干渉および電波妨害に対する感受性を低減したナビゲーションシステムのための方法および装置
ナビゲーションシステムは、GPSへのあらゆる形の干渉または電波妨害に対する著しいレベルの保護を、コスト効率のよい方法で提供する。このシステムは、GPSと組合せた地上基準局および地球低軌道(LEO)衛星のネットワークを採用する。基準局とユーザとをリンクする、GPS衛星への共通視野測距ジオメトリが、設定される。同じ対の基準局とユーザとの間のLEO衛星への第2の共通視野ジオメトリも設定される。地上局は、GPS、LEO衛星の信号の搬送波位相測定を行なうことにより、リアルタイムの支援信号を合成する。この支援情報はLEO衛星を介して、周囲の電波妨害を貫通するように高出力でユーザ受信機に送信される。ユーザ受信機は、LEO衛星の搬送波位相を追尾し、支援情報を復調して、次に、GPS信号の拡張された一貫した測定を可能にするように搬送波位相測定値および支援情報を適用する。このシステムはそれにより、電波妨害で失われたであろうGPS信号を復元させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、ナビゲーションシステムに関し、より特定的には、電波妨害および干渉が起こりがちな環境で動作する衛星ナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
近年、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)のユーザらは、リアルタイムの3次元ナビゲーション能力を、以前には利用できなかった性能レベルで享受してきた。そのようなGPSシステムは、干渉および電波妨害に対するそれらの感受性を除けば、正確な全世界的衛星ナビゲーションの約束を大いに果たしてきた。にもかかわらず、ユーザらは引続き、特に正確度および完全性−すなわち、ナビゲーションシステムがナビゲーション情報の誤りを検出する能力−について、ますます高いナビゲーション性能を要求している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、電波妨害および/または干渉の存在は、特に或る軍事用途または生命安全用途において、GPSをナビゲーションの手段として十分に頼りにすることを妨げてきた。民間航空機では、電波妨害による安全性リスクは通常、問題ではない。航空機を代わりの飛行場で無事地上に戻すために、さまざまな不測事態への対策が開発されてきた。しかしながら、現在構築されているようなGPSへの依存は、航空交通、ひいては商業一般への大規模な混乱のリスクをもたらす恐れがある。さらに、地上および海上輸送、ならびに電力配電、インターネット、携帯電話および金融取引の時間計測といった日常的なインフラストラクチャにGPSが取り入れられているまでの増加は、電波妨害からのGPS信号の意図的な混乱による潜在的な社会的脆弱性の増大につながる。
【0004】
GPS信号は比較的弱い(ユーザは全方向性アンテナの端子でほぼ−160dBWを受信する)ため、ほんの少しの電波妨害でナビゲーション能力は低下する。たとえば、低コストの5Wの妨害器は、特にユーザとの見通し線接触がある場合、半径数10マイルでのGPSの使用を混乱させるのに十分である。そのような感受性は、衛星ナビゲーションの実用性に不利に働き、反対に、飛行に使用される従来のより高出力のナビゲーション支援装置に有利に働く傾向があり、それらの中にはGPSよりも前から存在するものもあり、VOR、DME、ILS、TACAN、およびLORAN−Cを含む。
【0005】
現在、航空機はGPSを補助手段ナビゲーションのためにしか使用できない。伝統的なナビゲーション支援装置は通常運行には十分であり、商業を混乱させるよう、そそのかされた妨害者に対抗するのに十分な出力レベルを有する。したがって、GPSの信号脆弱性のため、衛星ナビゲーションの著しい性能およびコスト利点を利用する動機はほとんどない。FAAの広域補強システム(Wide Area Augmentation System:WAAS)および狭域補強システム(Local Area Augmentation System:LAAS)は、低コストの航空機の着陸能力を、以前はそれが全く利用できなかった国中の何千もの空港にもたらす可能性を提供する。今日、米国は、2つの民間の生命安全ナビゲーションシステム、すなわち、従来の地上ベースのシステムと、より新しくより有能な衛星ベースのシステムとのために資金を提供している。
【0006】
電波妨害と格闘するために、多数の先行技術が利用可能である。これらの方法は(i)
特殊な衛星設計と(ii)受信機設計とに焦点を当てている。衛星では、たとえば、地上への生の出力のブロードキャストを単純に増加させることは常時可能である。しかしながら、生の出力についての代償があり、追加出力の各ワットに比例して衛星ペイロードおよび打上げコストがそれに応じて増えるため、ブロードキャスト出力の著しい増加は急速に高価になる。別のアプローチは、付加的な処理ゲインを可能にし得るより幅広い帯域幅のブロードキャストを使用することである。ここでも支払うべき代償があり、有限のスペクトルを多数の目的のために効率的に使用することは著しく全世界的調整を必要とする。GPSはそれに割当てられた特定のブロードキャストスペクトルを有しており、近い将来におけるいかなるときも、何らかの新しいスペクトルが割当てられることは起こりそうもない。
【0007】
電波妨害の問題への受信機のアプローチは一般に(i)アンテナパターン成形、(ii)信号削除、および(iii)平均化という3つの種類に分けられる。アンテナパターン成形は、制御放射パターンアンテナ(Controlled Radiation Pattern Antenna:CRPA)と呼ばれるアンテナの多要素アダプティブアレイを使用して、ビームを直接衛星に電子的に向け、それにより妨害器を排除する。CRPAはまた、推定される妨害器方向にヌル(null)を向けることもできる。CRPAはたいていの状況でかなり効果的であり得るが、それらは一般に高価でかつ嵩高い。それらはまた、妨害器の見通し線がたまたま衛星とほぼ一致する場合、または、さらに悪いことに、いくつかの分散された妨害器が使用される場合に、効果が下がるという欠点を有する。この場合、物理法則は、所与のCRPA設計のための1組の妨害器に適用可能なビームおよびヌルの数および質に数学的制約を置く。
【0008】
削除(excision)とは、GPS受信機において実行される広帯域のプリ相関信号処理を指す。GPSの信号特性は周知であるため、電波妨害によるいかなる余剰出力も、受信機によってリアルタイムで直接観測可能であり、ノッチフィルタ、パルス消去、または任意の数の他のより精巧な技術を介して削除可能である。削除は効果的でかつ安価な信号処理ステップであり、一般に優れた実践の問題として実行されるべきである。しかしながら、それ自体としては、干渉または電波妨害の影響を全て排除するには不十分である。たとえば、妨害するものが広帯域ノイズである場合、受信機は電波妨害の存在を検出するが、その性質の演繹的知識がなければ、それのいずれかの部分を選択的に除去するように削除を適用できないであろう。時空間適応処理(Space Time Adaptive Processing:STAP)および空間周波数適応処理(Space Frequency Adaptive Processing:SFAP)として公知の現在の信号処理技術は、CRPAおよび削除を1つの処理段階に組合せている。
【0009】
平均化技術は、受信機のプリ検出間隔(pre-detection interval:PDI)中にできるだけ多くの電波妨害をフィルタで取除くことを目的としている。平均化の最も基本的な形は、受信機のプリ検出帯域幅(通常50Hz)に対するプリ相関帯域幅(20.46MHz)の比率によって提供される処理ゲインである。P(Y)コードの受信機については、平均化は、基本レベルの56dBの電波妨害耐性を、ここでは非常に低いダイナミクスに対してのみ提供する。このレベルの保護を改良しようとする試みは、実用的な実現を妨げるいくつかの障壁に伝統的に遭遇してきた。第1の障壁は、GPS搬送波上に重畳された50bpsのデータ変調から生じる。この変調はPDIを20msに効果的に制限する。
【0010】
データストリッピングは、20msというPDI制限を回避しようとするために使用される一方法である。GPSブロードキャストメッセージはまれに、または予測可能な方法で変わるため、予め記録されたフレームを適用してデータ変調の多くを除去することがしばしば可能である。残念ながら、軍事用途または生命安全用途については、この方法は常時頼りにはできない。なぜなら、予め記録されたデータメッセージは実際のブロードキャストメッセージを常時トラッキングしているわけではないためである。2つのデータストリーム間の一貫性は、新しい天体暦のアップロード、誤操作、およびシステム故障を含む
任意の数の要因によって狂う場合がある。どのような非一貫性もフェイルソフトに寄与しない。データストリッピングアプローチの主要な改良点は、地球低軌道(Law Earth Orbiting:LEO)衛星がどのようにして、動作の隙間をなくすようにGPSデータビットの全地球フィードフォワードを提供できるか、を教示している。たとえば、2004年6月22日出願の「GPS性能向上のためのリアルタイムデータ支援」(Real Time Data Aiding for Enhanced GPS Performance)と題された米国特許出願連続番号第10/873,581号を参照されたい。
【0011】
残念ながら、データがGPS搬送波から除去されるか否かに関わらず、プリ検出帯域幅を狭くするよう試みること、または低信号レベル測定値を使用することに、著しい障害が残っている。GPS信号は、PRNコード変調および搬送波周波数を含む多数の成分から作られる。干渉または電波妨害がない場合、受信機は通常、コードおよび搬送波の双方をトラッキングする。電波妨害が発生すると、たいていの軍事用受信機は搬送波トラッキングを止めてコードのみをトラッキングする形に戻り、生の20msのプリ検出サンプル同士はドット積判別器の変形を用いてともに乗算される。ドット積判別器は一般に、二乗タイプの判別器の最も効果的なもののうちの1つと考えられている。これらのサンプルは、コードトラッキング誤差を解決するために、或る拡張された間隔−ときには数10秒−にわたってともに平均化される。ドット積タイプのコードトラッキングの一般的に適用される利点は、それが搬送波トラッキングのみの場合よりも幾分高い電波妨害抵抗を有することである。この発想は、慣性ナビゲーションシステム(Inertial Navigation System:INS)を用いてユーザダイナミクスを減算し、それにより、ノイズのある後検出サンプルが長い間隔にわたって平均化されるようにすることである。コードベースの電波妨害防止トラッキングの最も統合されたバージョンは、「超密結合」(Ultra-Tight Coupling:UTC)と呼ばれる。
【0012】
残念ながら、超密結合された慣性は或るレベルの保護までしか効果的ではなかった。そのようなシステムの物理学は、それらが著しい電波妨害に耐える能力を急速に制限する。第1に、判別器から生じる二乗損失により、長い積分時間が必要とされる。積分時間はJ/Sの二乗に比例する。これは、電波妨害出力が2倍になるたびに、必要とされる積分間隔は4倍となる必要があることを意味する。第2に、慣性機器は時間とともに成長する誤差を呈示する。いくつかの慣性機器はより良好な性能を増加したコストで提供できるが、慣性がGPSからの更新なしでプラットフォームダイナミクスをどのぐらい長く除去できるかについては、実用的な物理的制限がある。この制限は通常、慣性ノイズがコードチップの大部分に達するのにかかる時間、通常約5mまでに設定される。所与の品質の慣性については、GPSコード変調への依存は、積分中に測距誤差がしきい値を上回る或る電波妨害レベルを生み出し、システムはもはや有用ではない。
【0013】
GPSデータ変調が搬送波から信頼できる方法で除去可能であると仮定して、搬送波のコヒーレントなトラッキングが時折考慮されてきたが、電波妨害耐性の増加に対する選択肢としては即座に却下されてきた。そのようなアプローチは伝統的に非実用的であるとみなされてきた。なぜなら、受信機が持続した期間にわたって30ピコ秒(光が1cm進行するのにかかる時間量)未満という安定性まで搬送波を積分しなければならないためである。この課題は、この必要な安定性を20msよりもずっと長い間隔にわたって維持することである。典型的な低コストの温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated quartz Crystal Oscillator:TCXO)は、今日の大半のGPS受信機の基盤である。部品コストは一般に10ドルから20ドルの範囲である。TCXOを用いると、プリ検出間隔は1秒の大半までは安全に拡張され得る。これを超えると、TCXOは十分に安定しない。
【0014】
ルビジウムまたはセシウムの周波数標準に基づいた恒温槽付水晶または原子時計といっ
た他のより安定した一般的でないクロックが候補に挙がっているが、これらの非常に安定したクロックでさえ、それらを実用的にしない実用上の問題を有する。30dBの追加のGPS電波妨害の保護のために、ユーザは近傍の20秒にわたって積分する必要がある。このレベルでは、多くの原子時計でさえ、必要とされる安定性を提供できない。振動、大きさおよびコストが法外になり得る。前途有望な新しいチップスケール原子時計(Chip Scale Atomic Clock:CSOC)アプローチは、今から数年後にコスト、サイズ、重量および出力を減少させる可能性を提供するが、最も楽観的な性能予測でさえ、必要な位相安定性を必要な間隔にわたって産出する十分な周波数安定性を達成しない。恒温槽付水晶発振器(Oven-Controlled Crystal Oscillator:OCXO)の中には、必要な位相安定性を必要な間隔にわたって有するものがある。しかしながら、OCXOは通常嵩高く、高価で、かつ電力を消費する。そのような高度に安定したクロックに依存するソリューションは、コスト、サイズ、重量および消費電力を精密な温度制御と関連付けなければ容易には手が届かないものである。構成要素性能感度を重視するそのようなソリューションは、著しい技術的課題である。出力、振動およびコストは主な障害となる。必要とされるのは、標準の低コストTCXOを用いて著しく向上した性能を提供することができるソリューションである。
【0015】
軍事部門、民間部門および商業部門は各々、電波妨害に対するそれら自体の問題および課題を有する。軍は、一般にコストの制約をそれほど受けず、より進歩した技術へのアクセスを有するため、電波妨害と格闘するのにおそらく最も準備ができているであろう。残念ながら、比較的低出力の妨害器でさえ、妨害器の見通し線内にあるユーザ機器を停止させることができる。ユーザ機器には、幅広いスペクトルの電波妨害防止能力が、しばしばCRPAおよび超密慣性結合を含む技術の組合せとして採用されている。軍はまた、信号出力を約20dB高めるように意図された新しいより高出力のMコード信号を実現するよう提案している。大口径スポットビームアンテナは、地球の特定の領域上により狭いビームを集束させてそこにより多くの信号出力を集中させるであろう。しかしながら、そのような高出力システムを採用するコストが目標ではない場合でさえ、そのようなシステムが使用可能になるまでには依然として何年もかかる。必要とされるのは、低コストで直ちに利用可能なナビゲーションソリューションである。
【0016】
これらの軍事用ソリューションは、全体として見ると、近い将来に予測される多くの電波妨害の脅威に対して妥当な保護を提供するように思われる。しかしながら、これらのソリューションも、特に多数の低出力の分散された妨害器について前述したような将来の電波妨害シナリオの下では不十分かもしれない。おそらく最も重要なことは、上述の1組の現在のソリューションはすべて高くつく傾向がある、ということである。
【0017】
民間の脆弱性は重要な課題である。前述のように、GPSは、第2の民間周波数を加えることで意図的でない干渉に対抗する手段を既に有している。多くの動作のためにたった1つの周波数が必要とされるため、意図的でない干渉によって一方の周波数がダウンすると、他方は、使用できる高い可能性を設定する。意図的でない干渉の場合でも、または意図的な干渉の場合でも、最後の手段として、航空機は代わりの空港に行き先を変更することができる。
【0018】
意図的な電波妨害の問題ははるかに深刻である。ここでも、目的は、商業の日常的な流れを邪魔する妨害者、すなわち空の旅を混乱させる組織的手段を拒絶することである。民間航空会社の商業的性格は、意図的な電波妨害の問題に対するどのソリューションもコスト効率がいいことを必要とする。軍から適応された高価なユーザ機器、たとえばCRPAアンテナを民間航空機に設置することは、否定的に見られてきた。今までのところ、唯一実行可能なソリューションは、より高出力で動作するVOR、DMEおよびILSといった稼動中の既存のナビゲーション支援装置を維持することであった。既存の地上支援装置
も動作しているので、WAASといった衛星ソリューションが付加価値を航空機ユーザに提供しないため、航空会社が衛星ナビゲーションに移行する動機はほとんどない。
【0019】
商用ユーザも電波妨害のない信号に関係がある。インターネット、電力網、携帯電話ネットワークの時間計測、および金融取引の時間計測を含む社会でのさまざまな商業機能のためにGPSにますます依存することに加え、超広帯域(Ultra-Wide Band:UWB)技術から生じ得る、GPS信号強度への潜在的な規制上の脅威も存在する。UWBは将来かなり有望である一方、GPS帯域が規制上の観点から慎重に保護されなければ、干渉のはっきりとした可能性がある。規制は時折、十分な釣合いに到達するまでに時間を要する場合があることを仮定すると、UWB装置との共存へのこの重大な移行中にユーザが重大なGPSベースのインフラストラクチャにおける投資を保護できるようにする経済的な技術的「セーフティネット」へのアクセスを有することが望ましい。
【0020】
要約すると、電波妨害耐性を提供するための既存のシステムおよび方法は不十分である。必要とされるのは、干渉および/または電波妨害の存在下でナビゲーションのための高い正確度および完全性を提供し、それにより、近い将来における、軍事用途、民間用途、および商業用途を含むさまざまなGPSおよび衛星ナビゲーション用途のための重要でかつ効果的な電波妨害防止保護を確実にするナビゲーションシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
簡単な概要
この発明に従ったシステムおよび方法は一般に、1つ以上のGPS衛星と組合せた地上基準局および地球低軌道(LEO)衛星のネットワークを採用する。GPS衛星への第1の共通視野測距ジオメトリが、基準局とユーザとをリンクするために設定される。同じ基準局とユーザとの間のLEO衛星への第2の共通視野ジオメトリも設定される。地上局は、GPSおよびLEO衛星の信号の搬送波位相測定を行なうことにより、リアルタイムの支援信号を合成する。この支援情報はLEO衛星を介して、周囲の電波妨害を貫通するように高出力でユーザ受信機に送信される。ユーザ受信機は、LEO衛星の搬送波位相を追尾し、支援情報を復調して、次に、GPS信号の拡張されたコヒーレントな測定を可能にするように搬送波位相測定値および支援情報を適用する。このシステムはそれにより、電波妨害で失われたであろうGPS信号を復元させる。このように、この発明は、電波妨害耐性における著しい改良を、通常のGPS受信機のものに匹敵するコスト、サイズ、重量および出力で提供する。
【0022】
この発明の一実施例によれば、ナビゲーションシステムは、基準受信機と、ユーザ受信機と、基準受信機およびユーザ受信機の共通視野にある全地球測位システム(GPS)衛星とを含み、前記基準受信機および前記ユーザ受信機はGPS衛星から搬送波測距信号を受信し、前記ナビゲーションシステムはさらに、基準受信機およびユーザ受信機の共通視野にある第1の地球低軌道(LEO)衛星を含み、基準受信機およびユーザ受信機は、第1のLEO衛星からのLEO搬送波測距信号のそれぞれの第1および第2の測定値を計算するよう構成されており、ユーザ受信機は、LEO衛星を介して基準受信機から第1の測定値を受信し、第1および第2の測定値を適用して、ユーザ受信機によって受信されたGPS搬送波測距信号の信号位相の演繹的推定値を構築するよう構成されており、演繹的推定値は、ユーザ受信機での搬送波測距信号の拡張積分の基礎として使用される。
【0023】
以下にこの発明を以下の図面とともに説明する。図中、同様の番号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
詳細な説明
以下の詳細な説明は本質的に単なる例示であり、この発明、またはこの発明の用途および使用を限定するよう意図されてはいない。さらに、前述の技術分野、背景、簡単な概要、または以下の詳細な説明に提示される明示または暗示された理論によって束縛される意図はない。
【0025】
この発明は、機能および/または論理ブロック構成要素ならびにさまざまな処理ステップについて、ここに説明され得る。そのようなブロック構成要素は、特定の機能を行なうよう構成された任意の数のハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェア構成要素によって実現され得ることが理解されるはずである。たとえば、この発明の一実施例は、1つ以上のマイクロプロセッサまたは他の制御装置の制御下でさまざまな機能を実行し得るさまざまな集積回路構成要素、たとえばメモリ素子、アンテナ、デジタル信号処理要素、論理素子、ルックアップテーブルなどを採用してもよい。加えて、当業者であれば、この発明が任意の数のデータ伝送プロトコルとともに実践され得ること、およびここに説明されるシステムがこの発明のための単なる例示的な一用途であることを理解するであろう。
【0026】
簡潔にするため、信号処理、データ伝送、信号伝達、全地球測位システム、衛星、ネットワーク制御、およびシステム(ならびにシステムの個々の動作構成要素)の他のそのような機能的局面に関する従来の技術は、ここには詳細には説明されない場合がある。さらに、ここに含まれるさまざまな図に示す接続線は、さまざまな要素間の例示的な機能的関係および/または物理的結合を表わすよう意図されている。なお、実際の一実施例では多くの代替的なまたは付加的な機能的関係もしくは物理的接続が存在し得ることに留意されたい。
【0027】
図1は、この発明の一実施例に従ったユーザ受信機構成要素の一般的な全体図であり、図2は、この発明の動作を例示するために有用なナビゲーションシステム200の全体図である。図2に示すように、ユーザ202は、電波妨害および/または干渉を受ける環境204内にある間に、1つ以上のGPS衛星206を利用しようと試みる。先行技術のシステムでは、環境204内における電波妨害の存在は、GPS衛星206の使用を制限し、または妨げさえする。しかしながら、この発明によれば、支援情報220、224が地球低軌道(LEO)衛星222を介してユーザ202に伝達され、それがGPS信号208を復元させるのを支援する。
【0028】
1つ以上の基準局210は、それらがGPS衛星206への明らかな見通し線を有し、かつ(環境204内で起こっているいかなる干渉または電波妨害をも含む)干渉または電波妨害を受けないように、電波妨害区域の外側に位置し、立地している。基準受信機210からの支援情報220は、1つ以上の地球低軌道(LEO)衛星222にアップリンクされる。LEO衛星信号224は好ましくは、それがユーザ202によって受信されるように、環境204内の電波妨害出力に打ち勝つ十分に高い出力でブロードキャストされる。LEO衛星222によってリレーされた支援情報220、224は、図1に示すようなユーザ受信機100によって受信され、次に、特別に設計されたユーザ受信機100が電波妨害または干渉にも関わらず使用可能なGPS信号を復元できるようにGPS信号に適用される。
【0029】
図1のユーザ受信機100は、支援情報が相関器にリアルタイムで、たとえばセンチメートルレベルの精度といった高い精度で達することができるように、リアルタイムのストリーミングデータフローをトラッキングチャネル全体にわたって提供する。このセンチメートルレベルの測位および時間計測能力により、受信機は、拡張された期間、GPS信号をコヒーレントにトラッキングできる。
【0030】
伝統的な電波妨害防止方法とは異なり、この発明は、PRNコードよりもむしろGPS正弦波搬送波信号成分に重きをおいている。この方法は、民間のC/Aコードが採用されているか、軍事用のP(Y)コードまたはMコードが採用されているかどうかにはとらわれない。これらのコードは、衛星信号を区別するために、また、動作を初期化するために使用される。それ以外では、正弦波搬送波は基本特性を提供し、(i)二乗損失を排除することによる非常に改良された電波妨害防止性能、および(ii)電波妨害の最中の精密な測距を可能とすることによる非常に改良された正確度の双方を生み出す。
【0031】
この発明の好ましい一実施例によれば、システムの任意の部分での故障が動作を不利に妨げないように、冗長性が、少なくとも2つの基準局および2つのLEO衛星の形で取り入れられている。より特定的には、図3を参照すると、この発明の二重ストリングバージョン300は、1対のLEO衛星222(a)および222(b)と基準局210(a)および210(b)とを採用して、ユーザ202の視野内のGPS衛星206について基準情報が常に利用可能であることを確実にしている。
【0032】
LEO衛星222はどのような地球低軌道衛星でもよい。好ましい一実施例では、このシステムは、ユーザ202の頭上に少なくとも1つの衛星がほぼ常時あるように、LEO衛星222の群を含む。この発明に好適なLEO群は、たとえば、イリジウム(Iridium)およびグローバルスター(Globalstar)によって提供されるものを含む。これらのLEOはともに電話通信を中心として設計されており、電話通信用の平均データ速度は公称50bpsであるGPSデータ速度よりも約100倍速いために、余剰分は追加のブロードキャスト出力に変換可能である。言い換えると、LEO衛星222のビットレートがGPSのそれと匹敵するようにされた場合には、LEOブロードキャストはGPSブロードキャストよりも20dB強力となるであろう。多数の通話に対応して多数のダウンリンクがスイッチオンされた場合、出力はさらにより一層増加し得る。たとえば、10回の通話に相当するものがダウンリンクに割当てられた場合には、支援信号224はGPSよりも約30dB強力であろう。その結果は、30dB大きい電波妨害耐性を提供する支援信号となる。
【0033】
GPSは、2つの帯域、すなわち1,575.42±12MHzのL1と、1,227.604±12MHzのL2とでブロードキャストする。イリジウムは1,616.0〜1,626.5MHzの帯域でブロードキャストし、一方、グローバルスターは2,483.5〜2,500.0MHzの帯域でブロードキャストする。GPSおよびLEO衛星の双方から受信可能な受信機は、iGPSとして公知の、高性能精密測位、時間計測および通信システムを提供する。iGPS電波妨害防止システムは、いずれかのGPS周波数または双方で動作可能である。
【0034】
好ましい一実施例では、同様の電波妨害防止iGPS受信機が、基準局210およびユーザサイト202の双方で使用される。ソフトウェア受信機アーキテクチャに基づいた例示的な受信機400を図4に示す。チップあたり、単位コストあたりのコンピュータ処理能力の増加、および高速低出力SiGe RF設計といった新しい半導体技術により、ソフトウェア受信機は構築がより容易になっている。その結果は、より低いコスト、より速い開発時間、より低いサイズ、重量および出力、そしてとりわけ、コンポーネント同士をより大きなシステムへと統合する並外れた柔軟性である。この発明のいくつかの特化された適応例では、ソフトウェア受信機技術が十分ではない場合があること、および、いくつかの他の基準を中心として最適化された設計が必要とされる場合があることが認識されるべきである。
【0035】
引続き図4を参照すると、受信機400は、衛星信号401を受信するために使用される多周波数アンテナ402を含む。アンテナ402は、1つ以上のプリ選択フィルタ40
4、増幅器406、およびA/D変換器408に結合されている。合成器413は、温度制御型水晶発振器(TCXO)410から信号を受信し、図示されているようにコンピュータ414、慣性412、およびA/D変換器408に結合されている。コンピュータ414は、慣性412から生の測定値を受信し、また、合成器413およびA/D変換器408から入力を受信して、位置、高度および時刻の出力(420)を生成する。A/D変換器408のサンプリングレートは好ましくは、以下の刊行物、すなわちマーク L.サイアキ(Mark L. Psiaki)、スティーブン P.パウエル(Steven P. Powell)、ヒー ジュン(Hee Jung)、およびポール M.キントナー、ジュニア(Paul M. Kintner, Jr.)、「直接RFサンプリングを用いた多周波数RFフロントエンドの設計および実用的実現」(Design and Practical Implementation of Multi-Frequency RF Front Ends Using
Direct RF Sampling)、ION−GNSS、ロングビーチ(Long Beach)、2004年9月に記載された方法を用いて選択される。このように、このシステムは当該帯域すべてをベースバンド化するようダウンコンバートする。
【0036】
サンプリングレートの正しい選択は、ゼロからサンプリング周波数の半分というナイキスト範囲にわたる受入れ可能なスペクトル分離を確実にする。民間航空機に採用されているもののような好ましい実施例では、アンテナ402は固定放射パターンアンテナ(fixed radiation pattern antenna:FRPA)であり、それにより、制御放射パターンアンテナ(CRPA)のコスト、大きさおよび複雑性を回避する。軍事用途については−特に軍事用プラットフォーム上での使用については−アンテナ402はCRPAであることがより望ましい。
【0037】
CRPAを実現する方法は2つある。第1の方法は、図5に示すような統合されたアプローチである。一般に、受信機400のフロントエンド上のアンテナポート401の数は、CRPAアンテナ要素の所望の数まで拡張される。複数のそれぞれのA/D変換器408、インバータ406、およびフィルタ404がアンテナ401に結合される。次に、STAP/SFAP処理502が、図に示すように、コンピュータ(またはDSP)504の内部のソフトウェアにおいて実行される。
【0038】
第2のアプローチは、アンテナアレイとiGPS受信機との間のラインにマルチビームステアリングアンテナ電子回路(Multi-Beam Steering Antenna Electronics:MBS AE)パッケージを含めることである。そのような実施例を図6に示す。このパッケージは、LEO信号およびGPS信号を用いてSTAP/SFAP処理502を繰り返すように若干修正されている。この点で、イリジウムの帯域はGPSのL1帯域に非常に近接して位置している。
【0039】
電波妨害防止iGPSソフトウェア受信機の内部で、GPS帯域の各々(L1および/またはL2)ならびにLEO信号(たとえばイリジウムまたはグローバルスター)について、プリ選択フィルタ404を用いて処理が始まる。ソフトウェア受信機400は直接ダウンコンバージョンを採用するよう設計可能であるため、これらのフィルタは鋭いカットオフを有することが望ましい。必要とされる電気コンポーネントの一例は、特化されたIBM RFチップIBM43GAENGP0001である。この受信機は、バンドパス、自動ゲイン制御(AGC)、および直接RFサンプリング機能を実行する集積SiGeチップを含む。
【0040】
好ましい一実施例では、受信機設計は、異なる帯域からの測定が同じ時間基準に対して同じ時期に行なわれることを確実にする。信号が一旦デジタルに変換されると、アーキテクチャは、周波数間および衛星間のチャネル間バイアスを導入できない。安定したチャネル間バイアスのこの属性は、高品質のコヒーレントな測定を行なう上で非常に有用であり、電波妨害防止性能にとって重要である。ある特定の用途のための空間に妥協した設計が
直接ダウンコンバージョンの使用を妨げる場合、安定したバイアスを達成するために慎重な検討が適用される限り、従来のダウンコンバージョンを用いた他のアプローチが明らかであろう。
【0041】
図4を参照すると、A/D408内のA/D変換器のビット数は、設計選択の問題である。非ガウス電波妨害に対処し、STAP/SFAP機能による前処理を可能とするには、より多くのビットが必要となり得る。
【0042】
この発明の一局面によれば、単純で低コストのTCXO周波数基準410が採用されてもよい。原子発振器または恒温槽付水晶発振器(OCXO)といった一般的でないクロックは必要ない。そのようなTCXOは通常、かなり頑丈で、著しい振動および熱変動に耐えることができ、それでいて比較的安価(すなわち、約10ドルまたは20ドル)である。この発明の中心的な属性は、このシステムおよび方法全体が、受信機クロックにおける欠点をあまり感じないようにする。
【0043】
受信機が高ダイナミック用途に使用される場合、それは好ましくはある種の慣性基準412を採用する。高性能ナビゲーショングレードの慣性装置から戦術用グレードの慣性システムにわたるどのタイプの慣性装置412も、この発明と両立可能である。好ましい実施例では、チップスケール慣性装置が使用される。現在のチップスケール慣性は微小電気機械システム(Micro-Electromechanical System:MEMS)装置を含み、それは通常、最も低いコスト、サイズ、重量および出力プロファイルを提供する。MEMS INSの一例はハネウェル(Honeywell)HG−1930である。チップスケールMEMSジャイロの一例はシストロン・ドナー(Systron Donner)MEMSジャイロLCG50である。MEMS加速度計の一例はキオニックス(Kionix)3軸MEMS加速度計KXM52−1050である。
【0044】
好ましい一実施例では、iGPS受信機400全体は、図7に示すようなチップレベルで設計される。つまり、受信機カード702は、3軸チップスケール加速度計704と、3軸チップスケールジャイロスコープ706と、さまざまな他の構成要素、たとえば、図4−6で説明されたようなプリ選択フィルタ、プリアンプ、1つ以上のA/D変換器、TCXO、合成器、およびFPGA/コンピュータなどを含む。これらの構成要素は、公知の技術に従って、かつ任意の好適な態様で基板702上に分散され得る。
【0045】
以下の説明に示す別の主要な論拠は、MEMS技術が低ランダムノイズ−この発明に関する最大の誤差の源−を提供するようにも設計され得ることである。iGPSはバイアスをリアルタイムで推定するため、主要な残りの性能パラメータは、ランダム誤差、すなわちMEMS装置が秀でる傾向があるパラメータであり、最新の慣性グレードIMUのものさえ上回る可能性もある。チップスケール技術における潜在的な将来の改良も存在する。慣性装置のためのチップスケールで室温のボーズ・アインシュタイン凝縮体の研究開発は著しい見込みを保っている。たとえば、ジェイコブ レイシェル(Jakob Reichel)、「原子チップ」(Atom Chips)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)、2005年2月、第46頁を参照されたい。
【0046】
例示的な一実施例のさまざまな構成要素の概要をこれまで述べてきたが、この発明の基本的な機能をこれから述べる。第1に、コヒーレントな検出のための拡張されたドウェル(dwell)信号処理技術を説明する。これは高い電波妨害防止(AJ:anti-jam)性能を達成するための基盤である。次に、高いAJ性能を達成するために使用されるシステムレベルのナビゲーション処理を説明する。最後に、この発明の好ましい一実施例を詳細に説明し、実用的な動作のための一般的なシステムおよび方法を提供する。
【0047】
拡張されたドウェル信号処理
好ましい一実施例では、電波妨害防止性能は、(i)データストリッピング、(ii)時間同期、および(iii)コヒーレントな平均化という3つの基本ステップで達成される。図8は、処理シーケンスの第1のステップを示す。重度の干渉の区域204でたまたま運行中のユーザ202のために、搬送波上で変調されたGPSデータを除去することが望ましい。電波妨害または干渉をたまたま受けていない、GPS衛星206の共通視野にある基準局210は、その衛星のために50bpsのGPSデータストリームの明らかな推定値を得ることができる。LEOデータリンク220、224は、データリンクを通してデータをユーザ202にリアルタイム、高出力でテレメータ送信するために使用される。ユーザ202は次に、それ自体が受信したGPS信号208を、GPSを介して基準局210から受信したデータストリーム224と時系列に整列する。これらを混ぜ合わせることにより、50bpsの変調は信号から完全に取り除かれる。
【0048】
第2のステップは、ユーザクロックを公知の基準と同期させることである。典型的な水晶発振器は約1秒以上の期間にわたって多くのGPS L1の波長(19cm)だけドリフトするため、そのような期間にわたってGPS信号のコヒーレント積分を実行することはできない。クロック同期化は、LEO衛星222を用いて基準局210の公知の源からユーザ202に時刻を転送することによって実行される。
【0049】
基準局210は、それが時刻の正確な源を保持するGPS衛星206の視野内にあるため、GPS時刻に何らかのアクセスを有する。GPS衛星は原子時計−通常セシウム時計−を保持しているため、信号は、必要とされる20秒の平均化間隔にわたって10−12よりも良好に安定してとどまる可能性が高い。しかしながら、GPSから直接来るGPS時刻の測定に頼ることは依然として、クロック、天体暦、および環境からの誤差を含む誤差を受ける。好ましい実施例では、ユーザの位置決定に取り入れられるGPS衛星は、基準とユーザ受信機との間の共通視野として扱われる。GPS時刻は次に、この差動モードにおいて消える。
【0050】
ユーザ202での(すなわちユーザ受信機での)精密な時刻はまず、基準局210とユーザ202との間でLEO衛星222の共通モード測距を実行することによって得られる。ユーザ衛星からの搬送波測距方程式は、以下のとおりである。
【0051】
【数1】
【0052】
式中、ρは衛星までの推定距離であり、δρは推定距離の誤差であり、τsは衛星クロックオフセットであり、τrは受信機クロックオフセットであり、b0は(整数および実数値の曖昧成分およびすべてのハードウェア遅延を含む)集合体測距バイアスであり、ρt、ρi、およびρmは、対流圏、電離圏、および多重通路による誤差をそれぞれ示す。誤差εは受信機ノイズからの寄与である。
【0053】
これらのパラメータの多くは事前に(すなわち演繹的に)公知であるかまたは部分的に公知である。さらに、パラメータの多くは、それらが20秒の間隔にわたって1センチメートルを上回って変化する可能性がないよう制限され得るということが、確実に仮定できる。センチメートルレベルの計量は、GPS搬送波位相を扱う際の30ピコ秒の時間基準と相互交換可能に用いられる。なぜなら、30ピコ秒は、光が1センチメートルを進行するのにかかる時間量であるためである。基準局の場所はセンチメートルレベルの正確度で分かると仮定される。以下の微分のために、LEO衛星位置およびユーザ位置の双方が10cm以内の誤差で初期化されると仮定される。しかしながら、この条件が数10m以上
までかなり緩和され得ることが、後に示されるであろう。
【0054】
ユーザ慣性からの相対支援情報を用いて、ユーザ位置を相対的な意味において20秒の間隔にわたって1センチメートルよりも良好にトラッキングすることが可能である。したがって、LEO衛星までのユーザ距離測定値と基準局測定値との差を算出することによって得られる相対的な正確度は、以下の式をもたらす。
【0055】
【数2】
【0056】
上付添字は送信機を示す。下付添字は受信機を示す。とりわけ、ユーザが上述の差を形成する場合、宇宙船クロックは完全に相殺される。さしあたり、ほぼ完璧な天体暦を仮定する。これは以下に再度取り上げる。
【0057】
たった1つの差として残ることは、その変形が20秒の間隔にわたってほぼ1センチメートル未満に制限されるバイアス項である。図9に示すように、基準局210はそれ自体の不完全な時間計測を有する。つまり、基準局210はLEO衛星222の信号搬送波位相を測定する。それは次に、この測定データをLEO衛星データリンク220、224を介してユーザ202に送信する。ユーザ機器もLEO衛星の信号搬送波位相の測定を行なう。上述の関係により、Δφという差がユーザ機器によって形成され、基準とユーザクロックとの間に厳密なオフセットを提供し得る。実際、ユーザ受信機は、ユーザ受信機クロックにΔφを加えることにより、基準局クロックを仮想的に再構成する。
【0058】
この展開のいくつかの局面は注目に値する。第1に、原子時計を保持していないLEO衛星を用いて、20秒にわたり10-12よりも良好に精密な時刻が転送されてきた。イリジウムおよびグローバルスターは、宇宙環境に適した水晶発振器しか保持していないが、衛星クロック項は各時期において厳密に消えるため、このレベルの時刻転送が可能である。第2に、深刻な電波妨害の存在にも関わらず、ユーザ202は精密なレベルの時刻情報を利用可能である。これも、LEO信号がGPSのものよりもかなり強力であるために可能である。最後に、一般的でないクロックを使用しなくても、ユーザ機器は精密な時刻を利用可能である。ユーザは低コストのTCXOのみを必要とし、かなりのユーザ振動の存在下で運行可能である。
【0059】
次のステップは、トラッキングされる各GPS衛星のために、転送された時刻を用いて搬送波位相のフィードフォワード予測を形成することである。衛星は弱すぎてそれ自体ではトラッキングできないため、受信機は支援情報を用いて、予想される位相の1センチメートル以内でトラッキングループを予め測位しなければならない。共通視野時刻転送を用いると、基準局で測定されたGPS衛星位相とユーザにおいて測定されようとしているものとの間の関係は、以下の式によって与えられる。
【0060】
【数3】
【0061】
式中、衛星運動のために補正される測定差は、単に基準とユーザクロックとの差に終わる。GPS衛星クロックは、それが共通モードであるため、相殺される。
【0062】
【数4】
【0063】
予想される搬送波位相は、GPS衛星およびユーザ運動について補正された基準位相と、LEO衛星リンクによって提供された時刻転送補正値との合計である。
【0064】
この方法における第3のステップは、新しく形成された仮想の安定した時刻基準に対する入来GPS搬送波のコヒーレントな平均化である。GPSコード、搬送波およびデータがすべて除去され、慣性ナビゲーションユニットを用いて残りの相対運動が除去されたため、GPS搬送波上の唯一の残留変調は、ジャイロおよび加速度計のノイズならびにバイアスによるものであるはずである。
【0065】
【数5】
【0066】
バイアス項bは、ある特定の2つの違いの一因となる、すべて整数でゆっくり変化する電子バイアスの集合体を表わす。電波妨害の存在下では、搬送波がどんなに弱々しいものであっても、この発明はこれらのバイアス信号を推定してこの重大情報を復元するよう効果的に機能する。信号は搬送波位相において提供されるため、それらは慣性パラメータの非常に忠実度の高いセンチメートルレベルの測定値を提供する。
【0067】
時間ドメインでは、平均化間隔が長いほど、信号が一定のままである間に駆動される残留ノイズが低い。周波数ドメインでは、超狭帯域(準静的)同相(I)および直交(Q)搬送波位相がローパスフィルタされ、DCに完全に整合される。電波妨害によるノイズは、信号をゼロ周波数で通す間に除去される。このプロセスの定量的記述は、残留積分ノイズが以下のホワイトノイズ方程式によって与えられるということである。
【0068】
【数6】
【0069】
この方法により、GPS上で著しい電波妨害防止の改良を得ることが可能である。支援情報が電波妨害を超えてドライブできるようにするのにLEO出力が十分である場合、また、20秒にわたって<1cmのドリフトを維持可能な慣性ナビゲーションユニットをユーザが保持している場合には、GPS信号のコヒーレント積分時間は20msから20secに拡張し、30dBの改良である。さらに、これはこの発明の困難な上限ではない。
【0070】
システムレベルナビゲーション処理
一実施例によれば、測定値を組合せる「強力な」2つの違いの方法が使用される。このアプローチは例示的であるが、それが実際には、以下に説明する実施例と比べて或る欠点を有することが示される。この例では、相関の前に、各GPSチャネルから直接、LEO位相測定値が減算される。各GPSチャネルは残留位相測定値を出力して、ユーザによって受信されたようなGPS衛星信号の実際の位相と予測された位相との間の2つの差(GPSマイナスLEO、ユーザマイナス基準)の残留を提供する。
【0071】
慣性ユニットはユーザ位置をトラッキングする。しかしながら、慣性ユニットは一般に、所与の公称位置推定値x0について、ローカル水平ユーザフレームにおける公称ベクトル位置誤差を累算する。位相測定値は、慣性位置誤差のGPSを用いて最良のベクトル推定値δxを見つけるために、この公称ローカル水平慣性ユーザ位置について線形化され得る。
【0072】
【数7】
【0073】
式中、νは測定ノイズである。次に、項を定義して再編成することができる。
【0074】
【数8】
【0075】
視野内のn個のGPS衛星についての差動位相測定値を積み重ねると、結果として生じる連立方程式は以下のように定義され得る。
【0076】
【数9】
【0077】
簡単にするために、システムは、電波妨害下で動作される前に、遮るもののない空間における通常条件下で初期化され、動作していると仮定され得る。しかしながら、十分な処理出力を仮定すると、システムが電波妨害下でロックを取得することを妨げるものは何もない。
【0078】
【数10】
【0079】
バイアスが一定であると仮定される場合、位置誤差は、ユーザ位置誤差についての連立方程式を、コスト関数を最小限にする線形最小二乗適合法を用いて単に解くことにより、干渉および/または電波妨害の存在下で得られ得る。
【0080】
【数11】
【0081】
ベクトルδxは、各PDIに続くx0に対する推定位置誤差である。実際には、モデルが上述の衛星測距におけるすべての誤差源を含んでいないため、単純な補正は十分ではない。しかしながら、バイアスが浮遊できるようにすることにより、衛星運動に起因する変化するジオメトリは一般に、位置およびバイアスの双方を観測できるようになる。厳密な衛星ジオメトリに依存して、バイアスは一般に観測可能であり、それによりユーザの厳密な位置を特定する。典型的には、ユーザの上方でのLEO衛星の角度の大きい運動により、位置の3成分のうちの2つを約1分の時間スケール内で数センチメートル以内で求めるのに十分なジオメトリの変化がある。2つ以上のLEO衛星が使用される場合、以下に示すように、位置の3成分すべてがほぼ約1分以内に解明され得る。
【0082】
電波妨害防止性能が必要とされるものの、センチメートルレベルの正確度は必要でない状況では、システムはまた、モデル誤差状態が或る誤差を吸収するようにしてもよい。誤差残余を最小限に抑える推定器の特性を考えると、この挙動は適切である。したがって、推定器は、ほどほどのモデル化誤差が存在する場合でも依然として適度に実行する傾向がある。基本フィルタリングアプローチも、ユーザ、基準、および衛星位置誤差、大気および電離圏バイアス、ならびに多重経路を含むがそれらに限定されない、ゆっくり変化するバイアス状誤差源を吸収することができる。たとえば、LEO衛星における天体暦誤差δrは、上述の観測方程式において共通モードのバイアスを生成することが示され得る。
【0083】
【数12】
【0084】
単一の時刻についての修正された最小二乗の解は、以下のようになる。
【0085】
【数13】
【0086】
元の非摂動コスト関数を減算すると、以下のようになる。
【0087】
【数14】
【0088】
その引数は以下のために消える。
【0089】
【数15】
【0090】
この同じ結果は、その時間微分について続く。一般に、ユーザが電波妨害に抵抗する動作のためのセンチメートルレベルの正確度からの大きくない逸脱を許容できるならば、この展開は、電波妨害防止に必要な間隔にわたる拡張積分を可能にする共通モードのバイアスレートの存在証明を提供する。言い換えると、さまざまな誤差源が自動的に対処されるようセットアップされ得る。電波妨害の存在下で拡張されたプリ検出間隔を上手く可能にするように、共通モードバイアス成分をトラッキング可能な推定器を適用することが、重要である。
【0091】
好ましい実施例のアーキテクチャ
好ましい実施例では、ソフトウェア受信機実現化例において大量の信号処理が実行され、以下の説明はそのようなものとして仮定している。しかしながら、この発明は、特定の状況に鑑みて適切となるようなハードウェアおよびソフトウェアの任意の組合せを用いて実現されてもよい。
【0092】
図1は、好ましい処理構造のトップレベル表現を示す。このアーキテクチャは、システム受信機のための搬送波位相の精密なフィードフォワード推定のみに頼っており、時期を得てかつ正確にユーザ受信機についてルーティングされるべきである。これらの支援信号は、ナビゲーションプロセッサ110によって演繹的に生成される。これらの信号が受信機全体にわたって一旦利用可能となると、電波妨害条件におけるロックが進行し得る。
【0093】
信号は一般に、図の左から右に処理される。第1のステップは、STAP(またはSFAP)モジュール104(a)〜(c)によって表わされるような抽出を行なうことである。各入力帯域は別個の電波妨害シナリオおよびアンテナバイアスで終わるため、別個のSTAPモジュール104が各帯域、すなわちGPS L1、GPS L2、およびLEOに対して別個に作用する。輸送体の姿勢がわかっていれば適応ビーム形成がより効果的であるため、各STAPモジュール104は、輸送体姿勢のフィードフォワードによって支援される。
【0094】
次のシステムブロックは、衛星と帯域との各組合せについて1つずつあるトラッキングチャネル106(a)〜(c)のバンクである。各帯域L1およびL2のための少なくとも12個のGPS衛星チャネルと少なくとも3個のLEOチャネルとに対処するよう、十分な処理リソースが好ましくは割当てられている。各チャネルは、拡張カルマンフィルタ108からフィードフォワード信号を50Hzで受入れ、入来受信機位相の演繹的推定を含む。
【0095】
各チャネルが専用のトラッキングループを有する伝統的なGPS受信機とは異なり、好ましい実施例は、拡張カルマンフィルタ108に集中型調整器を作りだしている。このシステムブロックは、40を上回る統合された状態変数を伝搬して、各相関器、INS、集合体トラッキングループ状態、およびユーザクロックをモデル化してもよい。
【0096】
図10は、LEO衛星のための相関器の一例を示す。一般に、相関器1000は、図示されているように構成されたコード生成器1004、機能ブロック1006、ビットタイマおよびフレーム生成器ブロック1007、累算器1008、データ除去ブロック1010、および積分器ブロック1012を含み、ブロック1004、1006、および1007は、以下により詳細に説明されるさまざまなコマンドおよびデータ1009を受信する。
【0097】
トラッキングループは、搬送波ロック、ビット同期化、およびフレーム同期化、ならびにデータ復調を維持する。この点について、複素信号サンプル1002は左から右に処理される。CDMAグローバルスターといった拡散スペクトルLEO群については、入来信号からフィードフォワードコードが除去される。次に、入来搬送波位相のフィードフォワード予測が、入来する残留データ変調信号を分離する複素回転に変換され、それをベースバンドにダウンコンバートする。
【0098】
ビット同期化については、ガードナーアルゴリズムが適用され、シンボル期間の半分だけ隔てられた3つの連続する積分間隔に基づいた判別器を作り出す。フレーム同期化は、予め定められたシンボルシーケンスを探索することによって適用される。搬送波トラッキングについては、QPSKデータが次に除去される。フレームにおけるある特定の間隔にわたって、各LEO衛星はデータをブロードキャストする。チャネルは、このエネルギを
同相(I)および直交(Q)搬送波位相誤差トラッキング成分に統合するよう設計されている(1014)。これらの生のIおよびQは、搬送波位相トラッキング誤差角度への変換、および拡張カルマンフィルタ(図1の項目108)への組み込みのために、ナビゲーションプリプロセッサ(図1の項目110)にルーティングされる。LEOの生の出力の速度は、高い電波妨害下でも、高いLEOブロードキャスト出力のために通常10Hzであるか、またはそれよりも速い。
【0099】
図11は、例示的なGPS相関器アーキテクチャ1100を示し、それは一般に、図示されているように構成されたNCO1008、コード生成器1010、および積分器1004、1006を含む。ここでも、複素信号サンプル1002は左から右に処理される。信号はまず、コードおよびフィードフォワード搬送波双方の除去を受け、搬送波を回転させてほぼゼロ周波数まで精密にダウンコンバートされる。フィードフォワード補正値はナビゲーションプリプロセッサ(図1の項目110)によって生成され、(LEOトラッキングから間接的に生じる)ユーザクロック推定値、ストリーミングフィードフォワード天体暦、およびGPSによって更新されるようなINSによって行なわれるユーザ位置の瞬時推定値からの寄与からなる。この点で、残留搬送波は効果的に準静的である。すべての位相回転は、残留システムバイアスおよび50bpsのGPSデータ変調を別にすれば、効果的に除去されている。
【0100】
図11を引続き参照すると、2つの半分のチャネルがともにグループ化されて、コードと搬送波のIおよびQ測定値との双方を有する完全なトラッキングチャネルを形成する。上半分チャネルのPRN生成器は「進み」マイナス「遅れ」(E−L)コード1020を出力するよう命令され、一方、下半分チャネルのそれは定時コード1020を出力するよう命令される。すべてのチャネル相関器出力は、ナビゲーションソリューションへの組み込みのためにナビゲーションプリプロセッサ(図1の項目110)にルーティングされる。
【0101】
図12は、例示的なナビゲーションサポート機能を示す。この図は、システム1200によって入来データ1201に対して行なわれるさまざまな動作を概略的に示す。一般に、システム1200は以下の機能ブロック、すなわち、GPSデータ支援ブロック1208、データストリッピングおよび拡張ドウェルブロック1206、デコードブロック1202、測距誤差ブロック1210、大気補正ブロック1212、ストリーミング基準データブロック1214、天体暦生成ブロック1216、ECEFへのLEO天体暦ブロック1218、およびECEFへのGPS天体暦ブロック1216を含む。ナビゲーションプリプロセッサは、相関器からの生のIおよびQを、2つの主な目的、すなわち(i)ストリーミングフィードフォワード支援生成、および(ii)距離測定値変換のために使用する。
【0102】
フィードフォワード機能のために、ナビゲーションプリプロセッサは、LEO衛星から来るデータストリームをデコードする(1202)。このデータは、(i)50bpsのフィードフォワードGPSデータ支援ストリームと(ii)地上基準測定値と(iii)ストリーミング天体暦フィードフォワード予測とを生成するために使用可能な、コード化されたメッセージを含む。
【0103】
距離測定値変換のために、生のIおよびQ測定値は、生の形から測距誤差1204に変換される。電波妨害の場合にはGPS信号は非常に弱いため、GPSのIおよびQは最初に、以下に説明するブロック1206において累算される。次に、LEOおよびGPS双方のIおよびQが、以下の計算を介して測距誤差1204に変換される。
【0104】
【数16】
【0105】
この発明では搬送波位相に主に重きが置かれているが、前述のコード測距判別器に関連付けられた二乗損失が、ここに提供されるこの新しいコヒーレントなコード位相判別器にあてはまらないことに留意することが重要である。平均化間隔がJ/Sの二乗として増加するコードのみの判別器とは異なり、この判別器は、平均化間隔をJ/Sに単純に比例して減少させる。性能の改良は劇的である。
【0106】
結果として生じるコヒーレントな受信機は、コードおよび搬送機双方の属性を十分に利用できる。極度の電波妨害状況下にあっても、受信機が搬送波ロックを維持する限り、それは、通常の位置決定、微分位置決定、およびGPS時刻の解像度を含むがこれらに限定されない任意の伝統的なGPSまたは衛星のナビゲーションのために使用可能なコード測定値を提供することもできる。さらに、可変チップおよびマルチチップ相関器間隔保持といったコード性能を高めるために使用されるさまざまな技術が、この電波妨害防止システムに適用可能であり、または両立可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0107】
図13は、20msのGPSサンプルのより長い積分時間へのさらなる累積のための例示的な方法を示す。図示されているように、GPSデータビットシーケンサ1302は、演繹的に公知のデータビットを入来するIおよびQ測定値と整列させて、データ変調を取り除く。GPSの将来のバージョンといった他の全地球的ナビゲーション衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)のために、あらゆる形のシンボル変調が同一の態様で除去可能である。次に、準静的測定値が(ブロック1304および1306を介して)プリ検出間隔にわたって平均化される。PDIは長い期間であって、好ましい実施例ではたとえば5、10または20秒であり、電波妨害レベルの関数であるより長いコヒーレント積分時間に対応している。
【0108】
LEOおよびGPSトラッキングチャネルの双方からの相関器出力測定値の全数は、システム状態更新のための基盤である。完全更新間において2つ以上のLEO測定値が利用可能な場合には、LEOの更新速度で位置状態の部分空間を更新し、それらをナビゲーションソリューション全体に取入れることが可能である。単一のLEO衛星しか利用可能でない場合には、ユーザクロックのみが更新される。
【0109】
慣性プロセッサ(図1の112)は、生の慣性データ111を入力として受取り、ずれを含む予め較正された誤差を補正し、バイアス状態推定値を適用し、ストラップダウンおよびナビゲーションアルゴリズムを行なって、広帯域幅のユーザ位置および姿勢113を計算する。慣性プリプロセッサ112の出力は、システムのための広帯域幅の位置および姿勢出力双方と、信号処理のための支援データとを提供する。
【0110】
この発明の別の局面は、図14に示す中央調整器である。一般に、調整器1400は、機能ブロック1405、1403および1404と通信可能に結合され、図に示すように前述のさまざまな信号と相互作用するカルマンフィルタ108を含む。公表された電波妨害保護を提供するために、受信機は、多くの場合、大きなダイナミックレンジにわたってサブセンチメートルレベルまで良好な、極めて正確なシステムのモデルを必要とする。正
確度および適時性の双方について表現されたこの許容範囲は、天体暦、基準位相測定値、および慣性出力にとって特に重要である。完全なシステムモデル(入れ子になった項目410、412および1414)は拡張カルマンフィルタ108の内部にあり、それはしたがって、図示されているような受信機におけるすべての相関器への搬送波位相フィードフォワード信号1402を生成する。
【0111】
電波妨害防止システムが適正に機能するための1つの鍵は、バイアス推定値を許容範囲内に保つことである。フィルタはすべての相関器測定値を採取し、ナビゲーションソリューションを慣性ソリューションと組合せて、慣性バイアス残余を求める。GPS相関器出力が利用可能となる完全システムの更新中、システム全体の拡張カルマンフィルタ状態は更新され、新しいバイアスが慣性出力に適用される。
【0112】
以下の節は、電波妨害防止動作に必要な許容範囲を得るために必要な高性能システムモデルのさまざまな局面を説明する。
【0113】
好ましい一実施例の推定器は、位置誤差、ユーザクロック時刻、および全測距バイアスを直接推定するよう構成されている。このアプローチは、厳密な搬送波位相を、それが各相関器によって受信されるようにフィードフォワードするよう、より改善されたものである。一般的な単一の違いの形から始まって、観測モデルは、GPSまたはLEOいずれかの単一の衛星の測定値について、以下のように構築され得る。
【0114】
【数17】
【0115】
式中、ユーザ位置xは、INSによって供給される公称アンテナ位置x0について線形化され、大気誤差項は、衛星からユーザへのダウンリンクに関連付けられると解釈され、bは、周期曖昧性および電子バイアスを含むすべての非モデル化の影響を含む一般的な集合体バイアスである。さらなる定義は以下のように与えられる。
【0116】
【数18】
【0117】
モデルを介して、または直接測定を介して得られる大気誤差補正値も、生の単一の差に適用される。τreferenceおよび基準リンク大気誤差が、周知のネットワーク技術を適用することにより、地上基準局について精密にわかると仮定される。たとえば、W.I.バーティガー(Bertiger)、Y.E.バー・セバー(Bar-Sever)、B.J.ヘインズ(Haines)、B.A.イイジマ(Iijima)、S.M.リクテン(Lichten)、U.J.リンドクィスター(Lindqwister)、A.J.マンヌッチ(Mannucci)、R.J.ムエラーショーエン(Muellerschoen)、T.N.マンソン(Munson)、A.W.ムーア(Moore)、L.J.ロマンス(Romans)、B.D.ウィルソン(Wilson)、S.C.ウー(Wu)、T.P
.ヤンク(Yunck)、G.ピーシンガー(Piesinger)、およびM.L.ホワイトヘッド(Whitehead)、「プロトタイプリアルタイム広域差動GPSシステム」(A Prototype Real-Time Wide Area Differential GPS System)、ナビゲーション:ナビゲーション学会会報(Journal of the Institute of Navigation)、第44巻、第4号、1998年、433−447頁を参照されたい。次にユーザ測定値が積み重ねられて、以下のような線形の1組の観測値を形成する。
【0118】
【数19】
【0119】
この表現では、衛星ジオメトリ行列はここで、任意のGPSまたはLEO衛星に一般化され、バイアスベクトルβは、各GPSまたはLEO衛星についての衛星バイアスに対応しており、時間バイアスΔτは、単一の差のクロックバイアス(τuser−τreference)に対応している。
【0120】
この発明の一局面によれば、GPSおよびLEO衛星は状態空間表現において区分化される。一方、GPS衛星は、閉塞状態が優勢である際にそれらが集団でジオメトリを向上させる程度に、LEO衛星と相互交換可能に扱われなければならない。さらに、この構造は、通常視野内に1〜3個あり得るより高出力のLEO状態変数のための別個のかつより速い更新速度にも対処しなければならない。電波妨害下での効果を最大にするため、システムおよび方法は最適な特性を正確に呈示しなければならない。
【0121】
この表現が使用可能となる前に、バイアス状態の共通モードが、単一の差の搬送波位相観測可能量のためのクロックバイアスと区別できないことに留意しなければならない。状態変数を定義する強力なアプローチは、ある特定の衛星を「マスタ」衛星として選択し、そのジオメトリおよびクロックバイアスを、最初に上に示したような他のすべてから減算することを伴う。残念ながら、このアプローチは、相互交換不可能な方法で衛星および測定値に重み付けする望ましくない不揃いな結果を生み出す。位置の解は、どの衛星をマスタに選択するかによって影響を受ける。強力なアプローチは、ジオメトリが変化し、また、2つ以上のLEO衛星が利用可能である可能性がある状態では実現が面倒であるだけでなく、解が最適でなく、高電波妨害シナリオから閉塞された環境に至って必要とされる性能の全スペクトルを取扱うことができるシステムを作り出すにはあまり適していない。後者の場合は、トラッキング中の絶えず変化する1組の衛星を生み出すため、マスタ衛星の指定とは両立不可能である。
【0122】
数値的な困難を防ぐには、状態変数の形をした、明らかに定義された新しい1組のバイアスモードを作り出すことが望ましい。新しい1組のバイアスおよびクロック状態は、(i)観測不可能なモードを吸収し、(ii)共通モードに直交する1組の正規直交バイアス状態にするよう、定義される。
【0123】
【数20】
【0124】
トラッキングのための所望の特性は以下のとおりである。(i)ユーザクロックを独立した状態推定値として分離する。(ii)バランスの取れた非優先的態様で各SVを扱う「考慮したすべての」測定値処理構造、すなわち、構造内の特定のSVおよび関連する測定値の相互交換または回転とは独立したソリューションを確立する。(iii)GPS衛星およびLEO衛星が非優先的にかつ相互交換可能に処理されるようにすることにより、閉塞を取扱う。(iv)輸送体の並進および回転による衛星および輸送体アンテナの中での頻繁なスイッチングにもかかわらず、最適な解を維持する。(v)速いLEO測定値と遅いGPS測定値とのマルチレート分割に対処する。および(vi)頑強な拡張カルマンフィルタの実現化例と両立し得るように状態変数が数値的に良好に定義されることを確実にする。
【0125】
視野内の5個のGPS衛星および視野内の1個のLEO衛星について、バイアス状態の例示的な区分化は以下のように与えられる。
【0126】
【数21】
【0127】
正規直交下三角構造の利点は、多数のLEO衛星が視野内にある場合により容易に明らかとなる。LEO衛星状態はGPS衛星よりも速い時間フレームで更新されなければならず、一方、同時に、GPSおよびLEO双方の他のすべての衛星測定値に対して各測定値を非優先的で等しく重み付けされた態様で扱う必要がある。以下の例は、トラッキングされる衛星全体(GPS+LEO)の任意の数nについての行列Qのための陽の生成関数を示す。この例はまた、3個のLEO衛星が視野内にある場合の区分化も示している。
【0128】
【数22】
【0129】
この三角「V」正規直交行列構造は、LEOトラッキング状態変数をGPSトラッキング状態変数と混ぜ合わせることなく、LEOトラッキングループ状態の更新がより速い時間スケジュールで起こることを可能にする。好ましい実施例の上部中央のブロックゼロは、相対GPSトラッキングモードがLEOトラッキング状態とは独立していることを確実にする。左下のブロックの行列要素は、LEO衛星に対してすべて共通モードである。したがって、LEOトラッキングループが迅速に更新されている最中の拡張GPSドウェルの中間間隔の間、GPSトラッキング状態は、次数を減らした新しいLEOトラッキングシステムに対する受動的な共通モードの寄与因子として表現される。
【0130】
【数23】
【0131】
姿勢レバーアーム
実際には、INSは輸送体上のGPSアンテナとは連結されない。慣性からGPSアンテナへのレバーアームdは、INS誤差rとGPSアンテナオフセットδxとのベクトルずれを、(3×3)姿勢行列Aの関数として、以下のように規定する。
【0132】
【数24】
【0133】
この方程式を、小さい姿勢動揺Ψのベクトルのための公称姿勢A0について線形化することが可能である。
【0134】
【数25】
【0135】
慣性ナビゲーションシステムモデル
慣性システムの特性は、INSベクトル誤差運動方程式の線形化された表現を分析することによって評価可能である(たとえば、I.Y.バー・アイツハック(Bar-Itzhack)およびN.バーマン(Berman)、「慣性ナビゲーションシステムへの制御理論アプローチ
」(Control Theoretic Approach to Inertial Navigation Systems)、AIAA ペーパー 87−2591、1987年を参照されたい)。
【0136】
【数26】
【0137】
式中、xは状態ベクトルであり、wはランダムノイズ誤差のベクトルである。慣性プロセッサのために、制御変数uは、予め処理されたストラップダウン加速度計およびレートジャイロ測定値に対応する。実際には、誤差方程式のために、これらの制御入力は正確に相殺され、したがってゼロと同一になると仮定される。我々は、3つの空間次元の各々においてジャイロおよび加速度計のバイアスについての6つの追加状態を追加して、この発明においてこれらの主要パラメータがどのようにリアルタイムで推定可能かを示す。
【0138】
次に、慣性システムダイナミックスが、以下の15×15の連立方程式におけるような状態空間の形で線形化され、表わされる。
【0139】
【数27】
【0140】
式中、gは重力による局所加速度であり、Rは地球の半径であり、ΩNおよびΩDはそれぞれ、北方向および下方向に射影された地球回転ベクトルの成分である。
【0141】
相関器モデル
GPSプリ検出間隔にわたって発生するLEO衛星からの迅速なクロック更新に鑑み、また、拡張された期間にわたって慣性ノイズの効果を正確にモデル化するためには、受信機相関器のモデルを保持することも好ましい。この統合モデルは、受信機NCOを内蔵状態変数として命令するためにも使用される。我々の目的は、以下のような標準測定値更新方程式に準拠することである。
【0142】
【数28】
【0143】
ここで状態変数は推定器状態であると考えられるため、バー表記が適用されている。完全な相関器モデルは、各衛星のためにフィードフォワード受信された信号位相を積み重ねることによって形成される。
【0144】
【数29】
【0145】
この発明の一局面は、相関器の適正なモデル化を伴う。慣性、GPS/LEOトラッキングループ、および受信機クロックは通常、独立して動作するが、サブシステムは相関器
において、極めて密なセンチメートルレベルの許容範囲で相互接続される。相関器は、状態フィードバックのための主要メカニズムを提供する。各サブシステムは異なる更新速度で動作し得るため、各入力は好ましくは、相関器モデルにおいて、正確な状態フィードを十分に利用するよう勘案される。
【0146】
統合システム
ここで、考慮したすべての相関器、慣性、トラッキングバイアス、およびクロック状態方程式を以下のような単一の統合システムに組合せることが可能である。
【0147】
【数30】
【0148】
【数31】
【0149】
実際の相関器出力は、トラッキング中の各衛星のための積分された位相を以下のように積み重ねることによってモデル化される。
【0150】
【数32】
【0151】
以前の近似のため、この表現は、それが相関器出力のフィードフォワード成分と組合されない限り、および組合されるまで、スタンドアローンでは無効である。その場合、完全な相関器総出力は、以下の式によって与えられる。
【0152】
【数33】
【0153】
この離散モデルを用いると、ここでカルマンフィルタを適用することが可能である。上述の表現は、ある特定の位置および姿勢について線形化されて示されている。慣性および測距方程式は実際には非線形であるため、実際の実現化例は拡張カルマンフィルタ(図1の108)であることが必要とされる。この離散モデルを用いて厳密なバイアスについて解くことは、PDIの間の遅い成分ドリフトを捉え、誤差モデルが厳密になるようにする。各衛星の周囲の電波妨害に依存して、GPS搬送波位相測定値の対角線RVは定常状態で約(0.5cm)2という近傍に位置する。誤差成長は、システムを駆動するホワイトプロセスノイズの出力スペクトル密度Rwpsdを積分することによって求められてもよい。
【0154】
【数34】
【0155】
式中、Pは帰納的状態共分散行列であり、Mは演繹的状態共分散行列である。動作中、好ましい実施例は完全拡張カルマンフィルタを用いて、初期状態、特定の非線形ジオメトリ、および時間変動J/S比率についてダイナミックに調節する。次に、測定値更新が以下の式によって与えられる。
【0156】
【数35】
【0157】
分析のためには、最適な推定器を用いて、Pが定常状態のポスト測定共分散となり、Mが定常状態のプリ測定共分散であるように観測ゲインを選択することが適切である。最適な定常状態のゲインLは、周知の代数のリッカチ方程式を解くことよって計算されてもよい。完全な閉ループシステムの固有値λはその場合、以下のように計算されてもよい。
【0158】
【数36】
【0159】
これまでの説明は、電波妨害防止システム動作の基本概念を書き記してきた。しかしながら、我々は、このシステムを極めて要求の厳しい状況での使用にとって実用的にするように、好ましい実施例を実現してきた。好ましい実施例では、2つの違いというよりもむしろ単一の違いを採用して、各測距源をトラッキングしている。このより一般的な形は、多数のLEO衛星がトラッキングされ、衛星が視野内外に移行している間に、最小限の数のチャネルトラッキング源でダイナミック環境を最良に取扱う。
【0160】
特にLEOの角度の大きい運動から生じる必須のジオメトリが存在する場合、この受信機は状態バイアスについても解き、GPSおよびLEO衛星からの搬送波位相のみを用いて正確な三次元の位置決定を明らかにする。この能力は、電波妨害下だけでなく、通常の
GPS受信機にとってユーザプラットフォームダイナミクスが過酷すぎてトラッキングできない通常の信号条件の下でも拡張する。トラッキング状態バイアスには約1分または2分の時定数が与えられるべきである。
【0161】
拡張カルマンフィルタは、4つの成分、すなわち、受信機のすべての相関器に搬送波位相フィードフォワードを提供する連続的な時刻更新の形と、3つのマルチレート時刻/測定値更新とに細分される。3つのマルチレート間隔は、プロセスおよび測定ノイズのINS、LEO、およびGPS衛星スケールに対応している。これらの間隔は、特定のダイナミック環境および電波妨害環境に合わせられる。
【0162】
図15は、拡張カルマンフィルタ108の動作のシーケンスのフローチャートを示す。ブロック1502で、フィードフォワード位相およびフィードフォワードGPSデータビットが生成される。連続システムの次数を減らしたバージョンが、以下のように搬送波位相フィードフォワードを生成するために使用される。
【0163】
【数37】
【0164】
次のINS、LEOおよびGPS更新(1510、1512、および1514)もフローチャートに示されている。一般に、最も速い間隔はTINSで、それはユーザプラットフォームのダイナミクスを捉えるのに十分速い(1508)。最も遅い間隔に次いで遅い間隔はTLEO(1506)で、それはLEOデータ速度と概して同程度に設定される。最も遅い間隔はTGPS(1504)で、それは瞬時に検出されたJ/S比率に基づいてダイナミックに設定される。厳密値が特定の実現化例を考慮してカルマンフィルタを用いて最適に求められるべきである一方で、TGPSは以下の近傍に位置する。
【0165】
【数38】
【0166】
TGPSが20秒である場合に結果として生じる誤差成長周期を図16に示す。完全なシステムの更新の各々において、帰納的な位置知識は、相関器出力測定値から利用可能な新しい情報に従って減少する。その間に、ジャイロの角度のランダムウォークによって支配されるシステムプロセスノイズが、誤差不確実性を成長させる。カルマンゲインおよび処理間隔は、慣性誤差をほんのわずかの波長内に保つように選択される。
【0167】
システムの基本的な初期化は、従来のGPS受信機の周知の動作と違わない簡単な方法で実行されてもよい。コードとドップラーとの組合せの二次元探索空間は、衛星信号を見つけるために掃引される。受信機は、電波妨害のない状況下で取得し、電波妨害が発生すると継続する。受信機は電波妨害の状況下でも取得可能であり、この際、初期探索は電波妨害のない状況下よりも比例して長くかかる。
【0168】
電波妨害防止システムは、慣性システムを用いた動作に限定されない。それは、低ダイナミックまたは静的実現化例に対しても機能できる。低ダイナミックな場合のための完全なシステムは、以下のように見える。
【0169】
【数39】
【0170】
静的な場合は、ベロシティ状態を除去することによって実現される。
ナビゲーション出力の完全性はしばしば、決定的に重要である。ここに説明するナビゲーションシステムおよび方法は、完全性の最高可能しきい値を提供することと十分に両立し得る。電波妨害状況下ですら、拡張カルマンフィルタ108の定常状態への集束時には、異常な状況を検出するために測定値残余において利用可能な著しい量の冗長な情報がある。完全性アプローチは、周知の受信機自律完全性モニタリング(Receiver Autonomous Integrity Monitoring:RAIM)の変形を使用する。大抵の状態変数がセンチメートルレベルの正確度へと集束してきたこと、および慣性バイアス状態−特に位置誤差−に対する更新がセンチメートルレベルの正確度で起こっていることが仮定される。したがって、RAIM残余を以下のように構築することが可能である。
【0171】
【数40】
【0172】
これは、n−4の自由度を効果的に有するカイ二乗分布を形成する。衛星の十分な冗長性、すなわちn>4を考えると、故障仮説をテストするためにしきい値を残余に適用することができる。さらなる冗長性、すなわちn>5、および電波妨害防止余裕を考えると、より精巧なRAIM実現化例は障害検出および排除が可能である。
【0173】
前述のように、使用される任意の所与のLEO衛星222がτrefへのアクセスを有することを確実にするために、地上モニタ局のネットワークおよび従来のGPS時刻転送が採用されてもよい。これらの地上モニタ局が利用可能でない場合、採用可能な追加の代替例がある。第1のものは、図17に示すような移動地上基準局1702である。基準局1702の精密な相対位置が運動学的GPSから利用可能である場合、この発明の基地局として機能するために必要とされる精密な基準クロックτmobileは、静止プラットフォームおよび移動プラットフォームの双方からの位相測定値から、最小二乗の意味において以下のように解かれてもよい。
【0174】
【数41】
【0175】
LEO電波到達範囲よりも大きい距離にわたってネットワーク時間を転送する別の手段は、図18に示すような相互リンクを用いることである。この実施例では、隣接する宇宙船1802と1804との間で双方向のコヒーレントな測距が実行される。各LEO宇宙船はコヒーレントなクロックを用いて動作するため、各宇宙船クロックの誤差寄与は精密に相殺される。したがって、各輸送体位置の精密な知識を用いて、マスタ地上局1802の基準時間を再構成することが可能である。
【0176】
好ましい実施例のための同一の展開を共通視野を用いて呼出すと、以下のようになる。
【0177】
【数42】
【0178】
この結果は次に、同一の結果を共通視野展開として達成するために前に送られてもよい。すなわち、以下のようになる。
【0179】
【数43】
【0180】
前述の詳細な説明において少なくとも1つの例示的な実施例が提示されてきたが、莫大な数の変形が存在することが理解されるはずである。また、例示的な実施例は単なる例であり、この発明の範囲、適用可能性、または構成を多少なりとも制限するよう意図されてはいないことも理解されるはずである。むしろ、前述の詳細な説明は、例示的な実施例を実現するための便利な道路地図を当業者に提供する。添付された特許請求の範囲およびその法的均等物に述べられるようなこの発明の範囲から逸脱することなく、要素の機能および構成においてさまざまな変更が行なわれ得ることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】この発明に従った例示的なユーザ送受信機アーキテクチャの概略全体図である。
【図2】この発明に従ったシステムの動作を示す概略全体図である。
【図3】この発明に従った基準ネットワークの概略全体図である。
【図4】この発明の一実施例に従った受信機の機能ブロック図である。
【図5】受信機および制御放射パターンアンテナ(CRPA)の機能ブロック図である。
【図6】この発明に従った受信機およびマルチビームステアリングアンテナ電子回路パッケージの機能ブロック図である。
【図7】この発明の一実施例に従った例示的な受信機構成である。
【図8】例示的なデータストリッピングプロセスの概略全体図である。
【図9】例示的な時刻転送プロセスの概略全体図である。
【図10】例示的な地球低軌道(LEO)相関器の機能ブロック図である。
【図11】例示的なGPS相関器の機能ブロック図である。
【図12】例示的なナビゲーションプロセッサの機能ブロック図である。
【図13】拡張ドウェルプロセスの機能ブロック図である。
【図14】拡張カルマンフィルタの機能ブロック図である。
【図15】例示的な更新プロセスを示すフローチャートである。
【図16】例示的な誤差周期の図形描写である。
【図17】移動基準を有するナビゲーションシステムの概略全体図である。
【図18】LEO相互リンクを示すシステムの概略全体図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、ナビゲーションシステムに関し、より特定的には、電波妨害および干渉が起こりがちな環境で動作する衛星ナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
近年、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)のユーザらは、リアルタイムの3次元ナビゲーション能力を、以前には利用できなかった性能レベルで享受してきた。そのようなGPSシステムは、干渉および電波妨害に対するそれらの感受性を除けば、正確な全世界的衛星ナビゲーションの約束を大いに果たしてきた。にもかかわらず、ユーザらは引続き、特に正確度および完全性−すなわち、ナビゲーションシステムがナビゲーション情報の誤りを検出する能力−について、ますます高いナビゲーション性能を要求している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、電波妨害および/または干渉の存在は、特に或る軍事用途または生命安全用途において、GPSをナビゲーションの手段として十分に頼りにすることを妨げてきた。民間航空機では、電波妨害による安全性リスクは通常、問題ではない。航空機を代わりの飛行場で無事地上に戻すために、さまざまな不測事態への対策が開発されてきた。しかしながら、現在構築されているようなGPSへの依存は、航空交通、ひいては商業一般への大規模な混乱のリスクをもたらす恐れがある。さらに、地上および海上輸送、ならびに電力配電、インターネット、携帯電話および金融取引の時間計測といった日常的なインフラストラクチャにGPSが取り入れられているまでの増加は、電波妨害からのGPS信号の意図的な混乱による潜在的な社会的脆弱性の増大につながる。
【0004】
GPS信号は比較的弱い(ユーザは全方向性アンテナの端子でほぼ−160dBWを受信する)ため、ほんの少しの電波妨害でナビゲーション能力は低下する。たとえば、低コストの5Wの妨害器は、特にユーザとの見通し線接触がある場合、半径数10マイルでのGPSの使用を混乱させるのに十分である。そのような感受性は、衛星ナビゲーションの実用性に不利に働き、反対に、飛行に使用される従来のより高出力のナビゲーション支援装置に有利に働く傾向があり、それらの中にはGPSよりも前から存在するものもあり、VOR、DME、ILS、TACAN、およびLORAN−Cを含む。
【0005】
現在、航空機はGPSを補助手段ナビゲーションのためにしか使用できない。伝統的なナビゲーション支援装置は通常運行には十分であり、商業を混乱させるよう、そそのかされた妨害者に対抗するのに十分な出力レベルを有する。したがって、GPSの信号脆弱性のため、衛星ナビゲーションの著しい性能およびコスト利点を利用する動機はほとんどない。FAAの広域補強システム(Wide Area Augmentation System:WAAS)および狭域補強システム(Local Area Augmentation System:LAAS)は、低コストの航空機の着陸能力を、以前はそれが全く利用できなかった国中の何千もの空港にもたらす可能性を提供する。今日、米国は、2つの民間の生命安全ナビゲーションシステム、すなわち、従来の地上ベースのシステムと、より新しくより有能な衛星ベースのシステムとのために資金を提供している。
【0006】
電波妨害と格闘するために、多数の先行技術が利用可能である。これらの方法は(i)
特殊な衛星設計と(ii)受信機設計とに焦点を当てている。衛星では、たとえば、地上への生の出力のブロードキャストを単純に増加させることは常時可能である。しかしながら、生の出力についての代償があり、追加出力の各ワットに比例して衛星ペイロードおよび打上げコストがそれに応じて増えるため、ブロードキャスト出力の著しい増加は急速に高価になる。別のアプローチは、付加的な処理ゲインを可能にし得るより幅広い帯域幅のブロードキャストを使用することである。ここでも支払うべき代償があり、有限のスペクトルを多数の目的のために効率的に使用することは著しく全世界的調整を必要とする。GPSはそれに割当てられた特定のブロードキャストスペクトルを有しており、近い将来におけるいかなるときも、何らかの新しいスペクトルが割当てられることは起こりそうもない。
【0007】
電波妨害の問題への受信機のアプローチは一般に(i)アンテナパターン成形、(ii)信号削除、および(iii)平均化という3つの種類に分けられる。アンテナパターン成形は、制御放射パターンアンテナ(Controlled Radiation Pattern Antenna:CRPA)と呼ばれるアンテナの多要素アダプティブアレイを使用して、ビームを直接衛星に電子的に向け、それにより妨害器を排除する。CRPAはまた、推定される妨害器方向にヌル(null)を向けることもできる。CRPAはたいていの状況でかなり効果的であり得るが、それらは一般に高価でかつ嵩高い。それらはまた、妨害器の見通し線がたまたま衛星とほぼ一致する場合、または、さらに悪いことに、いくつかの分散された妨害器が使用される場合に、効果が下がるという欠点を有する。この場合、物理法則は、所与のCRPA設計のための1組の妨害器に適用可能なビームおよびヌルの数および質に数学的制約を置く。
【0008】
削除(excision)とは、GPS受信機において実行される広帯域のプリ相関信号処理を指す。GPSの信号特性は周知であるため、電波妨害によるいかなる余剰出力も、受信機によってリアルタイムで直接観測可能であり、ノッチフィルタ、パルス消去、または任意の数の他のより精巧な技術を介して削除可能である。削除は効果的でかつ安価な信号処理ステップであり、一般に優れた実践の問題として実行されるべきである。しかしながら、それ自体としては、干渉または電波妨害の影響を全て排除するには不十分である。たとえば、妨害するものが広帯域ノイズである場合、受信機は電波妨害の存在を検出するが、その性質の演繹的知識がなければ、それのいずれかの部分を選択的に除去するように削除を適用できないであろう。時空間適応処理(Space Time Adaptive Processing:STAP)および空間周波数適応処理(Space Frequency Adaptive Processing:SFAP)として公知の現在の信号処理技術は、CRPAおよび削除を1つの処理段階に組合せている。
【0009】
平均化技術は、受信機のプリ検出間隔(pre-detection interval:PDI)中にできるだけ多くの電波妨害をフィルタで取除くことを目的としている。平均化の最も基本的な形は、受信機のプリ検出帯域幅(通常50Hz)に対するプリ相関帯域幅(20.46MHz)の比率によって提供される処理ゲインである。P(Y)コードの受信機については、平均化は、基本レベルの56dBの電波妨害耐性を、ここでは非常に低いダイナミクスに対してのみ提供する。このレベルの保護を改良しようとする試みは、実用的な実現を妨げるいくつかの障壁に伝統的に遭遇してきた。第1の障壁は、GPS搬送波上に重畳された50bpsのデータ変調から生じる。この変調はPDIを20msに効果的に制限する。
【0010】
データストリッピングは、20msというPDI制限を回避しようとするために使用される一方法である。GPSブロードキャストメッセージはまれに、または予測可能な方法で変わるため、予め記録されたフレームを適用してデータ変調の多くを除去することがしばしば可能である。残念ながら、軍事用途または生命安全用途については、この方法は常時頼りにはできない。なぜなら、予め記録されたデータメッセージは実際のブロードキャストメッセージを常時トラッキングしているわけではないためである。2つのデータストリーム間の一貫性は、新しい天体暦のアップロード、誤操作、およびシステム故障を含む
任意の数の要因によって狂う場合がある。どのような非一貫性もフェイルソフトに寄与しない。データストリッピングアプローチの主要な改良点は、地球低軌道(Law Earth Orbiting:LEO)衛星がどのようにして、動作の隙間をなくすようにGPSデータビットの全地球フィードフォワードを提供できるか、を教示している。たとえば、2004年6月22日出願の「GPS性能向上のためのリアルタイムデータ支援」(Real Time Data Aiding for Enhanced GPS Performance)と題された米国特許出願連続番号第10/873,581号を参照されたい。
【0011】
残念ながら、データがGPS搬送波から除去されるか否かに関わらず、プリ検出帯域幅を狭くするよう試みること、または低信号レベル測定値を使用することに、著しい障害が残っている。GPS信号は、PRNコード変調および搬送波周波数を含む多数の成分から作られる。干渉または電波妨害がない場合、受信機は通常、コードおよび搬送波の双方をトラッキングする。電波妨害が発生すると、たいていの軍事用受信機は搬送波トラッキングを止めてコードのみをトラッキングする形に戻り、生の20msのプリ検出サンプル同士はドット積判別器の変形を用いてともに乗算される。ドット積判別器は一般に、二乗タイプの判別器の最も効果的なもののうちの1つと考えられている。これらのサンプルは、コードトラッキング誤差を解決するために、或る拡張された間隔−ときには数10秒−にわたってともに平均化される。ドット積タイプのコードトラッキングの一般的に適用される利点は、それが搬送波トラッキングのみの場合よりも幾分高い電波妨害抵抗を有することである。この発想は、慣性ナビゲーションシステム(Inertial Navigation System:INS)を用いてユーザダイナミクスを減算し、それにより、ノイズのある後検出サンプルが長い間隔にわたって平均化されるようにすることである。コードベースの電波妨害防止トラッキングの最も統合されたバージョンは、「超密結合」(Ultra-Tight Coupling:UTC)と呼ばれる。
【0012】
残念ながら、超密結合された慣性は或るレベルの保護までしか効果的ではなかった。そのようなシステムの物理学は、それらが著しい電波妨害に耐える能力を急速に制限する。第1に、判別器から生じる二乗損失により、長い積分時間が必要とされる。積分時間はJ/Sの二乗に比例する。これは、電波妨害出力が2倍になるたびに、必要とされる積分間隔は4倍となる必要があることを意味する。第2に、慣性機器は時間とともに成長する誤差を呈示する。いくつかの慣性機器はより良好な性能を増加したコストで提供できるが、慣性がGPSからの更新なしでプラットフォームダイナミクスをどのぐらい長く除去できるかについては、実用的な物理的制限がある。この制限は通常、慣性ノイズがコードチップの大部分に達するのにかかる時間、通常約5mまでに設定される。所与の品質の慣性については、GPSコード変調への依存は、積分中に測距誤差がしきい値を上回る或る電波妨害レベルを生み出し、システムはもはや有用ではない。
【0013】
GPSデータ変調が搬送波から信頼できる方法で除去可能であると仮定して、搬送波のコヒーレントなトラッキングが時折考慮されてきたが、電波妨害耐性の増加に対する選択肢としては即座に却下されてきた。そのようなアプローチは伝統的に非実用的であるとみなされてきた。なぜなら、受信機が持続した期間にわたって30ピコ秒(光が1cm進行するのにかかる時間量)未満という安定性まで搬送波を積分しなければならないためである。この課題は、この必要な安定性を20msよりもずっと長い間隔にわたって維持することである。典型的な低コストの温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated quartz Crystal Oscillator:TCXO)は、今日の大半のGPS受信機の基盤である。部品コストは一般に10ドルから20ドルの範囲である。TCXOを用いると、プリ検出間隔は1秒の大半までは安全に拡張され得る。これを超えると、TCXOは十分に安定しない。
【0014】
ルビジウムまたはセシウムの周波数標準に基づいた恒温槽付水晶または原子時計といっ
た他のより安定した一般的でないクロックが候補に挙がっているが、これらの非常に安定したクロックでさえ、それらを実用的にしない実用上の問題を有する。30dBの追加のGPS電波妨害の保護のために、ユーザは近傍の20秒にわたって積分する必要がある。このレベルでは、多くの原子時計でさえ、必要とされる安定性を提供できない。振動、大きさおよびコストが法外になり得る。前途有望な新しいチップスケール原子時計(Chip Scale Atomic Clock:CSOC)アプローチは、今から数年後にコスト、サイズ、重量および出力を減少させる可能性を提供するが、最も楽観的な性能予測でさえ、必要な位相安定性を必要な間隔にわたって産出する十分な周波数安定性を達成しない。恒温槽付水晶発振器(Oven-Controlled Crystal Oscillator:OCXO)の中には、必要な位相安定性を必要な間隔にわたって有するものがある。しかしながら、OCXOは通常嵩高く、高価で、かつ電力を消費する。そのような高度に安定したクロックに依存するソリューションは、コスト、サイズ、重量および消費電力を精密な温度制御と関連付けなければ容易には手が届かないものである。構成要素性能感度を重視するそのようなソリューションは、著しい技術的課題である。出力、振動およびコストは主な障害となる。必要とされるのは、標準の低コストTCXOを用いて著しく向上した性能を提供することができるソリューションである。
【0015】
軍事部門、民間部門および商業部門は各々、電波妨害に対するそれら自体の問題および課題を有する。軍は、一般にコストの制約をそれほど受けず、より進歩した技術へのアクセスを有するため、電波妨害と格闘するのにおそらく最も準備ができているであろう。残念ながら、比較的低出力の妨害器でさえ、妨害器の見通し線内にあるユーザ機器を停止させることができる。ユーザ機器には、幅広いスペクトルの電波妨害防止能力が、しばしばCRPAおよび超密慣性結合を含む技術の組合せとして採用されている。軍はまた、信号出力を約20dB高めるように意図された新しいより高出力のMコード信号を実現するよう提案している。大口径スポットビームアンテナは、地球の特定の領域上により狭いビームを集束させてそこにより多くの信号出力を集中させるであろう。しかしながら、そのような高出力システムを採用するコストが目標ではない場合でさえ、そのようなシステムが使用可能になるまでには依然として何年もかかる。必要とされるのは、低コストで直ちに利用可能なナビゲーションソリューションである。
【0016】
これらの軍事用ソリューションは、全体として見ると、近い将来に予測される多くの電波妨害の脅威に対して妥当な保護を提供するように思われる。しかしながら、これらのソリューションも、特に多数の低出力の分散された妨害器について前述したような将来の電波妨害シナリオの下では不十分かもしれない。おそらく最も重要なことは、上述の1組の現在のソリューションはすべて高くつく傾向がある、ということである。
【0017】
民間の脆弱性は重要な課題である。前述のように、GPSは、第2の民間周波数を加えることで意図的でない干渉に対抗する手段を既に有している。多くの動作のためにたった1つの周波数が必要とされるため、意図的でない干渉によって一方の周波数がダウンすると、他方は、使用できる高い可能性を設定する。意図的でない干渉の場合でも、または意図的な干渉の場合でも、最後の手段として、航空機は代わりの空港に行き先を変更することができる。
【0018】
意図的な電波妨害の問題ははるかに深刻である。ここでも、目的は、商業の日常的な流れを邪魔する妨害者、すなわち空の旅を混乱させる組織的手段を拒絶することである。民間航空会社の商業的性格は、意図的な電波妨害の問題に対するどのソリューションもコスト効率がいいことを必要とする。軍から適応された高価なユーザ機器、たとえばCRPAアンテナを民間航空機に設置することは、否定的に見られてきた。今までのところ、唯一実行可能なソリューションは、より高出力で動作するVOR、DMEおよびILSといった稼動中の既存のナビゲーション支援装置を維持することであった。既存の地上支援装置
も動作しているので、WAASといった衛星ソリューションが付加価値を航空機ユーザに提供しないため、航空会社が衛星ナビゲーションに移行する動機はほとんどない。
【0019】
商用ユーザも電波妨害のない信号に関係がある。インターネット、電力網、携帯電話ネットワークの時間計測、および金融取引の時間計測を含む社会でのさまざまな商業機能のためにGPSにますます依存することに加え、超広帯域(Ultra-Wide Band:UWB)技術から生じ得る、GPS信号強度への潜在的な規制上の脅威も存在する。UWBは将来かなり有望である一方、GPS帯域が規制上の観点から慎重に保護されなければ、干渉のはっきりとした可能性がある。規制は時折、十分な釣合いに到達するまでに時間を要する場合があることを仮定すると、UWB装置との共存へのこの重大な移行中にユーザが重大なGPSベースのインフラストラクチャにおける投資を保護できるようにする経済的な技術的「セーフティネット」へのアクセスを有することが望ましい。
【0020】
要約すると、電波妨害耐性を提供するための既存のシステムおよび方法は不十分である。必要とされるのは、干渉および/または電波妨害の存在下でナビゲーションのための高い正確度および完全性を提供し、それにより、近い将来における、軍事用途、民間用途、および商業用途を含むさまざまなGPSおよび衛星ナビゲーション用途のための重要でかつ効果的な電波妨害防止保護を確実にするナビゲーションシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
簡単な概要
この発明に従ったシステムおよび方法は一般に、1つ以上のGPS衛星と組合せた地上基準局および地球低軌道(LEO)衛星のネットワークを採用する。GPS衛星への第1の共通視野測距ジオメトリが、基準局とユーザとをリンクするために設定される。同じ基準局とユーザとの間のLEO衛星への第2の共通視野ジオメトリも設定される。地上局は、GPSおよびLEO衛星の信号の搬送波位相測定を行なうことにより、リアルタイムの支援信号を合成する。この支援情報はLEO衛星を介して、周囲の電波妨害を貫通するように高出力でユーザ受信機に送信される。ユーザ受信機は、LEO衛星の搬送波位相を追尾し、支援情報を復調して、次に、GPS信号の拡張されたコヒーレントな測定を可能にするように搬送波位相測定値および支援情報を適用する。このシステムはそれにより、電波妨害で失われたであろうGPS信号を復元させる。このように、この発明は、電波妨害耐性における著しい改良を、通常のGPS受信機のものに匹敵するコスト、サイズ、重量および出力で提供する。
【0022】
この発明の一実施例によれば、ナビゲーションシステムは、基準受信機と、ユーザ受信機と、基準受信機およびユーザ受信機の共通視野にある全地球測位システム(GPS)衛星とを含み、前記基準受信機および前記ユーザ受信機はGPS衛星から搬送波測距信号を受信し、前記ナビゲーションシステムはさらに、基準受信機およびユーザ受信機の共通視野にある第1の地球低軌道(LEO)衛星を含み、基準受信機およびユーザ受信機は、第1のLEO衛星からのLEO搬送波測距信号のそれぞれの第1および第2の測定値を計算するよう構成されており、ユーザ受信機は、LEO衛星を介して基準受信機から第1の測定値を受信し、第1および第2の測定値を適用して、ユーザ受信機によって受信されたGPS搬送波測距信号の信号位相の演繹的推定値を構築するよう構成されており、演繹的推定値は、ユーザ受信機での搬送波測距信号の拡張積分の基礎として使用される。
【0023】
以下にこの発明を以下の図面とともに説明する。図中、同様の番号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
詳細な説明
以下の詳細な説明は本質的に単なる例示であり、この発明、またはこの発明の用途および使用を限定するよう意図されてはいない。さらに、前述の技術分野、背景、簡単な概要、または以下の詳細な説明に提示される明示または暗示された理論によって束縛される意図はない。
【0025】
この発明は、機能および/または論理ブロック構成要素ならびにさまざまな処理ステップについて、ここに説明され得る。そのようなブロック構成要素は、特定の機能を行なうよう構成された任意の数のハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェア構成要素によって実現され得ることが理解されるはずである。たとえば、この発明の一実施例は、1つ以上のマイクロプロセッサまたは他の制御装置の制御下でさまざまな機能を実行し得るさまざまな集積回路構成要素、たとえばメモリ素子、アンテナ、デジタル信号処理要素、論理素子、ルックアップテーブルなどを採用してもよい。加えて、当業者であれば、この発明が任意の数のデータ伝送プロトコルとともに実践され得ること、およびここに説明されるシステムがこの発明のための単なる例示的な一用途であることを理解するであろう。
【0026】
簡潔にするため、信号処理、データ伝送、信号伝達、全地球測位システム、衛星、ネットワーク制御、およびシステム(ならびにシステムの個々の動作構成要素)の他のそのような機能的局面に関する従来の技術は、ここには詳細には説明されない場合がある。さらに、ここに含まれるさまざまな図に示す接続線は、さまざまな要素間の例示的な機能的関係および/または物理的結合を表わすよう意図されている。なお、実際の一実施例では多くの代替的なまたは付加的な機能的関係もしくは物理的接続が存在し得ることに留意されたい。
【0027】
図1は、この発明の一実施例に従ったユーザ受信機構成要素の一般的な全体図であり、図2は、この発明の動作を例示するために有用なナビゲーションシステム200の全体図である。図2に示すように、ユーザ202は、電波妨害および/または干渉を受ける環境204内にある間に、1つ以上のGPS衛星206を利用しようと試みる。先行技術のシステムでは、環境204内における電波妨害の存在は、GPS衛星206の使用を制限し、または妨げさえする。しかしながら、この発明によれば、支援情報220、224が地球低軌道(LEO)衛星222を介してユーザ202に伝達され、それがGPS信号208を復元させるのを支援する。
【0028】
1つ以上の基準局210は、それらがGPS衛星206への明らかな見通し線を有し、かつ(環境204内で起こっているいかなる干渉または電波妨害をも含む)干渉または電波妨害を受けないように、電波妨害区域の外側に位置し、立地している。基準受信機210からの支援情報220は、1つ以上の地球低軌道(LEO)衛星222にアップリンクされる。LEO衛星信号224は好ましくは、それがユーザ202によって受信されるように、環境204内の電波妨害出力に打ち勝つ十分に高い出力でブロードキャストされる。LEO衛星222によってリレーされた支援情報220、224は、図1に示すようなユーザ受信機100によって受信され、次に、特別に設計されたユーザ受信機100が電波妨害または干渉にも関わらず使用可能なGPS信号を復元できるようにGPS信号に適用される。
【0029】
図1のユーザ受信機100は、支援情報が相関器にリアルタイムで、たとえばセンチメートルレベルの精度といった高い精度で達することができるように、リアルタイムのストリーミングデータフローをトラッキングチャネル全体にわたって提供する。このセンチメートルレベルの測位および時間計測能力により、受信機は、拡張された期間、GPS信号をコヒーレントにトラッキングできる。
【0030】
伝統的な電波妨害防止方法とは異なり、この発明は、PRNコードよりもむしろGPS正弦波搬送波信号成分に重きをおいている。この方法は、民間のC/Aコードが採用されているか、軍事用のP(Y)コードまたはMコードが採用されているかどうかにはとらわれない。これらのコードは、衛星信号を区別するために、また、動作を初期化するために使用される。それ以外では、正弦波搬送波は基本特性を提供し、(i)二乗損失を排除することによる非常に改良された電波妨害防止性能、および(ii)電波妨害の最中の精密な測距を可能とすることによる非常に改良された正確度の双方を生み出す。
【0031】
この発明の好ましい一実施例によれば、システムの任意の部分での故障が動作を不利に妨げないように、冗長性が、少なくとも2つの基準局および2つのLEO衛星の形で取り入れられている。より特定的には、図3を参照すると、この発明の二重ストリングバージョン300は、1対のLEO衛星222(a)および222(b)と基準局210(a)および210(b)とを採用して、ユーザ202の視野内のGPS衛星206について基準情報が常に利用可能であることを確実にしている。
【0032】
LEO衛星222はどのような地球低軌道衛星でもよい。好ましい一実施例では、このシステムは、ユーザ202の頭上に少なくとも1つの衛星がほぼ常時あるように、LEO衛星222の群を含む。この発明に好適なLEO群は、たとえば、イリジウム(Iridium)およびグローバルスター(Globalstar)によって提供されるものを含む。これらのLEOはともに電話通信を中心として設計されており、電話通信用の平均データ速度は公称50bpsであるGPSデータ速度よりも約100倍速いために、余剰分は追加のブロードキャスト出力に変換可能である。言い換えると、LEO衛星222のビットレートがGPSのそれと匹敵するようにされた場合には、LEOブロードキャストはGPSブロードキャストよりも20dB強力となるであろう。多数の通話に対応して多数のダウンリンクがスイッチオンされた場合、出力はさらにより一層増加し得る。たとえば、10回の通話に相当するものがダウンリンクに割当てられた場合には、支援信号224はGPSよりも約30dB強力であろう。その結果は、30dB大きい電波妨害耐性を提供する支援信号となる。
【0033】
GPSは、2つの帯域、すなわち1,575.42±12MHzのL1と、1,227.604±12MHzのL2とでブロードキャストする。イリジウムは1,616.0〜1,626.5MHzの帯域でブロードキャストし、一方、グローバルスターは2,483.5〜2,500.0MHzの帯域でブロードキャストする。GPSおよびLEO衛星の双方から受信可能な受信機は、iGPSとして公知の、高性能精密測位、時間計測および通信システムを提供する。iGPS電波妨害防止システムは、いずれかのGPS周波数または双方で動作可能である。
【0034】
好ましい一実施例では、同様の電波妨害防止iGPS受信機が、基準局210およびユーザサイト202の双方で使用される。ソフトウェア受信機アーキテクチャに基づいた例示的な受信機400を図4に示す。チップあたり、単位コストあたりのコンピュータ処理能力の増加、および高速低出力SiGe RF設計といった新しい半導体技術により、ソフトウェア受信機は構築がより容易になっている。その結果は、より低いコスト、より速い開発時間、より低いサイズ、重量および出力、そしてとりわけ、コンポーネント同士をより大きなシステムへと統合する並外れた柔軟性である。この発明のいくつかの特化された適応例では、ソフトウェア受信機技術が十分ではない場合があること、および、いくつかの他の基準を中心として最適化された設計が必要とされる場合があることが認識されるべきである。
【0035】
引続き図4を参照すると、受信機400は、衛星信号401を受信するために使用される多周波数アンテナ402を含む。アンテナ402は、1つ以上のプリ選択フィルタ40
4、増幅器406、およびA/D変換器408に結合されている。合成器413は、温度制御型水晶発振器(TCXO)410から信号を受信し、図示されているようにコンピュータ414、慣性412、およびA/D変換器408に結合されている。コンピュータ414は、慣性412から生の測定値を受信し、また、合成器413およびA/D変換器408から入力を受信して、位置、高度および時刻の出力(420)を生成する。A/D変換器408のサンプリングレートは好ましくは、以下の刊行物、すなわちマーク L.サイアキ(Mark L. Psiaki)、スティーブン P.パウエル(Steven P. Powell)、ヒー ジュン(Hee Jung)、およびポール M.キントナー、ジュニア(Paul M. Kintner, Jr.)、「直接RFサンプリングを用いた多周波数RFフロントエンドの設計および実用的実現」(Design and Practical Implementation of Multi-Frequency RF Front Ends Using
Direct RF Sampling)、ION−GNSS、ロングビーチ(Long Beach)、2004年9月に記載された方法を用いて選択される。このように、このシステムは当該帯域すべてをベースバンド化するようダウンコンバートする。
【0036】
サンプリングレートの正しい選択は、ゼロからサンプリング周波数の半分というナイキスト範囲にわたる受入れ可能なスペクトル分離を確実にする。民間航空機に採用されているもののような好ましい実施例では、アンテナ402は固定放射パターンアンテナ(fixed radiation pattern antenna:FRPA)であり、それにより、制御放射パターンアンテナ(CRPA)のコスト、大きさおよび複雑性を回避する。軍事用途については−特に軍事用プラットフォーム上での使用については−アンテナ402はCRPAであることがより望ましい。
【0037】
CRPAを実現する方法は2つある。第1の方法は、図5に示すような統合されたアプローチである。一般に、受信機400のフロントエンド上のアンテナポート401の数は、CRPAアンテナ要素の所望の数まで拡張される。複数のそれぞれのA/D変換器408、インバータ406、およびフィルタ404がアンテナ401に結合される。次に、STAP/SFAP処理502が、図に示すように、コンピュータ(またはDSP)504の内部のソフトウェアにおいて実行される。
【0038】
第2のアプローチは、アンテナアレイとiGPS受信機との間のラインにマルチビームステアリングアンテナ電子回路(Multi-Beam Steering Antenna Electronics:MBS AE)パッケージを含めることである。そのような実施例を図6に示す。このパッケージは、LEO信号およびGPS信号を用いてSTAP/SFAP処理502を繰り返すように若干修正されている。この点で、イリジウムの帯域はGPSのL1帯域に非常に近接して位置している。
【0039】
電波妨害防止iGPSソフトウェア受信機の内部で、GPS帯域の各々(L1および/またはL2)ならびにLEO信号(たとえばイリジウムまたはグローバルスター)について、プリ選択フィルタ404を用いて処理が始まる。ソフトウェア受信機400は直接ダウンコンバージョンを採用するよう設計可能であるため、これらのフィルタは鋭いカットオフを有することが望ましい。必要とされる電気コンポーネントの一例は、特化されたIBM RFチップIBM43GAENGP0001である。この受信機は、バンドパス、自動ゲイン制御(AGC)、および直接RFサンプリング機能を実行する集積SiGeチップを含む。
【0040】
好ましい一実施例では、受信機設計は、異なる帯域からの測定が同じ時間基準に対して同じ時期に行なわれることを確実にする。信号が一旦デジタルに変換されると、アーキテクチャは、周波数間および衛星間のチャネル間バイアスを導入できない。安定したチャネル間バイアスのこの属性は、高品質のコヒーレントな測定を行なう上で非常に有用であり、電波妨害防止性能にとって重要である。ある特定の用途のための空間に妥協した設計が
直接ダウンコンバージョンの使用を妨げる場合、安定したバイアスを達成するために慎重な検討が適用される限り、従来のダウンコンバージョンを用いた他のアプローチが明らかであろう。
【0041】
図4を参照すると、A/D408内のA/D変換器のビット数は、設計選択の問題である。非ガウス電波妨害に対処し、STAP/SFAP機能による前処理を可能とするには、より多くのビットが必要となり得る。
【0042】
この発明の一局面によれば、単純で低コストのTCXO周波数基準410が採用されてもよい。原子発振器または恒温槽付水晶発振器(OCXO)といった一般的でないクロックは必要ない。そのようなTCXOは通常、かなり頑丈で、著しい振動および熱変動に耐えることができ、それでいて比較的安価(すなわち、約10ドルまたは20ドル)である。この発明の中心的な属性は、このシステムおよび方法全体が、受信機クロックにおける欠点をあまり感じないようにする。
【0043】
受信機が高ダイナミック用途に使用される場合、それは好ましくはある種の慣性基準412を採用する。高性能ナビゲーショングレードの慣性装置から戦術用グレードの慣性システムにわたるどのタイプの慣性装置412も、この発明と両立可能である。好ましい実施例では、チップスケール慣性装置が使用される。現在のチップスケール慣性は微小電気機械システム(Micro-Electromechanical System:MEMS)装置を含み、それは通常、最も低いコスト、サイズ、重量および出力プロファイルを提供する。MEMS INSの一例はハネウェル(Honeywell)HG−1930である。チップスケールMEMSジャイロの一例はシストロン・ドナー(Systron Donner)MEMSジャイロLCG50である。MEMS加速度計の一例はキオニックス(Kionix)3軸MEMS加速度計KXM52−1050である。
【0044】
好ましい一実施例では、iGPS受信機400全体は、図7に示すようなチップレベルで設計される。つまり、受信機カード702は、3軸チップスケール加速度計704と、3軸チップスケールジャイロスコープ706と、さまざまな他の構成要素、たとえば、図4−6で説明されたようなプリ選択フィルタ、プリアンプ、1つ以上のA/D変換器、TCXO、合成器、およびFPGA/コンピュータなどを含む。これらの構成要素は、公知の技術に従って、かつ任意の好適な態様で基板702上に分散され得る。
【0045】
以下の説明に示す別の主要な論拠は、MEMS技術が低ランダムノイズ−この発明に関する最大の誤差の源−を提供するようにも設計され得ることである。iGPSはバイアスをリアルタイムで推定するため、主要な残りの性能パラメータは、ランダム誤差、すなわちMEMS装置が秀でる傾向があるパラメータであり、最新の慣性グレードIMUのものさえ上回る可能性もある。チップスケール技術における潜在的な将来の改良も存在する。慣性装置のためのチップスケールで室温のボーズ・アインシュタイン凝縮体の研究開発は著しい見込みを保っている。たとえば、ジェイコブ レイシェル(Jakob Reichel)、「原子チップ」(Atom Chips)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)、2005年2月、第46頁を参照されたい。
【0046】
例示的な一実施例のさまざまな構成要素の概要をこれまで述べてきたが、この発明の基本的な機能をこれから述べる。第1に、コヒーレントな検出のための拡張されたドウェル(dwell)信号処理技術を説明する。これは高い電波妨害防止(AJ:anti-jam)性能を達成するための基盤である。次に、高いAJ性能を達成するために使用されるシステムレベルのナビゲーション処理を説明する。最後に、この発明の好ましい一実施例を詳細に説明し、実用的な動作のための一般的なシステムおよび方法を提供する。
【0047】
拡張されたドウェル信号処理
好ましい一実施例では、電波妨害防止性能は、(i)データストリッピング、(ii)時間同期、および(iii)コヒーレントな平均化という3つの基本ステップで達成される。図8は、処理シーケンスの第1のステップを示す。重度の干渉の区域204でたまたま運行中のユーザ202のために、搬送波上で変調されたGPSデータを除去することが望ましい。電波妨害または干渉をたまたま受けていない、GPS衛星206の共通視野にある基準局210は、その衛星のために50bpsのGPSデータストリームの明らかな推定値を得ることができる。LEOデータリンク220、224は、データリンクを通してデータをユーザ202にリアルタイム、高出力でテレメータ送信するために使用される。ユーザ202は次に、それ自体が受信したGPS信号208を、GPSを介して基準局210から受信したデータストリーム224と時系列に整列する。これらを混ぜ合わせることにより、50bpsの変調は信号から完全に取り除かれる。
【0048】
第2のステップは、ユーザクロックを公知の基準と同期させることである。典型的な水晶発振器は約1秒以上の期間にわたって多くのGPS L1の波長(19cm)だけドリフトするため、そのような期間にわたってGPS信号のコヒーレント積分を実行することはできない。クロック同期化は、LEO衛星222を用いて基準局210の公知の源からユーザ202に時刻を転送することによって実行される。
【0049】
基準局210は、それが時刻の正確な源を保持するGPS衛星206の視野内にあるため、GPS時刻に何らかのアクセスを有する。GPS衛星は原子時計−通常セシウム時計−を保持しているため、信号は、必要とされる20秒の平均化間隔にわたって10−12よりも良好に安定してとどまる可能性が高い。しかしながら、GPSから直接来るGPS時刻の測定に頼ることは依然として、クロック、天体暦、および環境からの誤差を含む誤差を受ける。好ましい実施例では、ユーザの位置決定に取り入れられるGPS衛星は、基準とユーザ受信機との間の共通視野として扱われる。GPS時刻は次に、この差動モードにおいて消える。
【0050】
ユーザ202での(すなわちユーザ受信機での)精密な時刻はまず、基準局210とユーザ202との間でLEO衛星222の共通モード測距を実行することによって得られる。ユーザ衛星からの搬送波測距方程式は、以下のとおりである。
【0051】
【数1】
【0052】
式中、ρは衛星までの推定距離であり、δρは推定距離の誤差であり、τsは衛星クロックオフセットであり、τrは受信機クロックオフセットであり、b0は(整数および実数値の曖昧成分およびすべてのハードウェア遅延を含む)集合体測距バイアスであり、ρt、ρi、およびρmは、対流圏、電離圏、および多重通路による誤差をそれぞれ示す。誤差εは受信機ノイズからの寄与である。
【0053】
これらのパラメータの多くは事前に(すなわち演繹的に)公知であるかまたは部分的に公知である。さらに、パラメータの多くは、それらが20秒の間隔にわたって1センチメートルを上回って変化する可能性がないよう制限され得るということが、確実に仮定できる。センチメートルレベルの計量は、GPS搬送波位相を扱う際の30ピコ秒の時間基準と相互交換可能に用いられる。なぜなら、30ピコ秒は、光が1センチメートルを進行するのにかかる時間量であるためである。基準局の場所はセンチメートルレベルの正確度で分かると仮定される。以下の微分のために、LEO衛星位置およびユーザ位置の双方が10cm以内の誤差で初期化されると仮定される。しかしながら、この条件が数10m以上
までかなり緩和され得ることが、後に示されるであろう。
【0054】
ユーザ慣性からの相対支援情報を用いて、ユーザ位置を相対的な意味において20秒の間隔にわたって1センチメートルよりも良好にトラッキングすることが可能である。したがって、LEO衛星までのユーザ距離測定値と基準局測定値との差を算出することによって得られる相対的な正確度は、以下の式をもたらす。
【0055】
【数2】
【0056】
上付添字は送信機を示す。下付添字は受信機を示す。とりわけ、ユーザが上述の差を形成する場合、宇宙船クロックは完全に相殺される。さしあたり、ほぼ完璧な天体暦を仮定する。これは以下に再度取り上げる。
【0057】
たった1つの差として残ることは、その変形が20秒の間隔にわたってほぼ1センチメートル未満に制限されるバイアス項である。図9に示すように、基準局210はそれ自体の不完全な時間計測を有する。つまり、基準局210はLEO衛星222の信号搬送波位相を測定する。それは次に、この測定データをLEO衛星データリンク220、224を介してユーザ202に送信する。ユーザ機器もLEO衛星の信号搬送波位相の測定を行なう。上述の関係により、Δφという差がユーザ機器によって形成され、基準とユーザクロックとの間に厳密なオフセットを提供し得る。実際、ユーザ受信機は、ユーザ受信機クロックにΔφを加えることにより、基準局クロックを仮想的に再構成する。
【0058】
この展開のいくつかの局面は注目に値する。第1に、原子時計を保持していないLEO衛星を用いて、20秒にわたり10-12よりも良好に精密な時刻が転送されてきた。イリジウムおよびグローバルスターは、宇宙環境に適した水晶発振器しか保持していないが、衛星クロック項は各時期において厳密に消えるため、このレベルの時刻転送が可能である。第2に、深刻な電波妨害の存在にも関わらず、ユーザ202は精密なレベルの時刻情報を利用可能である。これも、LEO信号がGPSのものよりもかなり強力であるために可能である。最後に、一般的でないクロックを使用しなくても、ユーザ機器は精密な時刻を利用可能である。ユーザは低コストのTCXOのみを必要とし、かなりのユーザ振動の存在下で運行可能である。
【0059】
次のステップは、トラッキングされる各GPS衛星のために、転送された時刻を用いて搬送波位相のフィードフォワード予測を形成することである。衛星は弱すぎてそれ自体ではトラッキングできないため、受信機は支援情報を用いて、予想される位相の1センチメートル以内でトラッキングループを予め測位しなければならない。共通視野時刻転送を用いると、基準局で測定されたGPS衛星位相とユーザにおいて測定されようとしているものとの間の関係は、以下の式によって与えられる。
【0060】
【数3】
【0061】
式中、衛星運動のために補正される測定差は、単に基準とユーザクロックとの差に終わる。GPS衛星クロックは、それが共通モードであるため、相殺される。
【0062】
【数4】
【0063】
予想される搬送波位相は、GPS衛星およびユーザ運動について補正された基準位相と、LEO衛星リンクによって提供された時刻転送補正値との合計である。
【0064】
この方法における第3のステップは、新しく形成された仮想の安定した時刻基準に対する入来GPS搬送波のコヒーレントな平均化である。GPSコード、搬送波およびデータがすべて除去され、慣性ナビゲーションユニットを用いて残りの相対運動が除去されたため、GPS搬送波上の唯一の残留変調は、ジャイロおよび加速度計のノイズならびにバイアスによるものであるはずである。
【0065】
【数5】
【0066】
バイアス項bは、ある特定の2つの違いの一因となる、すべて整数でゆっくり変化する電子バイアスの集合体を表わす。電波妨害の存在下では、搬送波がどんなに弱々しいものであっても、この発明はこれらのバイアス信号を推定してこの重大情報を復元するよう効果的に機能する。信号は搬送波位相において提供されるため、それらは慣性パラメータの非常に忠実度の高いセンチメートルレベルの測定値を提供する。
【0067】
時間ドメインでは、平均化間隔が長いほど、信号が一定のままである間に駆動される残留ノイズが低い。周波数ドメインでは、超狭帯域(準静的)同相(I)および直交(Q)搬送波位相がローパスフィルタされ、DCに完全に整合される。電波妨害によるノイズは、信号をゼロ周波数で通す間に除去される。このプロセスの定量的記述は、残留積分ノイズが以下のホワイトノイズ方程式によって与えられるということである。
【0068】
【数6】
【0069】
この方法により、GPS上で著しい電波妨害防止の改良を得ることが可能である。支援情報が電波妨害を超えてドライブできるようにするのにLEO出力が十分である場合、また、20秒にわたって<1cmのドリフトを維持可能な慣性ナビゲーションユニットをユーザが保持している場合には、GPS信号のコヒーレント積分時間は20msから20secに拡張し、30dBの改良である。さらに、これはこの発明の困難な上限ではない。
【0070】
システムレベルナビゲーション処理
一実施例によれば、測定値を組合せる「強力な」2つの違いの方法が使用される。このアプローチは例示的であるが、それが実際には、以下に説明する実施例と比べて或る欠点を有することが示される。この例では、相関の前に、各GPSチャネルから直接、LEO位相測定値が減算される。各GPSチャネルは残留位相測定値を出力して、ユーザによって受信されたようなGPS衛星信号の実際の位相と予測された位相との間の2つの差(GPSマイナスLEO、ユーザマイナス基準)の残留を提供する。
【0071】
慣性ユニットはユーザ位置をトラッキングする。しかしながら、慣性ユニットは一般に、所与の公称位置推定値x0について、ローカル水平ユーザフレームにおける公称ベクトル位置誤差を累算する。位相測定値は、慣性位置誤差のGPSを用いて最良のベクトル推定値δxを見つけるために、この公称ローカル水平慣性ユーザ位置について線形化され得る。
【0072】
【数7】
【0073】
式中、νは測定ノイズである。次に、項を定義して再編成することができる。
【0074】
【数8】
【0075】
視野内のn個のGPS衛星についての差動位相測定値を積み重ねると、結果として生じる連立方程式は以下のように定義され得る。
【0076】
【数9】
【0077】
簡単にするために、システムは、電波妨害下で動作される前に、遮るもののない空間における通常条件下で初期化され、動作していると仮定され得る。しかしながら、十分な処理出力を仮定すると、システムが電波妨害下でロックを取得することを妨げるものは何もない。
【0078】
【数10】
【0079】
バイアスが一定であると仮定される場合、位置誤差は、ユーザ位置誤差についての連立方程式を、コスト関数を最小限にする線形最小二乗適合法を用いて単に解くことにより、干渉および/または電波妨害の存在下で得られ得る。
【0080】
【数11】
【0081】
ベクトルδxは、各PDIに続くx0に対する推定位置誤差である。実際には、モデルが上述の衛星測距におけるすべての誤差源を含んでいないため、単純な補正は十分ではない。しかしながら、バイアスが浮遊できるようにすることにより、衛星運動に起因する変化するジオメトリは一般に、位置およびバイアスの双方を観測できるようになる。厳密な衛星ジオメトリに依存して、バイアスは一般に観測可能であり、それによりユーザの厳密な位置を特定する。典型的には、ユーザの上方でのLEO衛星の角度の大きい運動により、位置の3成分のうちの2つを約1分の時間スケール内で数センチメートル以内で求めるのに十分なジオメトリの変化がある。2つ以上のLEO衛星が使用される場合、以下に示すように、位置の3成分すべてがほぼ約1分以内に解明され得る。
【0082】
電波妨害防止性能が必要とされるものの、センチメートルレベルの正確度は必要でない状況では、システムはまた、モデル誤差状態が或る誤差を吸収するようにしてもよい。誤差残余を最小限に抑える推定器の特性を考えると、この挙動は適切である。したがって、推定器は、ほどほどのモデル化誤差が存在する場合でも依然として適度に実行する傾向がある。基本フィルタリングアプローチも、ユーザ、基準、および衛星位置誤差、大気および電離圏バイアス、ならびに多重経路を含むがそれらに限定されない、ゆっくり変化するバイアス状誤差源を吸収することができる。たとえば、LEO衛星における天体暦誤差δrは、上述の観測方程式において共通モードのバイアスを生成することが示され得る。
【0083】
【数12】
【0084】
単一の時刻についての修正された最小二乗の解は、以下のようになる。
【0085】
【数13】
【0086】
元の非摂動コスト関数を減算すると、以下のようになる。
【0087】
【数14】
【0088】
その引数は以下のために消える。
【0089】
【数15】
【0090】
この同じ結果は、その時間微分について続く。一般に、ユーザが電波妨害に抵抗する動作のためのセンチメートルレベルの正確度からの大きくない逸脱を許容できるならば、この展開は、電波妨害防止に必要な間隔にわたる拡張積分を可能にする共通モードのバイアスレートの存在証明を提供する。言い換えると、さまざまな誤差源が自動的に対処されるようセットアップされ得る。電波妨害の存在下で拡張されたプリ検出間隔を上手く可能にするように、共通モードバイアス成分をトラッキング可能な推定器を適用することが、重要である。
【0091】
好ましい実施例のアーキテクチャ
好ましい実施例では、ソフトウェア受信機実現化例において大量の信号処理が実行され、以下の説明はそのようなものとして仮定している。しかしながら、この発明は、特定の状況に鑑みて適切となるようなハードウェアおよびソフトウェアの任意の組合せを用いて実現されてもよい。
【0092】
図1は、好ましい処理構造のトップレベル表現を示す。このアーキテクチャは、システム受信機のための搬送波位相の精密なフィードフォワード推定のみに頼っており、時期を得てかつ正確にユーザ受信機についてルーティングされるべきである。これらの支援信号は、ナビゲーションプロセッサ110によって演繹的に生成される。これらの信号が受信機全体にわたって一旦利用可能となると、電波妨害条件におけるロックが進行し得る。
【0093】
信号は一般に、図の左から右に処理される。第1のステップは、STAP(またはSFAP)モジュール104(a)〜(c)によって表わされるような抽出を行なうことである。各入力帯域は別個の電波妨害シナリオおよびアンテナバイアスで終わるため、別個のSTAPモジュール104が各帯域、すなわちGPS L1、GPS L2、およびLEOに対して別個に作用する。輸送体の姿勢がわかっていれば適応ビーム形成がより効果的であるため、各STAPモジュール104は、輸送体姿勢のフィードフォワードによって支援される。
【0094】
次のシステムブロックは、衛星と帯域との各組合せについて1つずつあるトラッキングチャネル106(a)〜(c)のバンクである。各帯域L1およびL2のための少なくとも12個のGPS衛星チャネルと少なくとも3個のLEOチャネルとに対処するよう、十分な処理リソースが好ましくは割当てられている。各チャネルは、拡張カルマンフィルタ108からフィードフォワード信号を50Hzで受入れ、入来受信機位相の演繹的推定を含む。
【0095】
各チャネルが専用のトラッキングループを有する伝統的なGPS受信機とは異なり、好ましい実施例は、拡張カルマンフィルタ108に集中型調整器を作りだしている。このシステムブロックは、40を上回る統合された状態変数を伝搬して、各相関器、INS、集合体トラッキングループ状態、およびユーザクロックをモデル化してもよい。
【0096】
図10は、LEO衛星のための相関器の一例を示す。一般に、相関器1000は、図示されているように構成されたコード生成器1004、機能ブロック1006、ビットタイマおよびフレーム生成器ブロック1007、累算器1008、データ除去ブロック1010、および積分器ブロック1012を含み、ブロック1004、1006、および1007は、以下により詳細に説明されるさまざまなコマンドおよびデータ1009を受信する。
【0097】
トラッキングループは、搬送波ロック、ビット同期化、およびフレーム同期化、ならびにデータ復調を維持する。この点について、複素信号サンプル1002は左から右に処理される。CDMAグローバルスターといった拡散スペクトルLEO群については、入来信号からフィードフォワードコードが除去される。次に、入来搬送波位相のフィードフォワード予測が、入来する残留データ変調信号を分離する複素回転に変換され、それをベースバンドにダウンコンバートする。
【0098】
ビット同期化については、ガードナーアルゴリズムが適用され、シンボル期間の半分だけ隔てられた3つの連続する積分間隔に基づいた判別器を作り出す。フレーム同期化は、予め定められたシンボルシーケンスを探索することによって適用される。搬送波トラッキングについては、QPSKデータが次に除去される。フレームにおけるある特定の間隔にわたって、各LEO衛星はデータをブロードキャストする。チャネルは、このエネルギを
同相(I)および直交(Q)搬送波位相誤差トラッキング成分に統合するよう設計されている(1014)。これらの生のIおよびQは、搬送波位相トラッキング誤差角度への変換、および拡張カルマンフィルタ(図1の項目108)への組み込みのために、ナビゲーションプリプロセッサ(図1の項目110)にルーティングされる。LEOの生の出力の速度は、高い電波妨害下でも、高いLEOブロードキャスト出力のために通常10Hzであるか、またはそれよりも速い。
【0099】
図11は、例示的なGPS相関器アーキテクチャ1100を示し、それは一般に、図示されているように構成されたNCO1008、コード生成器1010、および積分器1004、1006を含む。ここでも、複素信号サンプル1002は左から右に処理される。信号はまず、コードおよびフィードフォワード搬送波双方の除去を受け、搬送波を回転させてほぼゼロ周波数まで精密にダウンコンバートされる。フィードフォワード補正値はナビゲーションプリプロセッサ(図1の項目110)によって生成され、(LEOトラッキングから間接的に生じる)ユーザクロック推定値、ストリーミングフィードフォワード天体暦、およびGPSによって更新されるようなINSによって行なわれるユーザ位置の瞬時推定値からの寄与からなる。この点で、残留搬送波は効果的に準静的である。すべての位相回転は、残留システムバイアスおよび50bpsのGPSデータ変調を別にすれば、効果的に除去されている。
【0100】
図11を引続き参照すると、2つの半分のチャネルがともにグループ化されて、コードと搬送波のIおよびQ測定値との双方を有する完全なトラッキングチャネルを形成する。上半分チャネルのPRN生成器は「進み」マイナス「遅れ」(E−L)コード1020を出力するよう命令され、一方、下半分チャネルのそれは定時コード1020を出力するよう命令される。すべてのチャネル相関器出力は、ナビゲーションソリューションへの組み込みのためにナビゲーションプリプロセッサ(図1の項目110)にルーティングされる。
【0101】
図12は、例示的なナビゲーションサポート機能を示す。この図は、システム1200によって入来データ1201に対して行なわれるさまざまな動作を概略的に示す。一般に、システム1200は以下の機能ブロック、すなわち、GPSデータ支援ブロック1208、データストリッピングおよび拡張ドウェルブロック1206、デコードブロック1202、測距誤差ブロック1210、大気補正ブロック1212、ストリーミング基準データブロック1214、天体暦生成ブロック1216、ECEFへのLEO天体暦ブロック1218、およびECEFへのGPS天体暦ブロック1216を含む。ナビゲーションプリプロセッサは、相関器からの生のIおよびQを、2つの主な目的、すなわち(i)ストリーミングフィードフォワード支援生成、および(ii)距離測定値変換のために使用する。
【0102】
フィードフォワード機能のために、ナビゲーションプリプロセッサは、LEO衛星から来るデータストリームをデコードする(1202)。このデータは、(i)50bpsのフィードフォワードGPSデータ支援ストリームと(ii)地上基準測定値と(iii)ストリーミング天体暦フィードフォワード予測とを生成するために使用可能な、コード化されたメッセージを含む。
【0103】
距離測定値変換のために、生のIおよびQ測定値は、生の形から測距誤差1204に変換される。電波妨害の場合にはGPS信号は非常に弱いため、GPSのIおよびQは最初に、以下に説明するブロック1206において累算される。次に、LEOおよびGPS双方のIおよびQが、以下の計算を介して測距誤差1204に変換される。
【0104】
【数16】
【0105】
この発明では搬送波位相に主に重きが置かれているが、前述のコード測距判別器に関連付けられた二乗損失が、ここに提供されるこの新しいコヒーレントなコード位相判別器にあてはまらないことに留意することが重要である。平均化間隔がJ/Sの二乗として増加するコードのみの判別器とは異なり、この判別器は、平均化間隔をJ/Sに単純に比例して減少させる。性能の改良は劇的である。
【0106】
結果として生じるコヒーレントな受信機は、コードおよび搬送機双方の属性を十分に利用できる。極度の電波妨害状況下にあっても、受信機が搬送波ロックを維持する限り、それは、通常の位置決定、微分位置決定、およびGPS時刻の解像度を含むがこれらに限定されない任意の伝統的なGPSまたは衛星のナビゲーションのために使用可能なコード測定値を提供することもできる。さらに、可変チップおよびマルチチップ相関器間隔保持といったコード性能を高めるために使用されるさまざまな技術が、この電波妨害防止システムに適用可能であり、または両立可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0107】
図13は、20msのGPSサンプルのより長い積分時間へのさらなる累積のための例示的な方法を示す。図示されているように、GPSデータビットシーケンサ1302は、演繹的に公知のデータビットを入来するIおよびQ測定値と整列させて、データ変調を取り除く。GPSの将来のバージョンといった他の全地球的ナビゲーション衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)のために、あらゆる形のシンボル変調が同一の態様で除去可能である。次に、準静的測定値が(ブロック1304および1306を介して)プリ検出間隔にわたって平均化される。PDIは長い期間であって、好ましい実施例ではたとえば5、10または20秒であり、電波妨害レベルの関数であるより長いコヒーレント積分時間に対応している。
【0108】
LEOおよびGPSトラッキングチャネルの双方からの相関器出力測定値の全数は、システム状態更新のための基盤である。完全更新間において2つ以上のLEO測定値が利用可能な場合には、LEOの更新速度で位置状態の部分空間を更新し、それらをナビゲーションソリューション全体に取入れることが可能である。単一のLEO衛星しか利用可能でない場合には、ユーザクロックのみが更新される。
【0109】
慣性プロセッサ(図1の112)は、生の慣性データ111を入力として受取り、ずれを含む予め較正された誤差を補正し、バイアス状態推定値を適用し、ストラップダウンおよびナビゲーションアルゴリズムを行なって、広帯域幅のユーザ位置および姿勢113を計算する。慣性プリプロセッサ112の出力は、システムのための広帯域幅の位置および姿勢出力双方と、信号処理のための支援データとを提供する。
【0110】
この発明の別の局面は、図14に示す中央調整器である。一般に、調整器1400は、機能ブロック1405、1403および1404と通信可能に結合され、図に示すように前述のさまざまな信号と相互作用するカルマンフィルタ108を含む。公表された電波妨害保護を提供するために、受信機は、多くの場合、大きなダイナミックレンジにわたってサブセンチメートルレベルまで良好な、極めて正確なシステムのモデルを必要とする。正
確度および適時性の双方について表現されたこの許容範囲は、天体暦、基準位相測定値、および慣性出力にとって特に重要である。完全なシステムモデル(入れ子になった項目410、412および1414)は拡張カルマンフィルタ108の内部にあり、それはしたがって、図示されているような受信機におけるすべての相関器への搬送波位相フィードフォワード信号1402を生成する。
【0111】
電波妨害防止システムが適正に機能するための1つの鍵は、バイアス推定値を許容範囲内に保つことである。フィルタはすべての相関器測定値を採取し、ナビゲーションソリューションを慣性ソリューションと組合せて、慣性バイアス残余を求める。GPS相関器出力が利用可能となる完全システムの更新中、システム全体の拡張カルマンフィルタ状態は更新され、新しいバイアスが慣性出力に適用される。
【0112】
以下の節は、電波妨害防止動作に必要な許容範囲を得るために必要な高性能システムモデルのさまざまな局面を説明する。
【0113】
好ましい一実施例の推定器は、位置誤差、ユーザクロック時刻、および全測距バイアスを直接推定するよう構成されている。このアプローチは、厳密な搬送波位相を、それが各相関器によって受信されるようにフィードフォワードするよう、より改善されたものである。一般的な単一の違いの形から始まって、観測モデルは、GPSまたはLEOいずれかの単一の衛星の測定値について、以下のように構築され得る。
【0114】
【数17】
【0115】
式中、ユーザ位置xは、INSによって供給される公称アンテナ位置x0について線形化され、大気誤差項は、衛星からユーザへのダウンリンクに関連付けられると解釈され、bは、周期曖昧性および電子バイアスを含むすべての非モデル化の影響を含む一般的な集合体バイアスである。さらなる定義は以下のように与えられる。
【0116】
【数18】
【0117】
モデルを介して、または直接測定を介して得られる大気誤差補正値も、生の単一の差に適用される。τreferenceおよび基準リンク大気誤差が、周知のネットワーク技術を適用することにより、地上基準局について精密にわかると仮定される。たとえば、W.I.バーティガー(Bertiger)、Y.E.バー・セバー(Bar-Sever)、B.J.ヘインズ(Haines)、B.A.イイジマ(Iijima)、S.M.リクテン(Lichten)、U.J.リンドクィスター(Lindqwister)、A.J.マンヌッチ(Mannucci)、R.J.ムエラーショーエン(Muellerschoen)、T.N.マンソン(Munson)、A.W.ムーア(Moore)、L.J.ロマンス(Romans)、B.D.ウィルソン(Wilson)、S.C.ウー(Wu)、T.P
.ヤンク(Yunck)、G.ピーシンガー(Piesinger)、およびM.L.ホワイトヘッド(Whitehead)、「プロトタイプリアルタイム広域差動GPSシステム」(A Prototype Real-Time Wide Area Differential GPS System)、ナビゲーション:ナビゲーション学会会報(Journal of the Institute of Navigation)、第44巻、第4号、1998年、433−447頁を参照されたい。次にユーザ測定値が積み重ねられて、以下のような線形の1組の観測値を形成する。
【0118】
【数19】
【0119】
この表現では、衛星ジオメトリ行列はここで、任意のGPSまたはLEO衛星に一般化され、バイアスベクトルβは、各GPSまたはLEO衛星についての衛星バイアスに対応しており、時間バイアスΔτは、単一の差のクロックバイアス(τuser−τreference)に対応している。
【0120】
この発明の一局面によれば、GPSおよびLEO衛星は状態空間表現において区分化される。一方、GPS衛星は、閉塞状態が優勢である際にそれらが集団でジオメトリを向上させる程度に、LEO衛星と相互交換可能に扱われなければならない。さらに、この構造は、通常視野内に1〜3個あり得るより高出力のLEO状態変数のための別個のかつより速い更新速度にも対処しなければならない。電波妨害下での効果を最大にするため、システムおよび方法は最適な特性を正確に呈示しなければならない。
【0121】
この表現が使用可能となる前に、バイアス状態の共通モードが、単一の差の搬送波位相観測可能量のためのクロックバイアスと区別できないことに留意しなければならない。状態変数を定義する強力なアプローチは、ある特定の衛星を「マスタ」衛星として選択し、そのジオメトリおよびクロックバイアスを、最初に上に示したような他のすべてから減算することを伴う。残念ながら、このアプローチは、相互交換不可能な方法で衛星および測定値に重み付けする望ましくない不揃いな結果を生み出す。位置の解は、どの衛星をマスタに選択するかによって影響を受ける。強力なアプローチは、ジオメトリが変化し、また、2つ以上のLEO衛星が利用可能である可能性がある状態では実現が面倒であるだけでなく、解が最適でなく、高電波妨害シナリオから閉塞された環境に至って必要とされる性能の全スペクトルを取扱うことができるシステムを作り出すにはあまり適していない。後者の場合は、トラッキング中の絶えず変化する1組の衛星を生み出すため、マスタ衛星の指定とは両立不可能である。
【0122】
数値的な困難を防ぐには、状態変数の形をした、明らかに定義された新しい1組のバイアスモードを作り出すことが望ましい。新しい1組のバイアスおよびクロック状態は、(i)観測不可能なモードを吸収し、(ii)共通モードに直交する1組の正規直交バイアス状態にするよう、定義される。
【0123】
【数20】
【0124】
トラッキングのための所望の特性は以下のとおりである。(i)ユーザクロックを独立した状態推定値として分離する。(ii)バランスの取れた非優先的態様で各SVを扱う「考慮したすべての」測定値処理構造、すなわち、構造内の特定のSVおよび関連する測定値の相互交換または回転とは独立したソリューションを確立する。(iii)GPS衛星およびLEO衛星が非優先的にかつ相互交換可能に処理されるようにすることにより、閉塞を取扱う。(iv)輸送体の並進および回転による衛星および輸送体アンテナの中での頻繁なスイッチングにもかかわらず、最適な解を維持する。(v)速いLEO測定値と遅いGPS測定値とのマルチレート分割に対処する。および(vi)頑強な拡張カルマンフィルタの実現化例と両立し得るように状態変数が数値的に良好に定義されることを確実にする。
【0125】
視野内の5個のGPS衛星および視野内の1個のLEO衛星について、バイアス状態の例示的な区分化は以下のように与えられる。
【0126】
【数21】
【0127】
正規直交下三角構造の利点は、多数のLEO衛星が視野内にある場合により容易に明らかとなる。LEO衛星状態はGPS衛星よりも速い時間フレームで更新されなければならず、一方、同時に、GPSおよびLEO双方の他のすべての衛星測定値に対して各測定値を非優先的で等しく重み付けされた態様で扱う必要がある。以下の例は、トラッキングされる衛星全体(GPS+LEO)の任意の数nについての行列Qのための陽の生成関数を示す。この例はまた、3個のLEO衛星が視野内にある場合の区分化も示している。
【0128】
【数22】
【0129】
この三角「V」正規直交行列構造は、LEOトラッキング状態変数をGPSトラッキング状態変数と混ぜ合わせることなく、LEOトラッキングループ状態の更新がより速い時間スケジュールで起こることを可能にする。好ましい実施例の上部中央のブロックゼロは、相対GPSトラッキングモードがLEOトラッキング状態とは独立していることを確実にする。左下のブロックの行列要素は、LEO衛星に対してすべて共通モードである。したがって、LEOトラッキングループが迅速に更新されている最中の拡張GPSドウェルの中間間隔の間、GPSトラッキング状態は、次数を減らした新しいLEOトラッキングシステムに対する受動的な共通モードの寄与因子として表現される。
【0130】
【数23】
【0131】
姿勢レバーアーム
実際には、INSは輸送体上のGPSアンテナとは連結されない。慣性からGPSアンテナへのレバーアームdは、INS誤差rとGPSアンテナオフセットδxとのベクトルずれを、(3×3)姿勢行列Aの関数として、以下のように規定する。
【0132】
【数24】
【0133】
この方程式を、小さい姿勢動揺Ψのベクトルのための公称姿勢A0について線形化することが可能である。
【0134】
【数25】
【0135】
慣性ナビゲーションシステムモデル
慣性システムの特性は、INSベクトル誤差運動方程式の線形化された表現を分析することによって評価可能である(たとえば、I.Y.バー・アイツハック(Bar-Itzhack)およびN.バーマン(Berman)、「慣性ナビゲーションシステムへの制御理論アプローチ
」(Control Theoretic Approach to Inertial Navigation Systems)、AIAA ペーパー 87−2591、1987年を参照されたい)。
【0136】
【数26】
【0137】
式中、xは状態ベクトルであり、wはランダムノイズ誤差のベクトルである。慣性プロセッサのために、制御変数uは、予め処理されたストラップダウン加速度計およびレートジャイロ測定値に対応する。実際には、誤差方程式のために、これらの制御入力は正確に相殺され、したがってゼロと同一になると仮定される。我々は、3つの空間次元の各々においてジャイロおよび加速度計のバイアスについての6つの追加状態を追加して、この発明においてこれらの主要パラメータがどのようにリアルタイムで推定可能かを示す。
【0138】
次に、慣性システムダイナミックスが、以下の15×15の連立方程式におけるような状態空間の形で線形化され、表わされる。
【0139】
【数27】
【0140】
式中、gは重力による局所加速度であり、Rは地球の半径であり、ΩNおよびΩDはそれぞれ、北方向および下方向に射影された地球回転ベクトルの成分である。
【0141】
相関器モデル
GPSプリ検出間隔にわたって発生するLEO衛星からの迅速なクロック更新に鑑み、また、拡張された期間にわたって慣性ノイズの効果を正確にモデル化するためには、受信機相関器のモデルを保持することも好ましい。この統合モデルは、受信機NCOを内蔵状態変数として命令するためにも使用される。我々の目的は、以下のような標準測定値更新方程式に準拠することである。
【0142】
【数28】
【0143】
ここで状態変数は推定器状態であると考えられるため、バー表記が適用されている。完全な相関器モデルは、各衛星のためにフィードフォワード受信された信号位相を積み重ねることによって形成される。
【0144】
【数29】
【0145】
この発明の一局面は、相関器の適正なモデル化を伴う。慣性、GPS/LEOトラッキングループ、および受信機クロックは通常、独立して動作するが、サブシステムは相関器
において、極めて密なセンチメートルレベルの許容範囲で相互接続される。相関器は、状態フィードバックのための主要メカニズムを提供する。各サブシステムは異なる更新速度で動作し得るため、各入力は好ましくは、相関器モデルにおいて、正確な状態フィードを十分に利用するよう勘案される。
【0146】
統合システム
ここで、考慮したすべての相関器、慣性、トラッキングバイアス、およびクロック状態方程式を以下のような単一の統合システムに組合せることが可能である。
【0147】
【数30】
【0148】
【数31】
【0149】
実際の相関器出力は、トラッキング中の各衛星のための積分された位相を以下のように積み重ねることによってモデル化される。
【0150】
【数32】
【0151】
以前の近似のため、この表現は、それが相関器出力のフィードフォワード成分と組合されない限り、および組合されるまで、スタンドアローンでは無効である。その場合、完全な相関器総出力は、以下の式によって与えられる。
【0152】
【数33】
【0153】
この離散モデルを用いると、ここでカルマンフィルタを適用することが可能である。上述の表現は、ある特定の位置および姿勢について線形化されて示されている。慣性および測距方程式は実際には非線形であるため、実際の実現化例は拡張カルマンフィルタ(図1の108)であることが必要とされる。この離散モデルを用いて厳密なバイアスについて解くことは、PDIの間の遅い成分ドリフトを捉え、誤差モデルが厳密になるようにする。各衛星の周囲の電波妨害に依存して、GPS搬送波位相測定値の対角線RVは定常状態で約(0.5cm)2という近傍に位置する。誤差成長は、システムを駆動するホワイトプロセスノイズの出力スペクトル密度Rwpsdを積分することによって求められてもよい。
【0154】
【数34】
【0155】
式中、Pは帰納的状態共分散行列であり、Mは演繹的状態共分散行列である。動作中、好ましい実施例は完全拡張カルマンフィルタを用いて、初期状態、特定の非線形ジオメトリ、および時間変動J/S比率についてダイナミックに調節する。次に、測定値更新が以下の式によって与えられる。
【0156】
【数35】
【0157】
分析のためには、最適な推定器を用いて、Pが定常状態のポスト測定共分散となり、Mが定常状態のプリ測定共分散であるように観測ゲインを選択することが適切である。最適な定常状態のゲインLは、周知の代数のリッカチ方程式を解くことよって計算されてもよい。完全な閉ループシステムの固有値λはその場合、以下のように計算されてもよい。
【0158】
【数36】
【0159】
これまでの説明は、電波妨害防止システム動作の基本概念を書き記してきた。しかしながら、我々は、このシステムを極めて要求の厳しい状況での使用にとって実用的にするように、好ましい実施例を実現してきた。好ましい実施例では、2つの違いというよりもむしろ単一の違いを採用して、各測距源をトラッキングしている。このより一般的な形は、多数のLEO衛星がトラッキングされ、衛星が視野内外に移行している間に、最小限の数のチャネルトラッキング源でダイナミック環境を最良に取扱う。
【0160】
特にLEOの角度の大きい運動から生じる必須のジオメトリが存在する場合、この受信機は状態バイアスについても解き、GPSおよびLEO衛星からの搬送波位相のみを用いて正確な三次元の位置決定を明らかにする。この能力は、電波妨害下だけでなく、通常の
GPS受信機にとってユーザプラットフォームダイナミクスが過酷すぎてトラッキングできない通常の信号条件の下でも拡張する。トラッキング状態バイアスには約1分または2分の時定数が与えられるべきである。
【0161】
拡張カルマンフィルタは、4つの成分、すなわち、受信機のすべての相関器に搬送波位相フィードフォワードを提供する連続的な時刻更新の形と、3つのマルチレート時刻/測定値更新とに細分される。3つのマルチレート間隔は、プロセスおよび測定ノイズのINS、LEO、およびGPS衛星スケールに対応している。これらの間隔は、特定のダイナミック環境および電波妨害環境に合わせられる。
【0162】
図15は、拡張カルマンフィルタ108の動作のシーケンスのフローチャートを示す。ブロック1502で、フィードフォワード位相およびフィードフォワードGPSデータビットが生成される。連続システムの次数を減らしたバージョンが、以下のように搬送波位相フィードフォワードを生成するために使用される。
【0163】
【数37】
【0164】
次のINS、LEOおよびGPS更新(1510、1512、および1514)もフローチャートに示されている。一般に、最も速い間隔はTINSで、それはユーザプラットフォームのダイナミクスを捉えるのに十分速い(1508)。最も遅い間隔に次いで遅い間隔はTLEO(1506)で、それはLEOデータ速度と概して同程度に設定される。最も遅い間隔はTGPS(1504)で、それは瞬時に検出されたJ/S比率に基づいてダイナミックに設定される。厳密値が特定の実現化例を考慮してカルマンフィルタを用いて最適に求められるべきである一方で、TGPSは以下の近傍に位置する。
【0165】
【数38】
【0166】
TGPSが20秒である場合に結果として生じる誤差成長周期を図16に示す。完全なシステムの更新の各々において、帰納的な位置知識は、相関器出力測定値から利用可能な新しい情報に従って減少する。その間に、ジャイロの角度のランダムウォークによって支配されるシステムプロセスノイズが、誤差不確実性を成長させる。カルマンゲインおよび処理間隔は、慣性誤差をほんのわずかの波長内に保つように選択される。
【0167】
システムの基本的な初期化は、従来のGPS受信機の周知の動作と違わない簡単な方法で実行されてもよい。コードとドップラーとの組合せの二次元探索空間は、衛星信号を見つけるために掃引される。受信機は、電波妨害のない状況下で取得し、電波妨害が発生すると継続する。受信機は電波妨害の状況下でも取得可能であり、この際、初期探索は電波妨害のない状況下よりも比例して長くかかる。
【0168】
電波妨害防止システムは、慣性システムを用いた動作に限定されない。それは、低ダイナミックまたは静的実現化例に対しても機能できる。低ダイナミックな場合のための完全なシステムは、以下のように見える。
【0169】
【数39】
【0170】
静的な場合は、ベロシティ状態を除去することによって実現される。
ナビゲーション出力の完全性はしばしば、決定的に重要である。ここに説明するナビゲーションシステムおよび方法は、完全性の最高可能しきい値を提供することと十分に両立し得る。電波妨害状況下ですら、拡張カルマンフィルタ108の定常状態への集束時には、異常な状況を検出するために測定値残余において利用可能な著しい量の冗長な情報がある。完全性アプローチは、周知の受信機自律完全性モニタリング(Receiver Autonomous Integrity Monitoring:RAIM)の変形を使用する。大抵の状態変数がセンチメートルレベルの正確度へと集束してきたこと、および慣性バイアス状態−特に位置誤差−に対する更新がセンチメートルレベルの正確度で起こっていることが仮定される。したがって、RAIM残余を以下のように構築することが可能である。
【0171】
【数40】
【0172】
これは、n−4の自由度を効果的に有するカイ二乗分布を形成する。衛星の十分な冗長性、すなわちn>4を考えると、故障仮説をテストするためにしきい値を残余に適用することができる。さらなる冗長性、すなわちn>5、および電波妨害防止余裕を考えると、より精巧なRAIM実現化例は障害検出および排除が可能である。
【0173】
前述のように、使用される任意の所与のLEO衛星222がτrefへのアクセスを有することを確実にするために、地上モニタ局のネットワークおよび従来のGPS時刻転送が採用されてもよい。これらの地上モニタ局が利用可能でない場合、採用可能な追加の代替例がある。第1のものは、図17に示すような移動地上基準局1702である。基準局1702の精密な相対位置が運動学的GPSから利用可能である場合、この発明の基地局として機能するために必要とされる精密な基準クロックτmobileは、静止プラットフォームおよび移動プラットフォームの双方からの位相測定値から、最小二乗の意味において以下のように解かれてもよい。
【0174】
【数41】
【0175】
LEO電波到達範囲よりも大きい距離にわたってネットワーク時間を転送する別の手段は、図18に示すような相互リンクを用いることである。この実施例では、隣接する宇宙船1802と1804との間で双方向のコヒーレントな測距が実行される。各LEO宇宙船はコヒーレントなクロックを用いて動作するため、各宇宙船クロックの誤差寄与は精密に相殺される。したがって、各輸送体位置の精密な知識を用いて、マスタ地上局1802の基準時間を再構成することが可能である。
【0176】
好ましい実施例のための同一の展開を共通視野を用いて呼出すと、以下のようになる。
【0177】
【数42】
【0178】
この結果は次に、同一の結果を共通視野展開として達成するために前に送られてもよい。すなわち、以下のようになる。
【0179】
【数43】
【0180】
前述の詳細な説明において少なくとも1つの例示的な実施例が提示されてきたが、莫大な数の変形が存在することが理解されるはずである。また、例示的な実施例は単なる例であり、この発明の範囲、適用可能性、または構成を多少なりとも制限するよう意図されてはいないことも理解されるはずである。むしろ、前述の詳細な説明は、例示的な実施例を実現するための便利な道路地図を当業者に提供する。添付された特許請求の範囲およびその法的均等物に述べられるようなこの発明の範囲から逸脱することなく、要素の機能および構成においてさまざまな変更が行なわれ得ることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】この発明に従った例示的なユーザ送受信機アーキテクチャの概略全体図である。
【図2】この発明に従ったシステムの動作を示す概略全体図である。
【図3】この発明に従った基準ネットワークの概略全体図である。
【図4】この発明の一実施例に従った受信機の機能ブロック図である。
【図5】受信機および制御放射パターンアンテナ(CRPA)の機能ブロック図である。
【図6】この発明に従った受信機およびマルチビームステアリングアンテナ電子回路パッケージの機能ブロック図である。
【図7】この発明の一実施例に従った例示的な受信機構成である。
【図8】例示的なデータストリッピングプロセスの概略全体図である。
【図9】例示的な時刻転送プロセスの概略全体図である。
【図10】例示的な地球低軌道(LEO)相関器の機能ブロック図である。
【図11】例示的なGPS相関器の機能ブロック図である。
【図12】例示的なナビゲーションプロセッサの機能ブロック図である。
【図13】拡張ドウェルプロセスの機能ブロック図である。
【図14】拡張カルマンフィルタの機能ブロック図である。
【図15】例示的な更新プロセスを示すフローチャートである。
【図16】例示的な誤差周期の図形描写である。
【図17】移動基準を有するナビゲーションシステムの概略全体図である。
【図18】LEO相互リンクを示すシステムの概略全体図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーションシステム(200)であって、
基準受信機(210)と、
ユーザ受信機(202)と、
前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)の共通視野にある全地球測位システム(GPS)衛星(206)とを含み、前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)は前記GPS衛星(206)から搬送波測距信号(208、209)を受信し、前記ナビゲーションシステムはさらに、
前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)の共通視野にある第1の地球低軌道(LEO)衛星(222)を含み、前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)は、前記第1のLEO衛星(222)から受信されたLEO搬送波測距信号のそれぞれの第1および第2の測定値を計算するよう構成されており、
前記ユーザ受信機(202)は、前記LEO衛星(222)を介して前記基準受信機(210)から前記第1の測定値を受信し、前記第1および第2の測定値を適用して、前記ユーザ受信機(202)によって受信された前記GPS搬送波測距信号(208)の信号位相の演繹的推定値を構築するよう構成されており、前記演繹的推定値は、前記ユーザ受信機(202)での前記搬送波測距信号(208)の拡張積分の基盤として使用される、ナビゲーションシステム。
【請求項2】
複数のLEO衛星(222)をさらに含み、前記複数のLEO衛星(222)の1つ以上は前記演繹的推定値に寄与する、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項3】
前記ユーザ受信機(202)は、前記演繹的推定値を求めるために天体暦情報を採用しており、前記演繹的推定値は、拡張された積分間隔にわたる波長のごく一部分である、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項4】
複数のGPS衛星(206)をさらに含み、前記GPS衛星(206)からの複数のそれぞれの搬送波測距信号(208、209)は、前記受信機(202)によって組合されてナビゲーションソリューションを形成する、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項5】
複数のGPS衛星(206)をさらに含み、前記GPS衛星(206)からの複数のそれぞれの搬送波測距信号(208、209)は、前記受信機(202)によって組合されてナビゲーションソリューションを形成する、請求項2に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項6】
前記拡張積分は、前記GPS衛星(206)からの前記搬送波測距信号(208、209)に埋込まれたコード位相測距情報を復元させるために使用される、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項7】
前記複数のGPS衛星(206)からの前記コード位相測距情報は、前記ユーザ受信機(202)の位置およびクロックオフセットを計算するために使用される、請求項6に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項8】
前記第1および第2の測定値は、前記ユーザ受信機(202)に、前記基準受信機(210)と前記ユーザ受信機(202)との間の精密な相対時間推定値を提供する、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項9】
前記コード位相測距情報は、前記ユーザ受信機(202)に、前記基準受信機の時刻に対して精密であり、かつGPS時刻に対して正確である時間推定値を提供する、請求項7に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項10】
システムバイアスを推定するために、前記複数のLEO衛星(222)およびGPS衛星(206)のジオメトリの変化が、前記ユーザ受信機(202)によって採用される、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項11】
複数のLEO衛星(222)をさらに含み、前記複数のGPS衛星(206)と、前記複数のLEO衛星(222)と、前記ユーザ受信機(202)に関連付けられたクロックとに関連付けられたトラッキングバイアス状態変数を区分するために、直交化が前記ユーザ受信機(202)によって採用される、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項12】
前記ユーザ受信機(202)は静止している、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項13】
前記ユーザ受信機(202)は低ダイナミクス下で動作する、請求項7に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項14】
前記ユーザ受信機(202)内の慣性ナビゲーションシステムは、前記ユーザ受信機(202)の運動を減算するために採用される、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項15】
前記慣性ナビゲーションシステムによって生成された1組のバイアス補正値は、前記拡張積分の期間にわたって波長のほんの一部分よりも小さい正確性を提供するのに十分である、請求項14に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項16】
前記基準局(210)は移動式である、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項1】
ナビゲーションシステム(200)であって、
基準受信機(210)と、
ユーザ受信機(202)と、
前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)の共通視野にある全地球測位システム(GPS)衛星(206)とを含み、前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)は前記GPS衛星(206)から搬送波測距信号(208、209)を受信し、前記ナビゲーションシステムはさらに、
前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)の共通視野にある第1の地球低軌道(LEO)衛星(222)を含み、前記基準受信機(210)および前記ユーザ受信機(202)は、前記第1のLEO衛星(222)から受信されたLEO搬送波測距信号のそれぞれの第1および第2の測定値を計算するよう構成されており、
前記ユーザ受信機(202)は、前記LEO衛星(222)を介して前記基準受信機(210)から前記第1の測定値を受信し、前記第1および第2の測定値を適用して、前記ユーザ受信機(202)によって受信された前記GPS搬送波測距信号(208)の信号位相の演繹的推定値を構築するよう構成されており、前記演繹的推定値は、前記ユーザ受信機(202)での前記搬送波測距信号(208)の拡張積分の基盤として使用される、ナビゲーションシステム。
【請求項2】
複数のLEO衛星(222)をさらに含み、前記複数のLEO衛星(222)の1つ以上は前記演繹的推定値に寄与する、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項3】
前記ユーザ受信機(202)は、前記演繹的推定値を求めるために天体暦情報を採用しており、前記演繹的推定値は、拡張された積分間隔にわたる波長のごく一部分である、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項4】
複数のGPS衛星(206)をさらに含み、前記GPS衛星(206)からの複数のそれぞれの搬送波測距信号(208、209)は、前記受信機(202)によって組合されてナビゲーションソリューションを形成する、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項5】
複数のGPS衛星(206)をさらに含み、前記GPS衛星(206)からの複数のそれぞれの搬送波測距信号(208、209)は、前記受信機(202)によって組合されてナビゲーションソリューションを形成する、請求項2に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項6】
前記拡張積分は、前記GPS衛星(206)からの前記搬送波測距信号(208、209)に埋込まれたコード位相測距情報を復元させるために使用される、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項7】
前記複数のGPS衛星(206)からの前記コード位相測距情報は、前記ユーザ受信機(202)の位置およびクロックオフセットを計算するために使用される、請求項6に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項8】
前記第1および第2の測定値は、前記ユーザ受信機(202)に、前記基準受信機(210)と前記ユーザ受信機(202)との間の精密な相対時間推定値を提供する、請求項1に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項9】
前記コード位相測距情報は、前記ユーザ受信機(202)に、前記基準受信機の時刻に対して精密であり、かつGPS時刻に対して正確である時間推定値を提供する、請求項7に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項10】
システムバイアスを推定するために、前記複数のLEO衛星(222)およびGPS衛星(206)のジオメトリの変化が、前記ユーザ受信機(202)によって採用される、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項11】
複数のLEO衛星(222)をさらに含み、前記複数のGPS衛星(206)と、前記複数のLEO衛星(222)と、前記ユーザ受信機(202)に関連付けられたクロックとに関連付けられたトラッキングバイアス状態変数を区分するために、直交化が前記ユーザ受信機(202)によって採用される、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項12】
前記ユーザ受信機(202)は静止している、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項13】
前記ユーザ受信機(202)は低ダイナミクス下で動作する、請求項7に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項14】
前記ユーザ受信機(202)内の慣性ナビゲーションシステムは、前記ユーザ受信機(202)の運動を減算するために採用される、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項15】
前記慣性ナビゲーションシステムによって生成された1組のバイアス補正値は、前記拡張積分の期間にわたって波長のほんの一部分よりも小さい正確性を提供するのに十分である、請求項14に記載のナビゲーションシステム(200)。
【請求項16】
前記基準局(210)は移動式である、請求項5に記載のナビゲーションシステム(200)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−515188(P2009−515188A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540123(P2008−540123)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/043320
【国際公開番号】WO2008/048283
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/043320
【国際公開番号】WO2008/048283
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
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