説明

帯体固定具、配線・配管材吊下げ具、および帯体固定構造

【課題】 帯体を天井面に長期に渡って安定した状態で固定することができる帯体固定具を提供する。
【解決手段】 帯体固定具4は、その帯体固定具4自身を天井面1に固定するために、天井面1に固着されるビス等の固着具6が貫通する固定部7と、帯体3の一端側が天井面1に沿って配置されるようにその帯体3の一端側が載置される載置部8と、その載置部8の上面に続いて天井面1から離れる側に湾曲して帯体3を垂れ下がる側に案内する支持面9aを有する支持部9とを、備える。そして、帯体固定具4は、帯体固定具4自身が天井面1に固定された固定状態で、帯体3の、垂れ下がる側への移動を規制すべく、帯体3の長手方向に並ぶ複数の貫通孔3a、3aのうちのいずれかの貫通孔3aに入り込んでその貫通孔3aの周縁に係合する係合部10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯体を天井面から垂れ下がるように固定するための帯体固定具、配線・配管材吊下げ具、および帯体固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線・配管材等の被保持物を吊り下げるようにして保持する保持材となる帯体があった(例えば、特許文献1参照)。図8に示すように、この帯体50は、湾曲可能であって、鋼板等により帯状に形成されていた。そこで、この帯体50は、上端部分が、横木51の側部51aに、釘52により固定され、下部側が、ループLを形成するように曲げ返されることで、そのループLの内側に被保持物53が保持された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−39086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の帯体50にあっては、帯体50の上端部分を横木51の側部51aに固定する場合には、その帯体50が上端部分を含めて真っ直ぐ下方に垂れ下がることができたが、天井面に固定する場合には、固定される上端部分に対してその下方が折れ曲がった。このため、その上端部分と下方との境界の折れ曲がり部が、経年劣化により亀裂が入る虞があり、この帯体50を天井面に長期に渡って安定して固定することが困難になる場合も考えられた。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、帯体を天井面に長期に渡って安定した状態で固定することができる帯体固定具、その帯体固定具と帯体とを備える配線・配管材吊下げ具、および帯体固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る帯体固定具、配線・配管材吊下げ具、および帯体固定構造は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る帯体固定具は、長手方向に並ぶ複数の貫通孔を有する帯体を天井面から垂れ下がるように固定するための帯体固定具である。この帯体固定具は、その帯体固定具自身を前記天井面に固定するために、前記天井面に固着される固着具が貫通する固定部と、前記帯体の一端側が前記天井面に沿って配置されるようにその帯体の一端側が載置される載置部と、前記載置部の上面に続いて前記天井面から離れる側に湾曲して前記帯体を垂れ下がる側に案内する支持面を有する支持部とを、備える。そして、帯体固定具は、その帯体固定具自身が前記天井面に固定された固定状態で、前記帯体の、垂れ下がる側への移動を規制すべく、前記複数の貫通孔のうちのいずれかの貫通孔に入り込んでその貫通孔の周縁に係合する係合部を備える。
【0007】
この帯体固定具によると、帯体固定具の載置部に帯体の一端側が載置されることで、その帯体の一端側は、天井面に沿って配置される。そして、載置部の上面に続く湾曲する支持面により、帯体は、垂れ下がる側に案内される。こうして、帯体は、天井面に沿う側から垂れ下がる側へと、湾曲する支持面により案内されることで、この帯体が天井面に沿う側と垂れ下がる側との間で折れ曲がるのを防ぐことができる。また、固定部を貫通して天井面に固着される固着具により帯体固定具自身が天井面に固定された固定状態で、係合部が帯体の貫通孔に入り込んでその貫通孔の周縁に係合することで、帯体は、その垂れ下がる側への移動が規制される。こうして、帯体の移動が規制されることで、帯体が垂れ下がる側へとずれて落下するのを防ぐことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項1に記載の帯体固定具であって、前記固定部は、前記固着具が前記複数の貫通孔のいずれかの貫通孔を貫通するよう、その貫通孔に対応した位置に設けられる。こうして、固着具が帯体の貫通孔を貫通することで、帯体の落下を確実に防ぐことができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項2に記載の帯体固定具であって、前記固定部は、前記係合部を有し、前記固着具は、前記係合部を含めて前記固定部を貫通するとともに、前記係合部が入り込む前記貫通孔を貫通する。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る帯体固定具は、長手方向に並ぶ複数の貫通孔を有する帯体を天井面から垂れ下がるように固定するための帯体固定具である。この帯体固定具は、その帯体固定具自身を前記天井面に固定するために、前記天井面に固着される固着具が貫通する固定部と、前記帯体の一端側が前記天井面に沿って配置されるようにその帯体の一端側が載置される載置部と、前記載置部の上面に続いて前記天井面から離れる側に湾曲して前記帯体を垂れ下がる側に案内する支持面を有する支持部とを、備える。そして、帯体固定具は、その帯体固定具自身が前記天井面に固定された固定状態で、前記帯体の、長手方向の移動を規制すべく、前記固定部が前記載置部に設けられるとともに前記固着具が前記帯体を貫通してその帯体に係合する。
【0011】
この帯体固定具によると、帯体固定具の載置部に帯体の一端側が載置されることで、その帯体の一端側は、天井面に沿って配置される。そして、載置部の上面に続く湾曲する支持面により、帯体は、垂れ下がる側に案内される。こうして、帯体は、天井面に沿う側から垂れ下がる側へと、湾曲する支持面により案内されることで、この帯体が天井面に沿う側と垂れ下がる側との間で折れ曲がるのを防ぐことができる。また、固定部を貫通して天井面に固着される固着具により帯体固定具自身が天井面に固定された固定状態で、固着具が帯体を貫通してその帯体に係合することで、帯体は、その長手方向の移動が規制される。こうして、帯体の移動が規制されることで、帯体が垂れ下がる側へとずれて落下するのを防ぐことができる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の帯体固定具であって、前記帯体を仮保持するように、前記固定状態となる前において、前記複数の貫通孔におけるいずれかの貫通孔に入り込み、前記帯体の、垂れ下がる側への移動を規制する、第1規制部を備える。こうして、帯体固定具が固定状態となる前、つまり帯体固定具を天井面に固定する前に、第1規制部を用いて帯体を仮保持することで、帯体の、垂れ下がる側への移動が規制され、その後の、天井面への帯体固定具の固定が容易となる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項5に記載の帯体固定具であって、前記帯体を仮保持するように、前記固定状態となる前において、前記複数の貫通孔における前記第1規制部が入り込む貫通孔またはその貫通孔とは異なる貫通孔に入り込んで、前記帯体の、垂れ下がる側とは反対側への移動を規制する、第2規制部を備える。こうして、帯体固定具が固定状態となる前、つまり帯体固定具を天井面に固定する前に、第1規制部および第2規制部を用いて帯体を仮保持することで、帯体の、長手方向の両側への移動が規制され、その後の、天井面への帯体固定具の固定が一層容易となる。
【0014】
また、請求項7に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項6に記載の帯体固定具であって、前記載置部を挟んで前記支持部とは反対側に延出する延出部を備え、その延出部に、前記第1規制部と前記第2規制部とが、前記複数の貫通孔における同一の貫通孔に入り込むように設けられる。
【0015】
また、請求項8に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の帯体固定具であって、前記帯体の幅方向の両側を保持する保持片を備える。
【0016】
また、請求項9に記載の発明に係る帯体固定具は、請求項8に記載の帯体固定具であって、前記保持片は、前記支持部に設けられる。
【0017】
また、請求項10に記載の発明に係る配線・配管材吊下げ具は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の帯体固定具と、前記帯体とを備えて、その帯体によって配線・配管材を吊り下げる、配線・配管材吊下げ具である。
【0018】
また、請求項11に記載の発明に係る帯体固定構造は、配線・配管材を吊り下げるための帯体が、帯体固定具によって天井面から垂れ下がるように固定されてなる、帯体固定構造である。ここで、前記帯体は、長手方向に並ぶ複数の貫通孔を有する。そして、前記帯体固定具は、その帯体固定具自身を前記天井面に固定するために、前記天井面に固着される固着具が貫通する固定部と、前記帯体の一端側が前記天井面に沿って配置されるようにその帯体の一端側が載置される載置部と、前記載置部の上面に続いて前記天井面から離れる側に湾曲して前記帯体を垂れ下がる側に案内する支持面を有する支持部とを、備える。そこで、帯体固定構造は、前記帯体の一端側が前記天井面と前記載置部との間に配置されるようにして、前記固定部を貫通し前記天井面に固着される前記固着具により、前記帯体固定具自身が前記天井面に固定されて、前記帯体固定具に備わる係合部が前記貫通孔の周縁に係合する、または前記固定部が前記載置部に設けられるとともに前記固着具が前記帯体を貫通してその帯体に係合することにより、前記帯体の、垂れ下がる側への移動が規制され、かつ、前記帯体が、前記支持面によって、湾曲状となるようにその帯体の下方から支持されている。
【0019】
この帯体固定構造によると、帯体固定具の載置部に帯体の一端側が載置されることで、その帯体の一端側は、天井面に沿って配置される。そして、載置部の上面に続く湾曲する支持面により、帯体は、垂れ下がる側に案内される。こうして、帯体は、天井面に沿う側から垂れ下がる側へと、湾曲する支持面により案内されることで、この帯体が天井面に沿う側と垂れ下がる側との間で折れ曲がるのを防ぐことができる。また、帯体の一端側が天井面と載置部との間に配置され、固着具により帯体固定具自身が天井面に固定されて、帯体固定具に備わる係合部が帯体の貫通孔の周縁に係合したり、固着具が帯体を貫通してその帯体に係合したりすることで、帯体は、その垂れ下がる側への移動が規制され、これによって、帯体が垂れ下がる側へとずれて落下するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る帯体固定具、配線・配管材吊下げ具、および帯体固定構造によれば、帯体がずれて落下するのを防ぎ、かつ、湾曲する支持面により、帯体が天井面に沿う側と垂れ下がる側との間で折れ曲がるのを防ぐことで、帯体を天井面に長期に渡って安定した状態で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施の形態の、全体を示す正面図である。
【図2】同じく、図1における帯体固定具部分の拡大断面図である。
【図3】同じく、図1における止め具部分の拡大断面図である。
【図4】同じく、図1における止め具部分の斜視図である。
【図5】同じく、帯体固定具の斜視図である。
【図6】同じく、帯体固定具の平面図である。
【図7】同じく、帯体固定具の縦断面図である。
【図8】従来の、帯体を用いた吊下げ構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明に係る帯体固定具、配線・配管材吊下げ具、および帯体固定構造を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜図7は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、天井面を示す。2は、配線・配管材(配線材または配管材)を示す。3は、帯体を示し、帯体3は、長手方向に並ぶ複数の貫通孔3a、3aを有する。4は、帯体固定具を示し、この帯体固定具4は、前記帯体3を天井面1から垂れ下がるように固定するためのものである。5は、配線・配管材吊下げ具を示し、この配線・配管材吊下げ具5は、前記帯体固定具4と前記帯体3とを備えて、その帯体3によって配線・配管材2を吊り下げるものである。40は、帯体固定構造を示し、この帯体固定構造40は、配線・配管材2を吊り下げるための帯体3が、帯体固定具4によって天井面1から垂れ下がるように固定されてなる。
【0024】
ここで、帯体固定具4は、帯体固定具4自身を天井面1に固定するために、その天井面1に固着されるビスとか釘等の固着具6が貫通する固定部7を備える。そして、帯体固定具4は、帯体3の一端側が天井面1に沿って配置されるようにその帯体3の一端側が載置される載置部8と、その載置部8の上面に続いて天井面1から離れる側(つまり、下側)に湾曲して帯体3を垂れ下がる側に案内する支持面9aを有する支持部9とを、備える。さらに、帯体固定具4は、帯体固定具4自身が天井面1に固定された固定状態で、帯体3の、垂れ下がる側への移動(図示実施の形態においては、帯体3の、垂れ下がる側および垂れ下がる側とは反対側の移動、すなわち帯体3の長手方向の移動)を規制すべく、帯体3の複数の貫通孔3a、3aのうちのいずれかの貫通孔3aに入り込んでその貫通孔3aの周縁に係合する係合部10を備える。
【0025】
詳細には、前記固定部7は、固着具6が帯体3の複数の貫通孔3a、3aのいずれかの貫通孔3aを貫通するよう、その貫通孔3aに対応した位置に設けられる。図示実施の形態においては、固定部7は、前記係合部10を有し、固着具6は、係合部10を含めて固定部7を貫通するとともに、係合部10が入り込む貫通孔3aを貫通するようになっている。
【0026】
また、帯体固定具4は、帯体3を仮保持するように、帯体固定具4自身が天井面1に固定された固定状態となる前において、帯体3の複数の貫通孔3a、3aにおけるいずれかの貫通孔3aに入り込み、帯体3の、垂れ下がる側への移動を規制する、第1規制部11を備える。そして、帯体固定具4は、第1規制部11に加えて、第2規制部12を備えている。この第2規制部12は、帯体3を仮保持するように、前記固定状態となる前において、帯体3の複数の貫通孔3a、3aにおける第1規制部11が入り込む貫通孔3aまたはその貫通孔3aとは異なる貫通孔3aに入り込んで、帯体3の、垂れ下がる側とは反対側への移動を規制する。図示実施の形態においては、帯体固定具4は、前記載置部8を挟んで支持部9とは反対側(つまり、帯体3の垂れ下がる側とは反対側)に延出する延出部13を備えており、この延出部13に、第1規制部11と第2規制部12とが、帯体3の複数の貫通孔3a、3aにおける同一の貫通孔3aに入り込むように設けられている。
【0027】
そして、帯体固定構造40においては、帯体3の一端側が天井面1と載置部8との間に配置されるようにして、固定部7を貫通し天井面1に固着される固着具6により、帯体固定具4自身が天井面1に固定されて、帯体固定具4に備わる係合部10が帯体3の貫通孔3aの周縁に係合する、または後述するように固定部7が載置部8に設けられるとともに固着具6が帯体3を貫通してその帯体3に係合することにより、つまり、帯体3への係合部10または固着具6の係合(係合手段)により、帯体3の、垂れ下がる側への移動(図示実施の形態においては、帯体3の、垂れ下がる側および垂れ下がる側とは反対側の移動、すなわち帯体3の長手方向の移動)が規制され、かつ、帯体3が、支持面9aによって、湾曲状となるようにその帯体3の下方から支持されている。
【0028】
具体的には、帯体3は、例えば合成樹脂製であって、一定幅で連続して形成されている。そして、前記貫通孔3a、3aは、帯体3の長手方向の側に若干長孔となるように形成され、帯体3の幅中央に位置している。また、帯体3は、これら貫通孔3a、3aに加えて、各貫通孔3a、3a間に、径小となる円形形状をした他の貫通孔3bを有している(図4参照)。
【0029】
帯体固定具4は、例えば合成樹脂製であって、前記載置部8と前記支持部9と前記延出部13とが、連続して板状に形成されている。詳細には、載置部8が天井面1に沿うように平板状であって帯体3よりも若干幅広に形成される。載置部8の後方に続く支持部9は、載置部8と同一の幅であって、天井面1から離れる側(つまり、下側)に湾曲するように形成される。そして、載置部8の前方に続く延出部13は、先細となるように、かつ、天井面1から離れる側(つまり、下側)に湾曲するように形成される。また、これら載置部8、支持部9および延出部13の下面には、補強のためのリブ4aが設けられる。
【0030】
この帯体固定具4において、前記固定部7は、載置部8の中央に設けられている。そして、前述したように、この固定部7が前記係合部10を有している。この係合部10は、載置部8の上面から、帯体3の厚み以下あるいは未満となる高さに突出しており、このため、帯体3の貫通孔3aに入り込んだ際には、その貫通孔3aから上方に飛び出ることがない。そして、固定部7には、固着具6が貫通する孔7aがあけられている。この孔7aは、図示実施の形態においては、始めから貫通して形成されているが、固着具6が突き抜けることが可能な薄板部等で塞がれていても構わない。
【0031】
前記第1規制部11は、延出部13の先端部分においてその上面から突出して形成される。詳細には、この第1規制部11は、尖った先端を備えるとともに、帯体3の貫通孔3aを抜けて帯体3の上面を抑えることができるように、鉤状(L字状)に前方に折れ曲がって形成されている。そして、前記第2規制部12は、第1規制部11の少し後方位置にて、延出部13の上面から突出して形成される。そして、これら第1規制部11と第2規制部12とが、帯体3の貫通孔3aの周縁における前後に係合することで、帯体3は、前後の移動が止められる。なお、第1規制部11と第2規制部12とは、離れて位置するが、繋がっていても構わない。
【0032】
また、帯体固定具4は、帯体3の幅方向の両側を保持する保持片14、14を備えている。図示実施の形態においては、これら保持片14、14は、前記支持部9に設けられる。詳細には、保持片14、14は、帯体3をその幅方向で挟むように、支持部9の幅の各側においてその上面から突出して形成され、さらに、帯体3の上面を抑えることができるように、鉤状(L字状)に内側に折れ曲がって形成されている(図5、図6参照)。
【0033】
ところで、帯体3は、帯体固定具4を用いて、天井面1から垂れ下がるように固定されるが、帯体3の垂れ下がった側で、その帯体3は、配線・配管材2(図示実施の形態においては、配管材であって、例えば空調ダクト等のダクト)を抱えるようにして吊り下げる。この際、帯体3における、配線・配管材2に回されて上方に延びる各側は、止め具20により互いに止められる。詳細には、止め具20は、例えば合成樹脂製であって、帯体3の一方の側が止められる第1止め部21と、帯体3の他方の側が止められる第2止め部22とを備えている。より詳細には、止め具20は、ベース部23を備え、第1止め部21と第2止め部22とは、このベース部23の表裏に設けられる。そして、第1止め部21と第2止め部22とは、帯体3が掛け止められるフック部Xからなる。
【0034】
このフック部Xは、帯体3の長手方向に延びて、その自由端X2から帯体3における複数の貫通孔3a、3aのいずれかの貫通孔3aである第1貫通孔301に挿入可能に構成され、フック部Xの基端部X1が、そのフック部Xに対する帯体3の、フック部Xにおける自由端X2側から基端部X1側に向かう方向の相対移動を規制するように、第1貫通孔301の周縁に係合可能となっている。そして、フック部Xの自由端X2側には、そのフック部Xに対する帯体3の、フック部Xにおける基端部X1側から自由端X2側に向かう方向の相対移動を規制するように、第1貫通孔301とは別の貫通孔3aである第2貫通孔302に入り込んでその第2貫通孔302の周縁に係合可能な、または、帯体3の端部に係合可能な、突状係合部X3が設けられている。つまり、突状係合部X3は、図示実施の形態においては、第2貫通孔302の周縁に係合するが、帯体3の先端側を短くすることで、突状係合部X3が帯体3の端部に係合するようにしても構わない。
【0035】
次に、以上の構成からなる帯体固定具4、並びに、その帯体固定具4を備える、配線・配管材吊下げ具5および帯体固定構造40の作用効果について説明する。帯体固定具4における載置部8に帯体3の一端側が載置されることで、その帯体3の一端側は、天井面1に沿って配置される。そして、載置部8の上面に続く湾曲する支持面9aにより、帯体3は、垂れ下がる側に案内される。こうして、帯体3は、天井面1に沿う側から垂れ下がる側へと、湾曲する支持面9aにより案内され、これによって、この帯体3が天井面1に沿う側と垂れ下がる側との間で折れ曲がるのを防ぐことができる。また、帯体3の一端側が天井面1と載置部8との間に配置され、固定部7を貫通して天井面1に固着される固着具6により帯体固定具4自身が天井面1に固定された固定状態で、係合部10が帯体3の貫通孔3aに入り込んでその貫通孔3aの周縁に係合し、これにより、帯体3は、その垂れ下がる側への移動(図示実施の形態においては、帯体3の、垂れ下がる側および垂れ下がる側とは反対側の移動となる、帯体3の長手方向の移動)が規制される。こうして、帯体3は、係合部10により、垂れ下がる側への移動が規制され、これによって、帯体3が垂れ下がる側へとずれて落下するのを防ぐことができる。すなわち、この帯体固定具4によると、係合部10により、帯体3がずれて落下するのを防ぎ、かつ、湾曲する支持面9aにより、帯体3が天井面1に沿う側と垂れ下がる側との間で折れ曲がるのを防ぐことで、帯体3を天井面1に長期に渡って安定した状態で固定することができる。
【0036】
そして、この帯体固定具4と帯体3とを用いることで(つまり、配線・配管材吊下げ具5とか帯体固定構造40により)、配線・配管材2を吊り下げることができる。もっとも、帯体固定具4と帯体3とを用いて吊り下げられる被吊下げ材は、配線・配管材2の他に、広く線材、棒材、管材その他の長尺物であってもよく、また、長尺物以外のものであってもよい。
【0037】
また、帯体固定具4は、固着具6が帯体3の貫通孔3aを貫通するように構成されているため、仮に係合部10が帯体3の貫通孔3aから抜け落ちて外れたとしても、固着具6が貫通孔3aの周縁に係合することで、帯体3の落下を確実に防ぐことができる。
【0038】
また、載置部8に設けられる係合部10の高さを、帯体3の厚み未満とすると、固着具6を用いて帯体固定具4を天井面1に固定した際に、帯体3は、天井面1に押し付けられる。これによって、この帯体3を天井面1に強固に固定することができる。
【0039】
また、帯体固定具4が固定状態となる前、つまり帯体固定具4を天井面1に固定する前に、第1規制部11を用いて帯体3を仮保持することで、帯体3の、垂れ下がる側への移動が規制され、その後の、天井面1への帯体固定具4の固定が容易となる。特に、図示実施の形態においては、帯体3を仮保持するのに第1規制部11および第2規制部12が用いられ、これによって、帯体3の、長手方向の両側への移動が規制され、その後の、天井面1への帯体固定具4の固定が一層容易となる。また、この際、第1規制部11は、帯体3の上面を抑えるように鉤状(L字状)に折れ曲がって形成されており、これによって、仮保持の際に帯体3が浮き上がるのを防ぐことができる。そして、保持片14においても、帯体3の上面を抑えるように鉤状(L字状)に折れ曲がって形成されており、この保持片14によっても、仮保持の際に帯体3が浮き上がるのを防ぐことができる。そして、これら第1規制部11と保持片14とは、帯体固定具4における前側と後側とに設けられており、両者により、仮保持の際に帯体3が浮き上がるのを効果的に防止することができる。
【0040】
また、帯体3を仮保持するにあたって、第1規制部11と第2規制部12により、帯体固定具4に対して帯体3が位置決めされるため、係合部10を帯体3の貫通孔3aに容易に一致させることができる。ここにおいて、第1規制部11のみが設けられ、第2規制部12が設けられない場合には、第1規制部11を帯体3の貫通孔3aに入り込ませた後に、帯体3を支持部9側(つまり、後方)に引っ張ることで、帯体固定具4に対して帯体3が位置決めされ、これによって、係合部10を帯体3の貫通孔3aに一致させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、帯体固定具4において、固定部7は、帯体3の貫通孔3aに入り込む係合部10を有しているが、この係合部10の高さは、帯体3の厚み以下でなくとも、帯体3の厚みよりも若干高くてもよい。ここで、係合部10の高さが、帯体3の厚み以下であったり、その厚みより若干高いと、帯体固定具4の天井1への固定状態となる前には、帯体3の貫通孔3aへの係合部10の係合が不安定ではあるが、固定状態となった後には、貫通孔3aに対して係合部10が抜け出ようとしても帯体3が天井1に当たってその抜け出を阻止するため、その係合は、確実なものとなる。そして、この固定状態においては、載置部8は、帯体3を天井面1に沿わせるようにして、その帯体3を天井面1とで、密着状態に挟持したり、僅かに隙間をあけて挟持(略挟持)する。
【0042】
また、この係合部10は、固定部7に設けられなくとも、固定部7とは別の位置に設けられてもよい。つまり、係合部10は、帯体3の貫通孔3aに入り込むのであれば、帯体固定具4のいずれの位置に設けられてもよく、特に、第1規制部11が、係合部10を兼ねることで、第1規制部11のみが設けられるものであっても構わない。つまり、第1規制部11は、帯体固定具4の天井1への固定状態となる前において、帯体3の、垂れ下がる側への移動を規制するものであるが、固定状態においても、帯体3の、垂れ下がる側への移動を規制するものとなっている。
【0043】
また、帯体固定具4における係合部10の機能を、固着具6に持たせてもよい。すなわち、帯体固定具4は、その帯体固定具4自身が天井面1に固定された固定状態において、帯体3の、長手方向の移動を規制すべく、固定部7が載置部8に設けられるとともに固着具6が帯体3を貫通してその帯体3に係合するようにしてもよい。この際、固着具6は、帯体3の貫通孔3a(または3b)を通るようにして帯体3を貫通することでその貫通孔3a(または3b)の周縁に係合してもよく、帯体3における貫通孔3a(または3b)のないところを固着具6自身で孔を明けるようにして貫通することでその帯体3に係合してもよい。そして、このように、固着具6が帯体3を貫通してその帯体3に係合することで、上述した係合部10の場合と同様に、帯体3は、その長手方向の移動が規制され、これによって、帯体3が垂れ下がる側へとずれて落下するのを防ぐことができる。
【0044】
また、固定部7は、帯体3の貫通孔3aに対応した位置に設けられなくとも、例えば、帯体3の幅の外側に位置するように設けられて、固着具6が帯体3の貫通孔3aを貫通しないようにしてもよい。
【0045】
また、帯体固定具4は、延出部13に、第1規制部11および第2規制部12が設けられているが、これら第1規制部11とか第2規制部12は、帯体固定具4の他の位置に設けられてもよい。また、これら第1規制部11および第2規制部12は、帯体3における同一の貫通孔3aに入り込まなくとも、異なる貫通孔3aに入り込んでもよい。また、必要でなければ、延出部13とか第1規制部11とか第2規制部12は、なくともよい。
【0046】
また、帯体固定具4の支持部9に、帯体3の幅方向を保持する保持片14が設けられているが、この保持片14は、帯体固定具4の他の位置に設けられてもよい。また、必要でなければ、この保持片14は、なくともよい。
【0047】
また、帯体3を用いて、配線・配管材2(被吊下げ材)を吊り下げるにあたっては、配線・配管材2(被吊下げ材)に回されて上方に延びる各側が、フック部Xを備えた止め具20によって止められるが、この止め具20に代えて、バインド線等の止め具を使用してもよい。また、止め具20を用いることなく、帯体3の各側が、直接互いに掛かり合うようにして止められてもよい。また、配線・配管材2(被吊下げ材)に帯体3が回されるのではなく、配線・配管材2(被吊下げ材)が、帯体3に、バインド線等を用いて結び付けられてもよい。
【0048】
また、帯体3は、合成樹脂製でなくとも、鋼板等の金属板からなっていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 天井面
2 配線・配管材
3 帯体
3a 貫通孔
4 帯体固定具
5 配線・配管材吊下げ具
6 固着具
7 固定部
8 載置部
9 支持部
9a 支持面
10 係合部
11 第1規制部
12 第2規制部
13 延出部
14 保持片
40 帯体固定構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に並ぶ複数の貫通孔を有する帯体を天井面から垂れ下がるように固定するための帯体固定具であって、
前記帯体固定具自身を前記天井面に固定するために、前記天井面に固着される固着具が貫通する固定部と、
前記帯体の一端側が前記天井面に沿って配置されるようにその帯体の一端側が載置される載置部と、
前記載置部の上面に続いて前記天井面から離れる側に湾曲して前記帯体を垂れ下がる側に案内する支持面を有する支持部と、
前記帯体固定具自身が前記天井面に固定された固定状態で、前記帯体の、垂れ下がる側への移動を規制すべく、前記複数の貫通孔のうちのいずれかの貫通孔に入り込んでその貫通孔の周縁に係合する係合部とを、備える帯体固定具。
【請求項2】
前記固定部は、前記固着具が前記複数の貫通孔のいずれかの貫通孔を貫通するよう、その貫通孔に対応した位置に設けられる請求項1に記載の帯体固定具。
【請求項3】
前記固定部は、前記係合部を有し、前記固着具は、前記係合部を含めて前記固定部を貫通するとともに、前記係合部が入り込む前記貫通孔を貫通する請求項2に記載の帯体固定具。
【請求項4】
長手方向に並ぶ複数の貫通孔を有する帯体を天井面から垂れ下がるように固定するための帯体固定具であって、
前記帯体固定具自身を前記天井面に固定するために、前記天井面に固着される固着具が貫通する固定部と、
前記帯体の一端側が前記天井面に沿って配置されるようにその帯体の一端側が載置される載置部と、
前記載置部の上面に続いて前記天井面から離れる側に湾曲して前記帯体を垂れ下がる側に案内する支持面を有する支持部とを、備え、
前記帯体固定具自身が前記天井面に固定された固定状態で、前記帯体の、長手方向の移動を規制すべく、前記固定部が前記載置部に設けられるとともに前記固着具が前記帯体を貫通してその帯体に係合する帯体固定具。
【請求項5】
前記帯体を仮保持するように、前記固定状態となる前において、前記複数の貫通孔におけるいずれかの貫通孔に入り込み、前記帯体の、垂れ下がる側への移動を規制する、第1規制部を備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の帯体固定具。
【請求項6】
前記帯体を仮保持するように、前記固定状態となる前において、前記複数の貫通孔における前記第1規制部が入り込む貫通孔またはその貫通孔とは異なる貫通孔に入り込んで、前記帯体の、垂れ下がる側とは反対側への移動を規制する、第2規制部を備える請求項5に記載の帯体固定具。
【請求項7】
前記載置部を挟んで前記支持部とは反対側に延出する延出部を備え、
前記延出部に、前記第1規制部と前記第2規制部とが、前記複数の貫通孔における同一の貫通孔に入り込むように設けられる請求項6に記載の帯体固定具。
【請求項8】
前記帯体の幅方向の両側を保持する保持片を備える請求項1ないし7のいずれか1項に記載の帯体固定具。
【請求項9】
前記保持片は、前記支持部に設けられる請求項8に記載の帯体固定具。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の帯体固定具と、前記帯体とを備えて、その帯体によって配線・配管材を吊り下げる、配線・配管材吊下げ具。
【請求項11】
配線・配管材を吊り下げるための帯体が、帯体固定具によって天井面から垂れ下がるように固定されてなる、帯体固定構造であって、
前記帯体は、長手方向に並ぶ複数の貫通孔を有し、
前記帯体固定具は、
その帯体固定具自身を前記天井面に固定するために、前記天井面に固着される固着具が貫通する固定部と、
前記帯体の一端側が前記天井面に沿って配置されるようにその帯体の一端側が載置される載置部と、
前記載置部の上面に続いて前記天井面から離れる側に湾曲して前記帯体を垂れ下がる側に案内する支持面を有する支持部とを、備え、
前記帯体の一端側が前記天井面と前記載置部との間に配置されるようにして、前記固定部を貫通し前記天井面に固着される前記固着具により、前記帯体固定具自身が前記天井面に固定されて、前記帯体固定具に備わる係合部が前記貫通孔の周縁に係合する、または前記固定部が前記載置部に設けられるとともに前記固着具が前記帯体を貫通してその帯体に係合することにより、前記帯体の、垂れ下がる側への移動が規制され、かつ、前記帯体が、前記支持面によって、湾曲状となるようにその帯体の下方から支持されている、帯体固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36543(P2013−36543A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173263(P2011−173263)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】