説明

工程解析システム、工程解析プログラムおよび工程解析方法

【課題】工程間時間に基づいた工程解析を容易に行うことができる工程解析システムを提供すること。
【解決手段】実施形態の工程解析システムは、基準判定部が、各ロットの工程間時間が基準範囲内であるか否かを工程毎に判定する。割合算出部は、前記工程間時間が基準範囲外となったロットの割合を工程毎に算出する。基準外工程抽出部は、前記割合が所定値以上である工程を基準範囲外工程として抽出し、所定期間における抽出回数を前記工程毎に記憶部に記憶させる。工程抽出部は、前記抽出回数に基づいて、トラブル発生の可能性がある工程を抽出する。相関関係算出部は、抽出された工程で処理されたロット内の基板が有する回路パターンに関する特性と、前記工程間時間と、の相関関係を算出する。限界値算出部は、前記相関関係に基づいて、前記工程間時間の限界値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、工程解析システム、工程解析プログラムおよび工程解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの製造工程においては、ウエハなどの基板に対してリソグラフィ、エッチングなどの複数の処理が行われる。このような製造工程では、処理と処理との間の待ち時間である工程間時間が発生する。そして、工程間時間が長くなると、歩留まりが低下する場合がある。
【0003】
しかしながら、工程間時間がオーバーすることで必ずしも歩留が低下するとは限らないので、工程間時間に対する基準の妥当性や根拠がなかった。このため、工程間時間に基づいた工程解析を容易に行うことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−12095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、工程間時間に基づいた工程解析を容易に行うことができる工程解析システム、工程解析プログラムおよび工程解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、工程解析システムが提供される。工程解析システムは、基準判定部と、割合算出部と、基準外工程抽出部と、記憶部と、工程抽出部と、相関関係算出部と、限界値算出部と、を備えている。前記基準判定部は、製造単位であるロットごとに各工程で基板処理が行われる各ロットに対して算出された工程と工程との間の時間である工程間時間と、工程間時間基準と、を比較することによって、前記工程間時間が基準範囲内であるか否かを工程毎に判定する。前記割合算出部は、前記比較が行われた全ロットのうち前記工程間時間が基準範囲外となったロットの割合を所定のタイミングで工程毎に算出する。前記基準外工程抽出部は、前記割合が所定値以上である工程を基準範囲外工程として抽出する。前記記憶部は、前記基準範囲外工程の所定期間における抽出回数を前記工程毎に記憶する。前記工程抽出部は、前記抽出回数に基づいて、トラブル発生の可能性がある工程を抽出する。前記相関関係算出部は、抽出された工程で処理されたロット内の基板が有する回路パターンに関する特性と、前記工程間時間と、の相関関係を算出する。前記限界値算出部は、前記相関関係に基づいて、前記工程間時間の限界値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係る工程解析システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、データ処理サーバの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、半導体装置の製造処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、工程解析の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、処理履歴データの構成例を示す図である。
【図6】図6は、NG率情報の構成例を示す図である。
【図7】図7は、カウントマスタの構成例を示す図である。
【図8】図8は、実施形態に係る工程解析を説明するための図である。
【図9】図9は、ユーザ画面の一例を示す図である。
【図10】図10は、データ処理サーバのハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係る工程解析システム、工程解析プログラムおよび工程解析方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る工程解析システムの構成を示すブロック図である。工程解析システム1は、半導体装置などの製造工程における工程間時間に基づいて工程解析を行うシステムであり、複数のコンピュータなどを備えて構成されている。半導体装置が形成されるウエハなどの基板は、製造単位であるLOT(ロット)毎に種々の半導体製造工程に回される。このため、工程解析システム1は、LOT単位で工程解析を行う。本実施形態の工程解析システム1は、工程間時間と回路パターンに関する特性(後述のIDS,TEG、D/S)との相関関係に基づいて、トラブルの発生している可能性が高い工程を抽出する。
【0010】
工程解析システム1は、データ処理サーバ10、解析用DB20、QTimeDB30、QTime算出装置40、ユーザ端末U1〜Un(nは自然数)を有している。解析用DB20は、工程解析に用いられる種々のデータを記憶するデータベースである。解析用DB20には、処理履歴データ21、IQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24が格納される。
【0011】
処理履歴データ21は、LOT毎の処理履歴を示すデータである。処理履歴データ21には、何れの工程がいつ処理されたかの日時に関する情報が、LOT番号毎に格納されている。1つのLOTに対して1つの工程(ウエハ処理)が完了する都度、処理履歴データ21が更新される。処理履歴データ21は、工程間時間(LOTの放置時間)であるQTimeの算出に用いられる。
【0012】
IQCデータ22は、ウエハが完成するまでの途中工程で測定されるIQC(Internal Quality Control)に関するデータである。IQCデータ22は、例えば、ウエハ上に形成されているパターンの寸法、ウエハ上に形成された膜の膜厚、レイヤ間の重ね合わせずれ量などである。
【0013】
TEGデータ23は、ウエハの完成後に測定されるTEG(Test Element Group)のデータである。TEGデータ23は、例えば、ウエハ上に形成された回路パターンなどの特性(電圧、抵抗値など)である。
【0014】
D/Sデータ24は、ウエハをダイシングする前のダイソートテストで測定された測定結果である。D/Sデータ24は、例えば、実チップの特性である。
【0015】
QTime算出装置40は、処理履歴データ21を用いてQTimeを算出するコンピュータなどである。QTime算出装置40は、解析用DB20から処理履歴データ21を読み出してQTimeを算出し、算出結果をQTimeデータ31としてQTimeDB30に格納する。例えば、工程Aの終了時間が11時30分であり、工程Bの開始時間が12時45分である場合、12時45分−11時30分=1時間15分が、工程A−B間のQTimeとなる。
【0016】
QTimeDB30は、QTimeに関するデータを記憶するデータベースである。QTimeDB30は、QTimeデータ31、QTime基準データ32を格納する。QTime基準データ32は、QTimeの基準を示すデータであり、工程間毎に設定されている。
【0017】
データ処理サーバ10は、異常の発生した可能性が高い工程を抽出するとともに、異常が許容範囲を超えそうな場合にユーザ端末U1〜Unに異常を通知するコンピュータなどである。本実施形態のデータ処理サーバ10は、QTimeデータ31、QTime基準データ32、IQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24に基づいて、異常状態が常態化している可能性が高いNG工程(以下、異常状態常態化工程という)および突発性異常のあった可能性が高いNG工程(以下、突発性異常工程という)を抽出する。データ処理サーバ10は、抽出したNG工程を解析し、解析結果に基づいて、ユーザ端末U1〜Unにトラブル発生に関する通知を行う。
【0018】
ユーザ端末U1〜Unは、工程管理者などによって使用されるコンピュータなどである。ユーザ端末U1〜Unは、データ処理サーバ10からの通知に基づいて、トラブルの発生している可能性が高い工程(異常が許容範囲を超えそうな工程)に関するデータ(IQCなど)を表示する。
【0019】
なお、ここではQTime算出装置40とデータ処理サーバ10を別々の構成としたが、データ処理サーバ10がQTime算出装置40を備える構成としてもよい。
【0020】
つぎに、データ処理サーバ10の構成について説明する。図2は、データ処理サーバの構成を示すブロック図である。データ処理サーバ10は、入力部11、基準判定部12、NG率算出部13、カウントマスタ登録部14、工程抽出部15、相関関係算出部16、解析部17、アラーム出力部18、カウントマスタ記憶部19A、測定データ記憶部19Bを備えている。
【0021】
入力部11は、QTimeデータ31、QTime基準データ32、IQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24などを入力する。入力部11は、入力したQTimeデータ31、QTime基準データ32を基準判定部12に送る。また、入力部11は、入力したIQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24を測定データ記憶部19Bに送る。
【0022】
基準判定部12は、QTimeデータ31、QTime基準データ32に基づいて、何れの工程間でQTimeが基準範囲外(異常)となったかを判定する。例えばLOT内の1枚のウエハでもNGであれば、NGのLOTであると判定される。基準判定部12は、LOT毎の異常判定結果を、NG率算出部13に送る。なお、以下では、第1の工程と第2の工程との間の工程間でQTimeが基準異常となった場合、第2の工程でQTimeが異常となったものとして説明する。
【0023】
NG率算出部13は、異常判定結果に基づいて、工程毎のNG率を算出する。NG率は、((異常と判定されたLOTのLOT数)/(異常判定を行ったLOTのLOT数))×100によって算出される。異常判定を行なうLOTは、例えば各工程でその日処理されたLOT全数である。なお、異常判定を行なうLOTは、例えば最新の所定数(例えば、100LOT)としてもよい。
【0024】
QTimeが異常となったか否かの判定結果は、ウエハ(回路パターンなどの寸法や膜厚など)が不良であるか否かを示すものではなく、異常状態の可能性(確率)が所定値よりも高いか否かを示すものである。したがって、QTimeが異常となったか否かの判定結果は、異常状態の可能性が所定値よりも高い工程を抽出するために用いられる。このため、本実施形態のNG率は、ウエハの不良率を示すものではなく、異常状態の可能性が高いか低いかを示すものである。
【0025】
また、本実施形態のNG工程(異常状態常態化工程、突発性異常工程)は、異常状態の可能性が所定値よりも高い工程である。そして、NG工程の解析結果に基づいてユーザ端末U1〜Unに通知される情報は、トラブルの発生した可能性が所定値よりも高い工程に関する情報である。
【0026】
カウントマスタ登録部14は、NG率が所定値以上の工程を抽出して、カウントマスタ記憶部19A内のカウントマスタに登録する。以下では、一例としてNG率が30%以上の工程をカウントマスタに登録する場合について説明する。本実施形態では、異常状態常態化工程を解析する際に用いるカウントマスタ(後述の1ヶ月カウントマスタ102A)と、突発性異常工程を解析する際に用いるカウントマスタ(後述の1週間カウントマスタ102B)と、がカウントマスタ登録部14に登録される。
【0027】
1ヶ月カウントマスタ102Aは、1ヶ月間においてNG率が30%以上となった日のカウント値(カウントマスタ登録部14に抽出された日数)を工程毎に示す情報である。1週間カウントマスタ102Bは、1週間においてNG率が30%以上となった日のカウント値(カウントマスタ登録部14に抽出された日数)を工程毎に示す情報である。カウントマスタ登録部14は、例えば工程Aでの1日のNG率が30%以上の場合、1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102B内の工程Aのカウント値に1をプラスする。
【0028】
工程抽出部15は、1ヶ月カウントマスタ102Aに基づいて、異常状態常態化工程を所定数抽出する。本実施形態では、工程抽出部15が、異常状態常態化工程として、1ヶ月カウントマスタ102Aで例えば上位3位までのカウント値を示す工程を抽出する。
【0029】
また、工程抽出部15は、1週間カウントマスタ102Bに基づいて、突発性異常工程を抽出する。本実施形態では、工程抽出部15が、突発性異常工程として、1週間カウントマスタ102B内に登録されておらず、今回の登録(最新の登録)で1週間カウントマスタ102Bにカウントされた工程を抽出する。
【0030】
相関関係算出部16は、工程抽出部15で抽出された工程に対して、QTimeとIQCデータ22の関係、QTimeとTEGデータ23の関係、QTimeとD/Sデータ24の関係を算出する。具体的には、相関関係算出部16は、QTimeとの関係として、散布図や相関係数を算出する。
【0031】
解析部17は、相関関係算出部16が算出した散布図や相関係数を解析し、解析結果に基づいて、ユーザ端末U1〜Unへのアラームを必要とする工程を選択する。解析部17は、散布図や相関係数に基づいて、QTimeの限界値を算出し、QTimeの限界値を超えた工程を、ユーザ端末U1〜Unへのアラームが必要な工程に決定する。
【0032】
アラーム出力部18は、アラームが必要な工程に関する情報を、ユーザ端末U1〜Unにメールなどで通知する。カウントマスタ記憶部19Aは、1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102Bを記憶するメモリなどであり、測定データ記憶部19Bは、IQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24を記憶するメモリなどである。
【0033】
ここで、半導体装置の製造処理手順について説明する。図3は、半導体装置の製造処理手順を示すフローチャートである。半導体装置が形成されるウエハが投入された後(ステップS10)、ウエハ処理(リソグラフィやエッチングなどの製造工程)が行われる(ステップS20)。この後、ウエハ処理に対する処理結果がとして、出来栄え(IQC)が測定される(ステップS30)。ここで測定されるIQCは、ウエハ上のパターン寸法などであり、測定結果は、IQCデータ22として解析用DB20に格納される。出来栄えが測定された後、ウエハの払い出しが行われる(ステップS40)。
【0034】
そして、全てのウエハ処理が完了していなければ(ステップS50、No)、ステップS20〜S40の処理が繰り返される。具体的には、次のウエハ処理が行われた後(ステップS20)、出来栄えが測定され(ステップS30)、その後、ウエハの払い出しが行われる(ステップS40)。ウエハの払い出しから次の処理の開始までの時間が、QTimeである。
【0035】
全てのウエハ処理が完了するまでステップS20〜S50の処理が繰り返される。そして、全てのウエハ処理が完了すると(ステップS50、Yes)、ウエハ上のTEGが測定される(ステップS60)。TEGの測定結果は、TEGデータ23として解析用DB20に格納される。その後、D/Sテストが行われる(ステップS70)。D/Sの測定結果は、D/Sデータ24として解析用DB20に格納される。
【0036】
つぎに、工程解析システム1による工程解析の処理順について説明する。図4は、工程解析の処理手順を示すフローチャートである。QTime算出装置40は、処理履歴データ21を用いてQTimeを算出し(ステップS110)、QTimeデータ31としてQTimeDB30に格納する。
【0037】
ここで、処理履歴データ21の一例について説明する。図5は、処理履歴データの構成例を示す図である。処理履歴データ21は、LOT番号と、工程毎のQTimeと、が対応付けされたデータである。図5では、LOT番号が「001」、「002」のLOTにおける、工程A(前工程から工程Aまで)のQTime、工程B(工程Aから工程Bまで)のQTime、工程C(工程Bから工程Cまで)のQTimeを示している。
【0038】
データ処理サーバ10は、QTimeデータ31、QTime基準データ32を読み込む(ステップS120)。QTimeデータ31、QTime基準データ32は、入力部11から基準判定部12に送られる。
【0039】
基準判定部12は、QTimeデータ31と、QTime基準データ32と、を比較して大小関係を判定することにより、何れの工程間でQTimeが異常となったかの基準判定を行う。これにより、基準判定が合格か否かが判定される(ステップS130)。基準判定部12は、QTime基準データ32で設定されている基準(NG工程と判定するか否かの基準値)より長いQTimeを異常と判定する。
【0040】
基準判定が合格の場合(ステップS130、Yes)、この工程は正常と判定される(ステップS131)。データ処理サーバ10では、正常な工程のLOTに関しては、異常判定などの処理は行わない。この場合、基準判定部12は、正常な工程の工程名と、正常と判定されたLOTのLOT番号と、正常であることを示す判定結果と、を対応付けてNG率算出部13に送る。
【0041】
一方、基準判定が不合格の場合(ステップS130、No)、この工程は異常であると判定される(ステップS132)。この場合、基準判定部12は、異常な工程の工程名と、異常と判定されたLOTのLOT番号と、異常であることを示す判定結果と、を対応付けてNG率算出部13に送る。NG率算出部13は、異常判定結果に基づいて、工程毎のNG率をNG率情報として日毎に算出する(ステップS140)。
【0042】
ここで、NG率情報の構成例について説明する。図6は、NG率情報の構成例を示す図である。NG率情報101は、工程名と、NG率と、を対応付けしたデータである。ここでは、工程AのNG率が「Xa」であり、工程BのNG率が「Xb」であり、工程CのNG率が「Xc」である場合を示している。
【0043】
NG率算出部13は、算出したNG率情報101を、カウントマスタ登録部14に送る。カウントマスタ登録部14は、NG率情報101に基づいて、工程毎にNG率の判定を行う。これにより、NG率が基準内(30%未満)であるか否かが判定される(ステップS150)。
【0044】
NG率が30%未満である場合(ステップS150、Yes)、この工程は、異常の可能性が低い工程であるので工程解析の対象外(基準内)であると判定される。この場合、データ処理サーバ10では、異常の基準外のLOTに関しては、1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102Bへの登録は行わない。
【0045】
一方、NG率が30%以上である場合(ステップS150、No)、この工程は、異常の可能性が高い工程であるので工程解析の対象候補であると判定される。この場合、カウントマスタ登録部14は、NG率が30%以上の工程を、カウントマスタ記憶部19A内の1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102Bに登録する(ステップS161、ステップS162)。
【0046】
ここで、カウントマスタ(1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102B)の構成例について説明する。図7は、カウントマスタの構成例を示す図である。図7の(a)は、1ヶ月カウントマスタ102Aの構成例を示し、図7の(b)は、1週間カウントマスタ102Bの構成例を示している。
【0047】
図7の(a)に示すように、1ヶ月カウントマスタ102Aでは、「工程名」と「1ヶ月カウント数」とが対応付けられている。「1ヶ月カウント数」は、直近の1ヶ月(例えば30日)の間に、NG率が30%以上となった日のカウント数(日数)である。
【0048】
また、図7の(b)に示すように、1週間カウントマスタ102Bでは、「工程名」と「1週間カウント数」とが対応付けられている。「1週間カウント数」は、直近の1週間の間に、NG率が30%以上となった日のカウント数(日数)である。
【0049】
この後、工程抽出部15は、最新の1ヶ月カウントマスタ102Aをカウントマスタ記憶部19Aから読み込む(ステップS170)。そして、工程抽出部15は、1ヶ月カウントマスタ102Aに基づいて、異常状態常態化工程を所定数抽出する(ステップS180)。換言すると、工程抽出部15は、異常状態常態化工程の絞込み・削除を行う。具体的には、工程抽出部15が、異常状態常態化工程として、1ヶ月カウントマスタ102Aで上位3位までのカウント値を示す工程を抽出する。
【0050】
また、工程抽出部15は、最新の1週間カウントマスタ102Bをカウントマスタ記憶部19Aから読み込む(ステップS190)。そして、工程抽出部15は、1週間カウントマスタ102Bに基づいて、突発性異常工程を抽出する(ステップS200)。換言すると、工程抽出部15は、突発性異常工程の絞込み・削除を行う。具体的には、工程抽出部15は、突発性異常工程として、1週間カウントマスタ102B内に登録されておらず、今回の登録で1週間カウントマスタ102Bにカウントされた工程(最新更新日にNG率が30%以上であった工程)を抽出する。
【0051】
工程抽出部15は、最新の1ヶ月カウントマスタ102Aから抽出した工程(異常状態常態化工程)と、この工程のQTimeとを対応付けて相関関係算出部16に送る。また、工程抽出部15は、最新の1週間カウントマスタ102Bから抽出した工程(突発性異常工程)と、この工程のQTimeとを対応付けて相関関係算出部16に送る。
【0052】
相関関係算出部16は、工程抽出部15で抽出された工程に対応するIQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24を、測定データ記憶部19Bから読み込む。これにより、相関関係算出部16は、異常状態常態化工程を通過したLOTの詳細データと、突発性異常工程を通過したLOTの詳細データと、を取得する(ステップS210)。
【0053】
相関関係算出部16は、工程抽出部15で抽出された工程に対して、QTimeとIQCデータ22の関係、QTimeとTEGデータ23の関係、QTimeとD/Sデータ24の関係を算出する。相関関係算出部16は、QTimeとの関係として、例えば散布図や相関係数を算出する(ステップS220)。
【0054】
解析部17は、相関関係算出部16が算出した散布図や相関係数を解析し(ステップS230)、解析結果に基づいて、ユーザ端末U1〜Unへのアラーム発報を必要とする工程を選択する。アラーム発報を必要とする工程は、トラブル発生の可能性が所定値よりも高い工程である。
【0055】
図8は、実施形態に係る工程解析を説明するための図である。ここでは、ある特定の工程でトラブル発生の可能性があるか否かを解析する場合について説明する。図8において、グラフ201は、各LOTの処理日時(ウエハ処理の日時)と、QTimeとの関係を示している。ある日時を境にQTimeが増加し、さらに、ある日時を境にQTimeが基準を越える場合がある。QTimeが基準を超えた場合には、基準判定部12で不合格と判定される。
【0056】
そして、カウントマスタ登録部14は、NG率が30%以上となった場合には、1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102Bへの登録を行う。工程抽出部15が、異常状態常態化工程、突発性異常工程を抽出すると、相関関係算出部16は、異常状態常態化工程を通過したLOTの詳細データと、突発性異常工程を通過したLOTの詳細データと、を取得する。具体的には、相関関係算出部16は、工程抽出部15で抽出された工程でウエハ処理されたLOTのIQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24を抽出する。
【0057】
そして、相関関係算出部16は、IQCデータ22を用いて、LOTとIQCとの関係(グラフ203A)を導出する。グラフ203Aの横軸には、NG工程を通過したLOTのLOT番号が時系列で配置されている。そして、グラフ203Aの縦軸をIQCとしている。グラフ203Aに示すように、NG工程では、ある日時からIQCが大きく変化している。
【0058】
同様に、相関関係算出部16は、TEGデータ23を用いて、LOTとTEG測定結果との関係(グラフ203B)を導出する。グラフ203Bの横軸には、NG工程を通過したLOTのLOT番号が時系列で配置されている。そして、グラフ203Bの縦軸をTEG測定結果としている。グラフ203Bに示すように、NG工程では、ある日時からTEG測定結果が大きく変化している。
【0059】
さらに、相関関係算出部16は、D/Sデータ24を用いて、LOTとD/S測定結果との関係(グラフ203C)を導出する。グラフ203Cの横軸には、NG工程を通過したLOTのLOT番号が時系列で配置されている。そして、グラフ203Cの縦軸をD/S測定結果としている。グラフ203Cに示すように、NG工程では、ある日時からD/S測定結果が大きく変化している。
【0060】
この後、相関関係算出部16は、グラフ203Aを用いて、QTimeとIQCデータ22の関係(グラフ204A)を算出する。同様に、相関関係算出部16は、グラフ203Bを用いて、QTimeとTEGデータ23の関係(グラフ204B)を算出し、相関関係算出部16は、グラフ203Cを用いて、QTimeとD/Sデータ24の関係(グラフ204C)を算出する。
【0061】
グラフ204A〜204Cは、横軸がグラフ203A〜203Cに示したLOTのQTimeである。換言すると、グラフ204A〜204Cの横軸には、NG工程を通過したLOTのQTimeが時系列で配置されている。そして、グラフ204A〜204Cの縦軸を、それぞれIQC、TEG測定結果、D/S測定結果としている。
【0062】
相関関係算出部16は、グラフ204A〜204Cに基づいて、散布図や相関係数を算出する。そして、解析部17は、相関関係算出部16が算出した散布図や相関係数を解析し、解析結果に基づいてQTimeの限界値を算出する。換言すると、QTimeと出来映え(IQC、TEG、D/S)との相関関係に基づいて、QTimeの限界値が算出される。
【0063】
さらに、解析部17は、QTimeの限界値に基づいて、アラーム発報を必要とする工程を選択する。解析部17は、例えば、アラーム発報を行うか否かの基準となる基準を超えた場合に、アラーム発報が必要であると判断する。
【0064】
アラーム出力部18は、アラームが必要な工程に関する情報を、ユーザ端末U1〜Unにメールなどでアラーム発報する(ステップS240)。本実施形態では、上述した工程解析処理を対象LOTが払い出しされるまで、定期的・自動的に行ない、常時モニタできるようにしておく。
【0065】
ここで、ユーザ端末U1〜Unで表示されるユーザ画面の一例について説明する。図9は、ユーザ画面の一例を示す図である。ユーザ画面301には、NG率が30%以上のNG工程に関する情報が表示される。
【0066】
ここでは、ユーザ画面301として、3つのグラフ205A,205B,205Cが表示される場合を示している。グラフ205A〜205Cは、それぞれ縦軸(Y軸)がIQC、TEG測定結果、D/S測定結果である。また、グラフ205A〜205Cの横軸(X軸)は、LOTへの処理日時、LOT番号、QTimeなどの何れでもよい。
【0067】
ユーザ画面301には、工程を選択する選択欄60が設けられている。選択欄60で工程が選択されることにより、選択された工程のグラフ205A〜205Cが表示される。また、ユーザ画面301には、X軸を何れの項目にするかの選択欄70が設けられている。選択欄70でLOTへの処理日時、LOT番号、QTimeの何れかが選択されることにより、選択された項目がグラフ205A〜205CのX軸に設定される。なお、ユーザ画面301では、グラフ205A〜205Cとともに、グラフ205A〜205Cの相関係数を表示してもよい。
【0068】
工程解析システム1によって、トラブルが発生している可能性が所定値よりも高いと判断された工程は、必要に応じて工程の改善などが行われる。また、工程解析に基づいて、図8のグラフ201,204A〜204Cに示した基準を修正してもよい。
【0069】
つぎに、データ処理サーバ10のハードウェア構成について説明する。図10は、データ処理サーバのハードウェア構成を示す図である。データ処理サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。データ処理サーバ10では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
【0070】
CPU91は、コンピュータプログラムである工程解析プログラム97を用いてパターンの判定を行う。表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、IQCデータ22、TEGデータ23、D/Sデータ24、QTimeデータ31、QTime基準データ32、NG率情報101、1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102B、グラフ201,203A〜203C,204A〜204Cなどを表示する。入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(工程解析に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
【0071】
工程解析プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。図10では、工程解析プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
【0072】
CPU91はRAM93内にロードされた工程解析プログラム97を実行する。具体的には、データ処理サーバ10では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内から工程解析プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0073】
データ処理サーバ10で実行される工程解析プログラム97は、基準判定部12、NG率算出部13、カウントマスタ登録部14、工程抽出部15、相関関係算出部16、解析部17を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0074】
なお、工程解析プログラム97を複数のプログラムとしてもよい。この場合、各プログラムは、例えば、基準判定部12、NG率算出部13、カウントマスタ登録部14、工程抽出部15、相関関係算出部16、解析部17の少なくとも1つの機能を達成するプログラムとしておく。そして、各プログラムを組み合わせることによって、工程解析プログラム97と同様の動作を実行する。
【0075】
なお、図4で説明した工程解析処理において、ステップS161の処理とステップS162の処理は、何れを先に行ってもよい。また、ステップS170,S180の処理よりも前にステップS190,S200の処理を行ってもよい。
【0076】
このように実施形態によれば、QTimeの基準判定に基づいてNG率を算出し、NG率が高い工程を1ヶ月カウントマスタ102A、1週間カウントマスタ102Bに登録している。そして、1ヶ月カウントマスタ102Aに基づいてNG工程を抽出するので、異常状態常態化工程を抽出することができる。また、1週間カウントマスタ102Bに基づいてNG工程を抽出するので、突発性異常工程を抽出することができる。さらに、抽出されたNG工程を解析しているので、工程間時間(QTime)に基づいた工程解析を容易に行うことが可能となる。これにより、トラブルの発生している工程をユーザが容易に発見することが可能となる。したがって、工程間時間に起因する不良を低減でき、その結果、歩留まりロスを抑制することが可能となる。
【0077】
また、IQCデータ22を用いて工程解析を行っているので、トラブル発生の可能性を迅速に発見することが可能となる。また、TEGデータ23、D/Sデータ24を用いて工程解析を行っているので、トラブル発生の可能性を正確に解析することが可能となる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…工程解析システム、10…データ処理サーバ、12…基準判定部、13…NG率算出部、14…カウントマスタ登録部、15…工程抽出部、16…相関関係算出部、17…解析部、18…アラーム出力部、19A…カウントマスタ記憶部、19B…測定データ記憶部、20…解析用DB、21…処理履歴データ、22…IQCデータ、23…TEGデータ、24…D/Sデータ、30…QTimeDB、31…QTimeデータ、32…QTime基準データ、40…QTime算出装置、101…NG率情報、102A…1ヶ月カウントマスタ、102B…1週間カウントマスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造単位であるロットごとに各工程で基板処理が行われる各ロットに対して算出された工程と工程との間の時間である工程間時間と、工程間時間基準と、を比較することによって、前記工程間時間が基準範囲内であるか否かを工程毎に判定する基準判定部と、
前記比較が行われた全ロットのうち前記工程間時間が基準範囲外となったロットの割合を所定のタイミングで工程毎に算出する割合算出部と、
前記割合が所定値以上である工程を基準範囲外工程として抽出する基準外工程抽出部と、
前記基準範囲外工程の所定期間における抽出回数を前記工程毎に記憶する記憶部と、
前記抽出回数に基づいて、トラブル発生の可能性がある工程を抽出する工程抽出部と、
抽出された工程で処理されたロット内の基板が有する回路パターンに関する特性と、前記工程間時間と、の相関関係を算出する相関関係算出部と、
前記相関関係に基づいて、前記工程間時間の限界値を算出する限界値算出部と、
を備えることを特徴とする工程解析システム。
【請求項2】
前記回路パターンに関する特性は、前記工程で基板処理された回路パターンの寸法に関する寸法データ、前記回路パターンの電気特性に関するTEGデータおよび前記回路パターンのダイソートテストで測定されたD/Sデータの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の工程解析システム。
【請求項3】
前記トラブル発生の可能性がある工程は、異常状態が常態化している可能性のある工程であり、
前記工程抽出部は、前記抽出回数の値が全工程の中で上位から所定数番目までの工程を、前記トラブル発生の可能性がある工程として抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の工程解析システム。
【請求項4】
前記トラブル発生の可能性がある工程は、突発性異常のあった可能性のある工程であり、
前記工程抽出部は、所定期間の間、前記基準範囲外工程としての抽出が行われず、かつ最新の登録処理で前記基準範囲外工程としての登録が行われた工程を、前記トラブル発生の可能性がある工程として抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の工程解析システム。
【請求項5】
製造単位であるロットごとに各工程で基板処理が行われる各ロットに対して算出された工程と工程との間の時間である工程間時間と、工程間時間基準と、を比較することによって、前記工程間時間が基準範囲内であるか否かを工程毎に判定する基準判定ステップと、
前記比較が行われた全ロットのうち前記工程間時間が基準範囲外となったロットの割合を所定のタイミングで工程毎に算出する割合算出ステップと、
前記割合が所定値以上である工程を基準範囲外工程として抽出する基準外工程抽出ステップと、
前記基準範囲外工程の所定期間における抽出回数を前記工程毎に記憶する記憶ステップと、
前記抽出回数に基づいて、トラブル発生の可能性がある工程を抽出する工程抽出ステップと、
抽出された工程で処理されたロット内の基板が有する回路パターンに関する特性と、前記工程間時間と、の相関関係を算出する相関関係算出ステップと、
前記相関関係に基づいて、前記工程間時間の限界値を算出する限界値算出ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする工程解析プログラム。
【請求項6】
製造単位であるロットごとに各工程で基板処理が行われる各ロットに対して算出された工程と工程との間の時間である工程間時間と、工程間時間基準と、を比較することによって、前記工程間時間が基準範囲内であるか否かを工程毎に判定する基準判定ステップと、
前記比較が行われた全ロットのうち前記工程間時間が基準範囲外となったロットの割合を所定のタイミングで工程毎に算出する割合算出ステップと、
前記割合が所定値以上である工程を基準範囲外工程として抽出する基準外工程抽出ステップと、
前記基準範囲外工程の所定期間における抽出回数を前記工程毎に記憶する記憶ステップと、
前記抽出回数に基づいて、トラブル発生の可能性がある工程を抽出する工程抽出ステップと、
抽出された工程で処理されたロット内の基板が有する回路パターンに関する特性と、前記工程間時間と、の相関関係を算出する相関関係算出ステップと、
前記相関関係に基づいて、前記工程間時間の限界値を算出する限界値算出ステップと、
を含むことを特徴とする工程解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−199403(P2012−199403A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62877(P2011−62877)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】