説明

広幅の形状保持シートの製造方法

【課題】 本発明は、容易に広幅の形状保持シートを製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 延伸ポリオレフィン系樹脂シートよりなり、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を融着することを特徴とする広幅の形状保持シートの製造方法であり、延伸ポリオレフィン系樹脂シートの少なくとも1面に、該ポリオレフィン系樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂よりなる接着性シートが積層されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の狭幅の形状保持シートの側端部同士を突合し融着して広幅の形状保持シートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形状保持シートは塑性変形し、変形後は変形された形状を保持するので、結束材(例えば、特許文献1参照。)、身体固定具の芯材(例えば、特許文献2参照。)、形状保持型帽子(例えば、特許文献3参照。)等に使用されている。
【特許文献1】特許第3582854号公報
【特許文献2】特開2004−57509号公報
【特許文献3】特開平11−93012号公報
【0003】
上記形状保持シートは、例えば、「極限粘度[η]が3.5dl/g未満の汎用ポリエチレンを溶融し、原糸又は原帯状に押し出して、前記ポリエチレン溶融固化物からなる最大厚み部の厚さが1mm以上の原糸又は原帯に成形し、これを60℃以上ポリエチレンの融点未満の温度で、延伸物を180度折曲げてから10分経過後の戻り角度が20度以下であり、且つ90度折曲げてから10分経過後の戻り角度が15度以下になるまで延伸することを特徴とする糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。」(例えば、特許文献1参照。)、「重量平均分子量50万以下の高密度ポリエチレンを主体とするシートを圧延する工程と、圧延されたシートを延伸する工程とを備え、前記圧延工程及び延伸工程を経て総延伸倍率10倍以上に一軸延伸することを特徴とするポリエチレン結束テープの製造方法。」(例えば、特許文献4参照。)と提案されているように、延伸又は圧延することにより製造されている。
【特許文献4】特開平11−222256号公報
【0004】
即ち、形状保持シートはポリオレフィン系樹脂シートを高倍率に延伸して製造しているため幅広の形状保持シートを得ることができず、幅広が要求される用途には複数の形状保持シートを平行に配し、粘着テープ、ホッチキス等で固定して製造しなければならないので、製造が困難であり、得られた製品の機械的物性は均一にならず性能が不安定で使用しにくいものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、容易に広幅の形状保持シートを製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の広幅の形状保持シートの製造方法は、延伸ポリオレフィン系樹脂シートよりなり、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を融着することを特徴とする。
【0007】
本発明で使用される形状保持シートは、延伸ポリオレフィン系樹脂シートよりなり、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下であるシートである。
【0008】
上記形状保持シートは、形状保持性を有しているが、形状保持性は、形状保持シートを180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下であり、好ましくは180度折曲げ戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが20度未満、更に好ましくは180度折曲げ戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが15度以下である。180度及び90度折曲げ時の折曲げ戻り角度θのいずれか一方、特に180度折曲げ戻り角度θが20度を越えると、充分な形状保持性が得られないことがある。
【0009】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂としては、フィルム形成能を有する任意のオレフィン系樹脂が使用でき、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン―塩化ビニル共重合体、エチレン―プロピレン―ブテン共重合体等が挙げられ、高密度ポリエチレン樹脂が好適に使用される。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、重量平均分子量が10万未満の場合には、脆くなり、延伸性が悪くなったり、十分な強度又は耐クリープ性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートを得ることができにくくなり、逆に、50万を超えると、溶融粘度が高くなり、熱溶融成形加工性が低下し、均一なシートが得られにくくなるので10万〜50万が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
【0011】
又、ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(以下、MI)はフィルム成形性が優れている0.1〜20(g/10分)が好ましく、より好ましくは0.2〜10(g/10分)である。尚、MIとは、JIS K 7210に規定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標である。更に、高密度ポリエチレン樹脂の場合は、密度は小さくなると延伸しても機械的強度が向上しなくなるので、0.94g/cm3 以上が好ましい。
【0012】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートとしては、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが延伸倍率5倍以上に延伸された形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが好ましい。
【0013】
この場合は、ポリオレフィン系樹脂としては極限粘度[η]3.5dl/g未満の高密度ポリエチレン樹脂が好ましく、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、珪酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭素繊維、カーボンブラック等の無機機充填材を添加するのが好ましい。
【0014】
延伸前のポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、厚過ぎると、延伸が困難になるし、逆に、薄過ぎると、延伸後のポリオレフィン系樹脂シートの厚みが薄くなり過ぎ、形状保持性が低下するので、0.2〜15mmが望ましい。
【0015】
延伸倍率は5倍以上であって、延伸された延伸ポリオレフィン系樹脂シートが形状保持性を有していればよいが、10〜40倍が好ましい。又、延伸方法は、従来公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、ロール一軸延伸法、ゾーン一軸延伸法等の一軸延伸法により、ヒータや熱風により加熱しながら延伸する方法が挙げられる。
【0016】
一軸延伸する際に10〜40倍と高度に延伸する場合は、一軸延伸を複数回繰り返す多段一軸延伸する方法が好ましい。多段一軸延伸を行う場合の延伸回数は2〜20回が好ましく、より好ましくは3〜15回、更に好ましくは4〜10回である。
【0017】
又、ロール一軸延伸法により多段延伸を行う場合には、繰出ピンチロール、引取ピンチロール及びこれらのロール間に一定速度で回転する少なくとも1つの、好ましくは複数の接触ロールを設置することが望ましい。このような接触ロールを設置することにより、均一延伸性が高められ、安定な延伸成形を行うことができる。
【0018】
上記接触ロールは、ピンチされることなく、ポリオレフィン系樹脂シートに摩擦力を与えることにより一軸延伸を行う。又、接触ロールは繰出ロール及び/又は引取ロールに対し、ギア、チェーン、プーリー、ベルト若しくはこれらの組み合わせからなる連結部材により連結されていてもよい。
【0019】
一軸延伸温度は、低くなると均一に延伸できず、高くなるとシートが溶融切断するので、延伸するポリオレフィン系樹脂シートのポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点の範囲が好ましく、より好ましくは、ポリオレフィン系樹脂の「融点−50℃」〜「融点−5℃」である。
【0020】
又、異なる好ましい延伸ポリオレフィン系樹脂シートとして、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが圧延倍率5倍以上に圧延された後、総延伸倍率が10〜40倍に一軸延伸された延伸ポリオレフィン系樹脂シートが挙げられる。
【0021】
上記圧延前のポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、厚過ぎると、延伸が困難になるし、圧延工程において、ポリオレフィン系樹脂シートを圧延ロールで押しつぶすのに大きな加圧力や引取力が必要となり、圧延ロールの撓みなどにより幅方向に均一な圧延が困難となることがある、逆に、薄過ぎると、延伸後又は圧延後のポリオレフィン系樹脂シートの厚みが薄くなり過ぎ、均一な圧延が困難となるだけでなく、圧延ロール同士が接触して圧延ロールの寿命が短くなることがあるので、0.2〜15mmが望ましい。
【0022】
上記ポリオレフィン系樹脂シートは、先ず、最初に圧延倍率5倍以上に圧延されるが、圧延温度は、低くなると均一に圧延できず、高くなると溶融切断するので、圧延する際のロール温度は、圧延するポリオレフィン系樹脂シートのオレフィン系樹脂の「融点−40℃」〜融点の範囲が好ましく、より好ましくは、オレフィン系樹脂の「融点−30℃」〜「融点−5℃」である。尚、本発明において、融点とは示差走査型熱量測定機(DSC)で熱分析を行った際に認められる、結晶の融解に伴う吸熱ピークの最大点をいう。
【0023】
圧延ロールによりポリオレフィン系樹脂シートに負荷される加圧力(線圧)が小さ過ぎると所定の圧延倍率を得ることが出来なくなることがあり、逆に大き過ぎると圧延ロールの撓みが生じるだけでなく、圧延ロールと原反シートとの間ですべりが生じ易くなり、均一な圧延が困難となることがあるので加圧力は、100MPa〜3000MPaが好ましく、より好ましくは、300MPa〜1000MPaである。
【0024】
上記圧延倍率は、圧延倍率が5倍未満の場合には、後で行われる一軸延伸時のネッキングを抑制する効果が得られなかったり、高倍率一軸延伸を行うことができなかったり、一軸延伸工程に負担がかかることになるので、5倍以上であり、好ましくは7倍以上である。圧延倍率に特に上限はないが、圧延倍率が高いほど圧延設備に負荷がかかるので10倍以下が好ましい。
【0025】
尚、圧延倍率は(ポリオレフィン系樹脂シートの断面積)/(圧延後ポリオレフィン系樹脂シートの断面積)で定義されるが、圧延の前後においてポリオレフィン系樹脂シートの幅は殆ど変化しないので、(ポリオレフィン系樹脂シートの厚み)/(圧延後のポリオレフィン系樹脂シートの厚み)であってもよい。
【0026】
圧延されたポリオレフィン系樹脂シートは、次に、総延伸倍率が10〜40倍に一軸延伸される。一軸延伸方法は、特に限定されず、前述の一軸延伸方法が採用されればよい。 又、一軸延伸倍率は、総延伸倍率が10〜40倍であるから、圧延倍率を考慮し、総延伸倍率がこの範囲にはいるように決定すればよいが、一軸延伸が少ないと機械的強度が向上しないので、1.3倍以上が好ましく、より好ましくは1.5倍以上であり、更に好ましくは1.8倍以上である。又、上限は特に限定されるものではないが、4倍以下が好ましく、より好ましくは3.5倍以下である。尚、総延伸倍率は圧延倍率と一軸延伸倍率を乗じた数値である。
【0027】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートの寸法安定性を向上させるために、延伸ポリオレフィン系樹脂シートはポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点であって、圧延温度以下の温度でアニールされてもよい。
【0028】
アニール温度は、低くなると寸法安定性が向上せず、長時間使用するとそりが発生し、高くなるとポリオレフィン系樹脂が溶解して配向が消滅し引張弾性率、引張強度等が低下するので、ポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点であって、圧延温度以下の温度でアニールされるのが好ましい。
【0029】
アニールとは生産ライン中で熱処理を行うことであり、アニールする際に、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸され、張力がかかっていないか、非常に小さい状態では収縮するので、延伸ポリオレフィン系樹脂シートの延伸方向の長さが実質的に変化しないようにした状態で行われることが好ましく、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに圧力もかかっていないのが好ましい。即ち、アニールされた延伸ポリオレフィン系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸ポリオレフィン系樹脂シートの長さの1.0以下になるようにアニールされるのが好ましい。
【0030】
従って、延伸ポリオレフィン系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的にアニールする場合は、入口側と出口側のポリオレフィン系樹脂シートの送り速度比を1.0以下になるように設定してアニールするのが好ましい。
【0031】
アニールする際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒータ、加熱板、温水等で加熱する方法があげられる。アニールする時間は、特に限定されず、延伸されたポリオレフィン系樹脂シートの厚さやアニール温度により異なるが、一般に10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒〜60分であり、更に好ましくは1〜20分である。
【0032】
アニールされたポリオレフィン系樹脂シートは、更に、40℃〜ポリオレフィン系樹脂の融点の温度範囲でエージングされてもよい。エージングすることによりアニールされたポリオレフィン系樹脂シートの寸法安定性はより優れたものとなる。
【0033】
エージングとは、生産ライン中連続で処理するものではなく、延伸ポリオレフィン系樹脂シートをカット巻回等の一度加工した、枚葉物、巻物等の熱処理を、比較的長い時間(分、時間単位)じっくり寝かせて熱処理することを意味する。
【0034】
エージング温度は、低くなると常温で放置するのと同様になり、高くなると熱変形するので40℃〜ポリオレフィン系樹脂の融点の温度範囲であり、エージング時間は短時間では効果がなく、長時間しすぎても効果が増大することはないので12時間〜7日が好ましい。
【0035】
上記形状保持シートは、上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートの少なくとも1面に、該ポリオレフィン系樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂よりなる接着性シートが積層されていてもよい。形状保持シートの側端部同士を突合し突合部を融着するには、特に、超音波ウエルダー又は加熱プレスにより加熱加圧して融着するには、上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートの両面に接着性シートが積層されているのが好ましい。
【0036】
上記接着性シートを構成するポリオレフィン系樹脂としては、上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂であればよく、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0037】
上記形状保持シートの厚さは特に限定されるものではないが、一般に20〜2000μmであり、好ましくは100〜1000μmである。延伸ポリオレフィン系樹脂シートの厚さは特に限定されるものではないが、薄くなると形状保持性が低下するので、一般に10〜1860μmであり、好ましくは100〜1000μmである。
【0038】
又、接着性シートの厚さも特に限定されるものではないが、薄くなりすぎると側端部同士を突合し、突合部を超音波ウエルダー又は加熱プレスにより、加熱加圧して融着する際に融着しにくくなるので、一般に5〜150μmであり、好ましくは20〜80μmである。
【0039】
本発明においては、上記形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を融着する。融着する方法は特に限定されず、例えば、溶接棒や熱風で加熱し両側の形状保持シートの側端部を加熱溶融した後、側端部同士を突合する方法、超音波ウエルダー又は加熱プレスにより形状保持シートの突合部(端部)を加熱加圧して突合部の両側の形状保持シートを融着する方法等があげられる。尚、形状保持シートの側端部同士を突合す際には両方の形状保持シートの延伸方向を平行にするのが好ましい。
【0040】
又、接着性シートが積層されていると、接着性シートを構成するポリオレフィン系樹脂は形状保持シートを構成するポリオレフィン系樹脂よりも融点が低いので、形状保持シートを構成するポリオレフィン系樹脂の融点よりも低い温度で接着性シートを構成するポリオレフィン系樹脂が溶融され、超音波ウエルダー又は加熱プレスにより加圧することにより突合部の両側の接着性シートのポリオレフィン系樹脂同士を融着することができ、隣り合って突合わされた形状保持シートを融着することができる。尚、この際に形状保持シートを構成するポリオレフィン系樹脂も溶融され、加圧することにより突合部の両側の形状保持シート同士が融着されてもよい。
【0041】
超音波ウエルダーにより融着する方法は、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、上記形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を間に両側の形状保持シートを、15〜40kHzの周波数で加振したホーンとローレットの間をホーンとローレットで加圧しながら通過させる方法があげられる。
【0042】
側端部同士が突合わされた形状保持シートを、突合部が略中央になるようにホーンとローレットで押圧された状態で移送すると共に、ホーンから15〜40kHzの周波数で加振することにより、ホーンから伝えられた超音波振動による摩擦熱により瞬時に形状保持シート構成するポリオレフィン系樹脂を加熱溶融すると共にホーンとローレットで加圧することにより溶融したポリオレフィン系樹脂が突合部に押し流されて両者が融着する。
【0043】
又、接着シートが積層されていると、接着シートを構成するポリオレフィン系樹脂を加熱溶融すると共にホーンとローレットで加圧することにより溶融したポリオレフィン系樹脂が突合部に押し流されて両者が融着する。尚、この際に形状保持シートを構成するポリオレフィン系樹脂も加熱溶融し、加圧することにより突合部の両側の形状保持シート同士を融着してもよいことはいうまでもない。
【0044】
加圧するには、ホーンにエアシリンダ、油圧シリンダ等を連設し、ホーンを形状保持シートの突合部を介してローレットに押圧するのが好ましい。又、ローレット表面に突起部が一定間隔に形成しておくことにより、より効率よく融着することができ、突起部の配列や形状を変化することにより、融着部位の配列や形状のパターンを変化することができる。
【0045】
又、熱プレスにより融着する方法も、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、上記形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を間に両側の形状保持シートを、熱プレスにより加熱加圧しながら通過させる方法があげられる。
【0046】
熱プレスとしても、従来公知の任意の熱プレス方法が採用されてよく、例えば、塊状の熱プレス機でプレスする方法、加熱ロールで形状保持シートを送りながらプレスする方法等が挙げられる。
【0047】
熱プレスにより融着する場合もプレス表面に突起部が一定間隔に形成しておくことにより、より効率よく融着することができ、突起部の配列や形状を変化することにより、融着部位の配列や形状のパターンを変化することができる。
【0048】
尚、上記形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を超音波ウエルダー又は加熱プレスにより加熱加圧して接着する際に、形状保持シートが溶融されると形状保持性が低下したり、形状保持シートの融着部分の厚さが薄くなるので、形状保持シートはあまり溶融されない状態で融着するのが好ましい。
【0049】
又、加熱プレスで融着する場合は、形状保持シートを構成するポリオレフィン系樹脂の融点は接着シートを構成するポリオレフィン系樹脂の融点より2℃以上高いのが好ましく、より好ましくは5℃以上である。
【発明の効果】
【0050】
本発明の広幅の形状保持シートの製造方法の構成は上述の通りであり、延伸ポリオレフィン系樹脂シートよりなる形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を融着するのであるから、両者の形状保持シート同士が容易且つ強固に融着され、広幅の形状保持シートを製造することができる。
【0051】
又、形状保持シートの少なくとも1面に、形状保持シートを構成するポリオレフィン系樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂よりなる接着性シートが積層されていると、形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を超音波ウエルダー又は加熱プレスにより加熱加圧して融着すると、形状保持シートの形状保持性が低下することなく、両者の接着性シート同士が容易且つ強固に融着され、広幅の形状保持シートを製造することができる。
【0052】
又、得られた広幅の形状保持シートは、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持シートの側端部同士を突合した突合部のみを超音波ウエルダー又は加熱プレスにより、加熱加圧して融着するのであるから、融着の際に形状保持性が低下することがなく形状保持性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
重量平均分子量(Mw)33万、融点135℃の高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製)を、同方向二軸混練押出機(プラスチック工学研究所製)に供給して樹脂温度200℃で溶融混練した後、溶融混練物をロール温度110℃に制御したカレンダー成形機にて、幅340mm、厚さ3.5mmにシート成形してポリエチレン樹脂シートを得た。
【0054】
得られたポリエチレン樹脂シートを125℃に加熱した圧延成形機(積水工機製作所製)を用いて圧延倍率7.5倍に圧延し、厚さ0.48mmの圧延ポリエチレン樹脂シートを得た。得られた圧延ポリエチレン樹脂シートを110℃に加熱された熱風加熱式の多段延伸装置(協和エンジニアリング製)にて1.5倍の多段延伸を行い、総延伸倍率11.5倍、幅280mm、厚さ0.4mmの延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。
【0055】
得られた延伸ポリエチレン樹脂シートをピンチロールが設置され、125℃に設定されているライン長19.25mの熱風加熱槽に、入口速度2.75m/minで供給し、出口速度2.75m/minに設定して7分間1次アニールを行い、続いて同様にして2次アニールを行って、アニールされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得、その後60℃の恒温槽に供給し、24時間エージングして、エージングされた延伸ポリエチレン樹脂シート(形状保持シート)を得た。
【0056】
得られた形状保持シートを幅1cm、長さ15cmに切断し、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、それぞれ5度及び8度であった。
【0057】
得られた形状保持シートを延伸方向625mm、幅方向(延伸方向に対し直角方向)250mmに切断し、切断した2枚の形状保持シートを延伸方向が同一になるようにその側端部を突合せ、突合部が超音波ウエルダー(精電舎電子工業社製、商品名「SONOPET Σ−1200」)のホーン及びローレットの略中央になるように供給し、隙間間隔0.2mm、圧力0.8MPaのホーンとローレットの間を2m/minの速度で通過させ、ホーンから15〜40kHzの周波数で加振して超音波ウエルダー融着することにより、幅500mm、厚さ0.4mmの広幅の形状保持シートを得た。
【0058】
ローレット表面に突起部が一定間隔に形成されており、得られた広幅の形状保持シートの突合部の両側に略同一の押圧パターンが平行に形成されていた。押圧パターンの大きさは供給方向に沿って突合部の両側にそれぞれ長さ約0.8mm、幅約0.5mm、押圧パターン同士の間隔は約1.5mmであった。
【0059】
又、得られた広幅の形状保持シートを突合部が略中央になるように幅1cm、長さ15cmに切断し、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、それぞれ5度及び8度であった。
【0060】
(実施例2)
実施例1で得られた延伸ポリエチレン樹脂シートの両面に融点121℃の低密度ポリエチレン樹脂(セキスイフィルム社製)を0.03mmの厚さに押出被覆成形して接着シートを積層して厚さ0.46mmの形状保持シートを得た。
【0061】
得られた形状保持シートを幅1cm、長さ15cmに切断し、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、それぞれ5度及び8度であった。
【0062】
得られた形状保持シートを延伸方向625mm、幅方向(延伸方向に対し直角方向)250mmに切断し、切断した2枚の形状保持シートを延伸方向が同一になるようにその側端部を突合せ、突合部が超音波ウエルダー(精電舎電子工業社製、商品名「SONOPET Σ−1200」)のホーン及びローレットの略中央になるように供給し、隙間間隔0.2mm、圧力0.8MPaのホーンとローレットの間を2m/minの速度で通過させ、ホーンから15〜40kHzの周波数で加振して超音波ウエルダー融着することにより、幅500mm、厚さ0.46mmの広幅の形状保持シートを得た。
【0063】
ローレット表面に突起部が一定間隔に形成されており、得られた形状保持シートの突合部の両側に略同一の押圧パターンが平行に形成されていた。押圧パターンの大きさは供給方向に沿って突合部の両側にそれぞれ長さ約0.8mm、幅約0.5mm、押圧パターン同士の間隔は約1.5mmであった。
【0064】
又、得られた広幅の形状保持シートを突合部が略中央になるように幅1cm、長さ15cmに切断し、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、それぞれ5度及び8度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートよりなり、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持シートの側端部同士を突合し、突合部を融着することを特徴とする広幅の形状保持シートの製造方法。
【請求項2】
突合部を超音波ウエルダー又は加熱プレスにより、加熱加圧して融着することを特徴とする請求項1記載の広幅の形状保持シートの製造方法。
【請求項3】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートの少なくとも1面に、該ポリオレフィン系樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂よりなる接着性シートが積層されていることを特徴とする請求項1又は2記載の広幅の形状保持シートの製造方法。
【請求項4】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートが、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが延伸倍率5倍以上に延伸されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の広幅の形状保持シートの製造方法。
【請求項5】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートが、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが圧延倍率5倍以上に圧延された後、総延伸倍率が10〜40倍に一軸延伸されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の広幅の形状保持シートの製造方法。

【公開番号】特開2009−101583(P2009−101583A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275163(P2007−275163)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】