説明

平板型冷却装置、その製造方法及びその使用方法

【課題】沸騰冷却方式を用いた冷却装置においては、冷却性能の向上を図ると、装置が大型化してしまう。
【解決手段】本発明の平板型冷却装置は、第1の平板と、第1の平板に対向する第2の平板とを備えた平板状容器と、平板状容器に封入された冷媒と、第1の平板と第2の平板を接続し、平板状容器内の冷媒の流路を制御する流路壁、とを有し、平板状容器は、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域と、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域と、受熱領域と放熱領域の間を最短距離で結び、かつ受熱領域の幅を有する最短流路領域、とを備え、流路壁は、最短流路領域を含む領域に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や電子機器などの冷却装置に関し、特に、冷媒の気化と凝縮のサイクルによって熱の輸送・放熱を行う沸騰冷却方式を用いた平板型冷却装置、その製造方法及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置や電子機器などの高性能化、高機能化に伴い、それらの発熱量も増大している。一方、携帯機器の普及等により半導体装置や電子機器などの小型化が進んでいる。このような背景から、高効率で小型の冷却装置が求められている。冷媒の気化と凝縮のサイクルによって熱の輸送・放熱を行う沸騰冷却方式を用いた冷却装置は、ポンプなどの駆動部を必要としない。そのため小型化に適していることから、半導体装置や電子機器などの冷却装置として期待されている。
【0003】
このような沸騰冷却方式を用いた冷却装置(以下では、「沸騰冷却装置」とも言う)の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された関連する沸騰冷却装置は、内部が中空で低沸点冷媒が封入された沸騰部と、沸騰部と連通し、低沸点冷媒の蒸気で満たされる凝縮部とを有する平板型の密閉容器として構成される。沸騰部内には、冷却対象である電力用半導体素子が取り付けられる外壁面と平行に冷媒流路構成部材が設置されている。この冷媒流路構成部材によって、冷媒から発生した気泡を凝縮部に導く第1の流路と、凝縮部で液化した凝縮液を沸騰部に戻す第2の流路と、第1及び第2の流路が下部で互いに連通する第1の空間が形成された構成としている。
【0004】
そして関連する沸騰冷却装置によれば、冷媒流路構成部材を配置したことにより沸騰部内で気泡と凝縮液が干渉することがないので、冷媒の気泡が発生し離脱するというサイクルの効率が良くなる。そのため、沸騰熱伝達率が増大し、冷却性能が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−173115号公報(段落「0019」〜「0029」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、関連する沸騰冷却装置では、冷媒流路構成部材によって、冷媒の気泡が流動する第1の流路と、冷媒の凝縮液が流動する第2の流路が、それぞれ外壁面と平行に積層して構成される。そのため、関連する沸騰冷却装置の厚さが増大し、装置が大型化してしまう、という問題があった。
【0007】
このように、関連する沸騰冷却装置においては、冷却性能の向上を図ると、装置が大型化してしまう、という問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題である、沸騰冷却方式を用いた冷却装置においては、冷却性能の向上を図ると、装置が大型化してしまう、という課題を解決する平板型冷却装置、その製造方法及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の平板型冷却装置は、第1の平板と、第1の平板に対向する第2の平板とを備えた平板状容器と、平板状容器に封入された冷媒と、第1の平板と第2の平板を接続し、平板状容器内の冷媒の流路を制御する流路壁、とを有し、平板状容器は、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域と、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域と、受熱領域と放熱領域の間を最短距離で結び、かつ受熱領域の幅を有する最短流路領域、とを備え、流路壁は、最短流路領域を含む領域に配置される。
【0010】
本発明の平板型冷却装置の製造方法は、冷媒を封入する平板状容器を構成する第1の平板と、第2の平板と、側面枠部を形成し、平板状容器内の冷媒の流路を制御する流路壁となる流路壁部材を形成し、第1の平板の片面の一部に第1の接合材を形成し、第2の平板の片面の一部に第2の接合材を形成し、側面枠部の上下両面に第3の接合材を形成し、流路壁部材の上下両面に第4の接合材を形成し、第1の接合材と、第3の接合材および第4の接合材を接合し、第2の接合材と、第3の接合材および第4の接合材を接合することによって、第1の平板と第2の平板を接続する流路壁を備えた平板状容器を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の平板型冷却装置によれば、小型であって、冷却性能が向上した沸騰冷却方式の平板型冷却装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の使用状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)中のB−B線断面図、(c)は(a)中のC−C線断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の動作を説明するための断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の別の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置のさらに別の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の使用方法について説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の別の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の製造方法を説明するための分解斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る平板型冷却装置の別な構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置100の使用状態を模式的に示す斜視図である。平板型冷却装置100は冷媒が封入された平板状容器を有する。冷媒に低融点の材料を用い、平板状容器に冷媒を注入した後に真空排気することにより、平板状容器内部は常に冷媒の飽和蒸気圧に維持することができる。図1中の点線は、冷媒の液相と気相の界面を模式的に示したものである。平板型冷却装置100を構成する平板状容器の外面に、発熱体300および放熱フィンなどからなる放熱部400を熱的に接続して使用する。発熱体300からの熱量が平板状容器を介して冷媒に伝達され、冷媒が気化する。このとき、発熱体300からの熱量は気化熱として冷媒に奪われるため、発熱体300の温度上昇が抑制される。気化した冷媒は平板状容器の内部を放熱部400側に拡散し、放熱部400の放熱フィン等を用いて放熱する。このように、平板型冷却装置100は冷媒の気化と凝縮のサイクルによって熱の輸送・放熱を行う沸騰冷却方式を用いた構成とした。
【0015】
平板型冷却装置100の構成について、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置100の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)中のB−B線断面図、(c)は(a)中のC−C線断面図である。平板型冷却装置100は、第1の平板111と第1の平板111に対向する第2の平板112とを備えた平板状容器110と、平板状容器110に封入された冷媒120とを有する。そして、平板状容器110の内部に、第1の平板111と第2の平板112を接続し、平板状容器110内の冷媒120の流路を制御する流路壁160を備える。
【0016】
図2(b)に示すように、平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される発熱体300と熱的に接続する受熱領域130を備える。また、平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される放熱部400と熱的に接続する放熱領域140を備える。さらに、平板状容器110は、受熱領域130と放熱領域140の間を最短距離で結び、かつ受熱領域130の幅を有する最短流路領域150を備えている。そして、流路壁160が最短流路領域150を含む領域に配置される構成とした。具体的には例えば、図2(b)に示すように、流路壁160が最短流路領域150を横断するように配置することができる。
【0017】
次に、本実施形態による平板型冷却装置100の動作について説明する。図3に、平板型冷却装置100における冷媒120の流路170を矢印で示す。また同図において、冷媒120の気相と液相の界面を点線で示す。まず、受熱領域130に存在する冷媒は発熱体300から熱量を奪って気化し、平板状容器110の内部を放熱領域140に向けて拡散する(図中の流路170A)。放熱領域140に達した気相の冷媒は冷却されて凝縮し、凝縮冷媒として液相の冷媒中に流入する(流路170B)。凝縮冷媒は放熱領域140においてさらに冷却されて沈降し(流路170C)、充分冷却された状態で再び受熱領域130に還流する(流路170D)。
【0018】
このとき、本実施形態による平板型冷却装置100によれば、流路壁160が最短流路領域150を含む領域に配置されているので、凝縮した冷媒が充分冷却されずに受熱領域130に還流する(流路180)のを防止することができる。すなわち、受熱領域130で気化した冷媒は、放熱領域140に滞在して充分に冷却された後に再び受熱領域130に還流する。そのため受熱領域130には常に、凝縮後に充分冷却された冷媒が供給されるので、平板型冷却装置100の冷却性能が向上する。さらに本実施形態においては、流路壁160を設けることによって、平板状容器110を構成する第1の平板111および第2の平板112と平行な面内において、冷却が不充分な凝縮冷媒と、充分に冷却された凝縮冷媒を分離する構成としている。そのため、背景技術で説明した関連する沸騰冷却装置のように、外壁面と平行に積層した流路を構成する必要がないので、平板型冷却装置100の小型化、薄型化を図ることができる。このように、本実施形態によれば、小型であって、冷却性能が向上した沸騰冷却方式の平板型冷却装置が得られる。
【0019】
本実施形態では、流路壁160が最短流路領域150を含む領域に配置される構成としたが、さらに図4に示すように、凝縮領域142と受熱領域130を結ぶ流路領域152を含む領域に流路壁160を配置することとしてもよい。ここで凝縮領域142とは、放熱領域140内であって冷媒が気相状態にある領域を言う。このような構成とすることにより、図4に示すように冷媒の気相と液相の界面が受熱領域130の直上にある場合であっても、冷却性能のさらなる向上を図ることができる。
【0020】
図2から図4においては、第1の平板111と平行な平面による流路壁160の断面形状が、一の長方形からなる場合について示した。これに限らず、図5に示すように、断面形状が複数の長方形状を組み合わせた屈曲形状を有する流路壁160としてもよい。例えば、流路壁160の一部として、受熱領域130と放熱領域140を結びかつ第1の平板111の一辺に平行な直線DDに対して傾斜して配置される傾斜壁部162を備えた構成とすることができる。そして、傾斜壁部162が最短流路領域150を含む領域に配置される構成とすることにより、上述の場合と同様の効果が得られる。この場合には、傾斜壁部162以外の流路壁160の部分によって、凝縮した冷媒が充分冷却されずに受熱領域130に還流する(流路182)のを広い領域に渡って防止することが可能となる。そのため、平板型冷却装置100の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0021】
次に、本実施形態による平板型冷却装置100の使用方法について説明する。図6は、本実施形態による平板型冷却装置100の使用方法を説明するための断面図である。これまでの説明では図6(a)に示すように、受熱領域130と放熱領域140を結ぶ直線軸DDが、鉛直方向と垂直である配置状態(第1の配置状態)で平板型冷却装置100を使用する場合について示した。しかし、本実施形態の平板型冷却装置100では、図6(b)に示すように、受熱領域130と放熱領域140を結ぶ直線軸DDが、鉛直方向と平行である配置状態(第2の配置状態)においても使用することができる。すなわち、本実施形態の平板型冷却装置100は、第1の配置状態と第2の配置状態との間で切り換えて使用することが可能である。これは第2の配置状態(図6(b))においても、流路壁160が配置されることにより冷媒が循環する流路172が形成されるからである。すなわち、この場合においても受熱領域130には常に、凝縮後に充分冷却された冷媒が供給されるので、平板型冷却装置100の冷却性能を向上させることができる。
【0022】
これに対して、背景技術として説明した関連する沸騰冷却装置では、外壁面と平行な面内における冷媒の気泡および凝縮液の流動は冷媒流路構成部材によっては制限されず、重力の方向(鉛直方向)にのみ依存する。そのため、関連する沸騰冷却装置では異なる方向に設置して使用すると冷却性能が維持できず、異なる配置状態では使用できないという問題があった。
【0023】
以下に、図6(b)を用いて第2の配置状態における平板型冷却装置100の動作について、さらに詳細に説明する。受熱領域130で発生した気相の冷媒(気泡冷媒)は浮力により鉛直上方に移動するが、流路壁160が配置されていることにより、流路壁160に沿った流路172Aを通る。このとき、第1の平板111と平行な平面による流路壁160の断面形状が、受熱領域130と放熱領域140を結びかつ第1の平板111の一辺に平行な直線DDに対して非対称構造を有する構成とすることができる。この構成により、移動方向によって移動する冷媒の量に差が生じやすくなるので、冷媒が循環する流路172の形成がより容易になる。また、最短流路領域150を含まない領域に補助流路壁を配置することとしてもよい。例えば、図7に示すように、受熱領域130を流路壁160と補助流路壁164で挟んだ構成とすることにより、流路172Aの形成を促進することができる。
【0024】
図6(b)に示した流路172Aに沿って上昇した気泡冷媒は放熱領域140に達し(流路172B)、放熱領域140に滞留中に冷却されて凝縮し沈降する(流路172C)。このとき、放熱領域140における放熱性能を、図中の直線DDと垂直な方向に対して異なる構成としてもよい。すなわち、流路172B側の放熱性能を低くし、流路172C側の放熱性能を高く構成する。このような構成により、流路172B側では冷媒の凝縮が抑制され、流路172C側では冷媒の凝縮が加速される。そのため、冷媒の循環を促進することができ、平板型冷却装置100の冷却性能をさらに向上させることができる。具体的には、放熱領域140に熱的に接続した放熱部400において、流路172C側の放熱フィンの数を流路172B側よりも増大させる、または、流路172B側に断熱材を配置する、等の構成とすることができる。
【0025】
凝縮した冷媒は液相冷媒中を沈降し、充分冷却された状態で再び受熱領域130に還流する(流路172D)。この場合にも、本実施形態による平板型冷却装置100によれば、流路壁160が最短流路領域150を含む領域に配置されているので、凝縮した冷媒が充分冷却されずに受熱領域130に還流する(流路182)のを防止することができる。そのため受熱領域130には常に、充分に冷却された冷媒が供給されるので、平板型冷却装置100の冷却性能が向上する。
【0026】
次に、本実施形態による平板型冷却装置100の製造方法について説明する。図8は、本実施形態による平板型冷却装置100の製造方法について説明するための分解斜視図である。まず、冷媒を封入する平板状容器を構成する第1の平板111と、第2の平板112と、側面枠部115を形成する。また、平板状容器内の冷媒の流路を制御する流路壁となる流路壁部材168を形成する。これらの部材を構成する材料には、熱伝導特性に優れた金属、例えばアルミニウムなどを用いることができる。図8では、第1の平板111側に発熱体300および放熱部400を装着して使用する場合を例として示す。
【0027】
続いて、第1の平板111の片面の一部に第1の接合材を、第2の平板112の片面の一部に第2の接合材を形成する。また、側面枠部115の上下両面に第3の接合材を、流路壁部材168の上下両面に第4の接合材を形成する。ここで、これらの接合材には銀合金などのロウ材料を用いることができる。ロウ材を用いる場合には、ロウ材料と平板状容器を構成する金属を張り合わせたクラッド材料を使用することができる。
【0028】
この後に、図9に示すように、第1の接合材191と第3の接合材193および第4の接合材194を接合し、第2の接合材192と第3の接合材193および第4の接合材194を接合する。これにより、第1の平板111と第2の平板112を接続する側面枠部115および流路壁部材168からなる流路壁を備えた平板状容器が形成される。
【0029】
図9では、側面枠部115の上下両面に第3の接合材193を、流路壁部材168の上下両面に第4の接合材194を形成する場合について説明した。これに限らず、接合材としてロウ材料を用いた場合には、一方の面にだけロウ材料を形成することにより接合することが可能である。すなわち、側面枠部115および流路壁部材168には接合材を形成することなく、側面枠部115および流路壁部材168と第1の平板111とを、第1の接合材191としてのロウ材料を介して接合することとしてもよい。同様に、側面枠部115および流路壁部材168と第2の平板112とを、第2の接合材192としてのロウ材料を介して接合することができる。なお、接合材としてロウ材料を用いた場合には、炉内でロウ材料を溶融させることにより上述の接合工程を一の工程で行うことができる。
【0030】
この平板状容器に冷媒として例えば、絶縁性を有し不活性な材料であるハイドロフロロカーボンやハイドロフロロエーテルなどを封入することにより、本実施形態による平板型冷却装置が完成する。ここで、平板状容器の冷媒が接触する領域にサンドブラスト処理などを施すことにより、サブミクロンから数十ミクロンの凹凸形状を形成することとしてもよい。これにより、冷媒の気泡の発生および凝縮を促進することができ、冷却性能の向上を図ることができる。また、受熱領域130となる平板状容器の内面側にフィン形状の突起部を設けることができる。これにより、受熱領域130で発生した冷媒の気泡による対流熱伝達効果を促進することができる。
【0031】
本実施形態による平板型冷却装置100の製造方法によれば、冷媒の流路を形成する流路壁160は、側面枠部115と同様に、第1の平板111と第2の平板112を接続して構成される。したがって、平板状容器の強度を増強することができるので、冷媒の温度上昇に伴う平板状容器内部の圧力上昇による形状変化を防止することができる。また、流路壁160は第1の平板111と接合された構成であることから、平板型冷却装置100の固定用または発熱体300の装着用のネジ穴などを流路壁160に設けることができる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、本発明の第2の実施形態による平板型冷却装置200の構成を示す斜視図である。本発明の平板型冷却装置200は平板状容器210を有する。平板状容器210は、少なくとも一方の面に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域230と、少なくとも一方の面に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域240を備える。さらに、平板状容器210は、受熱領域230と放熱領域240の間を最短距離で結び、かつ受熱領域230の幅を有する最短流路領域を備えている。そして、流路壁が最短流路領域を含む領域に配置される。ここまでの構成は第1の実施形態による平板型冷却装置100と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0033】
本実施形態による平板型冷却装置200では、平板状容器210の受熱領域230と放熱領域240の間に、平板状容器210を構成する平板が屈曲した屈曲部215を備えた構成とした。この構成により、受熱領域230と放熱領域240を異なる面方向で配置することができる。そのため、冷却装置の配置に制限がある場合であっても、平板型冷却装置200の受熱領域230だけは冷却対象である発熱体と熱的に接続する位置に配置することが可能である。このとき、放熱領域240は配置位置に制限のない領域に設置できるので充分な放熱領域を確保することができ、冷却性能の向上を図ることができる。例えば、平板型冷却装置200の受熱領域230を冷却対象となる装置間に挿入し、放熱領域240は冷却対象装置の外部の領域に配置した構成とすることができる。このように、本実施形態による平板型冷却装置200によれば、冷却装置の配置に制限がある場合であっても、充分な放熱領域を確保することができるので、冷却性能の維持、向上を図ることができる。
【0034】
ここで、屈曲部215における接続面を曲面により形成することとしてもよい。これにより、気相冷媒と屈曲部215の内面との摩擦抵抗により生じる気相冷媒の圧力の減少(圧力損失)を低減することができる。したがって、屈曲部215を設けたことによる気相冷媒の沸点の上昇を回避し、低温での冷媒の沸騰を維持することが可能となる。
【0035】
図10では、平板型冷却装置200が一の屈曲部215を備えた場合について示したが、これに限らず、図11に示すように、複数の屈曲部215を備え、放熱領域240が複数の異なる領域に配置された構成とすることもできる。この構成により、放熱領域240の体積を拡大することができるので、平板型冷却装置200の冷却性能をさらに向上させることができる。また、放熱領域240を分散して配置することができるので、平板型冷却装置200の配置位置の自由度を増加させることが可能となる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
100、200 平板型冷却装置
111 第1の平板
112 第2の平板
110、210 平板状容器
115 側面枠部
120 冷媒
130、230 受熱領域
140、240 放熱領域
142 凝縮領域
150 最短流路領域
152 流路領域
160 流路壁
162 傾斜壁部
164 補助流路壁
168 流路壁部材
170、170A、170B、170C、170D、172、172A、172B、172C、172D、180、182 流路
191、192、193、194 接合材
215 屈曲部
300 発熱体
400 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平板と、前記第1の平板に対向する第2の平板とを備えた平板状容器と、
前記平板状容器に封入された冷媒と、
前記第1の平板と前記第2の平板を接続し、前記平板状容器内の前記冷媒の流路を制御する流路壁、とを有し、
前記平板状容器は、前記第1の平板および前記第2の平板の少なくとも一方に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域と、前記第1の平板および前記第2の平板の少なくとも一方に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域と、前記受熱領域と前記放熱領域の間を最短距離で結び、かつ前記受熱領域の幅を有する最短流路領域、とを備え、
前記流路壁は、前記最短流路領域を含む領域に配置される
平板型冷却装置。
【請求項2】
前記平板状容器は、気相状態の前記冷媒が凝縮する凝縮領域と、前記凝縮領域と前記受熱領域を結ぶ流路領域、とを備え、
前記流路壁は、前記流路領域を含む領域に配置される
請求項1に記載した平板型冷却装置。
【請求項3】
前記流路壁は、前記最短流路領域を横断して配置される
請求項1または2に記載した平板型冷却装置。
【請求項4】
前記流路壁は、前記第1の平板と平行な平面による断面形状が、前記受熱領域と前記放熱領域を結びかつ前記第1の平板の一辺に平行な直線に対して傾斜して配置した傾斜壁部を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項5】
前記流路壁は、前記第1の平板と平行な平面による断面形状が、前記受熱領域と前記放熱領域を結びかつ前記第1の平板の一辺に平行な直線に対して非対称構造を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項6】
前記最短流路領域を含まない領域に配置された補助流路壁をさらに有する
請求項1から5のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項7】
前記放熱領域に熱的に接続した放熱部を備え、
前記放熱部は、前記受熱領域と前記放熱領域を結びかつ前記第1の平板の一辺に平行な直線と垂直な方向の放熱性能が異なる
請求項1から6のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項8】
前記平板状容器は、前記受熱領域と前記放熱領域の間で屈曲した構造を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項9】
請求項1から8に記載した平板型冷却装置を、
前記受熱領域と前記放熱領域を結ぶ直線軸が、鉛直方向と垂直である第1の配置状態と、
前記受熱領域と前記放熱領域を結ぶ直線軸が、鉛直方向と平行である第2の配置状態、との間で切り換えて使用する
平板型冷却装置の使用方法。
【請求項10】
冷媒を封入する平板状容器を構成する第1の平板と、第2の平板と、側面枠部を形成し、
前記平板状容器内の前記冷媒の流路を制御する流路壁となる流路壁部材を形成し、
前記第1の平板の片面の一部に第1の接合材を形成し、
前記第2の平板の片面の一部に第2の接合材を形成し、
前記第1の平板と、前記側面枠部および前記流路壁部材とを前記第1の接合材を介して接合し、
前記第2の平板と、前記側面枠部および前記流路壁部材とを前記第2の接合材を介して接合することによって、前記第1の平板と前記第2の平板を接続する前記流路壁を備えた前記平板状容器を形成する
平板型冷却装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−237491(P2012−237491A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106389(P2011−106389)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)/エネルギー利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発/最適抜熱方式の検討とシステム構成の開発/集熱沸騰冷却システムの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】