説明

床暖房装置の床構造

【課題】 既存のフローリングに設置したときにも上述した見苦しさ、埃などの溜まりを防止することができる床暖房装置の床構造を提供すること。
【解決手段】 床暖房パネル及びダミーパネル46を組み合わせて構成される床暖房用床組体24と、複数の仕上げ部材48を組み合わせて構成される仕上げ床組体26と、を備えた床暖房装置の床構造。室内壁33の内側に設けられる幅木38と床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26との間に、これらの間の隙間50を隠すための隙間隠し体52が配設されている。隙間隠し体52は、幅木38と床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26との間に挿入される挿入取付部材54と、挿入取付部材54に取り付けられる幅木部材56とから構成され、幅木部材56は隙間50を隠すためのカバー部64を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の床面を暖めて暖房する床暖房装置に適用される床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、床面を暖めて暖房する床暖房装置は、床暖房パネル及びダミーパネルから構成される床暖房用床組体と、この床暖房床組体の表面に配設される仕上げ床組体とから構成され、床暖房パネルに暖房を行うための加熱手段、例えば温水チューブが配設されている(例えば、特許文献1参照)。この種の床暖房装置は、新築時に設置されることが多いが、既存の住宅の床面に上貼りして設置されることもあり、このような場合、例えば図4に示すように設置される。
【0003】
図4において、既存の住宅の床構造では、床面となるフローリング2は、複数の根太4を介して大引6に支持固定され、このフローリング2の下側に断熱材8が配設されて断熱されている。また、住宅の室内壁10とフローリング2との間には、フローリング2の伸縮を許容するための伸縮隙間12が設けられ、この伸縮隙間12を隠すように、室内壁10とフローリング2との角部に幅木14が配設され、この幅木14は、室内壁10の内面及びフローリング2の上面(即ち、床面)に接するように設けられる。
【0004】
既存の住宅のこのような床構造に床暖房装置を設置する場合、このフローリング2の上面(即ち、既存の床面)の全域に床暖房用床組体16が配設され、更にこの床暖房用床組体16の上面に仕上げ床組体18が設けられる。床暖房装置の仕上げ床組体18は、フローリングなどの木質建材が使用されることが多く、このように木質建材を使用した場合、仕上げ床組体18は、床暖房使用時などにおいては加熱乾燥することにより収縮し、また梅雨時期などにおいては湿気を吸収することにより延び、このようなことから床暖房装置の仕上げ床組体の上述した伸縮を許容するために、この仕上げ床組体は、既存の幅木との間に幾分の隙間が存在するように設けられる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−206624
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の床暖房装置の床構造では、仕上げ床組体と既存の幅木との間に存在する隙間は、床暖房使用時などにおいて加熱乾燥することにより大きくなり、この隙間が大きくなると見苦しくなる問題がある。また、この隙間が大きくなると、埃などが入りて溜まりやすく、溜まった埃などが取り出し難く、室内を清潔に保つことが難くなる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、既存のフローリングに設置したときにも上述した見苦しさ、埃などの溜まりを防止することができる床暖房装置の床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の床暖房装置の床構造は、加熱手段が配設された床暖房パネルと加熱手段が配設されていないダミーパネルとを組み合わせて構成される床暖房用床組体と、複数の仕上げ部材を組み合わせて構成され、前記床暖房用床組体の表面に配設される仕上げ床組体と、を備えた床暖房装置の床構造であって、
室内壁の内側に設けられる幅木と前記床暖房用床組体及び前記仕上げ床組体との間に、これらの間の隙間を隠すための隙間隠し体が配設されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の床暖房装置の床構造では、前記隙間隠し体は、前記幅木と前記床暖房用床組体及び前記仕上げ床組体との間に挿入される挿入取付部材と、前記挿入取付部材に取り付けられる幅木部材とから構成され、前記幅木部材は前記室内壁から離れる方向に延びるカバー部を有していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の床暖房装置の床構造では、前記挿入取付部材は取付凹部を有し、前記幅木部材は前記取付凹部に挿入される幅木本体部を有し、前記カバー部は前記幅木本体部の上端部に一体的に設けられ、前記室内壁から離れる方向に幾分下方に傾斜して延び、前記カバー部の先端部が前記仕上げ床組体の表面に弾性的に圧接されることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の請求項4に記載の床暖房装置の床構造では、前記挿入取付部材は、前記幅木部材が取り付けられる挿入取付本体部と、前記挿入取付本体部と一体的に設けられた弾性偏倚部とを有し、前記弾性偏倚部は、前記挿入取付本体部を前記幅木に向けて弾性的に偏倚することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の床暖房装置の床構造によれば、室内壁の内側に設けられる幅木と床暖房用床組体及び仕上げ床組体との間に隙間隠し体が配設されているので、この隙間隠し体によって、幅木と床暖房用床組体及び仕上げ床組体との間の隙間が覆われ、かかる隙間の見苦しさ、埃などの溜まりを防止することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の床暖房装置の床構造によれば、隙間隠し体は挿入取付部材及び幅木部材とから構成され、幅木部材は室内壁から離れる方向に延びるカバー部を有しているので、幅木部材を挿入取付部材に取り付けると、カバー部が幅木と床暖房用床組体及び仕上げ床組体との間の隙間を覆い、かかるカバー部によって、隙間の見苦しさ、埃などの溜まりを防止することができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の床暖房装置の床構造によれば、カバー部は幅木本体部の上端部に一体的に設けられ、室内壁から離れる方向に幾分下方に傾斜して延びているので、幅木本体部を挿入取付部材の取付凹部に挿入すると、カバー部の先端部が仕上げ床組体の表面に弾性的に圧接され、幅木と床暖房用床組体及び仕上げ床組体との間の隙間に埃などが侵入するを確実に防止することができる。
【0015】
更に、本発明の請求項4に記載の床暖房装置の床構造によれば、挿入取付部材は挿入取付本体部及び弾性偏倚部を有し、弾性偏倚部が挿入取付本体部を幅木に向けて弾性的に偏倚するので、幅木と床暖房用床組体及び仕上げ床組体との間の隙間が幅木部材のカバー部によって確実に覆われ、隙間の見苦しさ、埃などの溜まりを一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図3を参照して、本発明に従う床暖房装置の床構造の一実施形態について説明する。図1は、本発明に従う床暖房装置の床構造の一実施形態の一部を示す部分断面図であり、図2は、図1の床暖房装置の床構造の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、図3は、変形形態の隙間隠し体の適用状態を示す部分拡大断面図である。
【0017】
図1において、この実施形態の床暖房装置は、既存の床構造体22の上側に設置されており、床構造体22の上面に設置される床暖房用床組体24及びこの床暖房用床組体24の上面に設置される仕上げ床組体26を備えている。既存の床構造体22は、大引き28、根太30及びフローリング32などから構成され、大引き28の上側に間隔をおいて根太30が設けられ、これら根太30の上側にフローリング32が設けられる。フローリング32は湿気の吸収、放出によって伸縮するので、フローリング32と住宅の室内壁33との間に、この伸縮を許容するための隙間36が設けられ、またこの隙間36を隠すようにフローリング32と室内壁33との隅部に幅木38が設けられている。このような既存の床構造体22では、フローリング32が床面となる。尚、フローリング32の下側には、断熱材34が配設される。
【0018】
床暖房装置の床構造40は、この床構造体22の上側に、即ちフローリング32の上側に設置される。既存の床構造体22の上側に設置される床暖房用床組体24は、加熱手段としての温水チューブ42が内蔵された床暖房パネル44と、加熱手段が配設されていないダミーパネル46とから構成され、加温したい領域に床暖房パネル44が配設され、加温不要の領域にダミーパネル46が配設され、これら床暖房パネル44及びダミーパネル46が、既存の床構造体22のフローリング32の形状に合うように所要の通りに組み合わされてその上面の全域に配設される。この床暖房パネル44の温水チューブ42には熱源機(図示せず)からの温水が循環され、循環される温水の熱を利用して床面が暖房される。
【0019】
また、床暖房用床組体24の上側に配設される仕上げ床組体26は、複数の仕上げ部材48を床暖房用床組体24の形状に合うように所要の通りに組み合わせて構成される。仕上げ部材48は、木質建材(例えば、合板材)から形成され、床暖房装置の床構造40を設置した状態においては、この仕上げ部材48の表面が床面となる。
【0020】
図1とともに図2を参照して、この床暖房装置の床構造40においても、湿気の吸収、放出による伸縮を許容するために、既存の床構造体22に設置する際に、既存の床構造体22の幅木38の内側と床構造40の床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26との間に隙間50が存在している。そして、この床構造40では、かかる隙間50を隠すように、この隙間50に隙間隠し体52が配設されている。
【0021】
この隙間隠し体52は、幅木38の内側と床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26との間に挿入される挿入取付部材54と、この挿入取付部材54に装着される幅木部材56とから構成されている。挿入取付部材54は、細長い板状の挿入取付本体部58を備え、この挿入取付本体部58の上面には下方に延びる取付凹部58が設けられ、この取付凹部58はその一端から他端まで図2において紙面に垂直な方向に延びている。この挿入取付部材54は弾性変形可能な弾性偏倚部60を有し、弾性偏倚部60は挿入取付本体部58の下部から上方に向けて外側に湾曲乃至傾斜して延びている。このような挿入取付部材54(挿入取付本体部58及び弾性偏倚部60)は、例えば合成樹脂の一体成形により形成することができる。
【0022】
また、幅木部材56は、プレート状の幅木本体部62を有し、この幅木本体部62の上端部にカバー部64が一体的に設けられ、このカバー部64の先端部は片側(図2において左側に延び、その他端部は他側(図2において右側)に幾分突出している。このカバー部64は弾性変形可能で、その先端側は上記片側に向けて幾分下方に傾斜して延びているのが望ましい。このような幅木部材56(幅木本体部62及びカバー部64)は、例えば合成樹脂の一体成形により形成することができる。
【0023】
この隙間隠し体52は、次の通りにして組み付けられる。この組付けは、まず、床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26を取り付ける前に、挿入取付部材54を幅木38に取り付ける。そして、挿入取付部材54を取り付けた後に、床暖房用床組体24を組み付け、その上に仕上げ床組体26を組み付ける。このように組み付けると、挿入取付部材54の弾性偏倚部60の先端部が床暖房用床組体24及び/又は仕上げ床組体26の側面に作用し、この弾性偏倚部60が挿入取付本体部58を図2において右方に幅木38(室内壁33)に向けて弾性的に偏倚し、挿入取付本体部58は幅木38の内側面に圧接保持される。この挿入取付部材54は、例えば接着剤、テープ、ビス、釘などを用いて幅木38の内面に固定するのが望ましい。
【0024】
その後、挿入取付部材54の取付凹58に幅木部材56の幅木本体部62を挿入する。このように挿入すると、幅木部材56のカバー部64が幅木38と床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26との間の隙間50を覆い、カバー部64によってこの隙間50を隠すことができ、隙間50による見苦しさを解消することができる。また、このように装着した状態では、幅木部材56のカバー部64の先端部が仕上げ床組体26の表面に弾性的に圧接され、このように弾性的に圧接状態に保つことによって、カバー部64の先端部と仕上げ床組体2の表面との間を通して埃などが内部の隙間50に侵入するのを防止することができる。この幅木部材56の離脱を防止するために、挿入取付部材54の取付凹部58の内側面に係合凹部(又は係合凸部)を設けるとともに、幅木部材56の幅木本体部62の側面に係合凸部(又は係合凹部)を設け、係合凹部と係合凸部とを相互に係合するように構成するのが望ましい。
【0025】
このように隙間隠し体52を装着した状態において床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26が湿気の吸収により伸張すると、挿入取付部材54の弾性偏倚部60が外側(図2において右側)に弾性変形し、また床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26が湿気の放出により収縮すると、弾性変形した弾性偏倚部60が内側(図2において左側)に復元し、床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26の伸縮が挿入取付部材54の弾性偏倚部60の弾性変形によって上述したように吸収され、床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26の伸縮が所望の通りに許容される。
【0026】
上述した実施形態では、挿入取付本体部58に弾性偏倚部60を設けているが、弾性偏倚部60を省略し、床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26と挿入取付部材54との間に隙間を持たせて施行するようにしてもよい。
【0027】
次に、図3を参照して隙間隠し体の変形形態について説明する。尚、図3において、図1及び図2と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
図3において、この変形形態では、隙間隠し体52Aの幅木部材82は細長いプレート状部材から構成され、この幅木部材82の中間部に切欠き84が設けられ、この切欠き84によって薄肉部86が形成されている。この変形形態のその他の構成は、上述した実施形態と実質上同一である。
【0028】
この幅木部材82は、挿入取付部材54の取付凹部58に挿入され、かく挿入した状態にて、その薄肉部86が室内の内側(図3において左側であって、室内壁33から離隔する方向)に折曲されてカバー部88が一体的に形成される。挿入隠し部材82は、上述したと同様に、例えば接着剤などによって幅木38の内側面に固定するのが望ましい。
【0029】
挿入隠し部材82を挿入して折曲した状態では、上述した実施形態と同様に、そのカバー部88が幅木38と床暖房用床組体24及び仕上げ床組体26との間の隙間50を覆い、カバー部88によってこの隙間50を隠すことができ、隙間50による見苦しさを解消することができる。尚、この変形形態においても、埃などの侵入を防止するために、折曲させたカバー部88の先端部が仕上げ床組体26の表面に圧接されるように構成するのが望ましい。
【0030】
以上、本発明に従う床暖房装置の床構造の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0031】
例えば、上述した実施形態では、弾性偏倚部60を挿入取付本体部58の下部から上方に向けて設けているが、このような構成に限定されず、この弾性偏倚部60を挿入取付本体部58の上部から下部に向けて設けるようにしてもよく、また必ずしも湾曲乃至傾斜させる必要もない。
【0032】
また、例えば、上述した実施形態では、床暖房パネルとして温水チューブを備えた温水利用の床暖房装置に適用して説明したが、このような形態のものに限定されず、床暖房パネルとして加熱ヒータを備えた電気利用の床暖房装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に従う床暖房装置の床構造の一実施形態の一部を示す部分断面図。
【図2】図1の床暖房装置の床構造の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
【図3】変形形態の隙間隠し体の適用状態を示す部分拡大断面図。
【図4】従来の床暖房装置の床構造の一部を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
22 床構造体
24 床暖房用床組体
26 仕上げ用床組体
38 幅木
40 床構造
44 床暖房用パネル
46 ダミーパネル
48 仕上げ部材
50 隙間
52,52A 隙間隠し体
54 挿入取付部材
56,82 幅木部材
60 弾性偏倚部
64,88 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段が配設された床暖房パネルと加熱手段が配設されていないダミーパネルとを組み合わせて構成される床暖房用床組体と、複数の仕上げ部材を組み合わせて構成され、前記床暖房用床組体の表面に配設される仕上げ床組体と、を備えた床暖房装置の床構造であって、
室内壁の内側に設けられる幅木と前記床暖房用床組体及び前記仕上げ床組体との間に、これらの間の隙間を隠すための隙間隠し体が配設されていることを特徴とする床暖房装置の床構造。
【請求項2】
前記隙間隠し体は、前記幅木と前記床暖房用床組体及び前記仕上げ床組体との間に挿入される挿入取付部材と、前記挿入取付部材に取り付けられる幅木部材とから構成され、前記幅木部材は前記室内壁から離れる方向に延びるカバー部を有していることを特徴とする請求項1に記載の床暖房装置の床構造。
【請求項3】
前記挿入取付部材は取付凹部を有し、前記幅木部材は前記取付凹部に挿入される幅木本体部を有し、前記カバー部は前記幅木本体部の上端部に一体的に設けられ、前記室内壁から離れる方向に幾分下方に傾斜して延び、前記カバー部の先端部が前記仕上げ床組体の表面に弾性的に圧接されることを特徴とする請求項2に記載の床暖房装置の床構造。
【請求項4】
前記挿入取付部材は、前記幅木部材が取り付けられる挿入取付本体部と、前記挿入取付本体部と一体的に設けられた弾性偏倚部とを有し、前記弾性偏倚部は、前記挿入取付本体部を前記幅木に向けて弾性的に偏倚することを特徴とする請求項2又は3に記載の床暖房装置の床構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−264075(P2009−264075A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118159(P2008−118159)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】