説明

広帯域幅レーザーを用いたスペクトルビーム結合

【解決手段】 本発明は、スペクトルビーム結合のシステムおよび方法を提供するものであり、複数の分散素子をそれぞれ使って空間チャープ(揺らぎ)を複数の入力ビームレットの各々に適用し、前記空間チャープを取り除くように構成された分散素子を使用して前記空間チャープ済みのビームレットを単一の平行(コリメート)出力ビームへと結合するシステムおよび方法である。ある実施形態においては、各分散素子はレンズと組み合わされた回折格子であり、前記レンズは、前記回折格子に焦点を共有し、且つ光線スペクトル成分の横方向分散が生成されるフーリエ面にも焦点を共有する。最後のレンズ−回折格子ペアはレンズと回折格子を含み、前記レンズは前記回折格子に焦点を共有し、且つ前記フーリエ面にも焦点を共有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスペクトルビーム結合(Spectral Beam Combination:SBC)に関する。より具体的には、本発明は広帯域幅レーザーを用いたSBCに関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトルビーム結合(SBC)は将来有望な概念であって、複数の低出力ビームを結合し、単一で高出力の光線を形成するものである。SBCでは、それぞれの低出力レーザー素子が離散的な波長のビームレット(beamlets)を放出し、複数の当該レーザー素子からの前記ビームレットは、スペクトル分散素子を使用し結合されてモノリシックな(つまり一体化した)出力を形成する。この方法では、前記ビームレット個別の光線品質が維持され、単一素子で得られるより高出力なスケールが可能となる。一般的に光線品質とは、レーザーがどれだけ集中的に集光できるかの査定であり、回折が制限されるガウス・ビームは、達成し得る範囲内で最高の光線品質を達成する。様々な評価尺度が光線品質を示すために使われ、例えば、ビームパラメータ積(Beam Parameter Product:BPP)があり、それはビームウエストにおけるビーム半径と遠視野ビーム拡散の積である。M値は、空間周波数領域での前記ビーム(二次モーメント)帯域幅と、それに対応するビームウエストにおいてビーム半径が同じのガウス・ビームの帯域幅との比率であり、前記M値の逆数も使われる。
【0003】
SBC技術の先行技術は一般的に、各ビームレットが狭スペクトル線幅を示すことが要求され、それは角分散を要因とする光線品質の喪失を結合要素から避けるためである。しかしながら、現代の高出力の(例えば、数キロワット(multi−kilowatt)クラスの)ファイバーレーザー(単一領域モード)は、一般的に1nm(〜300GHz)規模の帯域幅を示し、そのままSBCアーキテクチャに使用することが阻まれる。図1はSBC先行技術概念を示すものであって、広帯域幅リニアファイバーレーザーアレイ10の出力を結合済み出力ビーム60へと結合し、前記離散波長光線12をアレイ面12から焦点距離fに配置されたフーリエ変換レンズ30を使って、回折格子40に集光することによって結合される。回折格子40によって回折が起きると、前記離散波長光線12は同一方向に伝播し、単一光線出力60へと結合される。選択的な出力結合ミラー50は、前記アレイ10の各ファイバーに対し、波長選択的フィードバックを提供することができる。しかしながら、前記ファイバーレーザーが、独立して定められた波長を有する増幅器として構成されている場合、前記出力結合ミラー50は必要ない。もし前記離散波長入力光線12が狭スペクトル帯域幅のものであれば、このシステムの結合光線60の領域輝度は、前記離散波長光線12の輝度を超え高くなる。しかしながら、もし前記離散波長光線入力12が広スペクトル帯域幅のものであれば、この領域輝度の増加は、回折格子40による角分散を原因とする領域輝度の減少によって、部分的、或いは完全に打ち消されてしまう。前記アレイ10における各ファイバーレーザー素子のスペクトルが広くなればなるほど、スペクトル輝度、すなわち結合光線60全体の光線品質も、角分散によって一層悪化する。
【0004】
米国特許第7,199,924号は、広帯域幅レーザーのSBCによって引き起こされる前記角分散を、2つの平行な回折格子を直列に使用して克服する方法を開示する。第1の回折格子がビームレットのアレイで角分散を起こすと、第2の回折格子上でビームレットが重なりあう結果となり、そこで角分散が取り除かれ、前期ビームレットは重なり合いながら順伝播する。しかし、この方法は確かに角分散を排除するが、それは、結合面で各ビームレットのスペクトル成分が横方向に分散するという代償がある。これは、ビームレットに"空間チャープ(spatial chirp)"を与えることとして知られている。当該空間チャープは、通常は拡大中に起こり得るビームレット拡散の同時減少がない状態のまま、第二の回折格子上での前記ビームレットのスポットサイズを大きくする。それはすなわちBPPの増加と見なされ、光線品質の損失に相当する。空間チャープ由来の光線品質の損失は、角分散によって起こり得る光線品質の損失と同等である。
【0005】
高出力ファイバーレーザーの帯域幅を狭める試みが進められるなか、狭帯域出力(例えば、数GHz)に関する前記先行技術は、1kW以下でしかない。従って、複数の広帯域幅レーザー出力を、構成要素であるそれぞれの光線と実質的に同じ光線品質を示すような単一の光線へと結合する、改良済みSBC技術とは、出力パワーが1kWより高いファイバーレーザーを結合するか、若しくは、如何なる出力レベルの入力ファイバーレーザーアレイについて、狭スペクトル帯域幅の必要性の緩和をすることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主目的は、上述の先行技術における、1若しくは2以上の問題点を解決するための、スペクトルビーム結合のシステムと方法を提供することにある。
【0007】
本発明は、上記及びその他の目的を達成するためのスペクトルビーム結合システムとその方法を提供するものであって、それは1若しくは2以上の分散素子を使って複数のビームレットそれぞれに空間チャープ(揺らぎ)が加えられるものであり、前記空間チャープ済みビームレットが単一平行(コリメート)出力ビームへと結合されるのに先立ち、1若しくは2以上の出力回折格子によってフーリエ面でタイル化されるものである。
【0008】
本発明の第1の側面によると、スペクトル結合を使って複数のレーザービームレットを単一コリメート出力ビームに結合するシステムであって、複数のビームレットを放出する複数の広帯域レーザー源と、複数のビームレットを放つ複数の広帯域レーザー源と、複数のビームレットを平行化する複数のコリメートレンズと、前記コリメートビームレットに空間チャープを加え、且つ前記ビームレットのスペクトル成分がフーリエ面上で横方向にずれるように、前記空間チャープ済みビームレットをフーリエ面にてタイル化するよう構成された空間チャーパー(spatial chirper)と、前記空間チャーパーによって引き起こされた空間チャープを取り除き、前記ビームレットを単一コリメート出力ビームへと結合するよう構成された分散ビーム結合器とを含む。
【0009】
本発明の第2の側面によれば、スペクトルビーム結合システムの光線品質を向上するための方法であって、複数の広帯域レーザー源から複数のレーザービームレットを放出する工程と、それぞれ複数のコリメートレンズを使って各ビームレットを平行化する工程と、スペクトルビーム素子の横方向分布がフーリエ面で生じるよう配置された、少なくとも1つの分散素子を含む空間チャーパーを用いて、各ビームレットに空間チャープを加える工程と、空間チャープ済みの前記ビームレットを単一のコリメート済み出力ビームに結合する工程とを含む。
【0010】
本発明の更なる目的と利点及び、本発明の様々な実施形態の構造と運用が、添付の図面(同じ構成部品を指すのに同じ参照番号が使われている)への参照と共に以下に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、SBC概念の先行技術である。
【図2】図2は、本発明の実施形態による広帯域幅SBCシステムである。
【図3】図3は、本発明の実施形態による広帯域幅SBCシステムである。
【図4】図4は、本発明の実施形態による空間チャープを加えるためのレンズ−回折格子ペアを示すものである。
【図5】図5は、フーリエ面について対称的に配置された2つのレンズ−回折格子ペアを示すものである。
【図6】図6は、本発明の実施形態による第1のレンズ−回折格子ペアと、第2のレンズ−回折格子ペアを示すものである。
【図7】図7及び図8はそれぞれ側面図と平面図であり、本発明による、広帯域幅SBCシステムのもう1つの実施形態のである。
【図8】図7及び図8はそれぞれ側面図と平面図であり、本発明による、広帯域幅SBCシステムのもう1つの実施形態のである。
【図9】図9は、本発明による、広帯域幅SBCシステムの更にもう1つの実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における広帯域SBCシステム100の実施形態は、図2に概略的(に図示される。前記システム100は、広帯域ファイバーアレイ110と、回折格子140と、出力結合ミラー150と、前記広帯域ファイバーアレイと前記回折格子との間に配置される、前記ファイバーアレイからのビームレットを、前記回折格子に集光するレンズ130とを含み、図1に示される先行技術システムのものと類似する。しかしながら、システム100においては、各ビームレットを回折格子140に集光する前に空間チャープを引き起こすことによって、広帯域ファイバーアレイ110からの各ビームレットが相殺され、分散的なビーム結合光学素子(例えば回折格子140)による角分散が修正される。本実施形態においては、前記空間チャープは空間チャーパー120によって各ビームレットに引き起こされる。そしてそれは例えば、対となるレンズ(f)122及び(f)126の間に配置される分散素子124を含むことがある。レンズ(f)122は、前記広帯域110と分散素子124との間に配置され、前記アレイからの前記出力をコリメートする。レンズ(f)126は、前記分散素子と共焦点で位置決めされ、レンズ130と共焦点で位置決めされたフーリエ面128上の空間で、前記ビームレットがタイル化する。空間チャープ化された前記ビームの適切なタイル化は、レンズ130と回折格子140によって前記ビームレットからスペクトル的に単一のコリメート済み出力ビームへとフーリエ面128において結合することを可能にする。図示されるように、光線出力がそれから出力結合ミラー150を通り抜けることもあり得る。前期出力結合ミラー150は、前記コリメート出力ビームの出力を、レーザー発振が起こるように、広帯域ファイバーアレイに反射し返す。前述のアプローチは、空間的且つスペクトル的に分散したレーザー光源をフーリエ面128で効率よく結合し、すなわち従来の狭帯域SBCで必要とされる、継続的に分布した単色ファイバーアレイ10に類似する。
【0013】
図3は、本願に関するもう一つの広帯域SBCシステム200を図示する。広帯域SBCシステム200は、図2に図示される前記システムと類似するが、各ビームレットに空間チャープを引き起こすための、レンズ−回折格子ペア270のアレイを含む。特定すると、システム200は、入力レーザービームのアレイ若しくは、例えば広帯域ファイバーアレイからのビームレットと、入力ビームレットの数に対応するレンズ−回折格子ペア270のアレイと、最終的なレンズ−回折格子ペア280とを含む。便宜的にに、色の異なる2つの入力ビームレットと2つのレンズ−回折格子ペア270が図示されている。しかしながら、この概念は、前記レンズ−回折格子ペアの適切な選定と配置によって、N個の多色入力源ビームレットとN個のレンズ−回折格子ペア270に一般化することが可能であることは理解されるものである。各レンズ−回折格子ペア270は、回折格子(G)224と、焦点距離fと光学軸(OA)を有するレンズ(f)226とを含み、"フーリエ面"と記述される平面228上に回折光を集光すべく、前記回折格子と共焦点であるよう位置決めされ、前記広帯域コリメートレーザー光線のスペクトル成分は横方向に分布し、これはレインボーカラー効果として図に示される。この方法においては、各レンズ−回折格子ペア270が空間チャーパーとして機能する。レンズ−回折格子ペア280は、レンズ軸(LA)と光学軸(OA)を有するレンズ(f)230と、回折格子(G)240とを含み、レンズ(f)230の前記光学軸(OA)は、前記空間チャーパーの光学軸(OA)から横方向にずれて配置される。前記システムは、図1若しくは2に図示されるタイプの、出力結合ミラーを含むこともある。
【0014】
図4は、システム200における、単一のレンズ−回折格子ペア270を示し、本願の実施形態において、レンズ−回折格子ペアがどのように空間チャーパーとして使用されるかを図示する。図示されているように、多色性広帯域コリメートレーザー光線は、回折格子(G)224により回折し、青(b)と赤(r)の光線で表されるような、スペクトル光線成分が角分散する。焦点距離がfのレンズ226は、回折格子(G)224と共焦点に置かれ、前記回折光は、レンズ226のfの下流に位置する平面228に集光する。上で述べられた通り、平面228は"フーリエ面"として言及される。なぜなら、レインボーカラー効果として概略的に図で示されているように、広帯域コリメートレーザー光線のスペクトル成分は横方向に分散するからである。
【0015】
図5は、光学軸(OA)と同一直線上にあるフーリエ面228について、対照的に配置されるレンズ−回折格子ペア270とレンズ−回折格子ペア280とを示し、第一のレンズ−回折格子組合せを使って空間チャープを作成し、前記空間チャープを第二のレンズ−回折格子組合せで取消すという概念を示している。当該光学配置において、元の多色性広帯域コリメートレーザー光線が実質的に出力レーザー光線として再構築される。これは、分散した前記スペクトルを、元のレンズ−回折格子ペア270を通過しに戻るよう逆反射するために平面ミラーをフーリエ面228に位置決めすることと同等のことである。
【0016】
図6は、システム200における単一のレンズ−回折格子ペア270を示し、前記レンズ−回折格子ペアを、第二のレンズ−回折格子ペア280の光学軸に相対的な位置に配置することの効果を明示するものである。ここでは、レンズ−回折格子ペア280は、レンズ軸(Lens Axis:LA)を有するレンズ(f)230と、回折格子(G)240とを含み、レンズ−回折格子ペア270の前記光学軸(OA)に対して、横方向にずらして配置(transversely displaced)される。図6では、前記入力レーザー光線のスペクトル成分は、青(b)と緑(g)の光線によって示される。図5と図6の比較によって、当該横方向ずらし配置による唯一の影響は、回折格子G上への出力ビームの軌跡が、元のずらしと同じ分だけ移動することであると明らかにされる。図3に図示されるシステム200は、N個のレンズ−回折格子ペアの組合せが、直線的なアレイとして、第二のレンズ−回折格子ペアの光学軸に対して横側に配置されていると理解される。
【0017】
システム200の運用において、各入力広帯域コリメートレーザー光線は、光線のスペクトル成分を角分散するそれぞれの回折格子Gによって回折され、第一のレンズ−回折格子ペア270については青(b)や緑(g)の光線として、そして第二のレンズ−回折格子ペア270については赤(r)やオレンジ(o)として示される。それぞれの各レンズfは、空間チャープ光線をフーリエ面228に集光して、タイル状スペクトルを生成するする。フーリエ面228における前記空間チャープ光線の適切なタイル化は、レンズ−回折格子ペア280が前記ビームレットを単一コリメート出力ビームとしてスペクトル的に結合するのを可能にする。違う視点から見た場合、前記フーリエ面228は、単色の発散ビームレットをそれぞれ放出するN個の仮想ファイバーレーザーのソースとして見なすこともできる。、前記フーリエ面228の右側への光学配置は、N個の狭帯域幅ファイバーレーザーのSBCの標準的な状態(canonical Situation)に対応する。
【0018】
図7及び図8は、本発明による、広帯域SBCシステム300のもう一つの実施形態を示し、入力回折格子ペア370が、各ビームレットに空間チャープを引き起こすための空間チャーパー320として使用されるものであり、その間出力回折格子ペア380は、スペクトルビーム結合に使用される。更に特定すると、システム300は、入力レーザービームレット若しくはビームレット312のアレイと(例えば広帯域ファイバーアレイ310からのもの)、前記ビームレットをコリメートするよう構成されたレンズのアレイと、回折格子370と380のペアとを含み、それらは、対称面の複数の折り返しミラーについて対称に配置され、第一の回折格子ペア370が各コリメートビームレットに空間チャープを引き起こし、そしてそれは前記チャープビームレットを対称面若しくはフーリエ面にて空間的にタイル化するものであり、前記ミラーが前記空間的にタイル化されたビームレットを出力回折格子ペアに誘導し、前記出力回折格子ペア380が前記ビームレットを単一の光線へと結合するものである。便宜的に4つの入力ビームレット312が図示されている。しかしながら、この概念は、N個の入力ソースビームレットとして一般に理解されるものである。前記入力回折格子ペア370は、空間チャープを入力ビームレットに引き起こすよう位置決めされた第一の回折格子(G1)324と、前記チャープビームレットを受け取り、それらをレインボーカラー効果で示される対称面にて空間的にタイル化する第二の回折格子(G)326とを含む。図示された実施形態では、前記空間タイル化が分散面に対して直角な平面でコンパクトに実施されている。折り返しミラー375は、フーリエ面に沿って前記空間チャープビームレットを出力回折格子ペアに誘導するために配置される。出力回折格子ペア380は、第3の回折格子(G)330と第4の回折格子(G)340とを含み、それらは、前記空間チャープビームレットが第3の回折格子から第4の回折格子へと回折し、それによって単一出力ビームに結合されるよう配置される。図7及び図9は単一の大きな入力回折格子ペアを示すが、実際にはこれらは各入力ビームレットに対する個別の素子であってもよい。
【0019】
図9は本発明による、広帯域SBCシステム400のもう1つの実施形態を示し、それは図7及び図8に図示されるものと類似するが、ここではチャープ体積ブラッグ回折格子(Chirped Volume Bragg Grating:CVBG)が、空間チャーパーを各ビームレットに引き起こす空間チャーパーとして使用される。先の実施形態のように、前記入力ビームレット412はレンズによってコリメートされ、出力回折格子ペア480がスペクトルビーム結合に使用される。CVBGは、指数変調が光熱ガラスにエンコードされる体積ホログラム装置である。適切な変調プロファイルの設計により、前記装置は、素材の異なる深さにおいて異なる波長を反射させるようにすることが可能である。この装置は、レーザーパルスに、時間チャープ若しくは空間チャープを引き起こすのに使用することができる。しかしながら、もし入力レーザー回折格子ベクトルに対する角度で入力レーザーが前記CVBGに入射する場合、異なる波長での異なる侵入深さのせいで、前記装置は空間チャープを反射光線に引き起こす。一旦ビームレットが空間チャープ化されると、空ちゃんチャープビームレットは折り返しミラーを使ってフーリエ面で同時にタイル化され、最後の出力回折格子ペア480から回折するとすぐに、で前記ビームレットが互いに重なり合い空間チャープが無い状態で、回折限界まで順伝播する。
【0020】
一実施形態において、前記レーザーアレイは、約1mm間隔での一次元的の直線配列で配置され、約20〜約100幅の帯域幅レーザーを含む。一実施形態において、前記の各レーザーの帯域幅は約1nmであり、レーザーの出力パワーはおよそ1kwからおよそ100kwである。1実施形態において、レンズ−回折格子ペア270内の各レンズfの焦点距離はおよそ1mであり、一方、レンズ−回折格子ペア280内のレンズfの焦点距離はおよそ1mである。如何なる適切な分散素子を使用することができるが、前記回折格子GとGは、好ましくは、高出力であり、誘電体コーティングがなされた、反射回折格子である。
【0021】
上記から、本発明に係る実施形態は、SBCビーム結合光学によって引き起こされる分散を、各広帯域幅ファイバーアレイビームレットを単一のコリメート出力ビームへと結合する前に"予め相殺"することによって、修正できることが理解されるものである。本発明によって認識されるシステムと方法は、回折限界の光線品質及び高出力のアウトプットが要求される、例えば、ミサイル防衛のためのレーザー兵器システムや、砲兵による防衛、精密照準爆撃などの様々な応用に適用される。更に、例えば図3の260として破線で示されたような1若しくはそれ以上の光学部品の位置または配向を調整することにより、アクティブ位置制御サブシステム(active postioning cotrol subsystem)は正確にタイル化(例えば、フーリエ面での空間チャープスペクトルの位置決め)するのに使用され得る。
【0022】
本発明をその特定の実施形態と共に説明してきたが、多くの代替手段、修正、及び変更が可能なことは当業者にとって明らかである。例えば、誘電体コーティングされた反射型回折格子を分散素子として使用することが望ましいが、これに限定されるものではないが反射型回折格子又は通過型回折格子を含む適切なあらゆる分散素子が使用できることは理解されるものである。更に、レンズ−回折格子ペア内のレンズは、図示されるような通過型素子若しくは、適切な寸法の湾曲型ミラー基盤でもよい。そして更にレーザーファイバーアレイの使用が好まれる一方で、如何なる帯域幅レーザーソースも使用可能である。従って、本発明の好ましい実施形態について説明したが、実例的な意図であって、限定をするものではない。ここに示される本発明の真の思想及び範囲内にある様々な変更をなすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトルビーム結合を使用し、複数のレーザービームレットを結合して単一の平行(コリメート)出力ビームを形成するシステムであって、
異なる波長の複数のビームレットを放出する複数の広帯域レーザー源と、
前記複数のビームレットを平行にするように配置された複数のレンズと、
前記平行にされたビームレットに空間チャープを適用し、当該空間チャープ済みビームレットをフーリエ面でタイル化するように構成された空間チャーパーであって、これにより前記ビームレットのスペクトル成分が前記フーリエ面上に渡って横方向に分散するものである、前記空間チャーパーと、
前記空間チャーパーにより与えられた前記空間チャープを取り除き、前記ビームレットを単一の平行出力ビームへ結合するように構成された分散ビーム結合器と
を有するものである複数のレーザービームレットを結合するシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記空間チャーパーは複数のレンズ−回折格子ペアを含み、各レンズ−回折格子ペアは空間チャープを前記平行ビームレットの1つに適用するよう構成されており、前記複数のレンズ−回折格子ペアは、前記空間チャープ済みビームレットを前記フーリエ面でタイル化するように配置されているものである。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、各レンズは回折格子及び前記フーリエ面に焦点を共有するよう位置決めされているものである。
【請求項4】
請求項2記載のシステムにおいて、前記複数のレンズ−回折格子ペアは一次元の直線配列で配置されるものである。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、各レンズは略1mの焦点距離を有するものである。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記空間チャーパーは空間チャープを前記平行ビームレットのそれぞれに適用し、前記空間チャープ済みビームレットを前記フーリエ面でタイル化するように構成された回折格子ペアを含むものである。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記回折格子ペアの下流に配置され、前記空間チャープ済みビームレットを前記ビーム結合器に向けるように配置された少なくとも1つのミラーを有するものである。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、前記空間チャーパーは複数の回折格子を含み、当該各回折格子は空間チャープを前記平行ビームレットの中の1つに適用され、前記複数の回折格子は前記空間チャープ済みのビームレットを前記フーリエ面でタイル化するよう配置されるものである。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、前記回折格子は、チャープ体積ブラッグ回折格子(chirped volume Bragg diffraction grating)である。
【請求項10】
請求項9記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記チャープ体積ブラッグ回折格子に対して配置された複数のミラーを有し、これにより前記空間チャープ済みビームレットを前記フーリエ面でタイル化されるものである。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記分散ビーム結合器はレンズ−回折格子ペアを含むものである。
【請求項12】
請求項1記載のシステムにおいて、前記分散ビーム結合器は回折格子ペアを含むものである。
【請求項13】
請求項1記載のシステムにおいて、前記空間チャーパー及び前記ビーム結合器はそれぞれ誘電体コーティングされた反射回折格子を含むものである。
【請求項14】
請求項1記載のシステムにおいて、前記複数の広帯域レーザー源はレーザーファイバーアレイを含むものである。
【請求項15】
請求項14記載のシステムにおいて、前記レーザーファイバーアレイは、1mm間隔で一次元の直線配列で配置された20〜100の間の広帯域レーザーファイバーを含むものであでる。
【請求項16】
請求項1記載のシステムにおいて、各広帯域レーザー源は略1nmの帯域幅を有するものである。
【請求項17】
請求項1記載のシステムにおいて、各広帯域レーザー源は略1kw〜100kwの出力強度を有するものである。
【請求項18】
請求項1記載のシステムにおいて、前記空間チャーパーは1若しくはそれ以上の光学素子を含むものであり、このシステムは、さらに、
前記1若しくはそれ以上の光学素子に動作可能に接続されたアクティブ位置制御サブシステムを有し、これにより前記空間チャーパーの出力が前記フーリエ面でタイル化されるものである。
【請求項19】
スペクトルビーム結合を使用し、複数のレーザービームレットを結合して単一の平行出力ビームを形成する方法であって、
複数の広帯域レーザー源から複数のレーザービームレットを放出する工程と、
フーリエ面でスペクトルビーム成分の横方向分散を生成するように配列された少なくとも1つの分散素子を含む空間チャーパーを使用して、空間チャープを当該各ビームレットに適用する工程と、
前記空間チャーパーにより与えられた前記空間チャープを取り除くように配列された少なくとも1つの分散素子を含む結合器を使用して、前記空間チャープ済みビームレットを単一の平行出力ビームへ結合する工程と
を有する方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、前記空間チャーパーは複数のレンズ−回折格子ペアを含むものであり、前記空間チャープを前記各ビームレットに適用する工程は、回折格子を使用して各ビームレットを回折する工程と、レンズを使用して前記各回折ビームレットをフーリエ面に集光する工程とを含むものである。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、前記空間チャーパーは第1および第2の回折格子を含む複数の回折格子ペアを有し、、前記空間チャープを各ビームレットに適用する工程は、前記回折格子ペアの第1の回折格子を使用して前記各ビームレットを回折する工程と、前記回折格子ペアの第2の回折格子を使用して前記各回折ビームレットをフーリエ面に集光する工程とを含むものである。
【請求項22】
請求項19記載の方法において、前記空間チャーパーは複数のチャープ体積ブラッグ回折セルを含むものであり、前記空間チャープを各ビームレットに適用する工程は、前記チャープ体積ブラッグ回折格子セルを使用して前記各ビームレットを回折する工程を含むものである。
【請求項23】
請求項19記載の方法において、この方法は、さらに、
アクティブ位置制御サブシステムを使用して、前記空間チャーパーの少なくとも1つの光学素子の位置をアクティブ制御することにより、前記ビームレットがフーリエ面でタイル化されるものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−507035(P2011−507035A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538122(P2010−538122)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/086213
【国際公開番号】WO2009/088623
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510165471)ノースロップ グルマン スペース アンド ミッション システムズ コープ. (1)
【Fターム(参考)】