幾何学的タイヤ測定値のデータ品質を向上させるフィルタリング処理方法
タイヤ測定システムが生のタイヤ測定データ及び変換タイヤ測定データ(例えば、測定された半径方向又は側方回転振れ値のデータセット)をストレージする種々のメモリ/メディア要素並びにコンピュータ実行可能命令の形態をしたソフトウェアを搭載したコンピュータを含み、コンピュータ実行可能命令をプロセッサによって実行し、それにより、得られたデータセットに含まれていて、隣り合う測定値を超えて突き出ている選択された回転振れ値をフィルタリング処理し、フィルタリング処理済み回転振れ値のうちで、かかる値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたフィルタリング処理済み回転振れ値を識別し、凸包上に位置する回転振れ値のうちの識別された選択回転振れ値の補間を実行してフィルタリング処理済み回転振れ測定値の最終データセットを得る。逆データセットに対して同様なステップを実行してサイドウォール変形特徴部、例えばサイドウォール窪みを一層適切に検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、幾何学的タイヤ測定値のデータ品質を向上させるフィルタリング処理方法に関する。特に、タイヤパラメータデータの自動フィルタリング処理を行ってタイヤ又は関連の取り付け環境における幾何学的特徴部、例えばトレッド溝、トレッド隆起部、トレッドフラッシング等を排除するための技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造中とタイヤ試験中の両方においてタイヤと関連した種々の幾何学的特徴部及び性能パラメータを測定することが望ましい場合が多い。回転中におけるタイヤの幾何学的特性(かかる特性としては、例えば回転振れ、重量アンバランス及びユニフォーミティ測定値が挙げられるが、これらには限定されない)の測定は、高速走行速度と低速走行速度の両方における車両振動の潜在的な原因を識別するのに役立つよう利用可能である場合が多い。タイヤと関連した幾何学的測定値はまた、タイヤの寿命全体にわたりトレッド摩耗等のような現象を特徴付けるのを助けることができる。追加の測定値、例えば横方向回転振れ又はサイドウォール変形は、起こり得る継ぎ目の開き又はタイヤ内での本体プライコードの欠けの一因となりうる例えば外方突出部又は膨らみのような条件並びに潜在的にオーバーラップ量が多すぎるタイヤ継ぎ目に起因して生じる場合のある内向きの窪み又は凹みを識別してこれらを制御するために使用できる。
【0003】
従来型測定方法の中には、幾何学的タイヤ測定値を得るために接触センサを採用しているものがあり、かかる幾何学的タイヤ測定値としては、半径方向及び横方向回転振れ測定値が挙げられるが、これらには限定されない。例えば、サイドウォール変形は、通常、タイヤのサイドウォール又はショルダ場所又は部位に沿って形成される「クリアーパス(clear path)」又は実質的に滑らかな表面に沿って設けられた接触センサで測定されている。しかしながら、サイドウォール及び/又はショルダ表面に沿ってトレッド特徴部を備えたオフロード用タイヤの設計では、クリアーパスについて取り得る場所が制限され又は存在しない。タイヤクラウンに沿って形成されるトレッド特徴部及び他の構造要素については、半径方向測定値を得るための接触センサを用いることができない。したがって、非接触センサ、例えばレーザセンサ及び関連の測定機器を用いて幾何学的タイヤ測定値を得る場合がある。しかしながら、次に行うデータ処理の際にトレッド特徴部その他の存在を考慮に入れるよう得られた測定値をどのように分析するかが最善であるかについての要望が依然として存在する。
【0004】
幾何学的タイヤ測定値のデータセットを効果的に分析するためには、得られた測定値データには異常があってはならない。一般に、タイヤは、半径方向周囲(例えば、タイヤクラウン場所)、横方向周囲(例えば、タイヤサイドウォール場所)、タイヤショルダ場所等に沿って実質的に一様な軌道を有するものとして幾何学的にモデル化される場合がある。しかしながら、幾何学的測定値が或る特定のタイヤ特徴部、例えばトレッド隆起部及び溝、タイヤフラッシング及びタイヤクラウン、ショルダ及び/又はサイドウォール場所に沿って生じる場合のある他の幾何学的特徴部に対して得られる場合、データ異常がかかる一様な表面モデル中に入り込む場合がある。加うるに、データ異常は、非接触測定機器によって稀に生じる誤差又はオーバーシュートのために1組の幾何学的測定値(以下、「組」を「セット」に置き換えて表現する場合があり、したがって、この場合、「1つの幾何学的測定値セット」とのように表現することがある)に偶発的に入り込む場合がある。
【0005】
タイヤパラメータ及び関連の条件の次の分析を最も効果的に実施するためにタイヤ測定値データの異常のない完全なデータセットを得る必要性に照らして、幾何学的タイヤ測定値データの品質を向上させるために測定後処理技術を実施することが望ましい。データフィルタリング処理のための公知の技術が開発されたが、一般に、本発明の技術に従って以下に提供される所望の特性の全てを含む設計例は現われていない。
【発明の概要】
【0006】
先行技術で見受けられると共に本発明によって取り組まれる認識されている特徴を考慮して、タイヤのクラウン、サイドウォール及び/又はショルダ場所に沿って位置する幾何学的特徴部、例えばフラッシング、トレッド隆起部、トレッド溝等(これらには限定されない)をなくすことにより測定されたタイヤパラメータ(例えば、半径方向及び横方向回転振れ)を自動的にフィルタリング処理してタイヤをより正確にモデル化するための改良型装置及び方法が提供される。
【0007】
本発明の例示の一実施形態は、タイヤに関する幾何学的パラメータを処理する方法に関する。かかる方法は、種々のステップを有するのが良く、かかるステップは、タイヤの表面を測定して所与のタイヤに対するそれぞれの角度位置のところでの複数のパラメータ値から成る幾何学的測定値のデータセットを得るステップ及び次にデータ条件付け及び/又はフィルタリング処理を生のデータ測定値に適用するステップを含む。特に、データフィルタリング処理は、得られたデータセットに含まれていて、隣り合う値よりも大きな大きさを持つ選択されたパラメータ値を電子的にフィルタリング処理するステップ、フィルタリング処理されたパラメータ値のうちで、値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたフィルタリング処理済みパラメータ値を電子的に識別するステップ及び/又はフィルタリング処理されたパラメータ値のうちで、凸包上に位置する識別された選択フィルタリング処理済みパラメータ値を電子的に補間して(例えば、直線補間、スプライン補間、充填補間又は他の補間法によって)フィルタリング処理済み回転振れ測定値の最終データセットを得るステップを含むのが良い。
【0008】
上述の技術の或る幾つかの特定の実施形態では、タイヤの測定される表面は、タイヤのサイドウォール又はショルダに沿う少なくとも1つの場所を含み、この方法は、フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを電子的に分析してサイドウォール突出部及びサイドウォール窪みのうちの1つ又は2つ以上の形態をしたサイドウォール変形特性を識別するステップを更に有する。サイドウォール窪みの識別は、フィルタリング処理前に当初の条件付きデータセットを反転させ、次にこのデータを再反転させることにより判定されるのが良い。上述の技術の他の特定の実施形態では、タイヤの測定される表面は、タイヤのクラウンに沿う少なくとも1つの場所を含み、この方法は、フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを複数の調和成分に分解するステップを更に有する。
【0009】
上述の方法の更に特定の例示の実施形態では、パラメータ値のうちで、値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたパラメータ値を電子的に識別するステップは、具体的には、第1及び第2の互いに直交する方向で測定された各パラメータ値を所与のタイヤの表面に沿う曲率場所で表される表面値に変換するステップを含む。かかる変換では、各パラメータ値を回転振れ測定値のデータセット中の各角度位置θnのところで或る所定の整数値Nについて回転振れ値un(n=1,2,3,...,N)であると見なすことができ、かかる値を次の方程式、即ち、Rnx=(R0+un)cosθn及びRnz=(R0+un)sinθnにより定められる第1及び第2の量Rnx及びRnzにより表わされた2次元形態に変換するのが良い。或る実施形態(半径方向回転振れ測定値)に関し、R0は、測定されたタイヤと関連した公称半径を表わしている。他の実施形態(例えば、横方向回転振れ測定値)に関し、R0は、タイヤ半径に関して選択された一定値を表わしている。
【0010】
種々の方法に加えて、本発明は、均等例として、タイヤ測定システムに採用可能な種々のハードウェア及び/又はソフトウェアコンポーネントを含む関連システムに関することは理解されるべきである。例示の一実施形態では、本発明は、1つ又は2つ以上の所定の速度で回転する所与のタイヤと関連した回転振れを測定して処理するためのタイヤ測定システムに関する。かかる測定機械は、一般に、2つの互いに異なる形式のハードウェアコンポーネント、即ち、測定コンポーネント及び測定後処理コンポーネントを含むのが良い。
【0011】
特定のタイヤ測定システムの測定コンポーネントは、所与のタイヤを確実に受け入れてこのタイヤを1つ又は2つ以上の所定の速度で回転させるようになった測定機械を含むのが良い。少なくとも1つのセンサ、例えばレーザ変位センサ(これには限定されない)が、タイヤの半径方向及び/又は横方向周囲に沿う1つ又は2つ以上の軌道のところでタイヤ表面を測定するために横方向及び/又は半径方向に沿って調節可能に所与のタイヤに対して位置決めされている。かかるセンサは、レーザからのタイヤの変位を測定し、この変位を用いると、タイヤ表面上における基準点(即ち、指標パルス)に対するそれぞれの角度位置における半径方向又は横方向回転振れ値を直接計算することができる。
【0012】
追加の測定ハードウェアは、例えば光学エンコーダやデータ収集装置のようなモジュラーコンポーネントを含むのが良い。光学エンコーダは、測定機械に結合されるのが良く、かかる光学エンコーダは、タイヤ1回転当たりの複数のデータ点を定めるようになった制御信号をもたらしたりデータを所与のタイヤ上の基準点に同期させるための1回転当たり1回の指標パルスを提供するようになった制御信号をもたらしたりするための少なくとも1つのそれぞれの第1及び第2のデータチャネルを有するのが良い。データ収集装置もまた、受け取ったセンサ測定値をアナログからディジタルフォーマットに変換して変換された回転振れ測定値をメモリにストレージするために測定機械に結合されるのが良い。
【0013】
例示の一実施形態では、タイヤ測定システムの処理コンポーネントは、測定値をストレージするようになった第1のメモリ/メディア要素を含み、各測定値は、所与のタイヤに対する角度位置で得られた幾何学的パラメータ値に対応し、処理コンポーネントは、コンピュータにより実行可能な命令の形態をしたソフトウェアをストレージするようになった第2のメモリ/メディア要素と、第1及び第2のメモリに結合されていて、第2のメモリにストレージされているコンピュータ実行可能命令を選択的に実行して第1のメモリにストレージされている測定値を処理するよう構成された少なくとも1つのプロセッサとを更に含む。また、ユーザに提供すべき出力データをストレージし又は次の処理又はフィードバック制御を行うための第3のメモリ/メディア要素が設けられるのが良い。
【0014】
上述のタイヤ測定システムの特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、幾何学的パラメータ値のうちで、値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値を識別する機能及び幾何学的パラメータ値のうちで、凸包上に位置する識別された選択幾何学的パラメータ値を補間する機能を実行することによってメモリにストレージされた生の回転振れ測定値を処理するためにメモリにストレージされたコンピュータ実行可能命令を実行する。追加の機能は、選択的に、各所与の角度位置における多数回のタイヤ回転にわたって測定パラメータ値を平均化する機能、得られたデータセットに含まれていて、隣り合う値よりも大きな値を持つ選択されたパラメータ値をフィルタリング処理する機能、複数のパラメータ値を2次元形態に変換する機能、フィルタリング処理の前後でデータセットを反転させる機能及びフィルタリング処理された測定値の最終データセットを複数の調和成分に分解する機能に対応するのが良い。
【0015】
必ずしも発明の概要の項に記載されていない本発明の追加の実施形態は、上述の発明の概要に記載された実施形態について記載された特徴、コンポーネント又はステップ及び/又はその他の場合において本明細書において説明した他の特徴、コンポーネント又はステップの観点の種々の組み合わせを含むと共にこれらを利用することができる。当業者であれば、本明細書の残部の検討時にかかる実施形態その他の特徴及び観点を良好に理解されよう。
【0016】
当業者向きの本発明の十分且つ実施可能な開示(発明の最適実施態様を含む)が本明細書に記載されており、本明細書は、添付の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のタイヤ測定システムの例示のハードウェアコンポーネント(種々の例示の測定コンポーネント並びに測定後コンピュータ処理コンポーネントを含む)のブロック図である。
【図2A】幾何学的タイヤ性能パラメータ、例えば半径方向回転振れを測定してこれを処理する方法における例示のステップ及び特徴の流れ図である。
【図2B】幾何学的タイヤ性能パラメータ、例えば横方向回転振れを測定してこれを処理する第1の方法における例示のステップ及び特徴の流れ図である。
【図2C】幾何学的タイヤ性能パラメータ、例えば横方向回転振れを測定してこれを処理する第2の方法における例示のステップ及び特徴の流れ図である。
【図3】公知のメディアンフィルタ及び移動平均フィルタ技術に従って測定後処理を適用した状態で表わされたタイヤの半径方向回転振れ測定値(u)と角度位置(θ)の捕捉データセットのグラフ図である。
【図4A】メディアンフィルタ技術及び移動平均フィルタ技術を用いたウィンドウサイズの関数としてのフィルタリング処理回転振れ大きさと実際の回転振れ大きさの比のグラフ図である。
【図4B】メディアンフィルタ技術及び移動平均フィルタ技術を用いたウィンドウサイズの関数としての回転振れ測定値の位相角の差(Δθ)のグラフ図である。
【図5A】或る特定のタイヤパラメータを幾何学的にモデル化するための例示の半径方向(r)及び横方向(l)を示すタイヤの斜視図である。
【図5B】或る特定のタイヤパラメータを幾何学的にモデル化するための例示の第1及び第2の直交寸法及び関連の測定基準を示すタイヤの半径方向周囲の平面図である。
【図6A】本発明の例示の実施形態に従って種々の角度位置(θ)で得られた半径方向表面測定値(R)の例示のデータセットのグラフ図である。
【図6B】本発明の例示の実施形態に従って角度位置(θ)で1次元方向に表わされた初期回転振れ測定値(u)の例示のデータセットのグラフ図である。
【図6C】例えばトレッドフラッシング等の存在に起因して生じる場合のある上方データスパイクを含む角度位置で1次元方向に表わされた初期回転振れ測定値の例示のデータセットのグラフ図である。
【図6D】本発明の例示の実施形態によるエロージョン前置フィルタの適用後における図6Cの例示のデータセットの観点のグラフ図である。
【図7】特に無限引き伸ばし状態から弛緩している弾性バンドが平衡状態において載る点として示されている本発明の例示の実施形態に用いられる例示の凸包アルゴリズムを概念化したグラフ図である。
【図8A】2次元回転振れ測定値の例示のデータセットのグラフ図であり、選択されたデータ点が本発明の例示の実施形態に従ってかかるデータ点と関連した凸包上に位置しているものとして識別されている状態を示す図である。
【図8B】本発明の例示の実施形態に従って図8Aの凸包上に位置している選択的に識別された2次元回転振れ測定値の1次元補間を実施した後における例示のフィルタリング処理済みデータセットのグラフ図である。
【図9】本発明の例示の実施形態による横方向回転振れ測定値の例示のデータセットのグラフ図である。
【図10】本発明の例示の実施形態によるエロージョン前置フィルタの適用後における図9の例示のデータセットのグラフ図である。
【図11】本発明の例示の実施形態による凸包処理の適用後における図10の例示のデータセットのグラフ図である。
【図12】本発明の例示の実施形態による補間の適用後における図11の例示のデータセットのグラフ図である。
【図13】本発明の例示の実施形態によるデータ反転後における図9の例示のデータセットのグラフ図である。
【図14】本発明の例示の実施形態によるエロージョン前置フィルタの適用後における図13の例示のデータセットのグラフ図である。
【図15】本発明の例示の実施形態による凸包処理の適用後における図14の例示のデータセットのグラフ図である。
【図16】本発明の例示の実施形態による補間の適用後における図15の例示のデータセットのグラフ図である。
【図17】本発明の例示の実施形態によるデータ再反転の適用後における図16の例示のデータセットのグラフ図である。
【図18】図12及び図17の第1及び第2のフィルタリング処理済みデータセットと共に図9の例示のデータセットを示すグラフ図であり、底部及び頂部トレースと測定値データの初期セットの比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び添付の図面全体において参照符号を繰り返し用いていることは、本発明の同一又は類似の特徴、要素又はステップを表わすことを意図している。
【0019】
発明の概要の項に記載したように、本発明は、一般に、回転物体(例えば、タイヤ)の表面を測定する際に得られたデータ測定値の品質を向上させるシステム及び方法に関する。特に、データ品質は、タイヤと関連した幾何学的特徴又は他のデータ異常をフィルタリング処理することにより向上可能である。本明細書において開示する実施形態のうちの幾つかは、特定の幾何学的タイヤ測定値、例えば回転振れと関連したかかるフィルタリング処理ステップ及び特徴の説明に関するが、現時点において開示する技術は、一般に、任意の幾何学的測定値セットのデータ品質の向上に利用できることは理解されるべきである。
【0020】
開示する技術の観点の選択された組み合わせは、本発明の複数の互いに異なる実施形態に対応している。注目されるべきこととして、本明細書において提供されると共に説明する例示の実施形態の各々は、本発明の内容の限定を示唆するものではない。一実施形態の一部として図示され又は説明される特徴又はステップは、別の実施形態の観点と組み合わせて利用でき、それにより、更に別の実施形態が得られる。加うるに、或る特定の特徴は、同一又は実質的に同一の機能を実行する明示されてはいない類似の装置又は特徴と交換可能である。
【0021】
本明細書において説明する技術は、プロセッサ、サーバ、メモリ、データベース、ソフトウェアアプリケーション及び/又は他のコンピュータ利用システム並びに行われる行為及びかかるシステムに送受される情報に関する。コンピュータにより実行されるプロセスは、単一のサーバ若しくはプロセッサ又は組み合わせて働く多数のかかる要素を用いて実行可能である。データベース及び他のメモリ/メディア要素及びアプリケーションは、単一システム又は分散型の多数のシステムで実行可能である。分散型コンポーネントは、シリアルに又はパラレルに動作することができる。データは、システムコンポーネント相互間で直接的又は間接的に伝送可能であり、データはまた、ハードワイヤード及び/又はワイヤレス通信リンクの任意の組み合わせにより利用される1つ又は2つ以上のネットワーク、例えば、ダイアルインネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、インターネット、イントラネット又はイーサネット(Ethernet(登録商標))型のネットワークその他により伝送可能である。
【0022】
次に図面を参照し、初期幾何学的タイヤ測定値を得るために用いられる例示のハードウェアコンポーネント並びに測定後処理技術の実施に関する概要説明を図1に基づいて説明する。次に、本発明の特定の処理/フィルタリング処理方法を図1のハードウェアコンポーネントに関する追加の詳細を提供する前に残りの図を参照して詳細に説明する。かかる説明は、一般に、種々の形式の半径方向回転振れ(RRO)測定値(即ち、一般にタイヤトレッド場所又は部位に沿って測定された回転振れデータ)及び/又は横方向回転振れ(LRO)測定値(即ち、一般にタイヤショルダ又はサイドウォール場所又は部位に沿って測定された回転振れデータ)に関する。ただし、開示するフィルタリング処理及び他の測定後処理技術をトレッド摩耗測定値(これには限定されない)を含む他の幾何学的タイヤ測定値にも適用することが可能な場合がある。
【0023】
次に図1を参照すると、本発明に従ってタイヤ測定値を得るために、タイヤ10が測定機械12内において取り付け具に取り付けられていて、1つ又は2つ以上の所定の速度で遠心力の作用で回転する。回転振れ測定が望ましい場合、変速型半径方向又は横方向回転振れ測定機械として作動するよう構成されるのが良い。一実施形態では、測定機械12は、一般に、例えばベース14、取り付けアーム16及び取り付け具18のような例示の特徴部を有するのが良い。取り付け具18は、タイヤリムとほぼ同じ品質を有するハブ又は中心線20回りに遠心力の作用で回転するよう構成された他の剛性ディスクとして働く。図1に示された測定装置は、タイヤ取り付け及びタイヤが路面に沿ってどのように回転するかに関してほぼ同一の実質的に垂直方向の回転に対応するものとして示されているが、取り付けに関する他の向き又は配向状態の採用が可能であることは理解されるべきである。例えば、タイヤ及び関連測定機器は、変形例として、実質的に水平の形態のタイヤ回転に対応するよう設置されても良い。
【0024】
依然として図1の測定機械を参照すると、1つ又は2つ以上のセンサ22がタイヤ10に対して位置決めされている。センサ22は、タイヤが中心線20回りに回転しているときにタイヤ表面の位置を求めるためにタイヤ10に対して接触、非接触又は近接位置決め状態により動作するのが良い。一実施形態では、センサ22は、非接触型レーザセンサである。図1は、タイヤ10に対する複数の測定軌道に沿って多数の測定データセットを得ることを目的とする3つのセンサ22を示している。これよりも少ない又はこれよりも多い数のセンサを採用しても良いことは理解されるべきである。さらに、タイヤ10かセンサ22かのいずれかは、互いに対して異なる配置場所で構成されても良いことは理解されるべきである。図1は、タイヤ10のタイヤクラウン場所に対して位置決めされたセンサ22を示しているが、センサ22及び関連ハードウェアは、他のタイヤ表面を測定するようタイヤサイドウォール又はショルダ場所に対して位置決めされても良い。
【0025】
測定機械12及びレーザセンサ22は、追加のハードウェアコンポーネントとインターフェイスが取られており、かかる追加のハードウェアコンポーネントとしては、光学エンコーダ34、データ収集装置36及びタイヤパラメータをひとまとめに測定して生データを得るための他の関連モジュールが挙げられる。一般に、光学エンコーダ34は、タイヤの周面場所回りの複数のデータ点のところでの幾何学的測定値を統合するのを助ける。これは、複数のデータ点(例えば、タイヤ周囲回りの互いに異なる角度位置のところの2048個のデータ点)を定める制御信号及びデータを測定されたタイヤ上の基準点に同期させる1回転当たり1つの指標パルスをもたらす別の制御信号を提供することによって達成できる。一般に、データ収集装置は、センサ22から得られた測定値をアナログからディジタルフォーマットに変換し、変換された回転振れ測定値を記憶装置にストレージする。
【0026】
得られたタイヤ測定値は、最終的には、測定後処理及びフィルタリング処理のためにコンピュータ42に提供される。コンピュータ42は、タイヤパラメータの生の測定値を含む入力データを受け取り、かかる測定値を処理すると共にフィルタリング処理し、そして、利用可能な出力、例えばデータをユーザに提供し又は信号をプロセスコントローラに提供するよう構成された1つ又は2つ以上のプロセッサ44を搭載しているのが良い。かかるコンピュータ計算/処理装置は、メモリ/メディア要素48のうちの1つ又は2つ以上にストレージされたコンピュータ可読形態にされているソフトウェア命令にアクセスすることにより所望の機能を提供するよう構成されているのが良い。ソフトウェアが用いられる場合、本明細書に記載される教示を具体化するために任意適当なプログラミング、スクリプティング又は他形式の言語又は言語の組み合わせを用いることができる。他の実施形態では、本明細書において開示する方法は、変形例として、ハードワイヤード論理又は他の回路により実施されても良く、かかる回路としては、特定用途向け回路が挙げられるが、これには限定されない。
【0027】
次に図2A、図2B及び図2Cを参照して、図1のハードウェアコンポーネントにより実行される種々のステップ及び機能についての追加の説明を行う。図2Aは、半径方向回転振れ測定値の処理及び分析中に採用可能な例示のステップを示し、図6A〜図8Bは、かかるプロセスの一例を様々に記載している。図2B及び図2Cは、横方向回転振れ測定値の処理及び分析中に採用可能な例示のステップを示している。図2Bは、サイドウォール膨らみを検出するために望ましい場合のある測定データ(即ち、トレッド隆起部場所に沿って測定されたデータ点)の頂部トレースを分析するために使用可能なステップを記載している。図2Cは、サイドウォール窪みを検出するために望ましい場合のある測定データ(即ち、トレッド溝場所に沿って測定されたデータ点)の底部トレースを分析するために使用可能なステップを記載している。図9〜図12は、図2Bに記載されたプロセスの一例を様々に記載しており、図9及び図13〜図17は、図2Cに記載されたプロセスの一例を様々に記載している。回転振れ測定値がタイヤクラウンに沿って得られるか(即ち、半径方向回転振れ測定値)又はタイヤサイドウォール若しくはショルダに沿って得られるか(即ち、横方向回転振れ測定値)とは無関係に、同一の処理及びフィルタリング処理ステップのうちの多くが実施される。したがって、かかる類似した特徴又はステップを示すために類似の参照符号を用いることにする。
【0028】
次に図2Aを参照すると、第1ステップ200では、一般に、所与のタイヤ又は1組のタイヤと関連した生データ測定値(例えば、図1の測定装置12によって得られる)を得る。一例では、タイヤを一般に高い速度で、例えば、典型的な高速道路速度に対応した速度で回転させる。本発明の目的上、種々の測定値を得て分析する「高速」は、少なくとも約600rpm(約10Hz)の回転速度に相当している。他の例では、かかる比較的高い回転速度は、10Hz〜30Hz(1800rpm)又はこれ以上(例えば、特定の一実施形態では800rpm)である。さらに別の例では、タイヤを約10Hz(600rpm)以下の「低速」で回転させるのが良い。測定値の各セットは、タイヤの表面に沿う1つ又は2つ以上の軌道のところの測定値を含むのがよいことは理解されるべきである。一例では、2つ〜5つの互いに異なる軌道の範囲が全体として良好なタイヤ予測をもたらすために用いられる。
【0029】
ステップ200における測定品質を高めようとして、多数のオプションとしての品質管理ステップを実施するのが良い。例えば、測定タイヤを或る特定の最小時間で安定化された位置に設け、その後測定機械に設置してこれによって測定することが好ましい場合がある。タイヤを平坦な表面上にしばらくの間寝かせておくことは、タイヤ貯蔵に起因する歪み、例えば、タイヤがタイヤラックからのパイプ上に載ることによって生じる窪みを最小限に抑え又はなくすのに役立つ場合がある。取り付け具18と関連したリム及びラグ用穴は、好ましくは、タイヤ取り付け前においては清浄であり且つ潤滑油が塗られており、しかも取り付けハンプなしである。測定システム内の電子モジュール、例えばレーザセンサ22の適正なウォームアップを実施するのが良い。取り付け具18と関連したリム上に測定タイヤを良好に着座させるのを助けるために測定機械12の遠心機部分もまた、当初、測定なしで、所定の時間の間、或る特定の高い速度で作動させるのが良い。互いに異なる速度での且つ互いに異なる測定タイヤに関するタイヤ測定相互間に時間遅延を設けることが望ましい場合がある。さらに、測定データを得る前に、初期較正データを得て、これを用いて例えばグレーディング、ソーティング、タイヤ修整又はプロセス調整のようなプロセス最終結果を実行するのが良い。本発明のフィルタリング処理技術は、測定データ又はかかる初期較正データに利用可能である。
【0030】
上述したように、本発明の実施形態に従って得ることができる例示の1つの幾何学的タイヤ測定値は、半径方向回転振れに対応している。タイヤ900の横方向(l)及び半径方向(r)を示している図5Aを参照すると、測定システムにより得られ又は求められた半径方向回転振れ値は、一般に、かかる図に示された半径方向(r)で得られることが理解されるべきである。別の例示の幾何学的タイヤ測定値は、横方向回転振れに対応している。図5Aを参照すると、横方向(l)における変分を測定するには横方向回転振れ値をタイヤショルダ又はサイドウォールに沿って得又は求めるのが良い。幾何学的タイヤ特性及び関連パラメータの種々の観点を求めるには半径方向及び横方向回転振れ値を別々に又は組み合わせて得て分析するのが良い。
【0031】
例えば図1に示されているレーザセンサ22及び関連コンポーネントによって半径方向回転振れ測定値を得ることができる仕方は、図5Bを参照すると良く理解できる。図5Bの全体として円形の破線は、本明細書において説明するように求め又は定められるようにタイヤの公称半径(R0)を表わすようになっている。レーザセンサ22は、タイヤ表面に対して位置決めされると共にタイヤ回りの複数個の指標点n=1,2,3,...,Nのところでのタイヤ表面とレーザセンサ22との間の互いに異なるそれぞれの角度位置(θn)のところでの変位距離(dn)を測定するよう構成されている。一例では、箇所Nの全数は、2048個のデータ点である。ただし、任意の個数を用いることが出来る。レーザセンサ22がタイヤに対して固定された場所に設けられる場合、図5Bの寸法Dは、タイヤの回転軸線とレーザとの間の距離を表わしている。
【0032】
得られた変位測定値から追加の量を計算することができる。例えば、公式Rn=D−dnを用いることによりタイヤ表面測定値(Rn)を各点nのところで求めることができる。公式
を用いて全ての表面測定値の平均値を計算することによってタイヤの公称半径(R0)を求めることができる。変形例として、半径(R0)は、単に、本発明のコンピュータ処理機器へのユーザ入力として求められると共に提供される一定値であっても良い。次に、公式un=Rn−R0によって各点nのところでの回転振れ(un)又はR0により表わされた一様な円からのタイヤの表面の偏差を計算することができる。
【0033】
横方向回転振れ測定値の場合、レーザセンサ22は、依然として、タイヤ表面とレーザセンサ22との間の互いに異なるそれぞれの角度位置(θn)のところでの変位距離(dn)を測定するようタイヤ表面に対して位置決めされる。しかしながら、タイヤサイドウォール又はショルダに沿う距離の変分は、半径方向回転振れ測定値に関してそのままであるタイヤの公称半径に対して必ずしもコンピュータ計算される必要ない。これとは異なり、R0は、単に、特定の横方向回転振れ測定値のセットの分析のために一定のままである所定の値(即ち、選択された一定値)である。横方向回転振れ測定値と関連したサイドウォール変形を首尾良く識別することは、選択された半径値(R0)の選択に対して十分に鈍感であることが判明した。一例では、R0について選択された一定値は、公称タイヤ半径に定数xを乗算して得られた値により特定される範囲から選択されるのが良く、この場合、1/8≦x≦5である。他の例では、xについて種々の範囲の採用が可能である場合がある。
【0034】
生データ(例えば、dn値)及び/又は上述の関連の派生的測定値(例えば、Rn及び/又はun値)を測定後処理のためにコンピュータ42及び関連プロセッサ44に提供するのが良い。かかる処理は、一般に、例えばデータ条件付け202、データフィルタリング処理210及び他の先に行われ又は次に行われる測定、分析及びデータ条件付け及びデータフィルタリング処理と関連して行われる他のステップのような例示のステップを含むのが良い。データフィルタリング処理プロセス210は、本発明のシステム及び方法にとって特に関心のあるものである。というのは、測定後処理のこの部分は、タイヤの或る特定の幾何学的特徴をフィルタリング処理して除去するのに役立つからである。フィルタリング処理210は、一般に、トレッドフラッシング、レーザオーバーシュート等により生じるデータスパイクを除去するエロージョン前置フィルタを実施するオプションとしてのステップ212、測定データを2次元形態に変換するステップ214、データ点を包囲する凸包上に位置するデータ点を捕捉するステップ216及び残りのデータ点を1次元方向に補間するステップ218を含む。理解されるべきこととして、データフィルタリング処理ステップ210を含むステップのうちの幾つかは、図2A〜図2Cに示された順次配列において必ずしも実施される必要はない。
【0035】
本発明の改良型データ処理ステップをより詳細に説明する前に、従来型ウィンドウ利用フィルタリング処理技術を用いたフィルタ性能について図3、図4A及び図4Bを参照して説明する。移動平均及びメディアンフィルタリング処理を含むかかる従来技術は、一般に、ウィンドウが関心のある生データ点を包囲し、この窓内の生データ点の中心傾向の測度、典型的には、平均値又は中央値に基づいてフィルタリング処理済みの値を割り当てる数学的プロセスから成る。中心傾向測定値は、平均値であり、フィルタは、移動平均フィルタと呼ばれる。
【0036】
生回転振れ測定値データの次の1次元関数形態を考察する。即ち、
【数1】
及び
【数2】
上式において、r及びfは、それぞれ、動径座標成分で表わされた生測定値及びフィルタリング処理済み測定値を表わし、θは、回転振れデータ点の円周方向座標成分(偏角)である。全部でN個のデータ点がタイヤの周囲に沿って測定され、n=1,2,3,...,Nであるような整数nによって示された場合、θnは、各測定点nのところでの角度位置を意味している。測定値がタイヤの半径方向周囲回りに実質的に一様な角度間隔を置いた状態で得られる場合、公式θn=2π(n−1)/Nを用いるのが良い。インディシアル記述法では、メディアンフィルタ及び移動平均フィルタは、次のように表わされる。
【数3】
【数4】
上式において、wは、窓内のデータ点の個数である。
【0037】
図3は、公称半径が300mm、トレッド溝深さが13mmの9ピッチタイヤに関するシミュレートされた128点式半径方向回転振れ測定値を示している。加うるに、ピーク間大きさが2.0mmの正弦回転振れが、生データ内で重ね合わされており、全てのデータ処理を完了した後に検出されることが望ましいのはまさにこの回転振れである。シミュレートデータ点は、グラフ上のそれぞれのドット状の点で表わされている。図3はまた、各々が15°の窓を用いた対応のメディアンフィルタ及び移動平均フィルタを示している。メディアンフィルタは、実線で表わされ、移動平均フィルタは、破線で示されている。メディアン及び移動平均フィルタリング処理済みデータを分解することにより、それぞれ、2.93mm及び2.56mm、或いは、実際の値の1.28倍〜1.46倍の第1調和回転振れ(H1)値が得られる。
【0038】
図4A及び図4Bは、窓サイズの関数としてのメディアン及び移動平均フィルタのそれぞれの正規化第1調和回転振れ(H1)大きさ及び位相角を示している。とりわけ、図4Aのグラフ図は、フィルタリング処理された第1調和回転振れ(u)大きさと実際の第1調和回転振れ大きさ(u0)の比と度(°)で表わされた窓サイズの関係を表わしている。図4Bは、度(°)で表わされた実際の第1調和回転振れ位相角とフィルタリング処理された第1調和回転振れ位相角の差(Δθ)と度(°)で表わされた窓サイズの関係をグラフ図で表わしている。図4Aと図4Bの両方において、グラフ中の実線は、メディアンフィルタを表わし、破線は、移動平均フィルタを表わしている。結果の示すところによれば、正確な大きさ及び位相を検出する際に誤差が生じている。この例に基づけば、一般に、窓利用フィルタ単独ではタイヤ測定値データをフィルタリング処理するのに常に効果的であるとはいえず、相当大きなスプリアス調和成分をもたらす場合のあることは、明らかである。したがって、改良型データ処理技術が開発された。
【0039】
本発明のフィルタリング処理技術の適用前に、当初、追加の条件付けステップを得られた又は求められた回転振れ測定値に適用するのが良い。例えば、再び図2Aを参照すると、データ条件付けプロセス202と関連した第1ステップは、測定値が取られたタイヤ回転の全回数にわたる種々の測定点をまとめて平均化する平均化ステップ204を含む。例えば、測定値が60回のタイヤ回転について求められた場合、所与のデータ点(各2048回又はデータ点の他の総数について1つ)と関連した60通りの測定値の各々を平均化するのが良い。このデータ平均化は、全体的に良好な測定値品質を達成するのに役立つだけでなく、測定値データに関するデータストレージ要件を最小限に抑えるのにも役立つ。
【0040】
データ条件付けプロセス202中の別の例示のステップ206は、生の測定値データ(例えば、回転振れ測定値)を同期させるステップを含む。同期化ステップ206では、一般に、全ての測定データ点(例えば、タイヤの表面に沿って測定された2048個の点)を指標パルスに同期させ、この指標パルスは、光学エンコーダ34により求められた基準点である。位相又はタイミングのずれの実施は、レーザセンサ22と関連した内部フィルタリング処理に起因したタイミングのずれが存在する場合にデータ点をタイヤ表面に沿う基準場所に適切に位置合わせするために望ましい場合がある。タイミング/位相ずれの量は、測定値が得られる回転速度の関数として求められる場合が多い。
【0041】
理解されるべきこととして、同期化ステップ204及び平均化ステップ206を含む(これらには限定されない)上述のデータ条件付けステップを図5Bを参照して説明した種々の形式の幾何学的測定値のうちの任意のものについて実施するのが良い。例えば、データ条件付けステップをレーザセンサとタイヤ表面との間で測定された変位距離値のデータセット{dn:n=1,2,...N}、求められた半径方向又は横方向表面測定値のデータセット{Rn:n=1,2,...N}又は求められた半径方向又は横方向回転振れ測定値のデータセット{un:n=1,2,...N}に適用するのが良い。したがって、データ条件付けは、変位距離測定値を半径方向又は横方向表面値及び/又は回転振れ値に変換する前、変換中又は変換後に起こるのが良い。
【0042】
次に図6Aを参照すると、タイヤ回りの種々の角度位置(θn)のところで測定された半径方向表面測定値(Rn)の条件付けデータセットの例示のグラフ図が示されており、この場合、各ドット状データ点は、全部でN個の別々の半径方向表面値のうちの1つを表わし、破線は、R0、即ち、タイヤの公称半径を表わしている。図5Bを参照して上述したように、図6Aの半径方向表面測定値を例えば図6Bに示されている回転振れ値(u)に変換することができる。
【0043】
mmで測定された回転振れ測定値(u)の条件付けデータセットと度(°)で測定された角度位置(θ)の関係を表わす例示のプロットが図6Bに記載されており、この場合、各ドット状点は、全部でN個の測定値のうちの1つを表わしている。かかる図から理解できるように、測定データは、測定プロセスと或る特定の幾何学的タイヤ特徴部、例えばタイヤトレッドの規定された溝及びタイヤフラッシング(即ち、もしそうでなければタイヤトレッドの実質的に滑らかな外面から延びる過剰ゴムの薄い部分)の存在との相互作用に起因した不正確な値を含む。
【0044】
特に、タイヤクラウンに沿うトレッド回転振れ測定値を捕捉する非接触型測定システムの場合、トレッドの頂部(即ち、トレッド隆起部)に沿う半径方向回転振れ測定値は、どちらかといえば正確に捕捉される場合が多い。これら測定値は、図6Bにおいて回転振れ値が約5〜8mmであるデータ点として現われる。しかしながら、トレッド溝の底部の場所のところで得られたデータは、負の回転振れ値を持つ散乱データ点として現われる相当大きなノイズを含む場合が多い。追加のノイズは、レーザオーバーシュート又は他のスプリアス効果に基づく全体としてまばらな不正確なデータ読みにより幾何学的特徴部、例えばトレッドフラッシングが存在しているタイヤ表面に沿って得られた回転振れ測定値に導入される場合がある。かかる追加のノイズは、それ自体、図6Cの上方データスパイク、例えばデータ点601〜608としてグラフに存在する場合が多い。
【0045】
生の回転振れデータは従来型窓利用技術、例えば移動平均及びメディアンフィルタリング処理を用いて効果的にフィルタリング処理することが困難な場合が多いので、本発明は、スプリアスタイヤトレッド特徴部を補償することによりデータの効果的、自動的且つ自然フィルタリング処理を可能にする改良型データフィルタリング処理ステップ(全体が図2A〜図2Cに参照符号210で示されている)を提供する。
【0046】
本発明のデータフィルタリング処理プロセス210と関連した第1の例示のステップでは、エロージョン前置フィルタステップ212を実施する。ステップ212は、上方データスパイクが存在する場合にのみ必要であるという意味においてオプションである場合があり、例えば、トレッドフラッシングの存在により或いはサイドウォール窪み又は他の幾何学的パラメータを検出するために反転データを分析する場合に実施される場合がある。前置フィルタステップ212では、一般に、隣り合う測定値を超えて突き出ている選択された回転振れ測定値を識別してなくし又は修整する。データスパイクの除去は、凸包フィルタリング処理と関連した次の処理ステップにおいて重要になる。以下の凸包フィルタリング処理と関連した説明から理解されるように、かかるデータスパイクがフィルタリング処理により除去され又はなくされるのではなく、違った仕方で測定値セットに含まれる場合、これらスパイクは、凸包上に位置するものとして識別され、これらスパイクは、望ましくないことには、スプリアス下側空間周波数成分を測定値データ中に導入する場合がある。
【0047】
次に図6C及び図6Dを参照して、上向きのスパイク―これらはトレッドフラッシングに相当している―が図6Cに示されているようにデータ中に存在している例示の場合について検討する。図6Cは、ミリメートル(mm)で測定された回転振れ(u)と度(°)で測定された角度位置の関係を表わしている。図6Cの全ての測定データ点は、グラフ図でドット状の点で表わされ、全体としてまばらな上向きデータスパイクは、図6Cにそれぞれデータ点601〜608として表示されている。かくして、図2Aのステップ212によれば、前置フィルタは、データ点601〜608をなくし又は修整するうえで望ましい場合がある。
【0048】
例示の一実施形態では、或る特定の値を超えた又は隣り合う測定値を超えて突き出るものとして識別された識別データ点(例えば、データ点601〜608)は、選択された隣り合うデータ点の最小値又は平均値により単に削除され又は置き換えられるのが良い。別の例では、エロージョン型フィルタをデータ点601〜608に相当する回転振れ値に影響を及ぼす最も自明の変更を加えたうえで全てのデータ点に適用するのが良い。かかるエロージョン型フィルタによれば、全てのデータ点が各点を次の方程式に基づいて指定された窓中の全ての点のうちの最小値で置き換えることによりフィルタリング処理される窓利用方法を適用するのが良い。
【数5】
一例では、指定される窓は、3点である。したがって、標的点と関連したデータ値に代えて標的点及び標的点のすぐ左側及び右側の点を含む3つの値のうちの最小値を用いる。理解されるべきこととして、例えばステップ212に関して説明したエロージョン前置フィルタの多数回の反復(例えば、エロージョン前置フィルタを通る測定データの1回、2回、3回又は4回以上のパス)を実施しても良い。
【0049】
次に図6Dを参照すると、上述の方程式(7)で定められたエロージョンフィルタの適用後における測定データ点のグラフ図が提供されている。図6Dはまた、ミリメートル(mm)で測定された回転振れ(u)と度(°)で測定された角度位置の関係を表わしている。全てのデータ点がフィルタリング処理され、それにより、突き出たデータ値601〜608等を含む幾つかの原データ点は、今や、トレッド溝場所に相当する隣り合う測定値の次にクラスタ化される場合が多い負の回転振れ値を持つ点として現われる。狭い窓を用いることにより、エロージョンフィルタリング処理プロセスは、上方に進むスパイクを効果的に除去する傾向があるが、溝の幅を増大させる。図6Dに示されているように、約8°(3データ点)の窓は、トレッドフラッシングをなくす。理解されるべきこととして、上述の前置フィルタリング処理ステップ212は、回転振れ値のデータセット{un}に適用されるものとして説明されているが、前置フィルタリング処理は、半径方向表面測定値のデータセット{Rn}にも適用可能である。
【0050】
前置フィルタリング処理ステップ212が幾何学的特徴部、例えばトレッドフラッシングを排除するうえで有用であるが、トレッド隆起部及び/又は溝の存在を補償する追加のフィルタリング処理が必要となる。かかる追加のフィルタリング処理は、一部が凸包型フィルタの適用によって達成される。しかしながら、凸包型分析を効果的に実施するためには2次元データセットが好ましい場合がある。本明細書で用いられる「1次元」と呼ばれるタイヤ測定値は、一般に、単一のベクトル量の形で得られる幾何学的測定値に対応している。例えば、回転振れ測定値が極形式(動径座標成分及び円周方向座標成分の形)で得られる場合、かかる測定値を定めるには単一ベクトルしか用いられない。これとは対照的に、本明細書において「2次元」と呼ばれているタイヤ測定値は、一般に、回転振れ測定値を表わすのに2つのベクトルを必要とする。2次元回転振れ測定値の一例は、互いに異なる直交方向においてそれぞれ第1及び第2の大きさを必要とし、かくして、2つの互いに異なる測定ベクトルから成るデカルト座標により定められる例に相当する。
【0051】
図2Aのデータフィルタリング処理プロセス210の別の例示のステップに従って、ステップ214では、例えば図6Dに示されている1次元データを2次元形態に変換し、かくして、タイヤ表面の固有の曲率を考察する。変換ステップ214に従って、図6Dからの各回転振れ値(un)を変換して半径方向表面測定値(Rn)に戻し、これを図7に示されているように2次元に分解する。かかる2次元変換の一例では、1組の相互に垂直な軸線を持つ直交座標系を利用する。2次元表示の特定の例は、各半径方向表面測定値Rnをそれぞれの座標成分Rnx及びRnzに変換し、この場合、Rnxは、第1の次元(例えば、前後方向次元x)における2‐D測定データ点値であり、Rnzは、第2の次元(例えば、垂直次元z)における2‐D測定データ点値である。1次元形態から2次元形態への測定データの変換を実施するための特定の方程式は次の通りである。
【数6】
及び
【数7】
【0052】
再び図2Aを参照すると、データフィルタリング処理プロセス210における別の特定のステップが、2‐D半径方向表面測定値のうちで、2‐D測定値を包囲した凸包上に位置する選択された2‐D半径方向表面測定値を識別するステップ216を含む。具体的には、ステップ216では、2‐D測定値セットを包囲する最も小さな凸の幾何学的形状の頂点をなす点のサブセットを求めるのが良い。
【0053】
平面(2次元)関連でこのようにして求めた結果は、図7に示されているようにグラフ表示可能である。凸包は、有限引き伸ばし状態から弛緩する仮想上の弾性バンド700が平衡状態に達した場合に載る点として概念化可能である。例えば図7に示されている1つのデータ点セットが所与の場合、かくして、凸包は、これらの点を包囲する最小多角形であり、従って、全ての点は、多角形の周囲上かその内部かのいずれかに位置する。多角形は、凸包がこれら周囲上の点でのみ表わされるように凸でなければならず、任意の内方スパイクは除去される。残りのデータ点、即ち、凸包上に位置するデータ点は、図8Aに示されているように、公称半径R0を表わす破線の円の外側に位置した円で囲んだデータ点として識別される。かくして、残りのデータ点の数は、測定点の初期のセットから大幅に減少している。
【0054】
平面セットの凸包をコンピュータ計算するための数種類の周知の数学的アルゴリズムが存在する。例えば、ビニース‐ビヨンド(Beneath-Beyond)アルゴリズムの有無にかかわらず2次元クイックハル(Quickhull)アルゴリズムを採用する実際の凸包アルゴリズムがシー・ブラッドフォード・バーバー他(C. Bradford Barber et al.),「ザ・クイックハル・アルゴリズム・フォー・コンベックス・ハルズ(The quickhull algorithm for convex hulls)」,エーシーエム・トランザクションズ・オン・マテマティカル・ソフトウェア(ティーオーエムエス)(ACM Transactions on Mathematical Software (TOMS)),第22巻,第4号,1996年12月,p.469〜483に開示されている。公知の凸包アルゴリズムの追加の説明は、http://www.qhull.org/及びhttp://mathworld.wolfram.com/ConvexHull.htmlに開示されている。
【0055】
変形例として、方法、例えば所謂「ギフト包装」法を凸包アルゴリズムの実行のために用いても良い。ギフト包装技術によれば、分析は、象限(四分円)内の最も遠くの点、例えばデータセット内の最も下側且つ最も左側の点から始まる。かかる点は、データセットを包囲している凸包上に位置するよう保証される。凸包上の次の点は、現在の点及び次の点により作られる線の左側には点が位置しないよう特定される。このプロセスは、ラップして元の点に戻るまで繰り返される。
【0056】
さらにもう一度図2Aを参照すると、例示のデータフィルタリング処理プロセス210に含まれる最終ステップ218は、2‐D測定値のうちで、凸包上に位置する識別された選択済み2‐D測定値の一次元補間の実施に対応している。凸包上に位置するかかる識別された2‐D測定値は、図8Aの円で囲んだデータ点によって表されている。一次元補間を実施するため、図8Aに示された半径方向表面測定値の2次元データセット中の識別された円で囲まれているデータ点は、図8Bに示されているように回転振れ測定値の一次元データセットに変換して戻される。図8Bの円で囲まれたデータ点は、グラフ上の僅かな残りのデータ点である。というのは、これらデータ点は、凸包上に位置するよう定められた僅かなデータ点だからである。識別されたデータ点が1次元形態であれば、補間ステップ218を用いてグラフ上のデータ点相互間の識別された隙間を埋める。
【0057】
特にステップ218に関し、ステップ216において凸包上に位置するものと識別されたデータ点(例えば、図8A及び図8Bの円で囲まれたデータ点)を2‐D形態から変換して図8Bに示されているように種々の角度位置でそれぞれの回転振れ値で表された1‐D形態に戻す。次に、データ点の補間を図8Bの実線で示されているように実行する。一般に、補間は、凸包上に位置する識別されたデータ点の別個のセット中に新たなデータ点を数学的に構成するステップに対応している。その結果は、先に識別されたデータ点及び新たに構成されたデータ点の全シリーズに基づく実質的に連続した関数に対応するのが良い。次に適当な形式の補間を利用することができ、非限定的な例としては、直線補間、多項式補間、スプライン補間等が挙げられる。特定の例では、3次スプライン補間と呼ばれている形式のスプライン補間を採用するのが良く、この場合、一連の3次多項式は、第1の導関数と第2の導関数が各点のところで合致する場所を求めることによって各既存のデータ点のところでの適合を可能にする。
【0058】
ステップ218で実行可能な補間の更に別の例は、本明細書においては、「充填補間」と呼ばれている。充填補間は、かかる点相互間の欠けている値を2つの既存のデータ点のうちの最小値で充填することにより第1の既存のデータ点と第2の既存のデータ点との間を補間する。例えば、位置5のところで測定された第1の点が7.0の値を持つと共に位置10のところで測定された第2の点が15.0の値を持つ場合、充填補間は、位置6,7,8,9について7.0、即ち、7.0及び15.0のうちの最小値を割り当てる。
【0059】
依然として図2Aを参照すると、ステップ220において、ステップ218で凸包フィルタの適用後に結果として得られた関数のフーリエ又は調和分解を実施する。本発明のフィルタリング処理技術は、一般に、誤差の割合を極めて低くした状態で第1調和(H1)半径方向回転振れ大きさ及び位相を効果的に再現すると同時に他のハーモニック成分(例えば、H2,H3,H4等)において望ましくないノイズ又は誤差レベルを導入しないようにするうえでうまく行くことに注目することが重要である。これは、第1レベル又は他の低レベル調和成分をフィルタリング処理する場合に幾何学的タイヤ測定値の高レベル調和成分に不注意による誤差を導入する場合もある他のデータフィルタリング処理技術と比較して顕著な利点である。
【0060】
図8Bに示された例示のデータに基づいて、凸包形フィルタは、1.4%以内のH1大きさ及び0.26°以内の位相を効果的に再現する。図8Bの同一の例示のデータに基づいて、情報データスパイクが生の測定値データ中に存在していない場合(かくして、エロージョン前置フィルタの適用を必要としない)に、本発明の凸包形フィルタの適用後に、結果的に得られたフーリエ大きさ及び位相が、表1に与えられている。
【0061】
〔表1〕
調和: 大きさ(mm): 位相(度):
H1 1.9868 0.0010
H2 0.0012 171.0934
H3 0.0018 12.2178
H4 0.0015 51.4508
表1: 凸包形フィルタを利用し、エロージョン前置フィルタを利用しない場合のフーリエ大きさ及び位相
【0062】
図8Bに示された例示のデータに基づいて、生の測定値データ中にスパイクが存在している場合(かくして、エロージョン前置フィルタが適用された場合)に本発明は凸包形フィルタの適用後に結果として得られたフーリエ大きさ及び位相が表2に与えられている。
【0063】
〔表2〕
調和: 大きさ(mm): 位相(度):
H1 1.9714 0.2591
H2 0.0357 178.8306
H3 0.0094 13.7237
H4 0.0086 10.3163
表2: 凸包形フィルタを利用すると共にエロージョン前置フィルタを利用した場合のフーリエ大きさ及び位相
【0064】
最終ステップ230(これは、フーリエ分解ステップ220の前又は後のいずれかで実施可能である)では、出力データをユーザ又はプロセス制御装置に提供する。上述したように、出力データは、ユーザが例えば子午線平面内の「最良適合」スリック‐タイヤプロフィール、タイヤの仮想上の3次元トーラス形状又はタイヤのトレッド変形部を捕捉することによりタイヤの或る特定の観点をモデル化すると共に/或いは分析することができるようディスプレイに提供され又は出力として印刷されるのが良い。または、出力データを用いると、タイヤをソーティングし又はグレーディングすることができ、或いは重量を追加し若しくは重量を削り或いは米国特許第7,082,816号明細書(発明者:ズー(Zhu))に開示されているようにタイヤ成型プロセスを変更することによってタイヤを改造することができる。なお、この米国特許を全ての目的について参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。開示する技術の他の用途は、当業者であれば理解できる。
【0065】
次に図2B及び図2Cを参照すると、開示するデータフィルタリング処理技術を特にタイヤサイドウォール又はショルダ場所に沿って得られた横方向回転振れ測定値に適用する方法が示されている。図2Aに示されると共に、この図を参照して説明した同一ステップのうちの多くが利用され、これらのステップは、同一参照符号で示されている。しかしながら、僅かな変形が存在する場合がある。例えば、図2B及び図2Cに記載された方法は、フーリエ分解を実施するステップ220を含んでいない。というのは、横方向回転振れ測定値と関連したサイドウォール変形部検出は、半径方向回転振れ測定値と関連したユニフォーミティパラメータに関する同じ調和分析を必要としないからである。
【0066】
図2Cに見られる追加の差は、代表的には、タイヤ表面測定値について分析可能なデータ点の2つの互いに異なるトレースが存在する場合があるという認識に関する。トレッド特徴部がタイヤクラウン、ショルダ又はサイドウォール場所に沿って存在する場合、かかるトレッド特徴部(即ち、トレッド隆起部)の頂部に沿って且つ/或いはかかるトレッド特徴部(即ち、トレッド溝)の底部のところでは測定されるデータ点を分析するのが良い。トレッド隆起部及びトレッド溝場所に関して測定されたそれぞれのセットを成すデータ点を本明細書においてはそれぞれ頂部トレースデータ及び底部トレースデータと呼ぶ。図2Aを参照して上述したプロセスは、頂部トレースの分析を説明している。底部トレースの分析では、例えば図2Cを参照して説明した追加のデータ反転ステップが必要である。サイドウォール変形部については、頂部トレースの分析が潜在的なサイドウォール突出部を識別するうえで信頼性の高い場合があり、他方、底部トレースの分析は、潜在的なサイドウォール窪みを識別するうえで信頼性が高い場合のあることが確認されている。したがって、頂部トレース分析及び底部トレース分析のうちの一方又はこれら両方は、開示する方法に従って単一の得られたデータセットについて並列処理経路により実施可能である。データ反転を実施する手段(例えば、図2Cのステップ211及び219)が図2Aには具体的には示されていないが、同一のデータ反転技術及び分析を図2Aのプロセス中の半径方向回転振れ値又は他の幾何学的測定値に適用することが可能な場合がある。この変形例は、本明細書において開示する技術の範囲に含まれる。
【0067】
特に底部トレースデータ測定値を考察するオプションを参照すると、図2Cは、2つの追加のデータ反転ステップ211,219の記載を含む。第1のデータ反転ステップ211は、ステップ212においてエロージョン前置フィルタを適用する前に、例えば各回転振れ測定値の大きさに負の1(−1)を乗算することによりデータセットを反転させ又は裏返すことを必要とする。補間ステップ218の実施後に、データをステップ219において再び反転させ(即ち、再反転させ)、その後、これに追加の分析を施し又はかかるデータを出力データとしてユーザに提供する。
【0068】
図9〜図18は、1組の横方向回転振れ測定値中に存在する場合のあるサイドウォール突出部及び窪みを識別するためにデータセットの頂部トレース及び底部トレースをどのように分析すれば良いかの一例を提供している。かかる図は全て、横座標に沿って場所の点の数がプロットされた種々の横方向回転振れ測定値又は処理済データ値及び縦座標に沿ってミリメートル(mm)で表された測定変形量に対応したデータ点を示している。図9〜図18に記載された特定の例では、タイヤの1回転は、横座標に沿って表されている2048個のデータ点からなる。図9は、測定された横方向回転振れ値(即ち、サイドウォール変形量)の初期データセットを示している。図9に示された初期データセットは、条件付けデータセット、例えば、本明細書において説明したステップ204,206に従って平均化されると共に同期された測定値データを表すのが良い。一般に、次のデータ分析から理解されるように、約5mmのサイドウォール突出部は、ほぼ点1000のところに存在し、約5mmのサイドウォール窪みは、ほぼ点300のところに存在する。
【0069】
次に図10〜図12を参照すると、頂部データトレース(即ち、一般に、タイヤ表面上に設けられているトレッドブロック又はトレッド特徴部の頂部に対応した測定データ点)の処理がグラフ図で示されている。図10は、例えば、ステップ212に記載されている3点データ窓を備えたエロージョン前置フィルタの適用後における図9の元のデータセットを示している。図11は、ステップ214,216の適用後における同一のデータセットを示しており、かくして、凸包上に位置するものと判定された点の選択サブセットを示している。図12は、例えばステップ218に記載された補間の適用後における図11からのデータセットを示している。特に、図12に示された連続データ曲線を得るために充填補間ステップが実施される。図12に示されたフィルタリング処理済データセットと図9に示された初期データセットを比較することにより理解されるように、ほぼ点1000のところのサイドウォール突出部の検出は、取り出して識別するのが極めて容易である。
【0070】
次に図13〜図17を参照すると、追加の又は変形例としての処理が図9に示されている初期サイドウォール変形量データに対して実施されるのが良い。特に、図13〜図17で行われるデータフィルタリング処理は、具体的には、底部データトレース(即ち、一般に、タイヤ表面上に設けられているトレッドブロック又はトレッド特徴部の底部に対応する測定データ点)に関する。図13は、反転ステップ211の適用後における横方向回転振れ測定値(即ち、サイドウォール変形量測定値)のデータセットを表示している。特に、図13に示されているデータセットを得るために図9に示されているデータセットに負の1を乗算する。図13からのデータセットを例えばステップ212に記載されている3点窓を備えたエロージョン前置フィルタ及びフィルタを通る2回のパスに適用した後、図14に示されているようなデータセットが得られる。ステップ216からの凸包判定結果を図14のデータセットに適用すると、その結果として、図15にプロットされているようなデータセットが得られる。図16は、例えばステップ218に記載されている補間の適用後における図15からのデータセットを示している。具体的に説明すると、図16に表されている連続データ曲線を得るために充填補間ステップを実施する。次に、図16からの補間データセットをステップ219により再反転させて図17に示されているような最終底部トレースデータセットを得る。図17に示されているフィルタリング処理データセットを図19に示されている初期データセットと比較することにより理解されるように、ほぼ点300のところにおけるサイドウォール窪みの検出は、取り出すと共に識別するのが極めて容易である。
【0071】
図18は、底部及び/又は頂部トレッドトレースデータが分析されるのがどの潜在的なサイドウォール変形条件であるかに応じてどのように有用な場合があるかの明らかな比較結果を提供している。図18は、図12からの最終のフィルタリング処理頂部データセットがプロット181として重ね合わされると共に図17からの最終フィルタリング処理底部データセットがプロット182として重ね合わされた状態の図9からの初期データセットを示している。フィルタリング処理頂部データセットは、この特定の例では、ほぼ点1000のところでのサイドウォール突出部を検出するうえで明らかに良好であり、これに対し、フィルタリング処理底部データセットは、この特定の例では、ほぼ点300のところでのサイドウォール窪みを検出するうえで明らかに良好である。
【0072】
再び図1を参照すると、本発明の例示のシステム及び方法を実施する際に用いられる例示のハードウェアコンポーネントに関する追加の詳細がここに提供されている。特にレーザセンサ22を参照すると、例示の一実施形態は、測定原理として光学三角測量を採用した非接触型レーザ変位センサを利用している。各レーザセンサは、光の可視光線24をタイヤ10の標的面上に投射するレーザダイオードを含む。各標的スポットから反射された光は、光学受光システムを通って位置敏感素子に差し向けられる。像信号を効果的に捕捉するため、レーザセンサ22は、それぞれ、電荷結合デバイス(CCD)のアレイ又はリアルタイム表面補償(RTSC)を実行する一体型処理/フィルタ特徴部を備えた相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を更に有するのが良い。特定の例として、例えば独国オルテンバーグ所在のミクロ‐エプジロン(MICRO-EPSILON)社により製造されて販売されているオプトNCDTレーザセンサを用いるのが良い。
【0073】
別の例として、1つ又は2つ以上のセンサ22は、単一光線又は固定光点とは異なりシート状の光を放出するよう構成されたレーザセンサに対応するのが良い。かかるレーザシステムは、シート状光レーザ(SL)システムと呼ばれることがあり、かかるレーザシステムは、一緒に動作する多数の固定点(FP)レーザを必要としないで、タイヤ表面に沿って子午線平面を一度に測定することができる。
【0074】
レーザセンサ22の位置決めは、タイヤ表面に沿う所望の測定軌道に従って様々であって良い。レーザセンサ22がプラットフォーム26に対して設けられる場合、かかるプラットフォーム26の位置決めを制御モジュール28への入力に基づいて変更することができ、その結果、プラットフォーム26は、モータ32によって横方向軌道30に沿って移動可能であるようになっている。プラットフォーム26もまた、タイヤ10に対する角度位置が移動可能であり、その結果、レーザセンサ22の内包調整が最適測定範囲が得られるように生じることができるようになっている。プラットフォーム26上におけるレーザセンサ22の相対的位置決めは、レーザ制御モジュール28に対する類似の入力によって固定されても良く移動可能であっても良い。一例では、3つのレーザセンサ22は、タイヤ10の半径方向周囲に沿って多数の隣り合うトレッドリブ内に位置合わせされる。試験対象のタイヤ中のトレッドリブの個数よりも少ないレーザセンサ22が設けられている場合であっても、レーザセンサを種々の横方向位置に動かすことによって識別された各リブについて測定値を依然として得ることができる。
【0075】
理解されるべきこととして、レーザ制御モジュール28が図1にレーザセンサ22とは別個の単一のコンポーネントとして示されているが、多数のかかる制御装置を設けても良い(例えば、レーザセンサ1つ当たり1つ)。変形例として、1つ又は2つ以上のレーザ制御モジュールを実際に、別個に設けるのではなく、レーザセンサ22の一部として設けても良い。
【0076】
依然として図1を参照すると、レーザセンサ22に結合された追加のシステムモジュールは、光学エンコーダ34及びデータ収集装置36を含む。かかるモジュールは、レーザセンサに直接接続されても良く、或いは、例えばレーザ制御モジュール28又は他の中間インターフェイスモジュールを介して間接的にセンサに接続されても良い。
光学エンコーダ34は、レーザセンサ22によるタイヤ測定値のタイミングを協調させるのを助けるよう多数のデータチャネルを有するのが良い。例えば、1つのチャネルは、タイヤ1回転当たり複数個のデータ点を定めるようになった制御信号を提供することができ、別のチャネルは、データをタイヤ上の基準点に同期させるよう1回転につき1つの指標パルスを提供するようになった制御信号をもたらす。特定の一例では、光学エンコーダ34は、タイヤ測定値を得るために1回転当たり1000個以上の点(例えば、2048個の点)を定めるよう構成されている。これは、本発明を不必要に限定する観点であってはならないことが理解されるべきである。というのは、これよりも多くの数又は少ない数のデータ点を用いることができるからである。本発明の技術に用いられる光学エンコーダの一例は、例えばカスタム・センサーズ・アンド・テクノロジーズ(Custom Sensors & Technologies: CST)の一部門である米国カリフォルニア州ゴレタ所在のビーイーアイ・インダストリアル・エンコーダーズ(BEI Industrial Encoders: IED)社により販売されているModel H20(登録商標)インクリメンタルエンコーダに対応している。
【0077】
図1に示されているデータ収集装置36は、レーザセンサ22により得られて光学エンコーダ34により統合されるタイヤ測定値データのセットを効果的に捕捉する中間ストレージ場所として提供されるのが良い。データ収集装置36は、好ましくは、1回転当たり1つの指標パルスと関連した情報並びに光学エンコーダ34により定められるタイヤ1回転当たりの複数個の測定値データ点の各々に関するタイミング情報を記録する。かかるデータストレージを達成するため、データ収集装置36の一実施形態は、特に、アナログ‐ディジタル(A/D)変換機38及び生の測定値データの変換ディジタル形式をストレージするメモリ/メディア要素40を含む。他の例では、データ収集装置36は、数値を環境設定し、データを収集してこれを所定のファイル形式、例えば、ASCIIファイル又は他の適当な若しくは将来開発されるファイル形式でストレージするようになったオペレーティングソフトウェアを含むのが良い。加えて、波形フォーマットでのリアルタイムデータのセットアップ及び表示又は他のデータ表示のためのインターフェイスが利用可能である。特定の一実施形態では、例示のデータ収集装置36は、例えば、米国オハイオ州クリーブランド所在のアイオーテック(IOTech(登録商標))により販売されているウェーブブック(Wavebook)ブランドの収集システムである。
【0078】
測定値事後処理及びフィルタリング処理は、1つ又は2つ以上のコンピュータ42により実施されるのが良く、コンピュータ42は、それぞれ、1つ又は2つ以上のプロセッサ44を搭載するのが良い。ただし、説明を容易にすると共に分かりやすくするために、図1にはコンピュータ及びプロセッサが1つしか示されていない。事後処理及びフィルタリング処理機能は、変形例として、1つ又は2つ以上のサーバにより又は多数のコンピュータ計算及び処理装置により実施されても良い。一般に、プロセッサ44及び関連のメモリ/メディア要素48a,48b,48cは、種々のコンピュータにより実行可能な機能(即ち、ソフトウェアに基づくデータサービス)を実行するよう構成されている。
【0079】
少なくとも1つのメモリ/メディア要素(例えば、図1の要素48b)は、1つ又は2つ以上のプロセッサ44により実行されるコンピュータ可読及び実行可能命令の形態でのソフトウェア及び/又はファームウェアのストレージ専用である。他のメモリ/メディア要素(例えば、メモリ/メディア要素48a,48c)は、プロセッサ44によってもアクセス可能であると共にメモリ/メディア要素48bにストレージされているソフトウェア命令の影響を受けるデータをストレージするために用いられる。図1の種々のメモリ/メディア要素は、1つ又は2つ以上の様々なコンピュータ可読メディアの単一の部分又は多数の部分として設けられても良く、かかるコンピュータ可読メディアとしては、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、例えばDRAM、SRAM等)及び不揮発性メモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、磁気テープ、CD‐ROM、DVD‐ROM等)又はディスケット(フロッピー(登録商標)ディスク)、ドライブ、他の磁気利用ストレージメディア、光ストレージメディア等の任意の組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。図1は、3つの別々のメモリ/メディア要素48a,48b,48cを示しているが、かかるデバイス専用のコンテンツは、実際には、1つのメモリ/メディア要素又は多数の要素にストレージされるのが良い。データストレージの任意のかかる考えられる変形例及び他の変形例は、当業者であれば理解されよう。
【0080】
本発明の特定の一実施形態では、メモリ/メディア48への第1の部分は、本発明のタイヤ測定システム及び関連の処理方法のための入力データをストレージするよう構成されている。メモリ/メディア要素48aにストレージされる入力データは、測定機械12に結合されたレーザセンサ22に及び関連コンポーネントにより測定される生データを含むのが良い。または、メモリ/メディア要素48にストレージされる入力データは、所定のタイヤパラメータ、例えば、タイヤ半径、タイヤ幅、タイヤ重量、タイヤ圧力、タイヤ半径方向剛性、タイヤ接線方向剛性、タイヤ曲げ剛性、タイヤ引張り剛性、トレッド場所、一般的なタイヤデータ等(これらには限られない)を更に含むのが良い。かかる所定のパラメータは、メモリ/メディア要素48aにあらかじめプログラムされても良く、或いは、入力装置50にアクセスするユーザからの入力データとしてエンターされたときにメモリ/メディア要素48aにストレージ可能に提供されても良い。
【0081】
入力装置50は、コンピュータ42とのユーザインターフェイスとして働くよう構成された1つ又は2つ以上の周辺装置に対応するのが良い。例示の入力装置としては、キーボード、タッチスクリーンモニタ、マイクロホン、マウス等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0082】
第2のメモリ要素48bは、コンピュータにより実行可能なソフトウェア命令を含み、かかるソフトウェア命令は、プロセッサ44によって読み取られて実行されてメモリ/メディア要素48aにストレージされている入力データに作用し、それにより、第3のメモリ/メディア要素48cにストレージ可能に新たな出力データ(例えば、フィルタリング処理データ、波形ディスプレイ等)を作ることができる。この場合、出力データの選択された部分は、1つ又は2つ以上の周辺出力装置52に提供されるのが良い。
【0083】
出力装置52は、ディスプレイ、例えばモニタ、スクリーン等、プリンタ又はプロセス制御装置に対応するのが良い。プロセス制御装置は、タイヤ評価プロセス、例えばソーティング又はグレーディングを助け或いは構造的改造プロセス、例えば研削又は製造プロセス調整の実行を助けるようになった出力装置、制御装置機構又は他のモジュラ要素に対応するのが良い。評価プロセス、例えばソーティング又はグレーディングでは、一般に、測定されたタイヤ性能特性が或る所定の限度を下回っているかどうかを判定するのが良い。特性が許容限度内に収まっている場合、タイヤは、顧客に出荷可能な合格品とされるのが良い。許容限度を超えた場合、タイヤは、不合格品とされるか、或いは、修整プロセスを受けるのが良い。例示の修整プロセスは、タイヤ製造分野における当業者には理解されるように研削又は重量追加プロセスに従って特定の定められた場所でのタイヤの研削又はタイヤへの余分の重量の追加に対応している。変形例として、コンピュータ42による或る特定の特性の判定は、タイヤ製造に関与する種々のプロセス、例えば、種々のゴムコンパウンド層及び/又は他の適当な材料を被着させてタイヤカーカスを形成するステップ、タイヤベルト部分及びトレッド部分を提供してタイヤクラウンブロックを形成するステップ、完成した生タイヤを硬化させるステップ等(これらには限定されない)のうちの選択されたプロセスを改良するようフィードバック修整において利用されても良い。
【0084】
本発明をその特定の実施形態に関して詳細に説明したが、当業者であれば、上記の内容を理解すると、かかる実施形態の変更例、変形例及び均等例を容易に想到することができることが理解されよう。したがって、本発明の開示内容の範囲は、限定ではなく、例示として解され、本発明の開示内容は、当業者には容易に明らかである本発明の内容のかかる改造例、変形例及び/又は追加例が含まれることを排除するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、幾何学的タイヤ測定値のデータ品質を向上させるフィルタリング処理方法に関する。特に、タイヤパラメータデータの自動フィルタリング処理を行ってタイヤ又は関連の取り付け環境における幾何学的特徴部、例えばトレッド溝、トレッド隆起部、トレッドフラッシング等を排除するための技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造中とタイヤ試験中の両方においてタイヤと関連した種々の幾何学的特徴部及び性能パラメータを測定することが望ましい場合が多い。回転中におけるタイヤの幾何学的特性(かかる特性としては、例えば回転振れ、重量アンバランス及びユニフォーミティ測定値が挙げられるが、これらには限定されない)の測定は、高速走行速度と低速走行速度の両方における車両振動の潜在的な原因を識別するのに役立つよう利用可能である場合が多い。タイヤと関連した幾何学的測定値はまた、タイヤの寿命全体にわたりトレッド摩耗等のような現象を特徴付けるのを助けることができる。追加の測定値、例えば横方向回転振れ又はサイドウォール変形は、起こり得る継ぎ目の開き又はタイヤ内での本体プライコードの欠けの一因となりうる例えば外方突出部又は膨らみのような条件並びに潜在的にオーバーラップ量が多すぎるタイヤ継ぎ目に起因して生じる場合のある内向きの窪み又は凹みを識別してこれらを制御するために使用できる。
【0003】
従来型測定方法の中には、幾何学的タイヤ測定値を得るために接触センサを採用しているものがあり、かかる幾何学的タイヤ測定値としては、半径方向及び横方向回転振れ測定値が挙げられるが、これらには限定されない。例えば、サイドウォール変形は、通常、タイヤのサイドウォール又はショルダ場所又は部位に沿って形成される「クリアーパス(clear path)」又は実質的に滑らかな表面に沿って設けられた接触センサで測定されている。しかしながら、サイドウォール及び/又はショルダ表面に沿ってトレッド特徴部を備えたオフロード用タイヤの設計では、クリアーパスについて取り得る場所が制限され又は存在しない。タイヤクラウンに沿って形成されるトレッド特徴部及び他の構造要素については、半径方向測定値を得るための接触センサを用いることができない。したがって、非接触センサ、例えばレーザセンサ及び関連の測定機器を用いて幾何学的タイヤ測定値を得る場合がある。しかしながら、次に行うデータ処理の際にトレッド特徴部その他の存在を考慮に入れるよう得られた測定値をどのように分析するかが最善であるかについての要望が依然として存在する。
【0004】
幾何学的タイヤ測定値のデータセットを効果的に分析するためには、得られた測定値データには異常があってはならない。一般に、タイヤは、半径方向周囲(例えば、タイヤクラウン場所)、横方向周囲(例えば、タイヤサイドウォール場所)、タイヤショルダ場所等に沿って実質的に一様な軌道を有するものとして幾何学的にモデル化される場合がある。しかしながら、幾何学的測定値が或る特定のタイヤ特徴部、例えばトレッド隆起部及び溝、タイヤフラッシング及びタイヤクラウン、ショルダ及び/又はサイドウォール場所に沿って生じる場合のある他の幾何学的特徴部に対して得られる場合、データ異常がかかる一様な表面モデル中に入り込む場合がある。加うるに、データ異常は、非接触測定機器によって稀に生じる誤差又はオーバーシュートのために1組の幾何学的測定値(以下、「組」を「セット」に置き換えて表現する場合があり、したがって、この場合、「1つの幾何学的測定値セット」とのように表現することがある)に偶発的に入り込む場合がある。
【0005】
タイヤパラメータ及び関連の条件の次の分析を最も効果的に実施するためにタイヤ測定値データの異常のない完全なデータセットを得る必要性に照らして、幾何学的タイヤ測定値データの品質を向上させるために測定後処理技術を実施することが望ましい。データフィルタリング処理のための公知の技術が開発されたが、一般に、本発明の技術に従って以下に提供される所望の特性の全てを含む設計例は現われていない。
【発明の概要】
【0006】
先行技術で見受けられると共に本発明によって取り組まれる認識されている特徴を考慮して、タイヤのクラウン、サイドウォール及び/又はショルダ場所に沿って位置する幾何学的特徴部、例えばフラッシング、トレッド隆起部、トレッド溝等(これらには限定されない)をなくすことにより測定されたタイヤパラメータ(例えば、半径方向及び横方向回転振れ)を自動的にフィルタリング処理してタイヤをより正確にモデル化するための改良型装置及び方法が提供される。
【0007】
本発明の例示の一実施形態は、タイヤに関する幾何学的パラメータを処理する方法に関する。かかる方法は、種々のステップを有するのが良く、かかるステップは、タイヤの表面を測定して所与のタイヤに対するそれぞれの角度位置のところでの複数のパラメータ値から成る幾何学的測定値のデータセットを得るステップ及び次にデータ条件付け及び/又はフィルタリング処理を生のデータ測定値に適用するステップを含む。特に、データフィルタリング処理は、得られたデータセットに含まれていて、隣り合う値よりも大きな大きさを持つ選択されたパラメータ値を電子的にフィルタリング処理するステップ、フィルタリング処理されたパラメータ値のうちで、値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたフィルタリング処理済みパラメータ値を電子的に識別するステップ及び/又はフィルタリング処理されたパラメータ値のうちで、凸包上に位置する識別された選択フィルタリング処理済みパラメータ値を電子的に補間して(例えば、直線補間、スプライン補間、充填補間又は他の補間法によって)フィルタリング処理済み回転振れ測定値の最終データセットを得るステップを含むのが良い。
【0008】
上述の技術の或る幾つかの特定の実施形態では、タイヤの測定される表面は、タイヤのサイドウォール又はショルダに沿う少なくとも1つの場所を含み、この方法は、フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを電子的に分析してサイドウォール突出部及びサイドウォール窪みのうちの1つ又は2つ以上の形態をしたサイドウォール変形特性を識別するステップを更に有する。サイドウォール窪みの識別は、フィルタリング処理前に当初の条件付きデータセットを反転させ、次にこのデータを再反転させることにより判定されるのが良い。上述の技術の他の特定の実施形態では、タイヤの測定される表面は、タイヤのクラウンに沿う少なくとも1つの場所を含み、この方法は、フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを複数の調和成分に分解するステップを更に有する。
【0009】
上述の方法の更に特定の例示の実施形態では、パラメータ値のうちで、値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたパラメータ値を電子的に識別するステップは、具体的には、第1及び第2の互いに直交する方向で測定された各パラメータ値を所与のタイヤの表面に沿う曲率場所で表される表面値に変換するステップを含む。かかる変換では、各パラメータ値を回転振れ測定値のデータセット中の各角度位置θnのところで或る所定の整数値Nについて回転振れ値un(n=1,2,3,...,N)であると見なすことができ、かかる値を次の方程式、即ち、Rnx=(R0+un)cosθn及びRnz=(R0+un)sinθnにより定められる第1及び第2の量Rnx及びRnzにより表わされた2次元形態に変換するのが良い。或る実施形態(半径方向回転振れ測定値)に関し、R0は、測定されたタイヤと関連した公称半径を表わしている。他の実施形態(例えば、横方向回転振れ測定値)に関し、R0は、タイヤ半径に関して選択された一定値を表わしている。
【0010】
種々の方法に加えて、本発明は、均等例として、タイヤ測定システムに採用可能な種々のハードウェア及び/又はソフトウェアコンポーネントを含む関連システムに関することは理解されるべきである。例示の一実施形態では、本発明は、1つ又は2つ以上の所定の速度で回転する所与のタイヤと関連した回転振れを測定して処理するためのタイヤ測定システムに関する。かかる測定機械は、一般に、2つの互いに異なる形式のハードウェアコンポーネント、即ち、測定コンポーネント及び測定後処理コンポーネントを含むのが良い。
【0011】
特定のタイヤ測定システムの測定コンポーネントは、所与のタイヤを確実に受け入れてこのタイヤを1つ又は2つ以上の所定の速度で回転させるようになった測定機械を含むのが良い。少なくとも1つのセンサ、例えばレーザ変位センサ(これには限定されない)が、タイヤの半径方向及び/又は横方向周囲に沿う1つ又は2つ以上の軌道のところでタイヤ表面を測定するために横方向及び/又は半径方向に沿って調節可能に所与のタイヤに対して位置決めされている。かかるセンサは、レーザからのタイヤの変位を測定し、この変位を用いると、タイヤ表面上における基準点(即ち、指標パルス)に対するそれぞれの角度位置における半径方向又は横方向回転振れ値を直接計算することができる。
【0012】
追加の測定ハードウェアは、例えば光学エンコーダやデータ収集装置のようなモジュラーコンポーネントを含むのが良い。光学エンコーダは、測定機械に結合されるのが良く、かかる光学エンコーダは、タイヤ1回転当たりの複数のデータ点を定めるようになった制御信号をもたらしたりデータを所与のタイヤ上の基準点に同期させるための1回転当たり1回の指標パルスを提供するようになった制御信号をもたらしたりするための少なくとも1つのそれぞれの第1及び第2のデータチャネルを有するのが良い。データ収集装置もまた、受け取ったセンサ測定値をアナログからディジタルフォーマットに変換して変換された回転振れ測定値をメモリにストレージするために測定機械に結合されるのが良い。
【0013】
例示の一実施形態では、タイヤ測定システムの処理コンポーネントは、測定値をストレージするようになった第1のメモリ/メディア要素を含み、各測定値は、所与のタイヤに対する角度位置で得られた幾何学的パラメータ値に対応し、処理コンポーネントは、コンピュータにより実行可能な命令の形態をしたソフトウェアをストレージするようになった第2のメモリ/メディア要素と、第1及び第2のメモリに結合されていて、第2のメモリにストレージされているコンピュータ実行可能命令を選択的に実行して第1のメモリにストレージされている測定値を処理するよう構成された少なくとも1つのプロセッサとを更に含む。また、ユーザに提供すべき出力データをストレージし又は次の処理又はフィードバック制御を行うための第3のメモリ/メディア要素が設けられるのが良い。
【0014】
上述のタイヤ測定システムの特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のプロセッサは、幾何学的パラメータ値のうちで、値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値を識別する機能及び幾何学的パラメータ値のうちで、凸包上に位置する識別された選択幾何学的パラメータ値を補間する機能を実行することによってメモリにストレージされた生の回転振れ測定値を処理するためにメモリにストレージされたコンピュータ実行可能命令を実行する。追加の機能は、選択的に、各所与の角度位置における多数回のタイヤ回転にわたって測定パラメータ値を平均化する機能、得られたデータセットに含まれていて、隣り合う値よりも大きな値を持つ選択されたパラメータ値をフィルタリング処理する機能、複数のパラメータ値を2次元形態に変換する機能、フィルタリング処理の前後でデータセットを反転させる機能及びフィルタリング処理された測定値の最終データセットを複数の調和成分に分解する機能に対応するのが良い。
【0015】
必ずしも発明の概要の項に記載されていない本発明の追加の実施形態は、上述の発明の概要に記載された実施形態について記載された特徴、コンポーネント又はステップ及び/又はその他の場合において本明細書において説明した他の特徴、コンポーネント又はステップの観点の種々の組み合わせを含むと共にこれらを利用することができる。当業者であれば、本明細書の残部の検討時にかかる実施形態その他の特徴及び観点を良好に理解されよう。
【0016】
当業者向きの本発明の十分且つ実施可能な開示(発明の最適実施態様を含む)が本明細書に記載されており、本明細書は、添付の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のタイヤ測定システムの例示のハードウェアコンポーネント(種々の例示の測定コンポーネント並びに測定後コンピュータ処理コンポーネントを含む)のブロック図である。
【図2A】幾何学的タイヤ性能パラメータ、例えば半径方向回転振れを測定してこれを処理する方法における例示のステップ及び特徴の流れ図である。
【図2B】幾何学的タイヤ性能パラメータ、例えば横方向回転振れを測定してこれを処理する第1の方法における例示のステップ及び特徴の流れ図である。
【図2C】幾何学的タイヤ性能パラメータ、例えば横方向回転振れを測定してこれを処理する第2の方法における例示のステップ及び特徴の流れ図である。
【図3】公知のメディアンフィルタ及び移動平均フィルタ技術に従って測定後処理を適用した状態で表わされたタイヤの半径方向回転振れ測定値(u)と角度位置(θ)の捕捉データセットのグラフ図である。
【図4A】メディアンフィルタ技術及び移動平均フィルタ技術を用いたウィンドウサイズの関数としてのフィルタリング処理回転振れ大きさと実際の回転振れ大きさの比のグラフ図である。
【図4B】メディアンフィルタ技術及び移動平均フィルタ技術を用いたウィンドウサイズの関数としての回転振れ測定値の位相角の差(Δθ)のグラフ図である。
【図5A】或る特定のタイヤパラメータを幾何学的にモデル化するための例示の半径方向(r)及び横方向(l)を示すタイヤの斜視図である。
【図5B】或る特定のタイヤパラメータを幾何学的にモデル化するための例示の第1及び第2の直交寸法及び関連の測定基準を示すタイヤの半径方向周囲の平面図である。
【図6A】本発明の例示の実施形態に従って種々の角度位置(θ)で得られた半径方向表面測定値(R)の例示のデータセットのグラフ図である。
【図6B】本発明の例示の実施形態に従って角度位置(θ)で1次元方向に表わされた初期回転振れ測定値(u)の例示のデータセットのグラフ図である。
【図6C】例えばトレッドフラッシング等の存在に起因して生じる場合のある上方データスパイクを含む角度位置で1次元方向に表わされた初期回転振れ測定値の例示のデータセットのグラフ図である。
【図6D】本発明の例示の実施形態によるエロージョン前置フィルタの適用後における図6Cの例示のデータセットの観点のグラフ図である。
【図7】特に無限引き伸ばし状態から弛緩している弾性バンドが平衡状態において載る点として示されている本発明の例示の実施形態に用いられる例示の凸包アルゴリズムを概念化したグラフ図である。
【図8A】2次元回転振れ測定値の例示のデータセットのグラフ図であり、選択されたデータ点が本発明の例示の実施形態に従ってかかるデータ点と関連した凸包上に位置しているものとして識別されている状態を示す図である。
【図8B】本発明の例示の実施形態に従って図8Aの凸包上に位置している選択的に識別された2次元回転振れ測定値の1次元補間を実施した後における例示のフィルタリング処理済みデータセットのグラフ図である。
【図9】本発明の例示の実施形態による横方向回転振れ測定値の例示のデータセットのグラフ図である。
【図10】本発明の例示の実施形態によるエロージョン前置フィルタの適用後における図9の例示のデータセットのグラフ図である。
【図11】本発明の例示の実施形態による凸包処理の適用後における図10の例示のデータセットのグラフ図である。
【図12】本発明の例示の実施形態による補間の適用後における図11の例示のデータセットのグラフ図である。
【図13】本発明の例示の実施形態によるデータ反転後における図9の例示のデータセットのグラフ図である。
【図14】本発明の例示の実施形態によるエロージョン前置フィルタの適用後における図13の例示のデータセットのグラフ図である。
【図15】本発明の例示の実施形態による凸包処理の適用後における図14の例示のデータセットのグラフ図である。
【図16】本発明の例示の実施形態による補間の適用後における図15の例示のデータセットのグラフ図である。
【図17】本発明の例示の実施形態によるデータ再反転の適用後における図16の例示のデータセットのグラフ図である。
【図18】図12及び図17の第1及び第2のフィルタリング処理済みデータセットと共に図9の例示のデータセットを示すグラフ図であり、底部及び頂部トレースと測定値データの初期セットの比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び添付の図面全体において参照符号を繰り返し用いていることは、本発明の同一又は類似の特徴、要素又はステップを表わすことを意図している。
【0019】
発明の概要の項に記載したように、本発明は、一般に、回転物体(例えば、タイヤ)の表面を測定する際に得られたデータ測定値の品質を向上させるシステム及び方法に関する。特に、データ品質は、タイヤと関連した幾何学的特徴又は他のデータ異常をフィルタリング処理することにより向上可能である。本明細書において開示する実施形態のうちの幾つかは、特定の幾何学的タイヤ測定値、例えば回転振れと関連したかかるフィルタリング処理ステップ及び特徴の説明に関するが、現時点において開示する技術は、一般に、任意の幾何学的測定値セットのデータ品質の向上に利用できることは理解されるべきである。
【0020】
開示する技術の観点の選択された組み合わせは、本発明の複数の互いに異なる実施形態に対応している。注目されるべきこととして、本明細書において提供されると共に説明する例示の実施形態の各々は、本発明の内容の限定を示唆するものではない。一実施形態の一部として図示され又は説明される特徴又はステップは、別の実施形態の観点と組み合わせて利用でき、それにより、更に別の実施形態が得られる。加うるに、或る特定の特徴は、同一又は実質的に同一の機能を実行する明示されてはいない類似の装置又は特徴と交換可能である。
【0021】
本明細書において説明する技術は、プロセッサ、サーバ、メモリ、データベース、ソフトウェアアプリケーション及び/又は他のコンピュータ利用システム並びに行われる行為及びかかるシステムに送受される情報に関する。コンピュータにより実行されるプロセスは、単一のサーバ若しくはプロセッサ又は組み合わせて働く多数のかかる要素を用いて実行可能である。データベース及び他のメモリ/メディア要素及びアプリケーションは、単一システム又は分散型の多数のシステムで実行可能である。分散型コンポーネントは、シリアルに又はパラレルに動作することができる。データは、システムコンポーネント相互間で直接的又は間接的に伝送可能であり、データはまた、ハードワイヤード及び/又はワイヤレス通信リンクの任意の組み合わせにより利用される1つ又は2つ以上のネットワーク、例えば、ダイアルインネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、インターネット、イントラネット又はイーサネット(Ethernet(登録商標))型のネットワークその他により伝送可能である。
【0022】
次に図面を参照し、初期幾何学的タイヤ測定値を得るために用いられる例示のハードウェアコンポーネント並びに測定後処理技術の実施に関する概要説明を図1に基づいて説明する。次に、本発明の特定の処理/フィルタリング処理方法を図1のハードウェアコンポーネントに関する追加の詳細を提供する前に残りの図を参照して詳細に説明する。かかる説明は、一般に、種々の形式の半径方向回転振れ(RRO)測定値(即ち、一般にタイヤトレッド場所又は部位に沿って測定された回転振れデータ)及び/又は横方向回転振れ(LRO)測定値(即ち、一般にタイヤショルダ又はサイドウォール場所又は部位に沿って測定された回転振れデータ)に関する。ただし、開示するフィルタリング処理及び他の測定後処理技術をトレッド摩耗測定値(これには限定されない)を含む他の幾何学的タイヤ測定値にも適用することが可能な場合がある。
【0023】
次に図1を参照すると、本発明に従ってタイヤ測定値を得るために、タイヤ10が測定機械12内において取り付け具に取り付けられていて、1つ又は2つ以上の所定の速度で遠心力の作用で回転する。回転振れ測定が望ましい場合、変速型半径方向又は横方向回転振れ測定機械として作動するよう構成されるのが良い。一実施形態では、測定機械12は、一般に、例えばベース14、取り付けアーム16及び取り付け具18のような例示の特徴部を有するのが良い。取り付け具18は、タイヤリムとほぼ同じ品質を有するハブ又は中心線20回りに遠心力の作用で回転するよう構成された他の剛性ディスクとして働く。図1に示された測定装置は、タイヤ取り付け及びタイヤが路面に沿ってどのように回転するかに関してほぼ同一の実質的に垂直方向の回転に対応するものとして示されているが、取り付けに関する他の向き又は配向状態の採用が可能であることは理解されるべきである。例えば、タイヤ及び関連測定機器は、変形例として、実質的に水平の形態のタイヤ回転に対応するよう設置されても良い。
【0024】
依然として図1の測定機械を参照すると、1つ又は2つ以上のセンサ22がタイヤ10に対して位置決めされている。センサ22は、タイヤが中心線20回りに回転しているときにタイヤ表面の位置を求めるためにタイヤ10に対して接触、非接触又は近接位置決め状態により動作するのが良い。一実施形態では、センサ22は、非接触型レーザセンサである。図1は、タイヤ10に対する複数の測定軌道に沿って多数の測定データセットを得ることを目的とする3つのセンサ22を示している。これよりも少ない又はこれよりも多い数のセンサを採用しても良いことは理解されるべきである。さらに、タイヤ10かセンサ22かのいずれかは、互いに対して異なる配置場所で構成されても良いことは理解されるべきである。図1は、タイヤ10のタイヤクラウン場所に対して位置決めされたセンサ22を示しているが、センサ22及び関連ハードウェアは、他のタイヤ表面を測定するようタイヤサイドウォール又はショルダ場所に対して位置決めされても良い。
【0025】
測定機械12及びレーザセンサ22は、追加のハードウェアコンポーネントとインターフェイスが取られており、かかる追加のハードウェアコンポーネントとしては、光学エンコーダ34、データ収集装置36及びタイヤパラメータをひとまとめに測定して生データを得るための他の関連モジュールが挙げられる。一般に、光学エンコーダ34は、タイヤの周面場所回りの複数のデータ点のところでの幾何学的測定値を統合するのを助ける。これは、複数のデータ点(例えば、タイヤ周囲回りの互いに異なる角度位置のところの2048個のデータ点)を定める制御信号及びデータを測定されたタイヤ上の基準点に同期させる1回転当たり1つの指標パルスをもたらす別の制御信号を提供することによって達成できる。一般に、データ収集装置は、センサ22から得られた測定値をアナログからディジタルフォーマットに変換し、変換された回転振れ測定値を記憶装置にストレージする。
【0026】
得られたタイヤ測定値は、最終的には、測定後処理及びフィルタリング処理のためにコンピュータ42に提供される。コンピュータ42は、タイヤパラメータの生の測定値を含む入力データを受け取り、かかる測定値を処理すると共にフィルタリング処理し、そして、利用可能な出力、例えばデータをユーザに提供し又は信号をプロセスコントローラに提供するよう構成された1つ又は2つ以上のプロセッサ44を搭載しているのが良い。かかるコンピュータ計算/処理装置は、メモリ/メディア要素48のうちの1つ又は2つ以上にストレージされたコンピュータ可読形態にされているソフトウェア命令にアクセスすることにより所望の機能を提供するよう構成されているのが良い。ソフトウェアが用いられる場合、本明細書に記載される教示を具体化するために任意適当なプログラミング、スクリプティング又は他形式の言語又は言語の組み合わせを用いることができる。他の実施形態では、本明細書において開示する方法は、変形例として、ハードワイヤード論理又は他の回路により実施されても良く、かかる回路としては、特定用途向け回路が挙げられるが、これには限定されない。
【0027】
次に図2A、図2B及び図2Cを参照して、図1のハードウェアコンポーネントにより実行される種々のステップ及び機能についての追加の説明を行う。図2Aは、半径方向回転振れ測定値の処理及び分析中に採用可能な例示のステップを示し、図6A〜図8Bは、かかるプロセスの一例を様々に記載している。図2B及び図2Cは、横方向回転振れ測定値の処理及び分析中に採用可能な例示のステップを示している。図2Bは、サイドウォール膨らみを検出するために望ましい場合のある測定データ(即ち、トレッド隆起部場所に沿って測定されたデータ点)の頂部トレースを分析するために使用可能なステップを記載している。図2Cは、サイドウォール窪みを検出するために望ましい場合のある測定データ(即ち、トレッド溝場所に沿って測定されたデータ点)の底部トレースを分析するために使用可能なステップを記載している。図9〜図12は、図2Bに記載されたプロセスの一例を様々に記載しており、図9及び図13〜図17は、図2Cに記載されたプロセスの一例を様々に記載している。回転振れ測定値がタイヤクラウンに沿って得られるか(即ち、半径方向回転振れ測定値)又はタイヤサイドウォール若しくはショルダに沿って得られるか(即ち、横方向回転振れ測定値)とは無関係に、同一の処理及びフィルタリング処理ステップのうちの多くが実施される。したがって、かかる類似した特徴又はステップを示すために類似の参照符号を用いることにする。
【0028】
次に図2Aを参照すると、第1ステップ200では、一般に、所与のタイヤ又は1組のタイヤと関連した生データ測定値(例えば、図1の測定装置12によって得られる)を得る。一例では、タイヤを一般に高い速度で、例えば、典型的な高速道路速度に対応した速度で回転させる。本発明の目的上、種々の測定値を得て分析する「高速」は、少なくとも約600rpm(約10Hz)の回転速度に相当している。他の例では、かかる比較的高い回転速度は、10Hz〜30Hz(1800rpm)又はこれ以上(例えば、特定の一実施形態では800rpm)である。さらに別の例では、タイヤを約10Hz(600rpm)以下の「低速」で回転させるのが良い。測定値の各セットは、タイヤの表面に沿う1つ又は2つ以上の軌道のところの測定値を含むのがよいことは理解されるべきである。一例では、2つ〜5つの互いに異なる軌道の範囲が全体として良好なタイヤ予測をもたらすために用いられる。
【0029】
ステップ200における測定品質を高めようとして、多数のオプションとしての品質管理ステップを実施するのが良い。例えば、測定タイヤを或る特定の最小時間で安定化された位置に設け、その後測定機械に設置してこれによって測定することが好ましい場合がある。タイヤを平坦な表面上にしばらくの間寝かせておくことは、タイヤ貯蔵に起因する歪み、例えば、タイヤがタイヤラックからのパイプ上に載ることによって生じる窪みを最小限に抑え又はなくすのに役立つ場合がある。取り付け具18と関連したリム及びラグ用穴は、好ましくは、タイヤ取り付け前においては清浄であり且つ潤滑油が塗られており、しかも取り付けハンプなしである。測定システム内の電子モジュール、例えばレーザセンサ22の適正なウォームアップを実施するのが良い。取り付け具18と関連したリム上に測定タイヤを良好に着座させるのを助けるために測定機械12の遠心機部分もまた、当初、測定なしで、所定の時間の間、或る特定の高い速度で作動させるのが良い。互いに異なる速度での且つ互いに異なる測定タイヤに関するタイヤ測定相互間に時間遅延を設けることが望ましい場合がある。さらに、測定データを得る前に、初期較正データを得て、これを用いて例えばグレーディング、ソーティング、タイヤ修整又はプロセス調整のようなプロセス最終結果を実行するのが良い。本発明のフィルタリング処理技術は、測定データ又はかかる初期較正データに利用可能である。
【0030】
上述したように、本発明の実施形態に従って得ることができる例示の1つの幾何学的タイヤ測定値は、半径方向回転振れに対応している。タイヤ900の横方向(l)及び半径方向(r)を示している図5Aを参照すると、測定システムにより得られ又は求められた半径方向回転振れ値は、一般に、かかる図に示された半径方向(r)で得られることが理解されるべきである。別の例示の幾何学的タイヤ測定値は、横方向回転振れに対応している。図5Aを参照すると、横方向(l)における変分を測定するには横方向回転振れ値をタイヤショルダ又はサイドウォールに沿って得又は求めるのが良い。幾何学的タイヤ特性及び関連パラメータの種々の観点を求めるには半径方向及び横方向回転振れ値を別々に又は組み合わせて得て分析するのが良い。
【0031】
例えば図1に示されているレーザセンサ22及び関連コンポーネントによって半径方向回転振れ測定値を得ることができる仕方は、図5Bを参照すると良く理解できる。図5Bの全体として円形の破線は、本明細書において説明するように求め又は定められるようにタイヤの公称半径(R0)を表わすようになっている。レーザセンサ22は、タイヤ表面に対して位置決めされると共にタイヤ回りの複数個の指標点n=1,2,3,...,Nのところでのタイヤ表面とレーザセンサ22との間の互いに異なるそれぞれの角度位置(θn)のところでの変位距離(dn)を測定するよう構成されている。一例では、箇所Nの全数は、2048個のデータ点である。ただし、任意の個数を用いることが出来る。レーザセンサ22がタイヤに対して固定された場所に設けられる場合、図5Bの寸法Dは、タイヤの回転軸線とレーザとの間の距離を表わしている。
【0032】
得られた変位測定値から追加の量を計算することができる。例えば、公式Rn=D−dnを用いることによりタイヤ表面測定値(Rn)を各点nのところで求めることができる。公式
を用いて全ての表面測定値の平均値を計算することによってタイヤの公称半径(R0)を求めることができる。変形例として、半径(R0)は、単に、本発明のコンピュータ処理機器へのユーザ入力として求められると共に提供される一定値であっても良い。次に、公式un=Rn−R0によって各点nのところでの回転振れ(un)又はR0により表わされた一様な円からのタイヤの表面の偏差を計算することができる。
【0033】
横方向回転振れ測定値の場合、レーザセンサ22は、依然として、タイヤ表面とレーザセンサ22との間の互いに異なるそれぞれの角度位置(θn)のところでの変位距離(dn)を測定するようタイヤ表面に対して位置決めされる。しかしながら、タイヤサイドウォール又はショルダに沿う距離の変分は、半径方向回転振れ測定値に関してそのままであるタイヤの公称半径に対して必ずしもコンピュータ計算される必要ない。これとは異なり、R0は、単に、特定の横方向回転振れ測定値のセットの分析のために一定のままである所定の値(即ち、選択された一定値)である。横方向回転振れ測定値と関連したサイドウォール変形を首尾良く識別することは、選択された半径値(R0)の選択に対して十分に鈍感であることが判明した。一例では、R0について選択された一定値は、公称タイヤ半径に定数xを乗算して得られた値により特定される範囲から選択されるのが良く、この場合、1/8≦x≦5である。他の例では、xについて種々の範囲の採用が可能である場合がある。
【0034】
生データ(例えば、dn値)及び/又は上述の関連の派生的測定値(例えば、Rn及び/又はun値)を測定後処理のためにコンピュータ42及び関連プロセッサ44に提供するのが良い。かかる処理は、一般に、例えばデータ条件付け202、データフィルタリング処理210及び他の先に行われ又は次に行われる測定、分析及びデータ条件付け及びデータフィルタリング処理と関連して行われる他のステップのような例示のステップを含むのが良い。データフィルタリング処理プロセス210は、本発明のシステム及び方法にとって特に関心のあるものである。というのは、測定後処理のこの部分は、タイヤの或る特定の幾何学的特徴をフィルタリング処理して除去するのに役立つからである。フィルタリング処理210は、一般に、トレッドフラッシング、レーザオーバーシュート等により生じるデータスパイクを除去するエロージョン前置フィルタを実施するオプションとしてのステップ212、測定データを2次元形態に変換するステップ214、データ点を包囲する凸包上に位置するデータ点を捕捉するステップ216及び残りのデータ点を1次元方向に補間するステップ218を含む。理解されるべきこととして、データフィルタリング処理ステップ210を含むステップのうちの幾つかは、図2A〜図2Cに示された順次配列において必ずしも実施される必要はない。
【0035】
本発明の改良型データ処理ステップをより詳細に説明する前に、従来型ウィンドウ利用フィルタリング処理技術を用いたフィルタ性能について図3、図4A及び図4Bを参照して説明する。移動平均及びメディアンフィルタリング処理を含むかかる従来技術は、一般に、ウィンドウが関心のある生データ点を包囲し、この窓内の生データ点の中心傾向の測度、典型的には、平均値又は中央値に基づいてフィルタリング処理済みの値を割り当てる数学的プロセスから成る。中心傾向測定値は、平均値であり、フィルタは、移動平均フィルタと呼ばれる。
【0036】
生回転振れ測定値データの次の1次元関数形態を考察する。即ち、
【数1】
及び
【数2】
上式において、r及びfは、それぞれ、動径座標成分で表わされた生測定値及びフィルタリング処理済み測定値を表わし、θは、回転振れデータ点の円周方向座標成分(偏角)である。全部でN個のデータ点がタイヤの周囲に沿って測定され、n=1,2,3,...,Nであるような整数nによって示された場合、θnは、各測定点nのところでの角度位置を意味している。測定値がタイヤの半径方向周囲回りに実質的に一様な角度間隔を置いた状態で得られる場合、公式θn=2π(n−1)/Nを用いるのが良い。インディシアル記述法では、メディアンフィルタ及び移動平均フィルタは、次のように表わされる。
【数3】
【数4】
上式において、wは、窓内のデータ点の個数である。
【0037】
図3は、公称半径が300mm、トレッド溝深さが13mmの9ピッチタイヤに関するシミュレートされた128点式半径方向回転振れ測定値を示している。加うるに、ピーク間大きさが2.0mmの正弦回転振れが、生データ内で重ね合わされており、全てのデータ処理を完了した後に検出されることが望ましいのはまさにこの回転振れである。シミュレートデータ点は、グラフ上のそれぞれのドット状の点で表わされている。図3はまた、各々が15°の窓を用いた対応のメディアンフィルタ及び移動平均フィルタを示している。メディアンフィルタは、実線で表わされ、移動平均フィルタは、破線で示されている。メディアン及び移動平均フィルタリング処理済みデータを分解することにより、それぞれ、2.93mm及び2.56mm、或いは、実際の値の1.28倍〜1.46倍の第1調和回転振れ(H1)値が得られる。
【0038】
図4A及び図4Bは、窓サイズの関数としてのメディアン及び移動平均フィルタのそれぞれの正規化第1調和回転振れ(H1)大きさ及び位相角を示している。とりわけ、図4Aのグラフ図は、フィルタリング処理された第1調和回転振れ(u)大きさと実際の第1調和回転振れ大きさ(u0)の比と度(°)で表わされた窓サイズの関係を表わしている。図4Bは、度(°)で表わされた実際の第1調和回転振れ位相角とフィルタリング処理された第1調和回転振れ位相角の差(Δθ)と度(°)で表わされた窓サイズの関係をグラフ図で表わしている。図4Aと図4Bの両方において、グラフ中の実線は、メディアンフィルタを表わし、破線は、移動平均フィルタを表わしている。結果の示すところによれば、正確な大きさ及び位相を検出する際に誤差が生じている。この例に基づけば、一般に、窓利用フィルタ単独ではタイヤ測定値データをフィルタリング処理するのに常に効果的であるとはいえず、相当大きなスプリアス調和成分をもたらす場合のあることは、明らかである。したがって、改良型データ処理技術が開発された。
【0039】
本発明のフィルタリング処理技術の適用前に、当初、追加の条件付けステップを得られた又は求められた回転振れ測定値に適用するのが良い。例えば、再び図2Aを参照すると、データ条件付けプロセス202と関連した第1ステップは、測定値が取られたタイヤ回転の全回数にわたる種々の測定点をまとめて平均化する平均化ステップ204を含む。例えば、測定値が60回のタイヤ回転について求められた場合、所与のデータ点(各2048回又はデータ点の他の総数について1つ)と関連した60通りの測定値の各々を平均化するのが良い。このデータ平均化は、全体的に良好な測定値品質を達成するのに役立つだけでなく、測定値データに関するデータストレージ要件を最小限に抑えるのにも役立つ。
【0040】
データ条件付けプロセス202中の別の例示のステップ206は、生の測定値データ(例えば、回転振れ測定値)を同期させるステップを含む。同期化ステップ206では、一般に、全ての測定データ点(例えば、タイヤの表面に沿って測定された2048個の点)を指標パルスに同期させ、この指標パルスは、光学エンコーダ34により求められた基準点である。位相又はタイミングのずれの実施は、レーザセンサ22と関連した内部フィルタリング処理に起因したタイミングのずれが存在する場合にデータ点をタイヤ表面に沿う基準場所に適切に位置合わせするために望ましい場合がある。タイミング/位相ずれの量は、測定値が得られる回転速度の関数として求められる場合が多い。
【0041】
理解されるべきこととして、同期化ステップ204及び平均化ステップ206を含む(これらには限定されない)上述のデータ条件付けステップを図5Bを参照して説明した種々の形式の幾何学的測定値のうちの任意のものについて実施するのが良い。例えば、データ条件付けステップをレーザセンサとタイヤ表面との間で測定された変位距離値のデータセット{dn:n=1,2,...N}、求められた半径方向又は横方向表面測定値のデータセット{Rn:n=1,2,...N}又は求められた半径方向又は横方向回転振れ測定値のデータセット{un:n=1,2,...N}に適用するのが良い。したがって、データ条件付けは、変位距離測定値を半径方向又は横方向表面値及び/又は回転振れ値に変換する前、変換中又は変換後に起こるのが良い。
【0042】
次に図6Aを参照すると、タイヤ回りの種々の角度位置(θn)のところで測定された半径方向表面測定値(Rn)の条件付けデータセットの例示のグラフ図が示されており、この場合、各ドット状データ点は、全部でN個の別々の半径方向表面値のうちの1つを表わし、破線は、R0、即ち、タイヤの公称半径を表わしている。図5Bを参照して上述したように、図6Aの半径方向表面測定値を例えば図6Bに示されている回転振れ値(u)に変換することができる。
【0043】
mmで測定された回転振れ測定値(u)の条件付けデータセットと度(°)で測定された角度位置(θ)の関係を表わす例示のプロットが図6Bに記載されており、この場合、各ドット状点は、全部でN個の測定値のうちの1つを表わしている。かかる図から理解できるように、測定データは、測定プロセスと或る特定の幾何学的タイヤ特徴部、例えばタイヤトレッドの規定された溝及びタイヤフラッシング(即ち、もしそうでなければタイヤトレッドの実質的に滑らかな外面から延びる過剰ゴムの薄い部分)の存在との相互作用に起因した不正確な値を含む。
【0044】
特に、タイヤクラウンに沿うトレッド回転振れ測定値を捕捉する非接触型測定システムの場合、トレッドの頂部(即ち、トレッド隆起部)に沿う半径方向回転振れ測定値は、どちらかといえば正確に捕捉される場合が多い。これら測定値は、図6Bにおいて回転振れ値が約5〜8mmであるデータ点として現われる。しかしながら、トレッド溝の底部の場所のところで得られたデータは、負の回転振れ値を持つ散乱データ点として現われる相当大きなノイズを含む場合が多い。追加のノイズは、レーザオーバーシュート又は他のスプリアス効果に基づく全体としてまばらな不正確なデータ読みにより幾何学的特徴部、例えばトレッドフラッシングが存在しているタイヤ表面に沿って得られた回転振れ測定値に導入される場合がある。かかる追加のノイズは、それ自体、図6Cの上方データスパイク、例えばデータ点601〜608としてグラフに存在する場合が多い。
【0045】
生の回転振れデータは従来型窓利用技術、例えば移動平均及びメディアンフィルタリング処理を用いて効果的にフィルタリング処理することが困難な場合が多いので、本発明は、スプリアスタイヤトレッド特徴部を補償することによりデータの効果的、自動的且つ自然フィルタリング処理を可能にする改良型データフィルタリング処理ステップ(全体が図2A〜図2Cに参照符号210で示されている)を提供する。
【0046】
本発明のデータフィルタリング処理プロセス210と関連した第1の例示のステップでは、エロージョン前置フィルタステップ212を実施する。ステップ212は、上方データスパイクが存在する場合にのみ必要であるという意味においてオプションである場合があり、例えば、トレッドフラッシングの存在により或いはサイドウォール窪み又は他の幾何学的パラメータを検出するために反転データを分析する場合に実施される場合がある。前置フィルタステップ212では、一般に、隣り合う測定値を超えて突き出ている選択された回転振れ測定値を識別してなくし又は修整する。データスパイクの除去は、凸包フィルタリング処理と関連した次の処理ステップにおいて重要になる。以下の凸包フィルタリング処理と関連した説明から理解されるように、かかるデータスパイクがフィルタリング処理により除去され又はなくされるのではなく、違った仕方で測定値セットに含まれる場合、これらスパイクは、凸包上に位置するものとして識別され、これらスパイクは、望ましくないことには、スプリアス下側空間周波数成分を測定値データ中に導入する場合がある。
【0047】
次に図6C及び図6Dを参照して、上向きのスパイク―これらはトレッドフラッシングに相当している―が図6Cに示されているようにデータ中に存在している例示の場合について検討する。図6Cは、ミリメートル(mm)で測定された回転振れ(u)と度(°)で測定された角度位置の関係を表わしている。図6Cの全ての測定データ点は、グラフ図でドット状の点で表わされ、全体としてまばらな上向きデータスパイクは、図6Cにそれぞれデータ点601〜608として表示されている。かくして、図2Aのステップ212によれば、前置フィルタは、データ点601〜608をなくし又は修整するうえで望ましい場合がある。
【0048】
例示の一実施形態では、或る特定の値を超えた又は隣り合う測定値を超えて突き出るものとして識別された識別データ点(例えば、データ点601〜608)は、選択された隣り合うデータ点の最小値又は平均値により単に削除され又は置き換えられるのが良い。別の例では、エロージョン型フィルタをデータ点601〜608に相当する回転振れ値に影響を及ぼす最も自明の変更を加えたうえで全てのデータ点に適用するのが良い。かかるエロージョン型フィルタによれば、全てのデータ点が各点を次の方程式に基づいて指定された窓中の全ての点のうちの最小値で置き換えることによりフィルタリング処理される窓利用方法を適用するのが良い。
【数5】
一例では、指定される窓は、3点である。したがって、標的点と関連したデータ値に代えて標的点及び標的点のすぐ左側及び右側の点を含む3つの値のうちの最小値を用いる。理解されるべきこととして、例えばステップ212に関して説明したエロージョン前置フィルタの多数回の反復(例えば、エロージョン前置フィルタを通る測定データの1回、2回、3回又は4回以上のパス)を実施しても良い。
【0049】
次に図6Dを参照すると、上述の方程式(7)で定められたエロージョンフィルタの適用後における測定データ点のグラフ図が提供されている。図6Dはまた、ミリメートル(mm)で測定された回転振れ(u)と度(°)で測定された角度位置の関係を表わしている。全てのデータ点がフィルタリング処理され、それにより、突き出たデータ値601〜608等を含む幾つかの原データ点は、今や、トレッド溝場所に相当する隣り合う測定値の次にクラスタ化される場合が多い負の回転振れ値を持つ点として現われる。狭い窓を用いることにより、エロージョンフィルタリング処理プロセスは、上方に進むスパイクを効果的に除去する傾向があるが、溝の幅を増大させる。図6Dに示されているように、約8°(3データ点)の窓は、トレッドフラッシングをなくす。理解されるべきこととして、上述の前置フィルタリング処理ステップ212は、回転振れ値のデータセット{un}に適用されるものとして説明されているが、前置フィルタリング処理は、半径方向表面測定値のデータセット{Rn}にも適用可能である。
【0050】
前置フィルタリング処理ステップ212が幾何学的特徴部、例えばトレッドフラッシングを排除するうえで有用であるが、トレッド隆起部及び/又は溝の存在を補償する追加のフィルタリング処理が必要となる。かかる追加のフィルタリング処理は、一部が凸包型フィルタの適用によって達成される。しかしながら、凸包型分析を効果的に実施するためには2次元データセットが好ましい場合がある。本明細書で用いられる「1次元」と呼ばれるタイヤ測定値は、一般に、単一のベクトル量の形で得られる幾何学的測定値に対応している。例えば、回転振れ測定値が極形式(動径座標成分及び円周方向座標成分の形)で得られる場合、かかる測定値を定めるには単一ベクトルしか用いられない。これとは対照的に、本明細書において「2次元」と呼ばれているタイヤ測定値は、一般に、回転振れ測定値を表わすのに2つのベクトルを必要とする。2次元回転振れ測定値の一例は、互いに異なる直交方向においてそれぞれ第1及び第2の大きさを必要とし、かくして、2つの互いに異なる測定ベクトルから成るデカルト座標により定められる例に相当する。
【0051】
図2Aのデータフィルタリング処理プロセス210の別の例示のステップに従って、ステップ214では、例えば図6Dに示されている1次元データを2次元形態に変換し、かくして、タイヤ表面の固有の曲率を考察する。変換ステップ214に従って、図6Dからの各回転振れ値(un)を変換して半径方向表面測定値(Rn)に戻し、これを図7に示されているように2次元に分解する。かかる2次元変換の一例では、1組の相互に垂直な軸線を持つ直交座標系を利用する。2次元表示の特定の例は、各半径方向表面測定値Rnをそれぞれの座標成分Rnx及びRnzに変換し、この場合、Rnxは、第1の次元(例えば、前後方向次元x)における2‐D測定データ点値であり、Rnzは、第2の次元(例えば、垂直次元z)における2‐D測定データ点値である。1次元形態から2次元形態への測定データの変換を実施するための特定の方程式は次の通りである。
【数6】
及び
【数7】
【0052】
再び図2Aを参照すると、データフィルタリング処理プロセス210における別の特定のステップが、2‐D半径方向表面測定値のうちで、2‐D測定値を包囲した凸包上に位置する選択された2‐D半径方向表面測定値を識別するステップ216を含む。具体的には、ステップ216では、2‐D測定値セットを包囲する最も小さな凸の幾何学的形状の頂点をなす点のサブセットを求めるのが良い。
【0053】
平面(2次元)関連でこのようにして求めた結果は、図7に示されているようにグラフ表示可能である。凸包は、有限引き伸ばし状態から弛緩する仮想上の弾性バンド700が平衡状態に達した場合に載る点として概念化可能である。例えば図7に示されている1つのデータ点セットが所与の場合、かくして、凸包は、これらの点を包囲する最小多角形であり、従って、全ての点は、多角形の周囲上かその内部かのいずれかに位置する。多角形は、凸包がこれら周囲上の点でのみ表わされるように凸でなければならず、任意の内方スパイクは除去される。残りのデータ点、即ち、凸包上に位置するデータ点は、図8Aに示されているように、公称半径R0を表わす破線の円の外側に位置した円で囲んだデータ点として識別される。かくして、残りのデータ点の数は、測定点の初期のセットから大幅に減少している。
【0054】
平面セットの凸包をコンピュータ計算するための数種類の周知の数学的アルゴリズムが存在する。例えば、ビニース‐ビヨンド(Beneath-Beyond)アルゴリズムの有無にかかわらず2次元クイックハル(Quickhull)アルゴリズムを採用する実際の凸包アルゴリズムがシー・ブラッドフォード・バーバー他(C. Bradford Barber et al.),「ザ・クイックハル・アルゴリズム・フォー・コンベックス・ハルズ(The quickhull algorithm for convex hulls)」,エーシーエム・トランザクションズ・オン・マテマティカル・ソフトウェア(ティーオーエムエス)(ACM Transactions on Mathematical Software (TOMS)),第22巻,第4号,1996年12月,p.469〜483に開示されている。公知の凸包アルゴリズムの追加の説明は、http://www.qhull.org/及びhttp://mathworld.wolfram.com/ConvexHull.htmlに開示されている。
【0055】
変形例として、方法、例えば所謂「ギフト包装」法を凸包アルゴリズムの実行のために用いても良い。ギフト包装技術によれば、分析は、象限(四分円)内の最も遠くの点、例えばデータセット内の最も下側且つ最も左側の点から始まる。かかる点は、データセットを包囲している凸包上に位置するよう保証される。凸包上の次の点は、現在の点及び次の点により作られる線の左側には点が位置しないよう特定される。このプロセスは、ラップして元の点に戻るまで繰り返される。
【0056】
さらにもう一度図2Aを参照すると、例示のデータフィルタリング処理プロセス210に含まれる最終ステップ218は、2‐D測定値のうちで、凸包上に位置する識別された選択済み2‐D測定値の一次元補間の実施に対応している。凸包上に位置するかかる識別された2‐D測定値は、図8Aの円で囲んだデータ点によって表されている。一次元補間を実施するため、図8Aに示された半径方向表面測定値の2次元データセット中の識別された円で囲まれているデータ点は、図8Bに示されているように回転振れ測定値の一次元データセットに変換して戻される。図8Bの円で囲まれたデータ点は、グラフ上の僅かな残りのデータ点である。というのは、これらデータ点は、凸包上に位置するよう定められた僅かなデータ点だからである。識別されたデータ点が1次元形態であれば、補間ステップ218を用いてグラフ上のデータ点相互間の識別された隙間を埋める。
【0057】
特にステップ218に関し、ステップ216において凸包上に位置するものと識別されたデータ点(例えば、図8A及び図8Bの円で囲まれたデータ点)を2‐D形態から変換して図8Bに示されているように種々の角度位置でそれぞれの回転振れ値で表された1‐D形態に戻す。次に、データ点の補間を図8Bの実線で示されているように実行する。一般に、補間は、凸包上に位置する識別されたデータ点の別個のセット中に新たなデータ点を数学的に構成するステップに対応している。その結果は、先に識別されたデータ点及び新たに構成されたデータ点の全シリーズに基づく実質的に連続した関数に対応するのが良い。次に適当な形式の補間を利用することができ、非限定的な例としては、直線補間、多項式補間、スプライン補間等が挙げられる。特定の例では、3次スプライン補間と呼ばれている形式のスプライン補間を採用するのが良く、この場合、一連の3次多項式は、第1の導関数と第2の導関数が各点のところで合致する場所を求めることによって各既存のデータ点のところでの適合を可能にする。
【0058】
ステップ218で実行可能な補間の更に別の例は、本明細書においては、「充填補間」と呼ばれている。充填補間は、かかる点相互間の欠けている値を2つの既存のデータ点のうちの最小値で充填することにより第1の既存のデータ点と第2の既存のデータ点との間を補間する。例えば、位置5のところで測定された第1の点が7.0の値を持つと共に位置10のところで測定された第2の点が15.0の値を持つ場合、充填補間は、位置6,7,8,9について7.0、即ち、7.0及び15.0のうちの最小値を割り当てる。
【0059】
依然として図2Aを参照すると、ステップ220において、ステップ218で凸包フィルタの適用後に結果として得られた関数のフーリエ又は調和分解を実施する。本発明のフィルタリング処理技術は、一般に、誤差の割合を極めて低くした状態で第1調和(H1)半径方向回転振れ大きさ及び位相を効果的に再現すると同時に他のハーモニック成分(例えば、H2,H3,H4等)において望ましくないノイズ又は誤差レベルを導入しないようにするうえでうまく行くことに注目することが重要である。これは、第1レベル又は他の低レベル調和成分をフィルタリング処理する場合に幾何学的タイヤ測定値の高レベル調和成分に不注意による誤差を導入する場合もある他のデータフィルタリング処理技術と比較して顕著な利点である。
【0060】
図8Bに示された例示のデータに基づいて、凸包形フィルタは、1.4%以内のH1大きさ及び0.26°以内の位相を効果的に再現する。図8Bの同一の例示のデータに基づいて、情報データスパイクが生の測定値データ中に存在していない場合(かくして、エロージョン前置フィルタの適用を必要としない)に、本発明の凸包形フィルタの適用後に、結果的に得られたフーリエ大きさ及び位相が、表1に与えられている。
【0061】
〔表1〕
調和: 大きさ(mm): 位相(度):
H1 1.9868 0.0010
H2 0.0012 171.0934
H3 0.0018 12.2178
H4 0.0015 51.4508
表1: 凸包形フィルタを利用し、エロージョン前置フィルタを利用しない場合のフーリエ大きさ及び位相
【0062】
図8Bに示された例示のデータに基づいて、生の測定値データ中にスパイクが存在している場合(かくして、エロージョン前置フィルタが適用された場合)に本発明は凸包形フィルタの適用後に結果として得られたフーリエ大きさ及び位相が表2に与えられている。
【0063】
〔表2〕
調和: 大きさ(mm): 位相(度):
H1 1.9714 0.2591
H2 0.0357 178.8306
H3 0.0094 13.7237
H4 0.0086 10.3163
表2: 凸包形フィルタを利用すると共にエロージョン前置フィルタを利用した場合のフーリエ大きさ及び位相
【0064】
最終ステップ230(これは、フーリエ分解ステップ220の前又は後のいずれかで実施可能である)では、出力データをユーザ又はプロセス制御装置に提供する。上述したように、出力データは、ユーザが例えば子午線平面内の「最良適合」スリック‐タイヤプロフィール、タイヤの仮想上の3次元トーラス形状又はタイヤのトレッド変形部を捕捉することによりタイヤの或る特定の観点をモデル化すると共に/或いは分析することができるようディスプレイに提供され又は出力として印刷されるのが良い。または、出力データを用いると、タイヤをソーティングし又はグレーディングすることができ、或いは重量を追加し若しくは重量を削り或いは米国特許第7,082,816号明細書(発明者:ズー(Zhu))に開示されているようにタイヤ成型プロセスを変更することによってタイヤを改造することができる。なお、この米国特許を全ての目的について参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。開示する技術の他の用途は、当業者であれば理解できる。
【0065】
次に図2B及び図2Cを参照すると、開示するデータフィルタリング処理技術を特にタイヤサイドウォール又はショルダ場所に沿って得られた横方向回転振れ測定値に適用する方法が示されている。図2Aに示されると共に、この図を参照して説明した同一ステップのうちの多くが利用され、これらのステップは、同一参照符号で示されている。しかしながら、僅かな変形が存在する場合がある。例えば、図2B及び図2Cに記載された方法は、フーリエ分解を実施するステップ220を含んでいない。というのは、横方向回転振れ測定値と関連したサイドウォール変形部検出は、半径方向回転振れ測定値と関連したユニフォーミティパラメータに関する同じ調和分析を必要としないからである。
【0066】
図2Cに見られる追加の差は、代表的には、タイヤ表面測定値について分析可能なデータ点の2つの互いに異なるトレースが存在する場合があるという認識に関する。トレッド特徴部がタイヤクラウン、ショルダ又はサイドウォール場所に沿って存在する場合、かかるトレッド特徴部(即ち、トレッド隆起部)の頂部に沿って且つ/或いはかかるトレッド特徴部(即ち、トレッド溝)の底部のところでは測定されるデータ点を分析するのが良い。トレッド隆起部及びトレッド溝場所に関して測定されたそれぞれのセットを成すデータ点を本明細書においてはそれぞれ頂部トレースデータ及び底部トレースデータと呼ぶ。図2Aを参照して上述したプロセスは、頂部トレースの分析を説明している。底部トレースの分析では、例えば図2Cを参照して説明した追加のデータ反転ステップが必要である。サイドウォール変形部については、頂部トレースの分析が潜在的なサイドウォール突出部を識別するうえで信頼性の高い場合があり、他方、底部トレースの分析は、潜在的なサイドウォール窪みを識別するうえで信頼性が高い場合のあることが確認されている。したがって、頂部トレース分析及び底部トレース分析のうちの一方又はこれら両方は、開示する方法に従って単一の得られたデータセットについて並列処理経路により実施可能である。データ反転を実施する手段(例えば、図2Cのステップ211及び219)が図2Aには具体的には示されていないが、同一のデータ反転技術及び分析を図2Aのプロセス中の半径方向回転振れ値又は他の幾何学的測定値に適用することが可能な場合がある。この変形例は、本明細書において開示する技術の範囲に含まれる。
【0067】
特に底部トレースデータ測定値を考察するオプションを参照すると、図2Cは、2つの追加のデータ反転ステップ211,219の記載を含む。第1のデータ反転ステップ211は、ステップ212においてエロージョン前置フィルタを適用する前に、例えば各回転振れ測定値の大きさに負の1(−1)を乗算することによりデータセットを反転させ又は裏返すことを必要とする。補間ステップ218の実施後に、データをステップ219において再び反転させ(即ち、再反転させ)、その後、これに追加の分析を施し又はかかるデータを出力データとしてユーザに提供する。
【0068】
図9〜図18は、1組の横方向回転振れ測定値中に存在する場合のあるサイドウォール突出部及び窪みを識別するためにデータセットの頂部トレース及び底部トレースをどのように分析すれば良いかの一例を提供している。かかる図は全て、横座標に沿って場所の点の数がプロットされた種々の横方向回転振れ測定値又は処理済データ値及び縦座標に沿ってミリメートル(mm)で表された測定変形量に対応したデータ点を示している。図9〜図18に記載された特定の例では、タイヤの1回転は、横座標に沿って表されている2048個のデータ点からなる。図9は、測定された横方向回転振れ値(即ち、サイドウォール変形量)の初期データセットを示している。図9に示された初期データセットは、条件付けデータセット、例えば、本明細書において説明したステップ204,206に従って平均化されると共に同期された測定値データを表すのが良い。一般に、次のデータ分析から理解されるように、約5mmのサイドウォール突出部は、ほぼ点1000のところに存在し、約5mmのサイドウォール窪みは、ほぼ点300のところに存在する。
【0069】
次に図10〜図12を参照すると、頂部データトレース(即ち、一般に、タイヤ表面上に設けられているトレッドブロック又はトレッド特徴部の頂部に対応した測定データ点)の処理がグラフ図で示されている。図10は、例えば、ステップ212に記載されている3点データ窓を備えたエロージョン前置フィルタの適用後における図9の元のデータセットを示している。図11は、ステップ214,216の適用後における同一のデータセットを示しており、かくして、凸包上に位置するものと判定された点の選択サブセットを示している。図12は、例えばステップ218に記載された補間の適用後における図11からのデータセットを示している。特に、図12に示された連続データ曲線を得るために充填補間ステップが実施される。図12に示されたフィルタリング処理済データセットと図9に示された初期データセットを比較することにより理解されるように、ほぼ点1000のところのサイドウォール突出部の検出は、取り出して識別するのが極めて容易である。
【0070】
次に図13〜図17を参照すると、追加の又は変形例としての処理が図9に示されている初期サイドウォール変形量データに対して実施されるのが良い。特に、図13〜図17で行われるデータフィルタリング処理は、具体的には、底部データトレース(即ち、一般に、タイヤ表面上に設けられているトレッドブロック又はトレッド特徴部の底部に対応する測定データ点)に関する。図13は、反転ステップ211の適用後における横方向回転振れ測定値(即ち、サイドウォール変形量測定値)のデータセットを表示している。特に、図13に示されているデータセットを得るために図9に示されているデータセットに負の1を乗算する。図13からのデータセットを例えばステップ212に記載されている3点窓を備えたエロージョン前置フィルタ及びフィルタを通る2回のパスに適用した後、図14に示されているようなデータセットが得られる。ステップ216からの凸包判定結果を図14のデータセットに適用すると、その結果として、図15にプロットされているようなデータセットが得られる。図16は、例えばステップ218に記載されている補間の適用後における図15からのデータセットを示している。具体的に説明すると、図16に表されている連続データ曲線を得るために充填補間ステップを実施する。次に、図16からの補間データセットをステップ219により再反転させて図17に示されているような最終底部トレースデータセットを得る。図17に示されているフィルタリング処理データセットを図19に示されている初期データセットと比較することにより理解されるように、ほぼ点300のところにおけるサイドウォール窪みの検出は、取り出すと共に識別するのが極めて容易である。
【0071】
図18は、底部及び/又は頂部トレッドトレースデータが分析されるのがどの潜在的なサイドウォール変形条件であるかに応じてどのように有用な場合があるかの明らかな比較結果を提供している。図18は、図12からの最終のフィルタリング処理頂部データセットがプロット181として重ね合わされると共に図17からの最終フィルタリング処理底部データセットがプロット182として重ね合わされた状態の図9からの初期データセットを示している。フィルタリング処理頂部データセットは、この特定の例では、ほぼ点1000のところでのサイドウォール突出部を検出するうえで明らかに良好であり、これに対し、フィルタリング処理底部データセットは、この特定の例では、ほぼ点300のところでのサイドウォール窪みを検出するうえで明らかに良好である。
【0072】
再び図1を参照すると、本発明の例示のシステム及び方法を実施する際に用いられる例示のハードウェアコンポーネントに関する追加の詳細がここに提供されている。特にレーザセンサ22を参照すると、例示の一実施形態は、測定原理として光学三角測量を採用した非接触型レーザ変位センサを利用している。各レーザセンサは、光の可視光線24をタイヤ10の標的面上に投射するレーザダイオードを含む。各標的スポットから反射された光は、光学受光システムを通って位置敏感素子に差し向けられる。像信号を効果的に捕捉するため、レーザセンサ22は、それぞれ、電荷結合デバイス(CCD)のアレイ又はリアルタイム表面補償(RTSC)を実行する一体型処理/フィルタ特徴部を備えた相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を更に有するのが良い。特定の例として、例えば独国オルテンバーグ所在のミクロ‐エプジロン(MICRO-EPSILON)社により製造されて販売されているオプトNCDTレーザセンサを用いるのが良い。
【0073】
別の例として、1つ又は2つ以上のセンサ22は、単一光線又は固定光点とは異なりシート状の光を放出するよう構成されたレーザセンサに対応するのが良い。かかるレーザシステムは、シート状光レーザ(SL)システムと呼ばれることがあり、かかるレーザシステムは、一緒に動作する多数の固定点(FP)レーザを必要としないで、タイヤ表面に沿って子午線平面を一度に測定することができる。
【0074】
レーザセンサ22の位置決めは、タイヤ表面に沿う所望の測定軌道に従って様々であって良い。レーザセンサ22がプラットフォーム26に対して設けられる場合、かかるプラットフォーム26の位置決めを制御モジュール28への入力に基づいて変更することができ、その結果、プラットフォーム26は、モータ32によって横方向軌道30に沿って移動可能であるようになっている。プラットフォーム26もまた、タイヤ10に対する角度位置が移動可能であり、その結果、レーザセンサ22の内包調整が最適測定範囲が得られるように生じることができるようになっている。プラットフォーム26上におけるレーザセンサ22の相対的位置決めは、レーザ制御モジュール28に対する類似の入力によって固定されても良く移動可能であっても良い。一例では、3つのレーザセンサ22は、タイヤ10の半径方向周囲に沿って多数の隣り合うトレッドリブ内に位置合わせされる。試験対象のタイヤ中のトレッドリブの個数よりも少ないレーザセンサ22が設けられている場合であっても、レーザセンサを種々の横方向位置に動かすことによって識別された各リブについて測定値を依然として得ることができる。
【0075】
理解されるべきこととして、レーザ制御モジュール28が図1にレーザセンサ22とは別個の単一のコンポーネントとして示されているが、多数のかかる制御装置を設けても良い(例えば、レーザセンサ1つ当たり1つ)。変形例として、1つ又は2つ以上のレーザ制御モジュールを実際に、別個に設けるのではなく、レーザセンサ22の一部として設けても良い。
【0076】
依然として図1を参照すると、レーザセンサ22に結合された追加のシステムモジュールは、光学エンコーダ34及びデータ収集装置36を含む。かかるモジュールは、レーザセンサに直接接続されても良く、或いは、例えばレーザ制御モジュール28又は他の中間インターフェイスモジュールを介して間接的にセンサに接続されても良い。
光学エンコーダ34は、レーザセンサ22によるタイヤ測定値のタイミングを協調させるのを助けるよう多数のデータチャネルを有するのが良い。例えば、1つのチャネルは、タイヤ1回転当たり複数個のデータ点を定めるようになった制御信号を提供することができ、別のチャネルは、データをタイヤ上の基準点に同期させるよう1回転につき1つの指標パルスを提供するようになった制御信号をもたらす。特定の一例では、光学エンコーダ34は、タイヤ測定値を得るために1回転当たり1000個以上の点(例えば、2048個の点)を定めるよう構成されている。これは、本発明を不必要に限定する観点であってはならないことが理解されるべきである。というのは、これよりも多くの数又は少ない数のデータ点を用いることができるからである。本発明の技術に用いられる光学エンコーダの一例は、例えばカスタム・センサーズ・アンド・テクノロジーズ(Custom Sensors & Technologies: CST)の一部門である米国カリフォルニア州ゴレタ所在のビーイーアイ・インダストリアル・エンコーダーズ(BEI Industrial Encoders: IED)社により販売されているModel H20(登録商標)インクリメンタルエンコーダに対応している。
【0077】
図1に示されているデータ収集装置36は、レーザセンサ22により得られて光学エンコーダ34により統合されるタイヤ測定値データのセットを効果的に捕捉する中間ストレージ場所として提供されるのが良い。データ収集装置36は、好ましくは、1回転当たり1つの指標パルスと関連した情報並びに光学エンコーダ34により定められるタイヤ1回転当たりの複数個の測定値データ点の各々に関するタイミング情報を記録する。かかるデータストレージを達成するため、データ収集装置36の一実施形態は、特に、アナログ‐ディジタル(A/D)変換機38及び生の測定値データの変換ディジタル形式をストレージするメモリ/メディア要素40を含む。他の例では、データ収集装置36は、数値を環境設定し、データを収集してこれを所定のファイル形式、例えば、ASCIIファイル又は他の適当な若しくは将来開発されるファイル形式でストレージするようになったオペレーティングソフトウェアを含むのが良い。加えて、波形フォーマットでのリアルタイムデータのセットアップ及び表示又は他のデータ表示のためのインターフェイスが利用可能である。特定の一実施形態では、例示のデータ収集装置36は、例えば、米国オハイオ州クリーブランド所在のアイオーテック(IOTech(登録商標))により販売されているウェーブブック(Wavebook)ブランドの収集システムである。
【0078】
測定値事後処理及びフィルタリング処理は、1つ又は2つ以上のコンピュータ42により実施されるのが良く、コンピュータ42は、それぞれ、1つ又は2つ以上のプロセッサ44を搭載するのが良い。ただし、説明を容易にすると共に分かりやすくするために、図1にはコンピュータ及びプロセッサが1つしか示されていない。事後処理及びフィルタリング処理機能は、変形例として、1つ又は2つ以上のサーバにより又は多数のコンピュータ計算及び処理装置により実施されても良い。一般に、プロセッサ44及び関連のメモリ/メディア要素48a,48b,48cは、種々のコンピュータにより実行可能な機能(即ち、ソフトウェアに基づくデータサービス)を実行するよう構成されている。
【0079】
少なくとも1つのメモリ/メディア要素(例えば、図1の要素48b)は、1つ又は2つ以上のプロセッサ44により実行されるコンピュータ可読及び実行可能命令の形態でのソフトウェア及び/又はファームウェアのストレージ専用である。他のメモリ/メディア要素(例えば、メモリ/メディア要素48a,48c)は、プロセッサ44によってもアクセス可能であると共にメモリ/メディア要素48bにストレージされているソフトウェア命令の影響を受けるデータをストレージするために用いられる。図1の種々のメモリ/メディア要素は、1つ又は2つ以上の様々なコンピュータ可読メディアの単一の部分又は多数の部分として設けられても良く、かかるコンピュータ可読メディアとしては、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、例えばDRAM、SRAM等)及び不揮発性メモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、磁気テープ、CD‐ROM、DVD‐ROM等)又はディスケット(フロッピー(登録商標)ディスク)、ドライブ、他の磁気利用ストレージメディア、光ストレージメディア等の任意の組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。図1は、3つの別々のメモリ/メディア要素48a,48b,48cを示しているが、かかるデバイス専用のコンテンツは、実際には、1つのメモリ/メディア要素又は多数の要素にストレージされるのが良い。データストレージの任意のかかる考えられる変形例及び他の変形例は、当業者であれば理解されよう。
【0080】
本発明の特定の一実施形態では、メモリ/メディア48への第1の部分は、本発明のタイヤ測定システム及び関連の処理方法のための入力データをストレージするよう構成されている。メモリ/メディア要素48aにストレージされる入力データは、測定機械12に結合されたレーザセンサ22に及び関連コンポーネントにより測定される生データを含むのが良い。または、メモリ/メディア要素48にストレージされる入力データは、所定のタイヤパラメータ、例えば、タイヤ半径、タイヤ幅、タイヤ重量、タイヤ圧力、タイヤ半径方向剛性、タイヤ接線方向剛性、タイヤ曲げ剛性、タイヤ引張り剛性、トレッド場所、一般的なタイヤデータ等(これらには限られない)を更に含むのが良い。かかる所定のパラメータは、メモリ/メディア要素48aにあらかじめプログラムされても良く、或いは、入力装置50にアクセスするユーザからの入力データとしてエンターされたときにメモリ/メディア要素48aにストレージ可能に提供されても良い。
【0081】
入力装置50は、コンピュータ42とのユーザインターフェイスとして働くよう構成された1つ又は2つ以上の周辺装置に対応するのが良い。例示の入力装置としては、キーボード、タッチスクリーンモニタ、マイクロホン、マウス等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0082】
第2のメモリ要素48bは、コンピュータにより実行可能なソフトウェア命令を含み、かかるソフトウェア命令は、プロセッサ44によって読み取られて実行されてメモリ/メディア要素48aにストレージされている入力データに作用し、それにより、第3のメモリ/メディア要素48cにストレージ可能に新たな出力データ(例えば、フィルタリング処理データ、波形ディスプレイ等)を作ることができる。この場合、出力データの選択された部分は、1つ又は2つ以上の周辺出力装置52に提供されるのが良い。
【0083】
出力装置52は、ディスプレイ、例えばモニタ、スクリーン等、プリンタ又はプロセス制御装置に対応するのが良い。プロセス制御装置は、タイヤ評価プロセス、例えばソーティング又はグレーディングを助け或いは構造的改造プロセス、例えば研削又は製造プロセス調整の実行を助けるようになった出力装置、制御装置機構又は他のモジュラ要素に対応するのが良い。評価プロセス、例えばソーティング又はグレーディングでは、一般に、測定されたタイヤ性能特性が或る所定の限度を下回っているかどうかを判定するのが良い。特性が許容限度内に収まっている場合、タイヤは、顧客に出荷可能な合格品とされるのが良い。許容限度を超えた場合、タイヤは、不合格品とされるか、或いは、修整プロセスを受けるのが良い。例示の修整プロセスは、タイヤ製造分野における当業者には理解されるように研削又は重量追加プロセスに従って特定の定められた場所でのタイヤの研削又はタイヤへの余分の重量の追加に対応している。変形例として、コンピュータ42による或る特定の特性の判定は、タイヤ製造に関与する種々のプロセス、例えば、種々のゴムコンパウンド層及び/又は他の適当な材料を被着させてタイヤカーカスを形成するステップ、タイヤベルト部分及びトレッド部分を提供してタイヤクラウンブロックを形成するステップ、完成した生タイヤを硬化させるステップ等(これらには限定されない)のうちの選択されたプロセスを改良するようフィードバック修整において利用されても良い。
【0084】
本発明をその特定の実施形態に関して詳細に説明したが、当業者であれば、上記の内容を理解すると、かかる実施形態の変更例、変形例及び均等例を容易に想到することができることが理解されよう。したがって、本発明の開示内容の範囲は、限定ではなく、例示として解され、本発明の開示内容は、当業者には容易に明らかである本発明の内容のかかる改造例、変形例及び/又は追加例が含まれることを排除するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの幾何学的測定値を処理する方法であって、
タイヤの表面を測定して前記所与の値に対するそれぞれの角度位置で複数のパラメータ値から成る幾何学的測定値の電子データセットを得るステップと、
前記パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸閉包上に位置する選択されたパラメータ値を電子的に識別するステップと、
前記凸閉包上に位置する前記パラメータ値のうちの識別された選択パラメータ値を電子的に補間してフィルタリング処理された幾何学的測定値の最終データセットを得るステップと、を有する、方法。
【請求項2】
前記得られたデータセットに含まれていて、隣り合うパラメータ値よりも大きな大きさを持つ選択されたパラメータ値を電子的にフィルタリング処理するステップを更に有し、前記電子的フィルタリング処理ステップは、前記電子的識別ステップの実施前に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タイヤの測定される前記表面は、前記タイヤのサイドウォール又はショルダに沿う少なくとも1つの場所を含み、前記方法は、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の前記最終データセットを電子的に分析してサイドウォール突出部及びサイドウォール窪みのうちの1つ又は2つ以上の形態をしたサイドウォール変形特性を識別するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記タイヤの測定される前記表面は、前記タイヤのクラウンに沿う少なくとも1つの場所を含み、前記方法は、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを複数の調和成分に分解するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記電子的識別ステップの実施前に、前記幾何学的測定値のデータセットを反転させるステップと、前記電子的補間ステップの実施後に、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを反転させるステップとを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記電子的識別ステップ及び前記電子的補間ステップは、前記測定ステップで当初得られた前記幾何学的測定値のデータセットについて1回実施され、そして、前記幾何学的測定値の反転データセットについて別々に実施され、その結果、フィルタリング処理済み幾何学的測定値の第1及び第2の最終データセットがそれぞれ得られる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の第1の最終データセットは、サイドウォール突出部が存在しているかどうかを識別するために分析され、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の第2の最終データセットは、サイドウォールに窪みが存在するかどうかを識別するために分析される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたパラメータ値を電子的に識別する前記ステップは、各パラメータ値を第1及び第2の互いに直交する方向で測定された前記所与のタイヤの前記表面に沿う曲率場所で表される表面値に変換するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
各パラメータ値は、それぞれの角度位置θnのところで或る所定の整数値Nについて回転振れ値un(n=1,2,3,...,N)に対応し、前記幾何学的測定値のデータセット中の各回転振れ値は、次の方程式、即ち、Rnx=(R0+un)cosθn及びRnz=(R0+un)sinθnにより定められる第1及び第2の量Rnx及びRnzにより表わされた2次元形態に変換される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
各パラメータ値は、半径方向回転振れ値に対応し、R0は、測定された前記タイヤと関連した公称半径から成る、請求項8記載の方法。
【請求項11】
各パラメータ値は、横方向回転振れ値に対応し、R0は、選択された一定値から成る、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記幾何学的測定値の電子データセットは、半径方向回転振れ測定値及び横方向回転振れ測定値のうちの一方を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記電子的補間ステップは、直線補間、3次スプライン補間又は充填補間を実施するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
1つ又は2つ以上の所定の速度で回転する所与のタイヤと関連した測定値特性を処理するタイヤ測定システムであって、前記タイヤ測定システムは、特に、
測定値をストレージするようになった第1のメモリを有し、各測定値は、前記所与のタイヤに対する角度位置で得られた幾何学的パラメータ値に対応し、
コンピュータにより実行可能な命令の形態をしたソフトウェアをストレージするようになった第2のメモリを有し、
前記第1及び前記第2のメモリに結合されていて、前記第2のメモリにストレージされている前記コンピュータ実行可能命令を選択的に実行して前記第1のメモリにストレージされている前記測定値を処理するよう構成された少なくとも1つのプロセッサを有し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値を識別する機能及び前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記凸包上に位置する前記識別された選択幾何学的パラメータ値を補間する機能を実行してフィルタリング処理済み測定値の最終データセットを得るために前記第2のメモリにストレージされている前記コンピュータ実行可能命令を実行する、タイヤ測定システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記得られたデータセットに含まれていて、隣り合う値よりも大きな大きさを有する選択された幾何学的パラメータ値をフィルタリング処理するよう構成され、前記選択された幾何学的パラメータ値のフィルタリング処理は、前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値の識別前に起こる、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記所与のタイヤの表面に沿う曲率場所で表わされ、第1及び第2の互いに直交する方向に測定された幾何学的パラメータ値を特徴付けることによって前記複数の幾何学的パラメータ値を2次元形態に変換するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項17】
前記複数の幾何学的パラメータ値は、回転振れ値に対応し、前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記測定値セット中の各角度位置θnのところで或る所定の整数値Nについて各回転振れ値un(n=1,2,3,...,N)を次の方程式、即ち、Rnx=(R0+un)cosθn及びRnz=(R0+un)sinθnにより定められる第1及び第2の量Rnx及びRnzにより表わされた2次元形態に変換することにより複数の回転振れ値を2次元形態に変換するよう構成されている、請求項16記載のタイヤ測定システム。
【請求項18】
前記幾何学的パラメータ値は、半径方向回転振れ値を含み、R0は、測定された前記タイヤと関連した公称半径から成る、請求項17記載のタイヤ測定システム。
【請求項19】
前記幾何学的パラメータ値は、横方向回転振れ値を含み、R0は、選択された一定値から成る、請求項17記載のタイヤ測定システム。
【請求項20】
前記第1のメモリにストレージされている前記測定値は、半径方向回転振れ測定値を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記複数の回転振れ測定値を複数の調和成分に分解するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項21】
前記第1のメモリにストレージされている前記測定値は、横方向回転振れ測定値を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記フィルタリング処理済み回転振れ測定値の最終データセットを分析して横方向回転振れ測定値についてサイドウォール変形場所を識別するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、直線補間、3次スプライン補間又は充填補間を実施することにより前記幾何学的パラメータ値のうちの識別された選択幾何学的パラメータ値を補間するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項23】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値を識別する前に前記測定値セット中の各幾何学的パラメータ値を反転させると共に前記幾何学的パラメータ値のうちの識別された選択幾何学的パラメータ値を補間した後に前記フィルタリング処理済み測定値の最終データセットを反転させるよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行される前記識別及び前記補間は、前記第1のメモリにストレージされている測定値の当初のデータセットについて1回実施され、そして測定値の反転データセットについて別々に再度実施され、その結果、フィルタリング処理済み測定値の第1及び第2の最終データセットがそれぞれ得られる、請求項23記載のタイヤ測定システム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記フィルタリング処理済み測定値の第1の最終データセットを分析してサイドウォール突出部があるかどうかを識別すると共に前記フィルタリング処理済み測定値の第2の最終データセットを分析してサイドウォールに窪みがあるかどうかを識別するよう構成されている、請求項24記載のタイヤ測定システム。
【請求項26】
所与のタイヤを確実に受け入れて前記タイヤを前記1つ又は2つ以上の所定の速度で回転させるようになった測定機械と、
少なくとも1つのセンサとを有し、前記少なくとも1つのセンサは、前記センサと前記タイヤ表面との間の変位距離を測定して1つ又は2つ以上の軌道の各々のところで複数回の回転について前記所与のタイヤの半径方向又は横方向周囲に沿うそれぞれの角度位置で複数の半径方向又は横方向回転振れ値から成るデータセットを求めるために前記所与のタイヤに対して位置決めされており、前記データセット中の各値は、所与の角度位置のところでの前記複数回の回転の各々について前記測定された回転振れ値の平均値を含む、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項1】
タイヤの幾何学的測定値を処理する方法であって、
タイヤの表面を測定して前記所与の値に対するそれぞれの角度位置で複数のパラメータ値から成る幾何学的測定値の電子データセットを得るステップと、
前記パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸閉包上に位置する選択されたパラメータ値を電子的に識別するステップと、
前記凸閉包上に位置する前記パラメータ値のうちの識別された選択パラメータ値を電子的に補間してフィルタリング処理された幾何学的測定値の最終データセットを得るステップと、を有する、方法。
【請求項2】
前記得られたデータセットに含まれていて、隣り合うパラメータ値よりも大きな大きさを持つ選択されたパラメータ値を電子的にフィルタリング処理するステップを更に有し、前記電子的フィルタリング処理ステップは、前記電子的識別ステップの実施前に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タイヤの測定される前記表面は、前記タイヤのサイドウォール又はショルダに沿う少なくとも1つの場所を含み、前記方法は、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の前記最終データセットを電子的に分析してサイドウォール突出部及びサイドウォール窪みのうちの1つ又は2つ以上の形態をしたサイドウォール変形特性を識別するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記タイヤの測定される前記表面は、前記タイヤのクラウンに沿う少なくとも1つの場所を含み、前記方法は、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを複数の調和成分に分解するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記電子的識別ステップの実施前に、前記幾何学的測定値のデータセットを反転させるステップと、前記電子的補間ステップの実施後に、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の最終データセットを反転させるステップとを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記電子的識別ステップ及び前記電子的補間ステップは、前記測定ステップで当初得られた前記幾何学的測定値のデータセットについて1回実施され、そして、前記幾何学的測定値の反転データセットについて別々に実施され、その結果、フィルタリング処理済み幾何学的測定値の第1及び第2の最終データセットがそれぞれ得られる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の第1の最終データセットは、サイドウォール突出部が存在しているかどうかを識別するために分析され、前記フィルタリング処理済み幾何学的測定値の第2の最終データセットは、サイドウォールに窪みが存在するかどうかを識別するために分析される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択されたパラメータ値を電子的に識別する前記ステップは、各パラメータ値を第1及び第2の互いに直交する方向で測定された前記所与のタイヤの前記表面に沿う曲率場所で表される表面値に変換するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
各パラメータ値は、それぞれの角度位置θnのところで或る所定の整数値Nについて回転振れ値un(n=1,2,3,...,N)に対応し、前記幾何学的測定値のデータセット中の各回転振れ値は、次の方程式、即ち、Rnx=(R0+un)cosθn及びRnz=(R0+un)sinθnにより定められる第1及び第2の量Rnx及びRnzにより表わされた2次元形態に変換される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
各パラメータ値は、半径方向回転振れ値に対応し、R0は、測定された前記タイヤと関連した公称半径から成る、請求項8記載の方法。
【請求項11】
各パラメータ値は、横方向回転振れ値に対応し、R0は、選択された一定値から成る、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記幾何学的測定値の電子データセットは、半径方向回転振れ測定値及び横方向回転振れ測定値のうちの一方を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記電子的補間ステップは、直線補間、3次スプライン補間又は充填補間を実施するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
1つ又は2つ以上の所定の速度で回転する所与のタイヤと関連した測定値特性を処理するタイヤ測定システムであって、前記タイヤ測定システムは、特に、
測定値をストレージするようになった第1のメモリを有し、各測定値は、前記所与のタイヤに対する角度位置で得られた幾何学的パラメータ値に対応し、
コンピュータにより実行可能な命令の形態をしたソフトウェアをストレージするようになった第2のメモリを有し、
前記第1及び前記第2のメモリに結合されていて、前記第2のメモリにストレージされている前記コンピュータ実行可能命令を選択的に実行して前記第1のメモリにストレージされている前記測定値を処理するよう構成された少なくとも1つのプロセッサを有し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値を識別する機能及び前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記凸包上に位置する前記識別された選択幾何学的パラメータ値を補間する機能を実行してフィルタリング処理済み測定値の最終データセットを得るために前記第2のメモリにストレージされている前記コンピュータ実行可能命令を実行する、タイヤ測定システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記得られたデータセットに含まれていて、隣り合う値よりも大きな大きさを有する選択された幾何学的パラメータ値をフィルタリング処理するよう構成され、前記選択された幾何学的パラメータ値のフィルタリング処理は、前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値の識別前に起こる、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記所与のタイヤの表面に沿う曲率場所で表わされ、第1及び第2の互いに直交する方向に測定された幾何学的パラメータ値を特徴付けることによって前記複数の幾何学的パラメータ値を2次元形態に変換するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項17】
前記複数の幾何学的パラメータ値は、回転振れ値に対応し、前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記測定値セット中の各角度位置θnのところで或る所定の整数値Nについて各回転振れ値un(n=1,2,3,...,N)を次の方程式、即ち、Rnx=(R0+un)cosθn及びRnz=(R0+un)sinθnにより定められる第1及び第2の量Rnx及びRnzにより表わされた2次元形態に変換することにより複数の回転振れ値を2次元形態に変換するよう構成されている、請求項16記載のタイヤ測定システム。
【請求項18】
前記幾何学的パラメータ値は、半径方向回転振れ値を含み、R0は、測定された前記タイヤと関連した公称半径から成る、請求項17記載のタイヤ測定システム。
【請求項19】
前記幾何学的パラメータ値は、横方向回転振れ値を含み、R0は、選択された一定値から成る、請求項17記載のタイヤ測定システム。
【請求項20】
前記第1のメモリにストレージされている前記測定値は、半径方向回転振れ測定値を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記複数の回転振れ測定値を複数の調和成分に分解するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項21】
前記第1のメモリにストレージされている前記測定値は、横方向回転振れ測定値を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記フィルタリング処理済み回転振れ測定値の最終データセットを分析して横方向回転振れ測定値についてサイドウォール変形場所を識別するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、直線補間、3次スプライン補間又は充填補間を実施することにより前記幾何学的パラメータ値のうちの識別された選択幾何学的パラメータ値を補間するよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項23】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記幾何学的パラメータ値のうちで、前記値セット全体を包囲している凸包上に位置する選択された幾何学的パラメータ値を識別する前に前記測定値セット中の各幾何学的パラメータ値を反転させると共に前記幾何学的パラメータ値のうちの識別された選択幾何学的パラメータ値を補間した後に前記フィルタリング処理済み測定値の最終データセットを反転させるよう構成されている、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行される前記識別及び前記補間は、前記第1のメモリにストレージされている測定値の当初のデータセットについて1回実施され、そして測定値の反転データセットについて別々に再度実施され、その結果、フィルタリング処理済み測定値の第1及び第2の最終データセットがそれぞれ得られる、請求項23記載のタイヤ測定システム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのプロセッサは、更に、前記フィルタリング処理済み測定値の第1の最終データセットを分析してサイドウォール突出部があるかどうかを識別すると共に前記フィルタリング処理済み測定値の第2の最終データセットを分析してサイドウォールに窪みがあるかどうかを識別するよう構成されている、請求項24記載のタイヤ測定システム。
【請求項26】
所与のタイヤを確実に受け入れて前記タイヤを前記1つ又は2つ以上の所定の速度で回転させるようになった測定機械と、
少なくとも1つのセンサとを有し、前記少なくとも1つのセンサは、前記センサと前記タイヤ表面との間の変位距離を測定して1つ又は2つ以上の軌道の各々のところで複数回の回転について前記所与のタイヤの半径方向又は横方向周囲に沿うそれぞれの角度位置で複数の半径方向又は横方向回転振れ値から成るデータセットを求めるために前記所与のタイヤに対して位置決めされており、前記データセット中の各値は、所与の角度位置のところでの前記複数回の回転の各々について前記測定された回転振れ値の平均値を含む、請求項14記載のタイヤ測定システム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−513029(P2012−513029A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542464(P2011−542464)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068641
【国際公開番号】WO2010/080571
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068641
【国際公開番号】WO2010/080571
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【Fターム(参考)】
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