説明

帯電防止ノンマーキングタイヤ

【課題】床面上に望ましくないタイヤ跡が付かない、導電性の硬化性材料で充填された経路を備えるノンマーキングのトレッド表面を有するソリッドタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】導電手段15を備えたホイール用のソリッドタイヤであって、グランドに接触するために設けられた第1の外周面10を有し電気抵抗が1010Ωcmより大きい、円筒形の硬化した第1の層1と、導電手段15と電気的に接続し第1の層1を貫通して延びる導電経路6とを備え、導電経路6は、第1の層1よりも電気抵抗が小さい経路充填材16を備えたソリッドタイヤにおいて、第1の層1は2pphr未満のカーボンブラックを備え、第1の層1は30pphrを超える強化用充填材を備え、導電経路6は少なくとも150mm2の表面積を有するグランド接触面19を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されているソリッドタイヤを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準から、ソリッドタイヤが床上を移動しているときに床に接触するソリッドタイヤのトレッド表面を硬化可能または硬化されたノンマーキング物質で製造し、床面上に望ましくないタイヤ跡が付かないようにすることが知られている。カーボンブラックを含むゴムで製造されるタイヤは、一般に、床上を移動すると黒いマーキングを残す。このようなマーキングは、特に、例えば食品が処理されているエリアのように、高い衛生学的要求が課される状況においては望ましくない。また、技術水準からは、カーボンブラックを含むトレッド表面のための伝統的な混合物の一部を例えばシリカベースの混合物に置換してノンマーキング物質を得ることにより、床のマーキングを回避できることも知られている。
【0003】
しかしながら、このようなノンマーキング混合物で製造されるトレッド表面を有するタイヤは、ノンマーキングのトレッド表面の導電性が低いという欠点を呈する。カーボンブラック混合物を含むトレッド表面を有するタイヤの場合は、車両に蓄積される電荷がグランドへと十分に伝達され得るのに対して、トレッド表面がノンマーキング混合物で製造されるタイヤは、グランドと車両とのより高い電位差においてしか電荷をグランドへ伝達することができない。その結果、ノンマーキング混合物で製造されるトレッド表面を有するタイヤはしばしば火花放電を見せる。これは危険であり、特に爆発物または引火性材料を含む環境では望ましくない場合が多い。
【0004】
DE10154454は、この課題を解決する試みを開示し、かつタイヤの円周方向へ延設される内部リムを備えるソリッドタイヤを開示している。リムの外周面へは、第2の材料の層が設けられる。第2の材料による外周面は、第1の材料による層で覆われる。第1の材料による層の外周面はトレッド表面を形成し、かつグランドに接触するために設けられる。第2の材料はゴムとカーボンブラックとの混合物で製造されるのに対して、第1の材料はホワイトラバーシリカのノンマーキング混合物で製造される。第2の材料の電気抵抗は第1の材料の電気抵抗より小さく、第1の材料の電気抵抗は1010Ωcmより大きい。第2の層は第1の層を通ってトレッド表面まで突き出し、第2の層からグランドへ電荷を導く。突出部は、加硫金型における未硬化タイヤの硬化または加硫処理の間に製造される。加硫金型は、突起が望まれる位置に開口を備え、開口の形状は突出部断面の所望される形状に一致する。タイヤの加硫は、未加硫ゴムをそれが金型の内面に接触するまで拡張させる。開口の位置において、ホワイトラバーシリカは第2の層のゴムの拡張によって金型から押し出され、その結果、第1の層を貫通しトレッド表面まで第2の層による漏斗形の突出部が形成される。
【0005】
しかしながら、金型内の開口を介するゴムの拡張は制御が困難であり、結果的に、漏斗形の突出部の形状およびサイズは制御が困難である。金型の開口を介する拡張の所定の制御を可能にするために、金型の開口は20〜50mmに制限される。このようなタイヤの場合に生じる問題点を分析すると、グランド(地面)に接触する突出部の表面積は比較的小さい。これは、突出部を介して放電され得る電荷量を制限する。十分な放電を許容するためには、トレッド表面の外周に沿って複数の突出部が設けられる。しかしながら、突出部の数が増すほど、タイヤの品質は下がる。また、開口を介するゴムの拡張の間に望ましくない効果が発生し、タイヤの層構造が妨げられるという実質的なリスクもある。これは、トレッド表面の機械的特徴の局部的変異をもたらす場合があり、所望されるものより低い導電性を暗示しかつ使用に際して変化する磨耗特性を有する下等品質のタイヤを製造する場合がある。このタイヤを使用する場合は、グランドに接触する突出部の表面を含むトレッド表面が磨耗する。突出部は、その製造方法に起因して生得的に漏斗形であることから、これにより突出物の直径は増加し、よってタイヤが床に跡を付けるリスクが高まる。
【0006】
EP787604は、電気抵抗が1010Ωcmより上である外周トレッド表面を有するタイヤを開示している。電荷放電のための導電特性は、タイヤ材料を介して半径方向へタイヤのトレッド表面まで延びる経路の存在によってもたらされる。これらの経路には、10Ωcmより小さい電気抵抗を有するゴムおよび/またはプラスチックで製造されるポリマプラグが充填されている。これらの経路は、穴開け工具を使用して第1および第2の層を介して延設される経路を穿つことによって製造される。この後、射出デバイスを使用して加圧下でポリマプラグが経路内へ射出される。EP787604により開示されている、タイヤへ導電経路を装備するためのこのプロセスは、この方法が未硬化のソリッドタイヤへ適用されてもよく、前記タイヤは導電プラグの射出後に硬化されることを開示している。
【0007】
しかしながら、使用される射出プロセスに起因して、プラグの直径は1〜10mmに制限される。制限される直径は、プラグとグランドとの接触面積を制限し、よってポリマプラグの抵抗が増大する。EP787604によるタイヤにポリマプラグの数を過度に増やすことなく十分な放電能力を与えるために、トレッド表面の材料に含まれるカーボンブラックの量は、電荷の一部がトレッド表面を介して放電され得るように増大される。したがって、EP787604により開示されているタイヤのトレッド表面はまだ、ノンマーキングのトレッド表面より高いカーボンブラック濃度を含む。よって、EP787604は、ノンマーキングのトレッド表面を有するタイヤに関連するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、車両からの向上された電荷放電能力を示しかつより優れた制御可能なグランド接触表面積を有する経路を備えるノンマーキングのトレッド表面を有するソリッドタイヤを製造するための方法が必要とされている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、向上された電荷放電能力およびより制御可能なグランド接触表面積を有する導電性の硬化性材料で充填された経路を備えるノンマーキングのトレッド表面を有するソリッドタイヤを製造するための方法を提供することにある。
【0010】
これは、本願発明によれば、請求項1の特徴項に記載された技術的事項を備えた方法で達成される。
【0011】
さらに、本発明の方法は、未硬化の硬化性経路充填材の上記経路への充填は大気圧下で行われ、上記第1の層の材料は2pphr未満のカーボンブラックと少なくとも30pphrの強化用充填材とを含み、硬化後の経路充填材は、少なくとも150mmのグランド接触面面積を有することを特徴とする。
【0012】
本願発明者は、大気圧下で経路に未硬化材料を充填することにより、タイヤはより大面積のグランド接触面を有するプラグを備え得ること、特に、少なくとも150mmの表面積が達成できることを見出した。本願発明者は、驚くべきことに、望ましくない電荷を被充填経路を介して十分に放電するのに、単一のプラグで足り、マーキング発生のリスクを最小にするためにトレッド表面のカーボンブラックの量を最小レベルに抑え得ることを確認することに成功した。発明者はさらに、第1の層が2pphr(パーツ・パー・ハンドレッド)未満のカーボンブラックを含み、かつ、この第1の層が30pphrを超える強化用充填材を含むとき、第1の層がグランドにマークを残すリスクは相当低減することを発見した。発明者はさらに、強化用充填材のグランド接触面によって生じるマークのリスクは、グランド接触面を増大してもさほど高まりはしないことを発見した。
【0013】
さらなる好適実施形態は従属請求項に開示されている。
【0014】
本発明はさらに、上述したプラグを含んだタイヤに関する。
【0015】
本発明の方法についての他の詳細および利点は、添付の図面および発明の好適実施形態の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、導電手段15を備える車両用ホイール4のためのソリッドタイヤ5の製造方法に関する。ホイール4は、当業者には既知である任意の車両と共に使用することに適する。
【0017】
本発明によれば、未硬化のタイヤ5は、トレッド表面として機能しかつグランドに接触するために設けられる円筒状の第1の層1を備えて製造される。第1の層1はタイヤの軸の周りを外周方向に延設され、強化用充填材を含む未硬化の第1の硬化性材料で製造される。第1の材料は、2pphr未満のカーボンブラックと、少なくとも30pphrである強化用充填材とを含む。第1の層1のための未硬化の第1の硬化性材料を装填した後、経路6を生成するために、この第1の材料の一部を除去する。経路6は、第1の層の少なくとも第1の内周面11から、第1の層1を貫通して、第1の層の内周面11に対向する第1の層1の第1の外周面10における開口9まで延びる。次に経路6は、1010Ωcm未満の電気抵抗を有する未硬化の硬化性経路充填材16で充填される。最後に、タイヤ5および経路充填材が硬化される。硬化後、経路充填材16は、グランドに接触するために設けられかつトレッド表面を形成する第1の外周面10から、硬化された第1の内周面11まで延びる。このようにして、経路充填材16のグランド接触面19はホイール4の導電手段15へ電気的に接続可能である。
【0018】
エラストマの強化用充填材としてのカーボンブラックの使用は、技術上周知である。しかしながら、カーボンブラックは床上に望ましくない黒い跡を残すことから、その濃度は2pphr未満に制限され、カーボンブラックの他にノンマーキングの強化用充填材が使用される。ノンマーキングの強化用充填材としては、白色の強化用充填材、好適にはシリカが使用される。当業者であれば、ノンマーキング強化用充填材の正確な組成を決定することができる。
【0019】
しかしながら、タイヤ5におけるノンマーキング強化用充填材および低減された濃度の導電性カーボンブラックの使用は、電気抵抗を増大させる。第1の層1の材料の電気抵抗は、1010Ωcmより大きい。第1の材料は、好適には0.5pphr未満のカーボンブラックを含み、より好適には0.2pphr未満のカーボンブラックを含む。本件発明者は、カーボンブラックの量を低減することにより、硬化タイヤ5によってグランド上へ跡が残されるリスクは大幅に低減されることを発見している。第1の材料は、好適には30から60pphrまでの間、より好適には約50pphrである強化用充填材を含む。
【0020】
第1の層1の材料の正確な組成は本発明にとって不可欠な(つまり、決定的に重要な意味をもつ)ものではないが、第1の層1はグランドに接触することから、第1の層1の材料の組成は、好適には硬化後に達成されるべき機械的性質に応じて選ばれる。より好適には、第1の層1の材料の機械的性質は、タイヤ5が使用されるグランドに適合させられる。
【0021】
経路6を生成するための第1の層1の材料の部分的な除去は、当業者に知られる任意の方法で行うことができる。経路6は、例えば、切り取り、溶融、燃焼、押し出し、他で生成されてもよい。
【0022】
経路6は、好適にはタイヤ5の半径方向へ、より好適には第1の内周面11から第1の外周面10へ向かって直線的に延びる。さらに、第1の層1の一部は、第1の内周面11から第1の外周面10まで延びる真っ直ぐな、好適には半径方向に延びる経路の形で除去される。半径方向に延びる直線経路6は、望ましくない電荷の最適な放電をもたらすように思われる。最も好適には、経路6は、円形のグランド接触面19を有する円筒形である。しかしながら、経路6は他の任意の形をとってもよく、経路6は、例えば四角形のグランド接触面を有する梁形であってもよい。しかしながら本件発明者は、円筒形の経路6が経路充填材16による経路充填を容易にしかつタイヤ5のトレッド表面の均一な磨耗をもたらすことを発見している。
【0023】
経路6のグランド接触面19は、少なくとも150mmの表面積を有する。大きいグランド接触面積の存在は、車両から望ましくない電荷をグランドへ放電する可能性を高める。経路充填材19によって床上に跡が残されるリスクを制限するために、グランド接触面19は、好適には500mmより小さい表面積を有する。
【0024】
経路6への未硬化経路充填材16の充填は、好適には大気圧下で行われる。経路充填材16は、経路6へ例えば手動で挿入することが可能である。しかしながら、手動による装填は本発明にとって不可欠ではなく、経路充填材16は、例えば機械的に挿入されることも可能である。経路充填材16は、当業者によって適当であるとされる任意の硬化性材料であってもよいが、好適には、第1の層1の材料の組成および所望される機械的特性に応じて選ばれる。より好適には、経路充填材はカーボンブラックを含む。これは、カーボンブラックが、経路充填材を望ましくない電荷をグランドへ放電するに足る導電性にし、かつ優れた機械的性質を有する硬化された経路充填材をもたらすからである。経路充填材16は、好適には中実体の形態で、より好適には塑性変形可能な中実体で供給され、経路6へ挿入される。しかしながら、経路充填材のこの形態は本発明にとって不可欠なものではなく、例えば経路6の充填に使用されるペースト、経路6内へ注入される液体、およびその他の形態であってもよい。好適には、塑性変形可能な中実体は円筒状に形成される。しかしながら、例えば梁形の中実体等の他の任意の形態が使用されてもよい。中実体の大きさは、好適には経路6の大きさ(寸法)に合わせられる。好適には、中実体の大きさは、経路充填材16が経路6の境界を定める壁に接触し、よって経路充填材16が経路6の壁に付着するような大きさである。好適には、経路充填材16の大きさおよび/または経路充填材16の組成は、タイヤ5の硬化中は経路充填材16の少なくとも一部が経路6を画定する壁の材料の少なくとも一部へ流れ込み、かつ逆も発生して経路充填材16が永久的に第1の層1の材料へ接続されるように選ばれる。
【0025】
第1の層1は経路充填材16で充填される単一の経路6を含んでもよく、または、望ましくない電荷をグランドへ放電するタイヤ5の能力を高めることが望まれれば、複数のこのような経路6を含んでもよい。第1の層は、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれ以上の経路6を装備してもよい。これらの相互位置は本発明にとって不可欠なものではないが、個々のグランド接触面19の位置は、好適には互いに対して、かつタイヤ5のトレッド表面に対して対称であって、望ましくない電荷が一定間隔で放電されることが可能にされ、かつタイヤ5の均質性が増大される。こうして、トレッド表面の均一な磨耗が達成され得、タイヤ5の機械的性質の均一性は向上される。
【0026】
望ましくない電荷のグランドへの放電を、望ましくないタイヤ跡が床上へ残されるリスクを著しく高めることなく向上させるために、経路6のグランド接触面19の合計表面積は、好適にはトレッド表面の合計面積の1%未満である。より好適には、グランド接触面19の合計面積はタイヤ5のトレッド表面の合計面積の0.1%未満である。
【0027】
硬化の間、好適には、タイヤ5へ、溝によって区切られるリブを備えるトレッドパターンが設けられる。経路6の開口9は、好適には、経路6のグランド接触面19がグランドへより容易に接触できるようにトレッドパターンのリブ上へ設けられる。
【0028】
結果的に生じるタイヤ5は次に、経路充填材16がホイールの導電手段に、例えばホイールのリム8に接触するようにしてリム8へ取り付けられ、ホイール4が形成される。第1の層1をホイールのリム8へ取り付けるためには、例えば第1の層1をリム8の異なる部分間に型締めすること等の当業者に知られる任意の方法を使用することができる。
【0029】
導電手段15は、ホイールのリム8、エンジン部分、フレーム等、車両へ取り付けることのできる任意の導電手段を備える。
【0030】
経路充填材16は、好適には、タイヤ5を車両のホイール4へ取り付けた後に導電手段15へ電気的に接続される。より好適には、経路充填材16は、タイヤ5をホイールのリム8へ取り付けた後にリム8へ電気的に接続される。経路充填材16はリム8へ直接接触することができ、または、望ましくない電荷をグランドへ導く例えばタイヤ5の一部等の中間部分によってリム8へ電気的に接続されることができる。このような構成の例は、後に示す。
【0031】
アプリケーションによっては第1の層1の存在のみで十分であろうが、タイヤ5は2つ以上の層を備えてもよい。これにより、第1および第2の層の構築に使用される材料は、同じであっても異なってもよい。その場合の本発明によるタイヤは、タイヤ5の周方向に延設される円筒状の第2の層2を設け、その後、この第2の層2の上にトレッド表面を形成する第1の層1を設けることによって製造される。第2の層2は第2の外周面12を備え、第1の層1の内周面11は第2の外周面12に沿って走り(延び)、経路充填材16は少なくとも第2の外周面12まで延びる。第2の層2は、当業者に知られる任意の第2の材料を含むことができる。2つの層1、2を備えるタイヤ5は、後述するように、図5、6および7および図1〜4に示されている。
【0032】
経路6は、完全に第1の層1および第2の層2を貫通していてもよく、かつ導電手段15に直に接触してもよい。しかしながら、第2の層2の材料が望ましくない電荷を導電手段15から第2の層2の材料沿いに経路充填材16へ向かって導かれることを可能にする電気抵抗を有していれば、経路6は第2の外周面12まで延設されるだけで十分である場合がある。このような実施形態では、第2の層2の電気抵抗は、好適には第1の層1の材料の電気抵抗より小さい。このような実施形態を、例えば図5に示す。
【0033】
第1の好適な実施形態では、第2の層2の材料は円筒形の金属プレートを備える。この金属プレートは、タイヤの円周方向に延設されかつ、硬化したタイヤ5に取り付けられている。このタイヤは、車両のホイール4へ取り付けられると、例えばリム8等の車両の導電手段15に接触する。この第1の実施形態を図7に示す。本発明によるタイヤ5の別の好適な実施形態では、第2の層2の材料は、未硬化のタイヤ5へ付された時点では未硬化である硬化性材料を含む。第2の層の材料は、好適には、優れた動的および弾性特性を有する比較的柔らかいゴムを含む。第2の層2の材料は、グランドに接触しないことから例えばカーボンブラックを含むことができ、よって床に跡を残さないことが可能である。カーボンブラックの使用は、さらに、優れた導電特性と優れた動的および弾性特性とを結びつける。
【0034】
しかしながら、第2の層2の材料の導電性は、本発明にとって不可欠なものではない。第2の層2の第2の材料が望ましくない電荷をグランドへ放電できるほど導電性でない場合、または、このような電荷の増大された放電が望まれる場合、図6に示すように、経路6は第2の層2を介して延設され、かつ好適には第2の内周面13まで延設され、経路充填材16は、好適にはタイヤ5がリム8へ取り付けられると経路充填材が例えばリム8等の導電手段15へ接触するように第2の内周面13まで延設される。
【0035】
第2の層2はリム8へ取り付けられることが可能であり、例えば、金属プレートがリム8へ当業者に知られる任意の手段によって取り付けられることが可能である。例えば、図5および6は、第2の層2がリム8内へクランプされ得ることを示す。
【0036】
同様に、第2の層2の下には、タイヤ5の円周方向に第3の層3を設けることができ、第3の層3は、第3の材料と、第2の内周面13に沿って走る第3の外周面14とを備える。
【0037】
経路6は導電手段15に接触すべく第3の層3を貫通することが可能であるが、第3の層3の材料が望ましくない電荷を導電手段15からグランドへ向けて導くに足る導電性を有しかつホイール4の導電手段15と電気的接続状態にあれば、経路6は第3の外周面14まで延びるだけで足りる。より好適には、第3の層の材料は、未硬化のタイヤ5へ付された時点では未硬化である硬化性材料を含む。第3の層3の材料は、図1〜4に示すように、好適にはホイール4、より好適にはリム8への堅固な取付けを確実にするために硬質ゴムを含む。第3の層3の材料はグランドに接触しないことから、強化用充填材として、好適には望ましくない電荷を第2の層2の材料および/または経路充填材16に沿ってグランドへ導くことを許容するに足る導電性を第3の層3に与えるカーボンブラックが使用されてもよい。十分な導電性がある第2の層2と電気的に接続している十分な導電性がある第3の層3を、例えば図1に示す。望ましくない電荷は、導電手段15であるリム8から、経路6沿いに経路充填材16を介して第3の層3の材料へ、第2の層2の材料へ、そしてグランドまで導かれる。十分な導電性がない第2の層2と結合されている十分な導電性がある第3の層3を、図2に示す。経路6は、第2の層2を貫通して少なくとも第3の層3まで達している。望ましくない電荷は全て、導電手段15から第3の層3へ向かって、かつ経路6の経路充填材16沿いにグランドへ導かれる。
【0038】
第3の層3は、例えば金属プレートを備えてもよく、金属プレートは次にリム8へ、よって車両4の導電部分15へ取り付けられる。しかしながら、第3の層の材料に十分な導電性がある必要はない。経路6は、望ましくない電荷を導電手段15からグランドへ放電するために、図3に示すように、例えば第3の層3を完全に貫通してリム6に接触することができる。
【0039】
十分な導電性がある第2の層2と十分な導電性がない第3の層とを備えるタイヤ5を、図4に示す。この場合、望ましくない電荷はリム8等の導電手段15から経路6沿いに第2の層2の材料へ向かって放電され、第2の層2は電荷を第1の層1内の別の経路6へ導き、前記経路6は電荷をグランドへ導く。
【0040】
第1、第2および第3の層の製造に使用される材料は、同じであっても、異なってもよい。第3の層の下にも層を追加することができるが、これは本発明にとって不可欠ではなく、追加の層の形状は当業者が決定することができる。
【0041】
経路6は、望ましくない電荷を導電手段15からグランドまで導くために第1の層1の下に設けられる全ての層の中を延設されてもよいが、下にある層の材料が望ましくない電荷をグランドの方へ放電するに足る導電性を有する場合、経路6は、好適には、第1の層1のみを貫通して延びる。経路6の長さを制限すると、タイヤ5の層構造の均質性は向上し、よってタイヤ5の均一な磨耗が向上しかつタイヤ5の機械的性質の均一性が向上する。また、経路6の長さを短縮すると、層から除去される必要のある材料の量が減り、タイヤ5の製造に必要な時間が減りかつ除去に起因して生じる材料の損失も減る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】リムに3つの層が積層された本発明に係るタイヤの断面図である。
【図2】図1に係るタイヤの異なる実施形態の断面図である。
【図3】図1に係るタイヤの別の実施形態の断面図である。
【図4】図1に係るタイヤのさらに別の実施形態の断面図である。
【図5】2つの層を有する、本発明に係るタイヤの実施形態の断面図である。
【図6】図5に係るタイヤの別の実施形態の断面図である。
【図7】本発明に係るタイヤの別の実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電手段(15)を備えた車両用ホイール(4)のためのソリッドタイヤ(5)の製造方法であって、
タイヤの周方向に延び、かつ、強化用充填材を含み1010Ωcmを超える電気抵抗を有する未硬化の硬化性第1の材料からなる第1の層(1)を備える未硬化タイヤ(5)を作るステップと、
少なくとも上記第1の層(1)の第2の内周面(11)から、上記第1の層(1)を貫通して、上記第1の層(1)の第1の外周面(10)の方へと延びる経路(6)を生成するために、この第1の層(1)の一部を除去するステップと、
1010Ωcm未満の電気抵抗を有する未硬化の硬化性経路充填材(16)を上記経路(6)に充填するステップと、
上記未硬化タイヤ(5)を硬化するステップと
を備えて、
上記経路充填材(16)は、上記第1の内周面(11)から、グランドに接触するために設けられた上記第1の外周面(10)へと延び、かつ、上記経路充填材(16)は上記ホイール(4)の導電手段(15)へ電気的に接続可能である製造方法において、
上記経路(6)への未硬化の硬化性経路充填材(16)の充填は大気圧下で行われ、上記第1の層(1)の材料は2pphr未満のカーボンブラックと少なくとも30pphrの強化用充填材とを含み、硬化後の経路充填材(16)は、少なくとも150mmのグランド接触面(19)面積を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、上記第1の層(1)の材料は、0.5pphr未満のカーボンブラックを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法において、上記第1の層(1)の材料は、0.2pphr未満のカーボンブラックを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の製造方法において、上記第1の層(1)の材料は、60pphr未満の強化用充填材を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法において、上記第1の層(1)の材料は、50pphr未満の強化用充填材を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の製造方法において、上記経路(6)は、上記第1の内周面(11)から上記第1の外周面(10)へ向かって直線的に延びていることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法において、上記経路(6)は、上記第1の内周面(11)から上記第1の外周面(10)へ向かって半径方向に延びていることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1に記載の製造方法において、上記経路(6)は円筒形であることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1に記載の製造方法において、上記強化用充填材はノンマーキングの強化用充填材を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法において、上記強化用充填材はシリカを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法において、ノンマーキングの強化用充填材は、白色のノンマーキング強化用充填材を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1に記載の製造方法において、タイヤ(5)の周方向に延び第2の外周面(12)を備えた、第2の材料からなる円筒状の第2の層(2)を設け、上記第2の外周面に沿って、第1の材料からなる上記第1の層(1)を、この第1の層(1)の第1の内周面(11)が上記第2の外周面(12)に沿って走るように設け、上記第2の層(12)の材料は上記第1の層(1)の材料よりも電気抵抗が小さく、上記経路充填材(16)は少なくとも上記第2の外周面(12)まで延びていることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法において、上記第2の層の材料は、未硬化タイヤ(5)に付された時点では未硬化である硬化性材料を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造方法において、
上記第2の層(2)の材料は、円筒状の金属プレート(7)を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の製造方法において、
上記第2の層(2)は、上記外周面(12)に対向する側に第2の内周面(13)を備え、第3の材料からなる円筒状の第3の層(3)を上記第2の層(2)の下にタイヤ(5)の円周方向に設け、上記第3の層(3)は上記第2の内周面(13)に沿って走る第3の外周面(14)を備えており、上記第3の層(3)は上記第2の層(2)およびホイール(4)の導電手段に電気的に接続されていることを特徴とする製造方法。
【請求項16】
請求項13に従属する請求項15に記載の製造方法において、
上記経路(6)は、上記第3の層(3)から、上記第2の層(2)および第1の層(1)を通って、上記第1の外周面(10)における開口(9)まで延び、上記経路充填材(16)は、硬化後、上記第3の層(3)に電気的に接続されることを特徴とする製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1に記載の製造方法に従って製造された、導電手段(15)を備えたホイール用のソリッドタイヤであって、
第1の材料からなり、グランドに接触するために設けられた第1の外周面(10)を有し、電気抵抗が1010Ωcmより大きい、円筒形の第1の層(1)と、
上記導電手段(15)と電気的に接続し、上記第1の層(1)を貫通して延びる導電経路(6)とを備え、
上記導電経路(6)は、上記第1の層(1)よりも電気抵抗が小さい経路充填材(16)を備えたソリッドタイヤにおいて、
上記第1の層(1)は2pphr未満のカーボンブラックを備え、上記第1の層(1)は少なくとも30pphrの強化用充填材を備え、上記導電経路(6)は少なくとも150mmの表面積を有するグランド接触面(19)を有することを特徴とするソリッドタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−83479(P2009−83479A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−232190(P2008−232190)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(304054976)ソリディール・ホールディング・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】SOLIDEAL HOLDING SA
【Fターム(参考)】