説明

局所適用による化粧剤の送達方法

本発明は、バキュロウィルスベクターと哺乳動物の皮膚上に又は皮膚中にバキュロウィルスベクターを送達して化粧効果を得るための薬学的に許容し得る担体とを含む組成物に関する。本発明は本発明の組成物を哺乳動物の皮膚上に又は皮膚中に投与することにより種々の化粧効果を生じる方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下において、2004年2月5日に出願された米国仮出願の出願番号60/445,209の利益を請求する。その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、異種の核酸を皮膚細胞に送達し化粧効果を与えるために、バキュロウィルスベクター及び薬学的に許容し得る担体を含む組成物に関する。更に、本発明は化粧目的で核酸を皮膚細胞に送達する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人間は、一般的にできるだけ若く見えることを望み、しばしば皮膚の老化の兆候を和らげることを期待する。該兆候は、特に皺及び微細な線によって反映される。この点で、広告及びファッション・プレゼント製品は、若い皮膚の兆候である光り輝く皺のない皮膚をできるだけ長く保持しようとしてきた。外見は心的態度及び/又は気力に影響を及ぼすため、なおさらである。多くの人々は身体的に及び精神的に若い感情と外観を同一視する。
【0004】
更に、元々は痙攣を治療するために使用するボツリヌス毒素は、筋痙縮状態(Blitzer et al.,Arch.Otolaryngol.Head Neck Surg.119:1018−1022(1993)を参照されたい)及び眉間の皺(眉の間の皺である)(Carruters et al.,J.Dermatol.Sura.Oncol.18:17−21(1992)を参照されたい)に影響を及ぼし得ることが示された。その結果、薬理作用により、皺の神経構成要素に影響を及ぼすことが可能である。ボツリヌス毒素は、筋肉の緊張性に及ぼすアセチルコリンの作用を遮断することにより、神経−筋接合のレベルで直接作用する。現在、医師は被験者の筋肉にボツリヌス毒素を注射する。これは時に痛みを伴う手法である。従って、その化粧効果のため、注射を伴わずに被験者にボツリヌス毒素を投与する方法を有することは好都合であろう。
【0005】
本発明は化粧目的でバキュロウィルスベクターを介して皮膚細胞に核酸を発現する方法を提供する。バキュロビリデ(Baculoviridae)科のウイルス(俗にバキュロウイルスと呼ばれる)は、昆虫細胞で外因性核酸を発現するために使用されてきた。最も研究されたバキュロウイルスの一つはオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)多核多面体病ウイルス(AcMNPV)である。甲殻類に感染する幾つかのバキュロウイルス種が記載されている(Blissard et al.,1990,Ann.Rev.Entomology 35:127)が、バキュロウイルスAcMNPVの正常な宿主範囲は鱗翅目に限定される。1990年代半ばに、二つのグループは、哺乳動物細胞で活性なプロモーターを含む組み換えバキュロウイルスが哺乳動物細胞に形質導入するために使用できることを報告した。サイトメガロウイルス・プロモーター/ルシフェラーゼ遺伝子カセット(Hoffman et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,92:10099−10103(1995))又はRSV LTRプロモーター/β−ガラクトシダーゼ・カセット(Boyce et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.93:2348−2352(1996))のいずれかを含むウイルスは、初代肝細胞及び種々の非肝細胞株で試験され、バキュロウイルスが哺乳動物細胞を形質導入し得ることが証明された。
【0006】
哺乳動物細胞で異種の核酸を発現する現行の方法は、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、αウイルス、又はアデノ関連ウイルスに由来するものなどのウイルス・ベクターの使用を含む。哺乳動物細胞で異種の核酸を発現する他の方法は、DNAの直接注入、リガンド−DNA共役体の使用、アデノウイルス−リガンド−DNA共役体の使用、リン酸カルシウム沈降、電気穿孔法、及びリポソーム又はポリカチオン−DNA複合体を利用する方法を含む。しかしながら、化粧目的で皮膚細胞で異種の核酸を発現するためにバキュロウィルスベクターを使用することは、当分野で開示又は教示されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、哺乳動物の皮膚上に、皮膚中に及び/又は皮膚を通してバキュロウィルスベクターを送達するため、バキュロウィルスベクター及び薬学的に許容し得る担体の使用を含む組成物及び方法の両方を提供する。該バキュロウィルスベクターは哺乳動物細胞で機能できるプロモーター及び化粧効果を得るために発現する異種の核酸を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
該異種の核酸は哺乳動物の哺乳動物標的皮膚細胞に送達され得る。バキュロウィルスベクターが表皮、真皮又は皮下組織の上に、中に及び/又はそれらを通して輸送され標的皮膚細胞(ここで発現する)に導入される条件の下で、バキュロウィルスベクターを含む組成物と、哺乳動物の表皮、真皮又は皮下組織とを接触させる工程を含む。
【0009】
本発明は、バキュロウィルスベクターを介して哺乳動物の皮膚細胞で異種の核酸を発現し化粧効果を与える多数の方法も開示する。該方法は哺乳動物の皮膚細胞にバキュロウィルスベクターを導入する工程を含む。該バキュロウィルスベクターは、プロモーター、並びに哺乳動物の皮膚又は他の細胞に化粧効果を与える遺伝子産物をコードする異種の核酸を含む。該バキュロウィルスベクターは、局所または皮下に投与されてもよい。
【0010】
本発明により開示される方法は、哺乳動物の皮膚の皺を減らす方法、哺乳動物の皮膚を着色する方法若しくは日焼けさせる方法、哺乳動物の皮膚のニキビを治療する方法、哺乳動物の皮膚の傷跡の外観を小さくする方法、哺乳動物の皮膚の脂肪沈積物を減らす方法、哺乳動物の皮膚の発汗を減らす方法、哺乳動物の皮膚の発毛を減らす方法、哺乳動物の皮膚の細胞にビタミンEを送達する方法、哺乳動物の老化の兆候を軽減する方法、及び/又は哺乳動物の皮膚の細胞にアポトーシスを誘導する方法を含む。該方法は、バキュロウィルスベクターが標的皮膚細胞に送達され、異種の核酸が発現して該異種の核酸の遺伝子産物を産生し、並びに該遺伝子産物が所望の化粧効果を生じる又は与える又は他の方法でもたらすエフェクター細胞に送達される条件の下で、哺乳動物の皮膚と本発明の組成物とを接触させる工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書中、本発明の記載で用いられる用語は、具体的な実施形態を記載するためだけで本発明の限定を意図するものではない。本発明の記載及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、「a」、「an」及び「the」の単数形は、文脈が明らかに他を意味しない限り、同様に複数形を含むことを意図する。
【0012】
本発明は、哺乳動物に化粧効果を与え得る物質をコードする核酸を送達するために、バキュロウィルスベクター、並びに哺乳動物の皮膚上に、皮膚中に及び/又は皮膚を通してバキュロウィルスベクターを送達するために使用される薬学的に許容し得る担体を含む組成物を提供する。該バキュロウィルスベクターは哺乳動物細胞で機能できるプロモーター及び異種の核酸を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の方法は、哺乳動物細胞に形質導入するために使用できる哺乳動物発現カセットを含む組み換えバキュロウイルスを利用する(Kost et al.,Curr Opin Biotechnol.10(5):428−33(1999);Pfohl et al.,Receptors and Channels 8(2):99−111(2002))。一般的に、バキュロウイルス・ゲノムは遺伝子発現を制御するためにサイトメガロウイルス・プロモーターなどの哺乳動物細胞で活性なプロモーターを含むよう設計される。哺乳動物細胞の形質導入はウイルスの複製なしに起きる。具体的には、本発明のバキュロウイルスは、複製できない、又はバキュロウイルスを用いて形質導入された哺乳動物細胞の核酸と組換え事象を受けることができない。該ウイルスは入った細胞に効果的にとどめられ該細胞が死ぬと死ぬ。この送達方法は、例えばBacMamベクターの形態で、研究目的で種々の哺乳動物細胞に多数の遺伝子を送達するために用いられてきた(Condreay et al.,「Transient and stable gene expression in mammalian cells transduced with a recombinant baculovirus vector」,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:127−132(1999);Kost and Condreay,「Recombinant baculoviruses as expression vectors for insect and mammalian cells」Current Opinion in Biotechnology 10:428−433 (1999);Kost and Condreay,「Recombinant baculoviruses as mammalian cell gene−delivery vectors」Trends in Biotechnology 20:173−180(2002);Pfohl et al.,「Titration of KATP channel expression in mammalian cells utilizing recombinant baculovirus transduction」Receptors and Channels 8:99−111(2002)。上記のそれぞれの全内容は、バキュロウィルスベクターの構築及びバキュロウィルスベクターを用いた哺乳動物細胞の形質導入を対象とした教示用にそのまま本明細書に組み込まれる)。バキュロウイルスが媒介する発現は培養された哺乳動物細胞のインビトロ・システムに限定されてきたが、以前は全ての組織又は器官又は本発明のインビボ方法に適用しなかった。
【0014】
本発明のプロモーターは、哺乳動物のプロモーター又は哺乳動物細胞で機能できるプロモーター(即ち、哺乳動物で活性なプロモーター)であり得る。該プロモーター配列は、哺乳動物細胞内で機能する限り、天然に存在しないものであり得る。「プロモーター」は、核酸の直接転写に十分な少なくとも最小の配列を意味する。「哺乳動物で活性な」プロモーターは、哺乳動物細胞で核酸の転写を指示できるものであり、哺乳動物又はウイルスのゲノムに由来するプロモーター(例えば、MMTVプロモーター、RSV LTR、SV40初期プロモーター、CMV IEプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター又はB型肝炎ウイルス・プロモーター)を含む。本発明は、リボゾーム通読(read through)、キャップ独立性翻訳、又は内部リボゾーム侵入(例えば、内部リボゾーム侵入配列、即ちIRES)のいずれかを可能にする配列を含むバキュロウィルスベクターも含む。これらの翻訳制御配列の起源は、効率的な翻訳開始のため、ピコルナウイルス、ポリオ及びEMCV、ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質の5’非コード領域、並びにコザックコンセンサス配列に一部対応する少なくとも15bpの合成配列であり得るが、これらに限定されない。本発明のバキュロウィルスベクターは更に基質付着領域及び/又は哺乳動物の複製起点を含み得る。該ベクターは(例えば昆虫パッケージング細胞のVCAMなどの細胞接着分子の過剰発現により)哺乳動物細胞及び/又は標的特異的哺乳動物細胞型へ入るのを促進するためにウイルス粒子表面上にリガンド及び/又は他の受容体に特異的なタンパク質を含むようにも操作され得る。これらの種々の改良の全てのプロトコル及び実施例は当分野で標準的である。
【0015】
本発明に含まれる他のプロモーターは、プロモーター依存性核酸の発現を細胞型特異性、細胞分化段階特異性、組織特異性(例えば肝臓に特異的なプロモーター)及び/又は誘導可能要素特異性に対して制御できるプロモーターである。従って、本発明は、構成性プロモーター、及び/又は外部若しくは内部のシグナル又は誘導可能要素として作用する薬剤により「誘導可能な」プロモーターを含む(例えば、メタロチオネイン、MMTV、及びpENKプロモーター)。このような一つの実施形態において、このような誘導可能な要素は核酸の5’領域又は3’領域に位置し得る。
【0016】
「誘導可能な」プロモーターは、(a)誘導因子又は誘導可能要素が無い場合、誘導可能なプロモーターが機能できるよう連結される核酸の発現を指示しない若しくは低レベルの該発現を指示するプロモーター、又は(b)除去されると、プロモーターから高レベルで発現できる調節因子若しくは調節要素の存在下(例えばtet系)で低レベルの発現を示すプロモーターである。誘導因子の存在下で、誘導可能なプロモーターは増加レベルで転写を指示する。
【0017】
本発明のある種の実施形態において、該プロモーターは異種の核酸が発現することが望ましい細胞型に特異的なものである。例えば、皮膚はケラチン形成細胞、メラニン形成細胞、平滑筋、脂肪及び神経細胞プロセスなどの種々の細胞を含む器官である。従って、一つの実施形態において、他の細胞型はバキュロウィルスベクターを用いて形質導入されてきたという事実にも関わらず、ケラチン形成細胞に特異的なプロモーターはケラチン形成細胞のみで異種の核酸を発現するために使用できる。本明細書に記載の種々の誘導可能なプロモーターも細胞に特異的なプロモーターとともに使用でき、所望の細胞型のみ及び/又は誘導剤の存在下又は発現阻害剤の不在下でのみ異種の核酸を発現できるため、他の特異性レベル及び異種の核酸の発現制御を可能にする。
【0018】
「機能できるよう連結される」とは、適切な分子(例えば転写活性化タンパク質)が調節配列に結合すると、核酸及び調節配列(例えばプロモーター)が核酸を発現できるような方法で接続されることを意味する。
【0019】
「バキュロウイルス」という用語は、任意の昆虫に特異的なウイルスを指し、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPV、アナグラファ・ファルシフェラ(Anagrapha falcifera)NPV、ガレリア・メロネラ(Galleria mellonella)MNPV、ラチプルシア・オウ(Rachiplusia ou)MNPV、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)SNPV、ヘリオディス・ゼア(Heliothis zea)NOB、スポドプテラ・イクセンプタ(Spodoptera exempta)MNPV及びトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)SNPVなどの例を含むが、これらに限定しない。該ウイルスは哺乳動物細胞において非複製であるべきであり且つ本発明の異種の核酸は形質導入を介して細胞内に導入され該ウイルスの感染によって導入されないことに留意すべきである。
【0020】
潜在的に、任意の一つ以上の異種の核酸配列は、当分野で周知のクローニング方法に従って異種の核酸配列をバキュロウイルスのゲノムに挿入することにより、本発明のバキュロウィルスベクターにクローニングできる。本明細書で用いられる「異種の」という用語は通常バキュロウイルスのゲノムに存在しない核酸を指す。本発明の異種の核酸は哺乳動物の標的細胞及び/又はエフェクター細胞に通常見出せる核酸であり得る。又は該異種の核酸は本発明の哺乳動物の標的細胞及び/又はエフェクター細胞に存在するいずれかの核酸と異質であり得る。
【0021】
本発明の異種の核酸は、本発明の方法に従って、エフェクター細胞に作用し所望の化粧効果を与える遺伝子産物をコードし得る。例えば、本発明の異種の核酸は、発現してコラーゲン・タンパク質、エラスチン・タンパク質、テロメラーゼ(例えば、テロメラーゼ活性の増大効果をもたらしテロメラーゼ活性の低下による細胞死及び老化効果を低減する(conteract))、ラミニン・タンパク質、フィブロネクチン・タンパク質、ビトロネクチン受容体avb5、マトリックスメタロプロテイナーゼ、サイトカイン(例えば、IL−1a、IL−1b、IL−8、IL−6、TNFa、IL−20、IL−18、IL−10、IL−12、IL−7、IL−15)、サイトカイン受容体(例えば、IL−18−R、IL−10−R、IL−1−RI、IL−1−RII、IL−6−R、TNF−R、IL−20−R、IL−24−R、IL−4−R、IL−13−R、IL−17−R、IL−2−R)、及び脂肪酸不飽和化酵素(例えば、脂肪族鎖を修飾し保水能、脂っこさを増加/減少する)を産生する核酸を含み得るが、これらに限定されない。本発明の遺伝子産物によりコードされるタンパク質の産生に利用できる標的細胞及び/又はエフェクター細胞は、ケラチン形成細胞であり得るが、これに限定されない。
【0022】
哺乳動物の皮膚上、皮膚中及び/又は皮膚を通してバキュロウイルスを送達するためのバキュロウィルスベクター及び薬学的に許容し得る担体を含む本発明の組成物は、クリーム、エアロゾル、軟膏、油、液体、ローション、ジェル、極微針パッチ、微粘着剤(microadhesive)、経皮パッチ及び/又は粘着片を含む組成物の形態であり得るが、これらに限定されない。ある種の実施形態において、該組成物は注射で(即ち、針又は注射銃を通して)投与できる。該組成物は、本明細書に記載のように、哺乳動物の皮膚上、皮膚中、皮膚を通して局所に又は非経口で投与され得る。該組成物は本発明の他の組成物及び/又は哺乳動物の皮膚に化粧効果を与える他の組成物と組み合わせても投与できる。
【0023】
本発明の哺乳動物は、本発明の核酸により与えられる化粧効果を生じることが望ましい任意の哺乳動物であり、ヒトであり得るが、これに限定されない。本発明の幾つかの実施形態において、哺乳動物はネコ、イヌ、ウマ、又は任意の愛玩動物であり得る。
【0024】
「皮膚」という用語は、表皮、真皮及び皮下組織を指す。表皮はかなり薄い層である。その厚さは、その領域の特有の必要性に応じて、身体周辺で変化する。例えば、瞼を覆う表皮は特に薄いが、掌及び足裏を覆う表皮は非常に厚い。表皮はそれ自体幾つかの層から構成される。表面に、角質層として知られる角質の層がある。この層は死細胞から構成され、該細胞は絶えず脱落する。該細胞は、より大きくなった後に鱗として目に見える小さな凝集として脱落する。これは、フケで起きることであり、皮膚が水分を奪われる時である。死細胞の層の下に、マルピーギ層を含む生細胞がある。マルピーギ層は三つの分化した副層に分類できる。これらは、顆粒層(顆粒細胞層)、有棘層(棘状又は針状の細胞層)、及び基底層(基底細胞層)である。
【0025】
表皮の基底に定めると、基底層の95%が基底ケラチン形成細胞から成る。表皮の主要な細胞はケラチン形成細胞であり、極めて耐久性のある不溶性タンパク質のケラチンを産生する。ケラチンは表皮の防護壁機能の一部を提供する。基底ケラチン形成細胞は常に「有糸分裂」により分裂し数日から1週間ごとに生じる同一の複製品を形成する。複製された基底ケラチン形成細胞は、上方へ移動し、有棘層を含む「デスモソーム」(棘状又は針状)により相互連結する細胞層を形成する。よって、「有棘細胞層」の名がある。また有棘層を通してランゲルハンス細胞があり、細胞の免疫応答を提供する能力に重要である。
【0026】
ケラチン形成細胞は頻繁に形質変換し顆粒層即ち顆粒の層で核を喪失する。ケラチンは顆粒層でより明瞭になり、よって「顆粒細胞」の名がある。表皮脂質もこの相で観察され細胞間隙に分泌され、角質層の結束及び防壁の保護を提供する。ケラチン形成細胞は表皮の異なる層で成熟し基底層から角質層へ外側に横断するため、構造及び化学的性質を変化する。この細胞増殖の生理化学的全過程は角質化と呼ばれるケラチン形成細胞の成熟を表す。結果として、表皮は常に再生し、角質層として知られる極めて防御的な防壁を最終的に構築する。この外被覆は不良環境から保護するために進化した。この死細胞の層、即ち角質細胞は外部から保護する唯一の防壁である。角質細胞は、重なり合い、屋根瓦に似ており、入ってくる水及び他の化学物質を維持し重要な身体の水及び体液を保持するよう設計された無核細胞である。
【0027】
メラニン形成細胞は残りの5%の基底層を含む。これらの細胞はメラニンを合成し、メラニンはメラノソームにより細胞の「樹状突起」(腕のような伸長物)を通って周辺のケラチン形成細胞へ運ばれる。36個のケラチン形成細胞ごとに大よそ1個のメラニン形成細胞が存在する。遺伝的に決定される皮膚色素の多様性はメラニン形成細胞により産生されるメラノソーム構造の差異に関係する。メラニンは紫外線放射からの保護も提供する。これはメラニン形成細胞が太陽への暴露で刺激され、皮膚の黒ずみ(即ち、日焼け)をもたらすからである。
【0028】
真皮は表皮よりはるかに厚い層である。真皮は結合組織の枠組みから構成され、血管、リンパ管、神経、数種類の腺、毛及び種々の細胞が該枠組み内に埋め込まれている。真皮の結合組織は主にコラーゲンと呼ばれるタンパク質から成る。コラーゲンは、皮膚、腱、骨、軟骨及び他の結合組織全ての白筋線維(コラーゲン線維)のタンパク質物質である。コラーゲンはプロセシングされたプロコラーゲン分子及びプロセシングされた三重らせんのプロコラーゲン単量体分子としても知られる(一般概説については、Kadler,Protein Profile,「Extracellular Matrix 1:fibril−forming collagens」2:491−619(1995);Avad et al.,The Extracellular Matrix Facts Book,Academic Press,London,ISBN 0−12−068910−3(1994)、及び本明細書の引用文献を参照)。コラーゲンは、結合組織の細胞外基質(ECM)に大半が原線維の形態(高分子コラーゲンとしても知られる)で存在する動物において、主要な構造タンパク質である。コラーゲン原線維(高分子コラーゲン)は、結合組織の機械的強度の主要な源であり、細胞接着の基層及び動的な分子相互作用の足場を提供する。コラーゲンのファミリーは三重らせんに巻きつく3つのコラーゲン・α鎖を含む複合のマルチドメイン・タンパク質を含む。少なくとも20の遺伝的に異なるコラーゲン型が記載されており、核酸の相同性及びコードされるタンパク質の機能に基づいて下位群に分類される。原線維を形成するコラーゲン(I型、II型、III型、V型及びXI型)は、可溶性のプロコラーゲン(プロα鎖、プロコラーゲン・α鎖及び単量体鎖としても知られる)として合成され、C−プロペプチド、Gly−X−Y反復を含む領域(原線維を形成するコラーゲンの単量体鎖の場合、途切れないコラーゲンα鎖を含む)及びN−プロペプチドから成る。プロ−α鎖は三量体化しプロセシングされていないプロコラーゲン分子(単量体のプロコラーゲン分子及び三量体のプロ−α鎖としても知られる)を形成し、N−末端及びC−末端のプロペプチドドメイン(N−プロペプチド及びC−プロペプチド)の酵素切断時に原線維構造に組み立てられる。
【0029】
コラーゲンは皺及び傷跡を含む様々な皮膚の問題の治療に用いられる。エラスチン又は弾性線維は真皮の他のタンパク質線維の種類である。真皮は血管及びリンパ管の複合系及び極めて複雑な神経系も含む。
【0030】
皮下組織は真皮の下に位置し皮膚の脂肪貯蔵庫である。貯蔵される脂肪の量は身体の異なる部分で変化する。身体のある部分において、コルサイト(collucite)として知られる。
【0031】
本発明の一つの実施形態において、本発明の異種の核酸は哺乳動物の皮膚細胞に化粧効果を与える毒素をコードする。例えば、本発明の毒素は、細菌の毒素(例えば、ボツリヌス毒素)、爬虫類の毒素(例えば、ヘビ毒)又は昆虫の毒素(例えば、ミツバチからのメリチン(mellitin))であり得るが、これらに限定されない。本発明の異種の核酸がボツリヌス菌をコードする特定の実施形態において、該毒素はクロストリジウム・ボツリナムにより産生される神経毒のボツリヌス毒素である。本発明の核酸はボツリヌス毒素A、B、C1、C2、D、E、F、G又はそれらの任意の組み合わせをコードし得る。更に、本発明の毒素をコードする核酸は、多重コピーで、並びに/又はタンパク質をコードする本発明の一つ以上の異種の核酸若しくは哺乳動物の皮膚細胞に化粧効果を与える核酸と組み合わせて、バキュロウィルスベクターに存在し得る。
【0032】
ボツリヌス毒素はヒト及び動物にボツリヌス中毒症と呼ばれる神経麻痺の病気を引き起こす。クロストリジウム・ボツリナムの胞子は、土壌中に見られ、家庭で行う缶詰の不適切に滅菌密閉された食品容器で増殖し得る。該缶詰はボツリヌス中毒症の多くの事例の源である。ボツリヌス中毒症の効果はクロストリジウム・ボツリナムの細菌及び/又は胞子に感染した食料品を食べた18時間後から36時間後に通常現れる。ボツリヌス毒素は弱毒化されずに内臓の内層を通過し末梢の運動ニューロンを攻撃し得るらしい。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行、嚥下、及び会話の困難から潜在的な呼吸筋の麻痺及び死に進行し得る。
【0033】
ボツリヌス毒素は機能亢進性骨格筋により特徴付けられる神経筋障害の治療用に臨床設定で使用されてきた。ボツリヌス毒素Aは眼瞼痙攣、斜視及び片側顔面痙攣の治療用に米国食品医薬品局により認可された。非血清型Aボツリヌス毒素血清型はボツリヌス毒素Aと比べて低い効力及び/又は短い活性期間を有するらしい。ボツリヌス毒素Aの末梢筋内注射の臨床効果は注射の一週間以内に通常見られる。ボツリヌス毒素の単回筋内注射から症状が軽減する標準的な期間は平均約3ヶ月である。
【0034】
ボツリヌス毒素の血清型は全て神経筋接合部で神経伝達物質のアセチルコリンの分泌を阻害するらしいが、異なる神経分泌タンパク質に作用し並びに/又は異なる部位でこれらのタンパク質を切断することにより行う。例えば、ボツリヌス血清型A及びEは共に25キロダルトン(kDa)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)を切断するが、このタンパク質内の異なるアミノ酸配列を標的にする。ボツリヌス毒素B、D、F及びGは小胞関連タンパク質(VAMP、シナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、それぞれの血清型は異なる部位で該タンパク質を切断する。最終的に、ボツリヌス毒素の血清型C1はシンタキシン及びSNAP−25の両方を切断することが示された。これらの作用機構の差異は多様なボツリヌス毒素血清型の相対的効力及び/又は作用期間に影響し得る。
【0035】
血清型に関わらず、毒素中毒の分子機構は類似し少なくとも3つの工程又は段階を含むようである。該過程の第一工程において、該毒素はH鎖と細胞表面受容体との特異的な相互作用を通じて標的ニューロンのシナプス前膜に結合し、該受容体はボツリヌス毒素のそれぞれの血清型及び破傷風毒素で異なると考えられる。H鎖のカルボキシル末端分節、即ちHcは細胞表面に対する毒素の標的化に重要であるらしい。
【0036】
第二工程において、該毒素は接触した細胞の原形質膜を横断する。該毒素はまず受容体が媒介するエンドサイトーシスを通じて該細胞に取り込まれ、該毒素を含むエンドソームが形成される。次いで、該毒素はエンドソームから該細胞の細胞質に逃れる。この最終工程はH鎖のアミノ末端分節、即ちHnにより媒介されると考えられる。Hnは約5.5以下のpHに対する応答において該毒素の立体構造変化を誘発する。エンドソームはエンドソーム内pHを下げるプロトン・ポンプを有することが知られている。立体構造の変化は該毒素の疎水性残基を暴露し、該毒素がそれ自体エンドソーム膜に埋め込まれる。次に該毒素はエンドソーム膜を通って細胞質ゾルに移行する。
【0037】
ボツリヌス毒素活性の機構の最終工程はH鎖及びL鎖を連結するジスルフィド結合の還元を含むようである。ボツリヌス毒素及び破傷風毒素の全毒素活性はホロ毒素のL鎖に含まれる。該L鎖は、原形質膜の細胞質面とともに神経伝達物質を含む小胞の認識及びドケッティング(docketing)、並びに該原形質膜と該小胞の融合に必須なタンパク質を選択的に切断する亜鉛(Zn++)エンドペプチダーゼである。破傷風神経毒及びボツリヌス毒素B、D、F及びGはシナプトソーム膜タンパク質のシナプトブレビン(小胞関連膜タンパク質(VAMP)とも呼ばれる)の分解を惹起する。シナプス小胞の細胞質面に存在するVAMPの大半は、これらの切断事象のいずれか一つの結果として除去される。それぞれの毒素は異なる結合を特異的に切断する。
【0038】
全部で7つの既知のボツリヌス毒素血清型について、ボツリヌス毒素タンパク質の分子量は約150kDaである。ボツリヌス毒素は、関連する非毒素タンパク質とともに150kDaのボツリヌス毒素タンパク質分子を含む複合体として、クロストリジウム・ボツリナムにより放出される。従って、ボツリヌス毒素A複合体は、900kDa、500kDa及び300kDaの形態としてクロストリジウム・ボツリナムにより産生できる。ボツリヌス毒素B及びC1は500kDaの複合体としてのみ産生されるらしい。BoNT/Dは300kDa及び500kDaの複合体の両方として産生される。最終的に、ボツリヌス毒素E及びFは約300kDaの複合体としてのみ産生される。該複合体(即ち、約150kDaより大きな分子量)は非毒素血球凝集素タンパク質及び非毒素非血球凝集素タンパク質を含むと考えられる。これらの二つの非毒素タンパク質(ボツリヌス毒素分子とともに関連する神経毒素複合体を含む)は、毒素が摂取されると、ボツリヌス毒素分子への変性に反する安定性及び消化酸からの保護をもたらすよう作用し得る。その上、より大きな(約150kDaの分子量より大きな)ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の筋内注射の部位から離れて、より遅いボツリヌス毒素の拡散速度をもたらし得る。
【0039】
インビトロの研究は、ボツリヌス毒素が脳幹組織の初代細胞培養物から神経伝達物質であるアセチルコリン及びノルエピネフリンのカリウム陽イオン誘導性分泌を阻害することを示した。その上、ボツリヌス毒素が脊髄ニューロンの初代培養物及び脳シナプトソームの調製物で誘発されるグリシン及びグルタミン酸塩の両方の放出を阻害し、ボツリヌス毒素が神経伝達物質のアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRP及びグルタミン酸塩のそれぞれの放出を阻害することが報告された。
【0040】
ボツリヌス毒素Aは、既知の手法に従って、発酵槽でクロストリジウム・ボツリナムの培養を確立し増殖させた後、収集し、発酵混合物を精製することにより得ることができる。全てのボツリヌス毒素血清型は最初に不活性な単鎖タンパク質として合成され、該タンパク質はプロテアーゼにより切断又はニックを入れられ神経活性にならなければならない。ボツリヌス毒素を血清型A及びGにする細菌株は、内因性プロテアーゼを有するため、血清型A及びGは主に活性形態で細菌培養物から回収できる。対照的に、ボツリヌス毒素血清型C1、D及びEは非タンパク質分解性株により合成されるため、通常、培養物から回収される際に不活性である。血清型B及びFはタンパク質分解性及び非タンパク質分解性の両株により産生されるため活性又は不活性のいずれかの形態で回収できる。しかしながら、例えばボツリヌス毒素血清型Bを産生するタンパク質分解株でさえ、産生される毒素の部分を切断するだけである。非ニック分子に対するニック分子の正確な割合はインキュベーションの長さ及び培養温度に依存する。従って、例えばボツリヌス毒素Bの一定の割合の任意調製物は不活性であるらしく、おそらく、ボツリヌス毒素Aと比べてボツリヌス毒素Bの効力が有意に低いことが知られる説明となる。臨床調製物における不活性なボツリヌス毒素分子の存在は調製物の全般的なタンパク質の負荷に寄与し、これは、その臨床効果に寄与することなく、抗原性の増加に結び付いている。その上、ボツリヌス毒素Bは、筋内注射時に、より短い活性期間を有し、同じ用量レベルでボツリヌス毒素Aより効能も低いことが知られる。
【0041】
本発明において、ボツリヌス毒素タンパク質は哺乳動物の細胞に送達される組成物に含まれる必要はない。なぜなら、本明細書で提供する方法に従って、ボツリヌス・タンパク質はボツリヌス毒素をコードする異種の核酸の発現後に産生され哺乳動物の標的皮膚細胞に送達されるためである。ボツリヌス毒素をコードする核酸は、クロストリジウム・ボツリナム細胞のゲノムからコード配列のクローニングなどの当分野で周知の方法に従って又はボツリヌス毒素をコードする核酸の合成により、産生される。標的細胞で産生される毒素は、該細胞から分泌され、該タンパク質が注射により哺乳動物の組織に直接投与される場合にボツリヌス毒素が神経細胞の末端より吸収されるのと同じ様式で、哺乳動物で神経筋接合部を形成する神経細胞末端により吸収される。神経細胞において、該ボツリヌス毒素はニューロンの神経伝達物質分泌を妨害することにより、皮膚表面上及び/又は作用する筋細胞の領域の皺及び線を減らす化粧効果を与える。
【0042】
本発明の更なる実施形態において、ニューロンの神経伝達物質分泌を妨害し得る第一タンパク質をコードする異種の核酸を含むバキュロウイルスを哺乳動物の標的皮膚細胞に送達することによって、並びにニューロンの伝達物質分泌に関与する第二タンパク質を不活性化することによって、皮膚の皺を減らすボツリヌス毒素により与えられる化粧効果と同様の該効果が得られ得る。該第二タンパク質は、SNAREとして知られる可溶性のN−エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体のファミリーのメンバー(25kDaのシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)、シナプトブレビン及びシンタキシンなど)、小胞に関連する膜タンパク質2/シナプトブレビン、ATPアーゼN−エチルマレイミド感受性因子(NSF)、可溶性NSAF付着タンパク質(SNAP)及びニューロンの神経伝達物質分泌に関与する類似タンパク質を含むが、これらに限定されない。本発明のこのような阻害タンパク質は、これらの細胞タンパク質の神経伝達物質分泌活性に破壊的な影響を及ぼすタンパク質(又はペプチド)を同定するために当分野で周知の通常のスクリーニング方法により同定でき、常套のプロトコルに従っていったん同定されると本発明の方法で利用できる。このような阻害タンパク質の一例として、阻害活性について当分野で知られるプロトコルに従って、欠失(truncated)SNAREタンパク質が産生され試験され得る。このような欠失SNAREタンパク質は、神経伝達物質を含む小胞複合体に結合し、神経伝達物質を含む小胞の適切なタンパク質複合体の組立、輸送及び/又はドッキングを妨げ得る。他の例として、標準方法に従ってSNAPタンパク質に対して高い親和性を有することが同定されたタンパク質が産生でき、このタンパク質は、SNAPタンパク質に結合し、通常複合体を形成する他のSNAREタンパク質の結合を妨げる。
【0043】
本発明の更なる実施形態において、タンパク質及び/又はアンチセンス核酸は、神経伝達物質をパッケージ化し保持するシナプス小胞の能力を破壊する本発明の方法に従って、同定される。従って、該小胞の神経伝達物質レベルが低下する場合、たとえ該小胞が原形質膜とドッキングし該小胞がその構成要素を神経筋接合部に放出するとしても、利用できる伝達物質は無い又は少ない。同様に、筋のアセチルコリン受容体レベルを低下させて(即ち、アフェクター無し)又はアセチルコリンエステラーゼのレベルを増大させて(即ち、神経伝達物質のレベルを破壊破綻するため)同じ効果を与えるタンパク質及び/又はアンチセンス核酸は本明細書で提供される方法に従って同定される。
【0044】
本発明の他の実施形態において、本発明の異種の核酸は、ニューロン細胞の神経伝達物質分泌活性に関与するタンパク質又はペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリダイズし複合体を形成し得るアンチセンス配列をコードすることが意図される。神経伝達物質の分泌に関与する細胞タンパク質をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズすることにより、アンチセンス核酸は細胞タンパク質の産生を阻害でき、それによってニューロンの神経伝達物質分泌を妨害する。この作用の最終結果は筋組織を弛緩させ皺の出現を減らすことにより、本発明の哺乳動物の皮膚に化粧効果を与える。
【0045】
例えば、一実施形態において、本発明の異種の核酸は細胞タンパク質のシンタキシンのコード配列に相補的な配列をコードし得る。シンタキシンは、神経末端から神経伝達物質の分泌を調節できる付着タンパク質の複合体を形成するタンパク質である。この複合体の形成はシンタキシンをコードするヌクレオチド配列の発現を阻害するため、哺乳動物細胞でシンタキシンの産生を阻害する。このアンチセンス作用の効果は、シンタキシンを不活性化することによって、ボツリヌス毒素C1の投与により筋細胞で産生されるものと類似する化粧効果を生じる。該C1はシンタキシンの切断により筋弛緩及びそれによる皺の減少効果を与えることが知られている。
【0046】
本発明の方法に従って化粧効果を与えるためにアンチセンス核酸を使用する他の例において、本発明の異種の核酸は、チロシナーゼをコードする核酸と相補的で且つ細胞で複合体を形成することにより、細胞でチロシナーゼの産生を阻害するアンチセンス核酸配列をコードし得る。これはメラニンの産生に関与する。チロシナーゼ産生の阻害結果としてのメラニン産生の阻害により与えられる化粧効果は哺乳動物の皮膚の色素沈着を減らし、これは、例えば皮膚の色を明るくし皮膚に母斑及び他の色素性領域の出現を減らすために利用できる。
【0047】
従って、種々の実施形態において、本発明の異種の核酸はアンチセンス核酸配列をコードし得る。「アンチセンス」核酸はアンチセンス核酸の作用により産生を阻害する又は削減するために標的となるポリペプチドをコードする核酸(例えば、遺伝子、cDNA及び/又はmRNA)の全て又は一部に相補的な(即ち、インビボで又は厳しいインビトロ条件の下でハイブリダイズできる)核酸分子(即ち、DNA又はRNA)である。必要に応じて、所望の修飾を含むアンチセンス核酸を産生するために従来の方法が用いられ得る。例えば、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドはインビボのヌクレアーゼによるアンチセンス・オリゴヌクレオチドの分解を阻害するためのアンチセンス核酸として使用できる。アンチセンス核酸が標的とされるポリペプチドをコードする核酸の一部に相補的である場合、アンチセンス核酸は、機能性ポリペプチドの翻訳を阻害するように、該ポリペプチドをコードする核酸の5’末端に十分密接してハイブリダイズするべきである。通常、これは、アンチセンス核酸がハイブリダイズする核酸の5’の半分又は三分の一以内にある配列に対して相補的であるべきであることを意味する。
【0048】
本発明のアンチセンス核酸は、標的遺伝子産物をコードするmRNAを加水分解することにより、細胞で標的核酸の発現を阻害する触媒RNA(即ち、リボザイム)もコードし得る。本発明のアンチセンス核酸はアンチセンス技術の分野で常套的なプロトコルに従って産生され試験され得る。
【0049】
その上、ハンマーヘッド型リボザイムRNAはmRNA前駆体の選択的切断により標的遺伝子の発現を阻害するために使用できる(Haseloff and Gerlach 1988.Simple RNA enzymes with new and highly specific endoribonuclease activities.Nature 334:585−591;Larsson et al.1994.Reduced beta 2−microglobulin mRNA levels in transgenic mice expressing a designed hammerhead ribozyme.Nucleic Acids Res.22:2242−2248.これらの引用文献の全内容はリボザイムRNAの教示用に参照により本明細書に組み込まれる)。
【0050】
更なる実施形態において、本発明の異種の核酸は、細胞内で標的タンパク質の活性を低下させる「競合タンパク質」(即ち、「機能ノックアウトタンパク質」)をコードし得る。例えば、該競合タンパク質は標的化タンパク質の欠失形態であり得る。該競合タンパク質は天然の標的タンパク質と同様に機能できるのに十分な要素を有する。それにより、該競合タンパク質は、正常な細胞タンパク質と結合でき、他の方法で該標的化タンパク質を含み得る機能タンパク質複合体を十分に妨害できる。例えば、欠失SNAREタンパク質は神経伝達物質を含む小胞に結合し正常なタンパク質/小胞複合体の形成を妨害できることにより、神経伝達物質を含む小胞の輸送及び/又はドッキングを阻害又は妨害する。他の例において、SNAPタンパク質に対して高い結合親和性を有するタンパク質が産生され得ることにより、該SNAPタンパク質と複合体を形成し他のSNAREタンパク質との正常な複合体形成を妨げる。
【0051】
本発明の方法において標的の細胞及び組織並びに/又はエフェクターの細胞及び組織として機能できる本発明の細胞及び組織は、皮神経、皮下脂肪組織、シュワン細胞、メルケル細胞、パチーニ小体、ゴルジ−マゾーニ、クラウゼ終末小体、マイスナー小体、ルフィニ末端、自由神経終末、肥満細胞、栄養管(nutritive vessel)、血管構造(例えば、動静脈吻合)、真皮と表皮を連結する基底細胞層、多数のケラトヒアリン顆粒を含む顆粒層扁平細胞、オドランド小体を含む細胞、ランゲルハンス細胞を含む蒸気有棘細胞層(moisture prickle cell layer)、ケラチン形成細胞、死んで角質化した皮膚細胞を含む角質層、毛嚢細胞、メラニン形成細胞、脂腺細胞(例えば、マイボーム腺、タイソン腺など)、立線毛筋細胞(erector pili muscle cell)、汗腺細胞、含脂肪細胞、硬爪甲(hard nail plate)、爪床組織、ハイポニコニウム(hyponychonium)及び皮下筋細胞を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本発明は化粧用途でバキュロウイルスを含む本発明の組成物のインビボ送達を提供する。本発明の化粧用組成物の新規な使用は、とりわけ注射、吸入、又は摂取などの不快なアプローチに依存する既存の送達方法の改良である。本発明の組成物は組換えウイルスの適切に希釈された調製物の効果的な適用を提供するために賦形剤を含み得る。このような賦形剤は、局所及び非経口の適用分野で周知であり、水、グリセリン、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、石油派生物、エチルアルコール、メチルパラベン及びプロピルパラベンを含み得るが、これらに限定されない。本発明の組成物は容器で提供され並びに/又は化粧用組成物の適用に適合できる機械装置と提携され得る。このような容器及び装置は、局所及び非経口の適用分野で周知であり、例えば当分野でよく記載されるスクイーズチューブ、ロールオンアプリケーター及び種々の真皮パッチを含む。
【0053】
本発明の組成物は本明細書に記載の賦形剤及び/又は機械装置を介して哺乳動物の皮膚に直接適用できる。本発明の組成物の異種の核酸は、エフェクター細胞又は標的細胞(ここから分泌された後エフェクター細胞に輸送される)のいずれかで直接発現できる。本明細書で用いられるように、「標的細胞」とは本発明のバキュロウイルスにより形質導入された細胞を意味し、該細胞で異種の核酸が発現し化粧物質(例えば、有益な化粧効果を与える遺伝子産物又は核酸)を産生する。本明細書でも用いられるように、「エフェクター細胞」は化粧物質に結合し並びに/又は内在化させる細胞であり、化粧物質による有益な化粧効果をもたらす。ある種の実施形態において、標的細胞及びエフェクター細胞は同一の細胞であり得る。
【0054】
適用されるバキュロウイルスの量及び発現する核酸の用量は直接相関し得る(Pfohl et al.,Receptors and Channels 8(2);99−111(2002)、この全内容は、細胞に適用されるウイルス量と得られる異種の核酸の発現レベルを相関するプロトコルを教示するために本明細書にその全体を組み込む)。従って、異種の核酸の用量は最大利益のために制御され得る。バキュロウイルスは、一度に又は種々の時間間隔(例えば、時間、日、週、月など)でも適用でき、所望する化粧結果に応じて、期間にわたって送達される核酸量を増やしもするる。
【0055】
本発明の方法に従って、投与されるウイルス量並びに投与の頻度及び様式は、標準プロトコルに従って、並びに特定の標的細胞及びエフェクター細胞、使用するプロモーターの種類、発現する異種の核酸及び得るべき具体的な化粧効果により決定されるように、最適化される。本発明の具体的な実施形態において、該ウイルスは、約0.1から約1.0の感染多重度(moi)で投与でき、例えば約5から100のmoiで投与でき、並びに/又は約10から50のmoiで投与できる。最適なmoiの同定、並びに投与の様式及び頻度は当分野で標準の方法に従って決定される。
【0056】
具体的な実施形態において、本発明は、哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に導入され異種の核酸が発現する条件の下で、異種の核酸を含むバキュロウイルス及び標的細胞へ送達するために薬学的に許容し得る担体を含む組成物と、哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む方法を提供する。更に、本発明は、哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが表皮中に、表皮上に及び/又は表皮を通して輸送され且つ標的細胞に導入されることにより、本発明の組成物と哺乳動物の表皮とを接触させる工程を含む方法を提供する。加えて、本発明は、哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが真皮中に、真皮上に及び/又は真皮を通して輸送され且つ標的細胞に導入されることにより、本発明の組成物と哺乳動物の真皮とを接触させる工程を含む方法を提供する。本発明は哺乳動物の皮下組織を通して哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法も提供する。該方法は、バキュロウィルスベクターが皮下組織中に及び/又は皮下組織を通して輸送され且つ標的細胞に導入される条件の下で、本発明の組成物と哺乳動物の皮下組織とを接触させる工程を含む。
【0057】
その上、本発明は哺乳動物の標的細胞で異種の核酸を発現する方法を提供する。該方法は本発明のバキュロウィルスベクターを標的細胞に導入する工程を含む。
【0058】
本発明は皮膚の健康を維持し並びに皮膚の外観を改善又は向上させる種々の方法も提供する。具体的には、本発明は、傷跡の外観を小さくする方法、ニキビの発症率を下げる方法、乾燥肌の発症率を下げる方法、皮膚の老化の兆候を減らす方法、脂の分泌を減らす方法、皮膚の皺を減らす方法、母斑及び染み等の皮膚の色素性領域の出現を減らす方法、皮膚の弾性を改善する方法、皮膚を日焼けさせる(即ち、色素沈着)方法、皮膚を明るくする方法、皮膚の入れ墨の外観を小さくする方法、皮膚に一時的な入れ墨を創出する方法、並びに発汗を減らす方法を提供する。
【0059】
本発明は、例えば、爪の硬さを増すことにより、爪の光沢を増すことにより、爪全体にわたって均一な色を生じることにより、爪から色素沈着を除去することにより、爪の色を創出することにより、並びに下爪皮(爪下の皮膚)の状態を改善することにより、哺乳動物において爪の健康並びに指の爪及び足指の爪の外観を改善する方法を更に提供する。これにより、爪の外観及び健康が向上する。爪の健康及び外観を改良することを対象にした方法で使用される異種の核酸は、皮膚の健康を改善し皮膚の外観を改善又は向上するための本発明の方法で使用する同一の異種の核酸であり得る。
【0060】
更なる実施形態において、本発明は哺乳動物において発毛及び毛の外観を改善する方法を提供する。幾つかの例として、本発明は、発毛を阻害する方法、毛の脂を減らすために脂の分泌を阻害する方法、毛を脱色する方法、毛染めする方法、毛の色合いを変える方法、毛の質感を変える方法及び毛の外観を変える方法を提供する。
【0061】
一例として、本発明は、哺乳動物の皮膚の皺を減らす方法において、本発明の組成物の使用を提供する。該方法は、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現してボツリヌス毒素並びに/又は皮膚の皺及び線を減らすために本明細書に記載のように作用する他のタンパク質及び/若しくはアンチセンス核酸を産生する条件の下で、本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。これにより、哺乳動物の皮膚の皺を減らす。一実施形態において、例えば、上述するように、ボツリヌス毒素は標的皮膚細胞で産生され、該皮膚細胞により分泌され、神経筋接合部を形成する神経細胞末端(例えば、プレシナプス前末端)により取り込まれる。該接合部で、該毒素は筋組織を弛緩し哺乳動物の皮膚の皺及び線の外観を減らす化粧効果を生じるように作用する。
【0062】
本発明は哺乳動物(例えば、ヒト)の皮膚を日焼けする方法も提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。該バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現してメラニン形成細胞調節タンパク質及び/又はケラチン形成細胞調節タンパク質を産生し、並びに該タンパク質又は両タンパク質がメラニン形成細胞及び/又はケラチン形成細胞に送達される条件の下で、該バキュロウイルスはメラニン形成細胞調節タンパク質及び/又はケラチン形成細胞調節タンパク質をコードする異種の核酸を含む。これにより、哺乳動物の皮膚を日焼けさせる。
【0063】
哺乳動物の皮膚を日焼けさせるために利用される方法は、メラニン形成を刺激し、適切なメラニンの合成及び分布を増大することによって、より黒い色素沈着、即ち細胞の日焼けを生じることにより、化粧効果を与える。その上、これらの方法は、ケラチン形成細胞によるメラニンの分解を開始、蓄積又は削減するケラチン形成細胞の能力を増す。
【0064】
メラニン形成細胞の活性による皮膚細胞の日焼けの調節タンパク質は、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1、チロシナーゼ関連タンパク質−2、メラノコルチン−1受容体、プロ−オピオメラノコルチン(POMC)、α−MSHなどのメラノコルチン・ペプチド、眼白子症1(OA1)、MART−1(メラン−A)及び/又はpmel17(gp100)を含むが、これらに限定されない。ケラチン形成細胞の活性による皮膚細胞の日焼けの調節タンパク質は、プロ−オピオメラノコルチン(POMC)、α−MSHなどのメラノコルチン・ペプチド及び/又はプロテアーゼ活性化受容体2(PAR−2)を含むが、これらに限定されない。
【0065】
本発明の方法は、皮膚の色素性領域(例えば、肝斑、黒子、母斑、そばかす)の出現を減らすために、並びに唇、手及び爪などの種々の身体部分の肌の色合いを化粧で改善及び/又は向上させるためにも用いられ得る。例えば、本発明の方法のこれらの実施形態において、皮膚の日焼けについて本明細書で記載される方法の逆効果を有する異種の核酸が利用できる。具体例において、メラニンの産生を阻害又は削減する効果を有するアンチセンス核酸及び/又は競合タンパク質をコードする異種の核酸が哺乳動物細胞に導入され得ることにより、皮膚を明るくする並びに/又は皮膚の色素性領域の出現を減らす。
【0066】
本発明は哺乳動物(例えば、ヒト)の皮膚におけるニキビの発症率を減らす方法も提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。該異種の核酸は、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現してアンドロゲン受容体及び/又は5αリダクターゼを産生し、並びにこれらのタンパク質が脂腺の細胞に送達され脂腺が皮脂を産生する能力を低下させる条件の下で、アンドロゲン受容体及び/又は5αリダクターゼをコードすることにより、ニキビの発症率を減らす。この方法のエフェクター細胞は、例えば、哺乳動物の顔、額、背中及び胸の脂腺細胞であり得る。
【0067】
他の態様において、本発明は哺乳動物の皮膚の傷跡の外観を小さくする方法を提供する。該方法はバキュロウィルスベクター及び薬学的に許容し得る担体を含む組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本明細書に記載のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸がエフェクター細胞に送達され吸収される条件の下で、該異種の核酸は、本明細書に記載するように、傷跡の皮膚の色を薄くし得る並びに/又は傷跡の皮膚細胞におけるコラーゲン、エラスチン、TGF及び/若しくは特異的なサイトカインの活性又は量を変え得るタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。該エフェクター細胞で、該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸が作用して哺乳動物の皮膚の傷跡の外観を小さくする。
【0068】
他の態様において、本発明は哺乳動物の毛の色を明るくする、暗くする、又は変える方法を提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本明細書に記載のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸がエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸は、毛嚢のメラニン形成細胞におけるメラニンの発現を調節するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。該エフェクター細胞は毛嚢のメラニン形成細胞であり、該細胞で、該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸はメラニンの産生を調節することにより、哺乳動物の毛の色合いを明るくする、暗くする又は変更する。
【0069】
本発明は哺乳動物の皮膚において脱毛する及び/又は発毛を減らす方法を更に提供する。該方法は抜かれるべき毛の部位で哺乳動物の皮膚と本発明の組成物とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本方法のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸がエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸は、1)毛嚢の周期を変える、2)毛嚢の細胞及び/又は関連細胞のアポトーシスを誘導する、3)アンドロゲンの応答性を低下させる、並びに/又は4)毛嚢の形態形成を減少させるように作用するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。該エフェクター細胞で、該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸は本方法で記載の一つ以上の効果をもたらすことにより、哺乳動物の皮膚において脱毛する並びに/又は発毛を減らす。
【0070】
本方法のエフェクター細胞は、濾胞上皮細胞及び隆起物に位置する毛芽細胞などの毛嚢の細胞、外毛根鞘又は毛嚢の毛基質/前皮質(precortex)領域を含むが、これらに限定されない。
【0071】
脱毛する方法及び/又は発毛を減らす方法の異種の核酸は、例えばオルニチン・デカルボキシラーゼ、アンチザイム、β−カテニン、LEF1、FGF/FGFR2−IIIB、TGFβ2、MSX1、MSX2、EDA/EDAR、NOGGIN、デルタ−1/ノッチ1、PDGF−A、SHH、ACTbA/FS、HGF/MET、SOX18、WNT、ETS2、BMP、BMP4、MOVO1、HOXC13、WHN、及び/又は腫瘍壊死因子に関連するアポトーシスを誘導するリガンド(TRAIL)、Bcl−2タンパク質(例えば、Bax、Bid、Bcl−2、及びBcl−XL)、セリン・プロテアーゼ、TNF−α、Fasリガンド(FasL、CD95Lとして知られる)、システイン−アスパラギン酸塩プロテアーゼ(例えば、カスパーゼ−9、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7)、シトクロムc及びミトコンドリア・クロライド・チャネル(VDAC)を含むがこれらに限定されないアポトーシスを誘導するタンパク質などのタンパク質をコードし得る。
【0072】
従って、本発明は本明細書に記載する化粧目的を得るために哺乳動物の皮膚細胞にアポトーシスを誘導する方法も提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して化粧効果のためアポトーシスを誘導するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又は核酸がアポトーシスが誘導されるエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸は、本明細書に列挙される及び/又はアポトーシスの誘導用に当分野で知られる一つ以上のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。これは哺乳動物の皮膚に所望の化粧効果をもたらす。
【0073】
本発明は哺乳動物の皮膚の毛嚢において発毛を刺激する方法を更に提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚の毛嚢とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して発毛を刺激するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸が毛嚢のエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸は、毛嚢で発毛を刺激する一つ以上のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸は発毛を刺激する効果を与える。本方法の毛嚢は通常機能性の毛嚢又ははげの状態などの非機能性の毛嚢であり得る。後者の状態では、エフェクター細胞に送達されるタンパク質及び/又はアンチセンス核酸は、雄の毛嚢細胞のホルモン受容体を増加させることにより作用し得る。これにより、これらの濾嚢からの発毛を刺激する。
【0074】
更なる実施形態において、本発明は化粧効果を得るために哺乳動物の皮膚の脂肪沈着を減らす方法を提供する。該方法は本発明の組成物と減らすべき脂肪沈着部位の哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。該異種の核酸は、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本方法のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸が皮膚表面近くの含脂肪細胞などのエフェクター細胞に送達される条件の下で、脂肪沈着を減らすよう作用するタンパク質をコードし、該タンパク質は、脱共役タンパク質−1(UCP−1)、脱共役タンパク質−2(UCP−2)、脱共役タンパク質−3(UCP−3)、β−アドレナリン受容体3及び/又は本明細書に記載の若しくはアポトーシスを誘導する活性について当分野で知られるタンパク質を含むが、これらに限定されない。該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸は哺乳動物の皮膚の脂肪沈着を減らすように作用することにより、哺乳動物の皮膚の脂肪沈着を減らして化粧効果を得る。
【0075】
本方法のエフェクター細胞は、茶色の含脂肪細胞、白色の含脂肪細胞及び皮膚表面に密接した含脂肪細胞であり得るが、これらに限定されない。含脂肪細胞は、顔、頭及び首の領域、並びに脂肪沈着を減らして化粧効果を得ることが望ましい哺乳動物の他の身体領域に位置し得る。
【0076】
本発明は哺乳動物の皮膚の発汗を減らす方法も提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本方法のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸がニューロン細胞などのエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸は哺乳動物の皮膚の発汗を減らすよう作用するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする(例えば、重炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸Na変換タンパク質を調節する他のタンパク質若しくはアンチセンス核酸、Na/H輸送体、クロライド・チャネル及びNa/K変換体)。該エフェクター細胞で、該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸は、神経入力により又は汗腺の秘かな(secret)限外濾過する能力により発汗を減らすよう作用する。発汗を減らす方法は、腋窩、足、手などの発汗を減らすために用いられ得る。発汗を減らす方法のエフェクター細胞は、汗腺細胞、並びに汗の生成及び分泌に関連するニューロンの神経伝達物質分泌に関与する細胞を含み得るが、これらに限定されない。
【0077】
本発明は化粧効果を与えるために哺乳動物の皮膚細胞にビタミンEを送達する方法も提供する。該方法は本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。該異種の核酸は、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現してビタミンEを産生し、並びにビタミンEがビタミンEを代謝し化粧効果をもたらすエフェクター細胞に送達される条件の下で、ビタミンEをコードする。
【0078】
更に、本発明は哺乳動物の老化の兆候を減らす方法を提供する。該方法はバキュロウィルスベクター及び薬学的に許容し得る担体を含む組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本方法のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸がケラチン形成細胞などのエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸は、例えば、皮膚の含水量を増すことにより、乾燥肌の脂生産を増すことにより、脂肌の脂生産を減らすことにより、皮膚の弾性及び/又は色合いを改善すること等により、老化の兆候を減らすタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。
【0079】
本発明は本発明の方法に従って作製された哺乳動物の皮膚の入れ墨の外観を小さくする方法を更に提供する。該方法はバキュロウィルスベクター及び薬学的に許容し得る担体を含む組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。該異種の核酸は、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、該異種の核酸が発現して本方法のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生し、並びに該タンパク質及び/又は核酸がエフェクター細胞に送達される条件の下で、入れ墨の色素沈着をもたらすメラニンの産生を削減又は阻害するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする。該エフェクター細胞で、該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸は入れ墨の色素沈着を生じるメラニンの産生を削減又は阻害するように作用することにより、哺乳動物の皮膚の入れ墨を脱色する。
【0080】
哺乳動物の皮膚に一時的な入れ墨を作製する方法が本明細書で更に提供される。該方法は、異種の核酸が標的細胞で発現して本方法のタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生する条件の下で、哺乳動物の皮膚に入れ墨様の図案又は像を作製する様式又は配置で本発明の組成物と哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む。該方法は、所望する様式又は配置に従って色素を産生するため又は色素を減らすために、印のついた細胞で色素を産生する並びに/又は色素の産生を減らす。該タンパク質及び/又はアンチセンス核酸はエフェクター細胞に輸送され、該様式又は配置で皮膚細胞の色素沈着を生じる並びに/又は色素沈着を減らすよう作用する。これにより哺乳動物の皮膚に入れ墨様の図案又は像を作製する。例えば、本方法で利用される異種の核酸は適切な光の波長に暴露されると輝く蛍光タンパク質をコードし得る。他の実施形態において、異種の核酸は皮膚細胞に特定の色(例えば、茶色)を与える着色タンパク質をコードし得る。更なる実施形態において、本発明の異種の核酸は、茶色から黒色の色素を産生するユーメラニン及び黄赤色の色素を産生するフェアオメラニンなどの異なる色素を産生する特定のメラニンをコードし得る。これらの種々のタンパク質は皮膚細胞で多様な図案及び配置を作製するために任意の組み合わせで使用できる。
【0081】
下記の実施例は、本発明を説明するために示され、本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0082】
動物研究
本発明の方法の異種の核酸を含むバキュロウィルスベクターによる皮膚細胞の形質導入で、哺乳動物の皮膚細胞における異種の核酸の発現及びその後の機能遺伝子産物の産生を証明するために、下記の実験が行われる。
【0083】
一例において、バキュロウィルスベクターにより媒介される異種の核酸は、数例だけ挙げると、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子又はβ−ガラクトシダーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子であり得る。レポーター遺伝子を含むバキュロウィルスベクターを含む本発明の組成物は、本明細書に記載の用量範囲及び種々の時間間隔で、本明細書に記載する本発明の組成物の投与様式に従って、試験動物の皮膚と接触させる。試験動物の皮膚細胞は、明確に定義された方法に従って、摘出され、特異的レポーター遺伝子の存在について分析され得る。例えば、β−ガラクトシダーゼ又はアルカリホスファターゼをコードする核酸を発現する皮膚細胞はこれらの酵素に対するそれぞれの基質と反応し得る。特定の酵素活性に特徴的な色の存在が検出できることにより、バキュロウィルスベクターにより送達される異種の核酸の皮膚細胞での発現を証明する。或いは、皮膚細胞における異種の核酸の存在は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、インサイチューハイブリダイゼーションなど、特定の核酸を検出するために当分野で知られるプロトコルにより証明され得る。形質導入された皮膚細胞における異種の核酸の発現により産生されるタンパク質の存在は、例えばウェスタンブロッティング及び免疫組織化学染色などの標準方法により証明できる。
【0084】
例えば、本発明の原理の立証は、活性及び発現が視覚的に又は免疫組織化学により追跡できるレポーター遺伝子を用いて達成され得る。使用できるレポーター遺伝子はβガラクトシダーゼ(Choate and Khavari 1997.Sustainability of keratinocyte gene transfer and cell survival in vivo.Hum.Gene Ther.8,895−901)を含む。
【0085】
形質導入の有効性はまずケラチン形成細胞に特異的なプロモーターの下で該レポーター遺伝子を有するバキュロウィルスベクターを含む調製物をヌードマウスに皮下注射することにより試験できる。次に、該レポーターの活性は既知の方法により追跡される。このアプローチは幾つかの刊行された報告書に基づいている。例えば、Luと共同研究者達は、ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を含むアデノウイルス・ベクターの皮下投与が真皮細胞で導入遺伝子の強力な発現を誘導することを示した(Lu and Federoff 1995.Herpes simplex virus type 1 amplicon vectors with glucocorticoid−inducible gene expression.Hum.Gene Ther.6:419−428)。他の例はSetoguchi et al.による引用文献に見出せる(Ex vivo and in vivo gene transfer to the skin using replication−deficient recombinant adenovirus vectors.J.Invest.Dermatol.102:415−421(1994))。
【0086】
次の工程はヒトのケラチン形成細胞における形質導入の有効性を試験することである。1つのアプローチは、ヒトの培養HeLaケラチン形成細胞におけるβガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼのバキュロウイルスが媒介する形質導入である。次いで形質導入細胞はヌードマウスの皮下に埋め込まれ、既知の方法を用いて核酸の発現が続く。この実験設計は、エリスロポエチンcDNAを含むアデノ関連ウイルスにより形質導入されたHeLaケラチン形成細胞のヌードマウスへの移植が高レベルで且つ長期間のヘマトクリット値の増加を誘導したDescamps et al.による研究(Keratinocytes as a target for gene therapy.Sustained production of erythropoietin in mice by human keratinocytes transduced with an adeno−associated virus vector.Arch−Dermatol.132:1207−1211(1996))に基づいている。
【0087】
他のアプローチは、ケラチン形成細胞に特異的なプロモーター又はCMVプロモーターのいずれかの制御下でレポーター遺伝子を発現するよう設計されたバキュロウィルスベクターの局所適用である。Luらは、このアプローチを用いてアデノウイルスでCMVプロモーターの制御下のβガラクトシダーゼの発現を示した(Lu et al.1997.Topical application of viral vectors for epidermal gene transfer.J.Invest.Dermatol.108:195−199)。ウイルス・ベクターを形質導入された細胞における異種の核酸の発現を証明するための方法を対象とする教示用に、この節で引用される引用文献は全て本明細書にその全体を組み込む。
【実施例2】
【0088】
皺防止治療
本発明の方法の一実施形態において、皺防止の化粧効果が得られる。任意形態のボツリヌス毒素をコードする核酸は、細胞特異的ケラチン形成細胞特異的プロモーターとともにバキュロウイルスのゲノムにクローニングされる。バキュロウイルス構築物は、適切に希釈され、本明細書に記載するようにバキュロウイルスの生存並びに皮膚上に、皮膚中に及び/又は皮膚を通したバキュロウイルスの送達に適合する適切な不活性成分を含む賦形剤の組成物に製剤される。該組成物は、バキュロウイルス組成物の適用部位で皮膚の皺の出現を減らすのに効果的な組成物の可測量を含むローション又は他の送達媒体又は担体により、皺の部位の皮膚に適用される。ケラチン形成細胞に該ウイルスが入ると、該毒素をコードする核酸は発現して該毒素を産生する。該毒素は分泌され皮下の神経細胞に拡散する。該毒素は該細胞で吸収されニューロンによる神経伝達物質の制御分泌を阻害する効果を及ぼすことにより、作用される神経細胞に関連する筋組織の弛緩をもたらす。その後の筋の弛緩は皺の出現を減らすため、望ましい化粧効果を得る。また、異種の核酸はバキュロウィルスベクターを介して他の皮膚細胞に送達され骨格筋細胞に密接して発現できる。該皮膚に投与されるバキュロウィルスベクターの量は、バキュロウイルスが送達される組成物の1ミリリットル当たり約106から108以上のプラーク形成単位(pfu)の範囲であり得る。バキュロウイルスを含む組成物への該皮膚の暴露時間は、例えば2時間から一晩であり得る。例えば視覚的に測定される所望の化粧効果を得るために、該組成物は必要ならば反復して投与できる。本発明の具体的な実施形態において、複数の化粧効果が同時に又は連続して達成されることが望ましい場合、第一の化粧効果を与えるために第一のバキュロウイルスを含む第一の組成物は、第二(及び/又は第三)の化粧効果を与えるために第二(及び/又は第三)のバキュロウイルスを含む第二(及び/又は第三)の組成物と、交互に、連続して、及び/又は同時に、投与され得る。或いは、第一及び第二のバキュロウイルスは、同じ組成物中に存在し、それ自体同時に投与され得る。
【実施例3】
【0089】
染みの消去及び皮膚の日焼け
本発明の他の実施形態において、目障りな「染み」の抑制は、本明細書で提供される方法に従って達成できる望ましい化粧効果である。この実施例において、特異的に或いはメラニン形成細胞のアポトーシスを誘導することによりメラニン形成細胞によるメラニンの産生を妨げるタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする異種の核酸は、メラニン形成細胞特異的プロモーターとともにオートグラファ・カリフォルニカのゲノムにクローニングされる。該構築物は、適切に希釈され、本明細書に記載するようにバキュロウイルスの生存並びに皮膚上に、皮膚中に、及び/又は皮膚を通したバキュロウイルスの送達に適合できる適切な不活性成分を含む賦形剤の組成物に製剤される。該組成物は、染みの出現を減らす化粧効果を得るのに有効な可測量の組成物を送達するローション又は他の送達媒体を使用することにより皮膚に適用される。該核酸は、バキュロウイルスがメラニン形成細胞に入ると、発現してメラニンの産生を妨げるタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生する。染みの出現を減らす所望の効果はメラニン産生の抑制により得られる。
【0090】
本発明の他の実施形態において、哺乳動物の皮膚を日焼けする方法で、異種の核酸が送達され、その発現はメラニンの拡散及び/又はメラニンの産生を促進するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸の産生をもたらし、日光の存在下及び/又は不在下で日焼けした皮膚の外観を生じる。本方法で使用できるタンパク質の例は、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1、チロシナーゼ関連タンパク質−2、メラノコルチン−1受容体、プロ−オピオメラノコルチン(POMC)、α−MSHなどのメラノコルチン・ペプチド、眼白子症1(OA1)、MART−1(メラン−A)、pmel17(gp100)、プロ−オピオメラノコルチン(POMC)及び/又はα−MSHプロテアーゼ活性化受容体2(PAR−2)などのメラノコルチン・ペプチドを含むが、これらに限定されない。皮膚に投与されるバキュロウィルスベクターの量は、バキュロウイルスが送達される組成物1ミリリットル当たり約106から108を上回るプラーク形成単位(pfu)の範囲であり得る。バキュロウイルスを含む組成物への皮膚の暴露時間は、例えば2時間から一晩であり得る。該組成物は、例えば視覚的に測定される所望の化粧効果を得るために、必要に応じて反復して投与され得る。
【実施例4】
【0091】
脂肪減量クリーム
本発明の更なる他の実施形態において、哺乳動物の皮膚細胞における皮下脂肪沈着の除去は、本発明の方法に従って達成され得る所望の化粧効果である。具体的には、含脂肪細胞の代謝の増大を誘導する又は含脂肪細胞のプログラムされた細胞死を誘導するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする異種の核酸は、含脂肪細胞に特異的なプロモーターとともに、バキュロウイルスのゲノムにクローニングされる。該構築物は、適切に希釈され、極微針パッチなどの送達媒体を介した局所適用と適合する適切な不活性成分を含む賦形剤の組成物に製剤される。該パッチは、所望する皮膚の領域で脂肪沈着を減らす化粧効果を生じるのに有効な量を含み、所望の領域に適用される。バキュロウイルスが含脂肪細胞に入ると、該核酸は発現して、代謝の増加により又はプログラムされた細胞死により含脂肪細胞がその脂肪沈着を減らすよう効果的に誘導するタンパク質及び/又はアンチセンス核酸を産生する。所望の化粧効果は脂肪沈着の量及び/又は含脂肪細胞の数が結果として減少することにより得られる。皮膚に投与されるバキュロウィルスベクターの量は、該バキュロウイルスが送達される組成物1ミリリットル当たり約106から108を上回るプラーク形成単位(pfu)の範囲内であり得る。バキュロウイルスを含む組成物への皮膚の暴露時間は、例えば2時間から一晩であり得る。該組成物は、例えば視覚的に測定される所望の化粧効果を得るために、必要に応じて反復して投与され得る。
【0092】
上記は本発明の原理の説明だけであると見なされる。更に、多数の改良及び変更が容易に当業者に思い浮かぶであろうため、本明細書で示し記載した厳密な構成及び操作に本発明を限定することは望ましくない。従って、しかるべく、全ての適切な改良及び等価物は本発明の範囲内に納まる。
【0093】
全ての刊行物、特許出願、特許、及び本明細書で言及された他の引用文献は、引用が為された段落及び/又は文に記載される教示のため、その全体を参照により組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バキュロウィルスベクターと、哺乳動物の皮膚上に、皮膚中に又は皮膚を通して該バキュロウィルスベクターを送達するための薬学的に許容し得る担体とを含む組成物であって、該バキュロウィルスベクターが哺乳動物細胞で機能できるプロモーター及び異種の核酸を含む組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容し得る担体が、クリーム、エアロゾル、軟膏、油、液体、経皮パッチ、極微針パッチ及び粘着片からなる一覧より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記異種の核酸が異種の遺伝子産物をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記異種の核酸が細菌毒素をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記異種の核酸がボツリヌス毒素をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ボツリヌス毒素がボツリヌス毒素A、ボツリヌス毒素B、ボツリヌス毒素C1、ボツリヌス毒素D、ボツリヌス毒素E、ボツリヌス毒素F及びボツリヌス毒素Gからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記異種の核酸がアンチセンス核酸配列をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが該標的細胞に導入される条件の下で、請求項1の組成物と該哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む方法。
【請求項9】
哺乳動物の表皮を通して哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが該表皮を通して輸送され該標的細胞に導入される条件の下で、請求項1の組成物と該哺乳動物の表皮とを接触させる工程を含む方法。
【請求項10】
哺乳動物の真皮を通して哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが該真皮を通して輸送され該標的細胞に導入される条件の下で、請求項1の組成物と該哺乳動物の真皮とを接触させる工程を含む方法。
【請求項11】
哺乳動物の皮下組織を通して哺乳動物の標的細胞に異種の核酸を送達する方法であって、バキュロウィルスベクターが該皮下組織を通して輸送され該標的細胞に導入される条件の下で、請求項1に記載の組成物と該哺乳動物の皮下組織とを接触させる工程を含む方法。
【請求項12】
哺乳動物の哺乳動物細胞で異種の核酸を発現し化粧効果を生じる方法であって、哺乳動物細胞にバキュロウィルスベクターを導入する工程を含む方法であって、該バキュロウィルスベクターがプロモーター並びに化粧効果を生じるタンパク質及び/又はアンチセンス核酸をコードする異種の核酸を含む方法。
【請求項13】
前記異種の核酸が異種の遺伝子産物をコードする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記異種の核酸がアンチセンス核酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記バキュロウイルスが局所に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記バキュロウイルスが皮下に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物の皮膚の皺を減らす方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現してボツリヌス毒素を産生し、並びに該ボツリヌス毒素が皺に関連する筋と関与する神経細胞に送達される条件の下で、請求項5の組成物と該哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含むことにより、該哺乳動物の皮膚の皺を減らす方法。
【請求項18】
哺乳動物の皮膚を日焼けする方法であって、請求項1の組成物と該哺乳動物の皮膚とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現してメラニン形成細胞調節タンパク質及び/又はケラチン形成細胞調節タンパク質を産生し、並びに該メラニン形成細胞調節タンパク質及び/又はケラチン形成細胞調節タンパク質がメラニン形成細胞及び/又はケラチン形成細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸が該メラニン形成細胞調節タンパク質及び/又はケラチン形成細胞調節タンパク質をコードすることにより、該哺乳動物の皮膚を日焼けさせる方法。
【請求項19】
哺乳動物の皮膚のニキビの発症率を減らす方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現してアンドロゲン受容体及び/又は5αリダクターゼを産生し、並びに該アンドロゲン受容体及び/又は5αリダクターゼが脂腺細胞に送達される条件の下で、該核酸が該アンドロゲン受容体及び/又は5αリダクターゼをコードすることにより、該哺乳動物の皮膚のニキビの発症率を減らす方法。
【請求項20】
哺乳動物の皮膚の傷跡の外観を小さくする方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現してタンパク質を産生し、並びに該タンパク質がエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸が[タンパク質]をコードすることにより、傷跡の外観を小さくする方法。
【請求項21】
哺乳動物の皮膚の脂肪沈着を減らす方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現して該異種の核酸の遺伝子産物を産生し、並びに該遺伝子産物が含脂肪細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸が、脱共役タンパク質−1、脱共役タンパク質−2、脱共役タンパク質−3、及びβ−アドレナリン受容体3からなる群より選択されるタンパク質をコードすることにより、哺乳動物の皮膚の脂肪沈着を減らす方法。
【請求項22】
哺乳動物の皮膚の発汗を減らす方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現して重炭酸ナトリウムを産生し、並びに重炭酸ナトリウムが神経細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸が重炭酸ナトリウムをコードすることにより、該哺乳動物の皮膚の発汗を減らす方法。
【請求項23】
哺乳動物の皮膚の細胞にビタミンEを送達する方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現してビタミンEを産生し、並びにビタミンEがビタミンEを代謝するエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸がビタミンEをコードすることにより、該哺乳動物の皮膚にビタミンEを送達する方法。
【請求項24】
哺乳動物の皮膚において発毛を減らす方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現して該異種の核酸の遺伝子産物を産生し、並びに該遺伝子産物が上皮細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸がタンパク質をコードすることにより、該哺乳動物の皮膚において発毛の外観を減らす方法。
【請求項25】
哺乳動物の毛の色を変える方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現して該異種の核酸の遺伝子産物を産生し、並びに該遺伝子産物が上皮細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸がタンパク質をコードすることにより、該哺乳動物の皮膚における毛の色及び/又は発毛を増大する方法。
【請求項26】
哺乳動物の皮膚の老化の兆候を減らす方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現して該異種の核酸の遺伝子産物を産生し、並びに該遺伝子産物がケラチン形成細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸が調節タンパク質をコードすることにより、該哺乳動物の皮膚の老化の兆候を減らす方法。
【請求項27】
哺乳動物の皮膚の細胞にアポトーシスを誘導する方法であって、該哺乳動物の皮膚と請求項1の組成物とを接触させる工程を含む方法であって、バキュロウィルスベクターが標的細胞に送達され、異種の核酸が発現して該異種の核酸の遺伝子産物を産生し、並びに該遺伝子産物がアポトーシスを惹起するエフェクター細胞に送達される条件の下で、該異種の核酸がタンパク質をコードすることにより、該哺乳動物の皮膚の細胞にアポトーシスを誘導する方法。

【公表番号】特表2006−516649(P2006−516649A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503290(P2006−503290)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/003073
【国際公開番号】WO2004/071538
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505296500)アンフォラ・ディスカヴァリー・コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】