説明

布地用プリント装置

【課題】 布保持体からはみ出す布地部分が多い布地にも、汚れることなく、容易に且つ綺麗にプリントでき、しかも布地の布保持体への取付けを簡単化できるようにすること。
【解決手段】 布地Wにプリント可能なプリントヘッド11を有するインクジェット式の布地用プリント装置1であって、プリントヘッド11をX方向(左右方向)へ移動させるヘッド移動機構20と、布地Wのうちのプリントを施すプリント領域の周囲を保持する布保持体5と、プリントヘッド11の下側付近において布保持体5をX方向と直交するY方向(前後方向)へ布送りする保持体移動機構30と、保持体移動機構30により布保持体5がY方向へ移動する移動スペースの下側に設けられた布地通路3であって、布保持体5で保持された布地Wのうちの布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waの移動を許す為の布地通路3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布保持体枠に保持した布地に、インクジェットノズルから噴射したインクによりプリントするようにした布地用プリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、A4版やB5版等の各種サイズの普通用紙やOHPシート等の記録用紙を1枚ずつ給紙し、給紙した記録用紙を用紙送り方向に紙送りしながら、印字ヘッドをその用紙送り方向と直交する印字方向に往復移動させることにより、印字ヘッドに有する多数のインクジェットノズルから噴射されるインクにより、記録用紙にカラー印字するように構成されたインクジェット式プリント装置が、各種提案されるとともに、実用化されている。
【0003】
例えば、特開2003−63713号公報に記載のインクジェット記録装置においては、給紙トレイにセットされた複数枚の被記録材のうち、上側の被記録材から1枚ずつ給紙ローラで給紙され、搬送ローラにより搬送された印字部においては、被記録材の搬送方向への移動を実行しながら、印字ヘッドが往復移動するので、印字データに基づいて印字ヘッドのインクジェットノズルから噴射されるインクにより、被記録材にカラー印字が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種のインクジェット式プリント装置は、小型化された卓上型が普及しており、大きさや紙質の異なる各種の被記録材に、高速でカラー印字が可能になっている。ところで、最近、Tシャツやブラウス、更に、ハンカチや風呂敷等、布製の被記録材に、インクジェット式プリント装置により所望の図柄や画像を印字したいという要望が高まっている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−63713号公報 (第3〜4頁、図1,図2,図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、Tシャツや風呂敷等の布地は、用紙に比べて「こし」が弱いため、プリント領域の周囲を布保持体で保持する必要がある。但し、この場合には、布保持体から外側にはみだしたプリント領域以外の布地部分が下側に垂れ下がっている。しかし、前述したように、特開2003−63713号公報に記載のインクジェット記録装置により、布保持体を布送りしながらプリントする場合、布保持体の搬送通路の下側には、複数本の搬送ローラや排紙ローラ等が配設されている。
【0007】
そのため、搬送ローラや排紙ローラで、布保持体の外側部分を挟持しながら搬送する場合、挟持部分が狭いため、滑りが発生し易く、搬送精度が悪化し、綺麗にプリントできないこと、布保持体から垂れ下がった布地部分が、フレーム内側に接触しながら搬送されるため、その布地部分が汚れたり傷ついたりすること、搬送ローラや排紙ローラによる移送に邪魔になり、布保持体の搬送を実行できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る布地用プリント装置は、布地にプリント可能なプリントヘッドを有するインクジェット式の布地用プリント装置であって、プリントヘッドを第1の方向へ移動させるヘッド移動機構と、布地のうちのプリントを施すプリント領域の周囲を保持する布保持体と、プリントヘッドの下側付近において布保持体を第1の方向と直交する第2の方向へ布送りする保持体移動機構と、保持体移動機構により布保持体が第2の方向へ移動する移動スペースの下側に設けられた布地通路であって、布保持体で保持された布地のうちの布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分の移動を許容する為の布地通路とを備えたものである。
【0009】
布保持体により布地のうちのプリントを施すプリント領域の周囲が保持され、布地が保持された布保持体が保持体移動機構により、プリントヘッドの下側付近において第1の方向と直交する第2の方向へ布送りされる。ところで、布保持体が保持体移動機構により第2の方向へ移動する移動スペースの下側には、布地通路が確保されているため、布保持体で保持された布地のうちの布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分がその布地通路何ら邪魔されずに移動できる。
【0010】
請求項2に係る布地用プリント装置は、請求項1の発明において、布保持体は第1保持部材とその第1保持部材の外側に嵌め込まれる第2保持部材とからからなり、第2保持部材に布保持体の移動方向と平行方向に延びる位置規制用のスライド溝を形成し、そのスライド溝に係合する係合部材を設けたものである。この場合、布地は第1保持部材とこれに嵌め込まれる第2保持部材とで保持され、第2保持部材に形成したスライド溝にプリント装置側に設けた係合部材が係合しているため、布保持体はこれらスライド溝と係合部材との係合を介して、布保持体の移動方向に直線的に移動する。
【0011】
請求項3に係る布地用プリント装置は、請求項1の発明において、布保持体は第1保持部材と、その第1保持部材の外周上面に重なる枠状の第2保持部材からなり、保持体移動機構は布保持体を支持する支持枠を有し、その支持枠に布保持体の移動方向と平行方向に延びる位置規制用のスライド溝を形成し、そのスライド溝に係合する係合部材を設けたものである。この場合、布地は第1保持部材とこれに外周上面に重なる枠状の第2保持部材とで保持され、布保持体は保持体移動機構の支持枠で支持されている。
【0012】
そこで、その支持枠に形成したスライド溝にプリント装置側に設けた係合部材が係合しているため、布保持体はこれらスライド溝と係合部材との係合を介して、布保持体の移動方向に直線的に移動する。
【0013】
請求項4に係る布地用プリント装置は、請求項3の発明において、第2保持部材は磁性体からなる板部材であり、第1保持部材の外周部の複数個所に、第2保持部材を吸着可能なマグネットを夫々装着したものである。この場合、第1保持部材で布地のうちのプリント領域の布地部分を支持し、板部材である第2保持部材を布地を介して第1保持部材の外周上面に重ねるように置くことにより、第1保持部材の外周部に複数個所に設けたマグネットで第2保持部材を吸着し、布地が保持される。
【0014】
請求項5に係る布地用プリント装置は、請求項4の発明において、第1保持部材に設けたマグネットの位置を、第2保持部材に吸着する吸着位置と、第2保持部材から離間させた非吸着位置とに亙って切り換えるマグネット位置切換機構を備えたものである。この場合、マグネット位置切換機構により、マグネットの位置を非吸着位置に切り換えると、第2保持部材が吸着されないため、布地の第1保持部材に対する位置を位置合わせできる。マグネット位置切換機構により、マグネットの位置を吸着位置に切り換えると、第2保持部材が吸着されるため、布地が布保持体で保持される。
【0015】
請求項6に係る布地用プリント装置は、請求項2の発明において、保持体移動機構は、第2保持部材に布保持体の移動方向と平行な方向に延びるように形成されたラックと、保持体移動機構の駆動モータに連結され前記ラックに噛合するピニオンとを備えたものである。この場合、ピニオンは保持体移動機構の駆動モータで回転駆動され、このピニオンに噛合するラックを形成した第2保持部材が移動駆動される。それ故、布保持体は滑りを生ずることなく、駆動モータの回転量に応じた移動距離だけ移動する。
【0016】
請求項7に係る布地用プリント装置は、請求項3の発明において、保持体移動機構は、支持体に布保持体の移動方向と平行な方向に延びるように形成されたラックと、保持体移動機構の駆動モータに連結され前記ラックに噛合するピニオンとを備えたものである。この場合、ピニオンは保持体移動機構の駆動モータで回転駆動され、このピニオンに噛合するラックを形成した支持体が移動駆動される。それ故、支持体で支持された布保持体は滑りを生ずることなく、駆動モータの回転量に応じた移動距離だけ移動する。
【0017】
請求項8に係る布地用プリント装置は、請求項1〜7の何れかの発明において、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分の大きさに応じて布地通路の高さを高くする通路高さ調節手段を備えたものである。この場合、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分が大きい場合、通路高さ調節手段により布地通路の高さを高くでき、プリント領域以外の布地部分がプリントに際して布地通路を移動するときに、プリント装置側のフレーム等に接触することがなく、汚れたり傷ついたりしない。
【0018】
請求項9に係る布地用プリント装置は、請求項1〜7の何れかの発明において、第1保持部材に、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分を折り畳み状に収容可能な布地収容部材を設けたものである。この場合、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分が大きい場合でも、その全てが布地収容部材に折り畳み状にコンパクトに収容される。
【0019】
請求項10に係る布地用プリント装置は、請求項1〜9の何れかの発明において、プリンタは、複数色のインクを噴射可能な複数のノズル列を前記第2方向に並設させて前記プリントヘッドに設けたものである。この場合、プリントヘッドに設けられた複数色分のノズル列により、カラープリントされる。
【0020】
請求項11に係る布地用プリント装置は、請求項1〜10の何れかの発明において、プリンタは、プリントヘッドにパージを行うパージ機構と、プリントヘッドのヘッド面をキャップを用いて覆うキャップ機構とを有するものである。この場合、プリントヘッドが所定のパージ位置に移動してから、パージ機構によりパージが実行され、インクジェットノズル内の気泡やゴミが除去されるとともに、プリント処理しない場合には、キャップ機構によりヘッド面がキャップで覆われ、インクの乾燥が防止される。
【0021】
請求項12に係る布地用プリント装置は、請求項1〜11の何れかの発明において、プリントヘッド側に第1原点被検出部材を設け、プリント装置側に第1原点被検出部材を検出してプリントヘッドの原点位置を設定する第1原点位置設定手段を設けたものである。この場合、プリントヘッドの原点位置が、プリントヘッド側に設けた第1原点被検出部材を介してプリント装置側の第1原点位置設定手段により設定される。
【0022】
請求項13に係る布地用プリント装置は、請求項1〜11の何れかの発明において、布保持体側に第2原点被検出部材を設け、プリント装置側に第2原点被検出部材を検出して布保持体の原点位置を設定する第2原点位置設定手段を設けたものである。この場合、布保持体の原点位置が、布保持体側に設けた第2原点被検出部材を介してプリント装置側の第2原点位置設定手段により設定される。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、布地にプリント可能なプリントヘッドを有するインクジェット式の布地用プリント装置であって、ヘッド移動機構と、布保持体と、保持体移動機構と、布地通路とを備えたので、保持体移動機構により布保持体が第2の方向へ移動する移動スペースの下側には、布地通路が確保されているため、布保持体で保持された布地のうちの布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分が布保持体から下側に垂れ下がった状態であっても、その垂れ下がった布地部分は布地通路により何ら邪魔されずに移動でき、汚れることなく、容易に且つ綺麗にプリントすることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、前記布保持体は第1保持部材とその第1保持部材の外側に嵌め込まれる第2保持部材とからからなり、第2保持部材に布保持体の移動方向と平行方向に延びる位置規制用のスライド溝を形成し、そのスライド溝に係合する係合部材を設けたので、布保持体は第2保持部材のスライド溝と係合部材との係合を介して、布保持体の移動方向に直線的に移動でき、プリント位置精度を高めることができる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0025】
請求項3の発明によれば、前記布保持体は第1保持部材と、その第1保持部材の外周上面に重なる枠状の第2保持部材からなり、保持体移動機構は布保持体を支持する支持枠を有し、その支持枠に布保持体の移動方向と平行方向に延びる位置規制用のスライド溝を形成し、そのスライド溝に係合する係合部材を設けたので、布保持体は支持枠のスライド溝と係合部材との係合を介して、布保持体の移動方向に直線的に移動でき、プリント位置精度を高めることができる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0026】
請求項4の発明によれば、前記第2保持部材は磁性体からなる板部材であり、第1保持部材の外周部の複数個所に、第2保持部材を吸着可能なマグネットを夫々装着したので、第1保持部材で布地のうちのプリント領域の布地部分を支持した状態で、板部材である第2保持部材を布地を介して第1保持部材の外周上面に重ねるように置くことにより、第1保持部材の外周部に複数個所に設けたマグネットで第2保持部材を吸着させるため、布地の保持作業が格段に簡単化する。その他請求項3と同様の効果を奏する。
【0027】
請求項5の発明によれば、前記第1保持部材に設けたマグネットの位置を、第2保持部材に吸着する吸着位置と、第2保持部材から離間させた非吸着位置とに亙って切り換えるマグネット位置切換機構を備えたので、マグネットの位置を非吸着位置に切り換えることで布地の第1保持部材に対する位置を位置合わせできる一方、マグネットの位置を吸着位置に切り換えることで布地を布保持体に保持させることができる。その他請求項4と同様の効果を奏する。
【0028】
請求項6の発明によれば、前記保持体移動機構は、第2保持部材に布保持体の移動方向と平行な方向に延びるように形成されたラックと、保持体移動機構の駆動モータに連結され前記ラックに噛合するピニオンとを備えたので、ピニオンは保持体移動機構の駆動モータで回転駆動され、このピニオンに噛合するラックを形成した第2保持部材が移動駆動されるため、布保持体は滑りを生ずることなく、駆動モータの回転量に応じた移動距離だけ正確に移動でき、プリント位置精度を高めることができる。その他請求項2と同様の効果を奏する。
【0029】
請求項7の発明によれば、前記保持体移動機構は、支持体に布保持体の移動方向と平行な方向に延びるように形成されたラックと、保持体移動機構の駆動モータに連結され前記ラックに噛合するピニオンとを備えたので、ピニオンは保持体移動機構の駆動モータで回転駆動され、このピニオンに噛合するラックを形成した支持体が移動駆動されるため、支持体で支持された布保持体は滑りを生ずることなく、駆動モータの回転量に応じた移動距離だけ正確に移動でき、プリント位置精度を高めることができる。その他請求項3と同様の効果を奏する。
【0030】
請求項8の発明によれば、前記布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分の大きさに応じて布地通路の高さを高くする通路高さ調節手段を備えたので、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分が大きい場合には、通路高さ調節手段により布地通路の高さを高くできるため、プリント領域以外の布地部分がプリントに際して布地通路を移動するときに、プリント装置側のフレーム等に接触しなくなり、汚れることなく、綺麗にプリントすることができる。このように、必要に応じて布地通路を高くできるため、プリント装置の小型化が図れる。その他請求項1〜7の何れかと同様の効果を奏する。
【0031】
請求項9の発明によれば、前記第1保持部材に、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分を折り畳み状に収容可能な布地収容部材を設けたので、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分が大きい場合でも、その全てが布地収容部材に折り畳み状にコンパクトに収容でき、そのため、プリント装置の小型化が図れる。その他請求項1〜7の何れかと同様の効果を奏する。
【0032】
請求項10の発明によれば、複数色のインクを噴射可能な複数のノズル列を前記第2方向に並設させて前記プリントヘッドに設けたので、プリントヘッドに設けられた複数色分のノズル列により、複数色によるカラープリントが可能になる。その他請求項1〜9の何れかと同様の効果を奏する。
【0033】
請求項11の発明によれば、プリントヘッドにパージを行うパージ機構と、プリントヘッドのヘッド面をキャップを用いて覆うキャップ機構とを有するので、パージ機構によるパージにより、インクジェットノズル内の気泡やゴミを除去できるとともに、プリント処理しない場合に、キャップ機構によりヘッド面がキャップで覆われ、インクの乾燥を防止することができる。その他請求項1〜10の何れかと同様の効果を奏する。
【0034】
請求項12の発明によれば、前記プリントヘッド側に第1原点被検出部材を設け、プリント装置側に第1原点被検出部材を検出してプリントヘッドの原点位置を設定する第1原点位置設定手段を設けたので、プリントヘッド側の原点位置をプリントヘッド側の第1原点被検出部材とプリント装置側の第1原点位置設定手段により設定でき、プリントヘッドのプリント位置精度を高めることができる。その他請求項1〜11の何れかと同様の効果を奏する。
【0035】
請求項13の発明によれば、前記布保持体側に第2原点被検出部材を設け、プリント装置側に第2原点被検出部材を検出して布保持体の原点位置を設定する第2原点位置設定手段を設けたので、布保持体の原点位置を布保持体側の第2原点被検出部材とプリント装置側の第2原点位置設定手段により設定でき、布保持体の移動位置精度を高めることができる。その他請求項1〜11の何れかと同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本実施形態における布地用プリント装置は、ヘッド移動機構によりプリントヘッドをX方向(第1の方向)へ移動させながら、保持体移動機構により布保持体をY方向(第2の方向)に移動させて、布保持体に保持した布地にプリントするに際して、布保持体の移動スペースの下側に、布保持体で保持された布地のうちの布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分の移動を許す為の布地通路を形成してある。
【実施例】
【0037】
布地用プリント装置1は、図1、図2に示すように、作業台2上に固定載置され、正面視にて門形に形成されている。本体フレーム1aの左側脚部フレーム1bの内部には、布地に対して文字や図柄をプリントするプリントヘッド11のフラッシングにより噴射されたインクを吸収するインク吸収部材46、布保持体5をY方向(前後方向)に移動させる保持体駆動モータ34等が組込まれ、右側脚部フレーム1cの内部には、プリントヘッド11をパージするためのパージユニット40、パージにより排出されたインクを吸収するインク吸収部材等が組込まれている。
【0038】
更に、左右の脚部フレーム1b,1cに亙って架設された架設部フレーム1dの内部には、プリントヘッド11を有するキャリッジ10及びこのキャリッジ10をX方向(左右方向)に移動させるヘッド移動機構20と、布保持体5をY方向に移動させる保持体移動機構30等が組込まれている。ところで、左右の脚部フレーム1b,1cの間で且つ架設部フレーム1dの下側には、布地通路3が形成されている。
【0039】
次に、プリントに供する布地Wを保持する布保持体5について説明する。
【0040】
図2,図3に示すように、布保持体5は平面視にて矩形状であり、布地Wのプリント領域を支持する略楕円状の内側保持部材6(これが第1保持部材に相当する)と、その内側保持部材6に外嵌可能なように中央部を楕円状に切り欠いた矩形枠状の外側保持部材7(これが第2保持部材に相当する)とからなっている。
【0041】
外側保持部材7の4個所には、内側保持部材6の外側保持部材7に対する位置決め用のストッパー部材8が一体形成され、そのうちの対向状の2つのストッパー部材8には、布地Wをセットした内側保持部材6の外周部に外側保持部材7を締め付けて固定するストッパネジ9が設けられている。外側保持部材7の左右両端部の上面には、所定幅を有するラック7aが全長に亙って夫々形成され、後述する保持体移動機構30のピニオン32に噛合可能になっている。
【0042】
外側保持部材7の左端部の下側には、図3に示すように、布保持体5の移動方向(Y方向)と平行な方向に延びるスライド溝7bが全長に亙って形成されている。布保持体5を保持体移動機構30に装着した場合、布保持体5のY方向への移動に際して、保持体移動機構30のフレームの係合部1mが常にスライド溝7bに下側から係合し、左右方向へのズレを生じることがないように、位置規制するようになっている。
【0043】
布保持体5に布地Wを保持する場合には、先ず、布地Wのプリント領域部分を内側保持部材6の上面に載置し、外側保持部材7の楕円状に切り欠きに内側保持部材6を合わせる位置で、4個所のストッパー部材8に当接するまで、外側保持部材7を下側に押し付け、図3に示すように、布地Wを保持した内側保持部材6を外側保持部材7に装着し、最終的に、2つのストッパネジ9を締め付ける。このとき、布保持体5で保持された布地Wのうちの布保持体5からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waが布保持体5から下側に垂れ下がっている。
【0044】
次に、4色のインクを用いてカラープリントするプリントヘッド11を有するキャリッジ10及びそのキャリッジ10をX方向に移動駆動するヘッド移動機構20について、図4〜図7に基づいて説明する。
【0045】
キャリッジ10の下端部に下向きのプリントヘッド11が設けられている。但し、そのプリントヘッド11は、一般的に使用されているインクジェット式のカラープリントヘッド11と同様であるため、ここでは、詳しく図示しないが、プリントヘッド11のヘッド面には、マゼンダ(M) 、イエロー(Y) 、シアン(C) 、ブラック7a(B) の4色分のインクを噴射可能な4つのノズル列がX方向に並設されている。
【0046】
各ノズル列には、所定個数(例えば、75個)のインクジェットノズルが千鳥状にY方向に向けて配列されている。各インクジェットノズルに圧電セラミックアクチュエータが設けられ、制御ユニット50からプリント駆動信号を受けた圧電セラミックアクチュエータが撓むことにより、そのインクジェットノズルから微量のインクが下向きに噴射され、プリントされる。尚、プリントヘッド11として、圧電セラミックアクチュエータタイプ以外の各種のタイプのプリントヘッドを採用するようにしてもよい。
【0047】
プリントヘッド11の上側にマゼンダ(M) 、イエロー(Y) 、シアン(C) 、ブラック7a(B) のインクを貯留した4つのインクカートリッジ12〜15が収容され、各インクカートリッジ12〜15のインクが対応するインクジェットノズルに夫々供給される。この場合、消耗したインクのインクカートリッジ12〜15だけを個別に交換可能になっている。
【0048】
次に、ヘッド移動機構20について説明すると、キャリッジ10を挿通して左右方向に延びる支持軸21の両端部が左右の両側内部フレーム1e、1fに夫々固定され、縦向きに配設された後側フレーム1gの上端部が、クランク状の曲げ形成によりガイドレール1hとして形成されている。それ故、キャリッジ10は支持軸21とガイドレール1hとの係合によりX方向に移動可能に支持されている。
【0049】
後側フレーム1gの後面の右端側にキャリッジ駆動モータ22が固着され、キャリッジ駆動モータ22の駆動軸に取付けられた駆動プーリ23と、後側フレームの後面の左端側に回転可能に枢着された従動プーリ24とに亙って無端状のタイミングベルト25が掛け渡され、キャリッジ10はタイミングベルト25の一カ所に連結されている。キャリッジ駆動モータ22の駆動により、これらプーリ23,24とタイミングベルト25を介してキャリッジ10がX方向に移動駆動される。
【0050】
ここで、キャリッジ10の後端部を挿通して、縦向きで左右方向に延びるエンコーダ26の両端部が左右の両側内部フレーム1e,1fに夫々固定されている。そのエンコーダ26には、縦向きの細い線が所定間隔おきに略全長に亙って印刷されている。キャリッジ10の内部には、そのエンコーダ26に臨むように、発光素子と受光素子とを対向状に配置したフォトインタラプタ27が設けられている。
【0051】
そこで、キャリッジ10のX方向への移動に応じて、フォトインタラプタ27の受光素子からエンコーダ信号が出力されるので、制御ユニット50でそのエンコーダ信号を受信して、キャリッジ10の移動位置を制御可能になっている。
【0052】
次に、布保持体5をY方向に移動させる保持体移動機構30について、図4,図5,図7に基づいて説明する。
【0053】
キャリッジ10の下端近傍部の直ぐ後側において、左右方向に延びる駆動軸31が配設され、左側内部フレーム1eと右側内部フレーム1jとに回転可能に枢支されている。駆動軸31のうちの布地通路3の左端部と右端部とに対応する位置に、ピニオン32が夫々固定され、布保持体5のラック7aに上側から噛合可能になっている。
【0054】
駆動軸31の左端部に大径の従動ギヤ33が固着されている。左側脚部フレーム1bの内部の左側内部フレーム1eに保持体駆動モータ34が固着され、保持体駆動モータ34の駆動軸に固着された小径の駆動ギヤ35が従動ギヤ33に噛合している。
【0055】
左側脚部フレーム1bの右端部に断面U字状で前後方向に所定長さを有するローラ支持部材36が配設されるとともに、右側脚部フレーム1cの左端部にも断面U字状で前後方向に所定長さを有するローラ支持部材36が配設されている。これら左右1対のローラ支持部材36の各々には、前後に1対の支持ローラ37が夫々回転可能に枢支されるとともに、各支持ローラ37の回転軸が、ローラ支持部材36の直ぐ外側の側壁1jに対応するように形成した縦に長い支持穴1kにより、上下動可能に且つ前後方向移動不能に支持されている。
【0056】
更に、左右1対のローラ支持部材36は、その前後方向の中央部において、図7に示すように、圧縮コイルバネ38で弾性的に支持されている。それ故、これら圧縮コイルバネ38のバネ力により、各支持ローラ37を介して布保持体5が上側に弾性付勢されるため、布保持体5のラック7aとピニオン32とが圧接により強力に噛合するので、布保持体5は何ら滑りが生ずることなくY方向に精度良く移動駆動される。
【0057】
ところで、左側のローラ支持部材36の右側に接する側壁1jの上端部に部分的に上方に突出する係合部1mが形成され、その係合部1mが保持体移動機構30によりY方向に移動される布保持体5の外側保持部材7に形成されたスライド溝7bに下側から係合可能になっている。
【0058】
次に、右側脚部フレーム1cの内部に設けられたパージユニット40について、図4〜図6に基づいて説明する。
【0059】
パージユニット40はボックス状であり、上端部分にヘッドキャップ41とワイパー42とが夫々設けられるとともに、その内部に、パージユニット昇降モータ43と、吸引ポンプ44等が設けられるとともに、パージユニット40の下側に、パージにより排出されたインクを吸収するインク吸収部材45が設けられている。
【0060】
ヘッドキャップ41は、プリントヘッド11のヘッド面に下側から密着可能なゴム製のキャップに構成され、プリントヘッド11がパージユニット40の上側のパージ位置に移動した状態で、パージユニット40をパージユニット昇降モータ43で上昇させることにより、ヘッドキャップ41の外周部が多数のインクジェットノズルを有するプリントヘッド11のヘッド面に下側から密着して蓋をする。このように、プリントを行っていないときには、ヘッドキャップ41でヘッド面を密閉することにより、これら多数のインクジェットノズルの乾燥を防止できるととにも、パージが実行される。
【0061】
ここで、パージについて簡単に説明すると、プリントヘッド11が、図10,図11に示すパージ位置に移動した状態で、パージユニット昇降モータ43が駆動され、先ずヘッドキャップ41の上昇によりプリントヘッド11のヘッド面が密閉された状態で、吸引ポンプ44の駆動によりヘッドキャップ41の内部が負圧になり、プリントヘッド11のインクジェットノズルから少量のインクと共に気泡やゴミが吸引され取り除かれる。
【0062】
ワイパー42は、ゴム製のブレードからなり、プリントヘッド11のヘッド面より若干高く設けられている。パージユニット40がパージ位置に移動してプリントヘッド11がパージされた後、キャリッジ10が左方へ移動する際に、ワイパー42の上端部によりプリントヘッド11のヘッド面が払拭され、ヘッド面に残ったインクが綺麗にクリーニングされる。
【0063】
ところで、プリントヘッド11によるプリント途中であっても、所定時間以上インク噴射しない場合には、プリント可能領域以外の図4,図5に示すフラッシング位置にその都度移動してフラッシング(インクの空噴射)を行い、インクジェットノズルの正常化が図られる。そこで、プリントヘッド11がフラッシング位置でフラッシングされたインクが下側のインク吸収部材46で吸収される。
【0064】
これらインク吸収部材45,46は、夫々フェルト等からなり、パージやフラッシングされた不要なインクを吸収して貯留するようになっている。ここで、ヘッドキャップ41を有するパージユニット40と、吸引ポンプ44と等からパージ機構が構成され、ヘッドキャップ41を有するパージユニット40と、パージユニット昇降モータ43等からキャップ機構が構成されている。
【0065】
このように、布地用プリント装置1は構成されるため、布保持体5が保持体移動機構30によりY方向に移動する移動スペースの下側には、図1,図4に示すように、布保持体5で保持された布地Wのうちの布保持体5からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waの移動を許す為の布地通路3が形成されている。
【0066】
更に、図1,図4に示すように、左右の脚部フレーム1b,1cの各々の下端部の前側と後側とに、通路高さ調節脚48の一端部が夫々枢支ピン48aで回動可能に枢支されている。そこで、特に、布地Wがカーテンや風呂敷、Tシャツ等であって、布地部分Waの垂れ下がり長さが長くなる場合には、図8に示すように、各通路高さ調節脚48を下向きに回動させ、布地用プリント装置1の高さを更に高くできるようになっている。ここで、これら複数の通路高さ調節脚48等で通路高さ調節手段が構成されている。
【0067】
次に、布地用プリント装置1の制御系について、図9に基づいて説明する。
【0068】
CPUやROM及びRAM等を有する制御ユニット50が主制御用として設けられている。この制御ユニット50には、フォトインタラプタ27からのエンコーダ信号と、キャリッジ原点位置検出センサ51からのキャリッジ原点位置信号と、保持体原点位置検出センサ53からの保持体原点位置信号と、操作パネル60からの各種スイッチ信号が夫々入力される。操作パネル60には、プリント開始を指令するプリント開始スイッチ、布保持体5の着脱を指令する布保持体着脱スイッチ、プリントを終了させるプリント停止スイッチ等が設けられている。
【0069】
制御ユニット50からは、プリントに際して駆動回路55によりプリントヘッド11にプリント駆動信号が、布保持体5の移動に際して駆動回路56により保持体駆動モータ34に駆動信号が、プリントヘッド11の移動に際して駆動回路57によりキャリッジ駆動モータ22に駆動信号が、パージに際して駆動回路58によりパージユニット昇降モータ43に駆動信号が夫々出力される。
【0070】
ここで、キャリッジ10に、キャリッジ原点被検出部材52(これが第1原点被検出部材に相当し、図7参照)が設けられ、キャリッジ10が所定の移動位置、例えば、図4,図5に示すフラッシング位置に移動したときに、キャリッジ原点位置検出センサ51がキャリッジ原点被検出部材52を検出し、制御ユニット50のROMに有するキャリッジ原点位置設定制御プログラムによりキャリッジ10の原点位置が設定される。それ故、これらキャリッジ原点位置検出センサ51やキャリッジ原点位置設定制御プログラム等により第1原点位置設定手段が構成される。
【0071】
また、布保持体5の一部に保持体原点被検出部材54(これが第2原点被検出部材に相当し、図4参照)が設けられ、布保持体5が所定の移動位置、例えば、図4に示す最も奥側に移動したときに、保持体原点位置検出センサ53が布保持体原点被検出部材54を検出し、制御ユニット50のROMに有する保持体原点位置設定制御プログラムにより布保持体5の原点位置が設定される。それ故、これら保持体原点位置検出センサ53や保持体原点位置設定制御プログラム等により第2原点位置設定手段が構成される。
【0072】
次に、このように構成された布地用プリント装置1の作用及び効果について説明する。
【0073】
プリントに供する布地Wのプリント領域を前述したように布保持体5に装着する。このとき、図3に示すように、布保持体5で保持された布地Wのうちの布保持体5からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waが布保持体5から下側に垂れ下がった状態になっている。
【0074】
次に、操作パネル60の布保持体着脱スイッチを操作すると、保持体駆動モータ34の駆動により、既に装着してある布保持体5を最前位置の着脱位置に移動する。そこで、プリント済みの布保持体5を取出し、次に、プリントに供する布地Wを保持する布保持体5の前端部を装着し、プリント開始スイッチを操作する。
【0075】
このとき、パージ位置に移動していたキャリッジ10は、パージ動作した後、X方向に一往復して原点位置設定され、布保持体5が最も奥側に移動して原点位置設定した後、最前位置であるプリント開始位置に移動し、予め作成されたプリントデータに基づいてカラープリントが開始される。それ故、キャリッジ駆動モータ22によりキャリッジ10が往方向と復方向とに片道ずつプリントするプリント動作と、保持体駆動モータ34による布保持体5の一行プリント分の行送りとが交互に実行され、布地Wのプリント領域に模様や図柄等がカラープリントされる。
【0076】
ところで、保持体移動機構30により布保持体5がY方向へ移動する移動スペースの下側には、布地通路3が確保されているため、布保持体5で保持された布地Wのうちの布保持体5からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waが布保持体5から下側に垂れ下がった状態であっても、その垂れ下がった布地部分Waは布地通路3により何ら邪魔されずに移動でき、汚れることなく、容易に且つ綺麗にプリントすることができる。
【0077】
この場合、前述したように、側壁1jの上端部の係合部1mが布保持体5の外側保持部材7に形成されたスライド溝7bに下側から常に係合し、左右方向へのズレを生じることがないように、位置規制されながら、布保持体5がY方向に直線的に移動するため、プリント位置精度を高めることができる。更に、ローラ支持部材36が圧縮コイルバネ38のバネ力により上側に弾性付勢され、布保持体5のラック7aとピニオン32との圧接により、布保持体5は何ら滑りが生ずることなく、Y方向に精度良く移動駆動される。
【0078】
また、布保持体5からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waの大きさに応じて布地通路3の高さを高くする通路高さ調節脚48を設けたので、風呂敷やカーテン等の布保持体5からはみ出したプリント領域以外の布地部分Waが大きい場合には、通路高さ調節脚48を下側に回動させて立てることにより、布地通路3の高さを高くできるため、プリント領域以外の布地部分Waがプリントに際して布地通路3を移動するときに、プリント装置1側のフレーム等に接触しなくなり、汚れることなく、綺麗にプリントすることができる。このように、必要に応じて布地通路3を高くできるため、プリント装置の小型化が図れる。
【0079】
また、複数色のインクを噴射可能な複数のノズル列をX方向に並設させてプリントヘッド11に設けたので、プリントヘッド11に設けられた複数色分のノズル列により、複数色によるカラープリントが可能になる。
【0080】
また、プリントヘッド11にパージを行うパージ機構と、プリントヘッド11のヘッド面をヘッドキャップ41を用いて覆うキャップ機構とを有するので、パージ機構によるパージにより、インクジェットノズル内の気泡やゴミを除去できるとともに、プリント処理しない場合に、ヘッドキャップ41によりヘッド面が覆われ、インクの乾燥を確実に防止することができる。
【0081】
次に、前記実施例の変更形態について説明する。
【0082】
1〕図12に示すように、布保持体5Aを、矩形状の第1保持部材6Aであって、その外周部の複数個所(例えば、4カ所)にマグネット65が夫々装着された第1保持部材6Aと、その第1保持部材6Aの外周上面に重なる所定幅を有する板状で磁性体からなる矩形枠部材66と、その矩形枠部材66と一体化された非磁性体からなる外周枠67とからなる第2保持部材7Aとで構成するようにしてもよい。
【0083】
このように、第1保持部材6Aで布地Wのうちのプリント領域の布地部分Waを支持した状態で、第2保持部材7Aの矩形枠部材66を、布地Wを介して第1保持部材6Aの外周上面に重ねるように置くことにより、第1保持部材6Aの外周部に複数個所に設けたマグネット65で第2保持部材7Aの矩形枠部材66を吸着させるため、布地Wの保持作業が格段に簡単化する。
【0084】
2〕図14〜図16に示すように、布保持体5Bは、略平板状の合成樹脂製の第1保持部材6Bと、この第1保持部材6Bに布地Wを押える厚さ約1mmの板状の磁性体からなる第2保持枠部材7Bとから構成されている。第1保持部材6Bの下面の外周部には、図18に示すように、下側に突出する膨出部6aが形成されている。その膨出部6aの適当個所(例えば、4個所)に、平面視円形のマグネット収容穴6bが形成され、各マグネット収容穴6bの内部に、第2保持枠部材7Bを吸着可能な円柱状のマグネット70が装着されている。
【0085】
次に、各マグネット収容穴6bに設けられたマグネット位置切換え機構71について、図18〜図20に基づいて説明する。
【0086】
底壁を有する円筒状のマグネット保持部材72がマグネット収容穴6bに上下動可能に内嵌され、マグネット保持部材72の内部にマグネット70が圧入固定されている。マグネット保持部材72の底壁に、膨出部6aを挿通して下方に延びる軸部材72aが一体形成され、その軸部材72aの下端にツマミ73がネジ止めされている。但し、マグネット収容穴6bの底部に、薄板でリング状の磁性体からなる保持板74が固定されている。
【0087】
図19に示すように、ツマミ73が下方に引き下げされて、マグネット保持部材72と共にマグネット70が非吸着位置に切り換えられると、マグネット70の磁気吸着力がマグネット保持部材72を隔てて保持板74に作用し、その磁気吸着力によりマグネット70が非吸着位置に保持される。ここで、マグネット70の磁力が比較的大きな場合でも、保持板74への磁気吸着力をマグネット保持部材72を隔てて作用させるようにしてあるため、適度な保持力が得られる。
【0088】
布地Wを保持する場合、第1保持部材6Bに布地Wを載せ、第1保持部材6Bに装着された複数のマグネット70を非吸着位置に切り換えた状態で、第2保持枠部材7Bを布地Wの上側から挟むように第1保持部材6Bの外周部に載せる。この場合、布地Wのプリント領域を第1保持部材6B上に位置するように、布地Wを自由に移動させることができる。
【0089】
布地Wの位置決めが完了した時点で、ツマミ73を上方に押し上げて、マグネット保持部材72と共にマグネット70を図20に示す吸着位置に切り換えると、マグネット70が第2保持枠部材7Bに吸着され、第1保持部材6Bと第2保持枠部材7Bにより布地Wが確実に保持される。
【0090】
ところで、この布保持体5Bだけでは保持体移動機構30で移動できないため、図17に示すように、布保持体5Bの外側に矩形枠状の支持枠76に上側から嵌め込む。この場合、第2保持枠部材7Bの外周部が支持枠76の内周側段落ちした切欠き76aに係合し、支持枠76で布保持体5を上下方向及び左右方向に位置決めした状態で支持可能になっている。
【0091】
ここで、支持枠76は保持体移動機構30の一部として設けられる。支持枠76の左右両端部の上面には、所定幅を有するラック7aが夫々形成されるとともに、支持枠76の左端部の下側には、図18に示すように、布保持体5の移動方向(Y方向)と平行な方向に延びるスライド溝7bが形成されている。
【0092】
それ故、この布保持体5を用いた場合でも、図21に示すように、支持枠76を介して布保持体5を保持体移動機構30によりY方向に移動させることができる。しかも、側壁1jの上端部の係合部1mが支持枠76に形成されたスライド溝7bに下側から係合し、左右方向へのズレを生じることがないように、位置規制されながら、布保持体5がY方向に直線的に移動するため、プリント位置精度を高めることができる。
【0093】
更に、ローラ支持部材36が圧縮コイルバネ38のバネ力により上側に弾性付勢され、支持枠76のラック7aとピニオン32との圧接により、布保持体5は何ら滑りが生ずることなく、Y方向に精度良く移動駆動される。
【0094】
3〕このように構成された図17に示す布保持体5Bを使用する場合、図21に示すように、支持枠76の内周側縁部に、バケット状の布地収容部材78の上端周縁部を固着するようにしてもよい。この場合には、通路高さ調節脚48を設けることなく、布保持体5Bからはみ出したプリント領域以外の布地部分Waが大きい場合でも、その全てが布地収容部材78の内部に折り畳み状にコンパクトに収容でき、そのため、プリント装置1の小型化が図れる。
【0095】
4〕プリントヘッド11は黒、シアン等、1色でプリントする単色用であってもよい。
【0096】
5〕布保持体5,5A,5Bや支持枠76に形成したラック7aに代えて、シート状のゴム部材等、摩擦抵抗の高い各種のシート部材を用いることが可能である。
【0097】
6〕通路高さ調節脚48を伸縮自在なスコーピック形に構成し、必要に応じて必要な長さに伸縮できるようにしてもよい。
【0098】
7〕本発明は、以上説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を付加し、布保持体5を装着可能な種々の布地用プリント装置に本発明を適用することが可能である。
【0099】
8〕本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、当業者でれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施例に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施例に係る布地用プリント装置の正面図である。
【図2】本発明の実施例に係る布地用プリント装置の平面図である。
【図3】図2のC−C線縦断正面図である。
【図4】布地用プリント装置の要部縦断正面図である。
【図5】布地用プリント装置の要部横断平面図である。
【図6】布地用プリント装置の要部縦断右側面図である。
【図7】布地用プリント装置の要部縦断左側面図である。
【図8】通路高さ調節脚を立てたときの図1相当図である。
【図9】布地用プリント装置の制御系のブロック図である。
【図10】プリントヘッドがパージ位置のときの図4相当図である。
【図11】プリントヘッドがパージ位置のときの図5相当図である。
【図12】変更形態に係る布保持体の平面図である。
【図13】図12のM−M線縦断正面図である。
【図14】変更形態に係る第1保持部材の平面図である。
【図15】変更形態に係る第2保持部材の平面図である。
【図16】変更形態に係る布保持体の平面図である。
【図17】布保持体を支持する支持枠の平面図である。
【図18】図17のR−R線縦断正面図である。
【図19】非吸着状態における図18の要部拡大部分縦断正面図である。
【図20】吸着状態における図18の要部拡大部分縦断正面図である。
【図21】変更形態に係る図4相当図である。
【符号の説明】
【0101】
1 布地用プリント装置
3 布地通路
5 布保持体
6 内側保持部材
6A 第1保持部材
6B 第1保持部材
7 外側保持部材
7A 第2保持部材
7B 第2保持枠部材
7a ラック
7b スライド溝
11 プリントヘッド
20 ヘッド移動機構
22 キャリッジ駆動モータ
30 保持体移動機構
32 ピニオン
40 パージユニット
48 通路高さ調節脚
51 キャリッジ原点位置検出センサ
52 キャリッジ原点被検出部材
53 保持体原点位置検出センサ
54 布保持体原点被検出部材
65 マグネット
70 マグネット
71 マグネット位置切換え機構
76 支持枠
78 布地収容部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地にプリント可能なプリントヘッドを有するインクジェット式の布地用プリント装置であって、
前記プリントヘッドを第1の方向へ移動させるヘッド移動機構と、
前記布地のうちのプリントを施すプリント領域の周囲を保持する布保持体と、
前記プリントヘッドの下側付近において前記布保持体を前記第1の方向と直交する第2の方向へ布送りする保持体移動機構と、
前記保持体移動機構により布保持体が第2の方向へ移動する移動スペースの下側に設けられた布地通路であって、前記布保持体で保持された布地のうちの布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分の移動を許容する為の布地通路と、
を備えたことを特徴とする布地用プリント装置。
【請求項2】
前記布保持体は第1保持部材とその第1保持部材の外側に嵌め込まれる第2保持部材とからからなり、前記第2保持部材に布保持体の移動方向と平行方向に延びる位置規制用のスライド溝を形成し、そのスライド溝に係合する係合部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の布地用プリント装置。
【請求項3】
前記布保持体は第1保持部材と、その第1保持部材の外周上面に重なる枠状の第2保持部材からなり、前記保持体移動機構は前記布保持体を支持する支持枠を有し、その支持枠に布保持体の移動方向と平行方向に延びる位置規制用のスライド溝を形成し、そのスライド溝に係合する係合部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の布地用プリント装置。
【請求項4】
前記第2保持部材は磁性体からなる板部材であり、前記第1保持部材の外周部の複数個所に、前記第2保持部材を吸着可能なマグネットを夫々装着したことを特徴とする請求項3に記載の布地用プリント装置。
【請求項5】
前記第1保持部材に設けたマグネットの位置を、第2保持部材に吸着する吸着位置と、第2保持部材から離間させた非吸着位置とに亙って切り換えるマグネット位置切換機構を備えたことを特徴とする請求項4に記載の布地用プリント装置。
【請求項6】
前記保持体移動機構は、前記第2保持部材に前記布保持体の移動方向と平行な方向に延びるように形成されたラックと、前記保持体移動機構の駆動モータに連結され前記ラックに噛合するピニオンとを備えたことを特徴とする請求項2に記載の布地用プリント装置。
【請求項7】
前記保持体移動機構は、前記支持体に前記布保持体の移動方向と平行な方向に延びるように形成されたラックと、前記保持体移動機構の駆動モータに連結され前記ラックに噛合するピニオンとを備えたことを特徴とする請求項3に記載の布地用プリント装置。
【請求項8】
前記布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分の大きさに応じて布地通路の高さを高くする通路高さ調節手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の布地用プリント装置。
【請求項9】
前記第1保持部材に、布保持体からはみ出したプリント領域以外の布地部分を折り畳み状に収容可能な布地収容部材を設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の布地用プリント装置。
【請求項10】
複数色のインクを噴射可能な複数のノズル列を前記第1の方向に並設させて前記プリントヘッドに設けたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の布地用プリント装置。
【請求項11】
前記プリントヘッドにパージを行うパージ機構と、プリントヘッドのヘッド面をキャップで覆うキャップ機構とを有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の布地用プリント装置。
【請求項12】
前記プリントヘッド側に第1原点被検出部材を設け、前記プリント装置側に前記第1原点被検出部材を検出してプリントヘッドの原点位置を設定する第1原点位置設定手段を設けたことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の布地用プリント装置。
【請求項13】
前記布保持体側に第2原点被検出部材を設け、前記プリント装置側に前記第2原点被検出部材を検出して布保持体の原点位置を設定する第2原点位置設定手段を設けたことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の布地用プリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−239105(P2007−239105A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−98234(P2004−98234)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】