説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】電子写真装置の帯電部材において、長期にわたって、画像形成を行った場合に発生する、スジ状画像、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生を抑制した帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性基体と表面層とを有する帯電部材の表面層に、ビニル基、もしくは、ビニル重合体の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造を有する化合物を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において接触式の帯電部材として、ニップ幅を確保するために弾性層を有する構成が一般的に採用される。このような帯電部材の課題が、長期間にわたって電子写真感光体に当接させた状態で放置したときに生じる圧縮永久歪み(以下、「Cセット」と呼ぶ)である。帯電部材が放置された環境が高温高湿である程、Cセットは、より顕著なものとなる。Cセットが発生した帯電部材を用いて電子写真感光体の帯電を行う場合、Cセットが発生している部分(以下、「Cセット部」と呼ぶ)が放電領域を通過する際に、均一な微小放電ギャップが維持できなくなる。
【0003】
これにより、Cセット部と非Cセット部とで帯電部材の帯電能力に差が生じてしまう。その結果、電子写真画像の、帯電部材のCセット部に対応した位置にスジ状のムラが発生することがあった。かかる画像へのムラの発生は、帯電部材への印加電圧を直流電圧のみとした場合において特に発生し易い。特許文献1および2には、かかるCセットの緩和に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−244348号公報
【特許文献2】特開平08−69148号公報
【特許文献3】特開2003−316112号公報
【特許文献4】特開2007−127777号公報
【特許文献5】特開平09−305024号公報
【特許文献6】特開2002−207362号公報
【特許文献7】特開2003−207994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の電子写真装置に対する、より一層の高速化、高画質化および高耐久化の要求に鑑み、Cセットのより生じにくい帯電部材が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、電子写真装置の帯電部材において、帯電部材と感光体とを長期当接放置した場合に発生することがあるCセットに起因する、電子写真画像へのムラの発生を抑制することのできる帯電部材を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、高品位な画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
導電性基体上に、表面層を有する帯電部材において、
該表面層は、下記式(1)で示すユニットを有する化合物を含有する帯電部材が提供される:
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは式(2)で表わされる構造を有する基である。)
【0009】
【化2】

(式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。aは0または1である。E1、E2およびE3は各々独立に下記式(3)で表わされる基を示す。)
【化3】

【化4】

【化5】

(式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。)
【0010】
【化6】

(式(3)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。
【0011】
Z1は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。
【0012】
R3、R4、R6およびR7は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。
【0013】
R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0014】
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。)
【0015】
【化7】

【化8】

【化9】

(式(15)〜式(17)中、R15、R16およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。)
【0016】
【化10】

(式(18)中、R18は1以上6以下のアルキレン基である。)
【0017】
【化11】

(式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。
【0018】
Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0019】
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、上記式(18)で表わされる基および上記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0020】
上記式(3)においてXが下記式(19)である場合、式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または上記式(18)で示す基である。)
【0021】
【化12】

(式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。)
【0022】
【化13】

(式(21)中、R25、R26及びR27は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。)
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電子写真感光体と帯電部材とを長期当接放置した場合に発生する帯電部材の歪み量(以下「Cセット量」と呼ぶ)を低減することが可能になる。また、帯電部材の帯電能力を向上させることができるため、電子写真感光体との長期に亘る当接によってCセットが生じたとしても、電子写真画像への、当該Cセットに起因するムラの発生を抑制することができる。
また、本発明によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明の帯電部材(ローラ形状)の断面図である。
【図1B】本発明の帯電部材(ローラ形状)の断面図である。
【図1C】本発明の帯電部材(ローラ形状)の断面図である。
【図1D】本発明の帯電部材(ローラ形状)の断面図である。
【図2A】本発明の帯電部材(板状)の断面図である。
【図2B】本発明の帯電部材(板状)の断面図である。
【図3A】本発明の帯電部材(ベルト状)の断面図である。
【図3B】本発明の帯電部材(ベルト状)の断面図である。
【図4A】本発明の帯電ローラの電気抵抗値測定に用いる機器における、測定前の概略図を示す。
【図4B】本発明の帯電ローラの電気抵抗値測定に用いる機器における、測定時の概略図を示す。
【図5A】本発明のローラの表面粗さや表面層の膜厚の測定箇所を、軸方向から見た断面を表す概略図である。
【図5B】本発明のローラの表面粗さや表面層の膜厚の測定箇所を、軸方向に垂直な方向から見た断面を表す概略図である。
【図6】本発明の電子写真装置の一つの実施の形態の断面を表す概略図を示す。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの一つの実施の形態の断面を表す概略図を示す。
【図8】本発明の帯電ローラと電子写真感光体との当接状態を表す概略図を示す。
【図9A】式(3)で示される構造の具体例の説明図である。
【図9B】式(3)で示される構造の具体例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る帯電部材は、導電性基体上に表面層を有するものであり、被帯電体を帯電するのに用いられる。そして、表面層が、式(1)で示すユニットを有する化合物を含有している。
【0026】
以下に、本発明に係る式(1)で示すユニットを有する化合物について説明する。
【0027】
(式(1)で示すユニットを有する化合物)
前式(1)で示すユニットを有する化合物は、ビニル基、もしくは、ビニル重合体の側鎖に、カルボシロキサンデンドリマー構造(シロキサン結合とシルアルキレン結合が交互に配列した高分岐構造)を有する。
【0028】
前式(1)で示されるR1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基のような炭素原子数1以上4以下のアルキル基が例示される。式(1)で示されるGは式(2)で表される構造を有する基である。
【0029】
式(2)で示すAは、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。aは0または1である。
【化14】

【化15】

【化16】

【0030】
式(6)〜式(8)中、R8、R9、R11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基、またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。
【0031】
本構造とすることにより、表面層に含有した際の化合物の安定性を更に高めることが可能になる。
【0032】
R8及びR9は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示され、この中でも、メチレン基、プロピレン基がより好ましい。
【0033】
R10は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示され、これらの中でもメチル基がより好ましい。R11は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が例示され、これらの中でもエチレン基が、より好ましい。
【0034】
式(2)で示すE1、E2およびE3は、各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【0035】
式(3)で示すZ1は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基、下記式(15)〜式(17)で示される基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基等が例示される。
【0036】
式(3)においてkは0または1であり、hは0以上3以下の整数である。
【0037】
R3、R4、R6およびR7は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0038】
R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0039】
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。)
【0040】
【化17】

【0041】
【化18】

【化19】

【化20】

式(15)〜式(17)中、R15、R16、およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。
【0042】
前式(3)においてR3、R4、R6及びR7は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に好ましい。
【0043】
R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0044】
【化21】

式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0045】
【化22】

式(21)中、R25、R26及びR27は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。
【0046】
【化23】

式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0047】
【化24】

式(19)において、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。
【0048】
Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0049】
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、上記式(18)で表わされる基および上記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0050】
上記式(3)においてXが下記式(19)である場合、式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または上記式(18)で示す基である。ここで、式(3)において、k=0であって、Xが式(19)であり、かつ、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1であるときの式(3)の構造の一例を図9Aに示す。また、当該繰り返しの数が3であるときの式(3)の構造の一例を図9Bに示す。
【0051】
【化25】

式(20)において、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0052】
【化26】

式(21)において、R25、R26及びR27は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。
【0053】
尚、上記式(3)〜(21)中の、各々の基は、E1、E2及びE3おいて、上記定義を満たしていれば、異なる基であってもよい。例えば、E1を構成する上記式(3)中のZ1と、E2を構成する上記式(3)中のZ1は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基であれば、異なっていてもよい。
【0054】
前記化合物は、前記式(3)においてhは0であり、Xが前記式(19)で表わされる基であって、前記式(19)で示される構造のうち、下記式(5)で示される構造の繰り返しの数が1回から3回であり、かつ、上記式(19)においてrが0であることが更に好ましい。
【0055】
【化27】

【0056】
また、上記式(3)中のZ1は、炭素原子数2以上6以下のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0057】
これにより、後述する表面層の吸湿抑制効果及び分子運動抑制効果をより発現しやすくなる。同時に、柔軟性と離型性を付与する効果が高くなる。
【0058】
前記化合物は、前記式(1)で示すユニットを有すると共に、更に下記式(4)で示すユニットを有することが、より好ましい。これにより、特に、表面層と導電性基体との密着性が向上し、前述した、電子写真感光体と帯電部材との当接状態が、より安定化する傾向にある。
【0059】
【化28】

式(4)においてR2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が例示される。
【0060】
Jは、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、下記式(9)、(10)、または(11)で示される基である。
【0061】
この中でも、下記式(9)、(10)または(11)で示される構造であることがより好ましい。これにより、表面層と導電性基体との密着性が向上し、前述した、電子写真感光体と帯電部材との当接状態が、より安定化する傾向にある。
【0062】
【化29】

【化30】

【化31】

式(9)、(10)中、R12及びR13は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、または前記式(11)で示される基である。式(11)中、R14は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。tは1以上3以下の整数である。
【0063】
前記化合物の重量平均分子量は、2000〜2000000が好ましい。より好ましくは、5000〜1000000、更に好ましくは、10000〜700000である。これにより、前述した、表面層の吸湿抑制効果及び分子運動抑制効果をより発現しやすくなる。同時に、柔軟性と離型性を付与する効果が高くなる。
【0064】
また、前記化合物全体に対し、式(1)で示すユニットの含有量は、2.0%以上であることが好ましく、より好ましくは、3.0〜80%である。これにより、前述した、表面層の吸湿抑制効果及び分子運動抑制効果をより発現しやすくなる。同時に、柔軟性と離型性を付与する効果が高くなる。
【0065】
前記化合物は、下記式(12)で示す化合物、もしくは、下記式(12)を重合することにより得ることができる。
【0066】
【化32】

(式(12)中、R1、A、a、E1、E2及びE3は、前記記載の例示と同じである)
式(12)で示す構造の一例を、式(13)及び式(14)に示す。
【0067】
【化33】

【化34】

【0068】
更に、前記化合物は、式(12)に示す化合物と、下記のビニル基を有する化合物を重合反応させることにより得ることができる。ビニル基を有する化合物としては、ラジカル重合性のビニル基を有しており、その種類は以下のものが挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどの低級アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸、シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の高級(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの低級脂肪酸ビニルエステル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の高級脂肪酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン等の芳香族ビニル型単量体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル型単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル型単量体、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル型単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル型単量体、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸含有ビニル型単量体、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2ーエチルヘキシルビニルエーテル等のエーテル結合含有ビニル型単量体、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、片末端に(メタ)アクリル基を含有した(分岐状あるいは、直鎖状)ポリジメチルシロキサン、片末端にスチリル基を含有するポリジメチルシロキサンなどの不飽和基含有シリコ−ン化合物、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、無水マレイン酸、ドデシル無水コハク酸、(メタ)アクリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、スチレンスルホン酸のようなスルホン酸基を有するラジカル重合性不飽和単量体、およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドのような(メタ)アクリル酸から誘導される4級アンモニウム塩、メタクリル酸ジエチルアミンエステルのような3級アミン基を有するアルコールのメタクリル酸エステル、およびそれらの4級アンモニウム塩が例示される。好ましくは、(メタ)アクリレートであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、トリクロロプロピル(メタ)アクリレート、パーフロロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素置換アルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類等が例示される。
【0069】
また多官能の化合物も使用可能である。
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の(メタ)アクリロイル基含有単量体、両末端スチリル基封鎖ポリジメチルシロキサンや両末端メタクリロキシプロピル封鎖ポリジメチルシロキサンなどの不飽和基含有シリコ−ン化合物等が例示される。
【0070】
更に、ラジカル重合性不飽和基とケイ素原子結合加水分解性基とを有するシリコーン化合物を使用できる。ラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基含有有機基、(メタ)アクリルアミド基含有有機基、スチリル基含有有機基または炭素原子数2〜10のアルケニル基、ビニロキシ基やアリロキシ基などが挙げられる。ケイ素原子結合加水分解性基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、アセトキシ基などが例示される。具体的には、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルブチルジブトキシシラン等のオルガノシラン化合物が例示できる。
【0071】
この中でも、低級アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル型単量体及びアミド基含有ビニル型単量体がより好ましい。具体的に、低級アルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が例示できる。芳香族ビニル型単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が例示できる。アミド基含有ビニル型単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が例示できる。
【0072】
また、式(12)で示す化合物と、上記ビニル基を有する化合物との混合比率を調整することにより、前記化合物全体に対し、式(1)で示すユニットの含有量を調整することができる。
【0073】
前記化合物を得るための重合法としては、ラジカル重合法やイオン重合法が使用される。この中でも、ラジカル重合法がより好ましく、ラジカル重合法の中でも、溶液重合法が更に好ましい。
【0074】
溶液重合法は、溶媒中で、式(12)で示す化合物のみ、あるいは、式(12)で示す化合物とビニル基を有する化合物とをラジカル開始剤の存在下、50から150℃の温度条件下で反応させることにより行われる。
【0075】
このとき用いる溶媒としては、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のオルガノシロキサンオリゴマー等を例示できる。
【0076】
ラジカル開始剤としては、一般にラジカル重合法に使用される従来公知の化合物が用いられ、具体的には、2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾビス系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等を例示できる。
【0077】
このラジカル開始剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。ラジカル開始剤の使用量は、重合する化合物の合計を100質量部とした時、0.1から5質量部の範囲であることが好ましい。
【0078】
また、重合に際しては連鎖移動剤を添加することができる。この連鎖移動剤として具体的には、2−メルカプトエタノール、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピル基を有するポリジメチルシロキサン等のメルカプト化合物、塩化メチレン、クロロホルム、臭化ブチル、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化物等が例示できる。好ましくは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。このような連鎖移動剤の配合量は、重合する化合物の合計を100質量部とした時、好ましくは、0.001から15質量部、さらに好ましくは、0.01から10質量部である。なお、本発明の重合体を製造する場合、重合後、加熱下、減圧処理して、残存する未反応のビニル系化合物を除去することが好ましい。
【0079】
上記したように、式(1)で示すユニットを有する化合物は、ビニル基、もしくは、ビニル化合物の側鎖にシロキサンデンドリマー構造(ポリシロキサン構造を核として、シロキサン結合とシルアルキレン結合とが交互に配列した多分岐構造)を有するバルキーな構造を有している。かかる特異的構造を有する化合物をバインダー樹脂として含む表面層は、吸湿性が抑制され、表面層の分子運動が抑制される。その結果、帯電部材に応力がかかった際の歪み量を減少させることができる。また、式(2)のように、多数のケイ素原子を含有する構造を有することにより、表面層の誘電率が向上し、帯電能力を向上させることができる。これらの効果により、Cセット画像の発生の抑制が可能となる。
【0080】
また、表面層の吸湿性が抑えられることで、帯電部材の環境変動を防止することもできる。これにより、高温高湿から低温低湿環境に至るまで、帯電部材は均一な帯電を行うことが可能になる。
【0081】
(バインダー樹脂)
本発明に係る表面層は、式(1)で示す化合物をバインダー樹脂として含んでいてもよいが、該化合物を他のバインダー樹脂とともに表面層中に含有させておくことが好ましい。これにより、帯電部材の物性(電気抵抗、表面粗さ及び硬さ等)を所望の範囲に制御しやすくなる。
【0082】
前記化合物を他のバインダー樹脂とともに表面層中に含有させる場合、前記化合物の、バインダー樹脂の100質量部に対する含有量を、0.5質量部以上、特には、1質量部以上、更には、5質量部以上とすることが好ましい。また、好ましい上限としては、50質量部である。
【0083】
表面層に用いる他のバインダー樹脂としては、公知のバインダー樹脂を用いることができる。例えば、樹脂、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムなどのゴム等を挙げることができる。
【0084】
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂等がより好ましい。
【0085】
合成ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム及びエピクロルヒドリンゴム等が使用できる。
【0086】
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いても、また共重合体であってもよい。なお、これらの中でも、表面層に用いるバインダーとしては、感光体やその他の部材を汚染せず離型性が高いという観点から、樹脂を用いることが好ましい。
表面層は、帯電部材の電気抵抗を前記範囲とするために、23℃/50%RH環境において、1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であることが、より好ましい。
【0087】
表面層の体積抵抗率がこれよりも小さいと、感光体にピンホールが発生した場合、ピンホールに過大な電流が流れて印加電圧が電圧降下してしまい、ピンホール部の長手方向全域が帯状の帯電不良となって画像に現れる場合がある。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、帯電ローラに電流が流れにくくなり、感光体を所定の電位に帯電することができず画像が所望する濃度にならないという弊害が発生する場合がある。
【0088】
表面層の体積抵抗率は、以下のようにして求める。まず、ローラ状態から表面層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し測定用サンプルを得る。あるいはアルミシートの上に塗布して表面層塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して体積抵抗率を求める。
【0089】
表面層の体積抵抗率は、イオン導電剤、電子導電剤等の導電剤により調整することができる。
【0090】
イオン導電剤としては以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムの如き無機イオン物質、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートの如き陽イオン性界面活性剤、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインの如き両性イオン界面活性剤、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0091】
電子導電剤としては以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀の如き金属系の微粒子や繊維、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛の如き金属酸化物。前記記載の金属系微粒子、繊維及び金属酸化物表面に、電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子。ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンの如きカーボン粉。
【0092】
ファーネスブラックとしては以下のものが挙げられる。SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、I−ISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEF、GPF、SRF−HS−HM、SRF−LM、ECF、FEF−HS。サーマルブラックとしては、FT、MTがある。
【0093】
また、これらの導電剤を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0094】
また、導電剤は、平均粒径が0.01μmから0.9μmがより好ましく、0.01μmから0.5μmであることが更に好ましい。この範囲であれば、表面層の体積抵抗率の制御が容易になる。
【0095】
表面層に加えるこれらの導電剤の添加量は、バインダー100質量部に対して2質量部から80質量部、好ましくは20質量部から60質量部の範囲が適当である。
【0096】
導電剤は、その表面を表面処理してもよい。表面処理剤としては、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物が使用可能である。これらは一種で使用しても、二種以上を用いても良い。好ましくは、アルコキシシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系又はジルコネート系の各種カップリング剤であり、更に好ましくは、有機ケイ素化合物である。
【0097】
導電剤として、カーボンブラックを使用する際は、金属酸化物系微粒子にカーボンブラックを被覆した複合導電性微粒子として使用することが更に好ましい。カーボンブラックは、ストラクチャーを形成するため、バインダーに対して、均一に存在させることが困難な傾向にある。カーボンブラックを金属酸化物に被覆した複合導電性微粒子として使用すると、導電剤をバインダーへ均一に存在させることができ、体積抵抗率の制御がより容易になる。
【0098】
この目的で使用する金属酸化物系微粒子としては、金属酸化物や複合金属酸化物が挙げられる。具体的には、金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)、酸化鉄、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等を例示することができる。また、複合金属酸化物として、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等を例示することができる。
【0099】
金属酸化物系微粒子は表面処理されていることがより好ましい。表面処理としては、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物が使用可能である。これらは一種で使用しても、二種以上を用いても良い。
【0100】
表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で他の粒子を含有させることができる。他の粒子としては、絶縁性粒子を挙げることができる。
【0101】
絶縁性粒子としては、まず、高分子化合物からなる粒子が挙げられる。例えば、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体や変性物、誘導体等の樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
特に、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
【0102】
その他の絶縁性粒子として、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)、酸化鉄、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、タルク、カオリンクレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリナイト、中空ガラス球、有機金属化合物及び有機金属塩等の粒子を挙げることができる。また、フェライト、マグネタイト、ヘマタイト等の酸化鉄類や活性炭等も使用することができる。
【0103】
これらの粒子は1種を使用しても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、表面処理、変性、官能基や分子鎖の導入、コーティング等を施したものでもよい。粒子の分散性を高めるために、粒子は表面処理が施されていることがより好ましい。
【0104】
このような表面処理としては、前記の表面処理剤を用いることができるが、その他に、脂肪酸、脂肪酸金属塩による表面処理を挙げることができる。脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸を用いることができ、炭素数12から22のものが好ましい。脂肪酸金属塩としては、飽和又は不飽和の脂肪酸と金属との塩類を用いることができる。具体的には、炭素数12から18の脂肪酸とマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、鉛、スズ等の金属との塩類を挙げることができる。
【0105】
表面処理剤は、絶縁性粒子100質量部に対して0.01質量部から15.0質量部で用いるのが好ましく、この範囲内であれば、絶縁性粒子に十分な分散性を付与することができる。より好ましくは0.02質量部から12.5質量部以下、更に好ましくは0.03質量部から10.0質量部である。
【0106】
表面層には、表面の離型性を向上させるために、更に離型剤を含有させても良い。離型剤が液体の場合は、表面層を形成する際にレベリング剤としても作用する。
このような離型剤として、低表面エネルギーを有するもの、摺動性を有するものなどを利用することができ、その性状として、固体及び液体のものを用いることができる。具体的には、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、一酸化鉛等の金属酸化物である。また、オイル状或いは固体状(離型性樹脂或いはその粉末、ポリマーの一部に離形性を有する部位を導入したもの)の珪素やフッ素を分子内に含む化合物、ワックス、高級脂肪酸、その塩やエステル、その他誘導体も使用できる。
【0107】
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。
【0108】
なお、表面層の膜厚は、図5A及び5Bに示す位置でローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0109】
表面層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0110】
また、本発明に係る表面層には、該表面層の表面を粗面化するための粗面化粒子として黒鉛化粒子を含有させることが好ましい。
【0111】
すなわち、電子写真装置において、電子写真感光体の表面に接触又は近接配置された帯電部材に電圧(直流電圧のみの電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧)を印加することによって電子写真感光体の表面を帯電する接触帯電方式が多く採用されている。ここで、低コスト化、及び、電子写真装置の小型化という観点からは、帯電部材への印加電圧を直流電圧のみとすることが好ましい(以下、「DC帯電方式」と呼ぶ)。
【0112】
しかし、DC帯電方式は帯電部材の微小な抵抗値のムラ、表面へのトナーや外添剤の付着によって生じた帯電不良に起因して、電子写真画像に横スジが発生しやすいといった課題があった。
【0113】
かかる課題に対し、特許文献3では、DC帯電方式に用いる帯電ローラにおいては、帯電ローラの表面層に樹脂粒子を含有させ、凸部を形成させることによって、横スジ状の帯電不良を改善する方法が提案されている。しかしながら、近年、電子写真装置の高性能化に伴い帯電部材に要求される性能も高度化している。つまり、
1)長寿命化に伴い、帯電部材は大量出力に耐えうる放電特性の安定化が必要である。
2)高速化に伴い、より放電しやすい帯電性能が必要である。
3)高画質化に伴い、トナーの小粒径化、外添剤の多様化により、帯電部材の表面は、より汚染されやすい方向にある。そのため、汚染されても安定な放電を持続し得る帯電性能を備えた帯電部材が求められている。
【0114】
このような要求に対し、特許文献4は、表面層に導電性粒子を含有する帯電ローラを提案している。
【0115】
このような状況の下で、本発明に係る表面層中に粗面化粒子として黒鉛化粒子を含有させ、該黒鉛化粒子に由来する凸部を該表面層に形成させてなる帯電部材は、優れた帯電性能を長期に亘って維持することができるものとなる。
黒鉛粒子に由来する凸部は、電子写真感光体と帯電部材との当接を点接触とし、電子写真感光体と帯電部材の摩擦力を低減する効果を発現する。
【0116】
前式(1)で示すユニットを有する化合物は、ビニル基、もしくは、ビニル重合体の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造(ポリシロキサン構造を核とし、シロキサン結合とシルアルキレン結合が交互に配列した高分岐構造)を有し、非常にバルキーな構造を有している。この特異的な構造は、表面層に対し、柔軟性と離型性を同時に付与する効果を発現している。
【0117】
上記黒鉛粒子に由来する凸部による摩擦力の低減と、シロキサンデンドリマー構造による離型性の向上により、前記歪みの開放を抑制することが可能になる。同時に、シロキサンデンドリマー構造による表面層の柔軟性向上により、電子写真感光体の回転ムラや電子写真装置の振動に起因する、帯電部材の異常な回転挙動を抑制することが可能になる。これにより、異常放電の発生を抑制することが可能になる。
【0118】
また、黒鉛粒子に由来する凸部は、温湿度に対する膨張及び収縮が抑制されている。同時に、シロキサンデンドリマー構造は、表面層の吸湿を抑制し、表面層の分子運動を抑制する。即ち、表面層全領域、特に、感光体ドラムと当接する凸部近傍は、温湿度の影響を非常に受けにくい構成となっている。これにより、使用環境に関わらず、電子写真感光体と帯電部材の回転当接状態が安定化し、前記異常放電の発生を抑制する効果を発現することができる。
【0119】
なお、黒鉛粒子は導電性を有しており、黒鉛粒子に由来する凸部は、電子写真感光体への放電を優先的に行うことができる。同時に、シロキサンデンドリマー構造は、多数のケイ素原子を含有する特異的な構造を有するため、表面層の誘電率を向上させ、帯電部材の帯電能力を向上させることができる。従って、黒鉛粒子に由来する凸部近傍は、導電性と誘電性が付与された、安定な放電部位となっている。これにより、前記異常放電の発生が抑制できると同時に、長期に亘る安定な放電が可能になる。
【0120】
また、シロキサンデンドリマー構造の吸湿抑制効果は、帯電部材の環境変動を抑制する。これにより、高温高湿から低温低湿環境に至るまで、安定な帯電を行うことが可能になる。
【0121】
特許文献5〜7等には、シリコーン変性アクリルポリマー等を帯電部材に含有させるという提案がなされている。しかしながら、本発明に記載の効果を発現するに至らなかった。
【0122】
<帯電部材>
本発明の帯電部材の一例を図1A〜1D(ローラ形状)、図2A〜2B(平板形状)及び図3A〜3B(ベルト形状)に示す。なお、これらの図は、本発明の帯電部材の概略断面図を示したものである。なお、帯電部材は、基本的に、同じ構成を有するので、以下において、図1A〜1Dに示したローラ形状のもの、すなわち帯電ローラにて詳細に説明する。
図1Aは、導電性基体1と表面層3を有している帯電ローラである。
図1Bは、導電性基体1と表面層3の間に、弾性層2を有する帯電ローラである。
図1C及び図1Dは弾性層2と表面層3の間に、中間層21及び22を有する帯電ローラである。
【0123】
本発明の帯電ローラは、電子写真感光体と接触して用いられるので、弾性を有していることがより好ましい。特に耐久性等が要求される場合、図1B〜1Dのように、弾性層を設けて、2層以上とすることが推奨される。
【0124】
導電性基体と弾性層、あるいは、順次積層する層(例えば、図1Bに示す弾性層と表面層)は、接着剤を介して接着してもよい。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
【0125】
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
【0126】
接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、後に詳述する導電剤から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
【0127】
本発明の帯電ローラは、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗が、23℃/50%RH環境中において、1×10Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。
【0128】
一例として、図4A〜4Bに帯電ローラの電気抵抗の測定法を示す。導電性基体1の両端を、荷重のかかった軸受け33a、33bにより感光体と同じ曲率の円柱形金属32に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属32を回転させ、当接した帯電ローラ5を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラの抵抗を計算する。本発明において、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとした。
【0129】
本発明の帯電ローラは、感光体に対して、長手のニップ幅を均一にするという観点から、長手方向中央部が一番太く、長手方向両端部にいくほど細くなる形状、いわゆるクラウン形状が好ましい。クラウン量は、中央部の外径と中央部から90mm離れた位置の外径との差が、30μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0130】
本発明の帯電ローラは、表面の十点平均粗さRzjis(μm)が3≦Rzjis≦30であり、表面の凹凸平均間隔RSm(μm)が15≦RSm≦150であることがより好ましい。帯電ローラの十点平均表面粗さRzjis、凹凸平均間隔RSmをこの範囲とすることにより、帯電ローラと電子写真感光体との接触状態をより安定にすることができる。これにより、感光体を均一に帯電することが容易になるため、より好ましい。
【0131】
表面の十点平均粗さRzjis及び表面の凹凸平均間隔RSmの測定法について下記に示す。
JIS B0601−2001表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。Rzjisは、帯電部材を無作為に6箇所測定し、その平均値である。また、RSmは、帯電部材を無作為に6箇所選び、そこにおける各10点の凹凸間隔を測定しその平均を測定箇所のRSmとし、当該帯電部材のRSmとして、6箇所の平均値である。
十点平均粗さ及び凹凸平均間隔を上記の範囲に制御するため、後述する各層、特に表面層に、平均粒子径が1μm以上30μm以下の粒子が添加されていることがより好ましい。粒子については、絶縁性粒子を例示することができる。
【0132】
(黒鉛粒子)
本発明において、表面層に含有させる黒鉛粒子は、SP2共有結合によって層構造をなす炭素原子を含有する物質である。また、該黒鉛粒子は、ラマンスペクトルにおける、黒鉛に由来する、1580cm−1のピークのピーク強度半値幅が80cm−1以下であるものが好ましく、60cm−1以下の粒子であることがより好ましい。該半値幅とは、結晶化度や、SP2軌道の黒鉛面の広がりを示しており、黒鉛粒子の導電性を表す指標の一つである。半値幅が小さいほど、黒鉛化度は高く、導電性は高くなる傾向にある。これにより、表面層の中では、黒鉛粒子を介して優先的に電流が流れる状態となる。従って、黒鉛粒子に由来する凸部から、電子写真感光体への放電を優先的に行う効果を発現でき、長期にわたる帯電能力の向上に寄与する。
【0133】
黒鉛粒子の平均粒径は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。これにより、表面層中の電流の流れを制御することができ、特に、ポチ状画像及びガサツキ画像を抑制する効果を発現できる。なお、黒鉛粒子の平均粒径は、より好ましくは、1μm以上8μm以下である。
【0134】
黒鉛粒子の長径/短径の比は、2以下であることが、より好ましい。これにより、表面層中の電流の流れを、より容易に制御することが可能になる。また、表面層に対し離型性を付与する効果が高くなるため、特に、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生をより確実に抑制することができる。
【0135】
黒鉛粒子の平均粒径(μm)をAとするとき、粒径が0.5A以上5A以下の範囲にある黒鉛粒子が、全黒鉛粒子の80%以上であることが、より好ましい。これは、黒鉛粒子の粒度分布が、シャープであることがより好ましいことを示唆している。これにより、表面層中の電流の流れを、より容易に制御することできる。また、表面層に対し離型性を付与する効果が高くなるため、特に、ポチ状画像の発生をより確実に抑制することもできる。
【0136】
黒鉛粒子の黒鉛(002)面の面間隔は、0.3361nm以上0.3450nm以下であることが、より好ましい。上記面間隔とすることは、黒鉛粒子の結晶化が更に進行していることを示している。これにより、表面層中の電流の流れを、より容易に制御することできる。同時に、表面層に対し離型性を付与する効果が高くなる。従って、前記スジ状画像、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生をより確実に抑制することができる。
【0137】
黒鉛粒子の表面層における占有量は、体積占有率で1%乃至50%が好ましく、2%乃至30%であることがより好ましい。これにより、表面層中の電流の流れを、より容易に制御することができる。同時に、表面層に対し離型性を付与する効果が高くなる。従って、前記スジ状画像、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生をより確実に抑制することができる。
【0138】
黒鉛粒子は、バインダー樹脂100質量部に対し、0.5質量部乃至50質量部混合することが好ましい。より好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは、2質量部乃至30質量部である。本範囲とすることにより、上記体積占有率をより好ましい範囲に制御できる。これにより、表面層中の電流の流れを、より容易に制御することができる。同時に、表面層に対し離型性を付与する効果が高くなる。従って、前記スジ状画像、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生をより確実に抑制することができる。
【0139】
黒鉛粒子に由来する凸部の80%以上が、10μm以上100μm以下の間隔で存在することが、より好ましい。これにより、表面層中の電流の流れを、より容易に制御することができる。同時に、表面層に対し離型性を付与する効果が高くなる。従って、前記スジ状画像、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生をより確実に抑制することができる。
【0140】
黒鉛粒子の存在間隔をより容易に制御するため、表面層には、2μm乃至30μm程度の平均粒径を有するその他の粒子を添加することが、より好ましい。その他の粒子としては、電子導電剤や絶縁性粒子を例示することができる。
【0141】
本発明の黒鉛粒子としては、上記の特性を有するものであれば、使用可能であるが、上記特性を制御しやすいという観点から、人造黒鉛がより好ましい。人造黒鉛としては、コークス等を黒鉛処理して得られる粒子、バルクメソフェーズピッチを黒鉛処理して得られる粒子、メソカーボンマイクロビーズを黒鉛処理して得られる粒子、フェノール樹脂を黒鉛処理して得られる粒子、フェノール樹脂にメソフェーズをコートし黒鉛処理して得られる粒子等を挙げることができる。以下に、本発明における黒鉛粒子の製造方法の概略を記す。
【0142】
・コークス等を黒鉛処理して得られる粒子
コークス等のフィラーにピッチ等のバインダーを加えて成形し、その後焼成することにより得られる。フィラーとしては、石油蒸留における残渣油、またはコールタールピッチを500℃程度で加熱して得られる生コークスを、更に1200℃以上1400℃以下で焼成して得られるコークス等が使用できる。バインダーとしては、タールの蒸留残渣として得られるピッチ等が使用できる。
【0143】
これらの原料を用いて黒鉛粒子を得る方法としては、まず、フィラーを微粉砕し、バインダーと混合する。その後、150℃程度の加熱下で混練し、成形機を用いて成形する。成形品を700℃以上1000℃以下で熱処理して、熱安定性を付与する。次に、2600℃以上3000℃以下で熱処理することによって、所望の黒鉛粒子が得られる。熱処理の際は、酸化を防ぐために成形品をパッキング用のコークスで覆うことが好ましい。
【0144】
・バルクメソフェーズピッチを黒鉛処理して得られる粒子
バルクメソフェーズピッチは、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得ることができる。また、重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼン又はトルエン等により溶剤可溶分を除去することもできる。このバルクメソフェーズピッチはキノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。95質量%未満のものを用いると、粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなる。長径/短径比を小さくするためには、上記制御を行うことが、より好ましい。
【0145】
メソフェーズピッチを用いて黒鉛粒子を得る方法としては、まず、前記のバルクメソフェーズピッチを微粉砕して、これを空気中200℃以上350℃以下で熱処理して、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチ粒子は表面のみ不融化され、次工程の黒鉛処理時の溶融、融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチ粒子は酸素含有量が5質量%以上15質量%以下であることが適当である。なお、酸素含有量が5質量%未満であると熱処理時に粒子同士の融着が激しくなる場合がある。また、15質量%を超えると粒子内部まで酸化されてしまっており、形状が破砕状のまま黒鉛化し、球状のものが得られにくい場合がある。次にこのように酸化処理したバルクメソフェーズピッチ粒子を窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下にて、1000℃以上3500℃以下で熱処理することにより所望の黒鉛粒子が得られる。
【0146】
・メソカーボンマイクロビーズを黒鉛処理して得られる粒子
メソカーボンマイクロビーズを得る方法としては、石炭系重質油又は石油系重質油を300℃以上500℃以下の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズを生成させる。その後、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離などの処理をしてメソカーボンマイクロビーズを分離した後、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、さらに乾燥する方法等がある。
【0147】
このメソカーボンマイクロビーズを用いて黒鉛粒子を得るには、まず乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズを破壊させない程度の力で機械的に一次分散させておくことが、黒鉛処理後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズは、不活性雰囲気下において200℃以上1500℃以下の温度で一次加熱処理され、炭化される。一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の力で炭化物を機械的に二次分散させることが、黒鉛処理後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において1000℃以上3500℃以下で二次加熱処理することで所望の黒鉛粒子が得られる。
【0148】
・フェノール樹脂を黒鉛処理して得られる粒子
前駆体であるフェノール樹脂としては、例えばフェノールとアルデヒド類の縮合物であるレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルデヒド類を、触媒下で反応させ、加熱硬化させることにより得られる樹脂である。このフェノール樹脂を用いて黒鉛粒子を得る方法としては、フェノール樹脂を不活性気体の雰囲気下、900℃以上2000℃以下で焼成する方法が挙げられる。この際に、不活性気体の流量はフェノール樹脂1g当たり0.1ml毎分以上であることが好ましい。このようにすることで、フェノール樹脂から揮発分を効率良く除去することができる。あるいは、焼成時の圧力を50kPa以下の低圧で行ってもよい。50kPa以下の圧力で焼成を行うことにより、フェノール樹脂からの揮発分を反応系から効率よく除去することができる。
【0149】
・フェノール樹脂にメソフェーズをコートし黒鉛処理して得られる粒子
上記記載のフェノール樹脂表面に、メカノケミカル法によってバルクメソフェーズピッチを被覆する。この後、バルクメソフェーズピッチを黒鉛処理と同様の方法で、作製することができる。
【0150】
(表面層の形成)
表面層は、静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成することができる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成することもできる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。この中でも、塗布法によって塗料を塗工し、塗膜を形成することが好ましい。
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダーを溶解することができる溶剤であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、キシレン、リグロイン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物などを挙げることができる。
塗布液に、バインダー、導電剤及び絶縁性粒子等を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等の公知の溶液分散手段を用いることができる。
【0151】
〔弾性層〕
弾性層に用いる材料としては、表面層のバインダー成分として前記で例示した、ゴムや樹脂を用いることができる。
【0152】
好ましくは、以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、あるいはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマー。
【0153】
この中でも、抵抗調整が容易であるため、極性ゴムを用いるのがより好ましい。中でも、エピクロルヒドリンゴム及びNBRを挙げることができる。これらは、弾性層の抵抗制御及び硬度制御をより行い易いという利点がある。
【0154】
エピクロルヒドリンゴムは、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができる。また、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることができるので、高分子弾性体として好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムとしては以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
【0155】
弾性層は、エピクロルヒドリンゴム単独でもよいが、エピクロルヒドリンゴムを主成分として、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有してもよい。その他の一般的なゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。また、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)の如き熱可塑性エラストマーを含有してもよい。上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、弾性層材料100質量部に対し、1〜50質量部であるのがより好ましい。
【0156】
弾性層の体積抵抗率は、23℃/50%RH環境下で測定して、10Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましい。また、体積抵抗率を調整するため、カーボンブラック、導電性金属酸化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の導電剤を適宜添加することができる。弾性層材料に極性ゴムを使用する場合は、特に、アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0157】
弾性層には、前記で例示した、絶縁性粒子を含有させても良い。
【0158】
また、弾性層には、硬度等を調整するために、軟化油、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。可塑剤等の配合量は、弾性層材料100質量部に対して、好ましくは1質量部から30質量部であり、より好ましくは3質量部から20質量部である。可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることがより好ましい。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。
【0159】
更に、弾性層には、種々な機能を付与する材料を適宜含有させてもよい。これらの例として、老化防止剤、充填剤等を挙げることができる。
【0160】
弾性層の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型)で70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。マイクロ硬度(MD−1型)が70°を超えると、帯電部材と感光体との間のニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる場合がある。
【0161】
なお、「マイクロ硬度(MD−1型)」とは、アスカー マイクロゴム硬度計MD−1型(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電部材の硬度である。具体的には、常温常湿(23℃/55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0162】
弾性層の体積抵抗率は、弾性層に使用するすべての材料を厚さ1mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成して得た体積抵抗率測定試料を、上記表面層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。
【0163】
弾性層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0164】
弾性層の形成は、予め所定の膜厚に形成されたシート形状又はチューブ形状の層を導電性基体に接着又は被覆することによって行うことができる。また、クロスヘッドを備えた押出し機を用いて、導電性基体と弾性層材料を一体的に押出して作製することもできる。
【0165】
弾性層材料に導電剤、絶縁性粒子及び充填剤等を分散する方法としては、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混合するなど、公知の方法を用いることができる。
【0166】
また、本発明に係る帯電部材の他の態様として、表面層が以下の構成を有する帯電部材を挙げることができる。すなわち、表面層がバインダー樹脂中に式(1)で示すユニットを有する化合物を含有し、かつ、該表面層の少なくとも表面が、バインダー樹脂からなる連続相と上記化合物からなる不連続相とを形成しているものである。
【0167】
式(1)で示すユニットを有する化合物が、上記表面層の少なくとも表面で、バインダー樹脂に対して不連続相を形成していることで、上記化合物からなる不連続相は上記表面層に対する適切な離型性の付与に寄与する。
【0168】
こうした効果により、帯電部材へのトナーのような物質の付着が抑制され、帯電部材汚れ起因の画像の発生を抑制することが可能になる。更に、表面層の表面に多分岐構造を有するバルキーな構造を有する化合物を含有する層が存在している。これにより、表面の滑り性が増すため、帯電部材へのトナーのような物質の付着はせずに感光体に残留した外添剤のような物質が感光体に付着するのを抑制し、感光体融着起因の画像の発生を抑制することが可能になる。
【0169】
表面層の表面に、式(1)で示すユニットを有する化合物をバインダー樹脂に対して不連続相を形成させる方法として、エアースプレー法による塗布が挙げられる。エアースプレー法による塗布に用いられるスプレーガンとしては公知のものが使用可能であり、例えば、ニードルタイプのエアースプレーガンやニードルを有さないスプレーガンが使用可能である。この中でも、ニードルを有さないスプレーガンによって塗布することが好ましい。
【0170】
エアースプレー法によって前記化合物の不連続相を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルのようなエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール類、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンのようなオルガノシロキサンオリゴマーを挙げることができる。
前記化合物の不連続相の最大直径は0.1μm以上3.0μm以下が好ましい。これにより、特に、前述した、適切な離型性の付与に寄与する効果が高くなり、更に、外添剤のような物質の感光体への融着抑制に寄与する効果が高くなる。
【0171】
また、前記化合物の不連続相の表面層表面に対する面積分率が5%以上50%以下であることが好ましい。これにより、特に、前述した、適切な離型性の付与に寄与する効果が高くなり、更に、外添剤のような物質の感光体への融着抑制に寄与する効果が高くなる。
【0172】
更にまた、本発明に係る帯電部材の他の態様として、バインダー樹脂と前記式(1)で示すユニットを有する化合物からなる樹脂粒子とを含み、かつ、該樹脂粒子に由来する凸部が表面に形成されてなる表面層を備えた帯電部材が挙げられる。
【0173】
接触帯電方式の電子写真装置において、帯電ローラと電子写真感光体とはニップを構成している。そして、ニップにおいては、帯電ローラの表面に形成されている凸部は、当接圧力により変形する。その後、変形した当該凸部は帯電ローラの回転に伴ってニップを通過することより元の形状に復元する。帯電ローラの回転によって、帯電ローラの表面の凸部は変形と元の形状への復元とが繰返し行われている。
【0174】
従来、帯電ローラの表面への凸部の形成は、電子写真感光体との当接によって電子写真感光体に傷を生じさせないように、表面層に添加する樹脂粒子に柔軟な樹脂粒子が用いられてきた。そのため、ニップにおいては、凸部が著しく変形する傾向にある。そのため、帯電ローラの表面には、トナー等がより固着されやすい状況にある。
【0175】
一方、式(1)で示すユニットを有する化合物は非常にバルキーな特異的構造を有している。そのため、式(1)で示すユニットを有する化合物を含む樹脂粒子は、柔軟でありながら、変形に対する復元性が高い。さらに当該樹脂粒子の表面では、当該樹脂粒子と樹脂粒子の周囲のバインダーとの相互作用が強くなり、凸部の変形および復元が繰返し行われても、当該樹脂粒子表面における周囲のバインダーとのズレが抑制されて、凸部近傍の抵抗ムラの抑制の効果を発現する。その結果、本態様に係る帯電ローラを用いて形成された電子写真画像にはモヤ画像が発生し難くなる。
【0176】
<式(1)で示すユニットを有する化合物からなる樹脂粒子の製法>
本発明における樹脂粒子の作製方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。式(1)で示すユニットを有する化合物を冷却、乾燥、固化させて、クラッシャーのような粉砕機で粉砕した後、分級して、目的の粒子径を有する樹脂粒子を得ることができる。
【0177】
樹脂粒子の平均粒径は1μm以上30μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μm以上の樹脂粒子は、バルキーな構造に起因する柔軟性および変形に対する復元力により、ニップ部での放電をより安定化できる。また、平均粒径が30μm以下の樹脂粒子は、復元力の低下を抑制してセット画像を十分に抑制できる。さらに、樹脂粒子の平均粒径が30μmより大きい場合には、長期の繰り返し使用によって樹脂粒子が最表面層から脱離する場合があり、それにより帯電不良によるポチ画像が発生する場合がある。
【0178】
樹脂粒子の平均粒径は、粉体状の樹脂粒子をコールターカウンターマルチサイザーのような測定器で測定した測定値を採用することができる。例えば、電解質溶液100ml以上150ml以下に界面活性剤を少量添加し、これに測定試料を添加する。測定試料を懸濁した電解質溶液を超音波分散器で分散処理して、コールターカウンターマルチサイザーにより測定するものとする。こうして、測定試料の質量平均粒子径をコンピュータ処理により求める。
【0179】
また、既に表面層に含有された状態の樹脂粒子についても、次に示すような方法により粒径を測定できる。まず、表面層の断面をTEMにて観察し、樹脂粒子の断面画像データから、樹脂粒子の投影面積を求める。次に、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求めて、これを樹脂粒子の粒径とする。同様の方法で、別の樹脂粒子においても、投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求める。こうして得られたこれらの円の直径の算術平均を樹脂粒子の平均粒径とする。
【0180】
例えば表面層の任意の点を500μmに亘って、20nmずつ集束イオンビーム「FB−2000C」(日立製作所製)にて測定箇所を切り出し、その断面画像を撮影する。そして、樹脂粒子を撮影した画像を組み合わせて立体像を算出する。算出した樹脂粒子の立体像から樹脂粒子の投影面積を求めて、この面積と等しい面積を持つ円の直径を樹脂粒子の粒径とする。同様に、別の樹脂粒子の投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求める。このような作業を測定箇所内の20個の樹脂粒子について行う。そして、同様の測定を帯電部材の長手方向に沿って10点について行い、得られた計200個の値の算術平均を樹脂粒子の平均粒子径とする。
【0181】
樹脂粒子の硬度は0.1x10−4N以上8x10−4N以下が好ましい。更に1x10−4N以上5x10−4N以下が特に好ましい。樹脂粒子の硬度を1x10−4N以上とすると、樹脂粒子の復元力を維持し、さらに帯電部材表面の凸部の過度の変形を抑制して、樹脂粒子とバインダーとのズレを抑制できる。また樹脂粒子の硬度を5x10−4N以下とすることで、さらに帯電部材と被帯電体との当接を安定化し、ニップ部の放電を安定化できる。
【0182】
ここで、樹脂粒子の硬度は、NanoIndenter(MTS社製)のような硬度計を用いて測定できる。測定サンプルは、表面層をかみそりで切り出して樹脂粒子の断面を切断し、顕微鏡で樹脂粒子を観察して硬度を測定する。
【0183】
樹脂粒子の含有量は、バインダー100質量部に対して、0.5質量部以上80質量部以下が好ましい。含有量が少なすぎると樹脂粒子を添加しても帯電が安定する効果が得られない場合があり、含有量が多すぎると表面層の塗布液の粘度制御に時間を要することになる。
【0184】
表面層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いる表面加工処理や、化合物を表面に付着および/または含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0185】
(表面層の形成)
表面層は、静電スプレー塗布やディッピング塗布のような塗布法により形成することができる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状またはチューブ形状の層を接着または被覆することにより形成することもできる。あるいは、型の中で所定の形状に材料を硬化して成形する方法も用いることができる。この中でも、塗布法によって塗布液を塗工し、塗膜を形成することが好ましい。
【0186】
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる溶剤であればよい。
表面層に本発明の樹脂粒子に由来する凸部を形成する方法としては、樹脂粒子を含有した塗布液からなる表面層素材をディッピングにより塗工することが好ましく、さらに、表面層の厚みに対して、1/4以上の平均粒径を有する樹脂粒子を含有させることが好ましい。
【0187】
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。また本発明の樹脂粒子に由来する凸部を形成する場合には、表面層の厚みは2μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。表面層の厚みを上記範囲にすることで、本発明の樹脂粒子に由来する凸部の形成が容易になる。
【0188】
なお、表面層の膜厚は、図5Aおよび5Bに示す位置で帯電ローラの断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0189】
〔中間層〕
弾性層と表面層との間には、1層以上の中間層を設けてもよい。中間層の体積抵抗率は10Ω・cm以上1016Ω・cm以下であることがより好ましい。本範囲であれば、帯電性能を損なうことなく、感光体にピンホールが発生した場合、ピンホールに過大な電流が流れて印加電圧が電圧降下してしまうという現象の抑制に有利である。中間層の体積抵抗率を調整するために、前記導電剤及び絶縁性粒子等を用いることができる。
【0190】
本発明の中間層には、表面層に含有される各種物質の他、弾性層で例示する材料を適宜含有させることができる。また、弾性層と同様に、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を施してもよい。
【0191】
<電子写真装置>
本発明の帯電部材を備える電子写真装置の一例の概略構成を図6に示す。
【0192】
電子写真装置は、感光体、感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。
【0193】
電子写真感光体4は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。電子写真感光体4は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0194】
帯電装置は、電子写真感光体4に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電部材(帯電ローラ)5を有する。帯電ローラ5は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源19から所定の直流電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。
【0195】
電子写真感光体4に静電潜像を形成する潜像形成装置11は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。
【0196】
現像装置は、電子写真感光体4に近接又は接触して配設される現像ローラ6を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0197】
転写装置は、接触式の転写ローラ8を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材7(転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。
【0198】
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
【0199】
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
【0200】
定着装置9は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材7に定着し、機外に排出する。なお、図6中、12は帯電前露光装置、13は弾性規制ブレード、14はトナー供給ローラ、18および20は電源、30はトナーシールを表す。
【0201】
<プロセスカートリッジ>
感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジ(図7)を用いることもできる。
【0202】
すなわち、帯電部材が被帯電体と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであり、該帯電部材が上記の帯電部材である。
【0203】
また、電子写真装置は、少なくとも、プロセスカートリッジ、露光装置及び現像装置を有し、該プロセスカートリッジが上記のプロセスカートリッジである。
【0204】
なお、該電子写真装置は、帯電部材に直流電圧のみを印加して、感光体(被帯電体)を帯電することが好ましい。
【実施例】
【0205】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0206】
<実施例A>
式(1)で示すユニットを有する化合物において、式(1)で示すユニットの数をn、式(4)で示すユニットの数をmとし、以下、実施例を具体的に説明する。
【0207】
[式(1)で示すユニットを有する化合物の作製]
<製造例A−1>
攪拌機、冷却器および温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、溶剤として、イソプロピルアルコール300質量部を投入した。攪拌下、窒素ガスを流通しながら、80℃で、下記平均分子式(1A)で示す化合物95質量部、ブチルアクリレート78.2質量部、メチルメタクリレート132質量部、およびラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部の混合物を1時間かけて滴下した。さらに、80℃で6時間重合反応を行った。このイソプロピルアルコール溶液の一部を減圧除去した後、残った溶液を多量のメタノール中に投入して、攪拌後、静置して沈殿物を得た。沈殿物を減圧乾燥し、化合物を得た。
【0208】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMRおよびFT−IRにより分析したところ、化合物は、式(1)で示すユニットである下記式(1A−1)に加えて、式(1−1)、および式(1−2)で示すユニットを有していた。 また、化合物全体に対して、式(1A−1)で示すユニットは3.5%、式(1−1)で示すユニットは66%、式(1−2)で示すユニットは30.5%有しており、nは7、mは193であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと称す)によるポリスチレン(以下、PSと称す)換算重量平均分子量は約30000であった。結果を表2に示す。
【0209】
【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【0210】
<製造例A−2〜A−5、A−7、A−8、A−11、A−12、A−16〜A−21>
溶剤の種類、滴下する混合物、および重合反応時間について、表1に記載するように変更した以外は、製造例A−1と同様にして、化合物を作製した。得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。結果を表2に示す。
【0211】
<製造例A−6、A−13〜A−15>
溶剤の種類、滴下する混合物、および重合反応時間について、表1に記載するように変更した。また、重合反応後、残留溶液をメタノール中に投入することなく、150℃、10mmHgで減圧乾燥することにより、化合物を作製した。それ以外は、製造例A−1と同様にして、化合物を作製した。得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。結果を表2に示す。
【0212】
<製造例A−9、A−10>
溶剤の種類、滴下する混合物、および重合反応時間について、表1に記載するように変更した。また、滴下する混合物については、まず、重合開始剤以外の化合物を混合し、6時間撹拌した。その後、この混合溶液に、表1に記載した質量部の重合開始剤を添加して、滴下する混合物を作製した。これ以外は、製造例A−1と同様にして、化合物を作製した。得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。結果を表2に示す。なお、表1に記載のIPAはイソプロピルアルコール、EtOHはエタノール、重合開始剤はα,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。
【0213】
【表1】

【0214】
【表2】

【0215】
表1中、式(1)で示すユニットを有する化合物の「平均分子式」の項目に記載の(1B)〜(1H)、(1J)、(1K)の構造を以下に示す。また、表2中、式(1)で示すユニットを有する化合物の「平均分子式」の項目に記載の(1B−1)〜(1H−1)、(1J−1)、(1K−1)の構造を以下に示す。
【0216】
【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【0217】
<製造例A−22〜A−26>
反応容器として攪拌機、冷却器および温度計を備えたガラス製の3リットルフラスコに変更した。溶剤の種類、滴下する混合物、重合反応時間について、表3に記載するように変更した以外は製造例A−1と同様にして、化合物を作製した。なお、表3に記載のIPAはイソプロピルアルコール、EtOHはエタノール、重合開始剤はα,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。
得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。結果を表4に示す。
【0218】
【表3】

【0219】
【表4】

【0220】
上記表3中、平均分子式の項目に記載の(2A)〜(2E)の化合物の構造、および、表4中、平均分子式の項目に記載の(2A−1)〜(2E−1)、(1−5)の構造を以下に示す。
【0221】
【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

【化66】

【化67】

【0222】
[複合導電性微粒子1の作製]
シリカ粒子(平均粒子径15nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。このときの攪拌速度は22rpmであった。
【0223】
その中に、カーボンブラック粒子(粒子径20nm、体積抵抗率1.0×10Ω・cm、pH6.0)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行った。このようにしてメチルハイドロジェンポリシロキサンを被覆したシリカ粒子の表面にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、複合導電性微粒子1を得た。このときの攪拌速度は22rpmであった。得られた複合導電性微粒子1の平均粒径は15nmであり、体積抵抗率は1.1×10Ω・cmであった。
【0224】
[表面処理酸化チタン粒子1の作製]
針状ルチル型酸化チタン粒子(平均粒径15nm、縦:横=3:1、体積抵抗率2.3×1010Ω・cm)1000gに、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシラン110gおよび溶媒としてトルエン3000gを配合して、スラリーを調製した。
【0225】
このスラリーを、攪拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%が平均粒子径0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度30℃以上40℃以下で湿式解砕処理を行った。
【0226】
湿式解砕処理後のスラリーを、ニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30℃以上60℃以下、減圧度:約100Torr)によりトルエンを除去し、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理をした粒子を室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕して、表面処理酸化チタン粒子1を得た。
[弾性ローラ部材1の作製]
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製棒に、熱硬化性接着剤「メタロックU−20」(商品名、株式会社東洋化学研究所製)を塗布し、乾燥したものを導電性基体として使用した。
【0227】
エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGE三元共化合物、EO/EP/AGE=73mol%/23mol%/4mol%)100質量部に対して、炭酸カルシウム80質量部、脂肪族ポリエステル系可塑剤10質量部、ステアリン酸亜鉛1質量部、2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)(老化防止剤)0.5質量部、酸化亜鉛2質量部、四級アンモニウム塩2質量部、およびカーボンブラック(平均粒径:100nm、体積抵抗率:0.1Ω・cm)5質量部を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーで10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
【0228】
これに、加硫剤として硫黄0.8質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部およびテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を添加した。次いで20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、弾性層用コンパウンドを得た。
【0229】
上記導電性基体とともに、弾性層用コンパウンドをクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型した。次いで、電気オーブンを用いて、160℃で1時間、加硫および弾性層の硬化を行った。弾性層の両端部を突っ切り、弾性層の長さを228mmとした後、外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行った。こうして、導電性基体上に弾性層を有する弾性ローラ部材1を得た。なお、弾性ローラ部材1の弾性層のクラウン量(中央部の外径と中央部から90mm離れた位置の外径との差)は120μmであった。
【0230】
<実施例A−1>
[表面層用塗布液の調製]
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が14質量%となるように調整した。
【0231】
この溶液714.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表5の材料を加えて、混合溶液を調製した。
【0232】
【表5】

(*1):変性ジメチルシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)。
(*2):ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI「デュラネートTPA−B80E」(商品名:旭化成工業株式会社製))およびイソホロンジイソシアネート(IPDI「ベスタナートB1370」(商品名、デグサ・ヒュルス社製))の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物。
【0233】
また、上記ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
【0234】
製造例A−1で調製したユニット1A−1からなる化合物を30%溶解させたシクロペンタシロキサン溶液を用意した。尚、表10−1に、使用した化合物の製造例、および、化合物を構成するユニットを記載した。
【0235】
次いで、内容積450mLのガラス瓶に、上記混合溶液の200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。
【0236】
次いで、下記表6の材料を添加した。その後、1時間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。また、ここで、アクリルポリオール固形分100質量部に対してPMMA粒子1および製造例A−1で調製したユニット1A−1からなる化合物は、共に10質量部に相当する量である。
【0237】
【表6】

【0238】
[帯電ローラの作製]
弾性ローラ部材1を用い、表面層用塗布液を1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾した。その後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、弾性層上に表面層を形成した帯電ローラを得た。なお、ディッピング塗布の条件は、浸漬時間9秒、引き上げ速度の初期速度20mm/sおよび最終速度2mm/sであり、引き上げ速度は時間に対して直線的に変化させた。
【0239】
[帯電ローラの抵抗測定]
図4Aおよび4Bに示す電気抵抗値測定用の機器を用いて、帯電ローラの抵抗を測定した。まず、図4Aのように、帯電ローラ5を軸受け33aと33bとにより、円柱形金属32(直径30mm)に対して帯電ローラ5が平行になるように当接させる。ここで、当接圧は、バネによる押し圧力により一端で4.9N、両端で合計9.8Nに調整した。
【0240】
次に、図示しないモータにより、周速45mm/secで駆動回転される円柱形金属32に従い、帯電ローラ5を従動回転させた。従動回転中、図4Bのように、安定化電源34から直流電圧−200Vを印加して、帯電ローラに流れる電流値を電流計35で測定した。印加電圧および電流値から、帯電ローラの抵抗を算出した。帯電ローラは、N/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後に電気抵抗値を測定した。
【0241】
[Cセット評価試験]
図6に示す構成を有する電子写真装置として、キヤノン株式会社製カラーレーザープリンター(LBP5400(商品名))を記録メディアの出力スピードを200mm/sec(A4縦出力)に改造して用いた。画像の解像度は600dpi、1次帯電の出力は直流電圧−1100Vである。
【0242】
図7に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンター用のプロセスカートリッジ(ブラック用)を用いた。上記プロセスカートリッジから付属の帯電ローラを取り外し、本発明の帯電ローラをセットした。図8のように、帯電ローラ5は、感光体4に対し、その一端で4.9N、つまり、その両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。
【0243】
このプロセスカートリッジを40℃、95%RHの環境に1ヶ月間放置(苛酷放置)した。次に、プロセスカートリッジを23℃、50%RHの環境で6時間放置した後に、前記電子写真装置に装着し、同様の環境にて画像を出力した。
【0244】
出力した画像についてCセット画像を下記の基準によって評価した。
ランク1;Cセット画像の発生は認められない。
ランク2;軽微なスジ状の画像が認められるのみであり、帯電ローラのピッチでは確認できない。
ランク3;一部にスジ状の画像が帯電ローラのピッチで確認できるが、実用上問題の無い画質である。
ランク4;スジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる。
【0245】
[Cセット量の測定]
画像出力後、プロセスカートリッジから帯電ローラを取り外し、Cセット部、および非Cセット部における帯電ローラの半径をそれぞれ測定した。非Cセット部の半径とCセット部の半径との差がCセット量である。測定は、東京光電子工業(株)の全自動ローラ測定装置を用いた。
【0246】
帯電ローラ長手中央部、および、その中央部から左右それぞれ90mm位置の3個所について、帯電ローラを1°ずつ回転させ、Cセット部、非Cセット部に対応する位置の測定を行った。次に、非Cセット部の半径の最大値とCセット部の半径の最小値との差を算出した。3箇所の中で最も半径の差が大きい値を本発明のCセット量とした。
【0247】
<実施例A−2>
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分を17質量%に調整した。この溶液588.24質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表7の材料を加えて混合溶液を調製した。
【0248】
【表7】

【0249】
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。また、(*1)および(*2)は実施例A−1と同様である。
【0250】
内容積450mLのガラス瓶に、上記混合溶液208.6gをメディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。同時に、製造例1で作製したユニット1A−1からなる化合物を40%溶解させたイソドデカン溶液を用意した。
分散した後、PMMA粒子1を2.72g、上記イソドデカン溶液を6.8g添加した。このとき、アクリルポリオール固形分100質量部に対して、PMMA粒子1および製造例1で作製したユニット1A−1からなる化合物は、共に10質量部に相当する量である。
【0251】
その後、実施例1と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラにおいて、Cセット画像評価、Cセット量測定、電気抵抗測定を行った。
【0252】
<実施例A−3>
実施例A−2と同様にして、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液を調整し、アクリルポリオール固形分100質量部に対して下記表8の材料を加え、混合溶液を調整した。実施例A−2と同様に、ブロックイソシアネート混合物のイソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」とした。
【0253】
【表8】

(*1)および(*2)は実施例A−2と同様である。
(*3)は製造例A−1で作製したユニット1A−1からなる化合物を30%溶解させたアセトン溶液を用意し、製造例A−1で作製したユニット1A−1からなる化合物がアクリルポリオール固形分100質量部に対して、上記質量部になるように添加した。
【0254】
実施例A−2と同様にして、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散した後、PMMA粒子1を2.72g添加した。その後、実施例A−1と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて、実施例A−1と同様にして評価した。
【0255】
<実施例A−4>
ポリビニルブチラール(商品名「エスレックBL3」:積水化学工業(株)製)にエタノールを加え、固形分が20質量%となるようにブチラール溶液を調整した。 この溶液500質量部(ポリビニルブチラール固形分100質量部)に対して下記表9の材料を加えて混合溶液を調整した。
(*2)は実施例A−1と同様である。
【0256】
【表9】

(*4)は製造例A−1で作製したユニット1A−1からなる化合物を30%溶解させたエタノール溶液を用意し、製造例A−1で作製したユニット1A−1からなる化合物がアクリルポリオール固形分100質量部に対して、上記質量部になるように添加した。
【0257】
内容積450mLのガラス瓶に、上記混合溶液190.4gをメディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。
【0258】
分散した後、PMMA粒子1を3.2g添加した。このとき、ポリビニルブチラール固形分100質量部に対して、PMMA粒子1は10質量部に相当する量である。その後、実施例A−1と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0259】
<実施例A−5〜A−12、A−14〜A−19>
化合物の種類および質量部を表10−1に示すように変更した以外は、実施例A−3と同様にして、帯電ローラを作製した。尚、表10−1に、使用した化合物の製造例、および、化合物を構成するユニットを記載した。作製した帯電ローラにおいて、Cセット画像評価、Cセット量測定、電気抵抗測定を行った。
【0260】
<実施例A−13、A−20>
化合物の種類および質量部を表10−1に示すように変更した以外は、実施例A−1と同様にして、帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0261】
<実施例A−21>
複合導電性微粒子をカーボンブラック「#52」(三菱化学社製)50質量部に変更した以外は、実施例A−1と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0262】
<実施例A−22および実施例A−24〜A−31>
化合物の種類および質量部を表10−1に示すように変更した以外は、実施例A−21と同様にして、帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0263】
<実施例A−23>
化合物の種類および質量部を表10−1に示すように変更した以外は、実施例A−4と同様にして、帯電ローラを作製した。ユニット1G−1からなる化合物は、エタノール溶液に溶解させることなく、そのまま添加した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0264】
<実施例A−32>
ユニット1F−1からなる化合物を、前式(1A)に示す、ユニット1A−1からなる化合物に変更し、その添加量を20質量部に変更した以外は、実施例A−21と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0265】
<比較例A−1>
製造例A−1で作製したユニット1A−1からなる化合物を添加しない以外は、実施例A−4と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0266】
<比較例A−2〜A−4>
化合物の種類および質量部を表10−2に示すように変更した以外は、実施例A−21と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例A−1と同様にして評価した。
【0267】
上記実施例A−1〜A−32に係る帯電ローラの評価結果を表10−1に示す。また、上記比較例A−1〜A−4に係る帯電ローラの評価結果を表10−2に示す。
【0268】
【表10−1】

【0269】
【表10−2】

【0270】
<実施例B>
<実施例B−33>
[表面層用塗布液の調製]
実施例A−2のカプロラクトン変性アクリルポリオール溶液588.24質量部に対して、下記表11の材料を加え、混合溶液を調製した。
【0271】
【表11】

(*1)(*2)は実施例1と同様である。
【0272】
内容積450mLのガラス瓶に、上記混合溶液200gをメディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機で24時間分散し、分散液を作製した。分散液に、平均粒子径が10μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子を2.24g添加した。その後、1時間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布液を得た。また、ユニット2A−1からなる化合物を10%溶解させたイソドデカン溶液を用意した。
【0273】
[帯電ローラの作製]
上記表面層用塗布液を用いて、弾性ローラ部材1に1回、ディッピング塗布した。常温で30分間以上風乾した後、スプレーガンにより上記イソドデカン溶液を5秒噴霧した。さらに常温で10分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、弾性層上に表面層を形成した帯電ローラを得た。
ディッピング塗布は実施例A−1と同様の条件で行った。
また、スプレーガンによる塗布は以下の通りである。ディッピング後のローラ部材の軸方向がスプレーガンの移動方向に平行になるように立てて、ローラ部材を回転させつつ、ローラ部材とスプレーガンのノズル先端との距離を一定に保ち、スプレーガンを一定速度で上昇させながら塗布を行った。スプレーガンは、ノズル径が1.2mmであり、ノズル内に内径1.0mm、外径1.2mmのテフロン(登録商標)製のホースを組み込んだものを使用した。このとき、スプレーガンの霧化圧は2×10Pa、ローラ部材とスプレーガンのノズル先端との距離は50mmの条件で行った。また、スプレーガンの上昇速度はスプレーガンの噴霧時間に相当する時間でローラ部材の下端から上端までを移動できる速度に適宜調整した。
【0274】
[帯電ローラの表面状態の観察]
帯電ローラ表面におけるユニット2A−1からなる化合物の分布状態を原子間力顕微鏡(AFM)により測定した。視野40μm×40μmでタッピングモードにより測定を行った。帯電ローラ表面が位相の異なる連続相と不連続相とから構成されていることが確認できた。
不連続相の成分を13C−NMR、29Si−NMRおよびFT−IRにより分析したところ、不連続相はユニット2A−1からなる化合物で構成されていることが確認できた。
原子間力顕微鏡にて帯電ローラ表面の任意の5点で測定を行った。測定した画像データの不連続相の分布状態を、画像解析ソフトにより解析を行った。その結果、不連続相の最大直径は2.3μmであり、面積分率は45%であることがわかった。ここで最大直径とは、画像データ中の任意の10個の不連続相を選び、各不連続相の重心を通り、かつ各不連続相の外周の2点を結ぶ径の内で最大のものを示す。また、面積分率とは、画像データ全体の面積に対する不連続相の総面積の平均を示す。
作製した帯電ローラにおいて、電気抵抗値測定、Cセット量の測定およびCセット画像の評価を実施例A−1と同様の方法で行った。
【0275】
[帯電部材汚れ起因の画像の評価]
(評価の準備)
図6に示す構成を有する電子写真装置として、キヤノン社製カラーレーザープリンター(LBP5400(商品名))を記録メディアの出力スピード200mm/sec(A4縦出力)に改造して用いた。画像の解像度は600dpi、1次帯電の出力は直流電圧−1100Vである。図7に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンター用のプロセスカートリッジを用いた(ブラック用)。上記プロセスカートリッジから付属の帯電ローラを取り外し、本発明の帯電ローラをセットした。図8のように、帯電ローラは、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。23℃/50%RH環境(NN環境)下で、単色ベタ画像を50枚印刷後、ベタ白画像を1枚印刷した。これを6回繰り返して、単色ベタ画像を合計で300枚印刷した。
【0276】
(耐久試験評価)
上記電子写真装置に上記プロセスカートリッジを組み込み、1枚画像を出力して電子写真装置の回転を停止させた後に画像形成動作を再開するという動作を繰り返し(印字率1%で間欠耐久)行い、計5000枚の画像出力耐久試験を行った。
上記の耐久試験を、温度23℃/50%RH(NN環境)、および温度15℃/10%RH(LL環境)の環境でそれぞれ行った。評価画像として、初期画像、耐久試験中の1000枚目、3000枚目および5000枚目の時点のハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向とに幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)を出力した。これらの画像から、帯電部材汚れ起因の画像、および感光体融着起因の画像の発生状態を以下の基準に基づき評価した。
【0277】
(帯電部材汚れ起因のポチ画像の評価基準)
A:帯電部材汚れに起因するポチ画像の発生は認められない。
B:一部に軽微なポチ画像が認められるのみであり、帯電ローラピッチは確認できない。C:帯電ローラピッチでポチ状画像が確認できるが、実用上問題の無い画質である。
D:ポチ状画像が目立ち、画質の低下が認められる。
(感光体融着起因のポチ画像の評価基準)
A:感光体融着に起因するポチ画像の発生は認められない。
B:一部に軽微なポチ画像が認められるのみであり、ドラムピッチは確認できない。
C:ドラムピッチでポチ画像が確認できるが、実用上問題の無い画質である。
D:ポチ画像が目立ち、画質の低下が認められる。
【0278】
<実施例B−34>
実施例A−4のブチラール溶液500質量部に対して下記表12の材料を加えて混合溶液を調整した。
【0279】
【表12】

(*1)は実施例1と同様である。
【0280】
次いで、内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。
【0281】
分散した後、平均粒子径が6μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子(綜研化学MX6000)を3.2g添加した。このとき、ポリビニルブチラール固形分100質量部に対して、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子は10質量部に相当する量である。その後、1時間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。同時に、ユニット2A−1からなる化合物を10%溶解させたイソドデカン溶液を用意した。
【0282】
その後、実施例B−33と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例B−33と同様にして評価した。また、帯電部材汚れ起因のポチ画像および感光体融着起因のポチ画像の評価を実施例B−33と同様の方法で行った。
【0283】
<実施例B−35〜B−38、B−40〜B−43、B−45〜B−48>
ユニット2A−1からなる化合物を表13−1に示す化合物にように変更し、噴霧時間を表13−1に示す時間に変更した以外は、実施例B−33と同様にして、帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例B−33と同様の方法で評価した。
【0284】
<実施例B−39、B−44、B−49、B−50>
ユニット2A−1からなる化合物を表13−1に示す化合物にように変更し、噴霧時間を表13−1に示す時間に変更した以外は、実施例B−34と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例B−33と同様の方法で評価した。
【0285】
<比較例B−5>
ユニット2A−1からなる化合物の噴霧を行わない以外は、実施例B−34と同様にして帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例B−34と同様の方法で評価した。
【0286】
<比較例B−6>
ユニット2A−1からなる化合物をジメチルシリコーンオイル「KF−96L−5cs」(商品名、信越シリコーン株式会社製)に変更し、噴霧時間を表13−2に示す時間に変更した以外は、実施例B−34と同様にして、帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例B−33と同様の方法で評価した。
【0287】
<比較例B−7>
ユニット2A−1からなる化合物を表13−2に示す化合物にように変更し、噴霧時間を表10に示す時間に変更した以外は、実施例B−34と同様にして、帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラについて実施例B−33と同様の方法で評価した。
【0288】
上記実施例B−33〜B−50に係る帯電ローラの評価結果を表13−1および表14−1に示す。また、比較例B−5〜B−7に係る帯電ローラの評価結果を表13−2および表14−2に示す。
【0289】
表13−1および表13−2ならびに表14−1および表14−2に示したように、本態様に係る帯電ローラは、Cセット画像、帯電部材汚れ起因のポチ画像および、感光体融着起因のポチ画像の発生が抑制され、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものである。
【0290】
【表13−1】

【0291】
【表13−2】

【0292】
【表14−1】

【0293】
【表14−2】

【0294】
<実施例C>
[樹脂粒子の作製]
<製造例C−27>
滴下する混合物を表15に記載するように変更した以外は製造例A−1と同様にして、化合物を得た。得られた化合物を製造例A−1と同様に分析した。なお、表15に記載の重合開始剤はα,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。
得られた化合物をピンミルにて機械粉砕し、更に液体窒素温度下にて冷凍粉砕を行った。その後、粉砕粉の分級を行って、平均粒子径20μmの樹脂粒子を得た。これを樹脂粒子1とする。樹脂粒子1の平均粒子径は、コールターカウンターマルチサイザーを用いて測定した。電解質溶液100mlに界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.5g添加し、これに樹脂粒子1を5mg添加した。樹脂粒子1を懸濁した電解質溶液を超音波分散器で1分間分散処理して、コールターカウンターマルチサイザーにより、アパチャーを変更して、体積を基準として0.3μm以上64μm以下の粒度分布を測定し、質量平均粒子径を求めた。
【0295】
<製造例C−28、C−32、C−34>
反応溶剤に滴下する混合物を表15に記載するように変更した以外は、製造例C−27と同様にして、化合物を作製した。得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。
次いで、得られた化合物の分級条件(ローターの周速、および、風量)を表18に記載したように変更した以外は製造例C−27と同様に機械粉砕と分級を行って樹脂粒子を得た。
【0296】
<製造例C−29>
反応溶剤をエタノール100質量部、アセトン100質量部、トルエン100質量部に変更し、滴下する混合物を表15に記載するように変更した以外は、製造例C−27と同様にして、重合反応を行った。重合反応後、150℃、10mmHgで減圧乾燥することにより化合物を得た。
【0297】
得られた化合物を製造例1と同様に分析した。化合物は式(3B−1)のユニット、式(1−1)のユニット、式(1−2)のユニット、式(1−6)のユニット、および式(1−7)のユニットを有していた。分析結果を表17に示す。得られた化合物の分級条件を表18に記載したように変更した以外は製造例C−27と同様に機械粉砕と分級を行って樹脂粒子を得た。
【0298】
【化68】

【化69】

【化70】

【化71】

【0299】
<製造例C−30、C−31、C−33、C−35>
反応溶剤に滴下する混合物を表15に記載するように変更した以外は製造例C−29と同様にして化合物を作製した。得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。
得られた化合物の分級条件を表18に記載したように変更した以外は製造例C−27と同様に機械粉砕と分級を行って樹脂粒子を得た。樹脂粒子の質量平均粒子径を表18に示す。
【0300】
<製造例C−36>
エタノール50質量部、アセトン50質量部、トルエン50質量部からなる混合溶媒に、平均分子式(3C)で示す化合物100質量部、ブチルアクリレート39質量部、メチルメタクリレート20質量部、ステアリルメタクリレート68質量部、およびメチルスチレン29質量部を滴下し、室温で6時間攪拌した。さらにラジカル重合開始剤であるα,α−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を添加して混合物を作製した。
【0301】
攪拌機、冷却機および温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、反応溶剤としてイソプロピルアルコール70質量部、酢酸ブチル80質量部を投入した。攪拌下、温度を80℃に保ち、窒素ガスを流通しながら、上記の混合物を1時間かけて滴下した。さらに80℃で6時間重合反応を行った。反応後、150℃、10mmHgで減圧乾燥することにより化合物を得た。
【0302】
得られた化合物を製造例1と同様にして分析した。また、得られた化合物の分級条件を表18に記載したように変更した以外は製造例C−27と同様に機械粉砕と分級を行って樹脂粒子10を得た。
【0303】
【化72】

【化73】

【0304】
<製造例C−37〜C−72>
混合溶媒に添加する化合物を表16に記載するように変更して混合物を作製した以外は製造例C−36と同様にして化合物を作製した。得られた化合物について、製造例A−1と同様に分析した。なお、表16に記載の重合開始剤はα,α’−アゾビスイソブチロニトリル、連鎖移動剤は3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0305】
得られた化合物の分級条件を表18に記載したように変更した以外は製造例C−27と同様に機械粉砕と分級を行って樹脂粒子を得た。
【0306】
上記製造例C−27〜C−72に係る化合物について、製造例A−1と同様にして分析を行った。その結果を表17に示す。
【0307】
また、製造例C27〜C72に係る樹脂粒子1乃至46について、製造例C−27に記載の方法により求めた質量平均粒子径を表18に示す。
【0308】
【化74】

【化75】

【化76】

【化77】

【化78】

【化79】

【化80】

【化81】

【化82】

【化83】

【化84】

【化85】

【化86】

【化87】

【化88】

【化89】

【化90】

【化91】

【化92】

【化93】

【0309】
【表15】

【0310】
【表16】

【0311】
【表17】

【0312】
【表18】

【0313】
<実施例C−51>
実施例B−33と同様にして調整した分散液に樹脂粒子1を1.12g添加した。その後、ペイントシェーカー分散機で1時間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布液を得た。この溶液を実施例A−1と同様にして弾性層を有するローラ部材に塗布し、加熱して帯電ローラを作製した。
【0314】
作製した帯電ローラにおいて、電気抵抗値測定、Cセット量の測定およびCセット画像の評価を実施例A−1と同様の方法で行った。
【0315】
また、樹脂粒子の硬度は、以下の測定方法により測定値した。測定器は、NanoIndenter(MTS社製)を用いた。測定条件は、押し込み試験使用ヘッド;DCM、試験モード;CSN(Continuous Stiffness Measureement)、使用圧子;バーコヴィッチ方ダイヤモンド圧子とする。また測定パラメータはAllowable Drift Rate 0.05nm/s、Frequency Target 45.0Hz、Harmonic Displacement Target 1.0nm、Strain Rate Target 0.05 1/S、およびDepth Limit 2000nmとした。
【0316】
表面層をかみそりで切り出し表面層の小片を得る。小片中の樹脂粒子をかみそりで切断し、樹脂粒子の断面を観察する。樹脂粒子の断面ついて上記装置を用い硬度を測定した。硬度測定の対象とした樹脂粒子は、樹脂粒子の断面積から円相当径を計算し、その直径が、後述する樹脂粒子の平均粒径の90%以上110%以下の範囲に入るものとした。そして、この測定を100個の樹脂粒子に対して行い、その算術平均を算出した。結果を表19−1に示す。
【0317】
[帯電ローラの表面粗さ]
帯電ローラの表面の十点平均粗さRzjisおよび表面の凹凸平均間隔RSmは、日本工業規格(JIS)B0601−1994による表面粗さの規格に基づき測定した。測定は、表面粗さ測定器(商品名:SE−3500、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。十点平均粗さRzjisは、帯電部材の表面から無作為に6箇所測定し、その平均値を採用した。凹凸平均間隔RSmは、無作為に6箇所選択し、各測定箇所における10点の凹凸間隔を測定し、その平均値を採用した。このとき、カットオフ値は0.8mm、評価長さは8mm、カットオフフィルタをガウシアンフィルタとした。
【0318】
[モヤ画像の評価]
(放電空回転加速試験)
カラーレーザープリンター(商品名:LBP5400、キヤノン社製)を、A4サイズの紙の縦方向に出力するスピードを200mm/secとなるようにに改造した。上記プリンター用のプロセスカートリッジ(ブラック用)から付属の帯電ローラを取り外し、作製した帯電ローラをセットした。また、帯電ローラは、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。次いで、23℃/50%RH環境(NN環境)下で、単色ベタ画像を2枚印刷後、帯電ローラに直流電圧−1100Vを印加した状態で、感光体を1時間連続で回転させ続けた。これを20回繰り返した。
その後、1枚画像を出力して電子写真装置の回転を停止させた後に画像形成動作を再開するという動作を繰り返し(印字率1%で間欠耐久)、計5000枚の画像出力耐久試験を行った。
上記の試験を、温度23℃/50%RH(NN環境、以下NN)、および、温度15℃/10%RH(LL環境、以下LL)の環境でそれぞれ行った。耐久試験中、1000枚目、3000枚目および5000枚目の時点でハーフトーン画像を出力し、その画像からモヤ画像の発生状態を評価した。上記の発生状態の評価は、以下に示す評価基準にて行った。
【0319】
(モヤ画像の評価基準)
ランク1:モヤ画像は未発生である。
ランク2:モヤ画像はごく軽微な発生のみで、ほとんど確認できないレベルである。
ランク3:モヤ画像は画像の一部に発生が認められるが、実用上問題ない。
ランク4:モヤ画像は画像全体に発生し、著しく画像の品質が低下する。
【0320】
<実施例C−52>
[表面層用塗布液の調製]
バインダー樹脂として水系ウレタン樹脂であるスーパーフレックス460(商品名、第一工業製薬(株)製、固形分38%)の固形分100質量部に対して複合導電性微粒子が30質量部になるように複合導電性微粒子を添加し混合溶液を調整した。
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.5mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて5時間分散した。その後、樹脂粒子2をバインダー樹脂の固形分100質量部に対して樹脂粒子2を50質量部になるように樹脂粒子を添加し、20分間分散した。ガラスビーズを除去して表面層用塗布液を得た。
表面層用塗布液を、実施例C−51と同様にして弾性層を有するローラ部材に1回ディッピング塗布した後、熱風循環乾燥機にて80℃で5分間硬化させ、弾性層上に表面層を形成した帯電ローラを得た。作製した帯電ローラについて実施例C−51と同様の方法で評価した。
【0321】
<実施例C−53〜C−94、比較例C−8、C−9>
表面層用塗布液に添加する樹脂粒子の種類、および添加量を表19−1、表19−2、および、表19−3に示すように変更した以外は実施例C−52と同様にして帯電ローラを得た。表19−1、表19−2、および、表19−3において樹脂粒子の添加量は、バインダー樹脂の固形分100質量部に対する添加する質量部で標記した。
【0322】
実施例C−51〜C−94および比較例C−8〜C−9に係る帯電ローラの表面粗さ、電気抵抗値、樹脂粒子の硬度、Cセット画像評価を表19−1、表19−2、および、表19−3に示す。また、モヤ画像評価を実施例C−51と同様の方法で行った。結果を表20−1、表20−2、および、表20−3に示す。
【0323】
上記表19−1乃至表19−3、および、表20−1乃至表20−3に示すように、本態様に係る帯電ローラは、Cセット画像、モヤ画像の発生が抑制され、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものである。
【0324】
【表19−1】

【0325】
【表19−2】

【0326】
【表19−3】

【0327】
【表20−1】

【0328】
【表20−2】

【0329】
【表20−3】

【0330】
<実施例D>
前記式(1)で示すユニットを有する化合物において、式(1)で示すユニットの数をn、式(4)で示すユニットの数をmとし、以下、実施例を具体的に説明する。
【0331】
<製造例D−1[化合物D−1の作製]>
攪拌機、冷却器および温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、溶媒として、イソプロピルアルコール300質量部を投入した。攪拌下、温度を80℃に保ち、窒素ガスを通しながら、下記平均分子式(D−1A)で示す化合物95質量部、ブチルアクリレート78質量部、メチルメタクリレート132質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部の混合物を1時間かけて滴下した。さらに、80℃で6時間重合反応を行った。イソプロピルアルコールの一部を減圧除去した後、残った溶液を多量のメタノール中に投入して、攪拌、静置し沈殿物を得た。沈殿物を減圧乾燥し、化合物D−1を得た。
【化94】

【0332】
得られた化合物D−1を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−1は、下記式(D−A−1)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを3.5%、βユニットを66%、γユニットを30.5%有しており、nは7、mは193であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約30000であった。
【0333】
【化95】

【0334】
<製造例D−2[化合物D−2の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−1A)で示す化合物69質量部、メチルメタクリレート8質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−1と同様に、重合反応を行った。反応後、メタノールに投入することなく、150℃、10mmHgで減圧乾燥することにより、化合物D−2を得た。得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−2は、下記式(D−A−2)で示すα及びβユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを39%、βユニットを61%有しており、nは5、mは8であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約7700であった。
【0335】
【化96】

【0336】
<製造例D−3[化合物3の作製]>
溶媒をエタノール300質量部に変更し、滴下する混合物を、平均分子式(D−3A)で示す化合物60質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部、エタノール100質量部に変更した。また、重合反応時間を210時間に変更した。それ以外は、製造例D−2と同様にして化合物D−3を作製した。
【0337】
【化97】

【0338】
得られた化合物D−3を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−3は、下記式(D−A−3)で示される化合物であり、nは2であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約30000であった。
【0339】
【化98】

【0340】
<製造例D−4[化合物D−4の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−2A)で示す化合物90質量部、メチルメタクリレート4質量部、スチレン4質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−1と同様にして、化合物D−4を作製した。
【0341】
【化99】

【0342】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−4は、下記式(D−A−4)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを21.4%、βユニットを40.1%、γユニットを38.6%有しており、nは2、mは8であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約9800であった。
【0343】
【化100】

【0344】
<製造例D−5[化合物D−5の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−2A)で示す化合物90質量部、メチルメタクリレート10質量部、スチレン12質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−4と同様にして、重合反応を行った。反応後、メタノールに投入することなく、150℃、10mmHgで減圧乾燥することにより、化合物D−5を得た。
【0345】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−5は、前記式(D−A−4)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを9%、βユニットを42.2%、γユニットを48.8%有しており、nは2、mは22であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約11200であった。
【0346】
<製造例D−6[化合物D−6の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−1A)で示す化合物29質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例A−1と同様にして、重合反応を行った。反応後、メタノールに投入することなく、150℃、10mmHgで減圧乾燥することにより、化合物D−6を得た。得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−6は、下記式(D−A−5)で示す平均分子式を有する化合物であり、nは2であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約2900であった。
【0347】
【化101】

【0348】
<製造例D−7[化合物D−7の作製]>
エタノール50質量部及びイソプロピルアルコール50質量部に、平均分子式(D−4A)で示す化合物250質量部、メチルメタクリレート100質量部、ブチルアクリレート50部を添加し、室温で6時間撹拌した。化合物が溶解した混合溶液に、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を添加し、滴下する混合物とした。これ以外は、製造例D−3と同様にして、化合物D−7を作製した。
【0349】
【化102】

【0350】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−7は、下記式(D−A−6)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを3.0%、βユニットを93.5%、γユニットを3.5%有しており、nは3、mは104であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約600000であった。
【0351】
【化103】

【0352】
<製造例D−8[化合物D−8の作製]>
滴下する混合物を、エタノール50質量部、イソプロピルアルコール50質量部、平均分子式(D−4A)で示す化合物50質量部、メチルメタクリレート30質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部に変更した以外は、製造例D−7と同様にして、化合物D−8を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−8は、下記式(D−A−7)で示すα及びβユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを2%、βユニットを98%有しており、nは6、mは300であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約80000であった。
【0353】
【化104】

【0354】
<製造例D−9[化合物D−9の作製]>
滴下する混合物を、エタノール50質量部、イソプロピルアルコール50質量部、平均分子式(D−4A)で示す化合物150質量部、メチルメタクリレート7.5質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部に変更した以外は、製造例A−8と同様にして、化合物D−9を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−9は、前記式(D−A−6)で示されるα及びβユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを20%、βユニットを80%有しており、nは19、mは75であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約160000であった。
【0355】
<製造例D−10[化合物D−10の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−1A)で示す化合物130質量部、メチルメタクリレート10質量部、ブチルアクリレート10質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−1と同様にして、化合物D−10を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−10は、前記式(D−A−1)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを33%、βユニットを、34%、γユニットを33%有しており、nは10、mは20であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約15000であった。
【0356】
<製造例D−11[化合物D−11の作製]>
エタノール100質量部に、平均分子式(D−5A)で示す化合物250質量部、メチルメタクリレート50質量部、ブチルアクリレート78質量部を添加し、室温で6時間撹拌した。化合物が溶解した混合溶液に、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を添加し、滴下する混合物とした。また、重合反応時間を24時間とした。これ以外は、製造例D−3と同様にして、化合物D−11を作製した。
【0357】
【化105】

得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−11は、下記式(D−A−8)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを2%、βユニットを39%、γユニットを59%有しており、nは26、mは1250であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約378000であった。
【0358】
【化106】

【0359】
<製造例D−12[化合物D−12の作製]>
滴下する混合物を、エタノール100質量部、平均分子式(D−5A)で示す化合物200質量部、メチルメタクリレート5質量部、ブチルアクリレート5.5質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部に変更した以外は、製造例D−11と同様にして、化合物D−12を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−12は、前記式(D−A−8)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物D−12は、化合物全体に対し、αユニットを18.2%、βユニットを35.2%、γユニットを46.6%有しており、nは4、mは18であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約42000であった。
【0360】
<製造例D−13[化合物D−13の作製]>
滴下する混合物を、エタノール100質量部、平均分子式(D−5A)で示す化合物100質量部、メチルメタクリレート4質量部、ブチルアクリレート5質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.8質量部に変更し、重合時間を48時間に変更した以外は、製造例D−12と同様にして、化合物D−13を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−13は、前記式(D−A−8)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物D−13は、化合物全体に対し、αユニットを10.5%、βユニットを40.6%、γユニットを48.9%有しており、nは10、mは88であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約109000であった。
【0361】
<製造例D−14[化合物D−14の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−1A)で示す化合物135質量部、メチルメタクリレート20質量部、ブチルアクリレート21質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−2と同様にして化合物D−14を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−14は、前記式(D−A−1)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを21.6%、βユニットを43%、γユニットを35.4%有しており、nは10、mは36であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約17000であった。
【0362】
<製造例D−15[化合物D−15の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−2A)で示す化合物170質量部、メチルメタクリレート50質量部、スチレン50質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−5と同様にして、化合物D−15を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−15は、前記式(D−A−4)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを4%、βユニットを49%、γユニットを47%有しており、nは4、mは98であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約27000であった。
【0363】
<製造例D−16[化合物D−16の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−2A)で示す化合物200質量部、メチルメタクリレート100質量部、スチレン100質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.6質量部に変更し、重合時間を48時間に変更した以外は、製造例D−15と同様にして、化合物D−16を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−16は、前記式(D−A−4)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物D−16は、化合物全体に対し、αユニットを2.3%、βユニットを49.7%、γユニットを48%有しており、nは47、mは1961であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約400000であった。
【0364】
<製造例D−17[化合物D−17の作製]>
滴下する混合物を、エタノール50質量部、イソプロピルアルコール50質量部、平均分子式(D−6A)で示す化合物180質量部、メチルメタクリレート4質量部、スチレン4.2質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−7と同様にして、化合物D−17を作製した。
【化107】

【0365】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−17は、下記式(D−A−9)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを27.2%、βユニットを、36.2%、γユニット36.6%を有しており、nは3、mは8であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約22000であった。
【0366】
【化108】

【0367】
<製造例D−18[化合物D−18の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−7A)で示す化合物76質量部、メチルメタクリレート4質量部、スチレン4.2質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−1と同様にして、化合物D−18を作製した。
【化109】

【0368】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−18は、前記式(D−A−10)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを46.7%、βユニットを26.5%、γユニットを26.8%有しており、nは7、mは8であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約9000であった。
【化110】

【0369】
<製造例D−19[化合物D−19の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−7A)で示す化合物76質量部、メチルメタクリレート92質量部、ブチルアクリレート81質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例A−18と同様にして化合物D−19を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−19は、下記式(D−A−11)で示すα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを4%、βユニットを52%、γユニットを44%有しており、nは7、mは170であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約27000であった。
【化111】

【0370】
<製造例D−20[化合物D−20の作製]>
アセトン50質量部、エタノール50質量部及びトルエン50質量部に、平均分子式(D−8A)で示す化合物220質量部、スチレン25質量部を添加し、12時間撹拌した。化合物が溶解した混合溶液に、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)1質量部を添加し、滴下する混合物とし、重合時間を100時間とした。これ以外は、製造例D−3と同様にして、化合物D−20を作製した。
【化112】

【0371】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−20は、下記式(D−A−12)で示されるα及びβユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを6.8%、βユニットを93.2%有しており、nは128、mは1750であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約1800000であった。
【化113】

【0372】
<製造例D−21[化合物D−21の作製]>
滴下する混合物を、アセトン50質量部、トルエン50質量部に、平均分子式(D−8A)で示す化合物250質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)1質量部とした以外は、製造例D−20と同様にして化合物D−21を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−21は、下記式(D−A−13)で示される化合物であり、nは2であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約25000であった。
【化114】

【0373】
<製造例D−22[化合物D−22の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−9A)で示す化合物110質量部、メチルメタクリレート132質量部、スチレン25質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−1と同様にして、化合物D−22を作製した。
【化115】

得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−22は、下記式(D−A−14)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを2.3%、βユニットを82.1%、γユニットを15.6%有しており、nは11、mは471であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約80000であった。
【化116】

【0374】
<製造例D−23[化合物D−23の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−3A)で示す化合物80質量部、メチルメタクリレート10質量部、ブチルアクリレート12質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−3と同様にして化合物D−23を作製した。
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−23は、下記式(D−A−15)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを3%、βユニットを50%、γユニットを47%有しており、nは6、mは194であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約102000であった。
【化117】

【0375】
<製造例D−24[化合物D−24の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−10A)で示す化合物33質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例A−1と同様にして化合物24を作製した。
【化118】

【0376】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−24は、下記式(D−A−16)で示される化合物であり、nは4であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約3300であった。
【化119】

【0377】
<製造例D−25[化合物D−25の作製]>
滴下する混合物を、前記平均分子式(D−10A)で示す化合物115質量部、メチルメタクリレート50質量部、スチレン50質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−24と同様にして、化合物D−25を作製した。
【0378】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−25は、下記式(D−A−17)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを12.3%、βユニットを43.8%、γユニットを43.9%有しており、nは14、mは100であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約21500であった。
【化120】

【0379】
<製造例D−26[化合物D−26の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−11A)で示す化合物90質量部、メチルメタクリレート132質量部、ブチルアクリレート78質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−2と同様にして、化合物D−26を作製した。
【化121】

【0380】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−26は、下記式(D−A−18)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを10%、βユニットを62%、γユニットを28%有しており、nは20、mは174であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約26000であった。
【化122】

【0381】
<製造例D−27[化合物D−27の作製]>
滴下する混合物を、平均分子式(D−12A)で示す化合物100質量部、メチルメタクリレートを100質量部、ブチルアクリレートを100質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部に変更した以外は、製造例D−2と同様にして、化合物D−27を作製した。
【化123】

【0382】
得られた化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物D−27は、下記式(D−A−19)で示されるα、β及びγユニットを有していた。また、化合物全体に対し、αユニットを3.6%、βユニットを54.1%、γユニットを42.3%有しており、nは40、mは1069であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約200000であった。
【化124】

【0383】
<製造例E−1[黒鉛粒子1の作製]>
コールタールピッチから溶剤分別により、β−レジンを抽出し、これを水素添加により重量化処理を行った。続いて、トルエンにより溶剤可溶分を除去して、バルクメソフェーズピッチを得た。このバルクメソフェーズピッチを機械粉砕した後、空気中で、昇温速度300℃/hで270℃まで昇温し、酸化処理を施した。粉砕は、平均粒径が3μm程度になるようにした。続いて、窒素雰囲気下にて、昇温速度1500℃/hで3000℃まで昇温し、3000℃で15分間加熱処理を施した。更に、分級処理を行い、黒鉛粒子1を得た。
【0384】
<製造例E−2[黒鉛粒子2の作製]>
平均粒子径5.0μmのフェノール樹脂粒子を酸化性雰囲気下に300℃で1時間熱安定化処理した後、1100℃/hで2200℃まで昇温し、2200℃で10分間加熱処理を施した。更に、分級処理を行い、黒鉛粒子2を得た。
【0385】
<製造例E−3[黒鉛粒子3の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を3.0μmの粒子に変更し、その後の分級条件を適時変更した以外は、製造例E−2と同様にして黒鉛粒子3を得た。
【0386】
<製造例E−4[黒鉛粒子4の作製]>
石炭系重質油を熱処理し、生成した粗メソカーボンマイクロビーズを遠心分離し、ベンゼンで洗浄精製して乾燥した。続いて、アトマイザーミルにて機械的に分散を行い、メソカーボンマイクロビーズを得た。このメソカーボンマイクロビーズを窒素雰囲気下にて、昇温速度600℃/hで1200℃まで昇温して炭化させ、続いて、アトマイザーミルにて2次分散を行った。この際、平均粒径が6μm程度になるように調整した。得られた分散物を窒素雰囲気下にて、昇温速度1000℃/hで2000℃まで昇温し、2000℃で15分間加熱処理を施した。更に、分級処理を行い、黒鉛粒子4を得た。
【0387】
<製造例E−5[黒鉛粒子5の作製]>
アトマイザーミルでの2次分散を、平均粒径が3.6μm程度になるように調整し、2次加熱処理を、昇温速度1400℃/hで2800℃までの昇温、2800℃で15分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−4と同様にして黒鉛粒子5を得た。
【0388】
<製造例E−6[黒鉛粒子6の作製]>
アトマイザーミルでの2次分散を、平均粒径が3μm程度になるように調整し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−4と同様にして、黒鉛粒子6を得た。
【0389】
<製造例E−7[黒鉛粒子7の作製]>
コールタールを蒸留して沸点270℃以下の軽油分を除去し、このタール分100質量部に対して、アセトンを85質量部混合し、室温で撹拌した後、発生した不溶分を濾過により除去した。濾液の蒸留により、アセトンを分離し、精製タールを得た。得られた精製タール100質量部に対し、濃硝酸を10質量部添加し、減圧蒸留釜内にて、350℃にて1時間、重縮合処理を行い、更に、480℃で4時間加熱を行った。これを、冷却後取り出して、機械粉砕した後、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/hで1000℃まで昇温し、1000℃で10時間加熱処理(1次加熱処理)を施した。粉砕の際には、平均粒径が2μm程度になるように調整した。続いて、窒素雰囲気下にて、昇温速度10℃/hで3000℃まで昇温し、3000℃で1時間間加熱処理(2次加熱処理)を施した。更に、分級処理を行い、黒鉛粒子7を得た。
【0390】
<製造例E−8[黒鉛粒子8の作製]>
コールタールの減圧蒸留を480℃にて行い、機械粉砕の際には、平均粒径を1μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は製造例E−7と同様にして黒鉛粒子8を得た。
【0391】
<製造例E−9[黒鉛粒子9の作製]>
粉砕を、平均粒径が9μm程度になるようにし、窒素雰囲気下での加熱処理を、昇温速度7500℃/hで1500℃までの昇温、1500℃で15分間加熱とし、分級条件を適時変更した。それら以外は製造例E−1と同様にして黒鉛粒子9を得た。
【0392】
<製造例E−10[黒鉛粒子10の作製]>
粉砕を、平均粒径が8μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は製造例E−9と同様にして黒鉛粒子10を得た。
【0393】
<製造例E−11[黒鉛粒子11の作製]>
粉砕を、平均粒径が4μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は製造例E−1と同様にして黒鉛粒子11を得た。
【0394】
<製造例E−12[黒鉛粒子12の作製]>
タールピッチを軟化溶融させ、その中に、製造例B−2で得た黒鉛粒子2を、タールピッチ100質量部に対し、5質量部添加混合した。その後、窒素雰囲気下において、撹拌しながら、420℃で12時間加熱処理を行った。この混合物を、平均粒径が3μm程度になるよう、機械粉砕を行った後、空気中にて、昇温速度240℃/hで260℃まで昇温し、260℃で30分間加熱処理を施した。続いて、窒素雰囲気下に、昇温速度500℃/hで1000℃まで昇温し、更に、アルゴン雰囲気下で、昇温速度1000℃/hで3000℃まで昇温し、3000℃で10分間加熱処理を施した。最後に、分級処理を行い、黒鉛粒子12を得た。
【0395】
<製造例E−13[黒鉛粒子13の作製]>
粉砕を、平均粒径が13μm程度になるようにし、窒素雰囲気下での加熱処理を、昇温速度1000℃/hで2000℃までの昇温、2000℃で15分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−11と同様にして、黒鉛粒子13を得た。
【0396】
<製造例E−14[黒鉛粒子14の作製]>
コークス粒子(平均粒径12μm)60質量部、タールピッチ20質量部及びフラン樹脂(日立化成工業株式会社製、VF303(商品名))20質量部を混合し、200℃で2時間撹拌した。これを、機械粉砕した後、窒素雰囲気下で、昇温速度450℃/hで900℃まで昇温し、加熱処理を施した。粉砕は、平均粒径が20μm程度になるように行った。続いて、窒素雰囲気下にて、昇温速度1000℃/hで2000℃まで昇温し、2000℃で10分間加熱処理を施した。更に、平均粒径が12μm程度になるように、機械粉砕を行った後、分級処理を行い、黒鉛粒子14を得た。
【0397】
<製造E−15[黒鉛粒子15の作製]>
粉砕を、平均粒径が8μm程度になるようにし、窒素雰囲気下での加熱処理を、昇温速度1000℃/hで1500℃までの昇温、1500℃で10分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−14と同様にして、黒鉛粒子15を得た。
【0398】
<製造例E−16[黒鉛粒子16の作製]>
粉砕を、平均粒径が15μm程度になるようにし、窒素雰囲気下での加熱処理を、昇温速度500℃/hで1000℃までの昇温、1000℃で15分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−11と同様にして、黒鉛粒子16を得た
【0399】
<製造例E−17[黒鉛粒子17の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を15μmの粒子に変更し、加熱処理を、750℃/hで1500℃までの昇温、1500℃で10分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−2と同様にして、黒鉛粒子17を得た。
【0400】
<製造例E−18[黒鉛粒子18の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を9μmの粒子に変更し、加熱処理を、1000℃/hで2000℃までの昇温、2000℃で15分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−2と同様にして、黒鉛粒子18を得た。
【0401】
<製造例E−19[黒鉛粒子19の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を10μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−18同様にして、黒鉛粒子19を得た。
【0402】
<製造例E−20[黒鉛粒子20の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を7μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17同様にして、黒鉛粒子20を得た。
【0403】
<製造例E−21[黒鉛粒子21の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を6μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17同様にして、黒鉛粒子21を得た。
【0404】
<製造例E−22[黒鉛粒子22の作製]>
アトマイザーミルでの2次分散を、平均粒径が11.5μm程度になるように調整し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−5と同様にして、黒鉛粒子22を得た。
【0405】
<製造例E−23[黒鉛粒子23の作製]>
アトマイザーミルでの2次分散を、平均粒径が10μm程度になるように調整し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−22と同様にして、黒鉛粒子23を得た。
【0406】
<製造例E−24[黒鉛粒子24の作製]>
アトマイザーミルでの2次分散を、平均粒径が12μm程度になるように調整し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−22と同様にして、黒鉛粒子24を得た。
【0407】
<製造例E−25[黒鉛粒子25の作製]>
粉砕を、平均粒径が15μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−16と同様にして、黒鉛粒子25を得た。
【0408】
<製造例E−26[黒鉛粒子26の作製]>
粉砕を、平均粒径が9μm程度になるようにし、1500℃での加熱を30分間とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−9と同様にして、黒鉛粒子26を得た。
【0409】
<製造例E−27[黒鉛粒子27の作製]>
粉砕を、平均粒径が5μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−9と同様にして、黒鉛粒子27を得た。
【0410】
<製造例E−28[黒鉛粒子28の作製]>
粉砕を、平均粒径が4μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−9と同様にして、黒鉛粒子28を得た。
【0411】
<製造例E−29[黒鉛粒子29の作製]>
粉砕を、平均粒径が1μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−9と同様にして、黒鉛粒子29を得た。
【0412】
<製造例E−30[黒鉛粒子30の作製]>
粉砕を、平均粒径が0.9μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−16と同様にして、黒鉛粒子30を得た
【0413】
<製造例E−31[黒鉛粒子31の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を20μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−2と同様にして、黒鉛粒子31を得た。
【0414】
<製造例E−32[黒鉛粒子32の作製]>
粉砕を、平均粒径が19μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例B−14と同様にして、黒鉛粒子32を得た。
【0415】
<製造例E−33[黒鉛粒子33の作製]>
鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社社製:CNP35(商品名))を粉砕処理し、平均粒径が14μmになるように調整した後、分級処理を行い、黒鉛粒子33を得た。
【0416】
<製造例E−34[黒鉛粒子34の作製]>
粉砕処理を平均粒径が1.5μmになるようにした以外は、製造例E−33と同様にして、黒鉛粒子34を得た。
【0417】
<製造例E−35[黒鉛粒子35の作製]>
粉砕処理を平均粒径が1.0μmになるようにした以外は、製造例E−33と同様にして、黒鉛粒子35を得た。
【0418】
<製造例E−36[黒鉛粒子36の作製]>
粉砕処理を平均粒径が0.5μmになるようにした以外は、製造例E−33と同様にして、黒鉛粒子36を得た。
【0419】
<製造例E−37[黒鉛粒子37の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を8.5μmの粒子に変更し、2000℃で5分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−32と同様にして、黒鉛粒子37を得た。
【0420】
<製造例E−38[黒鉛粒子38の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を9μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−18と同様にして、黒鉛粒子38を得た。
【0421】
<製造例E−39[黒鉛粒子39の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を6μmの粒子に変更し、2000℃で5分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−18と同様にして、黒鉛粒子39を得た。
【0422】
<製造例E−40[黒鉛粒子40の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を6.5μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17と同様にして、黒鉛粒子40を得た。
【0423】
<製造例E−41[黒鉛粒子41の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を29μmの粒子に変更し、加熱処理を、500℃/hで1000℃までの昇温、1000℃で2分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17と同様にして、黒鉛粒子41を得た。
【0424】
<製造例E−42[黒鉛粒子42の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を15.5μmの粒子に変更し、1500℃で20分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17と同様にして、黒鉛粒子42を得た。
【0425】
<製造例E−43[黒鉛粒子43の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を16μmの粒子に変更し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−42と同様にして、黒鉛粒子43を得た。
【0426】
<製造例E−44[黒鉛粒子44の作製]>
粉砕を、平均粒径が16.5μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−15と同様にして、黒鉛粒子44を得た。
【0427】
<製造例E−45[黒鉛粒子45の作製]>
粉砕を、平均粒径が18μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−15と同様にして、黒鉛粒子45を得た。
【0428】
<製造例E−46[黒鉛粒子46の作製]>
粉砕を、平均粒径が21μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−15と同様にして、黒鉛粒子46を得た。
【0429】
<製造例E−47[黒鉛粒子47の作製]>
粉砕を、平均粒径が0.4μm程度になるようにし、窒素雰囲気下での加熱処理を、昇温速度1500℃/hで3000℃までの昇温、3000℃で15分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−14と同様にして、黒鉛粒子47を得た。
【0430】
<製造例E−48[黒鉛粒子48の作製]>
粉砕を、平均粒径が0.3μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−47と同様にして、黒鉛粒子48を得た。
【0431】
<製造例E−49[黒鉛粒子49の作製]>
粉砕処理を平均粒径が20μmになるようにした以外は、製造例E−33と同様にして、黒鉛粒子49を得た。
【0432】
<製造例E−50[黒鉛粒子50の作製]>
粉砕を、平均粒径が18μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−15と同様にして、黒鉛粒子50を得た。
【0433】
<製造例E−51[黒鉛粒子51の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を29μmの粒子に変更し、加熱処理を、500℃/hで1000℃までの昇温、1000℃で2分間加熱とし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17と同様にして、黒鉛粒子51を得た。
【0434】
<製造例E−52[黒鉛粒子52の作製]>
フェノール樹脂粒子の平均粒子径を20μmの粒子に変更し、粉砕処理を施し、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−17と同様にして、黒鉛粒子52を得た。
【0435】
<製造例E−53[黒鉛粒子53の作製]>
粉砕処理を平均粒径が25μmになるようにした以外は、製造例E−33と同様にして、黒鉛粒子53を得た。
【0436】
<製造例E−54[黒鉛粒子54の作製]>
粉砕を、平均粒径が32μm程度になるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−47と同様にして、黒鉛粒子54を得た。
【0437】
<製造例E-55[黒鉛粒子55の作製]>
粉砕を、平均粒径が0.2μmになるようにし、分級条件を適時変更した以外は、製造例E−47と同様にして、黒鉛粒子55を得た。
【0438】
上記で得られた黒鉛粒子1から55について、それぞれ、平均粒径Aμm、黒鉛(002)面の面間隔、長径/短径の比、0.5Aμmから5Aμmの範囲の粒径の割合及びラマンスペクトルの半値幅について測定した。
【0439】
〔黒鉛粒子の平均粒径A〕
二次凝集した粒子を除いた1次粒子のみを透過型電子顕微鏡(TEM)にて100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算する。この円相当径を体積換算し、体積平均粒径を求め、それを平均粒径Aとする。また、粒度分布は、この体積平均粒径としての分布である。
【0440】
[黒鉛粒子の黒鉛(002)面の面間隔の測定]
黒鉛粒子は、そのまま無反射試料板に充填したものを測定試料とする。黒鉛粒子の測定試料を試料水平型強力X線回折装置「RINT/TTR−II」(商品名、株式会社リガク製)にてCuKα線を線源としたX線回折を、下記条件で測定し、X線回折チャートを得る。なお、CuKα線としては、モノクロメーターにより単色化したものを使用した。
主な測定条件;
光学系 :平行ビーム光学系
ゴニオメータ :ローター水平型ゴニオメータ(TTR−2)
管電圧/電流 :50kV/300mA
測定法 :連続法
スキャン軸 :2θ/θ
測定角度 :10°〜50°
サンプリング間隔 :0.02°
スキャン速度 :4°/min
発散スリット :開放
発散縦スリット :10mm
散乱スリット :開放
受光スリット :1.00mm
X線回折チャートから黒鉛(002)面からの回折線のピーク位置を求め、フラッグの公式(下記式(15))より、黒鉛(002)面の面間隔(黒鉛d(002))を算出する。ここで、CuKα線の波長λは、0.15418nmである。
黒鉛d(002)=λ/(2×sinθ) ・・・(15)
【0441】
〔黒鉛粒子そのものの長径/短径の比〕
上記100個観察した粒子につき、最大径/最小径を算出し、その平均値を長径/短径の比とする。
【0442】
[0.5Aμmから5Aμmの範囲の粒径の割合]
上記平均粒径A算出の際に得た粒度分布から、粒径が0.5A以上、5A以下の黒鉛粒子の、すべての黒鉛粒子に対する体積比率をもとめた。
【0443】
[ラマンスペクトルの半値幅]
得られた黒鉛粒子を、ラマン分光器「LabRAM HR」(商品名、HORIBA JOBIN YVON)社製により、下記測定条件にて測定する。本測定において、1570から1630cm−1の領域に存在するピークの1/2に相当する高さにおけるラマンバンドのバンド幅を算出した。
主な測定条件;
レーザー :He−Neレーザー(ピーク波長632nm)
フィルター :D0.3
ホール :1000μm
スリット :100μm
中心スペクトル :1500cm−1
測定時間 :1秒×16回
グレーティング :1800
対物レンズ :×50
結果を表21に示す。
【0444】
【表21】

【0445】
<製造例F−3[弾性ローラ2の作製]>
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製棒に、カーボンブラックを10%含有させた熱硬化性接着剤を塗布し、乾燥したものを導電性基体として使用した。
エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGE三元共重合体、EO/EP/AGE=73mol%/23mol%/4mol%)100質量部に対して、下記成分を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
炭酸カルシウム 65質量部
脂肪族ポリエステル系可塑剤 8質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)(老化防止剤)0.5質量部
酸化亜鉛 2質量部
四級アンモニウム塩 2質量部
カーボンブラック(平均粒径:100nm、体積抵抗率:0.1Ω・cm)4.5質量部
これに、加硫剤として硫黄0.8質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部及びテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を添加し、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、弾性層用コンパウンドを得た。
上記導電性基体とともに、弾性層用コンパウンドをクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型し、次いで、電気オーブンの中、160℃で1時間、加硫及び接着剤の硬化を行った。ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを228mmとした後、外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行って、導電性基体上に弾性層を形成して、弾性層を有する弾性ローラ2を得た。なお、弾性ローラ2の弾性層のクラウン量(中央部と中央部から90mm離れた位置の外径の差)は120μmであった。
【0446】
<製造例F−4[弾性ローラ3の作製]>
NBR100質量部に対して、下記成分を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練し、更に、20℃に冷却した密閉型ミキサーでさらに20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。
四級アンモニウム塩 4質量部
炭酸カルシウム 30質量部
酸化亜鉛 5質量部
脂肪酸 2質量部
これに、加硫剤として硫黄1質量部、加硫促進剤としてTS3質量部を加え、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、弾性層用コンパウンドを得た。この後は、製造例F−3と同様にして、弾性ローラ3を作製した。
【0447】
<実施例D−1>
[表面層用塗布液の調製]
まず、化合物D−1を40%溶解させたイソドデカン溶液を用意した。
一方、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が14質量%となるように調整した。
この溶液714.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表22に記載の成分を加え、混合溶液を調整した。
【表22】

このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
(*1)(*2)は上記記載と同様である。
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液187.5gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて42時間分散した。分散した後、上記イソドデカン溶液を5.25g、黒鉛粒子1を2.1g、平均粒子径が6μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子2.1gを添加した。
アクリルポリオール固形分100質量部に対して、化合物D−1、黒鉛粒子1及びポリメチルメタクリレート樹脂粒子が、すべて10質量部相当量である。
その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。
【0448】
[帯電ローラの作製]
上記表面層用塗布溶液を用いて、製造例F−3で作製した弾性ローラ2に1回ディッピング塗布した。常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、弾性層上に表面層を形成した帯電ローラを得た。
ここで、ディッピング塗布は以下の通りである。浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させて行った。
【0449】
作製した帯電ローラについて、以下の評価を行った。
評価D−1(表面層中の黒鉛粒子についての測定)
(1)平均粒径A(μm)
(2)長径/短径の比
(3)0.5Aμmから5Aμmの範囲の粒径の割合
(4)黒鉛(002)面の面間隔
(5)ラマンスペクトルの半値幅
評価D−2(帯電ローラについての評価)
(1)表面粗さ(Rzjis及びRSm)
(2)電気抵抗値
(3)黒鉛粒子による凸部の有無の確認
評価D−3(耐久評価)
【0450】
以下に評価方法について説明する。
【0451】
評価D−1〔表面層に含まれる黒鉛粒子の形状特性〕
(1)〔平均粒径A〕
表面層のある任意の点を500μmにわたって、20nmずつ集束イオンビーム「FB−2000C」(商品名、株式会社日立製作所製)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして同じ粒子を撮影した画像を、20nm間隔で組み合わせ、立体的な粒子形状を算出する。この作業を、表面層の任意の100点で行った。
上記で得られた立体的粒子形状から、投影面積を算出し、得られた面積の円相当径を計算する。この円相当径から体積平均粒径を求め、それを平均粒径Aとする。また、上記した黒鉛粒子の粒度分布は、この体積平均粒径としての分布である。
【0452】
(2)〔表面層に含有する黒鉛粒子の長径/短径の比〕
上記立体的粒子形状の最大径/最小径の平均値である。
【0453】
(3)〔0.5Aμmから5Aμmの範囲の粒径の割合〕
上記(1)で得た黒鉛粒子の粒度分布から、粒径が0.5A以上、5A以下の黒鉛粒子の、全ての黒鉛粒子に対する体積比率を求めた。
【0454】
(4)〔黒鉛粒子及び表面層に含まれる黒鉛粒子の黒鉛(002)面の面間隔の測定〕
表面層に含まれる黒鉛粒子については、帯電ローラ表面から切り取った表面層を測定試料とする。また、黒鉛粒子は、そのまま無反射試料板に充填したものを測定試料とする。黒鉛粒子の測定試料を試料水平型強力X線回折装置「RINT/TTR−II」(商品名、株式会社リガク製)にてCuKα線を線源としたX線回折を、下記条件で測定し、X線回折チャートを得る。なお、CuKα線としては、モノクロメーターにより単色化したものを使用した。
主な測定条件;
光学系 :平行ビーム光学系
ゴニオメータ :ローター水平型ゴニオメータ(TTR−2)
管電圧/電流 :50kV/300mA
測定法 :連続法
スキャン軸 :2θ/θ
測定角度 :10°〜50°
サンプリング間隔 :0.02°
スキャン速度 :4°/min
発散スリット :開放
発散縦スリット :10mm
散乱スリット :開放
受光スリット :1.00mm
X線回折チャートから黒鉛(002)面からの回折線のピーク位置を求め、フラッグの公式(下記式(15))より、黒鉛(002)面の面間隔(黒鉛d(002))を算出する。ここで、CuKα線の波長λは、0.15418nmである。
黒鉛d(002)=λ/(2×sinθ) ・・・(15)
【0455】
(5)〔黒鉛粒子及び表面層に含まれる黒鉛粒子のラマンスペクトル半値幅の測定〕
表面層含有粒子については、表面層から切り取った黒鉛粒子を測定試料とする。また、黒鉛粒子は、そのまま測定試料とする。これらの試料を、ラマン分光器「LabRAM HR」(商品名、HORIBA JOBIN YVON)社製により、下記測定条件にて測定する。本測定において、1570から1630cm−1の領域に存在するピークの1/2に相当する高さにおけるラマンバンドのバンド幅を算出した。
主な測定条件;
レーザー :He−Neレーザー(ピーク波長632nm)
フィルター :D0.3
ホール :1000μm
スリット :100μm
中心スペクトル :1500cm−1
測定時間 :1秒×16回
グレーティング :1800
対物レンズ :×50
【0456】
評価D−2〔帯電ローラについての評価〕
(1)〔帯電ローラの表面粗さ〕
表面の十点平均粗さRzjis及び表面の凹凸平均間隔RSmの測定法について下記に示す。
JIS B0601−2001表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。Rzjisは、帯電ローラの表面を無作為に6箇所測定し、その平均値である。また、RSmは、帯電ローラを無作為に6箇所選び、そこにおける各10点の凹凸間隔を測定しその平均を測定箇所のRSmとし、当該帯電ローラのRSmとして、6箇所の平均値である。
【0457】
(2)〔帯電ローラの電気抵抗値の測定〕
図4Aおよび4Bに示す電気抵抗値測定用の機器を用いて、帯電ローラの抵抗を測定した。
まず、帯電ローラ5を軸受け33aと33bにより、円柱形金属32(直径30mm)に対して帯電ローラ5が平行になるように当接させる(図4A)。
ここで、当接圧はバネによる押し圧力により一端が4.9N、両端で合計9.8Nに調整した。
次に、図示しないモータにより周速45mm/secで駆動回転される円柱形金属32に従い帯電ローラ5が従動回転する。従動回転中、図4Bの様に、安定化電源34から直流電圧−200Vを印加し、帯電ローラ5に流れる電流値を電流計35で測定する。印加電圧、電流値から、帯電ローラの抵抗を算出した。帯電ローラは、N/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後に電気抵抗値を測定した。
【0458】
(3)〔黒鉛粒子に由来する凸部の確認〕
帯電ローラの表面を、レーザー顕微鏡「LSM5 PASCAL」(商品名、カール・ツアイス(Carl Zeiss)社製)を用いて、視野0.5mm×0.5mmで観察する。レーザーを視野内のX−Y平面でスキャンさせることにより、2次元の画像データを得る。更に、焦点をZ方向に移動させ、上記のスキャンを繰り返すことにより、3次元の画像データを得る。これにより、視野内に凸部が存在するかどうかを確認する。
更に、凸部に対して、励起させるレーザーの波長を変化させ、励起光のスペクトルを調べることにより、黒鉛粒子由来であるかどうかを同定することができる。
【0459】
評価D−3〔耐久評価〕
・評価の準備
図6に示す構成を有する電子写真装置であるカラーレーザープリンタ(商品名:LBP5400、キヤノン株式会社社製)を使用した。なお、図7に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記カラーレーザープリンタ用のプロセスカートリッジ(ブラック用)を用いた。上記プロセスカートリッジから付属の帯電ローラを取り外し、作製した帯電ローラをセットした。また、帯電ローラは、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた(図8)。23℃/50%RH環境で単色ベタ画像を50枚連続出力し、その後、ベタ白画像を1枚通紙する。この操作を10回繰り返して、合計で、500枚の単色ベタ画像を出力した。
【0460】
・耐久試験評価
図6に示す構成を有する電子写真装置としては、上記のカラーレーザープリンタを、220mm/sec及び70mm/sec(A4縦出力)で記録メディアを出力できるよう改造して使用した。画像の解像度は、600dpi、1次帯電は直流電圧−1000Vである。
なお、準備した帯電ローラを、新しいプロセスカートリッジ(上記プリンタ用)に装着して、耐久試験用のプロセスカートリッジとした。
このプロセスカートリッジを3つ用意し、各々を、(環境1)、(環境2)および(環境3)に24時間静置後、各プロセスカートリッジを上記電子写真装置に装填し、同環境下にて電子写真画像の形成を行った。
(環境1)15℃/10%RH環境、
(環境2)23℃/50%RH環境
(環境3)30℃/80%RH環境
【0461】
電子写真画像としては、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が、印字濃度1%となるように形成されるものを用いた。また、プロセススピードは、220mm/secとした。さらに、電子写真画像の形成は、2枚を出力する毎に電子写真感光体の回転を3秒かけて停止させる、いわゆる間欠モードにて行った。
【0462】
さらにまた、上記の電子写真画像を1千枚出力後に、2枚のハーフトーン画像を出力した。ここで、ハーフトーン画像とは、電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像をいう。また、2枚目のハーフトーン画像は、プロセススピードを110mm/secとして形成した。
【0463】
このようなハーフトーン画像の出力は、上記電子写真画像を3千枚出力後、および、6千枚出力後にも行った。このようにして、1つのプロセスカートリッジについて、合計で6枚のハーフトーン画像を得た。
【0464】
これらのハーフトーン画像を目視にて、スジ状、ドット状の欠陥の発生状況を観察し、以下の基準にて評価した。
ランク1;いずれのハーフトーン画像にも欠陥は認められない。
ランク2;軽微な欠陥が認められるハーフトーン画像があるものの、帯電ローラの回転周期に同期した欠陥の発生は認められない。
ランク3;帯電ローラの回転周期に同期した欠陥の発生が認められるハーフトーン画像があった。
ランク4;帯電ローラの回転周期に同期した明瞭な欠陥の発生が認められるハーフトーン画像が存在する。
【0465】
<実施例D−2>
実施例D−1と同じカプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が17質量%となるように調整した。この溶液588.24質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表23に記載の成分を加え、混合溶液を調整した。
【0466】
【表23】

このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
(*1)、(*2)は実施例D−1で用いたものと同じである。
【0467】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液195.6gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて48時間分散した。分散した後、化合物D−2を5.1g、黒鉛粒子2を0.64g、平均粒子径が10μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子を2.55g添加した。アクリルポリオール固形分100質量部に対して、化合物D−2が20質量部相当量、黒鉛粒子が2.5部相当量、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子が10質量部相当量である。その後、実施例D−1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0468】
<実施例D−3>
実施例D−1と同じカプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が17質量%となるように調整した。この溶液588.24質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表24に記載の成分を加え、混合溶液を調整した。
【0469】
【表24】

このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
(*1)、(*2)は実施例D−1で用いたものと同じである。
(*3)は、化合物D−3を30%溶解させたアセトン溶液を用意し、化合物D−3がアクリルポリオール固形分100質量部に対して、上記質量部になるように添加した。
【0470】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液195.6gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて48時間分散した。分散した後、黒鉛粒子3を5.1g、平均粒子径が3μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子を2.55g添加した。アクリルポリオール固形分100質量部に対して、黒鉛粒子3が、20質量部相当量、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子が、10質量部相当量である。その後、実施例D−1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0471】
<実施例D−4>
ポリビニルブチラールにエタノールを加え、固形分が20質量%となるように調整した。
この溶液500質量部(ポリビニルブチラール固形分100質量部)に対して、下記表25に記載の成分を加え、混合溶液を調整した。
【表25】

(*1)は実施例D−1で用いたものと同じである。
【0472】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液190.4gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散した後、黒鉛粒子4を6.4g、平均粒子径が6μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子を3.2g添加した。ポリビニルブチラール固形分100質量部に対して、黒鉛粒子が20質量部、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子が10質量部相当量である。その後、実施例D−1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0473】
<実施例D−5>
化合物D−5を40%溶解させたメチルエチルケトン溶液を用意した。実施例D−1と同様にして、ペイントシェーカーで48時間分散した後、上記メチルエチルケトン溶液を10.5g、黒鉛粒子5を2.1g添加した。アクリルポリオール固形分100質量部に対して、化合物D−5が20質量部相当量、黒鉛粒子5が10質量部相当量である。その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。これを用いた以外は、実施例D−1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0474】
<実施例D−6>
化合物D−6を40%溶解させたメチルエチルケトン溶液を用意した。実施例D−1と同様にして、ペイントシェーカーで48時間分散した後、上記メチルエチルケトン溶液を4.2g、黒鉛粒子6を4.2g添加した。アクリルポリオール固形分100質量部に対して、化合物D−6が8質量部相当量、黒鉛粒子6が20質量部相当量である。その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。これを用いた以外は、実施例D−1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0475】
<実施例D−7、D−9からD−11>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を、表26に示すように変更した以外は、実施例D−6と同様にして、帯電ローラを作製した。表26の質量部は前記アクリルポリオール固形分100質量部に対しての質量部である。
【0476】
<実施例D−8>
添加する化合物を、前記平均分子式(D−4A)で示す化合物に変更し、化合物の質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−7と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0477】
<実施例D−12>
添加する化合物を前記平均分子式(D−5A)で示す化合物に変更し、化合物の質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−8と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0478】
<実施例D−13及びD−15>
化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を、表26に示すように変更し、弾性ローラ2を弾性ローラ3に変更した以外は、実施例D−6と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0479】
<実施例D−14>
添加する化合物の質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−8と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0480】
<実施例D−16>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を、表26に示すように変更し、弾性ローラ2を弾性ローラ3に変更した以外は、実施例D−3と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0481】
<実施例D−17>
添加する化合物の質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−2と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0482】
<実施例D−18、D−19、D−21>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−2と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0483】
<実施例D−20>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−16と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0484】
<実施例D−22〜D−30>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−5と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0485】
<実施例D−31〜D−34>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−6と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0486】
<実施例D−35及びD−36>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−16と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0487】
<実施例D−37〜D−43>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−17と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0488】
<実施例D−44〜D−46>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更し、平均粒子径が6μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子を添加しなかった以外は、実施例D−4と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0489】
<実施例D−47及びD−48>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−4と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0490】
<実施例D−49、D−50>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表26に示すように変更した以外は、実施例D−44と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0491】
<比較例D−1及び比較例D−2>
化合物を添加せず、黒鉛粒子の種類及び質量部を表27に示すように変更した以外は、実施例D−50と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0492】
<比較例D−3及び比較例D−4>
添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表27に示すように変更した以外は、比較例D−1と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0493】
<比較例D−5>
添加する化合物の種類及び質量部を、表27に示すように変更し、黒鉛粒子を添加しなかった以外は、比較例D−1と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0494】
<比較例D−6>
ポリビニルブチラールの固形分が25質量%となるように調整し、添加する化合物の種類及び質量部、並びに、黒鉛粒子の種類及び質量部を表27に示すように変更した以外は、比較例D−1と同様にして、帯電ローラを作製した。
【0495】
上記各実施例および比較例に係る帯電ローラに関し、実施例D−1と同様にして評価した。その結果を下記表28〜32に示す。
【0496】
黒鉛粒子についての評価D−1(1)〜(5)についての結果、及び、帯電ローラについての評価D−2(1)〜(3)の結果を表28〜表30に示す。
【0497】
また、各実施例および比較例に係る帯電ローラの耐久性の評価結果を表31及び表32に示す。
【0498】
表28〜表32に示したように、本態様に係る帯電ローラは、スジ状画像、ポチ状画像及びガサツキ画像の発生が抑制され、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものである。
【0499】
【表26】

【0500】
【表27】

【0501】
【表28】

【0502】
【表29】

【0503】
【表30】

【0504】
【表31】

【0505】
【表32】

【符号の説明】
【0506】
1 導電性基体
2 弾性層
3 表面層
4 電子写真感光体
5 帯電部材(帯電ローラ)
6 現像ローラ
7 転写材
8 転写ローラ
9 定着装置
10 クリーニング部材
11 潜像形成装置
19 電源
21 中間層
22 第2の中間層
32 円柱形金属
33 軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に、表面層を有する帯電部材において、
該表面層は、下記式(1)で示すユニットを有する化合物を含有することを特徴とする帯電部材。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは式(2)で表わされる構造を有する基である。)
【化2】

(式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。aは0または1である。E1、E2およびE3は各々独立に下記式(3)で表わされる基を示す。)
【化3】

【化4】

【化5】

(式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。)
【化6】

(式(3)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。
Z1は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。
R3、R4、R6およびR7は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。
R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。)
【化7】

【化8】

【化9】

(式(15)〜式(17)中、R15、R16およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。)
【化10】

(式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。)
【化11】

(式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および前記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基を示す。
R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、前記式(18)で表わされる基および前記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
前記式(3)においてXが前記式(19)である場合、前記式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している前記式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または前記式(18)で示される基である。)
【化12】

(式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。)
【化13】

(式(21)中、R25、R26及びR27は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基を示す。)。
【請求項2】
前記式(3)中のhが0であり、Xが前記式(19)で表わされる基であって、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1以上3以下であり、かつ、前記式(19)中のrが0である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記化合物が、更に下記式(4)で示すユニットを有することを特徴とする請求項1または2に記載の帯電部材。
【化14】

(式(4)中、R2は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Jは水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、下記式(9)、下記式(10)、または下記式(11)で示される基である。)
【化15】

【化16】

【化17】

(式(9)〜式(10)中、R12およびR13は各々独立に炭素原子数1以上6以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および前記式(11)で表わされる基からなる群から選ばれる基を示す。式(11)中、R14は炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。tは1以上3以下の整数である。)
【請求項4】
前記式(3)のhおよびkが0、Xが前記式(19)で示す構造のうち、式(5)で示す構造の繰り返しが1回から3回であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【化18】

【請求項5】
前記式(3)のZ1が炭素原子数2以上6以下のアルキレン基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
前記表面層が黒鉛粒子を含み、該表面層は、該黒鉛粒子に由来する凸部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項7】
前記黒鉛粒子の平均粒径は、0.5μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の帯電部材。
【請求項8】
前記黒鉛粒子の長径/短径の比は、2以下であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の帯電部材。
【請求項9】
前記黒鉛粒子の平均粒径をAμmとすると、前記黒鉛粒子の80%以上が、
0.5A以上5A以下の範囲の粒径を有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項10】
前記黒鉛粒子は、黒鉛(002)面の面間隔が0.3361nm以上0.3450nm以下であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項11】
前記表面層はバインダー樹脂を含有し、該表面層の表面は、該バインダー樹脂からなる連続相と前記式(1)で示すユニットを有する化合物からなる不連続相とを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項12】
前記表面層がバインダー樹脂と前記式(1)で示すユニットを有する化合物からなる樹脂粒子とを含有し、該表面層の表面が該樹脂粒子に由来する凸部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の帯電部材が被帯電体と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
少なくとも、請求項13に記載のプロセスカートリッジ、露光装置及び現像装置を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項15】
帯電部材に直流電圧のみを印加して、被帯電体を帯電することを特徴とする請求項14に記載の電子写真装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2012−118510(P2012−118510A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220206(P2011−220206)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【特許番号】特許第4902810号(P4902810)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】