説明

差別化された外観を有する金属化仕上げエリアを備える部品の処理

本発明は、光沢のある外観および艶消しされた外観を有するエリアを備える表面を形成するための、部品の処理方法であって、銅の第一層および金属の第二層であらかじめコーティングされた表面上で、第二層の選択的エッチングが行なわれ、ここで第二層の選択的エッチングは部品の他の部分に対して艶出しされるエリアに応じて行なわれる方法に関するものである。この方法により、異なる光沢(鏡のような光沢から艶消しまで)のエリアを備える仕上げが可能となり、その厚さの違いは人間の目では視覚補助具無しで観測することができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティングの分野に関するものである。より具体的には、本発明は全く同一の部品に異なる光沢仕上げおよび艶消し仕上げを組み合わせることを可能とする、部品の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解槽によるクロムコーティングは、腐食を防ぐ装飾層として現在用いられている。これらのコーティングは一般的に電解槽で製造される。
【0003】
これらの従来の槽において、プラスチックは導体ではないため、コーティングを受けることを可能とするために複雑な前処理工程に付される必要がある。
【0004】
より毒性の低い製品を用いることを可能とする物理蒸着(PVD)を用いる、クロムめっきの新規な方法が現在開発されている。PVD技術は、堆積される固体材料から直接始まり、次いでこの材料が加熱またはエネルギーイオンの照射によって蒸気に変換される。形成された蒸気は基板の表面上で凝縮し、薄層を形成する。この工程は真空下または、制御された雰囲気下で行なわれ、金属蒸気と空気の相互作用を防ぐ。この方法を用いたコーティング方法は特許出願ES2239907A1に記載されている。
【0005】
クロムめっきをプラスチックまたは金属のいずれかの表面上に作り出すために、銅が製品の表面に最初に堆積される。この層は約20〜25ミクロンの厚さである。次いで、約15ミクロンのニッケルの堆積が行なわれ、最後にクロムが約0.5ミクロンの典型的な厚さで適用される。艶消し外観が付与される場合には、クロムを適用する前にニッケルの最終層は艶消しされる。しかし、その部品が艶消しおよび光沢エリアを有することになっているときは、部品の大部分と異なる外観を有するエリアは別々に挿入されるべきであり、追加の複雑さを生じる。現在、艶消しエリアはクロムめっきされた光沢のある表面上に、有機層を部分的に適用することで達成され得る。この解決法は異なる仕上げの境界における鮮明度の問題、および自動車用途において求められる付着力やひっかき抵抗性などの屋外での要求についての抵抗力の問題を有する。
【発明の目的】
【0006】
本発明の目的は、前項で言及された技術的問題を解決することにある。そのために本発明は、表面に異なる艶出し仕上げおよび光沢仕上げを与える部品の処理方法を提案することである。この方法は、銅の第一層および金属の第二層であらかじめコーティングされた表面上で、第二層の選択的エッチングを行なうことを含み、ここでこの選択的エッチングが部品の他の部位に対して艶消しされるエリアに応じて行なわれる。
【0007】
選択的エッチングは、表面を渡って望ましいエリアを艶消しするレーザーを用いて行なわれ得る。レーザーは、好ましくは波長が1064nmで出力が100WのYagレーザーである。あるいは、選択的エッチングはスクレイピング(scraping)または化学的に行われることができ、この場合、光沢がなければならないエリアは保護される。化学的エッチングについては、光沢がなければならない表面上にマスキングコーティングが適用され、マスクは露出したエリアへの選択的エッチングの後に溶媒で溶解される。
【0008】
金属の第二層は、ニッケル、またはニッケルとその上にクロムがあるものであってもよい。一番目の場合はニッケルの層がエッチングされ、一方で、二番目の場合ではクロムの層がエッチングされる。選択的エッチングの後に、非腐食性金属(再度クロム、スチールまたは、Zr、Au、Pt、Rt、Inなどの金属)の別の層が適用される。これらの金属は、PVDまたは他の好適な技術によって部品に適用されることができる。クロムも電気分解によって、エッチングが行なわれる前と最終工程のいずれにおいても、適用されることができる。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本発明の方法は、プラスチック材料および金属でできた部品、例えばクロムめっきプロセスの準備として銅およびニッケルの層で処理された部品、に適用される。第一の態様において、部分的な表面エッチングがニッケルの層に行なわれ、これにより異なる質感/光沢を有する近接するエリアが得られる。この部品は次いで、例えば電解クロム(galvanic chromium)で、クロムめっきされる。
【0010】
別の態様において、部品は銅、ニッケルおよびクロムの層を有し、クロムの層が表面的にエッチングされる。
【0011】
いずれの場合においても選択的エッチングは、(酸を用いた)化学的方法または物理的方法、例えばレーザーを用いるか、または保護されてないエリアをスクレイピングすること、によって行うことができ、あらかじめ保護されていたエリアと異なる質感または光沢(艶)を付与することができる。
【0012】
エッチングが化学的であるかまたはスクレイピングによって行なわれる場合、処理されてはならないエリアおよび光沢を有するようになるエリアは保護物またはマスクで保護され、これらの保護物は後ほど除去される。
【0013】
最後に、非腐食性金属の層がPVD技術(スパッタリングやアークなど)を用いて適用されることができ、得られた異なるレベルの光沢または質感の保存が上記のように保証される。この最終工程で用いられる金属は、クロム、チタン、ジルコニウム、インジウム、ルテニウムまたは、金もしくは白金のような貴金属である。異なる金属が異なる色を有する仕上げを部品に与え、選択的エッチングによってあらかじめ処理されたエリアの艶出しした外観が尊重され、さらに部品は外部からの攻撃から保護される。非光沢エリアの最終的な仕上げは異なるメッシュまたは幾何学的形態を有していてもよく、レーザーの使用がこの特別な例に対して好ましい。縞模様の仕上げに関しては、スクレイピングによるエッチングが好ましい。
【0014】
中間工程および最終工程の両方で適用されたクロムは、電解クロムまたはPVDによって適用されたクロムであってよい。
【0015】
この方法を用いることにより、全く同一の部品が異なる仕上げを有するエリアを有し、主要部の異なるエリアに取り外し可能な要素を導入するかまたは金属上に部分的に適用される有機層を使用する必要無しに達成され、部品の表面が均質であり、かつ、例えば自動車産業の要求のような、屋外および屋内要求への抵抗を促進する。したがって、仕上げはエッチング時間および用いる方法に依存する異なる光沢(鏡のような光沢から艶消しまでであり、艶のある状態および全ての中間の色調を含む)を有するエリアを備え、その厚さの違いは人間の目では視覚補助具無しで観測することができない。
【0016】
選択的エッチングによって、処理されるエリアはあらかじめ選択され、あらかじめ堆積されたニッケルまたはクロムの層の質感および光沢が部分的に修正されるように変更されることが分かる。これにより選択された表面に、ベースの光沢のある外観とは異なる外観が与えられる。
【0017】
レーザーを用いた選択的エッチングが、例えば、波長が1064nmで出力が100WのYagレーザーを用いて実施される。
【0018】
同様な特徴を有する他のタイプのレーザーを適用することも可能であろう。
【0019】
レーザーの出力および活動時間を制御することで、種々の仕上げが達成され得るものであり、これにより、より鏡のような色調(光沢エリア)から多少艶消しされた仕上げ、または特有な質感といった、異なるニュアンスが部品に与えられる。
【0020】
あるいは、エッチングは、光沢がなければならない表面をマスキングした後で、酸を用いて行われることもできる。マスクはその後溶媒で除去される。化学エッチングの場合のマスキングは、表面エッチング段階の間に用いられる化学製品に抵抗のある特別な塗料を用いて行なわれる。
【0021】
エッチングがスクレイピングで行なわれる場合、塗布、機械的マスク、またはパッド印刷によって保護が適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢がある外観および艶消しされた外観を有する表面を作り出す、部品を処理する方法であって、銅の第一層および金属を含む第二層であらかじめコーティングされた前記表面上で前記第二層の選択的エッチングが行なわれ、前記第二層の前記選択的エッチングが前記部品の他の部位に対して艶消しされるエリアに応じて行なわれる、方法。
【請求項2】
前記選択的エッチングが、前記表面を渡って望ましいエリアを艶消しするレーザーを用いて行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザーが、波長が1064nmで出力が100WのYagレーザーである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択的エッチングが化学的に行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチングの前に、光沢がなければならない前記表面をマスクするコーティングが適用され、前記エッチングが保護されていないエリアについて行なわれ、前記マスクがその後溶媒で溶解される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択的エッチングが、前記艶消しされるエリアにスクレイピングによって物理的に行なわれ、光沢がなければならない前記表面が保護される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二層がニッケルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二層がニッケルの下位層およびクロムの別の上位層を順番に備え、前記選択的エッチングが前記クロムの層に生じる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記クロムの層の前記選択的エッチングが前記ニッケルの下位層に達するまで行なわれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記クロムが電気分解によって堆積される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記クロムがPVDによって堆積される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記選択的エッチングが行なわれた後に、非腐食性金属の別の層がPVDによって前記表面に適用される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記腐食性金属がZr、Cr、Au、Pt、Rt、Inまたはスチールのうちの1つかまたは組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記選択的エッチングが行なわれた後に、クロムの更なる層が電気分解によって前記表面上に適用される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記部品がプラスチック材料で作られている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記部品が金属で作られている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503055(P2013−503055A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526076(P2012−526076)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062558
【国際公開番号】WO2011/023798
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(304034738)サニーニ・オート・グルプ・ソシエダッド・アノニマ (2)
【Fターム(参考)】