説明

平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法並びに重合性組成物

【課題】非画像部に画像形成層の残存が無い良好な現像性を示し、かつ耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を作製することができる平版印刷版原版及び現像性に優れ、かつ耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版の作製方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に、(i)下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂を含むバインダーポリマー、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含む画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版原版。


式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法並びに重合性組成物に関し、特に、現像性に優れ、かつ耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を提供することができる平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と印刷インキが互いに反発する性質を利用し、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(感光層、画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版をリスフィルムなどの原画を通して露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により平版印刷版を得ている。
【0003】
平版印刷版原版の画像記録層には、重合性組成物がしばしば用いられる。重合性組成物は、基本的には、エチレン性不飽和結合等を有する重合性化合物、重合開始剤及びバインダーポリマーを含有しており、例えば、画像露光により重合開始剤から活性ラジカル等の活性種を生成させて重合性化合物の重合反応を生起、進行させることにより露光領域を硬化させて画像が形成される。
【0004】
画像露光に関しては、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力するデジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させ、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。従って、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の1つとなっている。
【0005】
一方、平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像記録層を現像液などによって溶解除去する現像処理工程が必要である。従来、現像処理工程はpH11を超える強アルカリ水溶液で現像した後、水洗浴にてアルカリ剤を流し、その後、親水性樹脂を主とするガム液で処理するという3つの工程からなっている。そのため自動現像処理機自体も大きくスペースを取ってしまうこと、更に現像廃液、水洗廃液、ガム廃液など多量の廃液処理の負荷が大きいことなど、強アルカリ水溶液で現像する系は環境及びランニングコスト面で種々の問題を有している。環境及び安全上、より中性域に近い現像液での処理や廃液量の低減が課題として挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から現像処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっており、現像液の低アルカリ化、処理工程の簡素化は、安全性、地球環境への配慮、省スペース、低ランニングコストなどの観点から、従来にも増して強く望まれるようになってきている。
【0006】
このような要望に応えるため、例えば、特許文献1には、アルカリ金属の炭酸塩及び炭酸水素塩を有するpH8.5〜11.5、導電率3〜30mS/cmの現像液で処理する現像方法が提案されている。しかし、この現像方法は、水洗及びガム液処理工程を必要としており、環境及びランニングコスト面での課題解決には至っていない。
また、特許文献2の実施例にはpH11.9〜12.1の水溶性高分子化合物を含有する処理液による処理が記載されている。しかし、この処理により得られた印刷版は、pH12のアルカリが版面に付着したままの状態であり、作業者に対して安全面で問題がある上に、印刷版作製後印刷までの時間が長くなると画像部が次第に溶解して着肉性や耐刷性の低下を招くという問題もある。特許文献3にはpH3〜9の水溶性高分子化合物を含有する処理液による処理が記載されている。しかし、この処理液は塩基成分を含まないため、画像記録層のバインダーポリマーを親水性にして現像可能とする必要があり、耐刷性が著しく低下するという問題がある。
【0007】
画像記録層のバインダーポリマーとしては、耐刷性向上などの観点から、従来からウレタン樹脂が用いられている(例えば、特許文献4〜6)。しかしながら、良好な現像性を保ちながら、耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を提供することは難しく、特に、pH2〜11の現像液を用いて現像処理をおこなう場合にはなおさらのことであり、従来の技術ではこの課題は十分達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−65126号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1868036号明細書
【特許文献3】特表2007−538279号公報
【特許文献4】特開2005−250158号公報
【特許文献5】特開2007−187836号公報
【特許文献6】特開2009−258624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、非画像部に画像形成層の残存が無い良好な現像性を示し、かつ耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を作製することができる平版印刷版原版を提供することである。本発明の他の目的は、現像性に優れ、かつ耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版の作製方法を提供することである。本発明の更なる目的は、平版印刷版原版の画像形成層などに好適に用いられる重合性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、特定の繰り返し単位を有するウレタン樹脂を用いることにより達成された。即ち、本発明は以下の構成を含む。
(1) 支持体上に、(i)下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂を含むバインダーポリマー、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含む画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。
(2) 前記ウレタン樹脂において、繰り返し単位Bのnが1〜70の自然数であることを特徴とする前記(1)に記載の平版印刷版原版。
(3) 前記画像形成層が、増感色素を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の平版印刷版原版。
(4) 前記画像形成層の上に、保護層を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0013】
(5) 前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、界面活性剤及び水溶性高分子化合物の少なくとも1種を含有するpHが2〜11の現像液の存在下、非露光部の画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
(6) 前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、炭酸イオンと、炭酸水素イオンと、界面活性剤及び水溶性高分子化合物の少なくとも1種とを含有するpHが9〜11の現像液の存在下、非露光部の画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
(7) 前記画像露光を、300〜450nmのレーザーで行うことを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の平版印刷版の作製方法。
(8) 前記前記(5)〜(7)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法であって、水洗工程を含まないことを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【0014】
(9) (i)下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含むことを特徴とする重合性組成物。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。
(10) 前記ウレタン樹脂において、繰り返し単位Bのnが1〜70の自然数であることを特徴とする前記(9)に記載の重合性組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非画像部に画像形成層の残存が無い良好な現像性を示し、かつ耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を作製することができる平版印刷版原版を提供することができる。また、現像性に優れた平版印刷版の作製方法を用いて、耐刷性、耐汚れ性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を提供することができる。更に、平版印刷版原版の画像形成層などに好適に用いられる重合性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】平版印刷版の作製方法に用いられる自動現像処理機の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(i)下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂を含むバインダーポリマー、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含む画像形成層を有することを特徴とする。
【0020】
【化3】

【0021】
式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。
【0022】
〔画像形成層〕
本発明の平版印刷版原版における画像形成層(以下、感光層とも云う)は、基本成分として、(i)上記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂を含むバインダーポリマー、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含有する。画像形成層は、必要に応じて、更にその他の成分を含有することができる。
以下、画像形成層の構成成分について詳細に説明する。
【0023】
(バインダーポリマー)
バインダーポリマーは、下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂(以下、特定ウレタン樹脂とも云う)を含むことを特徴とする。
【0024】
【化4】

【0025】
式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。
【0026】
本発明に用いられる特定ウレタン樹脂において、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。好ましくは、bは2〜15モル%、cは20〜35モル%、dは10〜30モル%、より好ましくは、bは3〜10モル%、cは22〜30モル%、dは12〜22モル%である。
nは1〜70の自然数が好ましく、より好ましくは5〜70、更に好ましくは5〜30、特に好ましくは6〜15である。
【0027】
特定ウレタン樹脂の分子量は、例えば、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。通常、分子量が大きくなると、耐刷性は優れるが、画像形成性は劣化する傾向にある。逆に、分子量が小さくなると、画像形成性は良化するが、耐刷性は低下する。本発明においては、質量平均分子量で5,000〜200,000が好ましく、より好ましくは8,000〜150,000であり、特に好ましくは10,000〜100,000である。
【0028】
特定ウレタン樹脂は、通常のウレタン樹脂の製造に用いられる公知の種々の方法により合成することができる。代表的な合成法としては、下記化合物UA、UB、UC及びUDを原料とする付加重合反応による合成法を挙げることができる。付加重合反応の条件、使用する溶媒、触媒などは、通常のウレタン樹脂の製造に用いられるものと同様である。
【0029】
【化5】

【0030】
化合物UBで表されるポリプロピレングリコールとしては、その質量平均分子量が400(nの平均値:6.6)、700(nの平均値:11.8)、1,000(nの平均値:17)、2,000(nの平均値:34)、3,000(nの平均値:51)又は4,000(nの平均値:69)のものなどが好ましく、質量平均分子量400、700又は1,000のポリプロピレングリコールがより好ましく、質量平均分子量700のポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0031】
なお、本発明の特定ウレタン樹脂においては、合成原料に含まれる水分あるいは合成途中に混入する水分により意図しない結合様式(例えば、ウレア結合など)を含有する可能性があるが、本発明はこれら意図しない結合様式を含有するウレタン樹脂を排除するものではない。
特定ウレタン樹脂の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【表1】

【0033】
以下に、特定ウレタン樹脂の合成例を記載する。
コンデンサー、撹拌機を備えた3Lの3つ口フラスコに、化合物UB(質量平均分子量700)78.7g、化合物UC60.9g及び化合物UD49.1gを入れ、メチルエチルケトン621gを加えて溶解した。これに化合物UA224.9g、触媒として商品名:ネオスタンU−600(日東化成株式会社製)1.3gを添加し、65℃にて5時間加熱撹拌した。その後メチルアルコール30gをメチルエチルケトン1004gで希釈した溶液を添加し、室温に放冷して30分間撹拌することで、特定ウレタン樹脂PU−2の溶液2.07kg(固形分20質量%)を得た。得られた特定ウレタン樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いた測定(ポリスチレン標準)した結果、50,000であった。
【0034】
本発明におけるバインダーポリマーは、特定ウレタン樹脂を単独で使用したものであってもよいし、複数組み合わせて使用したものであってもよい。また、特定ウレタン樹脂以外のバインダーポリマーを併用してもよい。他のバインダーポリマーを併用する場合、その量は、全バインダーポリマーの総質量に対し1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0035】
併用できる他のバインダーポリマーとしては、従来公知のバインダーポリマーでもよい。従来公知のバインダーポリマーとして具体的には、当業界においてよく使用される(メタ)アクリル系重合体、ウレタン樹脂、アセタール変性ポリビニルアルコール系樹脂(ビニルブチラール樹脂など)等が挙げられ、(メタ)アクリル系重合体、ウレタン樹脂等が好ましく用いられる。
【0036】
画像形成層におけるバインダーポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対し、5〜90質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。
【0037】
(重合性化合物)
本発明の感光層に用いる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、そのアミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
【0038】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0039】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0040】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
【0041】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許7、153、632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0042】
また、特表2007−506125号公報に記載の光−酸化可能な重合性化合物も好適であり、少なくとも1個のウレア基及び/又は第三級アミノ基を含有する重合可能な化合物が特に好ましい。具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0043】
【化6】

【0044】
重合性化合物の選択、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて適宜設定できる。重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
【0045】
(重合開始剤)
本発明の感光層は重合開始剤(以下、開始剤化合物とも称する)を含有する。本発明においては、ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0046】
重合開始剤としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、鉄アレーン錯体が挙げられる。なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩化合物、トリハロメチル化合物及びメタロセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0047】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許24629、欧州特許EP107792、米国特許4、410、621の各公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、300〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0048】
オニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましく用いられる。特にジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が好ましく用いられる。
オニウム塩化合物は、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0049】
その他の重合開始剤としては、特開2007−206217号の段落番号〔0071〕〜〔0129〕に記載の重合開始剤を好ましく用いることができる。
【0050】
重合開始剤は単独若しくは2種以上併用して好適に用いられる。感光層中の重合開始剤の含有量は感光層全固形分に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、更に好ましくは1.0〜10質量%である。
【0051】
本発明の平版印刷版原版における画像形成層は、平版印刷版原版の用途などに対応して、以下に記載するその他の成分を適宜含有することができる。
【0052】
(増感色素)
画像形成層は、増感色素を含有することが好ましい。増感色素は、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、前記重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、300〜450nm又は750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
【0053】
300〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素としては、メロシアニン類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、スチリル類、オキサゾール類等を挙げることができる。
【0054】
300〜450nmの波長域に吸収極大を有する増感色素のうち、高感度であることから、下記一般式(IV)で表される色素が好ましい。
【0055】
【化7】

【0056】
一般式(IV)中、Aは置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子又は=N(R3)を表す。R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表す。AとR1又はR2とR3は、それぞれ互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0057】
一般式(IV)において、R1、R2及びR3で表される一価の非金属原子団は、好ましくは、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を含む。
【0058】
一般式(IV)において、Aで表される置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいヘテロアリール基は、各々R1、R2及びR3で記載した置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基と同様のものが挙げられる。
【0059】
このような増感色素の具体例としては、特開2007−58170〔0047〕〜〔0053〕、特開2007−93866〔0036〕〜〔0037〕、特開2007−72816〔0042〕〜〔0047〕に記載の化合物が好ましく挙げられる。
【0060】
また、特開2006−189604、特開2007−171406、特開2007−206216、特開2007−206217、特開2007−225701、特開2007−225702、特開2007−316582、特開2007−328243に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
【0061】
更に、下記一般式(V)〜(VI)で示される増感色素も好ましく用いることができる。
【0062】
【化8】

【0063】
【化9】

【0064】
式(V)中、R1〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0065】
このような増感色素の具体例としては、欧州特許出願公開第1349006号やWO2005/029187に記載の化合物が好ましく挙げられる。
【0066】
次に、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素(以降、「赤外線吸収剤」と称することもある)について述べる。赤外線吸収剤は染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0067】
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0068】
【化10】

【0069】
一般式(a)中、X1は水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、L1は炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子(N、S、O、ハロゲン原子、Se)を有するアリール基又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。Xa-は後述するZa-と同義である。Raは、水素原子又はアルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基及びハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0070】
【化11】

【0071】
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましい。またR1とR2は互いに連結し環を形成してもよく、環を形成する際は5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0072】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましいアリール基としては、ベンゼン環基及びナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子又は炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハライドイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン及びスルホン酸イオンであり、特により好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン及びアリールスルホン酸イオンである。
【0073】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号〔0017〕〜〔0019〕、特開2002−023360号の段落番号〔0016〕〜〔0021〕、特開2002−040638号の段落番号[0012]〜[0037]に記載の化合物、より好ましくは特開2002−278057号の段落番号〔0034〕〜〔0041〕、特開2008−195018号の段落番号〔0080〕〜〔0086〕に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号の段落番号〔0035〕〜〔0043〕に記載の化合物が挙げられる。
【0074】
また特開平5−5005号の段落番号〔0008〕〜〔0009〕、特開2001−222101号の段落番号〔0022〕〜〔0025〕に記載の化合物も好ましく使用することが出来る。
【0075】
赤外線吸収染料は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収染料以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号の段落番号〔0072〕〜〔0076〕に記載の化合物が好ましい。
【0076】
増感色素の添加量は、感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0077】
画像形成層は、連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与してラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
本発明の画像形成層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
【0078】
本発明の画像形成層には、更に、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、現像性の促進及び塗布面状を向上させるための界面活性剤、現像性と耐刷性両立のためのマイクロカプセル、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性向上などのための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、画像形成層の製造中又は保存中のラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、現像性向上のための親水性低分子化合物、感度向上の為の共増感剤、可塑性向上のための可塑剤等が挙げられる。これの添加剤はいずれも公知のものを使用でき、例えば、特開2007−206217号の段落番号〔0161〕〜〔0215〕に記載の化合物、特表2005−509192号の段落番号〔0067〕、特開2004−310000号の段落番号〔0023〕〜〔0026〕及び〔0059〕〜〔0066〕に記載の化合物を使用することができる。
【0079】
<画像形成層の形成>
画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布して形成される。用いられる溶剤としては、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、γ−ブチルラクトン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。溶剤は単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0080】
塗布、乾燥後における画像形成層塗布量(固形分)は、0.3〜3.0g/mが好ましい。塗布には、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0081】
<保護層>
本発明に係る平版印刷版原版においては、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、画像形成層上に保護層(酸素遮断層)を設けることが好ましい。保護層の材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性上特に良好な結果を与える。
【0082】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、アセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルを加水分解することにより得られるが、ポリビニルアルコールの具体例としては加水分解度が71〜100モル%、繰り返し単位数が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。ポリビニルアルコールは単独又は混合して使用できる。ポリビニルアルコールの保護層中の含有量は、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
【0083】
また、公知の変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。特に、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としてはポリビニルピロリドン又はその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中の含有量は好ましくは3.5〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。
【0084】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を水溶性高分子化合物に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を水溶性高分子化合物に対して数質量%添加することができる。
【0085】
更に、保護層には、酸素遮断性や感光層表面保護性を向上させる目的で、特開2006−106700号の段落番号〔0018〕〜〔0024〕に記載の無機質の層状化合物を含有させることも好ましい。無機質の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性合成雲母が特に有用である。
【0086】
保護層の塗布量は、乾燥後の塗布量で、0.05〜10g/mが好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜0.5g/mが更に好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/mが更に好ましい。
【0087】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状の親水性支持体であればよい。特に、アルミニウム板が好ましい。アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。これらの処理については、特開2007−206217号の段落番号〔0241〕〜〔0245〕に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0088】
支持体は、更に親水化処理することができる。支持体表面の親水化処理としては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液に浸漬処理又は電解処理するアルカリ金属シリケート処理、フッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、ポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられるが、ポリビニルホスホン酸水溶液に浸漬処理する方法が好ましく用いられる。
【0089】
支持体は、中心線平均粗さが0.10 〜 1.2μmであるのが好ましい。この範囲内で、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15 〜 0.65であるのが好ましい。この範囲内で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0090】
〔下塗り層〕
本発明の平版印刷版原版においては、感光層と支持体との間に下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層としては、具体的には特開平10−282679号公報に記載の付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有するシランカップリング剤、特開平2−304441号公報に記載のエチレン性二重結合反応基及びリン酸若しくはホスホン酸構造を有する化合物などを含むことができる。好ましくは、(a1)双性イオン構造を有する繰り返し単位と、(a2)支持体の表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位とを有する共重合体(以下、特定高分子化合物とも称する)を含む場合である。以下、特定高分子化合物について詳細に説明する。
【0091】
まず、双性イオン構造を有する繰り返し単位について説明する。双性イオン構造とは、少なくとも1つのカチオンと少なくとも1つのアニオンを有している構造をいう。なお、通常は、カチオンとアニオンの数は等しく、全体として中性であるが、本発明では、カチオンとアニオンの数が等しくない場合は、電荷を打ち消すために、必要な量のカウンターイオンを有することも、双性イオン構造とする。
双性イオン構造は、次に示す式(1)、式(2)、式(3)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0092】
【化12】

【0093】
式(1)〜(2)中、Aはアニオンを有する構造を表し、Bはカチオンを有する構造を表し、Lは連結鎖を表す。*は、ポリマー主鎖又は側鎖への連結部位を表す。
【0094】
好ましくは、Aはカルボキシラート、スルホナート、ホスホナート、又はホスフィナートなどのアニオンを有する構造を表し、Bはアンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのカチオンを有する構造を表す。
【0095】
は連結鎖を表し、好ましくは−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる連結基であり、後述の有してもよい置換基の炭素数を含めて、炭素数30以下であることが好ましい。具体例としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10)及びフェニレン、キシリレンなどのアリーレン基(好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数6〜10)が挙げられる。耐汚れ性の観点から、Lは、炭素数3〜5の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数4若しくは5の直鎖アルキレン基が更に好ましく、炭素数4の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
の具体例として、例えば、以下の連結基が挙げられる。
【0096】
【化13】

【0097】
なお、これらの連結基は置換基を更に有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基及びジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0098】
耐汚れ性の観点から、双性イオン構造としては、上記式(1)で表される構造が好ましく、上記式(1)で表される構造であり、かつAはスルホナートであることが更に好ましい。
【0099】
双性イオン構造としては、下記一般式(i)、(ii)又は(iii)で表される構造であることがより好ましい。耐刷性の観点から、双性イオン構造としては、一般式(i)で表される構造であることがより好ましい。
【0100】
【化14】

【0101】
一般式(i)〜(iii)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、RとRは互いに連結し、環構造を形成してもよい。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基(好ましくは炭素数1〜30)を表し、R〜Rの少なくとも1つは、ポリマー主鎖又は側鎖への連結部位を表す。
、L及びLは、それぞれ独立に、連結基を表す。Aは、アニオンを有する構造(例えば、カルボキシラート、スルホナート、ホスホナート、又はホスフィナート)を表し、Bは、カチオンを有する構造(例えば、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、又はスルホニウム)を表す。*は、ポリマー主鎖又は側鎖への連結部位を表す。
連結部位であるR〜Rの少なくとも1つは、R〜Rの少なくとも1つとしての置換基を介してポリマー主鎖又は側鎖へ連結してもよいし、単結合によりポリマー主鎖又は側鎖へ直接連結してもよい。
【0102】
一般式(i)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、RとRは互いに連結し、環構造を形成してもよい。環構造は、酸素原子などのヘテロ原子を有していてもよく、好ましくは5〜10員環、より好ましくは5又は6員環である。R及びRとしての基の炭素数は、後述の有していてもよい置換基の炭素数を含めて、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜15が特に好ましく、炭素数1〜8が最も好ましい。
【0103】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピリジニル基等が挙げられる。
【0104】
これらの基は更に置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基及びジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0105】
、Rとしては、効果及び入手容易性の観点から、例えば、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0106】
また、Lは、連結基を表し、好ましくは、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。その具体的な例、好ましい例については、前述のLとしての連結基と同様である。
【0107】
前記一般式(i)において、Aは、好ましくは、カルボキシラート、スルホナート、ホスホナート又はホスフィナートを表す。
具体的には、以下の陰イオンが挙げられる。
【0108】
【化15】

【0109】
耐汚れ性の観点から、Aはスルホナートであることが特に好ましい。更に、式(i)において、Lが、炭素数4若しくは5の直鎖アルキレン基であり、かつAがスルホナートの組み合わせが好ましく、Lが、炭素数4の直鎖アルキレン基であり、かつAがスルホナートの組み合わせが特に好ましい。
【0110】
また、前記一般式(ii)において、Lは、連結基を表し、好ましくは、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。その具体的な例、好ましい例については、前述のLとしての連結基と同様である。
Bは、カチオンを有する構造を表し、好ましくはアンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、又はスルホニウムを有する構造を表す。より好ましくは、アンモニウム又はホスホニウムを有する構造であり、特に好ましくはアンモニウムを有する構造である。カチオンを有する構造の例としては、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基、ベンジルジメチルアンモニオ基、ジエチルヘキシルアンモニオ基、(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニオ基、ピリジニオ基、N−メチルイミダゾリオ基、N−アクリジニオ基、トリメチルホスホニオ基、トリエチルホスホニオ基、トリフェニルホスホニオ基などが挙げられる。
【0111】
前記一般式(iii)において、Lは連結基を表し、好ましい態様及び具体例は、一般式(i)中のLと同じである。Aは、好ましくは、カルボキシラート、スルホナート、ホスホナート又はホスフィナートを表し、その詳細及び好ましい例は、一般式(i)におけるAと同様である。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R〜Rとしての置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0112】
更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基
(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0113】
アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5若しくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
【0114】
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
【0115】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
【0116】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表す。
【0117】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0118】
特定高分子化合物は、特に、繰り返し単位中のうちポリマーの側鎖部位に、双性イオン構造のカチオン及びアニオンを有することが好ましい。
双性イオン構造を有する繰り返し単位は、具体的には下記式(A1)で表されることが好ましい。
【0119】
【化16】

【0120】
式(A1)中、R101〜R103はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Lは単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
【0121】
組み合わせからなるLの具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に結合し、右側がXに結合する。
L1:−CO−O−二価の脂肪族基−
L2:−CO−O−二価の芳香族基−
L3:−CO−NH−二価の脂肪族基−
L4:−CO−NH−二価の芳香族基−
L5:−CO−二価の脂肪族基−
L6:−CO−二価の芳香族基−
L7:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の脂肪族基−
L8:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の脂肪族基−
L9:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の脂肪族基−
L10:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の脂肪族基−
L11:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の芳香族基−
L12:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の芳香族基−
L13:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の芳香族基−
L14:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の芳香族基−
L15:−CO−O−二価の芳香族基−O−CO−NH−二価の脂肪族基−
L16:−CO−O−二価の脂肪族基−O−CO−NH−二価の脂肪族基−
【0122】
二価の脂肪族基とは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基又はポリアルキレンオキシ基を意味する。なかでもアルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、及び置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基及び置換アルキレン基が更に好ましい。
二価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、更に分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。二価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至12であることが更に好ましく、1乃至10であることが更にまた好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
二価の脂肪族基の置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基及びジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0123】
二価の芳香族基とは、アリール基又は置換アリール基を意味する。好ましくは、フェニレン、置換フェニレン基、ナフチレン及び置換ナフチレン基である。
二価の芳香族基の置換基の例としては、上記二価の脂肪族基の置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
前記L1〜L16の中では、L1〜L4が好ましい。
Lとして好ましくは、単結合、−CO−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、L1〜L4である。更に耐汚れ性の観点から、Lは、前記L1,L3であることが好ましく、L3であることが更に好ましい。更にL3の二価の脂肪族基が、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基であることが好ましく、合成上、炭素数3の直鎖アルキレン基であることが最も好ましい。
【0124】
式(A1)中、Xは双性イオン構造を表す。Xは、上述した一般式(i)、一般式(ii)又は一般式(iii)で表される構造であることが好ましく、好ましい態様も一般式(i)、一般式(ii)、一般式(iii)で記載したものと同様である。
特に、式(A1)としては、Lが前記L1,L3であり、Xが一般式(i)で表される構造であり、一般式(i)中のAがスルホナート基である組み合わせが好ましい。更にLが前記L1、L3であり、Xが一般式(i)で表される構造であり、一般式(i)中のLが炭素数4若しくは5の直鎖アルキレン基であり、かつAがスルホナート基である組み合わせが好ましい。更に、Lが前記L3であり、L3中の二価の脂肪族基が炭素数3の直鎖アルキレン基であり、Xが一般式(i)で表される構造であり、Lが炭素数4の直鎖アルキレン基であり、かつAがスルホナート基である組み合わせが特に好ましい。
【0125】
特定高分子化合物中の(a1)双性イオン構造を有する繰り返し単位の割合は、耐汚れ性の観点から、特定高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対して、1〜99モル%が好ましく、3〜80モル%がより好ましく、5〜70モル%が更に好ましく、更に、耐刷性を考慮すると、5〜60モル%が更に好ましく、5〜50モル%が特に好ましい。
【0126】
次に、支持体の表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位について説明する。
支持体の表面と相互作用する構造としては、例えば、陽極酸化処理又は親水化処理を施した支持体上に存在する金属、金属酸化物、水酸基などとイオン結合、水素結合、極性相互作用などの相互作用が可能な構造が挙げられる。
支持体表面と相互作用する構造としては、例えば、カルボン酸構造、カルボン酸塩構造、スルホン酸構造、スルホン酸塩構造、ホスホン酸構造、ホスホン酸塩構造、リン酸エステル構造、リン酸エステル塩構造、β−ジケトン構造、フェノール性水酸基などを挙げることができ、例えば、下記に示す式で表される例が挙げられる。
【0127】
【化17】

【0128】
上記式中、R11〜R13はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、又はアルケニル基を表し、M、M及びMはそれぞれ独立に、水素原子、金属原子(例えば、Na,Liなどのアルカリ金属原子)、又はアンモニウム基を表す。Bは、ホウ素原子を表す。
【0129】
これらのなかでも耐汚れ性及び耐刷性の観点から、支持体表面と相互作用する構造は、カルボン酸構造、カルボン酸塩構造、スルホン酸構造、スルホン酸塩構造、ホスホン酸構造、ホスホン酸塩構造、リン酸エステル構造又はリン酸エステル塩構造が好ましく、耐汚れ性を更に向上させることを考慮すると、ホスホン酸構造、ホスホン酸塩構造、リン酸エステル構造又はリン酸エステル塩構造がより好ましく、ホスホン酸構造又はホスホン酸塩構造が特に好ましい。
なお、双性イオン構造を有する繰り返し単位(a1)が、これらの支持体の表面と相互作用する構造を有している場合は、繰り返し単位(a2)に含めないものとする。
【0130】
支持体表面と相互作用する構造を少なくとも1つ有する繰り返し単位は、具体的には下記式(A2)で表されることが好ましい。
【0131】
【化18】

【0132】
式(A2)中、R201〜R203はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6)又はハロゲン原子を表す。
Lは単結合又は−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
【0133】
組み合わせからなるLの具体例としては、前記式(A1)において記載したものと同じもの及び下記L17、L18が挙げられる。
L17:−CO−NH−
L18:−CO−O−
前記L1〜L18の中では、L1〜L4、L17、L18が好ましい。Lの好ましい構造は単結合、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、L1〜L4、L17、L18であり、より好ましくは、L1〜L4又は単結合であり、最も好ましくは単結合である。
【0134】
Qは支持体表面と相互作用する構造を表し、好ましい態様は上述したものと同じである。
【0135】
特定高分子化合物中の(a2)支持体の表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位の割合は、耐汚れ性及び耐刷性の観点から、特定高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対して、1〜99モル%が好ましく、10〜90モル%がより好ましく、20〜90モル%が更に好ましく、30〜90モル%が特に好ましい。
【0136】
特定高分子化合物としては、耐汚れ性と耐刷性の観点から、双性イオン構造が上述した一般式(i)、(ii)、(iii)で表される構造であり、前記支持体の表面と相互作用する構造がホスホン酸構造、ホスホン酸塩構造、リン酸エステル構造、リン酸エステル塩構造である組み合わせが好ましく、双性イオン構造が上述した一般式(i)、(ii)、(iii)で表される構造であり、前記支持体の表面と相互作用する構造がホスホン酸構造、ホスホン酸塩構造である組み合わせが特に好ましい。特にホスホン酸構造、ホスホン酸塩構造がポリマー主鎖に直接結合している構造が更に好ましい。
【0137】
特定高分子化合物は既知のいかなる方法によっても合成可能であるが、その合成にはラジカル重合法が好ましく用いられる。一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0138】
また、特定高分子化合物は、(a1)双性イオン構造を有する繰り返し単位、(a2)前記支持体表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位、及び、好ましく導入される後述の(a3)ラジカル重合性反応性基を有する繰り返し単位とともに、他の繰り返し単位
(以下、単に、「他の繰り返し単位」と称する場合もある)を有する共重合体であってもよい。
【0139】
特定高分子化合物を構成する他の繰り返し単位としては、下記式(A3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0140】
【化19】

【0141】
式(A3)において、R304、R305は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表し、Lは単結合又は連結基(例えば、前記Lにおける連結鎖が挙げられる)を表し、Yは炭素数1〜30の置換基を表す。特に、Lとしてはエステル又はアミドが好ましい。Yとしては直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
304、R305としては、効果及び入手容易性の観点から、特に好ましい例として、水素原子、メチル基又はエチル基を挙げることができる。
【0142】
このような他の繰り返し単位は、特定高分子化合物において、(a1)双性イオン構造を有する繰り返し単位、及び、(a2)前記支持体表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位の共重合成分として、特定高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対して、60モル%以下含まれることが好ましく、50モル%以下含まれることがより好ましく、40%以下含まれることが特に好ましい。膜強度及び親疎水性の観点から、式(A3)で表される繰り返し単位を含有する場合には、特定高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対して、5モル%以上が好ましい。
【0143】
特定高分子化合物の質量平均分子量は平版印刷版原版の性能設計により任意に設定できる。質量平均分子量は2,000〜1,000,000が好ましく、耐刷性及び耐汚れ性の観点から2,000〜500,000がより好ましく、2,000〜300,000が特に好ましい。
【0144】
以下に、特定高分子化合物の具体例を、その質量平均分子量と共に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ポリマー構造の組成比はモル百分率を表す。
【0145】
【化20】

【0146】
【化21】

【0147】
【化22】

【0148】
【化23】

【0149】
【化24】

【0150】
【化25】

【0151】
【化26】

【0152】
【化27】

【0153】
【化28】

【0154】
特定高分子化合物は、耐刷性向上の観点から、(a3)ラジカル重合性反応性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。ラジカル重合性反応性基の例として、好ましくは、付加重合可能な不飽和結合基(例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロニトリル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基、アルキニル基)、連鎖移動が可能な官能基(例えば、メルカプト基)が挙げられる。中でも、耐刷性の点から、付加重合可能な不飽和結合基が好ましく、製造上、アリル基を有することが特に好ましい。ここで(メタ)アクリル基とはアクリル基又はメタクリル基を表す。
特定高分子化合物は、特開2001‐312068号公報に記載の方法でラジカル重合性反応性基を導入することで得ることができる。ラジカル重合性反応性基を有する特定高分子化合物を用いることにより、未露光部では優れた現像性を発現し、露光部では重合によって現像液の浸透性が抑制され、支持体と感光層との間の接着性、密着性が更に向上する。
【0155】
このような(a3)ラジカル重合性反応性基を有する繰り返し単位は、特定高分子化合物において、(a1)双性イオン構造を有する繰り返し単位、及び、(a2)前記支持体表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位の共重合成分として、特定高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対して、1〜50モル%含まれることが好ましく、2〜30モル%含まれることがより好ましく、5〜20%含まれることが特に好ましい。50モル%を超えて含む場合は、合成上ゲル化が発生しやすく、製造上好ましくない。更に、ラジカル重合性反応性基を有する繰り返し単位が多くなると、親水性が低下し、耐汚れ性の観点で好ましくない。一方で、ラジカル重合性反応性基を有する繰り返し単位が少なくなると、耐刷性向上の効果が得にくくなる。これらの観点から、5〜20モル%含まれることが特に好ましい。
以下に、(a1)双性イオン構造を有する繰り返し単位と、(a2)前記支持体の表面と相互作用する構造を有する繰り返し単位と、(a3)ラジカル重合性反応性基を有する繰り返し単位とを有する特定高分子化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0156】
【化29】

【0157】
【化30】

【0158】
【化31】

【0159】
【化32】

【0160】
【化33】

【0161】
特定高分子化合物の添加量は、下塗層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.1〜100質量部、更に好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは20〜100質量部の範囲である。
【0162】
〔バックコート層〕
本発明に係る平版印刷版原版は、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0163】
[平版印刷版の作製方法]
本発明に係る平版印刷版の作製方法は、本発明の平版印刷版原版を画像露光し現像処理することにより行われる。
【0164】
<画像露光工程>
画像露光は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するか、デジタルデータに基くレーザー光走査等で画像様に露光することにより行われる。露光光源の波長は300〜450nm又は750〜1400nmが好ましい。300〜450nmの場合は、この領域に吸収極大を有する増感色素を感光層に有する平版印刷版原版が用いられ、750〜1400nmの場合は、この領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を含有する平版印刷版原版が用いられる。300〜450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。750〜1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
【0165】
<現像処理工程>
現像処理は、現像液を用いて行われ、未露光部の画像形成層が除去され非画像部が形成される。現像処理には、pHが2〜14の現像液が用いられる。
高アルカリ性現像液(pH12以上)を用いる現像処理においては、通常、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥して平版印刷版が作製される。
本発明の好ましい態様によれば、pHが2〜11の現像液が使用される。この態様においては、現像液中に界面活性剤又は水溶性高分子化合物を含有させることが好ましく、これにより現像とガム液処理を同時に行うことが可能となる。よって後水洗工程は特に必要とせず、1液で現像−ガム液処理を行うことができる。更に、前水洗工程も特に必要とせず、保護層の除去も現像−ガム液処理と同時に行うことができる。現像−ガム処理の後に、例えば、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0166】
本発明に係る平版印刷版の作製方法の好ましい態様の1つは、水洗工程を含まないことを特徴としている。ここで、「水洗工程を含まないこと」とは、平版印刷版原版の画像露光工程以降、現像処理工程を経て平版印刷版が作製されるまでの間に、一切の水洗工程を含まないことを意味する。即ち、この態様によれば、画像露光工程と現像処理工程の間のみならず、現像処理工程後も水洗工程を行うことなく平版印刷版が作製される。作製された印刷版は、そのまま、印刷に供することができる。
【0167】
現像処理は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、画像露光した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る方法、スプレーにより現像液を吹き付けてブラシで擦る方法等により行うことができる。
【0168】
本発明における現像処理は、現像液の供給手段及び擦り部材を備えた自動現像処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動現像処理機が特に好ましい。更に自動現像処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段や、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。また、自動現像処理機は現像処理手段の前に、画像露光後の平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
このような自動現像処理機での処理は、いわゆる機上現像の場合に生ずる保護層/感光層に由来の現像カスへの対応から開放されるという利点がある。
【0169】
本発明の平版印刷版の作製方法に使用される自動現像処理機の1例を、図1に模式的に示す。図1の自動現像処理機は、基本的に現像部6と乾燥部10からなり、平版印刷版原版4は、現像槽20で現像処理され、乾燥部10で乾燥される。
【0170】
本発明に用いられる現像液は、界面活性剤及び水溶性高分子化合物のうち少なくとも1種を含有しpHが2〜11の水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液であることが好ましい。現像液は界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性イオン系等)を含有する水溶液、水溶性高分子化合物を含有する水溶液、あるいは界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液である。現像液のpHは、好ましくは5〜10.7、更に好ましくは6〜10.5、特に好ましくは7〜10.3である。
【0171】
現像液に用いられるアニオン系界面活性剤は、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0172】
現像液に用いられるカチオン系界面活性剤は、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0173】
現像液に用いられるノニオン系界面活性剤は、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中でも、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又は、アルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0174】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤は、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。具体的には、特開2008−203359号の段落番号〔0255〕〜〔0278〕、特開2008−276166号の段落番号〔0028〕〜〔0052〕等に記載されている化合物を用いることができる。
【0175】
界面活性剤は現像液中に2種以上併用してもよい。現像液中における界面活性剤の含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0176】
現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸及びその塩、ポリスチレンスルホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0177】
上記大豆多糖類は、公知のものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0178】
上記変性澱粉も、公知のものが使用でき、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
【0179】
水溶性高分子化合物は現像液中2種以上併用してもよい。水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0180】
本発明で使用する現像液には、pH緩衝剤を含ませることができる。pH緩衝剤としては、pH2〜11に緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば特に限定なく用いることができる。本発明においては弱アルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば(a)炭酸イオン-炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は(c)水溶性のアミン化合物-そのアミン化合物のイオンの組み合わせなどが現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、従ってpHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。炭酸イオン及び炭酸水素イオンを含む現像液のpHは9〜11が好ましい。
【0181】
炭酸イオン及び炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属塩は単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、現像液に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。
【0183】
本発明の現像液は有機溶剤を含有しても良い。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)、極性溶剤が挙げられる。
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。
【0184】
有機溶剤は現像液中2種以上併用してもよい。有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合、安全性、引火性の観点から、有機溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0185】
現像液には上記成分の他に防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有することができる。具体的には、特開2007−206217号の段落番号〔0266〕〜〔0270〕に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0186】
現像液は、画像露光された平版印刷版原版の現像液及び現像補充液として用いることができる。また、前記のような自動現像処理機に好ましく適用することができる。
【0187】
本発明に係る平版印刷版の作製方法においては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱(プレヒート)してもよい。この様な加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化といった利点が生じる。更に、画像強度、耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対して、全面後加熱若しくは全面露光を行うことも有効である。通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。温度が高すぎると、未露光部が硬化してしまう等の問題を生じ得る。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は100〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じ得る。
【0188】
[重合性組成物]
本発明の重合性組成物は、(i)前記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂と共に(ii)重合性化合物及び(iii)重合開始剤を含有することを特徴とする。本発明の重合性組成物に用いられる重合性化合物及び重合開始剤としては、前記平版印刷版原版の画像形成層に関して記載した化合物以外にも、公知の重合性化合物及び重合開始剤(熱重合開始剤を含む)から適宜選択して用いることができる。本発明の重合性組成物は、必要に応じて、重合性組成物において通常使用される添加剤を更に含有していてもよい。
【0189】
本発明の重合性組成物は、光又は熱により重合開始剤が分解し、ラジカルを発生させ、この発生したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こすという機構を有しており、種々の用途に適用することができる。例えば、前記平版印刷版原版の他、画像記録材料、又は、高感度な光造形用材料としても好適であり、重合にともなう屈折率の変化を利用してホログラム材料、フォトレジスト等の電子材料などに適用することもできる。
【実施例】
【0190】
以下に実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0191】
[実施例1〜21及び比較例1〜10]
(1)平版印刷版原版の作製
〔アルミニウム支持体1の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0192】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0193】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し、アルミニウム支持体1を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.51μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0194】
〔アルミニウム支持体2の作製〕
アルミニウム支持体1を、珪酸ナトリウム1質量%水溶液にて20℃で10秒処理し、アルミニウム支持体2を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.54μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0195】
〔アルミニウム支持体3の作製〕
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。このアルミニウム板を、25℃に保たれた10質量%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の塩酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dmの条件下に交流電流により60秒間電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5質量%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間デスマット処理を行った。このアルミニウム板を、15質量%硫酸水溶液溶液中で、25℃、電流密度10A/dm、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、アルミニウム支持体3を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.44μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0196】
〔アルミニウム支持体4〜6の作製〕
上記アルミニウム支持体1〜3それぞれに、以下の組成を有する下塗り層塗布液をバーコーターで塗布し、100℃にて1分間乾燥することで、下塗り層を形成したアルミニウム支持体4〜6を作製した。なお下塗り層の乾燥塗布量はいずれも12mg/mであった。
【0197】
<下塗り層塗布液>
・下記ポリマー(SP1) 0.87g
・下記ポリマー(SP2) 0.73g
・純水 1000g
【0198】
【化34】

【0199】
〔画像形成層1の形成〕
下記組成の画像形成層塗布液1をバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/mの画像形成層1を形成した。
【0200】
<画像形成層塗布液1>
・下記表1に記載のバインダーポリマー 0.34g
・下記重合性化合物(1) 0.68g
(PLEX6661−O、デグサジャパン製)
・下記増感色素(1) 0.06g
・下記重合開始剤(1) 0.18g
・下記連鎖移動剤(1) 0.02g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩 0.01g
・下記フッ素系界面活性剤(1) (質量平均分子量:10,000)0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.02g
(プルロニックL44、(株)ADEKA製)
・黄色顔料分散物 0.04g
(黄色顔料Novoperm Yellow H2G(クラリアント製):15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 (質量平均分子量:6万、共重合モル比83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0201】
【化35】

【0202】
【化36】

【0203】
〔画像形成層2の形成〕
下記組成の画像形成層塗布液2をバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/mの画像形成層2を形成した。
<画像記形成塗布液2>
・下記表1に記載のバインダーポリマー 0.30g
・上記重合性化合物(1) 0.17g
・下記重合性化合物(2) 0.51g
・下記増感色素(2) 0.03g
・下記増感色素(3) 0.015g
・下記増感色素(4) 0.015g
・上記重合開始剤(1) 0.13g
・連鎖移動剤:メルカプトベンゾチアゾール 0.01g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・上記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1万) 0.001g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0204】
【化37】

【0205】
【化38】

【0206】
〔画像形成層3の形成〕
下記組成の画像形成層塗布液3をバー塗布した後、125℃で34秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.4g/m2の画像形成層3を形成した。
【0207】
<画像形成層塗布液3>
・下記赤外線吸収剤(IR−1) 0.030質量部
・下記重合開始剤A(S−1) 0.069質量部
・下記重合開始剤B(I−1) 0.094質量部
・下記メルカプト化合物(E−1) 0.020質量部
・下記エチレン性不飽和化合物(M−2) 0.425質量部
(商品名:A−BPE−4 新中村化学工業(株))
・下記表1に記載のバインダーポリマー 0.623質量部
・下記添加剤(T−1) 0.080質量部
・下記重合禁止剤(Q−1) 0.0012質量部
・エチルバイオレット(EV−1) 0.021質量部
・フッ素系界面活性剤 0.0081質量部
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 5.886質量部
・メタノール 2.733質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.886質量部
【0208】
【化39】

【0209】
【化40】

【0210】
【化41】

【0211】
〔保護層1の形成〕
下記組成の保護層塗布液1をバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥し、乾燥塗布量が0.75g/mの保護層1を形成した。
【0212】
<保護層塗布液1>
・ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:500) 40g
・ポリビニルピロリドン(質量平均分子量:5万) 5g
・ポリ〔ビニルピロリドン/酢酸ビニル(モル比1/1)〕(質量平均分子量:7万) 0.5g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.5g
・水 950g
【0213】
〔保護層2の形成〕
下記組成の保護層塗布液2をバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥し、乾燥塗布量が0.75g/mの保護層2を形成した。
【0214】
<保護層塗布液2>
・下記無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・スルホン酸変性ポリビニルアルコールの6質量%水溶液 0.55g
(CKS50、日本合成化学工業(株)製、ケン化度99モル%以上、重合度300)
・ポリビニルアルコール6質量%水溶液 0.03g
(PVA−405、(株)クラレ製、ケン化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
・界面活性剤の1質量%水溶液
(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 8.60g
・イオン交換水 6.0g
【0215】
(無機質層状化合物分散液(1))
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、混合物をホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散し、無機質層状化合物分散液(1)を調製した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0216】
上記アルミニウム支持体、画像形成層、保護層を表1に示すように組み合わせて平版印刷版原版A−1〜A−19、B−1〜B−15を作製した。
【0217】
【表2】

【0218】
表1中、バインダーポリマーPU−1〜PU−15は、前記本発明の特定ウレタン樹脂の具体例に示したものである。PUR−1〜PUR−5は、比較用のウレタン樹脂であり、その構造を以下に示す。
【0219】
【化42】

【0220】
(2)平版印刷版原版の評価
〔露光、現像及び印刷〕
表1に示す各平版印刷版原版を、FUJIFILM Electronic Imaging Ltd.(FFEI社)製Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー(発光波長405nm±10nm/出力30mW)を搭載)により画像露光した。画像露光は、解像度2、438dpiで、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA 20)を用い、網点面積率が50%となるように、版面露光量0.05mJ/cmで行った。
【0221】
次いで、100℃、30秒間のプレヒートを行った後、下記現像液1〜5を表2に示すように用い、図1に示すような構造の自動現像処理機にて現像処理を実施した。自動現像処理機は、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径50mmのブラシロールを1本有し、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)させた。現像液の温度は30℃であった。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minで行った。現像処理後、乾燥部にて乾燥を行った。乾燥温度は80℃であった。但し、現像液2を用いた際は、現像後乾燥工程を行う前に、スプレー水洗を行った。
【0222】
以下に、現像液1〜5の組成を示す。下記組成においてニューコールB13は、ポリオキシエチレン β−ナフチルエーテル(オキシエチレン平均数n=13)(日本乳化剤(株)製)であり、アラビアガムは、重量平均分子量が20万のものである。
【0223】
<現像液1>
・炭酸ナトリウム 13.0g
・炭酸水素ナトリウム 7.0g
・ニューコールB13 50.0g
・リン酸第一アンモニウム 2.0g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパンー1、3−ジオール 0.01g
・2−メチル−4−イソチアゾリンー3−オン 0.01g
・クエン酸三ナトリウム 15.0g
・蒸留水 913.98g
(pH:9.8)
【0224】
<現像液2>
・水酸化カリウム 1.5g
・ニューコールB13 50.0g
・キレスト400(キレート剤) 1.0g
・蒸留水 947.5g
(pH:12)
【0225】
<現像液3>
・アラビアガム 25.0g
・酵素変性馬鈴薯澱粉 70.0g
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 5.0g
・リン酸第一アンモニウム 1.0g
・クエン酸 1.0g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 0.01g
・2−メチル−4−イソチアゾリンー3−オン 0.01g
・下記両性界面活性剤(W−1) 70.0g
・下記アニオン性界面活性剤(AN−1) 3.0g
・蒸留水 824.98g
(リン酸及び水酸化ナトリウムを用いて、pHを4.5に調整)
【0226】
【化43】

【0227】
<現像液4>
・水 937.2g
・下記アニオン性界面活性剤(W−2) 23.8g
・リン酸 3g
・フェノキシプロパノール 5g
・トリエタノールアミン 6g
・ポテトデキストリン 25g
【0228】
【化44】

【0229】
<現像液5>
・水 886g
・下記ノニオン性界面活性剤(W−3) 24g
・下記ノニオン性界面活性剤(W−4) 24g
・ノニオン性界面活性剤 10g
(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
・フェノキシプロパノール 10g
・オクタノール 6g
・N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン 10g
・トリエタノールアミン 5g
・グルコン酸ナトリウム 10g
・クエン酸3ナトリウム 5g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム 0.5g
・ポリスチレンスルホン酸 10g
(Versa TL77(30質量%溶液)、Alco Chemical社製)
(リン酸を用いて、pHを7.0に調整)
【0230】
【化45】

【0231】
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0232】
〔評価〕
各平版印刷版原版について、耐刷性、耐汚れ性、現像性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性を下記のように評価した。結果を表2及び表3に示す。
<耐刷性>
印刷枚数の増加にともない、徐々に画像形成層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。同一露光量で露光した印刷版において、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。耐刷性評価は、表2及び表3においては各々実施例1及び18を基準(1.0)として、以下のように定義した相対耐刷性で表した。相対耐刷性の数字が大きい程、耐刷性が高いことを表す。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の耐刷性)/(基準平版印刷版原版の耐刷性)
【0233】
<耐汚れ性>
印刷開始後20枚目の印刷物を抜き取り、非画像部に付着しているインキ濃度により耐汚れ性を評価した。非画像部のインキ付着は、必ずしも均一に発生するわけではないため、75cm当りの目視評価の点数で表示した。目視評価の点数は、非画像部のインキ付着面積率が0%の場合を10点,1〜2%を9点、3〜5%を8点、6〜10%を7点、11〜20%を6点、21〜30%を5点、31〜40%を4点、41〜50%を3点、51〜60%を2点、61〜80%を1点、81〜100%を0点とした。点数の高い程、耐汚れ性が良好であることを表す。
【0234】
<現像性>
搬送速度を種々変更して現像処理を行い、得られた平版印刷版の非画像部のシアン濃度をマクベス濃度計により測定した。非画像部のシアン濃度がアルミニウム支持体のシアン濃度と同等になった搬送速度を求め、現像性を評価した。現像性評価は、表2及び表3においては各々実施例1及び18を基準(1.0)として、以下のように定義した相対現像性で表した。相対現像性の数値が大きい程、高現像性であり、性能が良好であることを表す。
相対現像性=(対象平版印刷版原版の搬送速度)/(基準平版印刷版原版の搬送速度)
【0235】
<UVインキ耐刷性>
前記耐刷性の評価において、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)との代わりに、IF102湿し水2容量%水溶液(富士フイルム(株)製)とベストキュアーUV−BF−WRO標準墨インキ((株)T&K TOKA製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。UVインキ耐刷性の評価は、得られた印刷物の画像濃度が刷り始めより5%低下した印刷枚数により判断し、表2及び表3においては各々実施例1及び18を基準(1.0)として以下のように定義した相対UVインキ耐刷性で表した。相対UVインキ耐刷性の数字が大きい程、UVインキ耐刷性が高いことを表している。
相対UVインキ耐刷性=(対象平版印刷版原版のUVインキ耐刷性)/(基準平版印刷版原版のUVインキ耐刷性)
【0236】
<耐薬品性>
前記耐刷性の評価において、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)との代わりに、IF102湿し水4容量%水溶液(富士フイルム(株)製)とバリウスG墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)を用い、5000枚印刷するごとに、マルチクリーナー(富士フイルム(株)製)で版面を拭くことを行った。上質紙に印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により耐薬品性を判断し、表2及び表3においては各々実施例1及び18を基準(1.0)として以下のように定義した相対耐薬品性で表した。相対耐薬品性の数字が大きい程、耐薬品性が高いことを表している。
相対耐薬性=(対象平版印刷版原版の耐薬性)/(基準平版印刷版原版の耐薬性)
【0237】
【表3】

【0238】
【表4】

【0239】
表2及び表3から明らかなように、本発明の特定ウレタン樹脂をバインダーポリマーに用いた平版印刷版原版は、耐汚れ性や現像性を悪化させることなく耐刷性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を提供することができる。
【0240】
〔実施例22〜23及び比較例11〜15〕
表4に示す各平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244VX(水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載)にて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2,400dpiの条件で画像様露光を行った。次いで、100℃、30秒間のプレヒートを行った後、現像液1を用いて実施例1と同様にして現像処理を実施した。
得られた平版印刷版を用い、実施例1と同様にして、耐刷性、耐汚れ性、現像性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性を評価した。相対評価の基準には実施例22を使用した。結果を表4に示す。
【0241】
【表5】

【0242】
表4から明らかなように、本発明の特定ウレタン樹脂をバインダーポリマーに用いた平版印刷版原版は、赤外線で画像露光を行う場合においても、耐汚れ性や現像性を悪化させることなく耐刷性、UVインキ耐刷性及び耐薬品性に優れた平版印刷版を提供することができる。
【符号の説明】
【0243】
4 平版印刷版原版
6 現像部
10 乾燥部
16 搬送ローラ
20 現像槽
22 搬送ローラ
24 ブラシローラ
26 スクイズローラ
28 バックアップローラ
36 ガイドローラ
38 串ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(i)下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂を含むバインダーポリマー、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含む画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【化1】

式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂において、繰り返し単位Bのnが1〜70の自然数であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記画像形成層が、増感色素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記画像形成層の上に、保護層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、界面活性剤及び水溶性高分子化合物の少なくとも1種を含有するpHが2〜11の現像液の存在下、非露光部の画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、炭酸イオンと、炭酸水素イオンと、界面活性剤及び水溶性高分子化合物の少なくとも1種とを含有するpHが9〜11の現像液の存在下、非露光部の画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項7】
前記画像露光を、300〜450nmのレーザーで行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項8】
前記請求項5〜7のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法であって、水洗工程を含まないことを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項9】
(i)下記繰り返し単位A、B、C及びDから構成されるウレタン樹脂、(ii)重合性化合物、及び(iii)重合開始剤を含むことを特徴とする重合性組成物。
【化2】

式中、a、b、c及びdは各繰り返し単位のモル%を表す。但し、aは50モル%であり、b、c及びdの合計は50モル%である。nはプロピレンオキサイドの繰り返し数を表す。
【請求項10】
前記ウレタン樹脂において、繰り返し単位Bのnが1〜70の自然数であることを特徴とする請求項9に記載の重合性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−48175(P2012−48175A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192987(P2010−192987)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】