説明

平板ガラスから任意の輪郭のガラス板を製造する方法

【課題】平板ガラスから任意の輪郭のガラス板、特に記録媒体用のガラス基板を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、平板ガラスから任意の輪郭のガラス板を製造する方法に関し、以下の工程を有している。切断装置を用いて、平板ガラスの少なくとも一方の側に輪郭に沿った分断線を或る深さTガラス板まで刻設し、下敷上にガラス板を配置する。本発明は、分断線に沿って割断部が生じるように前記平板ガラス上に特定の力Fを加え、平板ガラスの厚さ全体を貫いて前記割断部をくまなく伸展させ、割断の後でガラス板を分離することを特徴とする。上記ガラス板を記憶媒体用のガラス基板とし、かつ外径および/または内径に対して設けられる円形状の分断線に上記分断線を対応させ、上記切断装置として、レーザ切断装置とするか又は機械的な切断装置を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板ガラスから任意の輪郭のガラス板を製造する方法に関し、このとき、第一の工程において、ガラス板の少なくとも一方の側に切断装置を用いて或る所定深さまで輪郭に沿って分断線を刻設する方法に関する。続いて、ガラス板は、置かれて平板ガラスから輪郭に沿って分断される。斯かる方法は、特に、電気的な記憶媒体用のガラス基板を製造するために使用される。
【0002】
本発明は、上記の方法の他にも、平板ガラスから任意の輪郭のガラス板を割断するための装置も提供する。この装置もまた、特に、或る外径と内径とを有する電気的な記憶媒体用のガラス基板をガラス板から製造するために使用され、このとき、斯かる装置は、下敷と押圧装置とを備えている。
【背景技術】
【0003】
特にハードディスクといった磁気的な記憶装置へのガラス基板の利用は、今日主としてラップトップにおいて実現されている。現在主に用いられているアルミニウム基板と比較すると、より高い剛性、強度、Eモジュール(E-Modul)、そしてそれに伴う一層優れた耐衝撃性ならびにフラッタの低減にガラス基板の長所がある。
【0004】
特にハードディスクといった磁気的な記憶媒体へのガラス基板の応用可能性をこれまで特に阻んできたのは、極めて高い技術的な手間とコストをかけてしか、適した表面特性を持つガラスを利用可能にできなかったことである。
【0005】
こういったことは、特にプレスやフロートによってガラス板を製造する場合に当てはまるが、例えば米国特許第5725625号明細書に開示されているように、引き伸ばし工程によって製造された帯状ガラスにも当てはまる。
【0006】
かくして、引き伸ばされたガラスの場合、米国特許第5725625号明細書により、引き伸ばされたガラスの表面に2回のラッピング工程およびさらに2回の研磨工程を施す必要がある。
【0007】
その開示内容が本願に包括的に取り込まれている2000年1月5日に米国特許庁に出願された出願番号09/477712号明細書に述べられているような新しい方法を用いれば、引き伸ばされたガラス基板が、25μm以下、特に10μm以下の平坦さないし平面度、100Å未満、特に40Å未満のうねり、±20μm、特に±15μmの肉厚変動、及び10Å未満、特に5Å未満の表面粗度を持つようにできる。
【0008】
表面特性、平面度、うねり、及び表面粗度は、例えば、SEMIスタンダード(1996)のSEMI D15−1296に記載されているようなディスプレイ基板用の標準的な方法といった公知の方法によって特定される。ここで、平面度とは、表面全体にわたって測定された理想的な平坦な表面からのずれのことであり、波形の度合いないしうねりとは、中規模の基準区間を参照した場合の理想的な表面からのずれの平均波長成分のことであり、表面粗度とは、評価用の短い測定区間を参照した場合の短波長領域におけるずれのことである。例えば、米国特許第5725625号明細書による表面に対しての如く、上述のような優れた表面に対しては、仕上げ加工はもはや必要ではない。このため、ガラス基板に対して、表面の仕上げ加工を全く省けるか、あるいはかなり減らせるような、電気的な記憶媒体を製造するための方法を示唆することが求められている。
【0009】
現在従来技術に挙げられるような方法は、引き伸ばされ、あるいはフロートにより作製されて、25μm以下の平面度、100Å未満のうねり、±20μmの肉厚変動、ならびに10Å未満の表面粗度を有する帯状ガラスをさらに加工処理するのには適していないのであって、この場合、任意に決められた輪郭で切断できかつ加工処理工程の間に表面損傷を略防止できるようにしながら、滑らかなエッジを有する切断が重要になる。
【0010】
細かく尖った破片と同様に凹みや細かなひび割れをも防ぐためのアプローチは、熱的に生まれる機械的な応力を用いてガラスを分離することである。この場合、ガラス上に向けられた熱源からの光線が、ガラスに対して相対的に一定の速度で動かされ、それによって高い熱機械的な応力が生成される。この応力が、ガラスに亀裂を形成する。この熱機械的な応力は、熱線の後を追う冷却スポットによってさらに高められる。熱的なエネルギーを局所的に、つまり、典型的な切断精度に相当する1mmより正確な精度、特に好ましくは100μmより正確な精度で位置決めすることができるように要求される熱源の特性は、赤外線照射器、特にガスバーナやとりわけレーザによって十分満たされる。特にレーザは、その優れた集光性能、優れた出力操作性、ならびに光線形状の形成可能性、そしてそれに伴うガラス上での強度分布の故にその適正さが実証され、利用されている。ガラスは、レーザ光線によって先ず初期亀裂が刻み込まれ、続いて機械的に割断される。この方法は、いわゆる亀裂割断法(Ritzen-Brechen-Methode)と称される。
【0011】
レーザ光線分断法は、集光されたレーザ光線と外からの冷却を組み合わせる局所的な加熱によって、材料の破断応力を超えるまで熱機械的な応力を発生させるものであり、この方法は、欧州特許出願公開第0872303号明細書、独国特許発明第69304194号明細書および独国特許発明第4305107号明細書、ならびに米国特許第5120926号明細書より公知となっている。
【0012】
英国特許出願公開第1433563号明細書は、レーザを用いて分断線をガラス基板内に刻設し、その後、この分断線に沿って、ガラスの硬度より高い硬度を有する切断装置を用いてガラスを割断する方法を開示している。例えば、ダイアモンドないしアルミニウム製の切断装置がこのような切断装置に用いられる。
【0013】
これに代わる亀裂割断法が米国特許第2372215号明細書より周知となっている。この方法では、例えばダイアモンド製小形ホイールといった切断工具を用いてガラス表面に或る深さTまで分断線を刻装し、続いて、この分断線に沿って、例えば機械的な作用を加えることによってガラスを割断する。
【0014】
好ましい実施形態において、分断線Tに沿ったガラスの割断は、ガラス内に意図的に温度応力を加えることによって行なわれる。
【0015】
特に電気的な記憶媒体用のガラス基板は、従来技術による上述した「亀裂割断法」を用いると、特にその基板厚さの故に、必要な品質を満足するように製造することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、出来る限り少ない工程を有し、ガラス引き伸ばし工程の際に得られる表面に損傷が殆ど無いようにして電気的な記録媒体用の個々のガラス基板を製造することができる、平板ガラスから任意の輪郭のガラス板、特に記録媒体用のガラス基板を製造する方法を提供することにある。この方法は、特に、引き伸ばし工程ないしフロート工程の際に得られる平面度25μm以下、うねり100Å未満、肉厚変動±20μm、ならびに表面粗度10Å未満という表面特性を略劣化させないものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、本発明により、請求項1の前提部分おいて書き部の記載の方法において、ガラス板を配置した後、このガラス板上に押圧装置を用いて特定の力をかけ、これにより分断線に沿って割断部が生じるようにし、この割断部を全基板を通してくまなく伸展させることによって解決される。本発明の好ましい実施形態においては、ガラス板を下敷上で割断する前に、このガラス板を裏返し、これにより、分断線ないし亀裂が刻設された側が下敷の上に載るようにする。
【0018】
本発明の第一の実施形態においては、上記下敷として、所定の硬さの大面積の下敷を用いる。この下敷を回転自在に構成する場合には、ガラス板上に下敷を置く際に、例えば円環状の分断線によって規定される内円もしくは外円の中心が、上記下敷ないし作業台の回転中心に合致した状態にすることができる。例えば小形ホイールないしボールといった押圧装置を用いて、所定の力でガラス基板上を押圧する。こうして発生させた割断部を、台を回転させることで、ガラス板中を全て通るようにくまなく伸展させる。
【0019】
他の実施形態においては、二つの可撓性プレートの間にガラスを設ける。こうして得られた板束を例えば下敷としてのリング上に載置する。このとき、リングの直径が分断線の輪郭によって規定される直径より大きくなるようにする。次に、反対側からパンチを使って押圧する。ここで、パンチの直径は、上記開口部より小さいものとする。パンチによって加えられる力は、プレートとガラスとを湾曲させる。亀裂内に引張応力が形成されて、この亀裂が材料中をくまなく通って伸展し、その結果、平板ガラスの外側部分が完全に内側部分から分離される。
【0020】
この方法の長所は、特に、可撓性の材料によって横応力によるエッジ部分での破断が確実に防止され、そのため、ガラス基板の表面が破断および凹部形成から保護されるという点にある。
【0021】
本発明による第三の方法においては、ガラス板が割断して取り出されなければならない平板ガラスを、ポケット部を有するプレートの上に載置する。このポケット部に、主に真空を付与し、これによって、板の上に円環状の面荷重が加わるようにする。すると、亀裂内に引張応力が発生し、この引張応力が、材料を通して亀裂をくまなく伸展させ、その結果、外側部分を完全に内側部分から切り離すことができるようになる。例えば円環状のポケット部を用いれば、亀裂における引張応力が最大になる。ガラスの下側を真空にする代わりに、反対側に正圧の圧搾空気ないし液体圧力を働かせることもできる。
【0022】
本発明による全ての方法は、ガラス板から内孔部を割断もしくは分断するのに適しているのと同様、平板ガラスからこのガラス板自身を割断もしくは分断するのにも適している。割断もしくは分断とは、本明細書中、必ずしも内側部分と外側部分とが互いに物理的に離隔されなくても、分断線が完全にガラス基板を通してくまなく伸展させられることである。
【0023】
割断もしくは分断のステップにより平板ガラスを通してくまなく伸展した分断線に沿った内側部分を分離、あるいは外側部分を別体化させるには、さらなる工程ステップにおいて行なうことができる。このために、例えば、内側部分と外側部分の間および/または外側部分と周囲の平板ガラスとの間に温度差を形成する。この目的で、内側部分を意図的に液体窒素で冷却することができる。外側部分を別体化させるために、周囲の平板ガラスを例えば200℃の熱風を用いて加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】切断装置による平板ガラス基板内の分断線の亀裂を示す図である。
【図1B】分断線に沿った平板ガラスの割断の様子を示す図である。
【図2】レーザ装置を用いて深さTまで平板ガラスに分断線を刻設する様子を示す図である。
【図3】所定の硬さを有する下敷の上でガラス板を割断する様子を示す図である。
【図4】リングと組み合わせたパンチを用いてガラス板を割断する様子を示す図である。
【図5】真空を利用してガラス板を割断する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0026】
図1Aおよび図1Bには、亀裂と割断による所謂亀裂割断法を用いて平板ガラス1を分断する様子が示されている。この亀裂割断法の場合、ガラス表面24上に載置される切断装置を用いて、平板ガラス1内に所定の深さTガラス基板まで分断線26を刻み付ける。
【0027】
切断工具22を用いて分断線に沿ってガラスを刻んだ後、図2Bに示すように、この分断線に沿ってガラスを割断する。切断工具22は、例えば、切断用小形ホイールといった切断装置とすることができる。
【0028】
特に好ましいのは、レーザ装置を用いてガラス板の表面24に分断線の亀裂を得る場合である。図2Aないし図2Bには、特に好ましいレーザ分断法が示されている。
【0029】
レーザ切断装置を用いた亀裂と割断の場合、ガラス表面は、ほんの僅かしか傷つかない。このため、保護コーティングは、全て省くことができる。
【0030】
図2Aは、本実施形態においてハードディスク100とされた電気的な記憶媒体用の円形状のガラス基板を平板ガラス1から割断して取り出すためにレーザ光線を用いて亀裂を刻み付ける原理を説明する図である。スタート段階の生産物としての平板ガラス1は、通常0.3〜5mmの範囲の厚さdを有している。
【0031】
図2Aによる実施形態において、レーザ光線のプロファイルは、分断すべき円形状の輪郭に対応させて曲げられているV字状の焦点スポット102が平板ガラス1上に出現するように形成されている。このレーザ光線プロファイルの後を、レーザ光線によって生成された熱機械的な応力を破断応力を超えるまで高める冷却スポット104が追いかけるようにする。この冷却スポットは、主に冷風といった冷却ガスを吹き付けたり、あるいは水/空気混合物を吹き付けたりすること等で実現できる。上記V字状焦点スポットは、特に、欧州特許出願公開第0873303号明細書等に記載されているようにして得ることができる。
【0032】
図示されたV字状ないしU字状の焦点スポット102の他にも、他の焦点スポット形状を用いることができる。
【0033】
平板ガラス1の分断は、2段階で行なう。
【0034】
図2Aに示す第1段階では、所定の深さTに達するまでガラスを裂く熱機械的な応力がガラス内に形成されるように、レーザ出力、レーザ光線プロファイル、焦点スポット位置決め、送り速度−つまり焦点スポット102と平板ガラス1と冷却104との間の相対移動の速度、に関するパラメータを設定する。ここで、この亀裂深さTは、典型的には0.08〜0.3mmの範囲とする。
【0035】
上記パラメータ設定により、ガラス基板に対する外側輪郭106と同様、内孔部に対する内側輪郭107も刻むことができる。このとき、外側内側のいずれに対しても、機械的に付けた亀裂108を初期亀裂として用いる。ここで、この機械的な亀裂は、例えば切断用小形ホイールといった周知の方法により形成したものである。特別な利点を有して、上記初期亀裂108にレーザ亀裂110を連続させ、この亀裂を外側および内側の輪郭の円の湾曲に向かって接線方向に延ばしてつなげる。このように刻み目を付けることが、それ自身閉じた輪郭106,107の段差の無い分断を促す。
【0036】
本発明により、以下に示すように分断線に沿ってガラスを割断する。
【0037】
図3には、第一の解決手段が示されている。この解決手段を用いて、ハードディスク100の内径および外径のための、例えばレーザによって上述したように設けられた亀裂を、厚みを貫いて深さ方向に伸ばすことができる。本発明によれば、内径ないし外径のための分断線をレーザにより刻んだ後、引き続いて加工処理対象の平板ガラス1を裏返し、特定の硬さを有する下敷200上に配置する。特に有利なのは、上記下敷200を回転自在の作業台202上に載置する場合である。回転自在の作業台を用いる場合、例えばハードディスクとなる円形状のガラス基板が切り出されるガラス板の位置を調整する際に、ハードディスクの中心点と作業台202の回転中心とができるだけ正確に重なり合うように配置することが好ましい。例えばボールや小形ホイール204といった構成の押圧装置を用いて、特定の力Fで外径用の分断線ないし内径用の分断線の上方でガラス基板1上を押圧する。生じた割断部206を作業台202の回転によってさらに押し進めて伸展させる。ガラス基板における割断部206の位置に応じて、小形ホイール204ないしボールに対する距離を変更することができる。この影響は、調整可能な力によって補償することができる。
【0038】
下敷200の硬さは、及ぼす割断力に関係する。一般に言えるのは、下敷200の硬度が低いほど、必要な割断力も低いということである。ただし、柔らかい下敷の場合の工程は、より不正確にしか制御できない。
【0039】
さらに、亀裂110上の小形ホイール204の位置決め精度が、加工品のエッジの角精度に影響を与えるということが判明している。幅広の小形ホイールの場合、位置決めは厳しくはない。しかしながら、内径が小さい場合、幅広の小形ホイールは、大きなたわみの故に条件付きでしか用いることができない。このため、内径を割断するためにはボールを用いることが望ましい。
【0040】
図4には、平板ガラス1からガラス板を割断するための図3に代わる方法が明らかにされている。任意の輪郭のガラス板が割断して取り出されることになる平板ガラス1は、プレキシガラスから作ることができる二つのしなやかな可撓性プレート300.1,300.2の間に置かれる。これらのプレート300.1及び300.2は、平板ガラス1を閉じ込め、一種の板束302(パック)を形成する。平板ガラス1ならびに可撓性プレート300.1,300.2からなる板束は、開口部304を有する下敷200上に位置している。この開口部の直径dは、円弧状の分断線dKTの直径より常に大きい。
【0041】
分断線に沿ってガラス板を平板ガラスから割断して取り出すために、開口部の反対に位置する側304から例えばパンチ306等を用いて或る力Fで押す。パンチ306は、開口部直径dより小さい直径dを有している。力Fを用いて可撓性プレート300.1,300.2ならびに平板ガラス1を湾曲させる。亀裂ないし分断線110内には、引張応力が生じる。力Fによって材料1を通してくまなく亀裂を伸展させ、これにより、割断して取り出すべきガラス板の輪郭、つまりは外径に相当する内側部分308.2から、平板ガラスの外側部分308.1を完全に分離させる。本方法において特に好ましいのは、本発明の第二の実施形態により、平板ガラス1を取り囲む可撓性の材料300.1,300.2を用いて、横応力によるエッジ部分における破断を防ぐことができるということである。しかも、平板ガラスの表面が保護される。
【0042】
図5には、本発明による第三の方法が示されている。平板ガラス1は、円環状のポケット部400を有する下敷200上に載っている。この円環状ポケット部は、平板ガラスから取り外されるべきガラス板の内径か又は外径のいずれかに該当する円形状の分断線の直径dKTより小さな内径dを有している。ポケット部dの外径は、円弧状分断線の直径dKTよりも大きい。上記ポケット部に接続部402を介して真空が形成されると、円環状の面荷重が平板ガラス1上に発生する。この円環状の面荷重は、亀裂ないし分断線110内に引張応力を作用させる。これが材料を通してくまなく亀裂を伸展させることになり、その結果、外側部分308.1が、図4に示す実施形態の場合のように内側部分308.2からすっかり分離する。
【0043】
以上述べてきた方法は、ガラス板全体を平板ガラス1から分断ないし割断するのに適しているだけでなく、例えばハードディスクに用いられるガラス板の場合に、内孔部を分断ないし割断するためにも適している。
【0044】
円環状のポケット部400は、亀裂における引張応力が最大となるように作用する。この方法は、しかしながら、穴状のポケット部、つまり直径Dを有する中間部分が無いポケット部を用いたものでも構わない。そうすれば、斯かる穴状のポケット部の直径Dが円弧状分断線の直径DKTより大きくなることに気を付けるだけでよい。
【0045】
これとは異なる実施形態において、平板ガラス1の下側における真空接続部402を介した真空の代わりに、ポケット部と反対側の面に正圧を付与することもできる。
【0046】
以下に、本発明の具体的な一実施形態をさらに述べることにする。
【0047】
80×80×0.7mmの寸法を有する平板ガラスから、65mmの外径および20mmの内径を有するハードディスク板を以下のように割断して取り出す。先ず、レーザ切断装置を用いて上側の面上に次のようにして亀裂を刻設する。先ず、ダイアモンドを用いてガラス板に刻み目を付ける。これは、円周側にスタート用の傷を形成するものである。次に、V字状の焦点スポットに広げられたレーザを用いて熱を加え、その際、エタノール噴射ないしエア噴射によって冷却を行なう。分断線を形成したら、パンチ/リング法によって、内径φd(パンチ)=20mm、d(リング)=50mm、h(プレキシグラス)=2mm、外径φd(パンチ)=65mm、d(リング)=80mm、h(プレキシグラス)=2mmが得られるまで内径および外径を割断して取り出す。このとき、力が制御された直線軸を介して上記パンチを送る。
【0048】
割断ないし分断された部分の分離ないし別体化は、外側部分に対して約200℃の熱風、内側部分に対して液体窒素を用いることによって行なう。
【0049】
本発明による方法は、表面を傷つける事無くガラス板からガラス基板を取り出すことのできる亀裂割断法を初めて開示するものである。
【符号の説明】
【0050】
1・・・平板ガラス
22・・・切断工具
24・・・ガラス表面
26・・・分断線
100・・・ハードディスク
102・・・レーザの焦点スポット
104・・・冷却スポット
106・・・外側輪郭
107・・・内側輪郭
108・・・亀裂
110・・・レーザ光線
200・・・下敷
202・・・回転自在の作業台
204・・・小形ホイール
206・・・割断部
300.1・・・可撓性プレート
300.2・・・可撓性プレート
302・・・板束
304・・・下敷の開口部
306・・・パンチ
308.1・・・内側部分
308.2・・・外側部分
400・・・ポケット部
402・・・真空接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断装置を用いて、平板ガラス(1)の少なくとも一方の側に輪郭に沿った分断線(26,110,106,107)を或る深さTガラス板まで刻設し、
下敷(200)上にガラス板(1)を配置する工程を有して、
平板ガラスから任意の輪郭のガラス板を製造する方法において、
前記下敷は、所定の硬さに設け、
前記分断線(26,110,106,107)に沿って亀裂が生じるように押圧装置を用いて前記平板ガラス(1)上に特定の力Fを加え、
前記加える力に前記下敷の硬さを関係させ、
前記特定の力を加えることによって、
前記平板ガラス(1)の厚さ全体を貫く前記亀裂をくまなく伸展させ、
前記平板ガラス(1)の厚さ全体を貫く亀裂を伸展させる際に、横応力による前記ガラス板のエッジ部分の破断を大幅に防止するよう、前記加えるべき特定の力と前記下敷の硬さとを選択することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
割断の後で前記ガラス板を分離することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
前記ガラス板を記憶媒体用のガラス基板とし、かつ外径および/または内径に対して設けられる円形状の分断線に前記分断線を対応させることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法において、
前記切断装置をレーザ切断装置とするか又は機械的な切断装置とすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法において、
前記下敷(200)を完全な面を有する下敷とすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法において、
前記下敷に開口部を設けることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記開口部に円形状の輪郭を与えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法において、
前記一つないし複数の開口部に前記分断線を揃えるように前記平板ガラスを配置することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法において、
前記亀裂を刻設した前記ガラス板の面が前記下敷(200)側に載るように、前記下敷(200)上に載置する前に前記ガラス板(1)を裏返すことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の方法において、
前記下敷(200)を回転自在にし、前記下敷(200)の回転中心と、前記円環状の第1及び第2の分断線(106,107)によって規定される外径ないし内径の中心点とを合致させるように、前記下敷(200)上に前記ガラス板(1)を配置することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記力Fを加えることで前記一つないし複数の分断線(26,101,106,107)に沿って生じさせられた亀裂を、前記下敷(200)を回転することでさらに伸展させることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法において、
前記ガラス板(1)を、前記下敷(200)上に載置する前に二つの可撓性プレート(300.1,300.2)の間に挿入することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記可撓性プレートがプレキシガラスを含むようにすることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法において、
前記力Fを加えるための装置が、前記ガラス板上に局所的に力を加えるようなボールないし小形ホイールを備えるようにすることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記力を加えるための装置が可変の力を加えるようにすることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法において、
前記力を加えるための装置がパンチ面を有するパンチ(306)を備えるようにすることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記パンチ面の形状を前記分断線の輪郭に対応させることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の方法において、
前記パンチ面を円形状にすることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16または請求項17に記載の方法において、
前記パンチ面を円環状にすることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の方法において、
前記下敷(200)がポケット部(400)又は溝部を備えるようにすることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記ポケット部ないし溝部の形状を前記分断線の輪郭に対応させることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の方法において、
特に正圧および/または差圧、特に真空といった流体によって前記力を加えることを特徴とする方法。
【請求項23】
下敷(200)を有し、
平板ガラスから任意の輪郭のガラス板を割断するための装置において、
割断対象の平板ガラスを前記下敷(200)上に配置するための配置装置と、所定の力を加えるための手段とを備え、
前記平板ガラスを貫く亀裂を伸展させるために加える力に前記下敷の硬さを関係させ、横応力による前記ガラス板のエッジ部分の破断を大幅に防止するよう、前記特定の力に応じて前記下敷の硬さを選択することを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項24に記載の装置において、
前記力Fを及ぼすための手段は、小形ホイール(24)又はボールとされていることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項25に記載の装置において、
前記力Fを及ぼすための手段は、パンチ(306)とされていることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の装置において、
前記下敷は、自身の形状が分断線の輪郭形状に概ね相当する開口部を有していることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の装置において、
前記下敷は、ポケット部(400)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項27に記載の装置において、
前記ポケット部は、真空接続部(402)を備えていることを特徴とする装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232894(P2012−232894A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−148340(P2012−148340)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2002−504323(P2002−504323)の分割
【原出願日】平成13年6月15日(2001.6.15)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】