説明

平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法

【課題】印刷適性(耐汚れ性、水幅など)、耐刷力、ケミカル耐性が向上した平版印刷版材料、印刷機上現像が可能な平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法、且つ、良好な印刷機上現像性と耐刷力を両立した平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法の提供。
【解決手段】支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、該支持体の感光性層又は感熱性層塗設面が下記a.b.の用件を満たす平版印刷版材料。a.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり50〜1000個有する。b.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が10〜25Kcpsである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業務はクライアントからの多様なニーズにより、種々の印刷条件に対応可能な平版印刷版材料が求められるようになってきた。たとえば、特色や高濃度印刷など特殊な印刷条件で汚れなく印刷できる印刷適性が求められている。また、多種のインキ資材が使用に伴い、洗浄剤も様々なものが使用され、平版印刷版材料のケミカル耐性の要求が高まってきている。耐刷力では、少部数印刷の傾向はあるものの、依然、数十万までの部数のニーズもあり、これらを一様に賄える平版印刷版材料が要求される。
【0003】
印刷適性、耐刷力の両立をするために、印刷用支持体製造時に形成されるマイクロポアの径、個数を調整する方法が開示されている。この方法では耐察力と印刷適性がトレードオフ関係になりやすく、印刷用支持体の製造条件ラチチュードの確保が困難となりやすい。(特許文献1、2参照)
また、印刷適性と耐刷力、ケミカル耐性のバランスを取るために、微細形状有する印刷用支持体表面に親水性樹脂の下引きによる親水化処理を施す方法が開示されている。この方法では親水化処理の条件によっては耐刷力が劣化したり、汚れが発生したりすることがあった。(特許文献3、4参照)
他方、環境への配慮、製版工程の簡略および製版の安定化を目的として、印刷機上で画像形成(現像処理)が可能なプロセスレス平版印刷版材料の技術も発展してきている。これらの技術には、露光のみされた平版印刷版材料が容易に現像できること、得られた画像の耐久力が求められるが、これらの要求項目を両立させるのは大変困難である。
【0004】
プロセスレス平版印刷版材料の機上現像性および耐刷力の向上を目的として、陽極酸化され、フッ素含有化合物で封孔処理された平版印刷印刷用支持体に、印刷機上で現像可能な画像形成層を有する平版印刷版材料が開示されているが、これらの技術では平版印刷版材料を長期に保存したり、高温下に曝された場合に、機上現像性が劣化することがあった。(特許文献5参照)
【特許文献1】特開2001−293974号公報
【特許文献2】特開2002−365791号公報
【特許文献3】特開2004−333814号公報
【特許文献4】特開2005−297265号公報
【特許文献5】特開2005−96115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多様化した印刷環境に対応可能な印刷適性(耐汚れ性、水幅など)、耐刷力、ケミカル耐性が向上した平版印刷版材料を提供することにある。また、印刷機上現像が可能な平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法の提供、且つ、良好な印刷機上現像性と耐刷力を両立した平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0007】
1.支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、該支持体の感光性層もしくは感熱性層塗設面が下記a.b.の用件を満たすことを特徴とする平版印刷版材料。
【0008】
a.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり50〜1000個有する。
【0009】
b.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が10〜25Kcpsである。
【0010】
2.支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、前記支持体の感光性層もしくは感熱性層塗設面が下記c.d.の用件を満たすことを特徴とする請求項1に項記載の平版印刷版材料。
【0011】
c.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり200〜500個有する。
【0012】
d.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が10〜2cpsである。
【0013】
3.支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、前記支持体の感光性層もしくは感熱性層塗設面が下記用件e.f.を満たすことを特徴とする前記1又は2に記載の平版印刷版材料。
【0014】
e.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底f.面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり250〜350個有する。
【0015】
f.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が12〜15Kcpsである
4.前記支持体が燐酸でんぷん、ポリビニルホスホン酸のうち少なくとも1種の樹脂で親水化処理がなされていることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の平版印刷版材料。
【0016】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の平版印刷版材料を印刷機上にて湿し水、インクの少なくとも1種で現像処理することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明による平版印刷版材料及び平版印刷版の作製方法は、多様化した印刷環境に対応可能な印刷適性(耐汚れ性、水幅など)、耐刷力、ケミカル耐性が向上し優れ、また、印刷機上現像が可能な平版印刷版材料であって、良好な印刷機上現像性と耐刷力を両立した優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の平版印刷版材料に用いられる支持体は、感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底面に微細な孔を有すること、さらに支持体表面に波長分散型X線測定による燐によるピークを有することを特徴とする。本発明者らは研究の結果、これらの性状が印刷時に必要とされる諸性能と大きく関係していることを見出し、本発明に至った。
【0020】
本発明の支持体はおわん状の凹部を有している。これにより感光性層もしくは感熱性層より形成される画像塗膜がその形状によって保護され、印刷時の画像耐久力(耐刷力)が向上する。また、現像後に支持体が露出する部分においては、印刷中に湿し水を保持する構造となり、印刷適性が向上する。
【0021】
また、おわん状の凹部底面に微細な孔を有することが好ましい。これにより、画像塗膜を投錨効果により強固に保持されるのはもちろん、支持体の親水化処理を均一かつ効果的に行うことができるため、印刷汚れが発生しにくく、機上現像タイプの平版印刷版材料の場合には、機上現像性が向上する。
【0022】
前記微細な孔は平均径10nm〜100nmであることが、画像塗膜に対する投錨効果が得られやすい点で好ましい。その孔の個数は1μm2当たり50〜1000個、さらには、200〜500個、更に好ましくは250〜350個有している。前記微細な孔が少なすぎると投錨効果が得られにくくなり、耐刷力が低下する。一方、孔が多すぎると、孔の部分にインキがカラミやすく、汚れになりやすい。
【0023】
さらに、支持体表面の波長分散型X線測定での燐によるピークを有することが好ましく、その強度は10〜25Kcps、さらには10〜20Kcps、さらには12〜15Kcpsであることが本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0024】
前述のような支持体は以下のように作製することができる。
【0025】
本発明の平版印刷版材料に用いることができる支持体は、アルミニウム板が使用され、この場合、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板等であってもかまわない。
【0026】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられ、各種圧延方法により製造されたアルミニウム板が使用できる。また、近年普及しつつあるスクラップ材およびリサイクル材などの再生アルミニウム地金を圧延した再生アルミニウム板も使用できる。
【0027】
本発明の平版印刷版材料に用いることができる支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0028】
上記脱脂処理したアルミニウム板を、塩酸を主体とする電解液中で交流電解粗面化処理を施すことが好ましい。塩酸を主体とする電解液で交流電解粗面化処理を行うことでおわん状の凹部構造を有する支持体表面が確保しやすい。
【0029】
塩酸を主体とする電解液中での交流電解粗面化処理は、塩酸濃度は1.0〜5.0質量%であることが好ましく、電解液の温度は15〜40℃であることが好ましい。また、電解液中には酢酸を含有することもできる。その場合の濃度は0〜10質量%であることが好ましい。また塩酸濃度との比は0.05〜1.5が好ましい。電流密度は15〜120A/dm2であり、電気量は400〜2000C/dm2であり、好ましくは600〜1500C/dm2である。周波数は40〜150Hzの範囲で行うことが好ましい。
【0030】
交流電解処理は、数段階に分けてもよく、例えば、電流密度を多段階的に変化させる方法、交流波形を多段階に変化させる方法、周波数を多段階に変化させる方法、酸性電解液濃度を多段階に変化させる方法、が使用できる。
また、交流電解粗面化処理の後は、水洗を行うことが好ましい。
【0031】
なお、本発明において、塩酸主体の電解液を用いて交流電解粗面化処理を施すことに先立ち、機械的粗面化処理および硝酸を主体とする交流電解粗面化処理を施しても良い。
【0032】
機械的粗面化方法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が挙げられる。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。
【0033】
ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0034】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後は、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
塩酸主体の電解液を用いた交流電解粗面化処理に次いで、表面のスマット(アルミニウム屑等)を取り除くため、燐酸を主体とする酸性溶液中で、かつ、0.05〜0.3g/m2に残すようにデスマット処理を施す。
【0035】
このような未溶解スマット量にすることで、支持体のおわん状凹部の底面に、大きさおよび量が適度となる微細な孔が確保しやすくなる。
【0036】
燐酸濃度は25〜450g/lであり、好ましくは75〜250g/lである。アルミニウムイオン濃度が0〜10g/lであり、好ましくは1〜5g/lである。液温は30〜80℃であり好ましくは35〜75℃である。燐酸濃度と温度により、未溶解スマット量を0.05〜0.3g/m2残すように処理時間を調整できる。また処理時間が決まっている場合は、燐酸濃度と温度で調整することが出来る。また、デスマット処理を行った後は、水洗を行うことが好ましい。
【0037】
未溶解スマット量の測定は、例えばデスマット処理後のアルミニウム版を、燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、未溶解スマットを溶解し、前後の質量変化測定等から求められる。
【0038】
粗面化処理およびデスマット処理の次には、陽極酸化処理を行う。本発明で用いられる陽極酸化処理の方法は特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理により支持体上には酸化皮膜が形成される。陽極酸化処理は、一般的には、電解液として、硫酸またはリン酸または両者の混合水溶液を用い、直流電解することにより行われる。本発明においては、陽極酸化処理は、電解液として硫酸を用いて行うことが好ましい。硫酸の濃度は、5〜50質量%が好ましく、10〜35質量%が特に好ましい。温度は10〜50℃が好ましい。処理電圧は18V以上であることが好ましく、20V以上であることが更に好ましい。電流密度は1〜30A/dm2が好ましい。電気量は100〜500C/dm2が好ましい。
【0039】
形成される陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。本発明の場合は、未溶解スマットが残った状態で陽極酸化処理を施すため、本方法で測定した質量変化は実質的には未溶解スマット量も含んだ測定値となる。
【0040】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、陽極酸化皮膜に形成したマイクロポアを閉じる操作で、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等を用いて行うことができる。封孔時の温度は25℃〜90℃が好ましく、これにより、支持体のおわん状凹部の底面に存在させうる微細な孔の大きさおよび量を制御することも可能である。
【0041】
これらの処理を行った支持体には親水化処理を施すことが好ましい。本発明において親水化処理はポリビニルホスホン酸、燐酸でんぷんなど燐酸基を側鎖に含有する親水性樹脂を用いることが好ましい。処理としては、塗布式、スプレー式、ディップ式等限定されないが、設備を安価にするにはディップ式が好適である。ディップ式の場合には、前記親水性樹脂を0.1〜0.3%の水溶液で処理することが好ましく、処理温度は20〜90℃、処理時間は10〜180秒が好ましい。この処理の仕方によって支持体表面の波長分散型X線測定での燐によるピーク強度を制御することが可能である。波長分散型X線測定での燐によるピーク強度を高く得るためには、前記親水性樹脂の濃度を前述の範囲で高くする、もしくは処理温度を前述の範囲で低温にし、親水性樹脂水溶液の粘度を高くした状態でディップするとよい。より均一に親水化処理されることが好ましく、そのために、上述の範囲で高温で処理されることが好ましい。
【0042】
(画像形成層)
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体にはレーザー光源による露光により画像形成可能な画像形成層をもうける。レーザー光源による露光により画像形成可能な画像形成層としては特に制限はなく、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、フォトポリマータイプ等現像処理を必要とする画像形成層、また機上現像性を有するようないわゆるプロセスレスタイプの画像形成層を設けることが出来る。
【0043】
尚、集合体を用いた印刷版材料は、室温約25℃で、真空吸引式のシリコンゴム製吸盤を感光層膜面に密着させ、約1m持ち上げ移動させながらセッターに装着させた。各赤外レーザー感熱性平版印刷版材料はセッターで露光後は、感光層膜面を上側にして下面がローラー上をすべり自動現像機に挿入された、さらに現像後は同様にローラ上をすべり、自現機のストッカーに重ねられた。ストッカーから先は、YMCK4版をセットで印刷機に人の手で運搬された。
【0044】
フォトポリマータイプ(光重合性感光性平版印刷版材料)について詳細に説明する。
【0045】
(光重合開始剤)
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料に用いられる光重合開始剤として好ましく使用できるものは、チタノセン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物、鉄アレーン錯体化合物が挙げられる。
【0046】
チタノセン化合物としては、特開昭63−41483号、特開平2−291号に記載される化合物等が挙げられるが、更に好ましい具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ジ−クロライド、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−フェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル(IRUGACURE727L:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピリ−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0047】
モノアルキルトリアリールボレート化合物としては、特開昭62−150242号公報、特開昭62−143044号公報に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチルートリナフタレン−1−イル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチルートリフェニル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチルートリ−(4−tert−ブチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム、n−ヘキシルートリ−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ヘキシルートリ−(3−フルオロフェニル)−ボレート等が挙げられる。
【0048】
鉄アレーン錯体化合物としては、特開昭59−219307号公報に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−フルオレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ナフタレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−キシレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0049】
その他に任意の光重合開始剤の併用が可能である。例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。更に具体的な化合物は英国特許1,459,563号に開示されている。
【0050】
即ち、併用が可能な光重合開始剤としては、次のようなものを使用することができる。
【0051】
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号、同61−9621号ならびに特開昭60−60104号記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号、同61−243807号記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号ならびに米国特許3,567,453号記載のジアゾニウム化合物;米国特許2,848,328号、同2,852,379号ならびに同2,940,853号記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062b号、同37−13109号、同38−18015号ならびに同45−9610号記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号、特開昭59−14023号ならびに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号記載のアゾ化合物;特開平1−54440号、ヨーロッパ特許109,851号、同126,712号ならびに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特願平4−56831号及び同4−89535号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号記載の有機ハロゲン化合物等。
【0052】
(トリハロアルキル化合物)
本発明の光重合性感光性組成物及び光重合性感光性平版印刷版材料は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体として光で酸化し得る基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体を用いた場合、光重合性混合物用フリーラジカル形成光開始剤として既知の光分解性トリハロアルキル基を含む化合物を含有する事が好ましい。この種類の併用開始剤として、ハロゲンとして、塩素および臭素を含有した化合物が特に適当である。トリハロアルキル基は、トリハロメチル基が好ましく、直接に、あるいは連続的に共役した鎖を経由して、芳香族炭素環または複素環に結合していることが好ましい。
【0053】
好ましくはふたつのトリハロメチル基を持つトリアジン環、を母核としてもつもの、特にEP−A−137452号、DE−A2118259号および同2243621号各明細書に記載された化合物、が好ましい。これらの化合物は、近紫外領域、たとえば350〜400nm、に強い光吸収を示す。複写光のスペクトル領域において、それ自身光吸収しないか、ごくわずかだけ光吸収する併用開始剤、例えば、メソメリーを可能にする短い電子系を伴った置換基または脂肪族置換基を含むトリハロメチルトリアジン、も適当である。同様に適当なのは、異なった基本骨格をもち、短波紫外領域で光吸収する化合物であり、例えばフェニルトリハロメチルスルフォンまたはフェニルトリハロメチルケトン、例えばフェニルトリブロモメチルスルフォン、である。
【0054】
(増感色素)
本発明の感光性平版印刷版材料に用いられる増感色素として好ましく使用できるものは、使用する光源の波長付近に吸収極大波長を有する増感色素を用いることが好ましい。
【0055】
可視光から近赤外までの波長増感させる化合物、すなわち、350nmから1300nmの間に吸収極大有する色素としては、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、キサンテン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、クマリン誘導体、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等、ケトアルコールボレート錯体が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255号、特開平11−271969号等に記載の化合物も用いられる。
【0056】
上記の光重合開始剤と増感色素の組合せの具体例としては、特開2001−125255号、特開平11−271969号に記載のある組合せが挙げられる。
【0057】
本発明の増感色素の、感光層中への添加量は、記録光源波長における、版面の反射濃度が、0.1から1.2の範囲となる量であることが好ましい。この範囲となる、該色素の感光層中における質量比率は、各色素の分子吸光係数と、感光層中における結晶性の程度により、大幅に異なるが、一般的には、0.5質量パーセントから、10質量パーセントの範囲であることが多い。
【0058】
また、重合開始剤、トリハロアルキル化合物および増感色素の配合量は、好ましくは、該感光層の光重合性感光性組成物において、0.1〜20質量部、好ましくは3〜12質量部である。光重合開始剤、トリハロアルキル化合物および増感色素の配合比率は、3つの総量を基準にして、光重合開始剤の比率は、30〜55質量部、トリハロアルキル化合物の比率は、3〜15質量部、増感色素の比率は40〜67質量部である。
【0059】
(高分子結合剤)
本発明の高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用出来る。また、これらを2種以上併用してもかまわない。好ましくはポリウレタン樹脂、アクリル系重合体である。
【0060】
ポリウレタン樹脂としては、特開2001−117219号公報に記載の酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタン樹脂、例えばジイソシアネートとカルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物を基本骨格とするポリウレタン樹脂が挙げられる。側鎖に重合性二重結合を有するアルカリ可溶性ウレタンバインダーとしては、特開2001−125257号公報に記載のジイソシアネート化合物と少なくとも1個のエチレン性不飽和重合性基を有するジオール化合物との反応生成物が挙げられる。本発明のアルカリ可溶性ウレタンバインダーとしては、側鎖に重合性二重結合を有するアルカリ可溶性ウレタンバインダーが好ましい。
【0061】
アクリル系重合体としては、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0062】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0063】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0064】
さらに、本発明の高分子結合材は、他の共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いる事が出来る。
【0065】
1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0066】
2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0067】
3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0068】
4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0069】
5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0070】
6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0071】
7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0072】
8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0073】
9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0074】
10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0075】
11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0076】
12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0077】
13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0078】
14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0079】
さらにこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0080】
上記ビニル系重合体は、通常の溶液重合により製造することができる。また、塊状重合または懸濁重合等によっても製造することができる。重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビス系のラジカル発生剤が挙げられ、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。また、これらの重合開始剤の使用量は、共重合体を形成するのに使用されるモノマー全体100質量部に対し、通常0.05〜10.0質量部(好ましくは0.1〜5質量部)である。また、溶液重合を行う際に使用される溶媒としては、ケトン系、エステル系、芳香族系の有機溶媒が挙げられ、なかでもトルエン、酢酸エチル、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン等の一般にアクリル系ポリマーの良溶媒が挙げられ、なかでも沸点60〜120℃の溶媒が好ましい。溶液重合の場合、上記溶媒を使用し、反応温度として通常40〜120℃(好ましくは60〜110℃)、反応時間として通常3〜10時間(好ましくは5〜8時間)の条件で行うことができる。反応終了後、溶媒を除去して共重合体を得る。また、溶媒を除去せずに引き続き後記の二重結合の導入反応を行うこともできる。
【0081】
得られる共重合体の分子量は、使用される溶媒および反応温度を調整することによって調節することができる。目的とする分子量の共重合体を得るために使用される溶媒および反応温度等は、使用されるモノマーによって適宜決定することができる。また、特定の溶媒を上記溶媒に混合することによっても得られる共重合体の分子量を調節することができる。このような溶媒としては、例えば、メルカプタン系(例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等)、四塩化炭素系(例えば、四塩化炭素、塩化ブチル、塩化プロピレン等)等が挙げられる。これらの溶媒を上記反応に使用する溶媒に混合する割合は、反応に使用するモノマー、溶媒、反応条件等によって適宜決定することができる。
【0082】
さらに、本発明の高分子結合材は、側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。また、上記ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とイソシアネート基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0083】
ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる方法は公知の方法で出来る。例えば、反応温度として20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記ビニル系共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。
【0084】
また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのまま脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。
【0085】
ここで、触媒としてはアミン系または塩化アンモニウム系の物質が好ましく、具体的には、アミン系の物質としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン等が挙げられ、塩化アンモニウム系の物質としては、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらを触媒として使用する場合、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加すればよい。また、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等が挙げられ、その使用量は、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜5.0質量%である。なお、なお、反応の進行状況は反応系の酸価を測定し、酸価が0になった時点で反応を停止させればよい。
【0086】
ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソ シアネート基を有する化合物を付加反応させる方法は公知の方法で出来る。例えば、反応温度として通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として通常2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記高分子共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのままイソシアネート基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。
【0087】
また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。ここで、触媒としてはスズ系またはアミン系の物質が好ましく、具体的には、ジブチルスズラウレート、トリエチルアミン等が挙げられる。触媒は使用する二重結合を有する化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0088】
また、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等が挙げられ、その使用量は、使用するイソシアネート基含有不飽和化合物に対して、通常0.01〜5.0質量%である。なお、反応の進行状況は反応系のイソシアナト基の有無を赤外吸収スペクトル(IR)で判定し、吸収が無くなった時点で反応を停止させればよい。
【0089】
上記した本発明に用いられる側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0090】
感光層として塗布し形成する光重合性感光性組成物中における高分子結合剤の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0091】
(光で酸化し得る基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体)
本発明に光重合性感光性組成物及び光重合性感光性平版印刷版材料に用いられる付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体は少なくとも一つの光で酸化し得る基を含むラジカル的に重合可能な単量体が好ましい。
【0092】
特に好ましいのは、少なくとも1つの光酸化性基と少なくとも1つのウレタン基とを、分子中に含む、付加重合性化合物である。適当な光酸化性基としては、特に、複素環の構成員となっていてもよいチオ基、チオエーテル基、ウレイド基、アミノ基、およびエノール基である。それらの基の例としては、トリエタノールアミノ基、トリフェニルアミノ基、チオウレイド基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、アセチルアセトニル残基、N−フェニルグリシン残基およびアスコルビン酸残基である、好ましいものは、3級アミノ基、チオエーテル基を含む付加重合性化合物である。
【0093】
光酸化性基を含む化合物の例は、ヨーロッパ特許出願公開第287,818号、同第353,389号および同第364,735号各明細書に記載されている。そこに記載されている化合物のなかで好ましいものは、第3アミノ基に加えて、ウレイド基および(または)ウレタン基をも含むものである。
【0094】
また、本発明の少なくとも1つの光酸化性基と少なくとも1つのウレタン基を有する単量体としては、特開昭63−260909号公報、特許2669849号公報、特開平6−35189号公報、特開2001−125255号公報に記載のものが挙げられる。
【0095】
さらに本発明では、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコール、ジイソシアネート化合物、および分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物の反応生成物を使用することが好ましい。
【0096】
ここで言う、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコールとしては、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert.−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N,N′,N′−テトラ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、p−トリルジエタノールアミン、N,N,N′,N′−テトラ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、アリルジエタノールアミン、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N,N−ジ(n−プロピル)アミノ−2,3−プロパンジオール、N,N−ジ(iso−プロピル)アミノ−2,3−プロパンジオール、3−(N−メチル−N−ベンジルアミノ)−1,2−プロパンジオール等が挙げられるが、これに限定されない。
【0097】
ジイソシアネート化合物としては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、オクタン−1,8−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナートメチル−シクロヘキサノン、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン等が挙げられるが、これに限定されない。分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジメタクリレート、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート等が挙げられる。
【0098】
これらの反応は、通常のジオール化合物、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシル基含有アクリレート化合物の反応で、ウレタンアクリレートを合成する方法と同様に行うことが出来る。
【0099】
また、これらの分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコール、ジイソシアネート化合物、および分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物の反応生成物において具体例を以下に示す。
【0100】
M−1:トリエタノールアミン(1モル)、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(3モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(3モル)の反応生成物
M−2:トリエタノールアミン(1モル)、イソホロンジイソシアネート(3モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(3モル)の反応生成物
M−3:N−n−ブチルジエタノールアミン(1モル)、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
M−4:N−n−ブチルジエタノールアミン(1モル)、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
M−5:N−メチルジエタノールアミン(1モル)、トリレン−2,4−ジイソシアネート(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジメタクリレート(2モル)の反応生成物
この他にも、特開平1−105238号公報、特開平2−127404号公報記載の、アクリレートまたはアルキルアクリレートが用いることが出来る。
【0101】
(その他の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体)
本発明の光重合性感光性組成物及び光重合性感光性平版印刷版材料に用いられる付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体は上記以外に一般的なラジカル重合性のモノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類を併用することができる。具体的な化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキシルアクリレート、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル;更には例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル、;更には例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、およびこれらのEO変性体、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル等;を挙げることができる。
【0102】
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等が挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0103】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類;例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類;例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート;例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類;その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類;等のプレポリマーが挙げられる。
【0104】
また、本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層に用いられる本発明に係る単量体として、ホスファゼンモノマー・トリエチレングリコール・イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性・ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを挙げることができる。
【0105】
更に、本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層に用いられる本発明に係る単量体として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有するリン酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、リン酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも、(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0106】
この他に特開昭58−212994号公報、同61−6649号公報、同62−46688号公報、同62−48589号公報、同62−173295号公報、同62−187092号公報、同63−67189号公報、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社 p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0107】
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料には、上記した本発明に係る単量体またはその他の単量体を該感光層の光重合性感光性組成物において、1.0〜80.0質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは3.0〜70.0質量%の範囲である。
【0108】
(カチオン重合可能な基を有する化合物)
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の塗布組成物には、カチオン重合可能な基を有する化合物を併用することが出来る。カチオン重合可能な基としては、オキシラン環、オキセタン環、ジオキソラン環等の環状エーテル構造を有する基、ビニルエーテル、アリルエーテル等の不飽和エーテル構造を有する基が挙げられる。また、カチオン重合可能な基が、オキシラン環、オキセタン環、ジオキソラン環のいずれかの構造を有し、かつ同時に同一分子内にラジカル重合可能な基を有している化合物は特に好ましい。
【0109】
(各種添加剤)
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の塗布組成物には、上記した成分の他に、光重合性感光性平版印刷版材料の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合単量体の不要な重合を阻止するために、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物およびその他の重合防止剤を添加してもよい。
【0110】
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′−ビス−(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリレート基を有する2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートの等が挙げられる。
【0111】
ヒンダードアミン系化合物の例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルー4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられる。
【0112】
その他の重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体等のヒンダードアミン類等があげられる。
【0113】
重合防止剤の添加量は、上記組成物の全固形分の質量に対して、約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で光重合性感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5%〜約10%が好ましい。
【0114】
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の塗布組成物には、上記した成分の他に、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」:日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0115】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0116】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。又、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0117】
また、支持体への接着性を向上させるために可塑剤を含有することができる。可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコール、ジメチルイソフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリンなどを挙げることができる。可塑剤の添加量は、上記塗布組成物の全固形分に対し好ましくは約0〜3質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0118】
また、上記塗布組成物は、本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することができる。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤である。
【0119】
また、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は上記塗布組成物の全固形分の10%以下が好ましい。
【0120】
(塗布)
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の塗布組成物を調製する際に使用する溶剤としては、例えば、アルコール類:sec−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール等;エーテル類:プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等;ケトン類、アルデヒド類:ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等;エステル類:乳酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル等;が好ましく挙げられる。
【0121】
調製された塗布組成物(感光層塗布液)は、従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、光重合性感光性平版印刷版材料を作製することができる。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることができる。
【0122】
感光層の乾燥温度は、60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜120℃の範囲にあることが、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0123】
(保護層)
本発明の光重合性感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の上側には、保護層を設けることが好ましい。該保護層(酸素遮断層)は、後述する現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましい。
【0124】
該保護層を構成する素材として好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等が挙げられる。これらの化合物を単独又は2種以上併用し保護層塗布組成物とし用いることができる。特に好ましい化合物としてはポリビニルアルコールが挙げられる。
【0125】
保護層塗布組成物を調製するには、上記の素材を適当な溶剤に溶解して塗布液とすることができ、この塗布液を本発明に係る光重合性感光層上に塗布し、乾燥して保護層を形成することができる。保護層の厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。
【0126】
保護層の塗布方法としても、上記感光層の塗布において挙げた公知の塗布方法を好適に用いることができる。保護層の乾燥温度は、感光層の乾燥温度よりも低い方が好ましく、好ましくは感光層乾燥温度との差が10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、上限はせいぜい50℃程度である。
【0127】
また、保護層の乾燥温度が、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。保護層の乾燥温度と、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)の差は20℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上であり、上限はせいぜい60℃程度である。
【0128】
(画像形成方法)
本発明の感光性平版印刷版材料はレーザー光源で露光を行う。レーザー光源としては、例えば、350〜450nmの波長の入手可能なレーザー光源としては以下のものを利用することができる。ガスレーザーとして、Arイオンレーザー(364nm、351nm)、Krイオンレーザー(356nm,351nm)、He−Cdレーザー(441nm)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組合わせ(355nm)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組合わせ(430nm)、半導体レーザー系として、KNbO3、リング共振器(430nm)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組合わせ(380nm〜450nm)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組合わせ(300nm〜350nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)、その他にパルスレーザーとしてN2レーザー(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)等が挙げられる。特にこの中でAlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm)が波長特性、コストの面で好適である。450nm〜700nmの入手可能な光源としてはAr+レーザ−(488nm)、YAG−SHGレーザー(532nm)、He−Neレーザー(633nm)、He−Cdレーザー、赤色半導体レーザー(650〜690nm)、及び700nm〜1200nmの入手可能な光源としては半導体レーザー(800〜850nm)、Nd−YAGレーザー(1064nm)が好適に利用できる。その他に超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、紫外のレーザランプ(ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーなど)、放射線としては電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線なども利用できるが、安価な点で上述の350nm以上のレーザー光源が好ましい。
【0129】
レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0130】
(加熱処理)
本発明では、画像露光後、画像形成反応の促進、感度や耐刷性の向上のため加熱処理が施されることが好ましい。加熱処理の方法は特に限定されないが画像形成面への非接触方式が好ましく、通常の恒温槽、熱風式乾燥機および加熱処理部を装着した市販の自動現像機を使用できる。加熱温度は版面温度で100〜130℃で行うことが本発明の効果奏する点でこのましい。
【0131】
本発明に利用可能な印刷機上で現像可能な感熱性層には主に親水性バインダー、マイクロカプセル、熱溶融性粒子、光熱変換剤で構成されている。
【0132】
{親水性バインダー}
本発明に好ましく用いられる親水性バインダーとしては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基などの親水基を有するものが好ましい。
【0133】
具体的な親水性バインダーとして、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそれらのNa塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
【0134】
これらの親水性バインダーのうち、25℃における10%水溶液が50cps〜1000cpsの粘度を有するが好ましい。
感熱層中に親水性ポリマーは、2〜40質量%含まれることが好ましく、3〜30質量%含まれることがさらに好ましい。
【0135】
{マイクロカプセル}
本発明の熱反応性基を有する親油性化合物(以下では、単に熱反応性化合物とも呼ぶ)を内包するマイクロカプセルは、熱反応性基を介してマイクロカプセル同士で反応できる構造としてもよいし、感熱層内に添加された親水性樹脂又は他の添加物として含有される低分子化合物と反応できる構造としてもよい。また2種類以上のマイクロカプセルに、互いに熱反応するような熱反応性基をそれぞれ持たせてマイクロカプセル同士を反応させることのできる構造としてもよい。
【0136】
本発明の熱反応性化合物を内包するマイクロカプセルは、マイクロカプセル内に熱反応性化合物を含有するマイクロカプセルの他に、熱反応性化合物をマイクロカプセルの外壁に導入したもの、及び、熱反応性をマイクロカプセル内に含有させると同時にマイクロカプセルの外壁に該化合物を導入したものも包含する。
【0137】
上記の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でも良いが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基及びそれら反応相手であるヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及びそれら反応相手であるアミノ基又はヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。以下、熱反応性官能基を有する親油性化合物についてより詳しく説明する。
【0138】
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などを少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を好適なものとして挙げられる。このような化合物群は当該産業分野において、光重合性又は熱重合性組成物用のモノマー又は架橋剤として広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定せずに用いることができる。化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体、オリゴマー、重合体もしくは共重合体、又はこれらの混合物である。
【0139】
本発明に好適なラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、特開2001−277740号公報に重合性不飽和基を有する化合物として記載の化合物が挙げられる。代表的な化合物例としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートとキシリレンジイソシアナートとの付加体、アリルメタクリレートの共重合体(例えば、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体など)などが挙げられる。しかし、これらの例に限定されない。
【0140】
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物として、特開2002−29162号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0141】
具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,2−ビス(ビニルオキシメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物又はそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジルもしくはメタクリ酸グリシジルの重合体又は共重合体等を挙げることができる。
好適な具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、ビスフェノール類もしくはポリフェノール類又はそれらの水素添加物のポリグリシジルエーテル、例えば水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等も好適なものとして挙げられる。更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等も好適なものとして挙げられる。
【0143】
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
【0144】
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、又は、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0145】
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
【0146】
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0147】
本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0148】
上記熱反応性基を有する親油性化合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号明細書、米国特許第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許第990443号明細書、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号公報、特公昭42−446号公報、特公昭42−711号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号明細書、米国特許第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号明細書、米国特許第4087376号明細書、米国特許第4089802号明細書にみられる尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、特公昭51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号明細書、英国特許第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがある。
【0149】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。
上記マイクロカプセル化法において、必要に応じて、マイクロカプセル液の保護コロイドが用いられる。保護コロイドとしては、天然又は合成の親水性ポリマー、例えば、ゼラチン、アラビアガム、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール等が用いられる。保護コロイドを用いる場合のその使用量は、マイクロカプセル分散液固形分の5〜20質量%が好ましい。これらの保護コロイドは、平版印刷版用原版の機上現像性を促進する作用を有する。
【0150】
本発明において、マイクロカプセルの粒径分布に2つのピークを持たせる方法としては、異なる粒径を持つマイクロカプセルをさらに濾紙などでフィルターリングして、粒径分布をシャープにした後、混合することで得られる。
上記マイクロカプセルの感熱層への添加量は、感熱層固形分の50質量%以上が好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。この範囲内で、良好な感度、耐刷性および印刷適性得られる。
【0151】
{熱溶融性粒子}
本発明の熱融着微粒子を構成する熱溶融性物質としては、融点が60℃以上150℃以下、溶融時の粘度が20cps以下の物質が好適に用いられる。
【0152】
具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪酸エステルワックス、フィッシャートロプシュワックス、アミドワックス、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂.クマリン−インデン樹脂などが利用できる。
【0153】
これらの内、特に脂肪酸エステルワックスのカルナバワックスは熱溶融時の粘度が低く、一方で常温時の硬度が高い為、レーザー露光感度、解像度および画像耐久性が優れており好ましい。
【0154】
熱溶融性物質を微粒子化する方法としては、公知の方法が利用でき、マクロカプセル化法が挙げられる。
【0155】
熱融着微粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、軟化点が40℃以上120℃以下、融点が60℃以上150℃以下のものが好適に用いられる。
【0156】
具体的にはポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、メチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリロニトリルなどを構成成分とした(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル類、ポリウレタン類などが挙げられる。
【0157】
これらの内、特に(メタ)アクリル酸エステル−スチレンの共重合体は熱溶融挙動(熱応答性)と硬度が高い点で、レーザー露光感度、解像度および画像耐久性が優れている。
熱可塑性樹脂を微粒子化する方法としては、公知の方法を利用することができ、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法などが挙げられる。
熱融着性粒子の平均粒径は、0.01〜2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0μmである。この範囲より小さいと、水現像性、印刷機上での湿し水及び/または印刷用インクを用いた現像性が劣化し、この範囲より大きいとレーザー露光感度の低下、画像耐久性の劣化が見られる。
【0158】
{光熱変換材}
本発明の感熱層には電磁波を吸収して熱を発生する変換光熱変換剤素材を含有することが好ましい。光熱変換剤としては赤外線吸収色素、顔料、金属、金属酸化物などが挙げられる。
【0159】
赤外吸収色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。
【0160】
具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号、同7−43851号、同7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0161】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。
【0162】
カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0163】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0164】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でもよい。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0165】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe34)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0166】
具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属を有する複合金属酸化物である。これらは特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号の各公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0167】
本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。但し、添加量に対する光熱変換能は粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。
【0168】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0169】
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素及び金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0170】
これらの光熱変換剤の画像形成層中の含有率は1〜20質量%が好ましい。
【実施例】
【0171】
以下実施例をあげて、本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらによって制限されるものではない。
【0172】
実施例1
サーマルレーザーで露光し、アルカリ現像液で画像形成可能な平版印刷版材料
<平版印刷版用支持体の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬して脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、1.5質量%の塩酸水溶液中で25℃、電流密度60A/dm2の条件下に交流電流により30秒間、電解粗面化を行った。
【0173】
その後、50℃に保たれた1%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、30%硫酸溶液中で、25℃、電流密度30A/dm2、電圧25Vの条件下に30秒間陽極酸化処理を行った。その後、85℃に加温された0.1%酢酸アンモニウム水溶液に120秒間浸漬し、封孔処理を行った。上記支持体を、0.30%のポリビニルホスホン酸水溶液に、90℃、30秒間ディップ処理を行い、次いで蒸留水で水洗し、25℃の冷風で乾燥し、平版印刷版用支持体Aを得た。
【0174】
上記方法と同様に、塩酸による電解粗面化条件、デスマット条件、封孔条件およびポリビニルホスホン酸濃度を種々変更し平版印刷版用支持体B〜Jを得た。
【0175】
得られた平版印刷版用支持体の表面を日立走査型電子顕微鏡S−5000Hにて、Pt−Pd;1nmコーティング、加速電圧5kV、傾斜角;0度、倍率100000倍にて撮影した。電子顕微鏡撮影像より、大きいおわん状構造である凹状構造を無作為に3点選出し、該凹状構造底面1μm2にある平均径10〜100nmの孔の数をカウントし、その平均値を求めた。
【0176】
平版印刷版用支持体表面の137〜144°のKα線(燐に対応するスペクトル)を波長分散型X線分析装置を用いて測定した。
【0177】
得られた平版印刷版用支持体A〜Jの製造条件、表面物性を表1に記載する。
【0178】
【表1】

【0179】
得られた平版印刷版用支持体に下記組成よりなる塗布液を作製し、ロールコータを用いて塗布し、100℃、2分間乾燥し、さらに50℃で24時間のエイジングを行い、平版印刷版材料1〜10を得た。
【0180】
m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量=5000)
9.1質量%
クリスタルバイオレット
0.2質量%
赤外線吸収色素(化合物1) 0.1質量%
2−メチルチオベンズイミダゾール 0.5質量%
1−メトキシ−2−プロパノール 60.0質量%
メタノール 30.0質量%
【0181】
【化1】

【0182】
得られた平版印刷版材料を露光器(Trendsetter、Creo社製)を用いて、露光(レーザパワー:10W、回転数:140rpm)し、自動現像機(PK−910、コダックポリクロームグラフィックス社製)および現像液(PD1、1:7希釈、コダックポリクロームグラフィックス社製)を用いて30℃で25秒間現像処理を行い、平版印刷版を得た。
【0183】
作製された平版印刷版を印刷機(DAIYA−E型;三菱重工社製)で、インキとしてハイユニティ紅(東洋インキ製造社製)、湿し水としてアストロマークII(日研化学研究所社製)2%水溶液を用いて印刷速度9000枚/hで印刷を行った。
【0184】
<印刷評価>
印刷中、平版印刷版への水の供給量を50枚おきに1%ずつ絞って行き、80%平網画像にカラミが生じる水量%を確認した。
5000枚印刷した後、平版印刷版をシリンダーに取り付けたまま12時間放置し、再度、印刷を行い、紙面上(面積720×520cm2)にある微点汚れの個数をカウントした。
【0185】
印刷を継続し、3%網点画像が1cm2辺り5点欠けるまでの枚数を耐刷枚数としてカウントした。
【0186】
<ケミカル耐性評価>
別途、上述の方法で製版された平版印刷版の3%画像部分をプレートクリーナ(プリスコΩ;サンケミカル社製)に浸漬し、網点画像が1cm2辺り5点欠けるまでの時間を計測した結果を表2に示す。
【0187】
【表2】

【0188】
上記のごとく、平版印刷版用支持体表面がおわん状形状を有し、該凹形状底面に存在する10〜100nm大の孔が適正に存在し、燐に対応するスペクトル強度が適正な数値の場合に、その平版印刷版材料は良好な印刷適性を有し、耐刷力およびケミカル耐性が良好であることが確認できる。
【0189】
実施例2
サーマルレーザーで画像書き込みし、印刷機上で現像可能な平版印刷版材料
画像形成層の作製
上記製造例で得た支持体上B,G,E,Iに、下記組成よりなる画像形成層塗布液をワイヤーバーで塗布し、オーブンで70℃、60秒の条件で乾燥し、画像形成層の乾燥塗布量1.0g/m2の平版印刷版用材料11、12、13、14を作製した。
【0190】
下記製造法によるマイクロカプセルの水分散液(固形分20%) 40質量部
ポリアクリル酸Na(Mw3万)の10%水溶液(粘度16cps) 20質量部
純水 40質量部
[マイクロカプセルの合成]
油相成分として、ビニルオキシ化合物(下記構造)4.5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)5g、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン製芳香族イソシアナートオリゴマー、マイクロカプセル壁材)3.75g、赤外線吸収色素(化合物2)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)製アニオン界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205((株)クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製エクセルオートホモジナイザー)を用いて、油相成分及び水相成分を10000rpmの回転数で30分間攪拌して乳化した。その後テトラエチレンペンタミン(5官能アミン、マイクロカプセル壁架橋剤)0.38gを水26gに溶解したものを添加し、水冷しながら30分さらに65℃で3時間攪拌した。得られたマイクロカプセル分散液を5μmの濾布でフィルター処理した後、水を加えて固形分を20質量%に調整した。得られたマイクロカプセルは平均粒径が0.07μmであった。
【0191】
【化2】

【0192】
このようにして得られた平版印刷版用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、版面エネルギー200mJ/cm2で、平網ステップチャートを含む画像を、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、三菱重工社製印刷機DAIYA1Fのシリンダーに取り付け、湿し水{アストロマーク3(日研化学研究所社製)の2%水溶液}を供給した後、インキ{ハイユニティ紅MZ(東洋インキ製造社製)}を供給し、さらに紙{OKトップコートプラス04.7g/m2(日本製紙社製)}を供給して印刷を行った。
【0193】
<印刷評価>
(イ)機上現像性評価
印刷刷出しから印刷物の非画像部分における反射濃度を測定し、その数値が0.09以下になるまでに要する枚数を機上現像性の早さとして評価した。
【0194】
(ロ)耐刷力
印刷を継続し、3%網点画像が1cm2辺り5点欠けるまでの枚数を耐刷枚数としてカウントした。
【0195】
平版印刷版材料11、12、13、14を55℃のドライサーモに3日間、安置したのち、上記と同様の評価を実施した。
【0196】
【表3】

【0197】
機上現像可能な平版印刷版材料において、上記のごとく、平版印刷版用支持体表面がおわん状形状を有し、該凹形状底面に存在する10〜100nm大の孔が適正に存在し、燐に対応するスペクトル強度が適正な数値の場合に、その平版印刷版材料はサーモ処理の有無に関わらず、安定した耐刷力と機上現像性を示すことが確認できる。
【0198】
実施例3
FD−YAGレーザー光源(532nm)対応フォトポリマータイプ平版印刷版材料
前記支持体A,D、H、Jに、下記組成の光重合性感光層塗布液を乾燥時1.6g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥した。その後、更に該感光層上に、下記組成の保護層塗布液を乾燥時1.7g/m2になるようにアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上に保護層を有する光重合性感光性平版印刷版材料を作製した。
【0199】
(光重合性感光層塗布液)
高分子結合剤B−1 40.0部
増感色素D−1、D−2を1:1(下記) 3.0部
光重合開始剤η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート 4.0部
付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合含有単量体M−3(前記) 40.0部
付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合含有単量体
NKエステル4G(新中村化学社製ポリエチレングリコールジメタクリレート) 15.0部
ヒンダードアミン系化合物(LS−770:三共社製) 0.1部
トリハロアルキル化合物E−1(化合物5;下記) 1.0部
フタロシアニン顔料(MHI454:御国色素社製) 4.0部
弗素系界面活性剤(F178K:大日本インキ化学工業社製) 0.5部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 820部
【0200】
【化3】

【0201】
(高分子結合材B−1の合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メチルメタクリレート(125部:1.25モル)、エチルメタクリレート(12部:0.10モル)、メタクリル酸(63部:0.73モル)、シクロヘキサノン(240部)、イソプロピルアルコール(160部)及びα,α′−アゾビスイソブチロニトリル(5部)を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させて高分子重合体を得た。その後、該重合体に、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド4部及びグリシジルメタクリレート(52部:0.73モル)を加えて、温度25℃で3時間反応させて高分子結合剤B−1を得た。重量平均分子量は約55,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
【0202】
(保護層塗布液)
ポリビニルアルコール(GL−05:日本合成化学社製) 84部
ポリビニルピロリドン(K−30:ISPジャパン社製) 15部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5部
水 900部
(画像形成)
このようにして作製した光重合性感光性平版印刷版材料について、FD−YAGレーザー光源を搭載したCTP露光装置(Tigercat:ECRM社製)を用いて2400dpi(dpiとは1インチ即ち2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で175線の画像を200μJ/cm2で露光を行った。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。次いで、現像前に、加熱装置部、保護層を除去する前水洗部、下記現像液組成を充填した現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のためのガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)を備えたCTP自動現像機(PHW23−V:Technigraph社製)で現像処理を行い、平版印刷版15〜18を得た。このとき加熱装置部は、版面温度115℃、版滞在時間15秒となるように設定した。また露光終了から自現機の加熱装置部への版挿入は30秒以内に行った。
【0203】
現像液組成(下記添加剤を含有する水溶液)
珪酸カリウム水溶液(SiO2:26%、K2O:13.5%) 40.0g/L
水酸化カリウム 4.0g/L
エチレンジアミンテトラ酢酸 0.5g/L
ポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテルスルホン酸塩 20.0g/L
水にて1Lとした。pHは12.3であった。
【0204】
<印刷評価>
印刷中、平版印刷版への水の供給量を50枚おきに1%ずつ絞って行き、80%平網画像にカラミが生じる水量%を確認した。
【0205】
5000枚印刷した後、平版印刷版をシリンダーに取り付けたまま12時間放置し、再度、印刷を行い、紙面上(面積720×520cm2)にある微点汚れの個数をカウントした。
【0206】
印刷を継続し、3%網点画像が1cm2辺り5点欠けるまでの枚数を耐刷枚数としてカウントした。
【0207】
平版印刷版材料15〜18を完全に遮光して包装し、55℃のドライサーモに3日間、安置したのち、上記と同様の評価を実施した。
【0208】
結果を表4に示す。
【0209】
Violett光源対応フォトポリマータイプ平版印刷版材料
上記製造例で得た支持体上B,G,E,Iに、下記組成の光重合性感光層塗布液を乾燥時1.9g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥した。その後、更に該感光層上に、前記組成の保護層塗布液を乾燥時1.7g/m2になるようにアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上に保護層を有する光重合性感光性平版印刷版材料を作製した。
【0210】
(光重合性感光層塗布液)
高分子結合剤B−1(前記) 40.0部
光重合開始剤 η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート 3.0部
増感色素、D−3(化合物6)とD−4(化合物7)を1:1(下記) 4.0部
付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合含有単量体 M−3(前記) 40.0部
付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合含有単量体
NKエステル4G(新中村化学社製ポリエチレングリコールジメタクリレート)
7.0部
カチオン重合可能な基を有する化合物C−1(化合物8;下記) 8.0部
ヒンダードアミン系化合物(LS−770:三共社製) 0.1部
トリハロアルキル化合物 E−1(前記) 5.0部
フタロシアニン顔料(MHI454:御国色素社製) 7.0部
弗素系界面活性剤(F178K:大日本インキ化学工業社製) 0.5部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 820部
化合物6(D−3)
【0211】
【化4】

【0212】
(画像形成)
このようにして作製した光重合性感光性平版印刷版材料について、408nm、30mW出力のレーザーを備えた光源を備えたプレートセッター(タイガーキャット:ECRM社製改造品)を用いて2400dpi(dpiとは1インチ即ち2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で175線の画像を50μJ/cm2で露光を行った。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。次いで、現像前に、加熱装置部、保護層を除去する前水洗部、前記現像液組成を充填した現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のためのガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)を備えたCTP自動現像機(PHW23−V:Technigraph社製)で現像処理を行い、平版印刷版19〜22を得た。このとき加熱装置部は、版面温度115℃、版滞在時間15秒となるように設定した。また露光終了から自現機の加熱装置部への版挿入は30秒以内に行った。
【0213】
平版印刷版材料19〜22を完全に遮光して包装し、55℃のドライサーモに3日間、安置したのち、上記と同様の印刷評価を実施した。
【0214】
結果を表4に示す。
【0215】
【表4】

【0216】
FD−YAGレーザー光源(532nm)対応フォトポリマータイプ平版印刷版材料、Violett光源対応フォトポリマータイプ平版印刷版材料平版印刷版材料において、上記のごとく、平版印刷版用支持体表面がおわん状形状を有し、該凹形状底面に存在する10〜100nm大の孔が適正に存在し、燐に対応するスペクトル強度が適正な数値の場合に、その平版印刷版材料はサーモ処理の有無に関わらず、安定した印刷適性、耐汚れ性、耐刷力を示すことが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、該支持体の感光性層もしくは感熱性層塗設面が下記a.b.の用件を満たすことを特徴とする平版印刷版材料。
a.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり50〜1000個有する。
b.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が10〜25Kcpsである。
【請求項2】
支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、前記支持体の感光性層もしくは感熱性層塗設面が下記c.d.の用件を満たすことを特徴とする請求項1に項記載の平版印刷版材料。
c.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり200〜500個有する。
d.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が10〜2cpsである。
【請求項3】
支持体上に感光性層もしくは感熱性層が塗設された平版印刷版材料であって、前記支持体の感光性層もしくは感熱性層塗設面が下記用件e.f.を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版材料。
e.感光性層もしくは感熱性層を塗設された面におわん状の凹部を有し、該凹部の底f.面に平均径10nm〜100nmの孔を1μm2当たり250〜350個有する。
f.前記支持体上の表面の波長分散型X線測定による燐によるピーク強度が12〜15Kcpsである
【請求項4】
前記支持体が燐酸でんぷん、ポリビニルホスホン酸のうち少なくとも1種の樹脂で親水化処理がなされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の平版印刷版材料。
【請求項5】
前記1〜4の何れか1項に記載の平版印刷版材料を印刷機上にて湿し水、インクの少なくとも1種で現像処理することを特徴とする平版印刷版の作製方法。

【公開番号】特開2008−44140(P2008−44140A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219497(P2006−219497)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】