屋上通気装置とその設置方法
【課題】 位置調整や再調整を低減して通気管回りを覆う工事を従来よりも格段に省力化でき、かつ屋上防水等の工事を早期に着手でき、さらに、メンテナンスの必要性も低減できる屋上通気装置とその設置方法を提案する。
【解決手段】 屋上スラブ1を鉛直に貫通する貫通孔2内に埋設された管連結部材 (ソケット)12と、管連結部材に下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管14と、通気立上管の上端開口14aを間隔を隔てて覆う立上管保護部材16とを備える。立上管保護部材16は、上端16aが閉じ下端16bが開口し側部に通気孔16cを有する逆さ容器形状であり、その上端16aが通気立上管14に着脱可能に連結され下端16bが屋上スラブ上に位置する。
【解決手段】 屋上スラブ1を鉛直に貫通する貫通孔2内に埋設された管連結部材 (ソケット)12と、管連結部材に下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管14と、通気立上管の上端開口14aを間隔を隔てて覆う立上管保護部材16とを備える。立上管保護部材16は、上端16aが閉じ下端16bが開口し側部に通気孔16cを有する逆さ容器形状であり、その上端16aが通気立上管14に着脱可能に連結され下端16bが屋上スラブ上に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上スラブを通して排水立て管の上部に外気を取り入れる屋上通気装置とその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やビルなどの高層建築における排水立て管は、その内部を雑排水がスムースに流下するために、その上部に外気を取り入れる必要がある。そのため、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管と、この通気管を外気に連通させて外気を取り入れる外気導入部とが設けられる。以下、かかる外気導入部に用いる装置を、「屋上通気装置」と呼ぶ。
【0003】
図5は、屋上スラブを貫通する従来の屋上通気装置の構造図である。この図において、51は鉄筋コンクリート製の屋上スラブ、52は通気管、53は通気管の上部を覆う鉄筋コンクリート製の保護体、54は通気口カバーである。
しかしながら、このような従来の屋上通気装置は、通気管52を屋上スラブ51を貫通して配設した後に、保護体53の鉄筋の配筋と型枠を形成してコンクリートを打設する必要があり、さらにその後、型枠の脱型、断熱材55の敷設、防水層56a,56bの施工など、多くの工程と手間を必要とする問題があった。
【0004】
そこで、主に保護体のコンクリート打設工程を簡略化又は省略するために、特許文献1〜4が既に提案されている。
【0005】
特許文献1の「屋上スラブ置型ユニット」は、図6に示すように、上端が閉塞された筒型構造をなし、その側壁64に連通孔65が穿設されるとともに、その下端にて屋上スラブ67上に載置固定されるユニット本体62と、一端がユニット本体62の下端側に突き出して配置され他端がユニット本体62の内部を通して連通孔65に嵌合した導管63とから構成されている。また、ユニット本体62の内部には導管63を包み込む状態で断熱材66が充填されている。
【0006】
特許文献2の「通気管専用屋上ユニット」は、図7に示すように、屋上スラブ層に固定するためのアンカーユニット71により固定された通気管75より大なる断面、裾部を有する筒体77、通気管75が筒体頂部面より上まで延びていると共に、筒体と通気管の間が密閉され、さらに筒体頂部にスペーサー金具76を用いて間隙を設けて取り付けられたフード74からなり、かつ屋上スラブ層上面に設けられた防水層78が筒体77の壁面までカバーしているものである。
【0007】
特許文献3の「鳩小屋の施工法」は、図8に示すように、表面全面に格子鉄筋82を溶接した壁用骨格部材80の4枚を屋上スラブ枠84の上に断面長方形状に設置し、各接合部に補強鉄筋を配筋し、4枚の部材80で囲まれた部分の屋上スラブ型枠を撤去して開口部85を形成し、各壁用骨格部材80の格子鉄筋側にモルタルを施工するものである。屋上スラブコンクリートの打設は、上記補強鉄筋の配筋後に施工する。
【0008】
特許文献4の「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」は、図9に示すように、屋上の床を構成するコンクリート床壁93内に、筒状部95とその上縁から側方に延成された受皿部96とを備えた打込支持体92を一体的に埋設して、その受皿部96をコンクリート床壁93の上面に配置し、かつその筒状部95によってコンクリート床壁93を上下方向に貫通する挿通孔94を形成した後、下端に鍔縁97を備えた継手管体98を受皿部96に乗載して立設し、鍔縁97をボルト等で固定し、さらに、継手管体98の下端部にコンクリート床壁93の挿通孔94を挿通させた通気管99を接続するようにしたものである。
【0009】
【特許文献1】実開平7−20485号公報、「屋上スラブ置型ユニット」
【特許文献2】特開2004−3220号公報、「通気管専用屋上ユニット」
【特許文献3】特開平7−166686号公報、「鳩小屋の施工法」
【特許文献4】特開平10−25865号公報、「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の「屋上スラブ置型ユニット」は、(1)ユニット本体を屋上スラブに固定する際にアンカーボルトを用いるため、アンカーボルトの取付け孔を鉄筋コンクリートの屋上スラブに穿設する手間がかかる、(2)屋上スラブは、実際には陸屋根とはいえ水勾配が必要であり、屋上スラブがわずかに傾斜しており、ユニット本体を垂直にするためアンカーボルトで固定する前に、ユニット本体の設置部分をモルタルで水平にするか、屋上スラブを部分的に削るなどの下地調整が必要であり、手間がかかる、等の問題があった。
【0011】
特許文献2の「通気管専用屋上ユニット」も、特許文献1と同様に、(1)筒体を屋上スラブに固定する際のアンカーボルトの取付け孔を鉄筋コンクリートの屋上スラブに穿設する手間がかかる、(2)筒体を垂直にするためアンカーボルトで固定する前に、筒体の設置部分をモルタルで水平にするか、屋上スラブを部分的に削るなどの下地調整が必要であり、手間がかかる、等の問題があった。
【0012】
さらに、特許文献1、2では、(3)基本的に通気管回りを覆う工事が完了しないかぎり、屋上防水工事ができないという問題点があった。
【0013】
特許文献3の「鳩小屋の施工法」は、アンカー止めなどの手間がなく、また従来のように鉄筋コンクリートで通気管を覆う構造よりも施工を簡略化できるが、屋上スラブコンクリートの打設が、補強鉄筋の配筋後となるため、(3)屋上スラブ完成後に行う屋上防水工事が更に大幅に遅れる問題があった。
【0014】
特許文献4の「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」は、(4)コンクリート床壁に埋設する打込支持体が、コンクリートの圧力で傾き打込支持体の位置調整又は再調整が必要になりやすい。(5)また、受皿部上面やそのネジ孔に異物が混入しやすく、打込支持体の清掃作業等に手間がかかる。特に屋上スラブのコンクリート打設の際、ネジ孔にコンクリートが入らないように養生されるが、養生がとれてコンクリートが入り込んだ場合大変面倒である。(6)さらに、人や動物(カラスや猫)による衝撃、強風等によりボルトの連結部に大きな応力が作用するため、打込支持体及び継手管体を金属製(例えば鋳物、ステンレス等)にする必要があり、高価になりやすく、かつメンテナンス(経年劣化を防ぐための定期的上塗り塗装など)を十分に行わないと錆による劣化が問題になる場合があった。
【0015】
本発明は、これらの問題に鑑み創案されたものである。すなわち本発明の目的は、位置調整や再調整を低減して通気管回りを覆う工事を従来よりも格段に省力化でき、かつ屋上防水等の工事を早期に着手でき、さらに、メンテナンスの必要性も低減できる屋上通気装置とその設置方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に埋設された管連結部材と、該管連結部材に下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管と、該通気立上管の上端開口を間隔を隔てて覆う立上管保護部材とを備え、
該立上管保護部材は、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状であり、その上端が通気立上管に着脱可能に連結され下端が屋上スラブ上に位置する、ことを特徴とする屋上通気装置が提供される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記管連結部材に上端が嵌合し、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管を有する。
【0018】
また、前記通気立上管の上端に固定され、水平に延び、鉛直な雌ネジ部を有する接続金物を備え、前記立上管保護部材は、前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部をもった連結ボルトを通す貫通孔を有する。
【0019】
また、本発明によれば、屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に管連結部材とこれに下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管とを埋設し、次いで屋上スラブの表面及び通気立上管の外周を覆うように第1の防水層を形成し、その後、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状の立上管保護部材をその下端が屋上スラブ上に位置するように通気立上管に連結する、ことを特徴とする屋上通気装置の設置方法が提供される。
【0020】
また本発明の好ましい実施形態によれば、前記第1防水層を形成後、立上管保護部材の連結前に、更に屋上スラブの表面に断熱層を形成し、更にその表面及び通気立上管の外周を覆うように第2の防水層を形成する。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の装置及び方法によれば、(1)屋上スラブの貫通孔内に埋設された管連結部材に立上管保護部材が着脱可能に連結されるので、アンカーボルト等の取付部が不用であり取付け穴等を穿孔する手間を無くすことができる、また、(2)中空円筒形の通気立上管は管連結部材に下端が嵌合して取り付けられるので、通気立上管を垂直にするためのモルタル作業や下地調整が不用となる。さらに、(3)通気管回りの工事完了前に、管連結部材に通気立上管の下端を嵌合した状態で、早期に屋上防水工事に着手できる。
【0022】
また、(4)コンクリート床壁に埋設する管連結部材が、コンクリートの圧力等でわずかに傾いても、これを覆って立上管保護部材を取り付けることで、通気管を外気に連通させて外気を取り入れる機能を損なうことなくそのまま維持できるので、管連結部材の位置調整又は再調整を不用にできる。さらに、(5)立上管保護部材の取付け部は、通気立上管に後付けするので、取付け部の異物混入を防ぎ、その清掃等の手間を無くすことができる。また、(6)人や動物による衝撃、強風等を受けても、立上管保護部材の下端が屋上スラブ上に位置するので、立上管保護部材を介して直接屋上スラブに力を分散させることができ、通気立上管への伝達力を大幅に低減し、通気立上管を樹脂等で構成することができる。従って、安価にできるとともに、上塗り塗装などのメンテナンスの必要性を低減又は無くすことができる。
【0023】
従って、位置調整や再調整を低減して通気管回りを覆う工事を従来よりも格段に省力化でき、かつ屋上防水等の工事を早期に着手でき、さらに、メンテナンスの必要性も低減できる。
また、通気立上管が鉛直で曲がりがないため清掃しやすい。さらに、立上管保護部材は屋上防水層上に載置するものなので、立上管保護部材によって断熱層を寸断することなく通気立上管の回りまで施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の屋上通気装置の横断面図である。この図に示すように、本発明の屋上通気装置10は、管連結部材12、中空円筒形の通気立上管14、及び立上管保護部材16を備える。
【0026】
管連結部材12は、この例では同径の管を鉛直に連結するための中空円筒形管継手(ソケット)であり、内部に管端を支持するリング状の鍔部を有する。しかし、本発明はこれに限定されず、通気立上管14の下端を支持でき、下方に後述する通気管22を内部が連通した状態で連結でき、かつ屋上スラブ1内に固定される限りで、任意の自由な構造であってもよい。
【0027】
管連結部材12は、屋上スラブ1を鉛直に貫通する貫通孔2内に埋設して設置される。この管連結部材12の埋設・設置は、屋上スラブ1を形成するコンクリートの打設と同時に行うのが好ましいが、本発明はこれに限定されず、屋上スラブ1の完成後に貫通孔2内に埋設・設置し、モルタル等で固定してもよい。
管連結部材12の材質は、好ましくは硬質プラスチック(例えば、塩化ビニール樹脂)であるが、アルミニウム、銅合金等の耐食性金属であってもよい。
【0028】
中空円筒形の通気立上管14は、この例では鉛直直管であり、両端が軸線に垂直に切断されそれぞれ開口している。通気立上管14の長さは、下端が管連結部材12に嵌合し、かつその上端が屋上スラブ1より所定の長さLを上方に突き出すように設定される。この所定の長さLは、後述する通気立上管まわりの防水層の必要高さ等から任意に設定することができる。
通気立上管14の材質は、好ましくは硬質プラスチック(例えば、塩化ビニール樹脂)であるが、アルミニウム、銅合金等の耐食性金属であってもよい。
図1において、鉄筋コンクリート造の屋上スラブ1に通気立上管14およびソケット12が埋設状態にあり、通気立上管14と通気管22は、ソケット12を介して接続されている。
なお、通気管22は耐熱二層管を使用している。またソケット12は、通気立上管14や通気管22の伸縮を相互に伝えない役割をもたせるものであり、隙間を設けて接続される。
【0029】
図1において、本発明の屋上通気装置10は、更に通気立上管14の上端に固定された接続金物18を備える。
図2は、接続金物の斜視図である。図1及び図2に示すように、接続金物18は、通気立上管14の上端開口14aを直径方向に跨いで水平に延び、その中間部に鉛直な雌ネジ部18aを有し、両端部にビス孔18bを有する。中間部の雌ネジ部18aは、接続金物18に直接形成しても、ナット等を固定して形成してもよい。
接続金物18は、通気立上管14の上部を挟むように設置し、ビス孔18bを通るビス(好ましくはステンレス製)により、その両端が通気立上管14の上端開口14aに固定される。
【0030】
図1に示すように、立上管保護部材16は、通気立上管14の上端開口14aを間隔を隔てて覆い、上端開口14aから雨水や異物が直接入らないようになっている。この間隔は、例えば、1cm〜10cmであり、上端開口14から外部までの空気の流通抵抗が顕著に増大しない範囲で任意に設定することができる。
【0031】
立上管保護部材16は、図に示すように、上端16aが閉じ、下端16bが開口し、側部に複数の通気孔16cを有する逆さ容器形状である。通気孔16cは内部に雨水が侵入しにくくかつ通気性が良い形状であるのがよい。
実施例では、縦方向が2cm程度の横長スリットとしてある。隙間に巣を作る最も小さい鳥としては、ドバト、ムクドリなどがあり、2cmという隙間は、これら鳥類の侵入が防止できる寸法である。従って防鳥網などが不要になる。
また、下端16bには、切欠け部16dが設けられ、内部に侵入した雨水を排水するようになっている。
【0032】
また、立上管保護部材16の上端16aには、接続金物18の雌ネジ部18aと上下に一致する位置に貫通孔17を有する。この貫通孔17を通して連結ボルト19(好ましくはステンレス製)を鉛直に通し、その雄ネジ部を雌ネジ部18aと螺合させることにより、立上管保護部材16の上端を通気立上管14に着脱可能に固定する。またこの固定の際、下端が屋上スラブ1の上面に位置し、立上管保護部材16の自重およびこれに作用する外力を屋上スラブに分散して伝達するようになっている。
なお、コンクリート床壁1に埋設した管連結部材12が、コンクリートの圧力等でわずかに傾いている場合には、これに合わせて接続金物18を傾けて連結ボルト19を螺合させることで、立上管保護部材16を正確に取り付けることができ、通気管を外気に連通させて外気を取り入れる本来の全機能をそのまま維持できる。
【0033】
また、立上管保護部材16を通気立上管14に固定する手段は、上述した接続金物18と連結ボルト19に限定されず、例えば、内部で部分的に嵌合する構造(バヨネット結合等)であってもよい。
【0034】
図3(A)は立上管保護部材16の側面図、図3(B)はその平面図である。
図3(A)に示すように、この例において側面は、略台形状であり、側面のほぼ中間位置に長孔の通気孔16cが設けられている。これにより、通気立上管14への通気を確保でき、雨水の侵入を防止できる。
また、図3(B)の平面図で分かるとおり、平面的には略三角形状の六角形であり、三方に脚が形成されている。このため、屋上スラブ面の傾斜や凹凸に対応しやすく安定した載置が可能になっている。
なお、立上管保護部材16の形状は、上記に限定されるものではなく、側面視が釣鐘状であったり、通気孔の上部に庇を有するものであったり、動植物の形態を模したものなど、様々な形状で構成することが可能である。
通気孔16cも、横長孔に限定されるものではなく、円形、四角形、横長斜め孔などでもよく、通気孔を設ける面も、6面のうち3面であってもよい。
【0035】
図1において、本発明の屋上通気装置10は、更に管連結部材12に上端が嵌合し、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管22を有し、排水立て管の内部を雑排水がスムースに流下するために、その上部に外気を取り入れるようになっている。
【0036】
また、第1防水層24は、通気立上管14に直接巻きつくように施され、それを覆うように立上管保護部材16(図示せず)が載置される。
通気立上管14は、上部が通気口になっており、立上管保護部材16に設けられた通気孔を介して外気を取り込む。
立上管保護部材16は、例えばガラス繊維補強コンクリート造であり、約10kg程度を目安に製造され、高さ40cm前後の側面視台形状に構成しているので、強風で転倒するおそれはない。またいたずらなどで持ち去られることがないように、通気立上管の上部でボルトによる接合を行っているが、その他の結合手段でもよい。
【0037】
上述した構成により、通気立上管14の上端開口14aから雨水や異物が入るのを防止しながら、立上管保護部材16の通気孔16cを介して上端開口14aから排水立て管の上部に外気を取り入れることができる。
また、立上管保護部材16の通気孔16cから内部に雨水が侵入しにくく、かつ仮に侵入しても下端16bの切欠け部16dから、内部に侵入した雨水をスムースに排水することができる。
【0038】
図4は、本発明による屋上通気装置の設置方法の説明図である。
この図に示すように、本発明の屋上通気装置の設置方法は、埋設ステップ(A)、防水層形成ステップ(B)、断熱層及び第2防水層形成ステップ(C)、及び保護部材固定ステップ(図示せず)からなる。
【0039】
埋設ステップ(A)では、屋上スラブ1を鉛直に貫通する貫通孔2内に管連結部材12(ソケット)とこれに下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管14とを埋設・固定する。
鉄筋コンクリート造の屋上スラブ1を構築する際に、通気立上管14とソケット12を埋設する形で所定の位置に設け、屋上スラブ1のコンクリートを打設するのが好ましい。なお、屋上スラブ1のコンクリートを打設する際、所定位置にボイド(貫通孔)を形成し、屋上スラブ1のコンクリートを打設後に、通気立上管14とソケット12をモルタルで埋設するようにしてもよい。また、ソケット12のみを先に埋設・固定し、通気立上管14を後からソケット12に挿入・嵌合させてもよい。
【0040】
次いで防水層形成ステップ(B)では、屋上スラブ1の表面及び通気立上管14の外周を覆うように第1の防水層24を形成する。
【0041】
断熱層及び第2防水層形成ステップ(C)では、第1の防水層24を形成後、立上管保護部材16の連結前に、更に屋上スラブ1の表面(正確には第1の防水層24の表面)に断熱層25を形成し、更にその表面及び通気立上管14の外周を覆うように第2の防水層26を形成する。
さらに、第2の防水層26を形成した後、通気立上管14の上部に位置する防水層の端部をステンレス製の締付けバンド27で締付け、その後に防水層端部に防水シール28(ゴム質系アスファルトシーリング)を施すのがよい。
【0042】
なお、本発明の方法において、断熱層及び第2防水層形成ステップ(C)は不可欠ではなく、断熱層25と第2防水層26の一方又は両方を省略することもでき、或いは逆に断熱層と防水層を更に増やし、或いは他の層(人口芝等)を設置してもよい。
【0043】
その後、いたずらによる持ち去りなどを防止するために、通気立上管14の上部に立上管保護部材16をボルトで固定して立上管保護部材16を載置すれば屋上通気装置10の設置が完了する。
なお、立上管保護部材16を載置する際は、ゴム製のパッキン20などを第2防水層26と立上管保護部材16の間に設けるのがよい。これにより、立上管保護部材16により第2防水層26の表面を傷つけるのを防止できるだけでなく、陸屋根における水勾配の微妙な傾斜のも対応できる。
【0044】
以上のように本発明の屋上通気装置とその設置方法によれば、屋上通気管回りの工事が大幅に軽減でき、また、屋上通気管を覆う工事に前に屋上防水の工事ができるので、建物全体の工期を考えた場合も工事期間の短縮に寄与できる。
また、簡単な構造でありながら、通気管として機能や、通気管を含めた屋上回りの防水性能を損なうこともない。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りで種々に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の屋上通気装置の横断面図である。
【図2】接続金物の斜視図である。
【図3】立上管保護部材の側面図と平面図である。
【図4】本発明による屋上通気装置の設置方法の説明図である。
【図5】従来の屋上通気装置の構造図である。
【図6】特許文献1の「屋上スラブ置型ユニット」の構造図である。
【図7】特許文献2の「通気管専用屋上ユニット」の構造図である。
【図8】特許文献3の「鳩小屋の施工法」の説明図である。
【図9】特許文献4の「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」の構造図である。
【符号の説明】
【0047】
1 屋上スラブ、2 貫通孔、
10 屋上通気装置、12 管連結部材(ソケット)、
14 通気立上管、14a 上端開口、
16 立上管保護部材、16a 上端、16b 下端、
16c 通気孔、16d 切欠け部、
17 貫通孔、18 接続金物、18a 雌ネジ部、18b ビス孔、
19 連結ボルト、20 パッキン、
22 通気管、24 第1防水層、
25 断熱層、26 第2防水層、
27 締付けバンド、28 防水シール
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上スラブを通して排水立て管の上部に外気を取り入れる屋上通気装置とその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やビルなどの高層建築における排水立て管は、その内部を雑排水がスムースに流下するために、その上部に外気を取り入れる必要がある。そのため、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管と、この通気管を外気に連通させて外気を取り入れる外気導入部とが設けられる。以下、かかる外気導入部に用いる装置を、「屋上通気装置」と呼ぶ。
【0003】
図5は、屋上スラブを貫通する従来の屋上通気装置の構造図である。この図において、51は鉄筋コンクリート製の屋上スラブ、52は通気管、53は通気管の上部を覆う鉄筋コンクリート製の保護体、54は通気口カバーである。
しかしながら、このような従来の屋上通気装置は、通気管52を屋上スラブ51を貫通して配設した後に、保護体53の鉄筋の配筋と型枠を形成してコンクリートを打設する必要があり、さらにその後、型枠の脱型、断熱材55の敷設、防水層56a,56bの施工など、多くの工程と手間を必要とする問題があった。
【0004】
そこで、主に保護体のコンクリート打設工程を簡略化又は省略するために、特許文献1〜4が既に提案されている。
【0005】
特許文献1の「屋上スラブ置型ユニット」は、図6に示すように、上端が閉塞された筒型構造をなし、その側壁64に連通孔65が穿設されるとともに、その下端にて屋上スラブ67上に載置固定されるユニット本体62と、一端がユニット本体62の下端側に突き出して配置され他端がユニット本体62の内部を通して連通孔65に嵌合した導管63とから構成されている。また、ユニット本体62の内部には導管63を包み込む状態で断熱材66が充填されている。
【0006】
特許文献2の「通気管専用屋上ユニット」は、図7に示すように、屋上スラブ層に固定するためのアンカーユニット71により固定された通気管75より大なる断面、裾部を有する筒体77、通気管75が筒体頂部面より上まで延びていると共に、筒体と通気管の間が密閉され、さらに筒体頂部にスペーサー金具76を用いて間隙を設けて取り付けられたフード74からなり、かつ屋上スラブ層上面に設けられた防水層78が筒体77の壁面までカバーしているものである。
【0007】
特許文献3の「鳩小屋の施工法」は、図8に示すように、表面全面に格子鉄筋82を溶接した壁用骨格部材80の4枚を屋上スラブ枠84の上に断面長方形状に設置し、各接合部に補強鉄筋を配筋し、4枚の部材80で囲まれた部分の屋上スラブ型枠を撤去して開口部85を形成し、各壁用骨格部材80の格子鉄筋側にモルタルを施工するものである。屋上スラブコンクリートの打設は、上記補強鉄筋の配筋後に施工する。
【0008】
特許文献4の「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」は、図9に示すように、屋上の床を構成するコンクリート床壁93内に、筒状部95とその上縁から側方に延成された受皿部96とを備えた打込支持体92を一体的に埋設して、その受皿部96をコンクリート床壁93の上面に配置し、かつその筒状部95によってコンクリート床壁93を上下方向に貫通する挿通孔94を形成した後、下端に鍔縁97を備えた継手管体98を受皿部96に乗載して立設し、鍔縁97をボルト等で固定し、さらに、継手管体98の下端部にコンクリート床壁93の挿通孔94を挿通させた通気管99を接続するようにしたものである。
【0009】
【特許文献1】実開平7−20485号公報、「屋上スラブ置型ユニット」
【特許文献2】特開2004−3220号公報、「通気管専用屋上ユニット」
【特許文献3】特開平7−166686号公報、「鳩小屋の施工法」
【特許文献4】特開平10−25865号公報、「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の「屋上スラブ置型ユニット」は、(1)ユニット本体を屋上スラブに固定する際にアンカーボルトを用いるため、アンカーボルトの取付け孔を鉄筋コンクリートの屋上スラブに穿設する手間がかかる、(2)屋上スラブは、実際には陸屋根とはいえ水勾配が必要であり、屋上スラブがわずかに傾斜しており、ユニット本体を垂直にするためアンカーボルトで固定する前に、ユニット本体の設置部分をモルタルで水平にするか、屋上スラブを部分的に削るなどの下地調整が必要であり、手間がかかる、等の問題があった。
【0011】
特許文献2の「通気管専用屋上ユニット」も、特許文献1と同様に、(1)筒体を屋上スラブに固定する際のアンカーボルトの取付け孔を鉄筋コンクリートの屋上スラブに穿設する手間がかかる、(2)筒体を垂直にするためアンカーボルトで固定する前に、筒体の設置部分をモルタルで水平にするか、屋上スラブを部分的に削るなどの下地調整が必要であり、手間がかかる、等の問題があった。
【0012】
さらに、特許文献1、2では、(3)基本的に通気管回りを覆う工事が完了しないかぎり、屋上防水工事ができないという問題点があった。
【0013】
特許文献3の「鳩小屋の施工法」は、アンカー止めなどの手間がなく、また従来のように鉄筋コンクリートで通気管を覆う構造よりも施工を簡略化できるが、屋上スラブコンクリートの打設が、補強鉄筋の配筋後となるため、(3)屋上スラブ完成後に行う屋上防水工事が更に大幅に遅れる問題があった。
【0014】
特許文献4の「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」は、(4)コンクリート床壁に埋設する打込支持体が、コンクリートの圧力で傾き打込支持体の位置調整又は再調整が必要になりやすい。(5)また、受皿部上面やそのネジ孔に異物が混入しやすく、打込支持体の清掃作業等に手間がかかる。特に屋上スラブのコンクリート打設の際、ネジ孔にコンクリートが入らないように養生されるが、養生がとれてコンクリートが入り込んだ場合大変面倒である。(6)さらに、人や動物(カラスや猫)による衝撃、強風等によりボルトの連結部に大きな応力が作用するため、打込支持体及び継手管体を金属製(例えば鋳物、ステンレス等)にする必要があり、高価になりやすく、かつメンテナンス(経年劣化を防ぐための定期的上塗り塗装など)を十分に行わないと錆による劣化が問題になる場合があった。
【0015】
本発明は、これらの問題に鑑み創案されたものである。すなわち本発明の目的は、位置調整や再調整を低減して通気管回りを覆う工事を従来よりも格段に省力化でき、かつ屋上防水等の工事を早期に着手でき、さらに、メンテナンスの必要性も低減できる屋上通気装置とその設置方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に埋設された管連結部材と、該管連結部材に下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管と、該通気立上管の上端開口を間隔を隔てて覆う立上管保護部材とを備え、
該立上管保護部材は、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状であり、その上端が通気立上管に着脱可能に連結され下端が屋上スラブ上に位置する、ことを特徴とする屋上通気装置が提供される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記管連結部材に上端が嵌合し、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管を有する。
【0018】
また、前記通気立上管の上端に固定され、水平に延び、鉛直な雌ネジ部を有する接続金物を備え、前記立上管保護部材は、前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部をもった連結ボルトを通す貫通孔を有する。
【0019】
また、本発明によれば、屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に管連結部材とこれに下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管とを埋設し、次いで屋上スラブの表面及び通気立上管の外周を覆うように第1の防水層を形成し、その後、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状の立上管保護部材をその下端が屋上スラブ上に位置するように通気立上管に連結する、ことを特徴とする屋上通気装置の設置方法が提供される。
【0020】
また本発明の好ましい実施形態によれば、前記第1防水層を形成後、立上管保護部材の連結前に、更に屋上スラブの表面に断熱層を形成し、更にその表面及び通気立上管の外周を覆うように第2の防水層を形成する。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の装置及び方法によれば、(1)屋上スラブの貫通孔内に埋設された管連結部材に立上管保護部材が着脱可能に連結されるので、アンカーボルト等の取付部が不用であり取付け穴等を穿孔する手間を無くすことができる、また、(2)中空円筒形の通気立上管は管連結部材に下端が嵌合して取り付けられるので、通気立上管を垂直にするためのモルタル作業や下地調整が不用となる。さらに、(3)通気管回りの工事完了前に、管連結部材に通気立上管の下端を嵌合した状態で、早期に屋上防水工事に着手できる。
【0022】
また、(4)コンクリート床壁に埋設する管連結部材が、コンクリートの圧力等でわずかに傾いても、これを覆って立上管保護部材を取り付けることで、通気管を外気に連通させて外気を取り入れる機能を損なうことなくそのまま維持できるので、管連結部材の位置調整又は再調整を不用にできる。さらに、(5)立上管保護部材の取付け部は、通気立上管に後付けするので、取付け部の異物混入を防ぎ、その清掃等の手間を無くすことができる。また、(6)人や動物による衝撃、強風等を受けても、立上管保護部材の下端が屋上スラブ上に位置するので、立上管保護部材を介して直接屋上スラブに力を分散させることができ、通気立上管への伝達力を大幅に低減し、通気立上管を樹脂等で構成することができる。従って、安価にできるとともに、上塗り塗装などのメンテナンスの必要性を低減又は無くすことができる。
【0023】
従って、位置調整や再調整を低減して通気管回りを覆う工事を従来よりも格段に省力化でき、かつ屋上防水等の工事を早期に着手でき、さらに、メンテナンスの必要性も低減できる。
また、通気立上管が鉛直で曲がりがないため清掃しやすい。さらに、立上管保護部材は屋上防水層上に載置するものなので、立上管保護部材によって断熱層を寸断することなく通気立上管の回りまで施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の屋上通気装置の横断面図である。この図に示すように、本発明の屋上通気装置10は、管連結部材12、中空円筒形の通気立上管14、及び立上管保護部材16を備える。
【0026】
管連結部材12は、この例では同径の管を鉛直に連結するための中空円筒形管継手(ソケット)であり、内部に管端を支持するリング状の鍔部を有する。しかし、本発明はこれに限定されず、通気立上管14の下端を支持でき、下方に後述する通気管22を内部が連通した状態で連結でき、かつ屋上スラブ1内に固定される限りで、任意の自由な構造であってもよい。
【0027】
管連結部材12は、屋上スラブ1を鉛直に貫通する貫通孔2内に埋設して設置される。この管連結部材12の埋設・設置は、屋上スラブ1を形成するコンクリートの打設と同時に行うのが好ましいが、本発明はこれに限定されず、屋上スラブ1の完成後に貫通孔2内に埋設・設置し、モルタル等で固定してもよい。
管連結部材12の材質は、好ましくは硬質プラスチック(例えば、塩化ビニール樹脂)であるが、アルミニウム、銅合金等の耐食性金属であってもよい。
【0028】
中空円筒形の通気立上管14は、この例では鉛直直管であり、両端が軸線に垂直に切断されそれぞれ開口している。通気立上管14の長さは、下端が管連結部材12に嵌合し、かつその上端が屋上スラブ1より所定の長さLを上方に突き出すように設定される。この所定の長さLは、後述する通気立上管まわりの防水層の必要高さ等から任意に設定することができる。
通気立上管14の材質は、好ましくは硬質プラスチック(例えば、塩化ビニール樹脂)であるが、アルミニウム、銅合金等の耐食性金属であってもよい。
図1において、鉄筋コンクリート造の屋上スラブ1に通気立上管14およびソケット12が埋設状態にあり、通気立上管14と通気管22は、ソケット12を介して接続されている。
なお、通気管22は耐熱二層管を使用している。またソケット12は、通気立上管14や通気管22の伸縮を相互に伝えない役割をもたせるものであり、隙間を設けて接続される。
【0029】
図1において、本発明の屋上通気装置10は、更に通気立上管14の上端に固定された接続金物18を備える。
図2は、接続金物の斜視図である。図1及び図2に示すように、接続金物18は、通気立上管14の上端開口14aを直径方向に跨いで水平に延び、その中間部に鉛直な雌ネジ部18aを有し、両端部にビス孔18bを有する。中間部の雌ネジ部18aは、接続金物18に直接形成しても、ナット等を固定して形成してもよい。
接続金物18は、通気立上管14の上部を挟むように設置し、ビス孔18bを通るビス(好ましくはステンレス製)により、その両端が通気立上管14の上端開口14aに固定される。
【0030】
図1に示すように、立上管保護部材16は、通気立上管14の上端開口14aを間隔を隔てて覆い、上端開口14aから雨水や異物が直接入らないようになっている。この間隔は、例えば、1cm〜10cmであり、上端開口14から外部までの空気の流通抵抗が顕著に増大しない範囲で任意に設定することができる。
【0031】
立上管保護部材16は、図に示すように、上端16aが閉じ、下端16bが開口し、側部に複数の通気孔16cを有する逆さ容器形状である。通気孔16cは内部に雨水が侵入しにくくかつ通気性が良い形状であるのがよい。
実施例では、縦方向が2cm程度の横長スリットとしてある。隙間に巣を作る最も小さい鳥としては、ドバト、ムクドリなどがあり、2cmという隙間は、これら鳥類の侵入が防止できる寸法である。従って防鳥網などが不要になる。
また、下端16bには、切欠け部16dが設けられ、内部に侵入した雨水を排水するようになっている。
【0032】
また、立上管保護部材16の上端16aには、接続金物18の雌ネジ部18aと上下に一致する位置に貫通孔17を有する。この貫通孔17を通して連結ボルト19(好ましくはステンレス製)を鉛直に通し、その雄ネジ部を雌ネジ部18aと螺合させることにより、立上管保護部材16の上端を通気立上管14に着脱可能に固定する。またこの固定の際、下端が屋上スラブ1の上面に位置し、立上管保護部材16の自重およびこれに作用する外力を屋上スラブに分散して伝達するようになっている。
なお、コンクリート床壁1に埋設した管連結部材12が、コンクリートの圧力等でわずかに傾いている場合には、これに合わせて接続金物18を傾けて連結ボルト19を螺合させることで、立上管保護部材16を正確に取り付けることができ、通気管を外気に連通させて外気を取り入れる本来の全機能をそのまま維持できる。
【0033】
また、立上管保護部材16を通気立上管14に固定する手段は、上述した接続金物18と連結ボルト19に限定されず、例えば、内部で部分的に嵌合する構造(バヨネット結合等)であってもよい。
【0034】
図3(A)は立上管保護部材16の側面図、図3(B)はその平面図である。
図3(A)に示すように、この例において側面は、略台形状であり、側面のほぼ中間位置に長孔の通気孔16cが設けられている。これにより、通気立上管14への通気を確保でき、雨水の侵入を防止できる。
また、図3(B)の平面図で分かるとおり、平面的には略三角形状の六角形であり、三方に脚が形成されている。このため、屋上スラブ面の傾斜や凹凸に対応しやすく安定した載置が可能になっている。
なお、立上管保護部材16の形状は、上記に限定されるものではなく、側面視が釣鐘状であったり、通気孔の上部に庇を有するものであったり、動植物の形態を模したものなど、様々な形状で構成することが可能である。
通気孔16cも、横長孔に限定されるものではなく、円形、四角形、横長斜め孔などでもよく、通気孔を設ける面も、6面のうち3面であってもよい。
【0035】
図1において、本発明の屋上通気装置10は、更に管連結部材12に上端が嵌合し、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管22を有し、排水立て管の内部を雑排水がスムースに流下するために、その上部に外気を取り入れるようになっている。
【0036】
また、第1防水層24は、通気立上管14に直接巻きつくように施され、それを覆うように立上管保護部材16(図示せず)が載置される。
通気立上管14は、上部が通気口になっており、立上管保護部材16に設けられた通気孔を介して外気を取り込む。
立上管保護部材16は、例えばガラス繊維補強コンクリート造であり、約10kg程度を目安に製造され、高さ40cm前後の側面視台形状に構成しているので、強風で転倒するおそれはない。またいたずらなどで持ち去られることがないように、通気立上管の上部でボルトによる接合を行っているが、その他の結合手段でもよい。
【0037】
上述した構成により、通気立上管14の上端開口14aから雨水や異物が入るのを防止しながら、立上管保護部材16の通気孔16cを介して上端開口14aから排水立て管の上部に外気を取り入れることができる。
また、立上管保護部材16の通気孔16cから内部に雨水が侵入しにくく、かつ仮に侵入しても下端16bの切欠け部16dから、内部に侵入した雨水をスムースに排水することができる。
【0038】
図4は、本発明による屋上通気装置の設置方法の説明図である。
この図に示すように、本発明の屋上通気装置の設置方法は、埋設ステップ(A)、防水層形成ステップ(B)、断熱層及び第2防水層形成ステップ(C)、及び保護部材固定ステップ(図示せず)からなる。
【0039】
埋設ステップ(A)では、屋上スラブ1を鉛直に貫通する貫通孔2内に管連結部材12(ソケット)とこれに下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管14とを埋設・固定する。
鉄筋コンクリート造の屋上スラブ1を構築する際に、通気立上管14とソケット12を埋設する形で所定の位置に設け、屋上スラブ1のコンクリートを打設するのが好ましい。なお、屋上スラブ1のコンクリートを打設する際、所定位置にボイド(貫通孔)を形成し、屋上スラブ1のコンクリートを打設後に、通気立上管14とソケット12をモルタルで埋設するようにしてもよい。また、ソケット12のみを先に埋設・固定し、通気立上管14を後からソケット12に挿入・嵌合させてもよい。
【0040】
次いで防水層形成ステップ(B)では、屋上スラブ1の表面及び通気立上管14の外周を覆うように第1の防水層24を形成する。
【0041】
断熱層及び第2防水層形成ステップ(C)では、第1の防水層24を形成後、立上管保護部材16の連結前に、更に屋上スラブ1の表面(正確には第1の防水層24の表面)に断熱層25を形成し、更にその表面及び通気立上管14の外周を覆うように第2の防水層26を形成する。
さらに、第2の防水層26を形成した後、通気立上管14の上部に位置する防水層の端部をステンレス製の締付けバンド27で締付け、その後に防水層端部に防水シール28(ゴム質系アスファルトシーリング)を施すのがよい。
【0042】
なお、本発明の方法において、断熱層及び第2防水層形成ステップ(C)は不可欠ではなく、断熱層25と第2防水層26の一方又は両方を省略することもでき、或いは逆に断熱層と防水層を更に増やし、或いは他の層(人口芝等)を設置してもよい。
【0043】
その後、いたずらによる持ち去りなどを防止するために、通気立上管14の上部に立上管保護部材16をボルトで固定して立上管保護部材16を載置すれば屋上通気装置10の設置が完了する。
なお、立上管保護部材16を載置する際は、ゴム製のパッキン20などを第2防水層26と立上管保護部材16の間に設けるのがよい。これにより、立上管保護部材16により第2防水層26の表面を傷つけるのを防止できるだけでなく、陸屋根における水勾配の微妙な傾斜のも対応できる。
【0044】
以上のように本発明の屋上通気装置とその設置方法によれば、屋上通気管回りの工事が大幅に軽減でき、また、屋上通気管を覆う工事に前に屋上防水の工事ができるので、建物全体の工期を考えた場合も工事期間の短縮に寄与できる。
また、簡単な構造でありながら、通気管として機能や、通気管を含めた屋上回りの防水性能を損なうこともない。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りで種々に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の屋上通気装置の横断面図である。
【図2】接続金物の斜視図である。
【図3】立上管保護部材の側面図と平面図である。
【図4】本発明による屋上通気装置の設置方法の説明図である。
【図5】従来の屋上通気装置の構造図である。
【図6】特許文献1の「屋上スラブ置型ユニット」の構造図である。
【図7】特許文献2の「通気管専用屋上ユニット」の構造図である。
【図8】特許文献3の「鳩小屋の施工法」の説明図である。
【図9】特許文献4の「排水通気用管継手及び該排水通気用管継手の施工方法」の構造図である。
【符号の説明】
【0047】
1 屋上スラブ、2 貫通孔、
10 屋上通気装置、12 管連結部材(ソケット)、
14 通気立上管、14a 上端開口、
16 立上管保護部材、16a 上端、16b 下端、
16c 通気孔、16d 切欠け部、
17 貫通孔、18 接続金物、18a 雌ネジ部、18b ビス孔、
19 連結ボルト、20 パッキン、
22 通気管、24 第1防水層、
25 断熱層、26 第2防水層、
27 締付けバンド、28 防水シール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に埋設された管連結部材と、該管連結部材に下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管と、該通気立上管の上端開口を間隔を隔てて覆う立上管保護部材とを備え、
該立上管保護部材は、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状であり、その上端が通気立上管に着脱可能に連結され下端が屋上スラブ上に位置する、ことを特徴とする屋上通気装置。
【請求項2】
前記管連結部材に上端が嵌合し、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の屋上通気装置。
【請求項3】
前記通気立上管の上端に固定され、水平に延び、鉛直な雌ネジ部を有する接続金物を備え、
前記立上管保護部材は、前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部をもった連結ボルトを通す貫通孔を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の屋上通気装置。
【請求項4】
屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に管連結部材とこれに下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管とを埋設し、次いで屋上スラブの表面及び通気立上管の外周を覆うように第1の防水層を形成し、その後、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状の立上管保護部材をその下端が屋上スラブ上に位置するように通気立上管に連結する、ことを特徴とする屋上通気装置の設置方法。
【請求項5】
前記第1防水層を形成後、立上管保護部材の連結前に、更に屋上スラブの表面に断熱層を形成し、更にその表面及び通気立上管の外周を覆うように第2の防水層を形成する、ことを特徴とする請求項4に記載の屋上通気装置の設置方法。
【請求項1】
屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に埋設された管連結部材と、該管連結部材に下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管と、該通気立上管の上端開口を間隔を隔てて覆う立上管保護部材とを備え、
該立上管保護部材は、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状であり、その上端が通気立上管に着脱可能に連結され下端が屋上スラブ上に位置する、ことを特徴とする屋上通気装置。
【請求項2】
前記管連結部材に上端が嵌合し、排水立て管の上部に連結された鉛直中空の通気管を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の屋上通気装置。
【請求項3】
前記通気立上管の上端に固定され、水平に延び、鉛直な雌ネジ部を有する接続金物を備え、
前記立上管保護部材は、前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部をもった連結ボルトを通す貫通孔を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の屋上通気装置。
【請求項4】
屋上スラブを鉛直に貫通する貫通孔内に管連結部材とこれに下端が嵌合し屋上スラブより上方まで延びる中空円筒形の通気立上管とを埋設し、次いで屋上スラブの表面及び通気立上管の外周を覆うように第1の防水層を形成し、その後、上端が閉じ下端が開口し側部に通気孔を有する逆さ容器形状の立上管保護部材をその下端が屋上スラブ上に位置するように通気立上管に連結する、ことを特徴とする屋上通気装置の設置方法。
【請求項5】
前記第1防水層を形成後、立上管保護部材の連結前に、更に屋上スラブの表面に断熱層を形成し、更にその表面及び通気立上管の外周を覆うように第2の防水層を形成する、ことを特徴とする請求項4に記載の屋上通気装置の設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−124981(P2006−124981A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312284(P2004−312284)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【Fターム(参考)】
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