説明

屈伸ブーム式高所作業車

【課題】ブームの先端部に対する作業台の相対位置を維持しながらブームを起伏させることが可能な屈伸ブーム式高所作業車を提供する。
【解決手段】高所作業車1は、車体と、車体に起伏作動および伸縮作動が自在に設けられたブームと、ブームの先端部に上下に屈伸作動が自在に設けられたアームと、アームの先端部に設けられた作業台と、ブームを作動させるための操作が行われるブーム操作装置10hと、ブーム操作装置10hにブームを起伏させる起伏操作が行われたときに、起伏操作に応じてブームを起伏させるとともに車体に対するアームの揺動角度を所定揺動角度に維持するようにアームを屈伸させる制御を行うことが可能な規制制御部72、バルブ作動制御部74、ノンストップ作動制御部75とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起伏および伸縮自在に設けられたブームの先端部にアームを屈伸自在に設けて構成される屈伸ブーム式高所作業車に関し、さらに詳細には、このように構成される屈伸ブーム式高所作業車の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者搭乗用の作業台を所望の高所に移動させて高所作業を行うための高所作業車の一例として、車体上に起伏、伸縮および旋回動自在に設けたブームの先端部に作業台を備えて構成されるブーム式高所作業車が知られている。このブーム式高所作業車においては、作業台に搭乗した作業者が、作業台に備えられた操作装置を操作してブームを起伏、伸縮および旋回させることで、作業台を所望の高所に移動させて高所作業を行うことができる。
【0003】
このようなブーム式高所作業車には一般に、ブームの自重等により生ずる転倒モーメントによって車体が転倒したり、ブームが変形するのを防止するための転倒防止装置が備えられている。この転倒防止装置には種々のものが知られているが、例えばブームの先端部の移動が予め定められた許容作業範囲内に限定されるタイプ(作業範囲規制タイプ)のものでは、ブームの先端部が許容作業範囲を越えて外側に移動されるブームの作動を禁止することで、車体の転倒防止が図られている。
【0004】
また、この転倒防止装置を利用して行われる制御として、ブームの倒伏作動時における操作性を高めるためのノンストップ制御が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このノンストップ制御により、倒伏作動中に例えばブームの先端部が許容作業範囲を示す規制線近傍に達した場合には、ブームの倒伏作動のみならずブームの収縮作動も行うことにより、ブームの先端部が規制線に沿うように降下される。このようなノンストップ制御によれば、ブームの倒伏作動によってブームの先端部が規制線に達するような場合であっても、車体の転倒等を防止しながら継続してブームを倒伏させることができるので、操作性を向上させることができる。
【0005】
一方、上記ブーム式高所作業車の中には、ブームの先端部に屈伸自在にアームを設け、このアームの先端部に作業台を設けて構成される屈伸ブーム式高所作業車が存在する(例えば、特許文献2を参照)。ブームに対して上方に屈伸自在にアームを設けた屈伸ブーム式高所作業車では、作業台をより高所に移動させることが可能になり、一方、ブームに対して下方に屈伸自在にアームを設けた屈伸ブーム式高所作業車では、例えば屋根の上等に作業台を到達させやすいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−265199号公報
【特許文献2】特開2001−19395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記屈伸ブーム式高所作業車においても、ノンストップ制御を用いることが考えられており、図9に、屈伸ブーム式高所作業車における従来のノンストップ制御を模式的に示している。ブーム510を倒伏させる操作に基づいてブーム510が倒伏作動されてブーム510の先端部が規制線Lに達するような場合、ブーム510の倒伏作動を規制して車体の転倒防止を図るのではなく、ブーム510を縮小作動させてブーム510の先端部を規制線Lの内側のトレース線TRに沿わせるように降下させることで、車体の転倒防止を図りながらブーム510の倒伏作動を継続して行わせるノンストップ制御が行われる。このノンストップ制御が行われるとき、ブーム510に対するアーム530の屈伸制御は行われないために、アーム530はノンストップ制御が開始された時点でのブーム510に対する屈伸角度のままで降下される。そのため、作業台550に搭乗した作業者が、作業台550を下方に移動させようとして倒伏操作を行った場合に、ブーム510の倒伏および縮小によるブーム510の先端部の移動方向(トレース線TR)に対して、作業台550がこれとは異なる斜め方向(作業台軌跡M)に沿って降下移動される。このために、ノンストップ制御時に、ブーム510の先端部に対する作業台550の相対位置がブーム510の倒伏作動に伴って変化するという課題があった。また、ノンストップ制御時以外においてブーム510を起伏させる場合も同様の課題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ブームの先端部に対する作業台の相対位置を維持しながらブームを起伏させることが可能な屈伸ブーム式高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的達成のため、本発明に係る屈伸ブーム式高所作業車(例えば、実施形態における高所作業車1)は、走行可能な車体と、前記車体に起伏作動および伸縮作動が自在に設けられたブームと、前記ブームの先端部に前記ブームの起伏面内で上下に屈伸作動が自在に設けられたアームと、前記アームの先端部に設けられた作業台と、前記ブームを作動させるための操作が行われるブーム操作手段(例えば、実施形態におけるブーム操作装置10h)と、前記ブーム操作手段に前記ブームを起伏させる起伏操作が行われたときに、前記起伏操作に応じて前記ブームを起伏作動させるとともに前記車体に対する前記アームの揺動角度を所定揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させる制御を行うことが可能な作動制御手段(例えば、実施形態における規制制御部72、バルブ作動制御部74、ノンストップ作動制御部75)とを有したことを特徴とする。
【0010】
なお、前記ブームの先端部(例えば、実施形態におけるブームヘッド15)の位置を検出する先端位置検出手段(例えば、実施形態における旋回角検出器5a、起伏角検出器10a、ブーム長さ検出器10b、ブーム側屈伸角検出器10c、アーム側屈伸角検出器30a、位置算出部71)と、前記車体に対して前記先端部の移動が許容される限界位置である規制線のデータを記憶した規制線データ記憶手段(例えば、実施形態における記憶部73)とを備え、前記作動制御手段は、前記ブーム操作手段への操作に基づいて前記ブームを倒伏作動させるときにおいて、前記先端位置検出手段における検出結果と前記規制線データ記憶手段に記憶されたデータとに基づいて前記先端部が前記規制線を越えると判断したときに、前記ブームの倒伏作動に併せて前記ブームを収縮作動させることで前記先端部を前記規制線に沿わせながら前記ブームを倒伏作動させるノンストップ制御を行うように構成されており、前記作動制御手段は、前記ノンストップ制御を行うときに、前記揺動角度を前記所定揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させる制御を行うことが好ましい。
【0011】
また、前記所定揺動角度が、前記ブーム操作手段への操作により前記ブームが倒伏作動されて前記先端部が前記規制線を越えると判断された時点での揺動角度であることが好ましい。
【0012】
さらに、前記アームを作動させるための操作が行われるアーム操作手段(例えば、実施形態におけるアーム操作装置30h)を備え、前記ノンストップ制御が行われている途中で前記アーム操作手段が操作されたときに、前記作動制御手段は、当該操作に基づいて前記アームを屈伸作動させ、当該操作が解除された後は当該操作が解除された時点での揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させる制御を行って前記ノンストップ制御を継続することが好ましい。
【0013】
また、前記アームは、前記ブームに対して所定屈伸範囲内において屈伸作動が自在に設けられており、前記作動制御手段は、前記先端部を前記規制線に沿わせて倒伏作動させるとともに、前記揺動角度を前記所定揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させるときにおいて、前記アームが前記所定屈伸範囲の限界位置に達し前記限界位置を越えて前記所定屈伸範囲外に前記アームを屈伸作動させる制御が必要なときには、前記アームを前記限界位置に維持する制御を行うことが好ましい。
【0014】
上述の屈伸ブーム式高所作業車において、前記作動制御手段は、前記起伏操作に応じて前記ブームを起伏作動させる制御を行う通常モードと、前記起伏操作に応じて前記ブームを起伏作動させるとともに前記起伏操作が開始された時点での揺動角度に維持するように前記ブームの起伏作動に応じて前記アームを屈伸作動させる制御を行う連動モードとを選択可能に備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る屈伸ブーム式高所作業車は、起伏操作に応じてブームを起伏作動させるとともに車体に対するアームの揺動角度を所定揺動角度に維持するようにアームを屈伸作動させる制御を行うことが可能に構成される。この構成によれば、ブームの起伏作動に応じてアームを屈伸作動させることで、車体に対するアームの揺動角度を所定揺動角度に維持することができ、ブームの先端部に対する作業台の相対位置を維持しつつブームを起伏させることが可能になる。
【0016】
なお、作動制御手段が、ブームの先端部を規制線に沿わせて倒伏作動させるときに、車体に対するアームの揺動角度を所定揺動角度に維持するようにアームを屈伸作動させる制御を行うことが好ましい。この場合には、ノンストップ制御時に、作業台を規制線に沿うように(規制線と平行に)降下させることができ、ブームの先端部に対する作業台の相対位置を維持しながらブームを倒伏作動させる制御が可能になる。
【0017】
また、所定揺動角度が、先端部が規制線を越えると判断された時点での揺動角度であることが好ましい。このように構成された場合、ノンストップ制御時におけるアームの屈伸量を少なくすることができるので、例えばノンストップ制御に伴ってアームが大きく屈伸作動される制御と比較して、作業台に搭乗した作業者に与える違和感を抑えることができる。
【0018】
さらに、ノンストップ制御が行われている途中でアーム操作手段が操作されたときに、この操作に基づいてアームを屈伸させ、その後はこの操作が解除された時点での揺動角度に維持するようにアームを屈伸作動させることが好ましい。この構成の場合、アーム操作手段への操作に基づいてアームを屈伸作動させることで作業者の意思を反映させることができるとともに、この操作が解除された時点でのアームの揺動角度に維持する制御を行うことで、アームの屈伸量を少なくして作業台に搭乗した作業者に与える違和感を抑えることが可能になる。
【0019】
また、作動制御手段は、限界位置を越えて所定屈伸範囲外にアームを屈伸作動させる制御が必要なときに、アームを限界位置に維持する制御を行うことが好ましい。例えば油圧アクチュエータに作動油を供給することでアームを屈伸作動させる構成においてこの制御を行うことで、油圧アクチュエータに過度な(高圧な)作動油が供給され続けることを防止でき、油圧回路の安全を確保できる。
【0020】
上述の屈伸ブーム式高所作業車において、作動制御手段が、起伏操作に応じてブームを起伏作動させる制御を行う通常モードと、起伏操作に応じてブームを起伏作動させる制御および揺動角度を維持するようにアームを屈伸作動させる制御を行う連動モードとを選択可能に備えたことが好ましい。この構成の場合には、作業者は例えば作業環境等に応じて通常モードまたは連動モードを選択することで、目標とする作業位置に素早く且つ安全に作業台を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した高所作業車の制御系統を示したブロック図である。
【図2】上記高所作業車を示す側面図である。
【図3】上記高所作業車を示す平面図である。
【図4】上記高所作業車の中間リンク部材およびアームを示す側面図である。
【図5】中間リンク部材を示す斜視図である。
【図6】上記高所作業車を側方から見たときのブームの許容作業範囲を示した図である。
【図7】ノンストップ制御を説明するための説明図である。
【図8】別のノンストップ制御を説明するための説明図である。
【図9】従来のノンストップ制御を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。以下においては、トラック車両をベースとする車体に屈伸式ブームを搭載して構成される高所作業車1に、本発明を適用した例について説明する。まず、高所作業車1の概要構成について、図2〜図5を参照しながら説明する。
【0023】
この高所作業車1は、図2に示すように、前後輪3a,3bを有して走行可能であり、車体2の前部に運転キャブ2aを有したトラック車両をベースに構成される。この車体2上には、油圧を受けて駆動する旋回モータ9(図1参照)により水平旋回されるように構成された旋回台5が配設されている。ここで、車体2には、車体2に対する旋回台5の旋回角度を検出するための旋回角検出器5aが配設されている(図1参照)。また、図3に示すように、車体2の前後左右の四カ所に下方に伸縮自在なアウトリガ6が設けられており、高所作業を行うときにアウトリガ6を下方に張り出して接地させることで、車体2を持ち上げて安定支持できるようになっている。
【0024】
旋回台5の先端部にはブーム10の基端部がフートピン5bを用いて枢結されており、このブーム10は、旋回台5とブーム10との間に跨設された起伏シリンダ7により起伏動されるようになっている。なお、本実施形態において、ブーム10を起伏動させたときのブーム10の軌跡を含む平面を、ブーム10の起伏面と称することにする。ここで、旋回台5には、車体2に対するブーム10の起伏角θ1を検出するための起伏角検出器10aが配設されている(図1および図6参照)。
【0025】
ブーム10は、図4に示すように、基端ブーム11、第1中間ブーム12、第2中間ブーム13、および先端ブーム14が入れ子式に組み合わされることで、内蔵の伸縮シリンダ19(図1参照)により伸縮動されるように構成されている。先端ブーム14は先端部にブームヘッド15を有し、このブームヘッド15の先端部には、中間リンク部材20がブーム10の起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結される。さらに、中間リンク部材20の先端部には、アーム30がブーム10の起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結される。ここで、ブーム10には、ブーム10の伸縮方向長さNを検出するためのブーム長さ検出器10bが配設されている(図1および図6参照)。
【0026】
中間リンク部材20は、図5に示すように、左右の側部が先端ブーム14およびアーム30と枢結される枠板状に形成される。中間リンク部材20の底面側には、第1油圧シリンダ21および第2油圧シリンダ26が中間リンク部材20の左右方向に互いに並列で、中間リンク部材20の側方から見て互いに交差するように配設される。第1油圧シリンダ21は、第1シリンダチューブ22と第1ピストンロッド23とから構成される。第2油圧シリンダ26は、第2シリンダチューブ27と第2ピストンロッド28とから構成される。
【0027】
ブームヘッド15の上側先端部には、ブーム側リンク連結部16が形成されており、枢結ピンを用いてブーム側リンク連結部16の内側に中間リンク部材20の基端部が枢結される。ブームヘッド15の下側先端部には、ブーム側第1シリンダ連結部17が形成されており、枢結ピンを用いて第1油圧シリンダ21の第1シリンダチューブ22側の端部が枢結される。ここで、ブームヘッド15には、ブーム10に対する中間リンク部材20の揺動角度(ブーム側屈伸角度)を検出するためのブーム側屈伸角検出器10cが配設されている(図1参照)。なお、詳細な図示を省略するが、ブーム側リンク連結部16の近傍に位置する中間リンク部材20の基端部には、第2油圧シリンダ26の第2ピストンロッド28側の端部が枢結されるブーム側第2シリンダ連結部が形成される。
【0028】
アーム30は基端部にアームベース31を有し、このアームベース31に中間リンク部材20等が枢結される。アームベース31の揺動中心側基端部には、アーム側リンク連結部32が形成されており、枢結ピンを用いてアーム側リンク連結部32の外側に中間リンク部材20の先端部が枢結される。アームベース31におけるアーム側リンク連結部32の内側には、アーム側第1シリンダ連結部33が形成されており、第1油圧シリンダ21の第1ピストンロッド23側の端部が枢結される。アームベース31の揺動内周側基端部には、アーム側第2シリンダ連結部34が形成されており、枢結ピンを用いて第2油圧シリンダ26の第2シリンダチューブ27側の端部が枢結される。ここで、アームベース31には、中間リンク部材20に対するアーム30の揺動角度(アーム側屈伸角度)を検出するためのアーム側屈伸角検出器30aが配設されている(図1参照)。
【0029】
アーム30の先端部には、支持部材40がブーム10の起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結される(図4参照)。この支持部材40は垂直ポスト部41を有し、レベリング装置42により支持部材40の揺動制御が行われ、ブーム10の起伏角度位置、ブーム10に対する中間リンク部材20の揺動角度位置、および中間リンク部材20に対するアーム30の揺動角度位置に拘らず、垂直ポスト部41が常に垂直に延びて位置するように支持部材40が揺動制御される。なお、レベリング装置42は、一端がアーム30の中間部に枢結されたレベリングシリンダ43と、両端がアーム30と支持部材40とに枢結されるとともに、中間部がレベリングシリンダ43の他端に枢結されて、レベリングシリンダ43の伸縮作動に応じて支持部材40(垂直ポスト部41)を上下に揺動させるリンク機構44とを有して構成される。
【0030】
このように常時垂直に保持される垂直ポスト部41に水平旋回自在に(首振り自在に)作業台50が取り付けられおり、作業台50は、上述したブーム10の起伏角度位置、中間リンク部材20の揺動角度位置、およびアーム30の屈伸角度位置に拘らず、常に水平に保持される。作業台50には、ブーム10を旋回、伸縮および起伏操作するためのブーム操作装置10h、アーム30を屈伸操作するためのアーム操作装置30h、作業台50を旋回操作するための作業台操作装置50h、および制御モード(詳しくは後述)の選択操作を行うためのモード選択装置60hから構成される上部操作ユニット51が配設されている。また、図2および図3に示すように、旋回台5にはブーム操作装置10h、アーム操作装置30h、作業台操作装置50hおよびモード選択装置60hから構成される下部操作ユニット8が配設されている。なお、ブーム操作装置10h、アーム操作装置30hおよび作業台操作装置50hは例えば傾動操作可能な操作レバーから構成され、一方、モード選択装置60hは例えば回動操作可能な操作ダイヤルから構成される。
【0031】
このように構成される高所作業車1は、中間リンク部材20が、ブーム10とのなす角度が180度近傍となる位置と、ブーム10とのなす角度が90度近傍となる位置との間で揺動可能であり、一方アーム30が、中間リンク部材20とのなす角度が180度近傍となる位置と、中間リンク部材20とのなす角度が90度近傍となる位置との間で揺動可能に構成される。そのため、第1油圧シリンダ21および第2油圧シリンダ26の伸縮作動により、アーム30をブーム10に対して折り重なる状態(図2参照)からほぼ真直ぐに伸びる状態(図4参照)までの範囲で屈伸させることができる。
【0032】
例えばアーム30をブーム10に対して折り重なる状態(図2参照)からほぼ真直ぐに伸びる状態(図4参照)にまで屈伸させるには、まず、第1油圧シリンダ21を伸長作動させることで中間リンク部材20を、ブーム10とのなす角度が90度近傍となる揺動角度位置から、ブーム10とのなす角度が180度近傍となる揺動角度位置まで上方に揺動させる。続いて、第2油圧シリンダ26を伸長作動させることでアーム30を、中間リンク部材20とのなす角度が90度近傍となる揺動角度位置から、中間リンク部材20とのなす角度が180度近傍となる揺動角度位置まで上方に揺動させる。そうすることによりアーム30を、図4に示すようなブーム10に対してほぼ真直ぐに伸びる状態にすることができる。
【0033】
一方、アーム30をブーム10に対してほぼ真直ぐに伸びる状態から折り重なる状態まで屈伸させるには、上述の場合と逆の作動を行わせる。すなわち、まず、第2油圧シリンダ26を縮小作動させてアーム30を、中間リンク部材20とのなす角度が180度近傍となる揺動角度位置から90度近傍となる揺動角度位置まで揺動させる。次に、第1油圧シリンダ21を縮小作動させることで中間リンク部材20、ブーム10とのなす角度が180度近傍となる揺動角度位置から、90度近傍となる揺動角度位置まで揺動させる。そうすることでアーム30を、図4に示すようなブーム10に対して略平行となって折り重なる状態にすることができる。
【0034】
次に、このように構成される高所作業車1の制御構成について、図1および図6を追加参照して説明する。
【0035】
高所作業車1は、起伏シリンダ7等の油圧アクチュエータの作動制御を行うコントローラ70を備えて構成される。コントローラ70は、図1に示すように、位置算出部71、規制制御部72、記憶部73、バルブ作動制御部74およびノンストップ作動制御部75から構成される。
【0036】
図1に示すように、車体2に設けられた油圧ポンプPは図示しない動力源(エンジンや電動モータ等)により駆動され、油圧ポンプPから吐出された作動油は各油圧アクチュエータに対応して設けられた制御バルブV1〜V5に供給されるようになっている。具体的には、起伏シリンダ7の作動を制御する起伏シリンダ制御バルブV1、旋回モータ9の作動を制御する旋回モータ制御バルブV2、伸縮シリンダ19の作動を制御する伸縮シリンダ制御バルブV3、第1油圧シリンダ21の作動を制御する第1油圧シリンダ制御バルブV4、および、第2油圧シリンダ26の作動を制御する第2油圧シリンダ制御バルブV5に、作動油が供給される。
【0037】
ブーム操作装置10h、アーム操作装置30hまたは作業台操作装置50hが作業者により操作されると、その操作方向および操作量に対応した操作信号が出力され、その操作信号がコントローラ70のバルブ作動制御部74に入力される。バルブ作動制御部74は、入力された操作信号に応じた方向および量で対応する制御バルブV1〜V5のスプール(図示せず)を電磁駆動することで、操作信号に対応した方向および量(単位時間当たりの量)の作動油が制御バルブV1〜V5から油圧アクチュエータへ供給される。このように、ブーム操作装置10h、アーム操作装置30hおよび作業台操作装置50hに対する操作に応じて、油圧アクチュエータを作動させることができるように構成されている。
【0038】
また、上述した検出器5a,10a,10b,10c,30aにおいて検出された情報は、コントローラ70の位置算出部71に入力されるようになっている。位置算出部71は、検出器5a,10a,10b,10c,30aから入力された情報に基づいて、車体2に対するブーム10の先端部(例えばブームヘッド15)の位置、ブーム10に対するアーム30の屈伸角度、および車体2に対するアーム30の揺動角度θ2(図6参照)を算出し、算出して得られたこれらの情報を検出器5a,10a,10b,10c,30aから入力された情報とともに、規制制御部72およびノンストップ作動制御部75に出力する。
【0039】
ここで、位置算出部71は、ブーム側屈伸角検出器10cおよびアーム側屈伸角検出器30aにおいて検出された情報に基づいてブーム10に対するアーム30の屈伸角度を算出し、さらに、このブーム10に対するアーム30の屈伸角度とブーム10の起伏角度とを基にして、車体2に対するアーム30の揺動角度θ2を算出するように構成される。なお、位置算出部71は、或るブーム10の旋回角度におけるブーム10の先端部の位置を例えば座標(θ1、N)として求めるように構成される。
【0040】
コントローラ70の記憶部73には、車体2を転倒等させることなくブーム10の先端部を移動させることができる領域として定められた許容作業範囲のデータが記憶されている。許容作業範囲の外縁は、ブーム10の伸縮長さがとり得る範囲とブーム10の起伏角度がとり得る範囲との関係から自ずと画定される外縁(作動限界線と称する)と、構造上はブーム10の先端部を移動させ得るが、転倒モーメントによって車体2が転倒するのを防止したりブーム10が変形するのを防止する観点から、ブーム10の先端部の移動を禁止する限界線として設定される外縁(規制線と称する)とから構成される。高所作業車1に設定される許容作業範囲の一例を図6に示す通りであり、直線L1,L2、曲線L3,L4および直線L5によって囲まれる領域からなる。直線L1、直線L2、曲線L3および曲線L4は作動限界線であり、直線L5は規制線である。
【0041】
ここで、実際に車体2に作用する転倒モーメントに基づいて規制線L5を設定した場合、規制線L5は垂直方向に伸びる直線として設定される。しかし、本実施形態で例示する規制線L5は、上側部分に対して下側部分が若干外側(車体2の後方)に拡がるように設定される。これは、ブーム10が伸長されてブーム10の先端部が上方に位置するのに従って、ブーム10は風等の影響を受けて揺れやすくなることを考慮し、このようにブーム10が揺れた場合であっても転倒モーメントにより車体2が転倒しないようにするためである。なお、作業台50を上方に移動させることができる許容範囲を、構造上移動できる範囲よりも低く設定する場合には、作動限界線L4を規制線として設定することもできる。
【0042】
ここで実際には、ブーム10に対するアーム30の屈伸角度や作業台50の首振り位置に応じて車体2に作用する転倒モーメントは変化するが、本実施形態では、最も大きな転倒モーメントが発生する位置にアーム30が屈伸され且つ作業台50が首振り旋回された状態であっても車体2の転倒を防止できるように規制線L5を設定した場合を例示している。なお、このようにして規制線L5を設定する方法以外にも、例えばブーム10に対するアーム30の屈伸角度や作業台50の首振り位置を検出し、その検出結果に応じて規制線L5を水平方向に移動させて設定する方法も可能である。
【0043】
上記説明から分かるように、高所作業車1の構造上、ブーム10の先端部は作動限界線L1,L2,L3,L4の外側へ移動することはあり得ないが、ブーム10に対する作動規制が行われない場合には規制線L5の外側へ移動させることが可能である。規制制御部72は、このように規制線L5の外側へブーム10の先端部が移動するようなブーム10の作動を規制する制御を行う。具体的には、まず、位置算出部71により算出されたブーム10の先端位置情報と、記憶部73に記憶された許容作業範囲のデータとを読み込み、これらの比較を行う。比較の結果、ブーム10の先端部が規制線L5を外側に越えようとしていると判断したときには、ブーム10の先端部を規制線L5の外側へ移動させるブーム操作装置10hの操作信号がコントローラ70(バルブ作動制御部74)に入力されても、その操作信号に基づいた作動が行われないように、バルブ作動制御部74から制御バルブV1〜V5への作動信号の出力を規制する。例えばブーム10を規制線L5に向けて伸長させる操作が行われる場合、ブーム30の先端部が規制線L5近傍に達した時点で、ブーム10を伸長させる操作が継続されているにも拘わらずブーム10の伸長作動は停止される。
【0044】
なお、本実施形態では、ブーム10の先端位置を基にして転倒モーメントによる車体2の転倒を防止する構成例について説明している。これは、車体2に対して起伏等される部分のうちで最も重量が大きい部分がブーム10であることから分かるように、このブーム10の先端位置と車体2に作用する転倒モーメントとがほぼ対応しているためである。よって、ブーム10の先端位置を基にすることで、転倒モーメントによる車体2の転倒を精度良く防止できる。
【0045】
記憶部73には、図7に示すように、規制線L5よりも内側(車体2側)の領域内に規制線L5に沿って設けられたトレース線TRのデータと、トレース線TRよりも内側の領域内にトレース線TRに沿って設けられた基準線Sのデータとが記憶されている。ここで、トレース線TRや基準線Sは、上述のように規制線L5から所定の水平方向距離を持つ点の集合として設定してもよいが、フートピン5bを含む鉛直線PL(図6参照)など、規制線L5以外のものを基準にして設定するようにしてもよい。なお、これらトレース線TRおよび基準線Sの各データは、数式あるいは点(座標値)の集合として記憶部73に記憶されている。
【0046】
コントローラ70のノンストップ作動制御部75は、ブーム10が倒伏作動されている途中において、位置算出部71からの情報に基づいてブーム10の先端部が規制線L5に達しようとしていると判断したときに、ブーム10の倒伏作動に併せてブーム10の収縮作動を行わせることにより、ブーム10の先端部をトレース線TRに沿って下降移動させる制御を行うようになっている。以下においては、この制御を「ノンストップ制御」と称する。
【0047】
また、規制制御部72には、ブーム操作装置10hにブーム10を起伏させる操作が行われるときに、この起伏操作に基づいてブーム10を起伏させる通常モードと、この起伏操作に基づいてブーム10を起伏させるとともに、この起伏操作が開始された時点での車体2に対するアーム30の揺動角度を維持するように、ブーム10の起伏に応じてアーム30を屈伸させる連動モードとが、選択可能に設定されている。すなわち、連動モードが選択された場合には、起伏操作に基づく単一の操作信号が入力されることによって、ブーム10とアーム30とを連動して作動させる制御が行われる。
【0048】
このため作業者は、作業環境等に応じて通常モードまたは連動モードを選択することで、目標とする作業位置に素早く且つ安全に作業台50を移動させることができる。ここで、通常モードまたは連動モードを選択する選択操作はモード選択装置60hに対して行われ、モード選択装置60hで選択されたモードに対応した信号が、モード選択装置60hから規制制御部72に出力される。規制制御部72は、モード選択装置60hからの信号に基づいてバルブ作動制御部74の制御を行うようになっている
【0049】
以下においては、本発明の特徴部分であるノンストップ作動制御部75によるノンストップ制御について詳しく説明する。
【0050】
ノンストップ作動制御部75は、ノンストップ制御開始の第1条件であるブーム10が倒伏作動されていることを、ブーム操作装置10hの操作状態に基づいて、あるいは位置算出部71により算出されるブーム10の先端部の移動軌跡に基づいて検出する。また、ノンストップ制御開始の第2条件であるブーム10の先端部が規制線L5に達しようとしていることを、位置算出部71により算出されるブーム10の先端部の位置と、記憶部73に記憶された基準線Sに関するデータとを比較することにより検出する。ノンストップ作動制御部75は、上記第1および第2条件の両方が満たされたことに基づいてノンストップ制御を開始する。それでは、ブーム10の先端部が作動限界線L4の内側に位置する状態から、規制線L5に近づくように倒伏操作された場合に行われるノンストップ制御について、図7を参照しながら説明する。
【0051】
図7に示す倒伏状態Aのように、ブーム操作装置10hの操作に基づいてブーム10が規制線L5に近づくように倒伏され、且つブーム10の先端部が基準線Sの内側に位置する状態では、ノンストップ作動制御部75は、上記第1条件は満たすが上記第2条件が満たされていないと判断してノンストップ制御を行わない。このようにして、ブーム10の先端部が基準線S上に達するまでは引き続きノンストップ制御は行われず、ブーム操作装置10hの操作に基づいてブーム10を倒伏させる作動のみが行われる。
【0052】
ここで、通常モードが選択されている場合には、ブーム10の先端部が基準線S上に達してノンストップ制御が開始されるまでの間、アーム操作装置30hに対して操作が行われない限り、倒伏操作が開始された時点でのブーム10に対するアーム30の屈伸角度のままで、倒伏操作に応じてブーム10が倒伏される。一方で、連動モードが選択されている場合には、倒伏操作に応じてブーム10を倒伏させるとともに、この倒伏操作が開始された時点での車体2に対するアーム30の揺動角度を維持するようにアーム30を屈伸させる制御が行われる。
【0053】
倒伏状態Bにおいて、ブーム10の先端部が基準線S上に達すると、ノンストップ作動制御部75は、上記第1条件に加えて第2条件も満たされたと判断してノンストップ制御を開始する。このノンストップ制御により、ブーム操作装置10hへのブーム10を倒伏させる操作に基づいて、ブーム10を倒伏作動させながら同時にバルブ作動制御部74を介して伸縮シリンダ制御バルブV3を制御してブーム10を縮小させる制御が行われる。
【0054】
ここで、図7に示すように、倒伏状態Bにおいてブーム10の縮小を開始したとき、ブーム10の倒伏速度によってはブーム10の先端部(軌跡線K)がトレース線TRの外側に位置する場合があるが、ブーム10の倒伏速度に拘わらずブーム10の先端部が規制線L5の外側に出ることのない位置に基準線S(ブーム10の縮小開始の判断基準となる線)が設定されている。
【0055】
一方、倒伏状態Bにおいてノンストップ制御が開始されると、ノンストップ作動制御部75は、このノンストップ制御開始時点での車体2に対するアーム30の揺動角度θbを記憶する。ノンストップ作動制御部75は、この揺動角度θbを参照しながらノンストップ制御を行うことで、ブーム10の倒伏作動に伴って変化するアーム30の揺動角度(車体2に対するアーム30の揺動角度)を、ノンストップ制御開始時の揺動角度θbに維持する制御を行う。具体的には、バルブ作動制御部74を介して第1油圧シリンダ制御バルブV4または第2油圧シリンダ制御バルブV5を制御して第1油圧シリンダ21または第2油圧シリンダ26を伸縮させることでアーム30を屈伸させて、アーム30の揺動角度をθbに維持する制御を行う。例えば図7に示すように、ブーム10の倒伏に伴って車体2に対するアーム30の揺動角度が増大する場合には、その揺動角度の増大分を打ち消すように上方に向けてアーム30を屈伸させる制御が行われる。
【0056】
ここで、通常モードが選択されている場合には、ブーム10の先端部が基準線S上に達してノンストップ制御が開始されると、上述のようにアーム30の揺動角度をθbに維持する制御が行われる。一方で、連動モードが選択されている場合には、倒伏状態Bに達するまでの間に維持してきたアーム30の揺動角度を引き続き維持する制御、もしくは目標とするアーム30の揺動角度をθbに切り換えて維持する制御が行われる。
【0057】
このようにして、ブーム10の倒伏作動および縮小作動に加えて、倒伏角度に対応した分だけアーム30を屈伸させることにより、倒伏状態Bにおいてノンストップ制御が開始された後、倒伏状態Bから倒伏状態C、倒伏状態Cから倒伏状態Dへとブーム10が倒伏されても、車体2に対するアーム30の揺動角度はノンストップ制御開始時の揺動角度θbに維持される。このように、ノンストップ制御において、車体2に対するアーム30の揺動角度を維持する制御を行うことで、ブーム10の先端に対する作業台50の相対位置関係を常に一定に保つことができ、規制線L5に沿ったブーム10の先端部の移動に対して相対位置関係を保ちながら規制線L5に対して平行に作業台50を降下させることができる。
【0058】
ところで、作業者は作業台50を降下させようとしてブーム10を倒伏させる操作を行う場合に、ブーム10の先端部の位置によっては、そのままブーム10を倒伏作動させると、転倒モーメントにより車体2が転倒する虞が生じることがある。このときに、ブーム10の倒伏作動を規制することで車体2の転倒を防止するのではなく、ブーム10を縮小作動させてブーム10の先端部を規制線Lの内側のトレース線TRに沿わせるように降下させることで、車体2の転倒防止を図りながらブーム10の倒伏作動を継続して行わせるのが従来のノンストップ制御である。本発明を適用した高所作業車1においては、このノンストップ制御時に、上述したようにして規制線L5に対して平行に作業台50を降下させるようにアーム30が屈伸制御される構成となっているため、ブーム10の先端部に対する作業台50の相対位置を維持しながらブーム10を倒伏させるノンストップ制御が可能になる。
【0059】
上記ノンストップ制御が行われている途中(例えば、図7に示す倒伏状態C)において、ブーム操作装置10hに対するブーム10を倒伏させる操作に加えて、アーム操作装置30hに対してアーム30を屈伸させる操作が行われる場合がある。この場合、アーム操作装置30hが操作されたという操作信号が、バルブ作動制御部74を介してノンストップ作動制御部75に入力される。この操作信号の入力が継続している間ノンストップ作動制御部75は、ブーム操作装置10hに対する操作に基づいてブーム10を倒伏および縮小させながら、一方で、上述したアーム30の揺動角度をノンストップ制御開始時の揺動角度θbに維持する制御を中止して、アーム操作装置30hに対する操作に基づいてアーム30を屈伸させる制御を行う。なお、ブーム10を倒伏させる操作に加えてアーム30を屈伸させる操作が行われた場合に、揺動角度θbに維持する制御を中止するのではなく、揺動角度θbに維持する制御に加えてアーム操作装置30hに対する操作に基づいてアーム30を屈伸させる制御を行っても良い。
【0060】
このようにして、アーム操作装置30hに対する操作に基づいて、車体2に対するアーム30の揺動角度が例えばθcとなるように屈伸された場合(アーム操作装置30hへの操作が解除されて操作信号の入力が途絶えた時点でのアーム30の揺動角度がθcである場合)、ノンストップ作動制御部75は、倒伏状態Bの時点で記憶したノンストップ制御開始時の揺動角度θbをθcに更新して記憶する。そうすることで、以降のノンストップ制御においてノンストップ作動制御部75は、車体2に対するアーム30の揺動角度を更新後の揺動角度θcに維持するように、第1油圧シリンダ21または第2油圧シリンダ26を伸縮させることでアーム30を屈伸させる制御を行う。
【0061】
また、図7の倒伏状態Bに2点鎖線130として示すように、ノンストップ制御開始時においてブーム10に対してアーム130がほぼ一直線上に位置するように大きく屈伸している場合もあり得る。この場合、上述のノンストップ制御により、ブーム10が倒伏および縮小されると同時にアーム130が屈伸されると、例えば倒伏状態Cにおいて屈伸限界位置(ブーム10に対するアーム130の屈伸角度が略180度となる位置)に達することがある。この場合、ノンストップ作動制御部75は、位置算出部71から出力されるブーム10に対するアーム30の屈伸角度を基にして、アーム130が屈伸限界位置にまで屈伸されたことを検出する。
【0062】
このことを検出するとノンストップ作動制御部75は、以降のノンストップ制御において、アーム130を屈伸限界位置に位置させた状態を維持したままで、ブーム10を倒伏作動および縮小作動させる制御を行う。車体2に対するアーム130の揺動角度を維持するためには、屈伸限界位置を越えてアーム130を屈伸させなければならないのであるが、高所作業車1の構造上そのような屈伸ができないので、屈伸限界位置に位置させた状態を維持する制御を行う。この制御により、アーム130が屈伸限界位置に達したときに、その位置を越えて屈伸できないにも拘わらず、第1油圧シリンダ21または第2油圧シリンダ26に過度な作動油が供給されることを防止できる。
【0063】
上述の実施形態においては、ノンストップ作動制御部75がノンストップ制御開始時点での車体2に対するアーム30の揺動角度を記憶し、アーム30がこの記憶された揺動角度となるように屈伸制御を行う例について説明を行ったが、この制御以外にも例えば図8に示すような制御も可能である。すなわち、ブーム操作装置10hに対するブーム10を倒伏させる操作に基づいて、倒伏状態Eから倒伏状態Fに達するまでブーム10が倒伏されてブーム10の先端部が基準線S上に達すると、上記第1および第2条件が満たされてノンストップ制御が開始される。
【0064】
このとき、ノンストップ作動制御部75は、ブーム10を倒伏作動および縮小作動させると同時に、位置算出部71から出力される車体2に対するアーム30の揺動角度を基にして、アーム30を車体2に対して平行となるように屈伸させる制御を行う。例えば図8の倒伏状態Fに示すように、アーム30が車体2に対して上方に屈伸されている場合には、アーム30を下方に向けて屈伸させることで車体2に対して平行となるように制御を行う。この制御により、例えば倒伏状態Fから倒伏状態Gにまで倒伏される間に、車体2に対してアーム30が平行となる位置にまで屈伸されたとすると、これ以降のノンストップ制御においては、ブーム10の倒伏作動に拘わらずアーム30を車体2に対して平行に維持するようにアーム30を屈伸させる制御が行われる。
【0065】
図8に示す制御が行われることで、例えば倒伏状態Gから倒伏状態Hへとブーム10が倒伏された場合でも、このときのブーム10の倒伏に拘わらずアーム30は車体2に対して平行となった状態が維持される。この図8に示すノンストップ制御によれば、車体2に対して平行にアーム30を位置させることで、これ以降のノンストップ制御においてブーム10の先端に対する作業台50の相対位置関係を常に一定に保つことができ、規制線L5に沿ったブーム10の先端部の移動に対して相対位置関係を保ちながら規制線L5に対して平行に作業台50を降下させることができる。よって、ブーム10の先端部に対する作業台50の相対位置を維持しながらブーム10を倒伏させるノンストップ制御が可能になる。なお、ノンストップ制御が開始される倒伏状態Fにおいて、例えば2点鎖線230で示すようにアーム30が車体2に対して下方に屈伸されている場合には、アーム30を上方に向けて屈伸させた上で車体2に対して平行となるように屈伸制御が行われる。
【0066】
上述の実施形態では、旋回、起伏および伸縮自在な4段式のブーム10を例示して説明を行っているが、本発明はこの構成のブームを搭載した高所作業車に限定して適用されるものではない。例えばブーム10は、2段式、3段式または5段式以上に構成されていても良く、少なくとも起伏動および伸縮動が自在に構成されていれば良い。
【0067】
上述の実施形態においては、伸縮することなく全長が一定のアーム30を用いた構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定して適用されるものではない。例えば、入れ子式に構成することで伸縮自在に構成されたアームを備えた高所作業車にも、本発明を同様に適用可能である。この構成の場合には、アームの伸縮方向長さを検出するためのアーム長さ検出器(図示せず)を配設することで、アームの移動位置も考慮した規制線L5を設定できる。
【0068】
上述の実施形態では、ブーム10の下側においてアーム30が屈伸自在となった高所作業車に本発明を適用した例について説明したが、この高所作業車以外にも、例えばブーム10の上側またはブーム10の上下両側においてアーム30が屈伸自在となった高所作業車に本発明を適用できる。
【0069】
上述の実施形態においては、アーム30とブーム10との間に中間リンク部材20を設け、2つの第1油圧シリンダ21および第2油圧シリンダ26を伸縮させることで、ブーム10に対してアーム30を屈伸させる構成の高所作業車に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの構成の高所作業車に限定して適用されるものではない。例えば中間リンク部材20を備えず、ブームの先端部にアームの基端部が直接枢結された構成の高所作業車にも、本発明を適用できる。
【0070】
上述の実施形態においては、前後輪3a,3bを有して走行可能なトラック車両をベースに構成される高所作業車に本発明を適用した例について説明を行ったが、本発明はこの高所作業車に限定して適用されるものではない。例えば、クローラを有して走行可能な車体に屈伸式ブームを搭載して構成される高所作業車にも、本発明を適用できる。
【0071】
上述の実施形態においては、ブーム10の先端部(ブームヘッド15)の位置と、この位置に対応した許容作業範囲のデータとを比較することで、転倒モーメントによる車体2の転倒を未然に防止する構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ブーム10の先端部以外の部分であっても、その部分の移動位置と車体2に作用する転倒モーメントとがほぼ対応している場合には、その部分の移動位置を基に車体2の転倒を防止する制御が可能である。
【0072】
上述の実施形態においては、ブーム10に対してアーム30が重なった状態と、その状態から略180度屈伸してブーム10に対してアーム30が一直線上に並んだ状態との範囲内で屈伸可能に構成されたアーム30を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。ブーム10に対するアーム30の屈伸可能範囲は、中間リンク部材20の構成、第1油圧シリンダ21および第2油圧シリンダ26のストローク量や取付構成等に応じて変更可能である。
【0073】
上述の図7に示す実施形態では、ブーム10に対してアーム130が一直線上に並ぶ屈伸限界位置に達した場合に、この屈伸限界位置に位置させた状態のままブーム10を倒伏させる制御を例示したが、一方で、ブーム10に対してアーム30が重なる屈伸限界位置に達した場合にも同様に、この屈伸限界位置に位置させた状態のままブーム10を倒伏させるノンストップ制御を行うように構成しても良い。
【0074】
上述の実施形態においては、ブーム10の起伏に併せてアーム30を屈伸させる制御例について説明したが、本発明はこの場合に限定して適用されるものではない。例えば上述した通常モードおよび連動モードとは別に、複数の油圧アクチュエータを組み合わせて作動させる制御を行って、作業台50をブーム操作装置10hの傾動操作方向に水平移動させたり上下方向に垂直移動させる水平垂直モードが選択可能に設けられた高所作業車においては、この水平垂直モードによる作業台50の水平または垂直移動制御と併せて、車体2に対するアーム30の揺動角度を維持するようにアーム30を屈伸させる制御を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 高所作業車(屈伸ブーム式高所作業車)
2 車体
5a 旋回角検出器(先端位置検出手段)
10 ブーム
10a 起伏角検出器(先端位置検出手段)
10b ブーム長さ検出器(先端位置検出手段)
10c ブーム側屈伸角検出器(先端位置検出手段)
10h ブーム操作装置(ブーム操作手段)
15 ブームヘッド(先端部)
30 アーム
30a アーム側屈伸角検出器(先端位置検出手段)
30h アーム操作装置(アーム操作手段)
50 作業台
71 位置算出部(先端位置検出手段)
72 規制制御部(作動制御手段)
73 記憶部(規制線データ記憶手段)
74 バルブ作動制御部(作動制御手段)
75 ノンストップ作動制御部(作動制御手段)
L5 規制線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体に起伏作動および伸縮作動が自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に前記ブームの起伏面内で上下に屈伸作動が自在に設けられたアームと、
前記アームの先端部に設けられた作業台と、
前記ブームを作動させるための操作が行われるブーム操作手段と、
前記ブーム操作手段に前記ブームを起伏させる起伏操作が行われたときに、前記起伏操作に応じて前記ブームを起伏作動させるとともに前記車体に対する前記アームの揺動角度を所定揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させる制御を行うことが可能な作動制御手段とを有したことを特徴とする屈伸ブーム式高所作業車。
【請求項2】
前記ブームの先端部の位置を検出する先端位置検出手段と、
前記車体に対して前記先端部の移動が許容される限界位置である規制線のデータを記憶した規制線データ記憶手段とを備え、
前記作動制御手段は、前記ブーム操作手段への操作に基づいて前記ブームを倒伏作動させるときにおいて、前記先端位置検出手段における検出結果と前記規制線データ記憶手段に記憶されたデータとに基づいて前記先端部が前記規制線を越えると判断したときに、前記ブームの倒伏作動に併せて前記ブームを収縮作動させることで前記先端部を前記規制線に沿わせながら前記ブームを倒伏作動させるノンストップ制御を行うように構成されており、
前記作動制御手段は、前記ノンストップ制御を行うときに、前記揺動角度を前記所定揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の屈伸ブーム式高所作業車。
【請求項3】
前記所定揺動角度が、前記ブーム操作手段への操作により前記ブームが倒伏作動されて前記先端部が前記規制線を越えると判断された時点での揺動角度であることを特徴とする請求項2に記載の屈伸ブーム式高所作業車。
【請求項4】
前記アームを作動させるための操作が行われるアーム操作手段を備え、
前記ノンストップ制御が行われている途中で前記アーム操作手段が操作されたときに、
前記作動制御手段は、当該操作に基づいて前記アームを屈伸作動させ、当該操作が解除された後は当該操作が解除された時点での揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させる制御を行って前記ノンストップ制御を継続することを特徴とする請求項2または3に記載の屈伸ブーム式高所作業車。
【請求項5】
前記アームは、前記ブームに対して所定屈伸範囲内において屈伸作動が自在に設けられており、
前記作動制御手段は、前記先端部を前記規制線に沿わせて倒伏作動させるとともに、前記揺動角度を前記所定揺動角度に維持するように前記アームを屈伸作動させるときにおいて、前記アームが前記所定屈伸範囲の限界位置に達し前記限界位置を越えて前記所定屈伸範囲外に前記アームを屈伸作動させる制御が必要なときには、前記アームを前記限界位置に維持する制御を行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の屈伸ブーム式高所作業車。
【請求項6】
前記作動制御手段は、
前記起伏操作に応じて前記ブームを起伏作動させる制御を行う通常モードと、
前記起伏操作に応じて前記ブームを起伏作動させるとともに前記起伏操作が開始された時点での揺動角度に維持するように前記ブームの起伏作動に応じて前記アームを屈伸作動させる制御を行う連動モードとを選択可能に備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の屈伸ブーム式高所作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95548(P2013−95548A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238921(P2011−238921)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】