説明

屋根の散水装置

【課題】
熱せられた屋根を冷却して室温の低下を行ったり、隣家の火災時に延焼を防止したり、屋根の除雪を行ったりする屋根の散水装置であって、建物に手を加えることなく設置工事を行うことを可能にしたり、屋根を損傷させることなく屋根の全域に亘って均一な散水を行うことなどを可能にした屋根の散水装置を提供する。
【解決手段】
建物から離れた屋根棟部の延長線側の高位置に地上から給水配管を立設し、給水配管の下端側を給水源に接続すると共に、給水配管の上端側には噴射口が仰角状で屋根棟部の上方に放水して散水を行う噴射ノズルを装着した屋根の散水装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や工場などで水が流下する勾配を備えた建物の屋根に散水を行う屋根の散水装置であって、特に建物から離れた屋根棟部の延長線側の高位置から噴射ノズルによって、屋根棟部の上方に放水して散水を行う屋根の散水装置に関するものであり、熱せられた屋根を冷却して室温の低下を行ったり、隣家の火災時に延焼を防止したり、屋根の除雪を行ったりすることが可能である。
【背景技術】
【0002】
この種の屋根の散水装置としては、例えば特許文献1,2などに開示されているように、建物の屋根に散水を行って気化熱で冷却し、これによって室温の上昇を抑制する提案があるが、これらの散水装置では屋根棟部に沿って多数の放水口を並設した散水管を配管し、各放水口から屋根勾配に沿って散水を行うようにしている。
【特許文献1】特開2000−297502号公報
【特許文献2】特開2001−49806号公報
【0003】
また、例えば特許文献3,4などに開示されているように、特許文献1,2などの場合と同様に屋根棟部に沿って配管した散水管に対し、温水を供給して融雪による屋根の除雪を行うようにした提案もある。
【特許文献3】特許第2900743号公報
【特許文献4】特開2000−257304号公報
【0004】
さらに、例えば特許文献5,6などに開示されているように、火災発生時に作動するように放水装置を建物から離れた地上に設置し、噴射ノズルによって地上から屋根に放水を行うことによって、建物の延焼防止又は消火をするようにした提案もある。
【特許文献5】特許第3212741号公報
【特許文献6】特開平9−19510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4などのように屋根棟部に沿って散水管を配管する場合には、建物に手を加えて設置工事を行う必要があるので、工期が長くなったり経費が嵩むこと、屋根の全域に亘って散水を行うために多数の小径孔による放水口を並設すると、水垢などによって目詰まりを生ずる恐れがあること、散水管の給水側から離れた位置では水圧が低下するので、屋根の全域に亘って均一な散水ができない恐れがあること、配管類から漏水して建物を劣化させる恐れがあるなどの解決を必要とする課題があった。
【0006】
また、特許文献5,6などのように地上から放水する先行技術を用いて屋根を冷却したり、温水を供給して融雪による屋根の除雪を行うようにした場合には、瓦と瓦の隙間に放水されて瓦を吹き上げたり、瓦の下側にある野地板などに浸水したりし、屋根を損傷させる恐れがあること、風の影響を受けて屋根の全域に亘って均一な散水ができない恐れがあること、などの解決を必要とする課題があった。
【0007】
そこで本発明では、これら従来技術の課題を解決し得る屋根の散水装置を提供するものであって、特に建物から離れた屋根棟部の延長線側の高位置から噴射ノズルによって、屋根棟部の上方に放水して散水を行う形態を採ることによって、建物に手を加えることなく設置工事を行うことを可能にしたり、屋根を損傷させることなく屋根の全域に亘って均一な散水を行うことなどを可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による屋根の散水装置は、建物から離れた屋根棟部の延長線側の高位置に地上から給水配管を立設し、給水配管の下端側を給水源に接続すると共に、給水配管の上端側には噴射口が仰角状で屋根棟部の上方に放水して散水を行う噴射ノズルを装着した。
【0009】
また、上記した屋根の散水装置における給水配管には、屋根棟部の一端側から他端側までの放水できるように、流路を開閉して流量及び水圧を可変する開閉弁を設けた形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0010】
この屋根の散水装置によると、噴射ノズルから放水した高圧水は放物線を描きながら屋根の上方から屋根棟部上に分散状態で落下した後に、勾配を有する屋根を伝わりながら散水を行って樋に流下するが、この散水時に屋根の輻射熱を奪って気化熱による冷却が行われるので、建物内部の温度上昇を抑制することができると共に、この散水によって延焼を防止したり、融雪によって除雪を行うことも可能である。
【0011】
特に、屋根棟部の延長線側の高位置から噴射ノズルによって屋根棟部の上方に放水するよう、建物から離れた位置に散水装置を設ける形態を採っているので、屋根棟部に散水装置を設ける従来技術のように建物に手を加えることなく、設置工事を安価且つ短期間で容易に行うことができると共に、内部配管類がないので漏水による建物の劣化も防止することができ、屋根棟部の長さその他の屋根構造が異なる建物の場合でも、共通の散水装置を使用することができるので、量産化して安価に提供することが可能である。
【0012】
また、噴射ノズルから直接放水することによって分散状態で散水が行われるので、多数の小径孔による放水口を並設して散水を行う従来技術のように、水垢などで放水口に目詰まりを生じたり、給水側から離れた放水口では水圧が低下するなどの恐れがなく、屋根の全域に亘って均一な散水を長期間に亘って維持することが可能である。
【0013】
また、地上から放水を行う従来技術のように瓦を吹き上げたり、瓦の下側にある野地板などに浸水して屋根を損傷させる恐れがないと共に、ほぼ屋根棟部に相当する高所から放水が行われるので風などの影響を受け難く、微弱な自然風によって適度の風圧を受けると放水は霧状に分散化され、屋根の全域に亘って均一な散水を行うことができる。
【0014】
さらに、屋根棟部の一端側から他端側までの放水できるように、流路を開閉して流量及び水圧を可変する開閉弁を設けた形態を採ると、噴射ノズルを起伏状態に揺動回転させて放水角度を可変させる場合に比べ、少ない水量で所定の放水領域に対する放水を行うことができる。
【実施例】
【0015】
本発明による屋根の散水装置について、本発明の好適な実施形態を示す図1〜5の添付図面に基づいて詳細に説明すると、図1は住宅1の屋根2に散水を行う散水装置3を示すものであり、散水装置3は屋根棟部4に沿った延長線側で住宅1から離れた位置に設置され、図示の実施形態では支持部材5に支持された状態で地上から立設されており、下端側を給水源に接続した給水配管6の上端側には噴射ノズル7が装着されている。
【0016】
散水装置3は、例えば図2で示す模式的な配管図のように、給水配管6の下端側を元栓8を介して地下に埋設した水道管8に接続させ、給水配管6の途中に設けた開閉弁9を介して噴射ノズル7に給水すると共に、給水配管6と分岐状態で水抜き栓10を備えた水抜き配管11を設け、残水を排水するようにしており、これらの配管類には水道配管などで一般的な1/2吋の金属パイプを使用している。
【0017】
噴射ノズル7からの放水は、図1で示すように屋根棟部4の一端側P1から他端側P2迄の放水領域Pに対して行う必要があり、これを達成する手段として噴射ノズル7を起伏状態に揺動回転させ、放水角度αを可変させることも可能であるが、水量を節約するためには流路の開閉操作を行う開閉弁9によって開閉量を可変させ、流量及び水圧を制御できるようにすることが望ましい。
【0018】
開閉弁9は、手動操作又は自動操作のいずれの形態も採り得るものであって、手動操作を行う場合には例えばバタフライ弁などを用い、流量及び水圧を可変させることによって、図1で示すように屋根棟部4の一端側P1から他端側P2迄の放水領域Pに対して放水を行うことができるが、この放水領域Pを確保するためには開閉度をどの範囲で可変させれば良いのを、試しの放水を行って目印を付けておくようにする。
【0019】
また、自動操作を行う場合には開閉弁9としてプログラム制御が可能な電磁弁などを用い、タイマー機能を備えた制御装置で予め設定したプログラムに従って電磁弁の開閉操作を行い、上記した手動操作と同様の弁の開閉操作が予め設定した所定時間間隔毎に自動的に行われる形態を採ることが可能であり、その際に屋根2に感熱センサを設けて設定温度以上になると、開閉弁9の自動操作が開始するような形態も採ることができる。
【0020】
さらに、上記した制御装置に無線による受信機能を設け、この制御装置の受信部に対して送信機能を備えた携帯電話端末などから制御信号を送り、建物の内外から遠隔操作によって電磁弁による開閉弁9の開閉操作を行う形態を採ることも可能である。
【0021】
噴射ノズル7は、例えば図3で示す部分拡大図のように基部側にナット部12を設け、給水配管6の上端側外周面に設けたねじ部13と螺合させ、これによって給水配管6と一体に連結する形態を採ることができると共に、先端側は噴射口から仰角状態で放水できるように、所定の仰角による放水角度αに折り曲げられており、また噴射口の内周面には水流を螺旋運動によって加速させるように、公知の螺旋溝又は二重螺旋溝(図示を省略)を設ける形態を採ることもできる。
【0022】
噴射ノズル7による放水角度αは、屋根2に対する噴射ノズル7の距離及び高さ位置や放水時の水圧或いは、屋根棟部4の長さなどに応じて所望に設定することができるが、少なくとも屋根棟部4の全域に対して上方に放水して散水を行う必要があるので、望ましい形態として噴射ノズル7の高さ位置を屋根棟部4とほぼ等しくすると共に、放水角度αは45度を中心として略30〜60度の範囲内に設定する。
【0023】
また、工場などのように屋根棟部4が長かったり高い建物の場合や、水圧が低い場合などには、図1とは反対の屋根棟部4側にも同様の散水装置3を対向状態で設け、双方の噴射ノズル7から同時に放水して散水を行う形態を採ったり、給水配管6を2分岐して高低の2個所にそれぞれ噴射ノズル7を設け、1階の屋根と2階の屋根に対して同時に放水して散水を行う形態を採ることも可能である。
【0024】
また、上記した実施形態では給水配管6を金属製パイプ6Aによって構成するようにしているが、図4で示す部分拡大図のように支持部材5の上端側にブラケット14を介して噴射ノズル7を固定させ、この噴射ノズル7に対して設置が容易で且つ安価な樹脂製又はゴム製のホース6Bをホース止め15を介して連結させ、より簡単な構成による給水配管6B(6)にする形態を採ることも可能である。
【0025】
また、上記した実施形態では支持部材5を支柱5Aによって構成すると共に、この支柱5Aで給水配管6を支持するようにしているが、図5で示すように支持部材5としてワイヤーやロープなどの線状材5Bを用い、金属製パイプによる給水配管6の上部側に装着した支持具16と、地中に埋設したアンカー17の間に少なくとも3本以上の線状材5Bを架設して緊結する形態を採ったり、樹木や塀又は石積みその他で必要な強度を備えた部材が適切な位置にある場合には、これら既存の部材を流用して支持部材5にすることも可能である。
【0026】
以上の実施形態のような散水装置3を用いて噴射ノズル7から高圧水を放水すると、放水は図1のように放物線を描きながら屋根2の上方から屋根棟部4上に分散状態で落下した後に、勾配を有する屋根2を伝わりながら散水を行って樋(図示を省略)に流下するが、この散水時に屋根2の輻射熱を奪って気化熱による冷却が行われるので、建物内部の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
この散水装置3では、水道管9に1/2吋の給水配管6を接続して2階建ての住宅1に放水を行った場合に、水圧4Kg/cm2で略10mの到達距離が得られるので、2階建ての住宅1でもポンプなどを使用せずに実用が可能であるが、工場などのように屋根棟部4が長い建物に対しては、上記したように2組の散水装置3を使用したり、到達距離を延ばすためにポンプを使用する形態を採ることも可能である。
【0028】
また、噴射ノズル7からの放水は1回の放水量を少なくした短時間の放水を間欠的に行うようにし、これによって気化作用の促進と水道水の節水を図ると共に、放水を仰角状に行うことによって、空気抵抗や微風などの影響を受けて雨のように分散した状態で散布されるので、気化作用の促進の促進を図り且つ屋根構造への負担を軽減して劣化や損傷などを軽減することが可能である。
【0029】
また、散水装置3の設置場所や風その他の環境に応じて放水角度を可変できるように、給水配管6と噴射ノズル7の連結部分に角度調整機構を設けたり、放水の吐出形態を例えばジェット状にする直流吐出と噴霧状にする拡散吐出に切り替えできるように、噴射ノズル7内に公知の切り替え部(図示を省略)を設ける形態などを採ることによって、状況に適合させてより効果的な放水を行うことが可能である。
【0030】
また、上記した実施形態では水道管を給水源として水道水を使用すると共に、散水した水は樋を介して下水に流すようにしているが、散水した水や雨水を樋から回収したり、風呂その他の余剰水をそのまま排水しないで貯水タンクに貯め、ポンプで給水配管6に圧送して再利用できるように、特許文献を含む公知技術のような循環経路にする形態を採ることも可能である。
【0031】
なお、以上の実施形態では屋根に散水することによって室内の温度上昇を抑制する場合について説明したが、同様の散水装置3を用いて隣家が火災になった際に飛び火を消火することによって、延焼を防ぐ装置としても機能させることができると共に、豪雪地帯で屋根に積もった雪に対して地下水や温水を放水させ、融雪によって除雪を行う装置としても機能させることが可能である。
【0032】
特に、遠隔操作によって散水ができる構成を採った場合には、帰宅する前に散水を行って室内を冷却させることができるので、帰宅時における室内環境を快適にすることが可能であると共に、隣家が火災になった際には直ちに避難しながら火災現場から離れた安全地帯で散水装置3を遠隔操作し、自家への飛び火を消火して延焼を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を2階建て住宅の屋根に適用した散水装置を示す全体斜視図である。
【図2】図1における散水装置の模式的な配管図である。
【図3】図2の散水装置における噴射ノズルの部分拡大図である。
【図4】他の実施形態による給水配管を用いた部分拡大図である。
【図5】他の実施形態による支持部材を用いた散水装置の模式的な配管図である。
【符号の説明】
【0034】
1 住宅(建物)
2 屋根
3 散水装置
4 屋根棟部
5 支持部材
5A 支柱
5B 線状材
6 給水配管
6A 金属パイプ
6B ホース
7 噴射ノズル
8 水道管
9 開閉弁
10 水抜き栓
11 水抜き配管
12 ナット部
13 ねじ部
14 ブラケット
15 ホース止め
16 支持具
17 アンカー
α 放水角度
P 放水領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物から離れた屋根棟部の延長線側の高位置に地上から給水配管を立設し、給水配管の下端側を給水源に接続すると共に、給水配管の上端側には噴射口が仰角状で屋根棟部の上方に放水して散水を行う噴射ノズルを装着したことを特徴とする屋根の散水装置。
【請求項2】
前記給水配管には、屋根棟部の一端側から他端側までの放水できるように、流路を開閉して流量及び水圧を可変する開閉弁を設けた請求項1に記載した屋根の散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−77410(P2006−77410A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260356(P2004−260356)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(304045859)
【Fターム(参考)】