説明

帯電防止性多層フィルム

【課題】 帯電防止性樹脂組成物からなる表層と、熱可塑性樹脂からなる基層とからなる従来の多層フィルムは、帯電防止性および機械特性に優れるとされるが、表層のベース樹脂のフィルム表面特性が変化し易く、また、イオン性不純物が溶出する等の
問題があった。
【解決手段】 ポリオキシエチレン鎖を有する帯電防止剤(A)、もしくは(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物からなる基層(X)の片面もしくは両面に、帯電防止剤を含有しない樹脂からなる表層(Y)を有してなることを特徴とする帯電防止性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性フィルムに関し、さらに詳しくは、包装材および床材用等に有用な帯電防止性多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンのブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマーのブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーおよびポリオレフィン樹脂を必須成分とする帯電防止性樹脂組成物からなる表層と、熱可塑性樹脂からなる基層とからなる多層フィルムが帯電防止性および強度に優れるものとして提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−321314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記フィルムでは、ブロックポリマーを含有する層を表層とするため、ベース樹脂であるポリオレフィン樹脂のフィルム表面特性が変化し易く、ヒートシール性が悪くなったり、印刷やコーティングがしにくくなるという問題や、ブロックポリマー由来のイオン性不純物が溶出することから、食品用途や、IC関連用途では悪影響を及ぼす可能性があるという問題がある。
本発明は、ベース樹脂の表面特性の変化が少なく、しかも低汚染性で永久帯電防止性に優れる樹脂フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、ポリオキシエチレン鎖を有する帯電防止剤(A)、もしくは(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物からなる基層(X)の片面もしくは両面に、帯電防止剤を含有しない樹脂からなる表層(Y)を有してなることを特徴とする帯電防止性多層フィルム;該帯電防止剤(A)、もしくは(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物と、帯電防止剤を含有しない樹脂とを共押出し、必要により一軸および/または多軸に延伸することを特徴とする帯電防止性多層フィルムの製造方法;並びに、該多層フィルムからなる包装材、被覆材、床材またはテープ材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多層フィルムは、下記の効果を奏する。
(1)永久帯電防止性および機械特性に優れる。
(2)表面特性の変化が少ない。
(3)イオン溶出量が少ないため、接触するものに対して低汚染性である。
なお、ここにおいて、「接触するもの」は多層フィルムの表層と接触するものを
意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における帯電防止性樹脂組成物は、ポリオキシエチレン鎖を有する帯電防止剤(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなるものである。
(A)には、ポリエーテルエステルアミド(A1)、ポリオレフィン(a21)のブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmのポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(a22)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A2)、ポリエーテルアミドイミド(A3)、エピハロヒドリン/アルキレンオキシド(以下、AOと略記)共重合体(A4)、ポリエーテルエステル(A5)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体(A6)、ポリエーテル基含有エチレン/酢酸ビニル共重合体[エチレン/ビニルアルコール共重合体のエチレンオキシド(以下、EOと略記)付加物](A7)およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
これらのうち、帯電防止性の観点から好ましいのは(A3)、(A4)、(A5)、およびさらに好ましいのは(A1)、(A2)である。
【0008】
(A1)としては、例えば特開平6−287547号公報および特公平4−5691号公報に記載のポリエーテルエステルアミドが挙げられる。該ポリエーテルエステルアミドには、ジカルボキシル基末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシル基末端を有するポリエーテルブロックから構成された共重縮合生成物等が含まれる。
これらのうち本発明の多層フィルムの耐熱性の観点から好ましいのは、数平均分子量〔以下Mnと略記、特に断りのない限り測定はGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法[GPC装置HLC−8220:商品名、東ソー(株)製]による〕200〜5,000のポリアミド(a1)とMn300〜5,000の、ビスフェノール化合物のAO付加物(b1)とから誘導されるポリエーテルエステルアミドである。
【0009】
(a1)には、(1)ラクタム開環重合体、(2)アミノカルボン酸の重縮合体および(3)ジカルボン酸とジアミンの重縮合体が含まれる。
(a1)を形成するアミド形成性モノマーとしては、(1)におけるラクタム[炭素数(以下、Cと略記)6〜12、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタム];(2)におけるアミノカルボン酸[C6〜12、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸];(3)におけるジカルボン酸〔脂肪族、芳香(脂肪)族および脂環式ジカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体[例えば酸無水物および低級アルキル(C1〜4)エステル]〕、ジアミン[脂肪族、芳香(脂肪)族および脂環式ジアミン]およびこれらの2種以上の混合物、が挙げられる。
【0010】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、C2〜20、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。
芳香(脂肪)族ジカルボン酸としては、C8〜20、例えばオルト−、イソ−およびテレフタル酸、ナフタレン−2,6−および−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、m−およびp−キシリレンジカルボン酸および3−スルホイソフタル酸のアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)塩が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、C5〜14、例えばシクロプロパンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸およびジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸のアミド形成性誘導体のうち酸無水物としては、上記ジカルボン酸の無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水フタル酸が挙げられ、低級アルキル(C1〜4)エステルとしては、上記ジカルボン酸の低級アルキルエステル、例えばアジピン酸ジメチル、オルト−、イソ−およびテレフタル酸ジメチルが挙げられる。
【0011】
ジアミンのうち、脂肪族ジアミンとしては、C6〜12、例えばヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンおよびデカメチレンジアミン;芳香(脂肪)族ジアミンとしては、C6〜20、例えばp−フェニレンジアミン、2,4−および2,6−トリレンジアミン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノフェニル)プロパン、m−およびp−キシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼンおよびビス(アミノブチル)ベンゼン;および脂環式ジアミンとしては、C5〜20、例えばシクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロオクタンジアミン、イソホロンジアミンおよび4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタンが挙げられる。
【0012】
これらのアミド形成性モノマーのうち多層フィルムの帯電防止性の観点から好ましいのは、(1)ではカプロラクタム、(2)では12−アミノドデカン酸および(3)ではアジピン酸/ヘキサメチレンジアミンである。
【0013】
(a1)は、C4〜20のジカルボン酸の1種以上を分子量調整剤として使用し、その存在下に上記アミド形成性モノマーを常法により開環重合あるいは重縮合させることによって得られる。該C4〜20のジカルボン酸としては、前記の(3)において例示したものが挙げられ、これらのうち帯電防止性の観点から好ましいのは脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩、さらに好ましいのはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
【0014】
上記分子量調整剤の使用量は、アミド形成性モノマーと分子量調整剤合計の重量に基づいて多層フィルムの帯電防止性、耐熱性の観点から好ましくは2〜80%、さらに好ましくは4〜75%である。
【0015】
(a1)のMnは後述するビスフェノール化合物のAO付加物(b1)との反応性と得られるポリエーテルエステルアミド(A1)の耐熱性の観点から好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜3,000である。
【0016】
(b1)を構成するビスフェノール化合物としては、C13〜20、例えばビスフェノールA、−Fおよび−Sが挙げられ、これらのうち後述する熱可塑性樹脂(B)に対する(A1)の分散性の観点から好ましいのはビスフェノールAである。
また、ビスフェノール化合物に付加させるAOとしては、C2〜12、例えばEO、プロピレンオキシド(以下、POと略記)、1,2−、2,3−および1,4−ブチレンオキシド、C5〜12のα−オレフィンのエポキシ化物、スチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち帯電防止性の観点から好ましいのはEOである。
(b1)のMnは、帯電防止性の観点から好ましくは300〜5,000、さらに好ましくは500〜4,000である。
【0017】
(A1)の重量に基づく(a1)の割合は、(A1)の帯電防止性と耐熱性の観点から、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜70%である。
【0018】
(A1)の製法としては、具体的には下記(1)および(2)が挙げられるが、特に限定されるものではない。
(1)アミド形成性モノマーとジカルボン酸(分子量調整剤)を反応させて(a1)を形成させ、これに(b1)を加えて、高温(160〜270℃)、減圧下(0.03〜3kPa)で重合反応させる方法
(2)アミド形成性モノマーおよびジカルボン酸(分子量調整剤)と(b1)の一部[割合は通常(b1)全体の5〜30重量%]を同時に反応槽に仕込み、水の存在下又は非存在下に、高温(160〜270℃)で加圧(0.1〜1MPa)反応させることによって(A1)の中間体を生成させ、その後減圧下(0.03〜3kPa)で残りの(b1)と重合反応させる方法
上記製法のうち、反応制御の観点から好ましいのは(1)である。
【0019】
(A1)の製法としては、上記の他に、(b1)の末端水酸基をアミノ基またはカルボキシル基に置換し、カルボキシル基またはアミノ基を末端に有するポリアミドと反応させる方法を用いてもよい。
(b1)の末端水酸基をアミノ基に置換させる方法としては、公知の方法、例えば水酸基をシアノアルキル化して得られる末端シアノアルキル基を還元してアミノ基とする方法[例えば、(b1)とアクリロニトリルを反応させ、得られるシアノエチル化物を水素添加する方法]等が挙げられる。
(b1)の末端水酸基をカルボキシル基に置換させる方法としては、酸化剤で酸化する方法[例えば、(b1)の水酸基をクロム酸により酸化する方法]等が挙げられる。
【0020】
上記の重合反応においては、通常用いられる公知のエステル化触媒が使用される。該触媒としては、アンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、スズ触媒(モノブチルスズオキシド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート等)、有機酸金属塩触媒[ジルコニウム有機酸塩(酢酸ジルコニル等)、酢酸亜鉛等]等が挙げられる。
触媒の使用量は、(a1)と(b1)の合計重量に基づいて、反応性および樹脂物性の観点から好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.2〜3%である。
【0021】
(A1)の還元粘度[ηSP/c、ウベローデ1A粘度計を用いて測定される値(単位はdl/g、以下同じ)、cはm−クレゾール溶液(25℃)の濃度(0.5重量%)]は、(A1)の耐熱性と後述する樹脂組成物の成形性の観点から好ましくは0.5〜4、さらに好ましくは0.6〜3である。なお、以下において還元粘度は数値のみで示す。
【0022】
本発明における(A2)は、ポリオレフィン(a2)のブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmのポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b2)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーであり、WO00/47652明細書に記載されているブロックポリマーが使用できる。
(a2)のブロックとしては、カルボニル基(好ましくはカルボキシル基)、水酸基および/またはアミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィンが使用できる。
【0023】
カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21)としては、両末端が変性可能なポリオレフィンを好ましくは主成分(含量50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、特に好ましくは80〜100重量%)とするポリオレフィン(a20)の両末端にカルボニル基を導入したものが挙げられる。
(a20)は、通常、両末端が変性可能なポリオレフィン、片末端が変性可能なポリオレフィンおよび変性可能な末端基を持たないポリオレフィンの混合物であるが、両末端が変性可能なポリオレフィンが主成分であるものが好ましい。
【0024】
(a20)としては、C2〜30のオレフィンの1種または2種以上の混合物の(共)重合(重合または共重合を意味する。以下同様。)によって得られるポリオレフィン[重合法で得られるもの]および高分子量のポリオレフィン(C2〜30のオレフィンの重合によって得られるポリオレフィン)の熱減成法によって得られる低分子量ポリオレフィン[熱減成法で得られるもの]が使用できる。
【0025】
C2〜30のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、C4〜30(好ましくは4〜12、より好ましくは4〜10)のα−オレフィン、およびC4〜30(好ましくは4〜18、より好ましくは4〜8)のジエン等が挙げられる。
C4〜30のα−オレフィンとしては、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセン等が挙げられ、ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよび1,11−ドデカジエン等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、C2〜12のオレフィン(エチレン、プロピレン、C4〜12のα−オレフィン、ブタジエンおよび/またはイソプレン等)、さらに好ましいのはC2〜10のオレフィン(エチレン、プロピレン、C4〜10のα−オレフィンおよび/またはブタジエン等)、特に好ましいのはエチレン、プロピレンおよび/またはブタジエンである。
【0026】
熱減成法によって得られる低分子量ポリオレフィンは、例えば、特開平3−62804号公報記載の方法等により容易に得ることができる。
重合法によって得られるポリオレフィンは公知の方法で製造でき、例えば、ラジカル触媒、金属酸化物触媒、チーグラー触媒およびチーグラー−ナッタ触媒等の存在下で上記オレフィンを(共)重合させる方法等により容易に得ることができる。
【0027】
ラジカル触媒としては、公知のもの、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルベンゾエート、デカノールパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、パーオキシ−ジ−カーボネートエステル、アゾ化合物およびγ−アルミナ担体に酸化モリブデンを付着させたもの等が挙げられる。
金属酸化物触媒としては、シリカ−アルミナ担体に酸化クロムを付着させたもの等が挙げられる。
チーグラー触媒およびチーグラー−ナッタ触媒としては、(C253Al−TiCl4等が挙げられる。
変性基であるカルボニル基の導入のしやすさ、および入手のしやすさの点で、熱減成法による低分子量ポリオレフィンが好ましい。
【0028】
(a20)のMnは帯電防止性の観点から好ましくは800〜20,000、さらに好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,200〜6,000である。
(a20)中の二重結合の量は、帯電防止性の観点から好ましくは、C1,000個当たり1〜40個、さらに好ましくは2〜30個、特に好ましくは4〜20個である。
1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性の観点および帯電防止性の観点から好ましくは1.1〜5、さらに好ましくは1.3〜3、特に好ましくは1.5〜2.5、最も好ましくは1.8〜2.2である。
熱減成法においては、Mnが800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合数が1.5〜2の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)参照〕。
【0029】
(a20)のMnの測定条件は以下の通りである。
装置 :高温ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel MIXED−B
カラム温度 :135℃
【0030】
カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21)としては、(a20)の両末端をα、β−不飽和カルボン酸(無水物)(α,β−不飽和カルボン酸、そのC1〜4のアルキルエステルまたはその無水物を意味する。以下、同様。)で変性した構造を有するポリオレフィン(a211)、(a211)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a212)、(a20)を酸化またはヒドロホルミル化変性した構造を有するポリオレフィン(a213)、(a213)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a214)およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0031】
(a211)は、(a20)をα,β−不飽和カルボン酸(無水物)により変性することにより得られる。
α,β−不飽和カルボン酸(無水物)としては、C3〜12のカルボン酸、例えばモノカルボン酸[(メタ)アクリル酸等]、ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等)、これらのアルキル(C1〜4)エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、イタコン酸ジエチル等]およびこれらの無水物が挙げられる。
これらのうち(a20)との反応性の観点から好ましいのは、ジカルボン酸、これらのアルキルエステルおよびこれらの無水物であり、さらに好ましいのはマレイン酸(無水物)およびフマル酸であり、特に好ましいのはマレイン酸(無水物)である。
【0032】
α、β−不飽和カルボン酸(無水物)の使用量は、(a20)の重量に基づき、繰り返し構造の形成性および帯電防止性の観点から好ましくは、0.5〜40%、さらに好ましくは1〜30%、特に好ましくは2〜20%である。
α,β−不飽和カルボン酸(無水物)による(a20)の変性は公知の方法、例えば、(a20)の末端二重結合に、溶液法または溶融法のいずれかの方法で、α,β−不飽和カルボン酸(無水物)を熱的に付加(エン反応)させることにより行うことができる。
溶液法としては、キシレン、トルエン等の炭化水素系溶媒の存在下、(a20)にα,β−不飽和カルボン酸(無水物)を加え、窒素等の不活性ガス雰囲気中170〜230℃で反応させる方法等が挙げられる。
溶融法としては、(a20)を加熱溶融した後に、α,β−不飽和カルボン酸(無水物)を加え、窒素等の不活性ガス雰囲気中170〜230℃で反応させる方法が挙げられる。これらの方法のうち、反応の均一性の観点から好ましいのは溶液法である。
【0033】
(a212)は、(a211)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性することにより得られる。
ラクタムとしては、C6〜12(好ましくは6〜8、さらに好ましくは6)のラクタム、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタムが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、C2〜12(好ましくは4〜12、さらに好ましくは6〜12)のアミノカルボン酸、例えばアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等)、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。
これらのうち、二次変性の反応性の観点から好ましいのは、カプロラクタム、ラウロラクタム、グリシン、ロイシン、ω−アミノカプリル酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸、さらに好ましいのはカプロラクタム、ラウロラクタム、ω−アミノカプリル酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、特に好ましいのはカプロラクタムおよび12−アミノドデカン酸である。
ラクタムまたはアミノカルボン酸の使用量は、(a211)の重量に基づいて、繰り返し構造の形成性および帯電防止性の観点から好ましくは0.5〜40%、さらに好ましくは1〜30%である。
【0034】
(a213)は、(a20)を酸素および/またはオゾンにより酸化またはオキソ法によりヒドロホルミル化してカルボニル基を導入することにより得られる。
酸化によるカルボニル基の導入は、公知の方法、例えば米国特許第3,692,877号明細書記載の方法で行うことができる。ヒドロホルミル化によるカルボニル基の導入は、公知の方法、例えば、Macromolecules、Vol.31、5943頁記載の方法で行うことができる。
【0035】
(a214)は、(a213)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性することにより得られる。ラクタムおよびアミノカルボン酸としては、(a212)で例示したものが挙げられその使用量は、(a213)の重量に基づいて、繰り返し構造の形成性および帯電防止性の観点から好ましくは0.5〜40%、さらに好ましくは1〜30%である。
【0036】
カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21)のMn[(a20)のMnと同じ条件で測定]は、耐熱性および後述する親水性ポリマー(b2)との反応性の観点から好ましくは800〜25,000、さらに好ましくは1,000〜20,000、特に好ましくは2,500〜10,000である。
また、(a21)の酸価は、(b2)との反応性の観点から好ましくは4〜280(mgKOH/g、以下数値のみを記載する。)、さらに好ましくは4〜100、特に好ましくは5〜50である。
【0037】
ポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b2)としては、ポリエーテルジオール(b21)およびポリエーテルジアミン(b22)が使用できる。
【0038】
(b21)としては、ジオール(b01)または2価フェノール(b02)にEOを必須成分として含むAO(C3〜12)を付加反応させることにより得られる構造のもの、例えば、一般式:H(OA1mO−E1−O(A1O)m'Hで示されるもの等が挙げられる。
式中、E1は、(b01)または(b02)から水酸基を除いた残基を表し、A1は、ハロゲン原子を含んでいてもよいエチレン基、又はエチレン基を必須として含むC2〜12(好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜4)のアルキレン基;mおよびm’は1〜300、好ましくは2〜250、さらに好ましくは10〜100の整数を表し、mとm’とは同一でも異なっていてもよい。また、m個の(OA1)とm’個の(A1O)とは同一でも異なっていてもよく、また、これらがEOを必須成分とする2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック、ランダムまたはこれらの組合せのいずれでもよい。
【0039】
ジオール(b01)としては、C2〜12(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜8)の2価アルコール(脂肪族、脂環式および芳香脂肪族2価アルコール等)およびC1〜12の3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式2価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロオクタンジオールおよび1,3−シクロペンタンジオール等が挙げられる。
芳香脂肪族2価アルコールとしては、キシリレンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオールおよび1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0040】
3級アミノ基含有ジオールとしては、脂肪族または脂環式1級モノアミン(C1〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8)のビスヒドロキシアルキル(アルキル基のC1〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8)化物および芳香(脂肪)族1級モノアミン(C6〜12)のビスヒドロキシアルキル(アルキル基のC1〜12)化物等が挙げられる。
モノアミンのビスヒドロキシアルキル化物は、公知の方法、例えば、モノアミンとC2〜4のAO[EO、PO、ブチレンオキシド等]とを反応させるか、モノアミンとC1〜12のハロゲン化ヒドロキシアルキル(2−ブロモエチルアルコール、3−クロロプロピルアルコール等)とを反応させることにより容易に得ることができる。
【0041】
脂肪族1級モノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピルアミン、n−およびi−アミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、2−および3−アミノヘプタン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミンおよびドデシルアミン等が挙げられる。
脂環式1級モノアミンとしては、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
芳香(脂肪)族1級モノアミンとしては、アニリンおよびベンジルアミン等が挙げられる。
【0042】
2価フェノール(b02)としては、C6〜18(好ましくは8〜18、さらに好ましくは10〜15)、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等)および多環2価フェノール[ビスフェノール(ビスフェノールA、−F、−S、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル等)、縮合多環2価フェノール(ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等)等]が挙げられる。
【0043】
(b01)および(b02)のうち帯電防止性の観点から好ましいのは、2価アルコールおよび多環2価フェノール、さらに好ましいのは脂肪族2価アルコールおよびビスフェノール、特に好ましいのはエチレングリコールおよびビスフェノールAである。
【0044】
(b01)または(b02)に付加反応させるAOとしては、EO以外にはC3〜12のAO(PO、1,2−、1,4−、2,3−および1,3−ブチレンオキシドおよびこれらの2種以上の混合物)等が挙げられるが、必要によりその他のAOおよび置換AOを併用してもよい。
その他のAOおよび置換AOとしては、C5〜12のα−オレフィンのエポキシ化物、スチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリンおよびエピブロモヒドリン等)等が挙げられる。他のAOおよび置換AOのそれぞれの使用量は、全AOの重量に基づいて帯電防止性の観点から好ましくは30%以下、さらに好ましくは0または25%以下、特に好ましくは0または20%以下である。
【0045】
AOの付加モル数は、ポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b2)の体積固有抵抗値の観点から好ましくは、(b01)または(b02)の水酸基1個当り1〜300モル、さらに好ましくは2〜250モル、特に好ましくは10〜100モルである。2種以上のAOを併用するときの結合形式はランダムおよび/またはブロックのいずれでもよい。
【0046】
AOの付加反応は、公知の方法、例えばアルカリ触媒(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)の存在下、100〜200℃、圧力0〜0.5MPaGの条件で行なうことができる。
ポリエーテルジオール(b21)中のオキシアルキレン単位の含量は、(b21)の重量に基づいて親水性ポリマー(b2)の体積固有抵抗値の観点から好ましくは5〜99.8%、さらに好ましくは8〜99.6%、特に好ましくは10〜98%である。また、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位の含量は、ポリオキシアルキレン鎖の重量に基づいて(b2)の体積固有抵抗値の観点から好ましくは5〜100%、さらに好ましくは10〜100%、特に好ましくは50〜100%、最も好ましくは60〜100%である。
【0047】
ポリエーテルジアミン(b22)としては、ポリエーテルジオール(b21)の水酸基をアミノ基(1級または2級アミノ基)に変性した構造のもの、例えば、一般式:RNH−A2−(OA1)mO−E1−O(A1O)m'−A2−NHRで示されるものが挙げられる。従って、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位の含量は(b21)の場合と同じであり、(b22)中のオキシアルキレン単位の含量は対応する(b21)中のオキシアルキレン単位の含量と同じである。
式中の記号E1は前記に同じで、(b01)または(b02)から水酸基を除いた残基を表し、A1は、ハロゲン原子を含んでいてもよいC2〜12(好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜4)のアルキレン基;mおよびm’は前記に同じで、1〜300、好ましくは2〜250、さらに好ましくは10〜100の整数を表し、mとm’とは同一でも異なっていてもよい。A2はハロゲン原子を含んでいてもよいC2〜12(好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜4)のアルキレン基を表し、A1とA2とは同じでも異なってもよいがどちらかにC2のアルキレン基を必須として含む。RはHまたはC1〜4(好ましくは1または2)のアルキル基を表す。
(b22)は、(b21)の両末端水酸基を公知の方法によりアミノ基に変えることにより、容易に得ることができる。
水酸基をアミノ基に変える方法としては、公知の方法、例えば、(b21)の水酸基をシアノアルキル化して得られる末端シアノアルキル基を還元してアミノ基とする方法[例えば、(b21)とアクリロニトリルとを反応させ、得られるシアノエチル化物に水素添加する方法]、(b21)とアミノカルボン酸またはラクタムとを反応させる方法、および(b21)とハロゲン化アミンをアルカリ条件下で反応させる方法等が挙げられる。
(b2)として上述したものは、2種以上を任意に併用してもよい。
【0048】
ポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b2)の体積固有抵抗値(後述の方法で、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される値)は1×105〜1×1011Ω・cmであり、樹脂物性および帯電防止性の観点から好ましくは1×106〜1×1010Ω・cm、さらに好ましくは1×107〜1×109Ω・cmである。
(b2)のMn[(a20)のMnと同じ条件で測定]は、耐熱性およびポリオレフィン(a2)との反応性の観点から好ましくは、150〜20,000、さらに好ましくは300〜18,000、特に好ましくは1,000〜15,000、最も好ましくは1,200〜8,000である。
【0049】
ブロックポリマー(A2)は、上記ポリオレフィン(a2)のブロックと、ポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するものであり、これらのうち帯電防止性および透明性の観点から好ましいのは下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマーである。
【0050】
【化1】

【0051】
式(1)において、nは2〜50(好ましくは3〜40、より好ましくは4〜30、特に好ましくは5〜25)の整数;R1およびR2の一方はHで他方はHまたはメチル基;yは15〜800(好ましくは20〜500、より好ましくは30〜400)の整数;E1は、ジオール(b01)又は2価フェノール(b02)から水酸基を除いた残基;XおよびX’は、下記一般式(2)、(3)および対応する(2’)、(3’)から選ばれる基、すなわち、Xが一般式(2)で示される基のとき、X’は一般式(2’)で示される基であり、一般式(3)と(3’)についても同様の関係である。
【0052】
【化2】

【0053】
;一般式(2)、(3)および対応する(2’)、(3’)式において、Rは前記(b22)において述べたものと同じでHまたはC1〜4(好ましくは1または2)のアルキル基、R3はC1〜11(好ましくは2〜11、さらに好ましくは5〜11)の2価の炭化水素基、R4はHまたはC1〜10(好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6)のアルキル基;rは1〜20(好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10)の整数であり、uは0または1;Q、Q’、TおよびT’は次式で示される基
【0054】
【化3】

【0055】
;上記の一般式(4)、(5)および対応する(4’)、(5’)式中、R5はH又はC1〜10(好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6)のアルキル基、R6はHまたはメチル基、tはR6がメチル基のとき1、Hのとき0である。
【0056】
一般式(1)で示される繰り返し単位中の{ }内のポリエーテルセグメント{(OA1)mO−E1−O(A1O)m'}は、前記ポリエーテルジオール(b21)またはポリエーテルジアミン(b22)に由来する構造であり、式中のE1、A1、mおよびm’は前記と同様である。
【0057】
一般式(1)において、Xが一般式(2)で示される基、およびX’が一般式(2’)で示される基であるブロックポリマーには、(a211)および/または(a212)と(b21)とを重合反応させることにより得られる(A21)と、(a211)および/または(a212)と(b22)とを重合反応させることにより得られる(A22)とが含まれる。
(A21)には(a211)と(b21)とを組み合わせた(A211)、(a212)と(b21)とを組み合わせた(A212)、および(A211)と(A212)の混合物が含まれる。また、同様に(A22)には(a211)と(b21)とを組み合わせた(A221)、(a212)と(b22)とを組み合わせた(A222)、および(A221)と(A222)の混合物が含まれる。
【0058】
(A21)は、公知の方法、例えば(a211)および/または(a212)に、(b21)を加えて減圧下、好ましくは200〜250℃で重合(重縮合)反応を行う方法、または、一軸もしくは二軸の押出機を用い、好ましくは160〜250℃、滞留時間0.1〜20分で重合する方法により製造することができる。
上記の重合反応では、公知の触媒、例えばアンチモン触媒(三酸化アンチモン等);スズ触媒(モノブチルスズオキシド等);チタン触媒(テトラブチルチタネート等);ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート等);有機酸金属塩触媒[ジルコニウム有機酸塩(酢酸ジルコニル等)、酢酸亜鉛等];およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ジルコニウム触媒およびジルコニウム有機酸塩、より好ましいのは酢酸ジルコニルである。
触媒の使用量は、(a211)および/または(a212)と(b21)の合計重量に基づいて、好ましくは0.001〜5%、さらに好ましくは0.01〜3%である。
【0059】
(A21)のうち、(A212)は(a211)を前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸で二次変性した後に、(b21)を加えて反応させてもよいし、(a211)とラクタムもしくはアミノカルボン酸を(b21)の存在下反応させ、続いて(b21)と反応させて製造してもよい。
【0060】
(A22)は、(A21)における(a211)および/または(a212)と(b21)の組み合わせを、(a211)および/または(a212)と(b22)の組み合わせに代える以外は(A21)と同様の方法で製造することができる。
また、(A22)のうち、(A222)は(b22)を前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸で二次変性した後に、これと(a211)とを反応させて製造してもよい。
【0061】
一般式(1)において、Xが一般式(3)で示される基、およびX’が一般式(3’)で示される基であるブロックポリマーには、(a213)(r=1の場合)および/または(a214)(r≧2の場合)と(b21)とを重合反応させることにより得られる(A23)と、(a213)および/または(a214)と(b22)とを重合反応させることにより得られる(A24)とが含まれる。
(A23)には(a213)と(b21)とを組み合わせた(A231)、(a214)と(b21)とを組み合わせた(A232)、および(A231)と(A232)の混合物が含まれる。また、同様に(A24)には(a213)と(b22)とを組み合わせた(A241)、(a214)と(b22)とを組み合わせた(A242)、および(A241)と(A242)の混合物が含まれる。
(A23)および(A24)は(A21)や(A22)と同様の方法で製造することができる。
【0062】
ブロックポリマー(A2)を構成する(b2)の量は、帯電防止性の観点から好ましくは、(a2)と(b2)との合計重量に基づいて20〜90%、より好ましくは25〜80%、特に好ましくは30〜70%である。
【0063】
ブロックポリマー(A2)のMn[(a20)のMnと同じ条件で測定]は、帯電防止性の観点から好ましくは、2,000〜60,000、さらに好ましくは5,000〜40,000、特に好ましくは8,000〜30,000である。
【0064】
(A2)の構造において、(a2)のブロックと、(b2)のブロックとの繰り返し単位の平均繰り返し数(Nn)は、帯電防止性の観点から好ましくは2〜50、さらに好ましくは2.3〜30、特に好ましくは2.7〜20、最も好ましくは3〜10である。
Nnは、(A2)のMnおよび1H−NMR分析によって求めることができる。
例えば、(a211)のブロックと(b21)のブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する(A21)の場合は、1H−NMR分析において、4.0〜4.1ppmのエステル結合{−C(C=O)−OCH2−}のプロトンに帰属されるシグナル、および3.2〜3.7ppmのポリエチレングリコールのプロトンに帰属されるシグナルが観測できることから、これらのプロトン積分値の比を求めて、この比とMnとからNnを求めることができる。
【0065】
(A2)の末端は、(a2)由来のカルボニル基、アミノ基および/または無変性ポリオレフィン末端(何ら変性がなされていないポリオレフィン末端、すなわち、アルキル基またはアルケニル基)、あるいは(b2)由来の水酸基および/またはアミノ基のいずれかである。これらのうち反応性の観点から末端として好ましいのはカルボニル基、アミノ基、水酸基、さらに好ましいのはカルボニル基、水酸基である。
【0066】
本発明におけるポリエーテルアミドイミド(A3)としては、例えば特公平7−119342号公報および特開平06−172609公報に記載の、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテルアミドイミドが挙げられる。これらのうち耐熱性の観点から好ましいのは、カプロラクタム(a31)、アミノ基と反応して少なくとも1個のイミド環を形成しうる3価もしくは4価の芳香族ポリカルボン酸(a32)およびポリエチレングリコールもしくは少なくとも50重量%のポリエチレングリコールとポリエチレングリコール以外のポリアルキレングリコールとの混合物(a33)から誘導され、(a33)の含有量が30〜85重量%、30℃での還元粘度が1.5〜4であるポリエーテルアミドイミドが挙げられる。
【0067】
(a32)には、アミノ基と反応して少なくとも1個のイミド環を形成しうる3価もしくは4価の芳香族ポリカルボン酸およびその酸無水物が含まれる。
3価の芳香族ポリカルボン酸としては、C9〜18、例えば1,2,4−トリメリット酸、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸、2,6,7−ナフタレントリカルボン酸、3,3’,4−ジフェニルトリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4−トリカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4−トリカルボン酸等、およびこれらの酸無水物が挙げられる。
4価の芳香族ポリカルボン酸としては、C10〜20、例えばピロメリット酸、ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ベンゾフェノン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ジフェニルスルホン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸等、およびこれらの酸無水物が挙げられる。
【0068】
(a33)には、ポリエチレングリコールもしくは少なくとも50重量%のポリエチレングリコールとポリエチレングリコール以外のポリアルキレングリコールとの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールのMnは特に制限はないが、(A3)の帯電防止性付与および製造上の観点から好ましくは500〜5,000、さらに好ましくは800〜3,000である。
【0069】
ポリエチレングリコール以外のポリアルキレン(アルキレンのC3〜18)グリコールとしては、Mnが500〜5,000の、例えばポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、変性ポリアルキレングリコールが挙げられる。
変性ポリアルキレングリコールとしては、C2〜10のAOのうちの少なくとも2種の付加重合物(付加形式はランダム、ブロックのいずれでもよい)が挙げられる。
該AOのうち、帯電防止性付与の観点から好ましいのはEO、PO、1,3−プロピレンオキシド、2−メチル−1,3−プロピレンオキシド、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンオキシド、1,5−ペンタメチレンオキシド、1,6−ヘキサメチレンオキシドである。
【0070】
(a32)と(a33)の反応における当量比は、好ましくは0.9/1〜1.1/1、樹脂物性の観点からさらに好ましくは0.95/1〜1.05/1である。
【0071】
(A3)を構成するポリアミドイミド含量は、(A3)の帯電防止性付与および後述する成形体の耐水性の観点から、好ましくは15〜70重量%、さらに好ましくは30〜65重量%である。
また、(A3)中のポリアミドイミド部分のMnは、(A3)の耐熱性および後述する成形体の機械的強度の観点から好ましくは500〜3,000、さらに好ましくは800〜2,000である。
【0072】
(A3)の製法としては次のような方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。即ち、(a31)、(a32)および(a33)を、(a32)と(a33)の当量比が好ましくは0.9〜1.1(さらに好ましくは0.95〜1.05)になる割合で、また(a31)、(a32)および(a33)の合計重量に対して、(a33)が帯電防止性の観点から好ましくは30〜85%、さらに好ましくは35〜70%となるよう混合し、生成する重合体の水分含有率を0.1〜1重量%に保ちながら、好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは180〜280℃で重縮合させる方法である。
重縮合させる際には、反応温度を段階的に昇温させることもできる。この際、一部のカプロラクタム(a31)は未反応で残るが、後述する成形品の樹脂物性の観点から減圧下に留去して反応混合物から除いておくことが望ましい。未反応のカプロラクタムを除いた後の反応混合物は、必要に応じて減圧下(0.03〜3kPa)、好ましくは200〜300℃(さらに好ましくは230〜280℃)で重合することによりさらに高分子量の重合体にすることができる。
【0073】
(A3)の還元粘度は、樹脂組成物の成形性の観点から好ましくは1.5〜4、より好ましくは1.7〜3.5である。
【0074】
本発明におけるエピハロヒドリン/AO共重合体(A4)としては、例えば特公平7−84564号公報に記載の、ポリオキシエチレン鎖を有するエピハロヒドリン/AO共重合体が挙げられる。
エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンおよびエピフルオロヒドリンが挙げられ、反応性、コストの観点から好ましいのはエピクロルヒドリンである。
AOとしては、C2〜4、例えばEO、PO、テトラヒドロフランが挙げられる。
(A4)には、エピハロヒドリンと、1,2−エポキシドモノマー[特にアルキル(C2〜4)グリシジルエーテル]およびAO(特にEOおよびPO)から選ばれる1種または2種以上からなるコモノマーとの共重合体も含まれる。
エピハロヒドリンとAOとの重量比は、通常5/95〜95/5、帯電防止性の付与性の観点から好ましくは10/90〜60/40である。ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位の含量は好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%である。
(A4)のうち、樹脂物性、帯電防止性付与の観点から好ましいのはエピクロルヒドリン/EO(重量比50/50)の共重合体である。
【0075】
(A4)の製造に際しては、公知の触媒、例えば、有機アルミニウム化合物[トリエチルアルミニウム等]、または重合性を向上させるために有機アルミニウム化合物に水を反応させた触媒を用いて塊状重合または溶液重合により容易に製造できる。水と有機アルミニウム化合物とのモル比(水/有機アルミニウム化合物)は、重合性の観点から、通常0.1/1〜1/1、好ましくは0.3/1〜0.7/1である。
(A4)のMnは樹脂物性および成形性の観点から好ましくは30,000〜100,000、さらに好ましくは60,000〜90,000である。
【0076】
本発明におけるポリエーテルエステル(A5)としては、例えば、特公昭58−19696号公報記載の、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテルエステルが挙げられる。
(A5)は、ポリエーテルジオールまたはコポリエーテルジオールからなるセグメントを有するポリエステルであり、例えば前記ポリエーテルエステルアミド(A1)またはポリエーテルアミドイミド(A3)の構成成分として例示した(a12)および(a33)の1種以上と、(A1)の構成成分として例示したジカルボン酸もしくはこれらのエステル形成性誘導体[低級(C1〜4)アルキルエステル、酸無水物等]の1種以上との重縮合反応、あるいは上記ジオール成分とポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等とのエステル交換反応により得ることができる。
(A5)のポリエーテルセグメント含量は、(A5)の帯電防止性付与および樹脂組成物の成形性の観点から好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%、(A5)の融点[測定は示差走査熱量測定法(以下、DSC法と略記)による]は耐熱性の観点から好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120〜210℃である。ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位の含量は好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%である。
【0077】
本発明の多層フィルム中の基層(X)は、帯電防止剤(A)、もしくは(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物から形成される。
該帯電防止性樹脂組成物は、(A)と(B)を溶融混合することにより製造され、(A)からなる分散相と(B)からなる連続相からなる。溶融混合する方法は後記する。(B)中の(A)の含有量は要求される性能に応じて種々変えることができるが、(A)と(B)の合計重量に基づいて、十分な帯電防止性および機械強度を付与する観点から好ましくは30〜80%、さらに好ましくは50〜70%である。
【0078】
熱可塑性樹脂(B)としては、具体的にはビニル樹脂〔ポリオレフィン樹脂(B1)[例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂等]、ポリアクリル樹脂(B2)[例えばポリメタクリル酸メチル等]、ポリスチレン樹脂(B3)[ビニル基含有芳香族炭化水素単独またはビニル基含有芳香族炭化水素と、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルおよびブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを構成単位とする共重合体、例えばポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体(AN樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)等]等〕;ポリエステル樹脂(B4)[例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール/エチレングリコール/テレフタル酸共重合物、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等];ポリアミド樹脂(B5)[例えばナイロン66、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12等];ポリカーボネート樹脂(B6)[例えばポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂アロイ等];ポリアセタール樹脂(B7)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0079】
これらのうち(A)の(B)への分散のしやすさの観点から好ましいのは、ビニル樹脂[(B1)、(B2)および(B3)]、(B4)、(B5)、(B6)および(B7)からなる群より選ばれる1種または2種以上、さらに好ましいのはビニル樹脂[(B1)、(B2)および(B3)]および/またはポリアミド樹脂(B5)、さらに好ましいのは(B1)および/または(B3)である。
【0080】
ビニル樹脂[(B1)〜(B3)]は、以下のビニルモノマーを公知の重合法(ラジカル重合法、チーグラー触媒重合法、メタロセン触媒重合法等)により(共)重合させることにより得られる。
【0081】
ビニルモノマーとしては、不飽和炭化水素(脂肪族炭化水素、芳香環含有炭化水素、脂環式炭化水素等)、アクリルモノマー、その他の不飽和モノ−もしくはジカルボン酸およびその誘導体、不飽和アルコールのカルボン酸エステル、不飽和アルコールのアルキルエーテル、ハロゲン含有ビニルモノマー並びにこれらの2種以上の組合せ (ランダムおよび/またはブロック)等が挙げられる。
【0082】
脂肪族炭化水素としては、C2〜30のオレフィン[エチレン、プロピレン、 C4〜30のα−オレフィン(1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、 1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等)等]、C4〜30のジエン[アルカジエン(ブタジエン、イソプレン等)、シクロアルカジエン(シクロペンタジエン等)等]等が挙げられる。
【0083】
芳香環含有炭化水素としては、C8〜30の、スチレンおよびその誘導体 、例えばo−、m−およびp−アルキル(C1〜10)スチレン(ビニルトルエン等)、α−アルキル(C1〜10)スチレン(α−メチルスチレン等)およびハロゲン化スチレン(クロロスチレン等)が挙げられる。
【0084】
アクリルモノマーとしては、C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸およびその誘導体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の誘導体としては、例えばアルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリ レート、ブチル(メタ)アクリレート等]、モノ−およびジ−アルキル(C1〜4)アミノアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート[メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0085】
その他の不飽和モノ−およびジカルボン酸としては、C2〜30(好ましくは3〜20、より好ましくは4〜15)の不飽和モノ−およびジカルボン酸、例えば、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸およびイタコン酸等が挙げられ、その誘導体としては、C5〜30、例えばモノ−およびジアルキル(C1〜20)エステル、酸無水物(無水マレイン酸等)および酸イミド(マレイン酸イミド等)等が挙げられる。
【0086】
不飽和アルコールのカルボン酸エステルとしては、不飽和アルコール[C2〜6、例えばビニルアルコール 、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜4、例えば酢酸、プロピオン酸)エステル(酢酸ビニル等)が挙げられる。
不飽和アルコールのアルキルエーテルとしては、上記不飽和アルコールのアルキル(C1〜20)エーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等)が挙げられる。
ハロゲン含有ビニルモノマーとしては、C2〜12、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン およびクロロプレンが挙げられる。
【0087】
ポリオレフィン樹脂(B1)としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体[共重合比(重量比)=0.1/99.9〜99.9/0.1]、プロピレンおよび/またはエチレンと他のα−オレフィン(C4〜12)の1種以上との共重合体(ランダムおよび/またはブロック付加)[共重合比(重量比)=99/1〜5/95]、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)[共重合比(重量比)=95/5〜60/40]、エチレン/エチルアクリレート共重合体(EEA)[共重合比(重量比)=95/5〜60/40]等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレンおよび/またはエチレンとC4〜12のα−オレフィンの1種以上との共重合体[共重合比(重量比)=90/10〜10/90、ランダムおよび/またはブロック付加]である。
【0088】
(B1)のメルトフローレート(以下、MFRと略記)は、樹脂物性、帯電防止性付与の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。(B1)のMFRは、JIS K6758に準じて(ポリプロピレンの場合は230℃、荷重2.16kgf、ポリエチレンの場合は190℃、荷重2.16kgf)測定される。
【0089】
ポリアクリル樹脂(B2)としては、例えば前記アクリルモノマー〔アルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等〕の1種以上の(共)重合体[ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等]およびこれらのモノマーの1種以上と共重合可能な前記ビニルモノマーの1種以上との共重合体[アクリルモノマー/ビニルモノマー共重合比(重量比)は樹脂物性の観点から好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは50/50〜90/10][但し、(B1)に含まれるものは除く]が含まれる。
【0090】
(B2)のMFRは、樹脂物性の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。(B2)のMFRは、JIS K7210(1994年)に準じて[ポリアクリル樹脂(B3)の場合は230℃、荷重1.2kgf]測定される。
(B2)の結晶化度は、帯電防止性の観点から好ましくは0〜98%、さらに好ましくは0〜80%、特に好ましくは0〜70%である。
結晶化度は、X線回折、赤外線吸収スペクトル等の方法によって測定される〔「高分子の固体構造−高分子実験学講座2」(南篠初五郎)、42頁、共立出版1958年刊参照〕。
【0091】
ポリスチレン樹脂(B3)としては、ビニル基含有芳香族炭化水素単独又はビニル基含有芳香族炭化水素と、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルおよびブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを構成単位とする共重合体が挙げられる。
ビニル基含有芳香族炭化水素としては、C8〜30の、スチレンおよびその誘導体 、例えばo−、m−およびp−アルキル(C1〜10)スチレン(ビニルトルエン等)、α−アルキル(C1〜10)スチレン(α−メチルスチレン等)およびハロゲン化スチレン(クロロスチレン等)が挙げられる。
(B3)の具体例としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、スチレン/アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)[共重合比(重量比)=70/30〜80/20]、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)[共重合比(重量比)=60/40〜90/10]、スチレン/ブタジエン共重合体[共重合比(重量比)=60/40〜95/5]、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)[共重合比(重量比)=(20〜30)/(5〜40)/(40〜70)]、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)[共重合比(重量比)=(20〜30)/(5〜40)/(40〜70)]、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(MABS樹脂)[共重合比(重量比)=(48〜70)/(0〜5)/(2〜20)/(25〜50)]等が挙げられる。
【0092】
(B3)のMFRは、樹脂物性、帯電防止性の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。(B3)のMFRは、JIS K6871(1994年)に準じて(ポリスチレン樹脂の場合は230℃、荷重1.2kgf)測定される。
【0093】
ポリエステル樹脂(B4)としては、芳香環含有ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなど)および脂肪族ポリエステル(ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン等)が挙げられる。
【0094】
(B4)の固有粘度[η]は、樹脂物性、帯電防止性の観点から好ましくは0.1〜4、より好ましくは0.2〜3.5、特に好ましくは0.3〜3である。ここにおいて[η]は、ポリマーについて、0.5重量%オルトクロロフェノール溶液を用い、25℃でウベローデ1A粘度計を用いて測定される値(単位はdl/g)であり、以下同様である。なお、[η]は以下において数値のみで示す。
【0095】
ポリアミド樹脂(B5)としては、ラクタム開環重合体(B51)、ジアミンとジカルボン酸の脱水重縮合体(B52)、アミノカルボン酸の自己重縮合体(B53)およびこれらの重(縮)合体を構成するモノマー単位が2種類以上である共重合ナイロン等が挙げられる。
【0096】
(B51)におけるラクタムとしては、前記(a1)で例示したものが挙げられ、(B51)としては、ナイロン4、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン12などが挙げられる。
(B52)におけるジアミンとジカルボン酸としては、前記(a1)で例示したものが挙げられ、(B52)としては、ヘキサンメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610等が挙げられる。
(B53)におけるアミノカルボン酸としては、前記(a1)で例示したものが挙げられ、(B53)としては、アミノエナント酸の重縮合によるナイロン7、ω−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、12−アミノドデカン酸の重縮合によるナイロン12等が挙げられる。
【0097】
(B5)の製造に際しては、分子量調整剤を使用してもよく、分子量調整剤としては、(a1)で例示したジカルボン酸および/またはジアミンが挙げられる。
分子量調整剤としてのジカルボン酸のうち、好ましいのは脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩、さらに好ましいのはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
また、分子量調整剤としてのジアミンのうち、好ましいのはヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミンである。
【0098】
(B5)のMFRは、樹脂物性、帯電防止性の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。(B5)のMFRは、JIS K7210(1994年)に準じて(ポリアミド樹脂の場合は、230℃、荷重0.325kgf)測定される。
【0099】
ポリカーボネート樹脂(B6)としては、ビスフェノール系ポリカーボネート、例えばビスフェノール化合物とホスゲン又は炭酸ジエステルとの縮合物が挙げられる。
ビスフェノール化合物としては、C12〜20、例えばビスフェノールA、−F、−S、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタンが挙げられ、これらのうち分散性の観点から好ましいのはビスフェノールAである。
(B6)のMFRは、樹脂物性、帯電防止性の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。(B6)のMFRは、JIS K7210(1994年)に準じて(ポリカーボネート樹脂の場合は280℃、荷重2.16kgf)測定される。
【0100】
ポリアセタール樹脂(B7)としては、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンのホモポリマー(ポリオキシメチレンホモポリマー)、およびホルムアルデヒド又はトリオキサンと環状エーテル[前記AO(EO、PO、ジオキソラン等)等]との共重合体〔ポリオキシメチレン/ポリオキシエチレンコポリマー[ポリオキシメチレン/ポリオキシエチレン(重量比)=90/10〜99/1のブロック共重合体等]等〕が挙げられる。
(B7)のMFRは、樹脂物性、帯電防止性の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。(B7)のMFRは、JIS K7210(1994年)に準じて(ポリアセタール樹脂の場合は190℃、荷重2.16kgf)測定される。
(B7)の固有粘度[η]は、樹脂物性、帯電防止性の観点から好ましくは0.1〜4、さらに好ましくは0.2〜3.5、特に好ましくは0.3〜3である。
【0101】
本発明における帯電防止性樹脂組成物には、(A)と(B)との相溶性を向上させる目的で、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基およびポリオキシアルキレン鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基もしくはポリマー鎖を有する変性ビニル共重合体(C)を含有させてもよい。(C)の使用量は、樹脂物性の観点から好ましくは、(A)と(B)の合計重量に基づいて0.1〜15%、さらに好ましくは1〜10%である。
【0102】
上記(C)を構成するビニル単量体(c1)には、(A)に存在するカルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはアミド基と反応性もしくは親和性の官能基を有するビニル単量体が挙げられ、例えば特開平3−258850号公報記載のカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、ポリオキシアルキレン鎖およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の官能基またはポリマー鎖を有するビニル単量体が含まれる。
【0103】
カルボキシル基(無水物基を含む)を有するビニル単量体としては、モノカルボン酸[C3〜15、例えば(メタ)アクリル酸および4−ビニル−安息香酸]、ジカルボン酸[C4〜15、例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸およびシトラコン酸]およびジカルボン酸モノエステル[上記ジカルボン酸のモノアルキル(C1〜8またはそれ以上、例えばメチル、エチル、ブチルおよびオクチル)エステル、例えばマレイン酸−、フマル酸−、イタコン酸−およびシトラコン酸モノアルキルエステル]等が挙げられる。
エポキシ基を有するビニル単量体としては、C5〜12、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルおよびイタコン酸グリシジルが挙げられる。
アミノ基を有するビニル単量体としては、C5〜16、例えば(メタ)アクリル酸のアルキル(C1〜15)エステル誘導体[(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等]、ビニルアミン誘導体[N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン等]およびアミノスチレン[p−アミノスチレン等]が挙げられる。
【0104】
ヒドロキシル基を有するビニル単量体としては、C4〜15、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル単量体としては、ポリアルキレン(C2〜4)グリコール(Mn150〜3,000)の(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
これらのビニル単量体のうち、(C)と(A)との反応性もしくは親和性の観点から好ましいのは、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基および/またはポリオキシアルキレン鎖を有するビニル単量体、さらに好ましいのはカルボキシル基、エポキシ基および/またはアミノ基を有するビニル単量体、特に好ましいのはエポキシ基を有するビニル単量体である。
【0105】
(C)は、(c1)を必須構成単位とし、必要により、これらに他のビニル単量体(c2)を共重合させることにより得られる。(c2)としては特に限定はなく、(c1)以外のものが使用できる。
(c2)としては、芳香族不飽和炭化水素[C8〜20、例えばスチレン]、シアン化ビニル[C3〜6、例えば(メタ)アクリロニトリル]、(メタ)アクリレート[C4〜30、例えばメタアクリル酸メチル]、マレイミド[C5〜30、例えばN−メチルマレイミド]、オレフィン[C2〜12、例えばエチレン、プロピレンおよびC4〜12のαオレフィン]およびハロゲン含有ビニル単量体(C2〜12、例えば塩化ビニル)等が挙げられる。なお、(C)には前記熱減成法で得られるポリオレフィンに上記(c1)を付加反応させて、後変性したものも含まれる。
【0106】
(c2)は熱可塑性樹脂(B)の種類に応じて選択することができ、例えば(B)がポリスチレン樹脂(B3)の場合に(A)と(B3)の相溶性の向上を図るためには、(B3)の構成単位となるビニル単量体(スチレン等)を共重合させることが好ましく、また、(B)がアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)である場合は、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニルおよび/またはスチレン等の芳香族不飽和炭化水素を共重合させることが好ましい。
【0107】
(C)を製造する方法としては通常用いられる方法、例えば公知の重合開始剤存在下での、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法が挙げられる。これらのうちプロセスの容易さの観点から好ましいのは溶液重合法である。
(C)のMnは特に制限はないが、樹脂組成物中 への分散性、樹脂物性の観点から好ましくは1,000〜200,000、さらに好ましくは5,000〜100,000である。
(C)を添加する方法については特に限定はなく、(A)、(B)もしくはこれらの混合物のいずれに添加してもよいが、樹脂組成物中 への(C)の効果的な分散の観点から、(A)中に予め分散させておく方法が好ましく、さらに好ましいのは(A)の製造時[(A)の原料中、(A)の製造途中および/または(A)の製造後]に(C)を予め添加し分散させておく方法である。
【0108】
本発明における帯電防止剤(A)、もしくは(A)を(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物で基層(X)を形成するに際しては本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止性をさらに向上させる目的で、必要により(A)以外のその他の帯電防止剤(D)を併用してもよい。
(D)には、界面活性剤(D1)[アニオン界面活性剤(D11)、カチオン界面活性剤(D12)、ノニオン界面活性剤(D13)、両性界面活性剤(D14)等]、(D1)中の塩以外のその他の塩(D2)およびイオン性液体(D3)が含まれる。
【0109】
アニオン界面活性剤(D11)としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
(D11)を構成するカチオンとしては、塩を形成するものであれば特に制限はなく、通常、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム等が挙げられる。
【0110】
カルボン酸塩としては、C8〜20の高級脂肪酸(オクタン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸等)の塩が挙げられる。
【0111】
硫酸エステル塩としては、C8〜20の高級アルコール(オクチルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール等)の硫酸エステル塩および高級アルキルエーテル[上記の高級アルコールのEO(1〜50モル)付加物]の硫酸エステル塩、ロート油、ヒマシ油、硫酸化油(硫酸化牛油、硫酸化落花生油、硫酸化マッコー鯨油等の硫酸化油等)、硫酸化脂肪酸エステル(硫酸化オレイン酸ブチル、硫酸化リシノレイン酸ブチル等)の塩およびC8〜20の硫酸化オレフィンの塩等が挙げられる。
【0112】
スルホン酸塩としては、C8〜20のアルキル(オクチル、ラウリル、オクタデシル、エイコシル等)基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、C8〜20のアルキル(上記のもの)スルホン酸塩、C10〜20の(アルキル)ナフタレン(ジ)スルホン酸塩(1−ナフタレンスルホン酸塩、1,4−ナフタレンジスルホン酸塩、2−メチル−1−ナフタレンスルホン酸塩、2−メチル−1、4−ナフタレンジスルホン酸塩等)、C8〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、イゲポンT型スルホン酸塩およびC8〜20のアルキル基を有するスルホコハク酸塩ジアルキルエステル(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム等)、ポリビニルスルホン酸塩(ポリスチレンスルホン酸の塩等)等が挙げられる。
リン酸エステル塩としては、C8〜20の高級アルコール(前記のもの)のリン酸モノ−およびジ−エステル塩等が挙げられる。
【0113】
これらの(D11)うち、帯電防止性の観点から好ましいのは、高級脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩およびこれらの混合物、さらに好ましいのはステアリン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩およびこれらの混合物、特に好ましいのはステアリン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムおよびこれらの混合物である。
【0114】
カチオン界面活性剤(D12)としては、第4級アンモニウム塩および/またはホスホニウム塩、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0115】
【化4】

【0116】
式中、Jは、窒素原子またはリン原子(好ましくは窒素原子);R7およびR10は、C1〜20のアルキル基またはC6〜20の(置換)フェニル基;R8およびR9は、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合またはウレア結合を有していてもよく、また互いに結合して環を形成していてもよいC1〜20のアルキレン基または(置換)フェニレン基;M-はアニオン;vは1〜10(好ましくは1〜6)の整数である。
【0117】
(D12)を構成するアニオンとしては、(D12)の空気中での熱減量開始温度[熱減量開始温度は、JIS K7120(1987年)の8.項に記載のTG曲線の解析方法に準じて測定される値]が200℃以上となるものが使用でき、超強酸[Hammettの酸度関数(−H0)が少なくとも12]の共役塩基およびそれ以外のアニオンが挙げられる。なお、R7、R8、R9およびR10にβ水素がない場合(例えば、テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム)は、ホフマン分解が起こり得ないので、超強酸の共役塩基およびそれ以外のアニオンのいずれも使用できるが、R7、R8、R9およびR10にβ水素が有る場合(例えば、トリメチルエチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム)は、超強酸の共役塩基が好ましい。
【0118】
超強酸の共役塩基以外のアニオンとしては、例えばハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)イオン、アルキル(C1〜12)ベンゼンスルホン酸(p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等)イオンおよびポリ(n=1〜25)フルオロアルカンスルホン酸(ウンデカフルオロペンタンスルホン酸等)イオンが挙げられる。
【0119】
超強酸としては、プロトン酸およびプロトン酸とルイス酸との組み合わせから誘導されるもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
超強酸としてのプロトン酸としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン、過塩素酸、フルオロスルホン酸、アルカン(C1〜30)スルホン酸[メタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等)、ポリ(n=1〜30)フルオロアルカン(C1〜30)スルホン酸(トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸等)、ホウフッ素酸および四フッ化ホウ素酸が挙げられる。
【0120】
ルイス酸と組合せて用いられるプロトン酸としては、例えばハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等)、過塩素酸、フルオロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0121】
ルイス酸としては、例えばIIIA族元素(ホウ素、タリウム等)のフッ化物(三フッ化ホウ素、五フッ化タリウム等)、VA族元素(リン、アンチモン、ヒ素等)のフッ化物(五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素等)、VB族元素(タンタル等)のフッ化物(五フッ化タンタル等)およびこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち帯電防止性の観点から好ましいのは三フッ化ホウ素および五フッ化リンである。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であるが、これらの組み合わせからなる超強酸としては、例えばテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、六フッ化タリウム酸、六フッ化タンタル酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化タリウムスルホン酸、六フッ化タンタルスルホン酸、四フッ化ホウ素酸、六フッ化リン酸、塩化三フッ化ホウ素酸および六フッ化ヒ素酸等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物でもよい。
【0122】
(D12)を構成するアニオンのうち、帯電防止性の観点から好ましいのは、超強酸の共役塩基(プロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸とルイス酸との組合せからなる超強酸の共役塩基)、より好ましいのはプロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸とルイス酸のうちの三フッ化ホウ素および/または五フッ化リンとからなる超強酸の共役塩基である。
【0123】
(D12)のうち、第4級アンモニウム塩の具体例を(1)超強酸の共役塩基以外のアニオンとの塩と、(2)超強酸(プロトン酸、プロトン酸とルイス酸との組み合わせ)の共役塩基との塩に分けて例示する。
(1)超強酸の共役塩基以外のアニオンとの塩
第4級アンモニウム、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウムおよびトリメチル−2−エチルヘキシルアンモニウム等と、超強酸の共役塩基以外のアニオン、例えばフルオライド、クロライド、ブロマイド、p−トルエンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸等とを組み合わせた塩等が挙げられる。
【0124】
(2−1)超強酸(プロトン酸)の共役塩基との塩
上記の第4級アンモニウムと、超強酸(プロトン酸)の共役塩基、例えばメタンスルホン酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸およびトリデカフルオロヘキサンスルホン酸とを組み合わせた塩等が挙げられる。
【0125】
(2−2)超強酸(プロトン酸とルイス酸の組み合わせ)の共役塩基との塩
上記の第4級アンモニウムと、超強酸(プロトン酸とルイス酸の組み合わせ)の共役塩基、例えばテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、六フッ化タリウム酸、六フッ化アンチモン酸、塩化三フッ化ホウ素酸および六フッ化タリウムスルホン酸等とを組み合わせた塩等が挙げられる。
【0126】
(D12)のうち、ホスホニウム塩の具体例を(3)超強酸の共役塩基以外のアニオンとの塩と、(4)超強酸(プロトン酸、プロトン酸とルイス酸の組み合わせ)の共役塩基との塩に分けて例示する。
(3)超強酸の共役塩基以外のアニオンとの塩
ホスホニウム、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、トリメチルベンジルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、ジデシルジメチルホスホニウムおよびトリメチル−2−エチルヘキシルホスホニウム等と、超強酸の共役塩基以外のアニオン、例えばフルオライド、クロライド、ブロマイド、p−トルエンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸等とを組み合わせた塩等が挙げられる。
【0127】
(4−1)超強酸(プロトン酸)の共役塩基との塩
上記のホスホニウムと、超強酸(プロトン酸)の共役塩基、例えばメタンスルホン酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸およびトリデカフルオロヘキサンスルホン酸等とを組み合わせた塩等が挙げられる。
【0128】
(4−2)超強酸(プロトン酸とルイス酸の組み合わせ)の共役塩基との塩
上記のホスホニウムと、超強酸(プロトン酸とルイス酸の組み合わせ)の共役塩基、例えばテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、六フッ化タリウム酸、六フッ化アンチモン酸、塩化三フッ化ホウ素酸および六フッ化タリウムスルホン酸とを組み合わせた塩等が挙げられる。
【0129】
上記(1)〜(4)のうち帯電防止性の観点から好ましいのは、超強酸の共役塩基(プロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸とルイス酸との組合せからなる超強酸の共役塩基)を有するもの、さらに好ましいのはプロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸とルイス酸のうち三フッ化ホウ素および/又は五フッ化リンとからなる超強酸の共役塩基を有するものである。
これらは、単独でも2種以上の混合物でもよく、超強酸の共役塩基以外のアニオンと超強酸の共役塩基との混合物であってもよい。超強酸の共役塩基以外のアニオンと超強酸の共役塩基との混合物の場合、その割合(重量比)は帯電防止性の観点から好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは70/30〜30/70である。
【0130】
ノニオン界面活性剤(D13)としては、ポリエチレングリコール型[高級アルコール(前記に同じ)のEO(1〜50モル)付加物、高級脂肪酸(前記に同じ)のEO(1〜30モル)付加物、高級アルキルアミン(C8〜18、例えば1−オクチルアミン、1−ドデシルアミン等)のEO(1〜50モル)付加物、ポリプロピレングリコール(Mn1,000〜3,000)のEO(5〜150モル)付加物等];多価アルコール型[ポリエチレンオキシド(重合度n=3〜300)、グリセリンの脂肪酸(C4〜30、例えばカプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等)エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸(上記のもの)エステル、ソルビトール若しくはソルビタンの脂肪酸(上記のもの)エステル、多価アルコール(C3〜12、例えばグリセリン、ソルビタン等)のアルキル(C1〜30)エーテル、アルカノールアミン(C2〜20)の脂肪酸(上記のもの)アミド等]等が挙げられる。
【0131】
両性界面活性剤(D14)としては、アミノ酸型[高級アルキル(C8〜18)アミノプロピオン酸塩等]、ベタイン型[高級アルキル(C8〜18)ジメチルベタイン、高級アルキル(C8〜18)ジヒドロキシエチルベタイン等]等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0132】
その他の塩(D2)としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)またはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)とプロトン酸との塩が挙げられる。プロトン酸としては、前記ルイス酸との組み合わせに用いられるものとして例示したもの等が挙げられる。
【0133】
(D2)の具体例としては、フッ化物(フッ化リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、塩化物(塩化リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、臭化物(臭化リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、ヨウ化物(ヨウ化リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、過塩素酸塩(過塩素酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、フッ化スルホン酸塩(フルオロスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、トリフルオロメタンスルホン酸塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、ペンタフルオロエタンスルホン酸塩(ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、ノナフルオロブタンスルホン酸塩(ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸塩(ウンデカフルオロペンタンスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸塩(トリデカフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、−ナトリウム、−カリウム、−マグネシウムおよび−カルシウム等)等が挙げられる。
これらのうち帯電防止性の観点から好ましいのは、塩化物、過塩素酸塩、さらに好ましいのは塩化リチウム、塩化カリウム、過塩素酸リチウム、−カリウムおよび−ナトリウムである。
【0134】
イオン性液体(D3)は、前記(D1)および(D2)を除く化合物で、室温以下の融点を有し、(D3)を構成するカチオンまたはアニオンのうち少なくとも一つが有機物イオンで、初期電導度が1〜200ms/cm(好ましくは10〜200ms/cm)である常温溶融塩であって、例えばWO95/15572公報に記載の常温溶融塩が挙げられる。(D3)を構成するカチオンとしては、例えばアミジニウムカチオン、グアニジニウムカチオンおよび3級アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0135】
アミジニウムカチオンとしては、例えばイミダゾリニウムカチオン[1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウムなど]、イミダゾリウムカチオン[1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムなど]、テトラヒドロピリミジニウムカチオン[1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムなど]、およびジヒドロピリミジニウムカチオン[1,3−ジメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウムなど]が挙げられる。
【0136】
グアニジニウムカチオンとしては、例えばイミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウムなど]、イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリウムなど]、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムなど]、およびジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウムなど]が挙げられる。
【0137】
3級アンモニウムカチオンとしては、例えばメチルジラウリルアンモニウムが挙げられる。
【0138】
上記のアミジニウムカチオン、グアニジニウムカチオンおよび3級アンモニウムカチオンは1種単独でも、また2種以上を併用してもいずれでもよい。
これらのうち、初期電導度の観点から好ましいのはアミジニウムカチオン、さらに好ましいのはイミダゾリウムカチオン、特に好ましいのは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0139】
イオン性液体(D3)において、アニオンを構成する有機酸または無機酸としては下記のものが挙げられる。
有機酸としては、例えばカルボン酸、硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル、スルホン酸およびリン酸エステルが挙げられる。
無機酸としては、例えば超強酸(例えばホウフッ素酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸および六フッ化ヒ素酸)、リン酸およびホウ酸が挙げられる。
上記有機酸および無機酸は1種単独でも2種以上の併用でもいずれでもよい。
上記有機酸および無機酸のうち、(D3)の初期電導度の観点から好ましいのは(D3)を構成するアニオンのHamett酸度関数(−H0)が12〜100である、超強酸の共役塩基、超強酸の共役塩基以外のアニオンを形成する酸およびこれらの混合物である。
【0140】
超強酸の共役塩基以外のアニオンとしては、前記の、例えばハロゲンイオン、アルキル(C1〜12)ベンゼンスルホン酸イオンおよびポリ(n=1〜25)フルオロアルカンスルホン酸イオンが挙げられる。
【0141】
超強酸としては、前記の、プロトン酸およびプロトン酸とルイス酸との組み合わせから誘導されるもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
超強酸としてのプロトン酸としては、前記のものが挙げられる。これらのうち合成の容易さの観点から好ましいのはホウフッ素酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸である。
【0142】
ルイス酸と組合せて用いられるプロトン酸としては、前記のものが挙げられる。これらのうち(D3)の初期電導度の観点から好ましいのはフッ化水素である。
【0143】
ルイス酸としては、前記のものが挙げられる。これらのうちで、(D3)の初期電導度の観点から好ましいのは三フッ化ホウ素および五フッ化リンである。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であり、これらの組み合わせからなる超強酸としては、前記のものが挙げられる。
【0144】
上記のアニオンのうち、(D3)の初期電導度の観点から好ましいのは超強酸の共役塩基(プロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸とルイス酸との組合せからなる超強酸)、さらに好ましいのはプロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸と、三フッ化ホウ素および/または五フッ化リンとからなる超強酸の共役塩基である。
【0145】
(D3)の製造法としては、例えばジメチルカーボネート等で4級化して得られるアミジニウムカチオンおよび/またはグアニジニウムカチオンのジメチルカーボネート塩に、酸[(D3)においてアニオンを構成する前記の有機酸または無機酸]を加えて酸交換を行う方法、または、アミジニウムカチオンおよび/またはグアニジニウムカチオンを一旦加水分解してモノアミドアミンを生成した後、そのモノアミドアミンを酸(前記の有機酸または無機酸に同じ)で中和する方法が挙げられる。
【0146】
その他の帯電防止剤(D)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、樹脂物性の観点から好ましくは0.001〜5%、さらに好ましくは0.01〜3%である。
(D)を添加する方法については特に限定はなく、基層(X)が(A)からなる場合は(A)に(D)を添加する、また基層(X)が上記帯電防止性樹脂組成物からなる場合は(A)、(B)もしくはこれらの混合物のいずれに添加してもよいが、(D)の該樹脂組成物中への効果的な分散の観点から好ましいのは、(A)中に予め分散させておく方法であり、より好ましいのは(A)の製造時[(A)の原料中、(A)の製造途中および/または(A)の製造後]に(D)を予め添加し分散させておく方法である。
【0147】
(A)、もしくは上記帯電防止性樹脂組成物で基層(X)を形成するに際しては、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の樹脂用添加剤(E)を必要により併用することができる。
該(E)は、基層(X)が(A)からなる場合は(A)に(E)を添加する、また基層(X)が上記帯電防止性樹脂組成物からなる場合は(A)と(B)からなる樹脂組成物の混合後に添加してもよいし、(A)または(B)に予め含有させておいてもいずれでもよい。(E)の合計使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性および樹脂物性の観点から好ましくは180%以下、さらに好ましくは0.1〜100%である。
(E)には、着色剤(E1)、充填剤(E2)、核剤(E3)、滑剤(E4)、可塑剤(E5)、離型剤(E6)、酸化防止剤(E7)、難燃剤(E8)、紫外線吸収剤(E9)および抗菌剤(E10)が含まれる。
【0148】
着色剤(E1)としては、顔料および染料が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(酸化チタン、オーレオリン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等);有機顔料(アゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系、ベンジイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等)が挙げられる。
【0149】
染料としては、アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、硫化系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系、アニリン系等が挙げられる。
(E1)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは5%以下、さらに好ましくは0.1〜3%である。
【0150】
充填剤(E2)としては、繊維状、粉粒状、板状の充填剤等が挙げられる。
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、ジルコニア繊維、アラミド繊維および金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維等が挙げられる。これらのうち成形品の機械強度の観点から好ましいのはガラス繊維およびカーボン繊維である。
粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属の硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミ、チタン、銅、銀、金等)粉末等が挙げられる。
板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレークおよび各種の金属(アルミ、銅、銀、金等)箔等が挙げられる。
これらの充填剤は1種単独または2種以上の併用のいずれでもよい。
上記の充填剤のうちフィルムの機械強度の観点から好ましいのは繊維状充填剤、さらに好ましいのはガラス繊維である。
充填剤の使用量は(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは150%以下、さらに好ましくは5〜100%である。
【0151】
核剤(E3)としては、1,3,2,4−ジ−ベンジリデン−ソルビトール、アルミニウム−モノ−ヒドロキシ−ジ−p−t−ブチルベンゾエート、ソジウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
(E3)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは20%以下、さらに好ましくは1〜10%である。
【0152】
滑剤(E4)としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(前記のもの、例えばステアリン酸等)、高級アルコール(前記のもの、例えばステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
(E4)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは20%以下、さらに好ましくは1〜10%である。
【0153】
可塑剤(E5)としては、芳香族カルボン酸エステル[フタル酸エステル(ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等)等]、脂肪族モノカルボン酸エステル[メチルアセチルリシノレート、トリエチレングリコールジベンゾエート等]、脂肪族ジカルボン酸エステル[ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、アジピン酸−プロピレングリコール系ポリエステル等]、脂肪族トリカルボン酸エステル[クエン酸エステル(クエン酸トリエチル等)等]、リン酸トリエステル[トリフェニルホスフェート等]、エポキシド[エポキシ化油、エポキシ脂肪酸エステル(エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート等)等]、石油樹脂等が挙げられる。
(E5)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは20%以下、さらに好ましくは1〜10%である。
【0154】
離型剤(E6)としては、高級脂肪酸(前記のもの)の低級(C1〜4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4〜30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸(上記のもの)のグリコールエステル(エチレングリコールモノステアレート等)、流動パラフィン等が挙げられる。
(E6)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは10%以下、さらに好ましくは0.1〜5%である。
【0155】
酸化防止剤(E7)としては、フェノール系〔単環フェノール[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール等]、多環フェノール〔1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン[商品名「イルガノックス1010」、チバガイギー(株)製]等〕、ビスフェノール[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等]等〕;硫黄系〔ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−β,β’−チオジブチレート、ジラウリルサルファイド等〕;リン系〔トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト〕、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト〕;アミン系〔オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェノチアジン等〕等が挙げられる。
(E7)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは5%以下、さらに好ましくは0.1〜3%である。
【0156】
難燃剤(E8)としては、有機難燃剤〔含窒素系[尿素化合物、グアニジン化合物およびトリアジン化合物(メラミン、グアナミン等)等の塩(無機酸塩、シアヌル酸塩、イソシアヌル酸塩等)等]、含硫黄系〔硫酸エステル、有機スルホン酸、スルファミン酸、有機スルファミン酸、およびそれらの塩、エステル、アミド等〕、含珪素系(ポリオルガノシロキサン等)、含リン系[リン酸エステル(トリクレジルホスフェート等)等]等〕、無機難燃剤〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、赤リン、ポリリン酸アンモニム等〕等が挙げられる。
(E8)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは20%以下、さらに好ましくは3〜15%である。
【0157】
紫外線吸収剤(E9)としては、ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン系(2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、サリチル酸系(フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等)、アクリレート系(2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’,1−ジフェニルアクリレート等)等が挙げられる。
(E9)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは5%以下、さらに好ましくは0.1〜3%である。
【0158】
抗菌剤(E10)としては、4級アンモニウム塩[トリメトキシシリル−プロピルオクタデシルアンモニウムクロライド等]、ピリジン化合物[2,3,5,6−チトクロロ−4−(メチルスルフォニル)−ピリジン等]、有機酸(エステル)[安息香酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル等]、ハロゲン化フェノール[2,4,6−トリブロモフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリクロロフェノールナトリウム塩、パラクロロメタキシレノール等]、有機ヨウ素[4−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等]等が挙げられる。
(E10)の使用量は、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から好ましくは3%以下、さらに好ましくは0.05〜1%である。
【0159】
本発明における表層(Y)を構成する樹脂には、前記熱可塑性樹脂(B)と同じものが含まれ、多層フィルム中の基層(X)を構成する(B)と、表層(Y)を構成する(B)とは同一でも異なっていてもよい。また、(B)を用いて(Y)を形成するに際しては、上記(E)を併用することができ、それらの使用量は上記基層(X)において説明した、(A)、もしくは(A)と(B)の合計重量に基づく使用量を(B)の重量に基づく使用量に置き換えてそのまま適用することができる。
【0160】
本発明の多層フィルムは、(A)、もしくは(A)と(B)からなる帯電防止性樹脂組成物からなる基層(X)の片面または両面に上記樹脂からなる表層(Y)を有してなるものである。これらのうち、帯電防止性、および接触するものに対する低汚染性の観点から好ましいのは、(A)からなる基層(X)の片面もしくは両面に表層(Y)を有してなるもの、および(A)と(B)からなる帯電防止性樹脂組成物からなる基層(X)の両面に表層(Y)を有してなるものである。
基層(X)の両面に(Y)を有する場合の樹脂の種類は同じでも異なっていてもよく、(X)および(Y)それぞれにおいて、種類の異なる樹脂が多層(2〜6層またはそれ以上)に積層されていてもよい。また、(X)および/または(Y)が発泡層または発泡層と非発泡層からなる多層であってもよい。さらに、(X)および(Y)の少なくとも一層が一軸および/または多軸に延伸されていてもよく、帯電防止性の観点から、(X)および(Y)の少なくとも一層が一軸および/または多軸に延伸されることが好ましい。
【0161】
多層フィルムの具体例としては、例えば下記(1)〜(5)が挙げられる。
(1)(X)の片面に(Y)を積層したもの、即ち(X)/(Y)型フィルム
(X) :ブロックポリマー
(Y) :ポリプロピレン
(2)(X)の両面に(Y)を積層したもの、即ち(Y)/(X)/(Y)型フィルム
(X) :ブロックポリマー−ポリプロピレン樹脂組成物
(Y) :ポリプロピレン
(3)(X)の両面にそれぞれ異なる種類の(Y)[(Y1)、(Y2)とする]を積層したもの、即ち(Y1)/(X)/(Y2)型フィルム
(X) :ポリエーテルエステルアミド
(Y1):ナイロン6
(Y2):ポリエチレン
(4)(X)の両面にそれぞれ異なる種類の(Y)[(Y1)、(Y2)、(Y3)とする]を積層したもの、即ち(Y2)/(Y1)/(X)/(Y1)/(Y3)型フィルム
(X) :ブロックポリマー−ポリプロピレン樹脂組成物
(Y1):ナイロン6
(Y2):ポリエチレン
(Y3):ポリプロピレン)
(5)異なる種類の多層(X)[(X1)、(X2)とする]の両面にそれぞれ異なる種類の(Y)[(Y1)、(Y2)とする]を積層したもの、即ち(Y1)/(X1)/(X2)/(Y2)型フィルム
(X1):ブロックポリマー−ポリプロピレン樹脂組成物
(X2):ブロックポリマー
(Y1):ナイロン6
(Y2):ポリエチレン
【0162】
基層(X)の厚み[(X)が多層の場合は多層の合計厚み]については特に制限はないが、帯電防止性の観点から好ましい下限は8μm、さらに好ましくは10μm、特に好ましくは12μm、フィルム成形性の観点から好ましい上限は130μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは80μmである。
【0163】
表層(Y)の厚み[(Y)が多層の場合は多層の合計厚み]についても特に制限はないが、多層フィルムの表面特性の観点から好ましい下限は0.1μm、さらに好ましくは0.2μm、特に好ましくは0.5μm、多層フィルムの帯電防止性の観点から好ましい上限は50μm、さらに好ましくは40μm、特に好ましくは30μmである。ここにおいて、(X)の両面に(Y)を有する場合はそれぞれの面側の(Y)の厚みを指す。
また、(X)と(Y)の厚さ比については、帯電防止性の観点から好ましくは、99/1〜50/50、さらに好ましくは99/1〜51/49、とくに好ましくは98/2〜70/30である。ここにおいて、(X)の両面に(Y)を有する場合はそれぞれの面側の(Y)の厚みを指す。
【0164】
本発明の多層フィルムは下記の製造工程に従って成形することにより得られる。
<1>基層(X)を形成する、(A)および必要により加えらる(D)、(E);または(A)、(B)および必要により加えらる(C)〜(E)の混合工程;および表層(Y)を形成する樹脂(B)および必要により加えられる(E)の混合工程
<2>製膜工程
<3>ロール等による冷却工程
<4>延伸工程(必要に応じて行われる)
【0165】
上記製造工程について以下に説明する。
<1>混合工程
本発明の多層フィルムを形成する樹脂組成物の混合方法としては、特に限定されないが、基層(X)を形成する樹脂組成物の場合は、例えば(1)(A)および必要により(D)、(E)、または(A)、(B)および必要により(C)〜(E)の各成分をタンブルミキサー、リボンブレンダーまたはヘンシェルミキサー等の混合機でドライブレンドして混合する方法、(2)各成分を上記の方法でドライブレンドした後、押出機で溶融混合(通常200〜280℃)した後ペレット化する方法、および(3)(B)の一部と(A)とのマスターバッチを押出機により溶融混合(200〜280℃)して予めペレット化しておき、その後該ペレットに残りの(B)および必要により(C)〜(E)を上記混合機でドライブレンドして混合する方法が挙げられる。(X)が(A)と(B)からなる樹脂組成物から形成される場合は、これらの方法のうち、(A)を均一に(B)に分散させるとの観点から好ましいのは(3)の方法である。
また、表層(Y)を形成する樹脂組成物の場合は、上記(1)〜(3)において、必要により加える(E)を同様にして混合する方法が挙げられる。
【0166】
<2>製膜工程
製膜方法については、特に限定はなく、公知の各種の製膜方法(押出成形、インフレーションおよびチューブラー法等)を用いることができる。
いずれの方法においても共押出が可能なダイスから、(A)、もしくは(A)と(B)からなる帯電防止性樹脂組成物および表層(Y)用樹脂(組成物)を積層した状態で溶融押出して製膜するか、各種成形機(押出成形機、インフレーション成形機およびチューブラー成形機等)で溶融押出して基層(X)、表層(Y)を製膜後、基層(X)に表層(Y)をラミネートするかまたは(X)と(Y)を接着剤もしくは接着層(サンドイッチラミネーション法等)を用いて貼り合わせる等を行い、多層フィルムとすることができる。
製膜時に発泡剤(塩化メチル、ブタン、炭酸ガス、アゾビスイソブチロニトリル等)を添加することにより発泡層を形成させることもできる。
【0167】
共押出では、例えば樹脂組成物の温度はその加熱流動温度85〜280℃とし、ダイスの温度は180〜280℃とするのがフィルム成形のしやすさの観点から好ましい。
(X)に(Y)をラミネートする場合は、例えば各層を積層した後に加熱圧着してもよいし、予めそれぞれの接合面を加熱装置によって加熱した後に接合して圧着してもよい。
(X)と(Y)を貼り合わせる方法において使用される接着剤は、特に限定されないが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体およびメタアクリル酸メチル重合体エラストマー〔例えばタフプレンおよびタフテック[商品名:いずれも旭化成工業(株)製]〕が好ましい。
【0168】
<3>冷却工程
冷却方法としては、例えば、ロールとの接触によって冷却する方法(例えば押出成形法のとき)および空気を吹き付け冷却する方法(例えばインフレーション法およびチューブラー法のとき)を用いることができる。
【0169】
<4>延伸工程
延伸方法としては、例えば予め無延伸のフィルムを製膜した後、別工程で延伸する方法(例えばロールの周速度の差を利用して延伸する方法およびテンター法)と、フィルムの生産工程に延伸工程が含まれるような方法(例えばインフレーション法およびチューブラー法)を挙げることができる。
【0170】
延伸倍率は、いずれの延伸方法においても帯電防止性の観点から、一軸延伸の場合は好ましくは2〜20倍、二軸延伸の場合は好ましくはそれぞれの方向に2〜15倍である。 本発明の多層フィルムは延伸工程を経ることで、さらに優れた帯電防止性を発現させることができる。
【0171】
延伸後の(X)と(Y)の厚さ比については、帯電防止性の観点から好ましくは、99/1〜50/50、さらに好ましくは99/1〜51/49、とくに好ましくは98/2〜70/30である。(X)と(Y)を積層後、同時に延伸する場合は、延伸前後で厚さ比は保持されることが好ましい。ここにおいて、(X)の両面に(Y)を有する場合はそれぞれの面側の(Y)の厚みを指す。
【0172】
本発明の多層フィルムの、透明性を示す指標であるへーズは、透明性の観点から好ましくは10%以下、さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である。
ヘーズはJIS K7105−1981の方法により測定することができる。
【0173】
また、本発明の多層フィルムには、用途(例えば多層フィルムへの印刷および他の物への多層フィルムの接着)、目的(例えば多層フィルムに対する印刷インキの定着性や多層フィルムの接着性の改良)に応じて、コロナ処理や火炎処理等の表面処理を行うこともできる。
【0174】
本発明の多層フィルムに印刷する方法としては、一般的にプラスチックフィルムの印刷に用いられる印刷法であればいずれも用いることができ、例えば、グラビア、スクリーンおよびオフセット印刷が挙げられる。印刷用インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるものが使用できる。
【0175】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において「部」は重量部、「%」は重量%を表す。
【0176】
[帯電防止剤(A)の製造]
製造例1
ステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム83.5部、テレフタル酸16.5部、酸化防止剤「イルガノックス1010」[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、以下同じ。]0.3部および水6部を仕込み、オートクレーブ内を窒素置換後、220℃で加圧(0.3〜0.5MPa)密閉下4時間加熱撹拌し、両末端にカルボキシル基を有する酸価112のポリアミド96部を得た。
次にMn2,000のビスフェノールAのEO付加物192部および酢酸ジルコニル0.5部を加え、245℃、0.13kPa以下の減圧下で5時間重合させ、粘稠なポリマーを得た。
このポリマ−をベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによってポリエーテルエステルアミド[A−1]を得た。[A−1]の還元粘度は2.10、熱減量開始温度は[JIS K7120(1987年)記載の8.項に記載のTG曲線の解析方法に準じて測定される値である、以下同じ。]285℃であった。
【0177】
製造例2
熱減成法[23℃における密度が0.90でMFRが6.0g/10分のエチレン/プロピレン共重合体(エチレン含量2%)を410±0.1℃で熱減成]で得られた低分子量エチレン/プロピレンランダム共重合体(Mn3,500、密度0.89、C1,000個当たりの二重結合量7.1個、1分子当たりの二重結合の平均数1.8、両末端変性可能なポリオレフィンの含有量90重量%)95部、無水マレイン酸10部およびキシレン30部を、窒素ガス雰囲気(密閉)下、200℃で溶融し、200℃、20時間反応させた。
その後、過剰の無水マレイン酸とキシレンを減圧下、200℃、3時間で留去して、酸変性ポリプロピレン(a21−1)を得た。(a21−1)の酸価は27.2、Mnは3,700であった。
(a21−1)66部と12−アミノドデカン酸34部を窒素ガス雰囲気下、200℃で溶融し、200℃、3時間、1.3kPa以下の減圧下、反応させ酸変性ポリプロピレン(a21−2)得た。(a21−2)の酸価は17.7、Mnは、5,700であった。
ステンレス製オートクレーブに、(a21−2)60部、ポリエチレングリコール(b1)(Mn3,200、体積固有抵抗値3×108Ω・cm)33部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7部、酸化防止剤「イルガノックス1010」0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を加え、230℃、0.13kPa以下の減圧下、4時間重合させ、粘稠なポリマーを得た。
このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによって、ブロックポリマー[A−2]を得た。
[A−2]のMnは、28,000であった。また、このMnと1H−NMR分析より、[A−2]の平均繰り返し数Nnは3.4であった。
【0178】
実施例1〜7、比較例1〜5
表1に示す配合組成で基層(X)、表層(Y)を2種2層共押出が可能なT型ダイを備えた押出機〔シリンダー温度:[B−1]使用時は220℃、[B−2]使用時は180℃、[B−3]使用時は240℃、[B−4]使用時は150℃とする。[B−1]〜[B−4]のうち2種類を使用する場合のシリンダー温度は高い方の温度とする。以下同じ。〕により溶融押出し、20℃の冷却ロールで急冷することにより表面に10μmの表層(Y)を有する厚さ70μmの(X)/(Y)型押出成形フィルムとした。また、基層(X)、表層(Y)の一方または両方に[B−1]を使用した実施例1、4、比較例1、3では、別に作成した同様の押出成形フィルムを150℃に加熱したバッチ式延伸装置で二軸延伸し、表面に2μmの表層(Y)を有する厚さ14μmの二軸延伸フィルムとした。
実施例8〜14、比較例6〜10
表1に示す配合組成で基層(X)、表層(Y)を2種3層共押出が可能なT型ダイを備えた押出機(シリンダー温度は上記に同じ。)により溶融押出し、20℃の冷却ロールで急冷することにより表裏面に10μmの表層(Y)を有する厚さ70μmの(Y)/(X)/(Y)型押出成形フィルムとした。また、基層(X)、表層(Y)の一方または両方に[B−1]を使用した実施例8、11、比較例6、8では、この押出成形フィルムを150℃に加熱したバッチ式延伸装置で二軸延伸し、表裏面に2μmの表層(Y)を有する厚さ14μmの二軸延伸フィルムとした。
【0179】
【表1】

【0180】
(注)
[B−1]:ポリプロピレン[商品名「グランドポリプロ F103」、グランドポリマ
ー(株)製]
[B−2]:ポリエチレン[商品名「ノバテックLL UJ960」、日本ポリケム(株
)製]
[B−3]:シクロヘキサンジメタノール/エチレングリコール/テレフタル酸共重合物
[商品名「EASTER PETG6763」、イーストマンケミカルジャ
パン(株)製]
[B−4]:エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂[商品名「ノバテックEVA LV430
」、日本ポリエチレン(株)製]
【0181】
[性能試験]
上記得られたフィルムについて、下記の試験法に基づき性能評価した。結果を表2に示す。
[1]帯電防止性[ASTM D257(1984年)に準拠]
(1)体積固有抵抗値:上記で得られたフィルム〔厚さ70μmの押出成形フィルムおよび厚さ14μmの二軸延伸フィルム[いずれも(X)/(Y)型または(Y)/(X)/(Y)型]〕からそれぞれ切り出した試験片(100×100mm)を用い、該試験片を23℃、湿度50%RHの条件で48時間静置後、超絶縁計[アドバンテスト(株)製、以下同じ]により同条件の雰囲気下で測定する。
(2)水洗後の体積固有抵抗値
(1)と同様の試験片(100×100mm)を、23℃のイオン交換水100mlを用い試験片の両面を充分に水洗した後、循風乾燥機内80℃で3時間乾燥させる。該水洗−乾燥の操作を10回繰り返した後、該試験片を23℃、湿度50%RHの条件で48時間静置後、超絶縁計により同条件の雰囲気下で測定する。
(3)電荷半減期
上記で得られたフィルム〔厚さ70μmの押出成形フィルム[(X)/(Y)型または(Y)/(X)/(Y)型。以下同じ。]〕からそれぞれ切り出した試験片(50×50mm)を用い、JIS L1094(1988年)に従ってスタティックオネストメーター[TYPE H0110、シシド静電気(株)製]を用い、印加電圧10,000Vの条件で試験片の表層側の電荷半減期(単位:秒)を評価した。数値が小さい程帯電防止性に優れることを示す。
[2]ヒートシール性[JIS Z−0238に準拠]
上記で得られたフィルムを2枚それぞれの表層を合わせて重ね、熱傾斜試験機[東洋精機(株)製]を使用して、熱圧着〔温度:表層に[B−1]、[B−2]、[B−3]または[B−4]を使用時はそれぞれ160℃、140℃、240℃または90℃、圧力:3kg/cm2、時間:1秒〕後、該試験片を23℃、湿度50%RHの条件で24時間静置後、引張試験と同様の方法で試験し、ヒートシール部分の破断強度を測定する。
[3]機械特性[JIS K7127−1989に準拠]
上記で得られたフィルムについて、引張強度を測定し、機械特性を評価する。
[4]ガラス板汚染性
上記で得られたフィルムからそれぞれ切り出した試験片(100×100mm)と2枚のガラス板(120×120×2mm)を、それぞれ超純水(比抵抗17.5MΩ・cm)を用いて充分に水洗した後、循風乾燥機内50℃で2時間乾燥させる。該試験片の両面を該2枚のガラス板で挟んで密着させ、さらにガラス板の上に1kgの重しを置き、60℃、90%RHで7日間静置する。その後、試験片を取り除き、表層側のガラス板[(X)/(Y)型試験片の場合]、または2枚のガラス板[(Y)/(X)/(Y)型試験片の場合]の試験片接触面を観察し、付着物の有無でガラス板汚染性を評価する。

評価基準 ○:ガラス板に付着物なし
×:ガラス板に付着物あり

[5]透明性[JIS K7105−1981に準拠]
上記で得られたフィルムについて、ヘーズを測定し、透明性を評価する。
【0182】
【表2】

【0183】
表2から明らかなように、本発明の多層フィルム(実施例1〜14)は、帯電防止性、機械特性、透明性において優れている。また、比較のフィルム(比較例1、2、5、6、7および10)と比べて、ヒートシール性において優れ、比較例3、4、8および9のフィルム[帯電防止剤(A)を含有していないフィルム]と同等のヒートシール性が発現していることから、帯電防止性に優れ、しかも樹脂本来の表面特性(ヒートシール性)の変化も極めて少ないことがわかる。
さらに、本発明の多層フィルムの帯電防止性は、水洗しても体積固有抵抗値にほとんど変化はなく、しかも比較のフィルムと比べて、ガラス板汚染性がなく、比較例3、4、8および9のフィルム[帯電防止剤(A)を含有していないフィルム]と同等の低汚染性である。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の多層フィルムは、帯電防止性および機械特性に優れ、低汚染性であることから、包装材(インスタント食品やマヨネーズ等の食品用包装袋、タバコの個包装袋、クリーニングの袋、プラスチック製ケース用フィルム、電気部品の包装袋等)、被覆材(紙にラミネートするプリントラミ、フレキシブルディスクの保護フィルム、農業材料等)、床材(クリーンルームの床材等)、テープ材(半導体製造プロセス用のテープ基材等)その他帯電防止性を必要とする各種材料として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレン鎖を有する帯電防止剤(A)、もしくは(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物からなる基層(X)の片面もしくは両面に、帯電防止剤を含有しない樹脂からなる表層(Y)を有してなることを特徴とする帯電防止性多層フィルム。
【請求項2】
(A)が、ポリエーテルエステルアミド(A1)である請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
(A)が、ポリオレフィン(a2)のブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmのポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A2)である請求項1記載の多層フィルム。
【請求項4】
(B)がビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアセタール樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれか記載の多層フィルム。
【請求項5】
(A)と(B)の合計重量に基づく(A)の割合が、30〜80%である請求項1〜4のいずれか記載の多層フィルム。
【請求項6】
(X)と(Y)の厚さ比が、99/1〜50/50である請求項1〜5のいずれか記載の多層フィルム。
【請求項7】
多層フィルムが、10%以下のヘーズを有する請求項1〜6のいずれか記載の多層フィルム。
【請求項8】
(X)および/または(Y)が一軸および/または多軸に延伸されてなる請求項1〜7のいずれか記載の多層フィルム。
【請求項9】
(A)、もしくは(A)を(B)に含有させてなる帯電防止性樹脂組成物と、帯電防止剤を含有しない樹脂とを共押出し、必要により一軸および/または多軸に延伸することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の帯電防止性多層フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか記載の多層フィルムからなる包装材、被覆材、床材またはテープ材。

【公開番号】特開2006−15741(P2006−15741A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160276(P2005−160276)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】