極ケーシング12と負極ケーシング14の間に位置し、それによってケーシング12及び14の間にシール及び電気的障壁を形成することができるように、セパレータ30の中心区域に置かれる。
【0052】
圧接、コレット、かしめ、再引き抜き、及び必要に応じてこれらの組合せを含むあらゆる適切な方法を用いて、セルを密封するために内向きにケーシングの縁部を変形することができる。好ましくは、ボタンセルは、より良好なシールが生成される間にセルをダイから容易に除去することができるようにセグメント状ダイで圧接又はコレットによって密封される。本明細書で用いられる場合、セグメント状ダイは、その成形面が、ばらばらに広がって、開口部を拡張することができるセグメントを含むダイであり、閉じているセルがそこに挿入されてそこから除去される。好ましくは、セグメントの一部分は、個々のセグメントが独立して移動し、セルを損傷し、又はその挿入又は除去に干渉することを阻止するために、互いに接合されるか又は保持され、従って、これらは自由に動かない。好ましい圧接機構及び方法は、本出願人所有の米国特許第6、256、853号に開示されており、この特許は、本明細書において引用により組み込まれている。
【実施例1】
【0053】
以下の実施例は、銀含有正極層とセパレータの間にセパレータに隣接して配置された銀含有物質を含まない障壁層を有する正極構成を用いることによるセパレータ及びアノード区画への銀イオン移動の軽減を示している。SR44−サイズボタンセルは、単層、すなわち、銀酸化物及びニッケルオキシ水酸化物の混合物で形成された正極を含む対照処方と、3つの層、すなわち、銀含有酸化物第1層、電解質二酸化マンガン中間障壁層、及びセルセパレータに隣接して配置された上部ニッケル水酸化物表面障壁層を有する例示的正極処方とを利用して形成された。正極は、上述のようにセル内への挿入前にペレットに形成された。
【0054】
制御ペレットは、50重量パーセントの銀酸化物(Ag2O)、38重量パーセントのNiOOH、10重量パーセントの電解質二酸化マンガン、1重量パーセントのグラファイト、及び1重量パーセントの「POLYMIST(登録商標)F5A」から成る0.91グラムの重量を有した。
【0055】
例示的な3層正極ペレットは、.42グラムの重量を有する銀酸化物含有層、0.17グラムの重量を有する電解質二酸化マンガン層、及び0.25グラムの重量を有するニッケルオキシ水酸化物層で.84グラムの重量を有した。銀酸化物含有層は、94重量パーセントの銀酸化物、5重量パーセントのグラファイト、及び1重量パーセントの「POLYMIST(登録商標)F5A」であった。電解質二酸化マンガン層は、96重量パーセントの二酸化マンガン、3重量パーセントのグラファイト、及び1重量パーセントの「POLYMIST(登録商標)F5A」であった。ニッケルオキシ水酸化物層は、96重量パーセントのニッケルオキシ水酸化物、3重量パーセントのグラファイト、及び1重量パーセントの「POLYMIST(登録商標)F5A」であった。
【0056】
対照セル及び例示的セルの負極区画における電解質溶液は、室温及び45℃の2つの温度の各々で9日間貯蔵した後に銀イオンについて分析された。単層の正極を有する対照セルは、電解質溶液の1グラム当たり34.0マイクログラムの銀を含むのに対して、3層の正極接触セルは、室温で9日後に電解質溶液の1グラム当たり0.1マイクログラムの銀を含むに過ぎなかった。単層の正極を有する対照セルは、電解質溶液の1グラム当たり17.5マイクログラムの銀を含むのに対して、3層の正極は、45℃で9日後に電解質溶液の1グラム当たり0.1マイクログラムの銀を含むに過ぎなかった。
【0057】
従って、銀含有物質を含まず、ニッケルオキシ水酸化物を含む障壁層を収容するセルは、銀イオンの有効な吸収体であり、負極区画への銀イオン移動を抑制する。正極内に存在するEMD層は、ニッケルオキシ水酸化物との直接接触から銀酸化物を分離する。従って、銀酸化物は、電解質溶液中のニッケルオキシ水酸化物と直ちに反応することはない。あらゆる溶解銀イオンがEMD層を通過してニッケルオキシ水酸化物層に到達した後に、これらは、ニッケルオキシ水酸化物中のプロトンと交換されることになる。
【0058】
開示した概念の精神から逸脱することなく様々な修正及び改良を本発明に対して行うことができることは、本発明を実施する者及び当業者によって理解されるであろう。与えられる保護の範囲は、特許請求の範囲によって及び法律の規定する解釈の幅によって判断されるものとする。
【符号の説明】
【0059】
10 銀含有アルカリ電気化学セル
20 正極
22 銀含有酸化物層
24 障壁層
30 セパレータ
40 負極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性アルカリ電解質と、
負のケーシングに電気接触した負極と、
正のケーシングに電気接触した正極と、
前記負のケーシングと前記正のケーシングの間に配置された絶縁ガスケットと、
前記負極と前記正極の間に配置されたセパレータと、
を含み、
前記正極は、前記正のケーシングに電気接触して1つ又はそれよりも多くの銀含有酸化物を含む第1の層を含み、
前記正極は、前記第1の層と前記セパレータの間で該第1の層上に配置された1つ又はそれよりも多くの障壁層を含み、
前記1つ又はそれよりも多くの障壁層の少なくとも1つは、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの1つ又はそれよりも多くを含み、
前記第1の層に隣接した前記障壁層は、前記電解質の存在下で該第1の層に対して実質的に非反応性である、
ことを特徴とする1次電気化学セル。
【請求項2】
前記銀含有酸化物は、化学式Agxy2を有し、Mは、金属であり、xは、ゼロよりも大きいものから4までであり、yは、0から4未満までであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記金属Mは、ニッケル、銅、又はコバルトを含むことを特徴とする請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記銀含有酸化物は、銀酸化物及び銀ニッケル酸化物のうちの1つ又はそれよりも多くであることを特徴とする請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記セパレータに隣接した前記障壁層は、最初は銀含有物資を含まないことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記正極は、2つ又はそれよりも多い障壁層を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記第1の層は、銀酸化物を含み、2つの障壁層が存在し、該第1の層に隣接した該障壁層が、二酸化マンガン又はグラファイト又はその組合せを含み、前記セパレータに最も近い該障壁層が、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの前記1つ又はそれよりも多くを含むことを特徴とする請求項6に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記第1の層は、40から97.9重量%の銀酸化物、0から50重量%の二酸化マンガン、40重量%未満のニッケルオキシ水酸化物、2から10重量%の導電材料、及び0.1から3重量%の結合剤を含み、
前記第1の層に隣接した前記障壁層は、70から97.9重量%の二酸化マンガン、5重量%未満のニッケルオキシ水酸化物、2から10重量%の導電材料、及び0.1から3重量%の結合剤を含み、
前記セパレータに隣接した前記障壁層は、0から27.9重量%の二酸化マンガン、70から97.9重量%のニッケルオキシ水酸化物、2から10重量%の導電材料、及び0.1から3重量%の結合剤を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記第1の層は、85から94重量%の銀酸化物、30重量%未満の二酸化マンガン、2から6重量%の導電材料、及び0.5から1重量%の結合剤を含み、
前記第1の層に隣接した前記障壁層は、90から96重量%の二酸化マンガン、2から6重量%の導電材料、及び0.5から1重量%の結合剤を含み、
前記セパレータに隣接した前記障壁層は、10重量%未満の二酸化マンガン、80から96重量%のニッケルオキシ水酸化物、2から6重量%の導電材料、及び0.5から1重量%の結合剤を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記正極は、単一の障壁層を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記第1の層は、銀ニッケル酸化物を含み、該第1の層上に配置された前記障壁層は、ニッケルオキシ水酸化物を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記負極は、亜鉛を含み、
前記水性アルカリ電解質は、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムのうちの少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記セパレータは、セルロース系材料、ポリエチレン、及びポリビニルアセテートのうちの1つ又はそれよりも多くであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記正極は、ペレットであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記ペレットは、前記正極ケーシング内への該ペレットの配置を助けるために表面層に変色指示薬を含むことを特徴とする請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項16】
水性アルカリ電解質と、
負のケーシングに電気接触した負極と、
正のケーシングに電気接触した正極と、
前記負のケーシングと前記正のケーシングの間に配置された絶縁ガスケットと、
前記負極と前記正極の間に配置されたセパレータと、
を含み、
前記正極は、
前記正のケーシングと電気接触し、銀ニッケル酸化物を含み、かつ唯一の金属として銀を含有する銀含有酸化物化合物を含まない第1の層と、
前記第1の層と前記セパレータの間で該第1の層上に配置され、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの少なくとも一方を含み、かつ銀含有酸化物を含まない単一の障壁層と、
を含む、
ことを特徴とする1次電気化学セル。
【請求項17】
水性アルカリ電解質と、
負のケーシングに電気接触した負極と、
正のケーシングに電気接触した正極と、
前記負のケーシングと前記正のケーシングの間に配置された絶縁ガスケットと、
前記負極と前記正極の間に配置されたセパレータと、
を含み、
前記正極は、
前記正のケーシングと電気接触し、かつ銀含有酸化物を含む第1の層と、
前記第1の層と前記セパレータの間に配置された2つ又はそれよりも多くの障壁層、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料のうちの少なくとも一方を含み、かつ銀含有酸化物を含まない該セパレータに隣接した障壁層、及び前記電解質の存在下で全ての隣接する正極層に対して実質的に非反応性である、該第1の層と該セパレータに隣接した該障壁層との間の少なくとも1つの中間障壁層と、
を含む、
ことを特徴とする1次電気化学セル。
【請求項18】
前記第1の層に隣接した前記中間障壁層は、ニッケルオキシ水酸化物及びニッケルオキシ水酸化物含有材料を含まないことを特徴とする請求項17に記載の電気化学セル。
【請求項19】
前記正極は、二酸化マンガン及びグラファイトのうちの一方又はその組合せを含む単一の中間障壁層を含むことを特徴とする請求項17に記載の電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−524173(P2010−524173A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502072(P2010−502072)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/001956
【国際公開番号】WO2008/121184
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】