説明

平板ブロック

【課題】軽量且つ透水性・保水性に秀れ、例えば舗装層として用いた場合にも十分な強度を発揮できる極めて実用性に秀れた平板ブロックの提供。
【解決手段】舗装層,建物の壁面若しくは屋根材等として用いられる平板ブロックであって、炭化物とセメントとから成る保水層1上に、ポーラス状のコンクリートから成る透水層2を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部における人工地盤化(コンクリート・アスファルトの増加)により、夏季におけるヒートアイランド現象が問題となっている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1(特開2006−9520号公報)に開示されるような、内部に保水した水分の蒸発に伴い表面温度を下げることが可能な敷設用ブロックが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−9520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される構成は、基層に木片コンクリートを採用しているため、木片が腐食し易く強度に劣り、長期間にわたって構造を維持できず、また、木片が腐食することで保持された水が腐敗し、悪臭を放つ可能性もある。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決したもので、軽量且つ透水性・保水性に秀れ、例えば舗装層として用いた場合にも十分な強度を発揮できる極めて実用性に秀れた平板ブロックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
舗装層,建物の壁面若しくは屋根材等として用いられる平板ブロックであって、炭化物とセメントとから成る保水層1上に、ポーラス状のコンクリートから成る透水層2が設けられていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の平板ブロックにおいて、前記保水層1に、有機繊維若しくは無機繊維が混入されていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記保水層1の炭化物として、ペーパースラッジから生成した炭化物が採用されていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0011】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記保水層1の厚さは、1〜3cmに設定されていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0012】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記透水層2の厚さは、1〜3cmに設定されていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0013】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記保水層1は、炭化物1mに対してセメント300〜500kg,水分250〜350Lを混合して成るものであることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0014】
また、請求項6記載の平板ブロックにおいて、前記保水層1には、前記炭化物の容積に対し10〜30%の骨材が混入されていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0015】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記透水層2は、骨材260kg,セメント50〜90kg,水分15〜20Lを混合して成るものであることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0016】
また、請求項8記載の平板ブロックにおいて、前記透水層2には、前記骨材の容積に対し10〜30%の炭化物が混入されていることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【0017】
また、請求項1〜9いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、透水能力が1.0×10〜1.0×10−3cm/sであり、保水能力が200L/m以上であり、曲げ強度が3.00N/mm以上であることを特徴とする平板ブロックに係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、軽量且つ透水性・保水性に秀れ、例えば舗装層として用いた場合にも十分な強度を発揮できる極めて実用性に秀れた平板ブロックとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
例えば、地面に舗装層として敷設した場合、雨天時には透水層2(の表面)には雨水が溜まらず、透水層2を通過して保水層1に溜められ、晴天時にこの保水層1に保水された雨水が蒸発することで表面温度を低下させることができる。
【0021】
この際、保水層1の炭化物により良好な保水性を発揮できるのは勿論、この炭化物により浄化効果が発揮され、保水された水が腐敗したりせず、また、カドミウム等の重金属を吸着でき、極めて環境性に秀れる。
【0022】
また、保水層1は、大部分が(骨材より軽量な)炭化物で構成され、透水層2は、ポーラス状のコンクリートで形成されるため、それだけ軽量となり、敷設作業等を容易に行えることになる。
【0023】
また、一層構造で保水性を高めようとするとどうしても強度が不足しがちになるが(保水性と強度とは相反関係にある)、保水層1と透水層2との2層構造とすることで、保水層1に主に保水機能を担わせる一方、透水層2において主に磨り減り抵抗や曲げ抵抗などの構造機能(強度)を担わせることができ、舗装層として用いた場合にも十分な強度を発揮することが可能となる。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、図1に図示したような舗装層,建物の壁面若しくは屋根材等として用いられる平板ブロックであって、炭化物とセメントとから成る保水層1上に、ポーラス状のコンクリートから成る透水層2が設けられているものである。
【0026】
具体的には、舗装用のインターロッキングブロック等として用いられるものである。尚、保水層1に含まれる炭化物により発揮される効果、即ち、多数ある空隙によって、騒音を遮断したり、雨滴の音を軽減したりする吸音効果、また、NO,SO等を吸収して空気を浄化したりする浄化効果、更には、保水した雨等の水が晴天時に蒸発することにより室内を冷やしたりする冷却効果等を利用して、建物の壁面や屋根材として用いても良い。また、浄化効果を生かして護岸ブロックとして用いても良い。
【0027】
各部を具体的に説明する。
【0028】
保水層1には、有機繊維(若しくは無機繊維)が混入されている。有機質繊維としては、アラミド繊維,ビニロン繊維,ポリプロピレン繊維若しくはパルプ繊維(セルロース)等を採用すると良い。また、無機質繊維としては、炭素繊維,ガラス繊維若しくは鋼繊維等を採用すると良い。この有機繊維若しくは無機繊維を混入することで、保水機能を担い強度に劣る保水層を補強することができる。
【0029】
また、保水層1の炭化物として、ペーパースラッジ(紙及びパルプを生産する際に生じる排水処理汚泥、以下「PS」という。)から生成した炭化物が採用されている。具体的には、PSを炭化せしめたPS炭が採用され、本来廃棄物となるPSを有効活用できる。また、PS炭は秀れた保水機能を発揮する。
【0030】
保水層1の材料の混合割合は、炭化物(PS炭)1mに対してセメント300〜500kg,水分250〜350Lに設定されている。尚、上記数値範囲にやや幅があるのは、本実施例においては、水分量(及び他の材料の配合量)を、大気中の湿度、気温及び季節等を勘案して施工時に仮練り等をした上で決定するためである。
【0031】
更に、保水層1においてもある程度の強度を発現させるため、該保水層1には、炭化物の容積に対し10〜30%の骨材(細砂)が混入されている。
【0032】
具体的には、図2に図示したように、炭化物と骨材とセメントとを混合(乾燥混合)し、炭化物及び骨材とセメントとをある程度結合させた後、更に水を追加して混合(湿潤混合)し、保水層1をプレス機械内の型枠中に打設し、該型枠中で敷均し成形する。この際、保水層1の厚さは、可及的に軽量化するため1〜3cmに設定すると良い。
【0033】
上述のようにして打設した保水層1の上に、更に透水層2を打設する。具体的には、透水層2の材料の混合割合は、骨材260kg,セメント50〜90kg,水分15〜20Lに設定されている。骨材としては、珪砂(珪砂3号)が採用されている。尚、他の骨材を採用しても良い。
【0034】
更に、透水層2においてもある程度保水性及び浄化機能を確保するため、骨材の容積に対し10〜30%の炭化物(PS炭)が混入されている。
【0035】
具体的には、図2に図示したように、炭化物と骨材とセメントとを混合(乾燥混合)し、炭化物及び骨材とセメントとをある程度結合させた後、更に水を追加して混合(湿潤混合)し、透水層2を打設・成形する。この際、透水層2の厚さは、可及的に軽量化するため1〜3cmに設定すると良い。
【0036】
尚、乾燥混合は、炭化物と骨材とセメントとを一軸式の攪拌機に投入し、約3分間混合することで行う。この際、セメントが、炭化物及び骨材の表面に十分付着していることを確認する(時々切り返しを行う。)。また、湿潤混合は、乾燥混合した材料に徐々に水をいれ、一軸式の攪拌機により約3分間混合することで行う(時々切り返しを行う。)。これにより、透水層2をポーラス状コンクリートとすることが可能となる。
【0037】
続いて、この保水層1と透水層2とを規定の厚さになるようにプレス成型する。
【0038】
続いて、プレス成型により一体化した保水層1及び透水層2を、平板上に脱型し、半製品棚に積み上げ、半製品棚において2日間養生した後、ある程度固化した保水層1及び透水層2を平板上から脱型し、脱型した保水層1及び透水層2を約5〜12日間養生して完成となる。
【0039】
以上のようにして作製することで、保水層1の表面が透水層2により隠蔽(化粧)されて良好な外観を有し、透水能力が1.0×10〜1.0×10−3cm/s、保水能力が200L/m以上、曲げ強度が3.00N/mm以上の平板ブロックを得ることが可能となる。
【0040】
本実施例は上述のように構成したから、例えば、地面に舗装層として敷設した場合、雨天時には透水層2(の表面)には雨水が溜まらず、透水層2を通過して保水層1に溜められ、晴天時にこの保水層1に保水された雨水が蒸発することで表面温度を低下させることができる。
【0041】
この際、保水層1の炭化物により良好な保水性を発揮できるのは勿論、この炭化物により浄化効果が発揮され、保水された水が腐敗したりせず、また、カドミウム等の重金属を吸着でき、極めて環境性に秀れる。
【0042】
また、保水層1は、大部分が(骨材より軽量な)炭化物で構成され、透水層2は、ポーラス状のコンクリートで形成されるため、それだけ軽量となり、敷設作業等を容易に行えることになる。
【0043】
また、一層構造で保水性を高めようとするとどうしても強度が不足しがちになるが(保水性と強度とは相反関係にある)、保水層1と透水層2との2層構造とすることで、保水層1に主に保水機能を担わせる一方、透水層2において主に磨り減り抵抗や曲げ抵抗などの構造機能(強度)を担わせることができ、舗装層として用いた場合にも十分な強度を発揮することが可能となる。
【0044】
従って、本実施例は、軽量且つ透水性・保水性に秀れ、例えば舗装層として用いた場合にも十分な強度を発揮できる極めて実用性に秀れた平板ブロックとなる。
【0045】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0046】
既存の保水平板ブロックの保水量(150L/m)以上の保水量(200L/m以上)を有しながら、通常の透水平板の曲げ応力度(曲げ強度、3.00N/mm)以上の曲げ強度を有し、更に、通常の透水平板の重量(10kg/枚)より軽量な2層構造の平板ブロックを実現すべく、材料配合を変えて種々の実験を行った。尚、サイズは、30×30×6cm(保水層・透水層夫々3cm厚)とした。
【0047】
(1) 保水層のセメント量を増加させることで、上記強度が確保できるか検討を行っ
たが、保水層部分のセメント量を増加するだけでは、全体の強度には特に寄与し
ないことが確認された。
【0048】
(2) 透水層の骨材の密度を密にすることにより、強度が確保できるかについて検討
を行ったが、透水層部分の骨材の密度を密にするだけでは、全体の強度には特に
寄与しないことが確認された。また、表層部分を密にすることにより、表層の透
水性の著しい低下が認められた。
【0049】
(3) 保水層に骨材(細砂)を混入することにより、強度が確保できるかについて検
討を行ったところ、保水層に細砂を炭化物の容積に対し10〜30%混入する
ことで、十分な強度を確保できることが確認された。
【0050】
(4) (3)のように保水層に細砂を混入すると保水層の保水性は低下するが、透
水層に炭化物を骨材の容積に対し10〜30%混入することで、透水層におけ
る保水性を向上させて平板ブロック全体の保水性を十分確保できることが確認
された。
【0051】
具体的には、上記(3)及び(4)から、保水層に細砂を炭化物の容積に対し10〜30%混入すると共に、透水層に炭化物を骨材の容積に対し10〜30%混入することで、既存の保水平板ブロックの保水量(150L/m)以上の保水量(200L/m以上)を有しながら、通常の透水平板の曲げ応力度(曲げ強度、3.00N/mm)以上の曲げ強度を有し、更に、通常の透水平板の重量(10kg/枚)より10%程度軽量な2層構造の平板ブロックを実現できることが確認された。尚、無機繊維や有機繊維を混入することで平板ブロックの強度及び保水性の向上を図れることは確認済みである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例の概略説明斜視図である。
【図2】本実施例の製造工程を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0053】
1 保水層
2 透水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装層,建物の壁面若しくは屋根材等として用いられる平板ブロックであって、炭化物とセメントとから成る保水層上に、ポーラス状のコンクリートから成る透水層が設けられていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項2】
請求項1記載の平板ブロックにおいて、前記保水層に、有機繊維若しくは無機繊維が混入されていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記保水層の炭化物として、ペーパースラッジから生成した炭化物が採用されていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記保水層の厚さは、1〜3cmに設定されていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記透水層の厚さは、1〜3cmに設定されていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記保水層は、炭化物1mに対してセメント300〜500kg,水分250〜350Lを混合して成るものであることを特徴とする平板ブロック。
【請求項7】
請求項6記載の平板ブロックにおいて、前記保水層には、前記炭化物の容積に対し10〜30%の骨材が混入されていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、前記透水層は、骨材260kg,セメント50〜90kg,水分15〜20Lを混合して成るものであることを特徴とする平板ブロック。
【請求項9】
請求項8記載の平板ブロックにおいて、前記透水層には、前記骨材の容積に対し10〜30%の炭化物が混入されていることを特徴とする平板ブロック。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載の平板ブロックにおいて、透水能力が1.0×10〜1.0×10−3cm/sであり、保水能力が200L/m以上であり、曲げ強度が3.00N/mm以上であることを特徴とする平板ブロック。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−57180(P2008−57180A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234186(P2006−234186)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000154565)株式会社福田組 (34)
【出願人】(594164612)新潟高圧工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】