説明

床構造

【課題】床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させる床構造を得る。
【解決手段】床スラブ12と上床材14との間には、複数本並べられた標準床支持具15Aと高吸振床支持具15Bとが介在される。床スラブ12で振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、上床材14のフローリング14Cで振動の発生しやすい床特定領域の下方には、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bが配置されるので、振動が効果的に減衰されて床衝撃音の遮断性能が良好となる。また、施工時には、従来のように、制振材又は遮音材を床全面に配置する必要がないので、施工性が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を減衰させる床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床衝撃音の遮断性能を向上させるための床構造がある。このような床構造では、例えば、二重床構造が適用され、支持部材が床下地パネル、捨張材、仕上材を支持し、捨張材の両面に制振材又は遮音材を配置した状態としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の制振材には、重い材料が用いられているうえに、この従来の床構造では、制振材又は遮音材を床全面に配置することになり、施工性が悪い。
【特許文献1】特許第2918907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させる床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の床構造は、床スラブの上方に設けられる床仕上材と、前記床スラブと前記床仕上材との間に設けられ、前記床スラブにおける振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、前記床仕上材における振動の発生しやすい床特定領域の下方、における範囲内にのみ設けられ、振動を減衰させて衝撃音を低減する振動減衰手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
ここで、「スラブ特定領域」とは、床スラブのインピーダンスが低い部分又は床スラブの振動の腹をいい(以下の記載(請求項2等の他の請求項の記載を含む)において同じ)、また、「床特定領域」とは、床仕上げ材において、振動が発生しやすいと想定される部分をいう(以下の記載(請求項2等の他の請求項の記載を含む)において同じ)。
【0007】
請求項1に記載する本発明の床構造によれば、床仕上材からの振動が振動減衰手段によって減衰されて床スラブへ伝えられる。ここで、振動減衰手段が、床スラブにおける振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、床仕上材における振動の発生しやすい床特定領域の下方、における範囲内にのみ設けられることで、振動を有効に減衰して衝撃音を低減するので、床衝撃音の遮断性能を良好とすることが可能となる。また、施工時には、従来のように、制振材又は遮音材を床全面に配置する必要がないので、施工性が良い。
【0008】
請求項2に記載する本発明の床構造は、床スラブ上に設けられる支持手段と、前記支持手段に支持され、前記床スラブとの間に間隔をもって配置される床仕上材と、前記支持手段に支持され、前記床スラブにおける振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、前記床仕上材における振動の発生しやすい床特定領域の下方、における範囲内にのみ設けられ、振動を減衰させて衝撃音を低減する振動減衰手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明の床構造によれば、床仕上材からの振動が振動減衰手段によって減衰され、支持手段を介して床スラブへ伝えられる。ここで、振動減衰手段が、床スラブにおける振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、前記床仕上材における振動の発生しやすい床特定領域の下方、における範囲内にのみ設けられることで、振動を有効に減衰して衝撃音を低減するので、床衝撃音の遮断性能を良好とすることが可能となる。また、施工時には、従来のように、制振材又は遮音材を床全面に配置する必要がないので、施工性が良い。
【0010】
請求項3に記載する本発明の床構造は、請求項2記載の構成において、前記振動減衰手段が、前記支持手段又は前記床仕上材に支持されて弾性変形可能であって振動を減衰させる弾性部材と、前記弾性部材に支持されて前記弾性部材の弾性変形によって変位して振動を減衰させる質量体と、を備えた動吸振器であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載する本発明の床構造によれば、床仕上材に振動が加わった場合、この振動は、弾性部材へ伝わる。これによって、弾性部材が弾性変形して質量体が振動を吸収するように上下動することで、床仕上材から床スラブへの振動を減衰する。これにより、重量床衝撃音を効果的に遮断することができる。
【0012】
請求項4に記載する本発明の床構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成において、前記床スラブの中央領域を前記スラブ特定領域とすることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載する本発明の床構造によれば、床スラブの中央領域における振動を振動減衰手段が減衰するので、重量床衝撃音が効果的に遮断される。
【0014】
請求項5に記載する本発明の床構造は、請求項1から4のいずれか一項に記載の構成において、前記床仕上材の上方が区画された状態では、区画された区画部の範囲内下方における前記床仕上材の中央領域を前記床特定領域とすることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載する本発明の床構造によれば、区画部の範囲内下方における床仕上材の中央領域で発生した振動は、振動減衰手段によって減衰されて床スラブへ伝えられる。
【0016】
請求項6に記載する本発明の床構造は、請求項1から5のいずれか一項に記載の構成において、前記床仕上材の上方に収容部を備えた状態では、前記収容部の下方となる前記床仕上材の載置領域を前記床特定領域とすることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載する本発明の床構造によれば、収容部の下方となる床仕上材の載置領域で発生した振動は、振動減衰手段によって減衰されて床スラブへ伝えられる。
【0018】
請求項7に記載する本発明の床構造は、請求項1から6のいずれか一項に記載の構成において、前記床仕上材の上方に歩行用通路を備えた状態では、前記歩行用通路の下方となる前記床仕上材の通路領域を前記床特定領域とすることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載する本発明の床構造によれば、歩行用通路の下方となる床仕上材の通路領域で発生した振動は、振動減衰手段によって減衰されて床スラブへ伝えられる。
【0020】
請求項8に記載する本発明の床構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成において、前記床仕上材の上方が区画されて複数の区画部が形成された状態では、前記床特定領域が、複数の前記区画部のうちの特定の区画部とされる第1区画部の範囲内下方における前記床仕上材の全領域と、複数の前記区画部のうちの前記第1区画部以外の第2区画部の範囲内下方における前記床仕上材の一部領域と、の両方を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載する本発明の床構造によれば、第1区画部の範囲内下方における床仕上材の全領域で発生した振動、及び、第2区画部の範囲内下方における床仕上材の一部領域で発生した振動のいずれも、振動減衰手段によって減衰されて床スラブへ伝えられる。
【0022】
請求項9に記載する本発明の床構造は、請求項1から8のいずれか一項に記載の構成において、前記床スラブにおける振動の腹となる位置を含む領域を前記スラブ特定領域とすることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載する本発明の床構造によれば、床スラブにおける振動の腹となる位置における振動を振動減衰手段が減衰するので、重量床衝撃音が効果的に遮断される。
【0024】
請求項10に記載する本発明の床構造は、請求項1から9のいずれか一項に記載の構成において、前記床仕上材の上方に振動機器設置部を備えた状態では、前記振動機器設置部の下方となる機器設置領域を前記床特定領域とすることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載する本発明の床構造によれば、振動機器設置部の下方となる床仕上材で発生した振動は、振動減衰手段によって減衰されて床スラブへ伝えられる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の床構造によれば、床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明における床構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは床構造における上方向を示す。
(第1の実施形態の構成)
図1に示される床構造10は、主に集合住宅に用いられる二重床(乾式遮音二重床)の構造であり、上階で発せられて階下に伝播する床衝撃音(歩行音、物の落下音、子供の飛び跳ね等)を低減させるための構造である。
【0028】
床構造10は、躯体床となるコンクリート製の床スラブ12と上床材14との間に、所定の間隔で複数本並べられた標準床支持具15A、高吸振床支持具15Bを介在させており、標準床支持具15A、高吸振床支持具15Bの介在によって床スラブ12と上床材14との間に空間を形成して遮音効果を得る状態としている。
【0029】
本実施形態の上床材14は、床スラブ12の上方に設けられ、床下地パネル14Aを備えると共に、床下地パネル14A上に捨張合板14Bを設け、さらに捨張合板14B上に床仕上材としてのフローリング14Cを設けた積層構造となっている。ここで、フローリング14Cを除いた上床材14(床下地パネル14A及び捨張合板14B)、標準床支持具15A、及び、高吸振床支持具15Bは、床下地材である。
【0030】
図1の左側に示される標準床支持具15Aは、比較的振動の発生が少ない範囲内に配置され、図1の右側に示される振動減衰手段としての動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bは、振動の発生しやすい範囲内にのみ配置される(詳細後述)。標準床支持具15Aは、高吸振床支持具15Bから動吸振器25を除いた構成、すなわち、高吸振床支持具15Bにおける支持手段としての支持部16と同様の構成である。以下、高吸振床支持具15Bについて説明し、標準床支持具15Aにおける同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図2に示されるように、各高吸振床支持具15Bは、支持部16を備えている。支持部16は、弾性基部材としての防振ゴム18と、中間受け部としての中間受け部材20と、支持部材としての支持ボルト22と、を備えており、床スラブ12上に設けられてフローリング14Cを備えた上床材14を支持するようになっている。
【0032】
床スラブ12上に配置される防振ゴム18は、クッションゴムであって弾性変形可能な円筒状とされ、上床材14等からの振動の減衰用として床スラブ12上に支持されている。防振ゴム18上には、中間受け部材20を介して支持ボルト22が直立状態で支持されている。
【0033】
中間受け部材20は、円筒状とされて中間部にフランジ部20Aを備え、円筒部の一方側が防振ゴム18の筒内側に挿入されると共にフランジ部20Aの下面(防振ゴム18側へ向けられた面)が防振ゴム18の上面(床スラブ12側の面と反対側の面)に固着されている。中間受け部材20の円筒部内周面には、雌ネジ部20Bが形成され、この雌ネジ部20Bには、支持ボルト22の軸部に形成された雄ネジ部22Aが螺合される。これにより、中間受け部材20が支持ボルト22に一体化される。
【0034】
支持ボルト22は、防振ゴム18と反対側、すなわち、床スラブ12と反対方向へ延びて、パネル受け部材24を介して上床材14を支持するようになっている。パネル受け部材24は、円筒状とされて一方開口部から外側へ向けて突き出した鍔部24Aを備える。パネル受け部材24の円筒部24Bは、床下地パネル14Aの貫通孔114A内に挿入されて固着され、鍔部24Aの上面(上床材14側へ向けられた面)が床下地パネル14Aの下面(床スラブ12と対向する側の面)に固着される。パネル受け部材24の円筒部内周面には、雌ネジ部24Cが形成され、この雌ネジ部24Cには、支持ボルト22の軸部に形成された雄ネジ部22Bが螺合される。これらにより、フローリング14Cを備えた上床材14は、支持部16上に支持されて床スラブ12との間に間隔をもって配置される。
【0035】
支持ボルト22の先端部には、マイナスドライバを差し込むための凹部(図示省略)が形成されており、上床材14の床下地パネル14Aに捨張合板14B、フローリング14Cが載せられる前の状態において、マイナスドライバを支持ボルト22の凹部(図示省略)に差し込んで支持ボルト22を回転させることによって、床スラブ12からの床下地パネル14Aの高さを調節することができるようになっている。
【0036】
各高吸振床支持具15Bの高さ方向中間部には、支持部16に支持された振動減衰手段としての動吸振器25が設けられ、床構造10全体としては、図1に示されるように、床スラブ12とフローリング14Cとの間となる高さ位置に、複数の動吸振器25が配置される。図2に示されるように、動吸振器25は、弾性部材としてのクッション台座26と、質量体28と、を備え、振動を減衰させて衝撃音を低減するための床衝撃音遮断部材として適用される。
【0037】
クッション台座26は、中間受け部材20のフランジ部20Aの上面である受け面20Cに配置されており、クッション台座26の下面が受け面20Cに接着剤等によって固着されている。クッション台座26は、円筒状とされて中央に挿入孔26Aが形成されており、この挿入孔26Aに支持ボルト22が挿入された状態となっている。クッション台座26は、上床材14等からの振動を減衰させるために、中間受け部材20を介して支持ボルト22に支持されるものであり、軟質ゴムで構成されたバネ体であって弾性変形可能とされる。
【0038】
質量体28は、クッション台座26の上面に接着剤等によって固着されており、中間受け部材20、クッション台座26及び質量体28は、一体化している。また、質量体28によって、クッション台座26には圧縮方向の荷重が作用している。質量体28は、略円筒状とされて中央に挿入孔28Aが貫通形成されており、この挿入孔28Aに支持ボルト22が挿入された状態となっている。質量体28は、クッション台座26に支持されることでクッション台座26の弾性変形によって変位して上床材14等からの振動を減衰させるようになっている。
【0039】
ここで、本実施形態における動吸振器25の配置位置について、図3を参照しながら説明する。なお、図3においては、紙面手前側が床構造10(図1参照)における上方であり、紙面奥側が床構造10(図1参照)における下方である。
【0040】
図3の水平断面図には、四隅に柱30が図示されており、柱30と柱30との間が梁32で渡されると共に、梁32によって床スラブ12が囲まれた状態が示されている。図中の二点鎖線で囲まれた配置範囲41は、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bを配置する範囲であり、この配置範囲41内に動吸振器25が配置される。また、配置範囲41の範囲外には、標準床支持具15Aが配置される。
【0041】
配置範囲41は、床スラブ12におけるスラブ特定領域としての中央領域12Cの上方とされており、中央領域12Cは、床スラブ12において振動の発生しやすい領域となっている(図3では、床スラブ12の中央領域12Cは、二点鎖線で囲まれた配置範囲41と同じ範囲で示される。)。なお、「スラブ特定領域」とは、床スラブ12のインピーダンスが低い部分又は床スラブ12の振動の腹をいう。
【0042】
ここで、振動状態とされた床スラブ12は、その部位によって、振幅(振動の幅の半分)の大きさが異なり(図6(A)の模式図参照)、床スラブ12は、梁32で囲まれた中央点12Mの振幅が最も大きく(撓み量が最も大きく)、梁32に近づくほど小さく(撓み量が小さく)なるので、本実施形態では、これに対応させるために、床スラブ12は、梁32で囲まれた(中央点12Mを含む)中央部(中央領域12C)上に動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bを配置する構成としている。
(第1の実施形態の施工手順)
次に、図1に示される標準床支持具15A、高吸振床支持具15Bを用いて二重床の床構造10を構成する際の施工手順について説明する。なお、標準床支持具15Aは、高吸振床支持具15Bから動吸振器25を除いた構成であり、基本的な施工手順は同様であるので、ここでは、高吸振床支持具15Bの施工手順を中心に説明し、標準床支持具15Aの施工手順の説明は、一部省略する。
【0043】
まず、高吸振床支持具15Bについては、一体化された防振ゴム18、中間受け部材20、クッション台座26及び質量体28を、防振ゴム18を下にして床スラブ12における中央領域12C(図3参照)上に設置する。一方、標準床支持具15Aについては、一体化された防振ゴム18、中間受け部材20を、防振ゴム18を下にして床スラブ12における中央領域12Cの範囲外の上方に設置する。
【0044】
次に、高吸振床支持具15Bについては、図2に示される質量体28の挿入孔28A及びクッション台座26の挿入孔26Aに支持ボルト22を上方から挿入し、支持ボルト22の雄ネジ部22Aを中間受け部材20の雌ネジ部20Bに螺合させて取り付け、直立させる(標準床支持具15Aについても、同様に支持ボルト22を直立させる。)。次に、床下地パネル14Aに固着されたパネル受け部材24の雌ネジ部24Cに支持ボルト22の雄ネジ部22Bを螺合させる。ここで、マイナスドライバを支持ボルト22の凹部(図示省略)に差し込んで支持ボルト22を回転させることによって、床スラブ12からの床下地パネル14Aの高さを調節する。
【0045】
次に、床下地パネル14A上に捨張合板14Bが敷設され、捨張合板14B上にフローリング14Cが敷設される。以上によって、二重床の床構造10が構成される。
【0046】
このように、施工時には、従来のように、制振材又は遮音材を床全面に配置する必要がないので、施工性が良く、また、軽量で安価な床構造10とすることができる。
【0047】
また、図1に示されるように、比較的振動の発生が少ない部分には、標準床支持具15Aが配置されることで、床構造全体における質量体28の合計質量を抑えることができ、施工性が良い。すなわち、床衝撃音の低減に効果が少ない部分に、動吸振器25を配置しないことで、床構造10全体として、質量の大きい動吸振器25(高吸振床支持具15B)の配置量を減らせるので、施工性を向上できると共に、コストを低減することが可能となる。また、改修時等における高吸振床支持具15Bの回収作業も容易になる。
(第1の実施形態の作用)
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
【0048】
上階において、フローリング14C(図1参照)が敷かれた範囲の中央領域で発せられた床衝撃音(例えば、歩行音等)の振動は、図2に示される上床材14からパネル受け部材24、支持ボルト22、及び、中間受け部材20を介してクッション台座26へ伝わる。これによって、クッション台座26が弾性変形し、質量体28が振動を吸収するように上下動することで、振動を減衰する。
【0049】
クッション台座26は、支持ボルト22を囲んで配置されているため、支持ボルト22に沿って弾性変形することになり、また、質量体28も支持ボルト22を囲んで配置されているため、支持ボルト22に沿って移動することになるので、動吸振の作用が安定する。
【0050】
また、中間受け部材20にクッション台座26が固着され、クッション台座26に質量体28が固着されているので、例えば、振動によって質量体28がクッション台座26から浮く等のような無駄な移動を抑えられ、また、質量体28の移動を振動周期に追従させ易くなるので、動吸振効果を高めることができる。
【0051】
動吸振器25によって減衰された振動は、さらに防振ゴム18によって減衰されて床スラブ12へ伝わる。このため、床衝撃音が良好に遮断される。
【0052】
ここで、重量衝撃の場合、床スラブ12の曲げ振動により下室への床衝撃音が発生しやすいが、動吸振器25が適所に配置されることで、特に、重量床衝撃音を効果的に遮断(低減)することができる。なお、動吸振器25を用いると、従来の制振材の約半分の質量でほぼ同等の重量床衝撃音の遮断効果が得られる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態における床構造について、図4を参照しながら説明する(図4においては、紙面手前側が床構造10(図1参照)における上方であり、紙面奥側が床構造10(図1参照)における下方である。)。第2の実施形態は、フローリング14Cの上方が複数の区画部(部屋36等)に区画された状態である場合であり、区画された区画部(部屋36)の範囲内下方におけるフローリング14Cの振動が発生しやすいと想定される部分である中央領域36Cに対応して(その下方に)、図2に示される動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bを設けた点が特徴である。他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
図4の平面図は、フローリング14Cの上方が(住戸内の)壁34によって複数の区画部(部屋36等)に区画された状態を示している。図中の二点鎖線で囲まれた配置範囲42は、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)が配置される範囲であり、この配置範囲42内に動吸振器25が配置される。また、配置範囲42の範囲外には、標準床支持具15A(図1参照)が配置される。
【0054】
区画された部屋36の範囲内下方におけるフローリング14Cの中央領域36Cは、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域とされ、配置範囲42は、床特定領域としての中央領域36Cの下方とされている(図4では、フローリング14Cの中央領域36Cは、二点鎖線で囲まれた配置範囲42と同じ範囲で示される。)。なお、「床特定領域」とは、フローリング14C(床仕上げ材)において、振動が発生しやすいと想定される部分をいう。
【0055】
これにより、フローリング14Cの中央領域36Cで発生した振動は、図2に示される動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bによって効果的に減衰されて床スラブ12へ伝えられる。
【0056】
このように、衝撃頻度が高いフローリング14Cの中央領域36C(図4参照)に対応して動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bを配置することで、効果的に床衝撃音を遮断(低減)することができる。
【0057】
なお、中央領域36Cの周囲領域の下方に、標準床支持具15Aを配置することで、中央領域36Cの周囲領域上に家具等を置いても、フローリング14Cを含む上床材14が沈みにくくなるという利点がある。
【0058】
また、上記実施形態では、区画部が部屋36である場合の構成を説明したが、区画部は、例えば、フリースペース等のような他の区画部であっても同様の構成を適用することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態における床構造について、図5を参照しながら説明する(図5においては、紙面手前側が床構造10(図1参照)における上方であり、紙面奥側が床構造10(図1参照)における下方である。)。第3の実施形態は、床スラブ12における振動の腹となる位置を含む領域の上方に動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)が配置される点が特徴である。他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図5に示される二点鎖線で囲まれた配置範囲43A、43Bは、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)が配置される範囲であり、これらの配置範囲43A、43B内に動吸振器25が配置される。
【0060】
中央に図示される配置範囲43Aは、床スラブ12のスラブ特定領域としての中央部領域12Bの上方とされている(図5では、床スラブ12の中央部領域12Bは、二点鎖線で囲まれた配置範囲43Aと同じ範囲で示される。)。また、4箇所設けられる配置範囲43Bは、配置範囲43Aを取り巻く部分であり、配置範囲43Aと四隅の柱30との中間部となっている。
【0061】
ここで、振動状態とされた床スラブ12は、その部位によって、振幅(振動の幅の半分)の大きさが異なる。一般的に、図6(A)の模式図に示されるように、一次固有振動数の一次曲げ振動では、床スラブ12は、梁32で囲まれた中央点12Mの振幅が最も大きく(撓み量が最も大きく)、梁32に近づくほど小さく(撓み量が小さく)なる。
【0062】
但し、床スラブ12の固有値によって、複数の位置に振動の大きい部分が生じ、図6(B)の模式図に示されるように、床スラブ12の両端部間の略中心を節とし、両端部の一方から他方迄での間の略1/4の位置(すなわち、床スラブ12の壁面に接した一方の端部を基準とした場合、壁面に接した他方の端部までの間の略1/4の位置、及び略3/4の位置)を腹とする二次固有振動数の二次曲げ振動も生じる。
【0063】
本実施形態では、図5に示されるように、これらに対応させるために、床スラブ12における振動の腹となる位置12M、12N(図6(A)の一次曲げ部(中央点12M)、図6(B)の二次曲げ部)を含む領域をスラブ特定領域としての中央部領域12B、周囲部領域12Dとし、中央部領域12B、周囲部領域12Dの上方に動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)を配置する構成としている(図5では、床スラブ12の周囲部領域12Dは、二点鎖線で囲まれた配置範囲43Bと同じ範囲で示される。)。なお、配置範囲43Aの範囲外で、かつ、配置範囲43Bの範囲外となる範囲には、標準床支持具15A(図1参照)が配置される。
【0064】
このように、床スラブ12にて、振動に対して弱点となる部分における振動、すなわち、床スラブ12における振動の腹となる位置における振動は、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)によって減衰されるので、重量床衝撃音が効果的に遮断(低減)される。また、床スラブ12の振動の大きな場所に(例えば、ピンポイントで)動吸振器25(図2参照)を設けることで、床スラブ12の全領域に動吸振器25を設ける場合に比べて施工性が良く、コストも低減することができる。
【0065】
なお、大振幅で低周波振動となる中央部の配置範囲43Aに設ける動吸振器25(図2参照)の振動減衰特性と、小振幅で高周波振動となる周囲部の配置範囲43Bに設ける動吸振器25の振動減衰特性と、を振動特性に応じて変えてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態における床構造について、図7を参照しながら説明する(図7においては、紙面手前側が床構造10(図1参照)における上方であり、紙面奥側が床構造10(図1参照)における下方である。)。第4の実施形態は、フローリング14Cの上方が複数の区画部(部屋36、37、38(以下、「部屋36〜38」という)、廊下50、収容部52等)に区画された状態である場合であり、各々の区画部に応じて、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)を設けている点が特徴である。他の構成については、第1〜第3の実施形態とほぼ同様の構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図7の平面図は、上床材14の上方が壁34によって複数の区画部(部屋36〜38、廊下50、収容部52、機器設置室60等)に区画された状態を示している。なお、符号35は、通常時に人や物の出入りが少ない空間(便所等のようにフローリング14Cへの衝撃が問題とならない空間)である。
【0067】
図中の二点鎖線で囲まれた配置範囲44A〜44Hは、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bが配置される範囲であり、これらの配置範囲44A〜44H内に動吸振器25が配置される。なお、これらの配置範囲44A〜44H以外の範囲には、標準床支持具15A(図1参照)が配置される。
【0068】
区画された各部屋36〜38の範囲内下方におけるフローリング14Cの中央部領域36B、37B、38B(以下、「中央部領域36B〜38B」という)は、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域、すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分とされ、高吸振床支持具15Bの配置範囲44A、44B、44C(以下、「配置範囲44A〜44C」という)は、フローリング14Cの中央部領域36B〜38Bの下方とされている(図7では、中央部領域36Bは配置範囲44Aと、中央部領域37Bは配置範囲44Bと、中央部領域38Bは配置範囲44Cと、それぞれ同じ範囲で示される。)。
【0069】
また、フローリング14Cの中央部領域36B〜38Bの各周囲は、各中央部領域36B〜38Bと各部屋36〜38のコーナ部(四隅部)との中間部が、床特定領域としての、(すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分である)周囲部領域36D、37D、38D(以下、「周囲部領域36D〜38D」という。)とされている。周囲部領域36D〜38Dは、各中央部領域36B〜38Bの周囲にそれぞれ4箇所ずつであり、高吸振床支持具15Bの配置範囲44D、44E、44F(以下、「配置範囲44D〜44F」という)は、周囲部領域36D〜38Dの下方とされている(図7では、周囲部領域36Dは配置範囲44Dと、周囲部領域37Dは配置範囲44Eと、周囲部領域38Dは配置範囲44Fと、それぞれ同じ範囲で示される。)。
【0070】
区画された部屋36〜38毎に、フローリング14Cの振動の発生しやすい床特定領域(中央部領域36B〜38B、周囲部領域36D〜38D)に対応して動吸振器25(図2参照)を配置した構成である。
【0071】
フローリング14Cの上方には、歩行用通路としての廊下50が備えられており、廊下50の下方となるフローリング14Cの通路領域50Cは、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域、すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分とされ、床特定領域としての通路領域50Cの下方が高吸振床支持具15Bの配置範囲44Gとされる(図7では、フローリング14Cの通路領域50Cは、二点鎖線で囲まれた配置範囲44Gと同じ範囲で示される。)。歩行音や子供等の駆け足の音が発生しやすく、かつ、これらによって振動の生じる通路領域50Cに対応して動吸振器25(図2参照)を配置した構成である。
【0072】
フローリング14Cの上方には、(押入れ、クローゼット等のような)収容部52が備えられており、収容部52の下方となるフローリング14Cの載置領域52Aは、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域、すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分とされ、床特定領域としての載置領域52Aの下方が高吸振床支持具15Bの配置範囲44Hとされる(図7では、フローリング14Cの載置領域52Aは、二点鎖線で囲まれた配置範囲44Hと同じ範囲で示される。)。重量物の出入れ等によって振動の生じやすい載置領域52Aに対応して動吸振器25(図2参照)を配置した構成である。
【0073】
フローリング14Cの上方には、機器設置室60が備えられており、機器設置室60の振動機器設置部61には、洗濯機等の振動機器が設置されるようになっている。この振動機器は、本実施形態では、振動機器設置部61に後付け設置されるようになっているが、フローリング14Cに固定された構造となっていてもよい。
【0074】
フローリング14Cの上方に振動機器設置部61を備えた状態では、振動機器設置部61の下方となるフローリング14Cの機器設置領域61Aは、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域、すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分とされ、床特定領域としての機器設置領域61Aの下方が高吸振床支持具15Bの配置範囲44Iとされる(図7では、フローリング14Cの機器設置領域61Aは、二点鎖線で囲まれた配置範囲44Iと同じ範囲で示される。)。振動機器の使用によって振動の生じやすい機器設置領域61Aに対応して動吸振器25(図2参照)を配置した構成である。
【0075】
このように、(居住時の状態を考慮して)振動の生じやすい床特定領域(中央部領域36B〜38B、通路領域50C、載置領域52A)に対応して動吸振器25(図2参照)を配置した構成とすることで、床衝撃音の遮断性能を良好とすることができると共に、床スラブ12の全領域に動吸振器25を設ける場合に比べて施工性が良く、コストも低減することができる。
【0076】
なお、上記実施形態における床特定領域に加えて、収容部52への出入れ作業をする部分についても床特定領域としたり、洗面所(図示省略)の下方となるフローリング14Cの領域を床特定領域として、それらの下方に動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bを配置する等のように、居室用途によって衝撃音対策が必要な部分に高吸振床支持具15Bを配置してもよい。
【0077】
また、上記実施形態のような配置は、改修時等のように特定場所に床構造を形成し直す場合等にも適用できる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態における床構造について、図8を参照しながら説明する(図8においては、紙面手前側が床構造10(図1参照)における上方であり、紙面奥側が床構造10(図1参照)における下方である。)。第5の実施形態は、部屋36に対応して動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)を床スラブ12の全領域に配置すると共に、部屋37、38に対応して動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)を床スラブ12の一部領域に配置している点が特徴である。他の構成については、第1〜第4の実施形態とほぼ同様の構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
第5の実施形態は、図8に示されるように、フローリング14Cの上方が区画されて複数の区画部(部屋36、37、38、廊下50等)が形成された状態とされている。
【0079】
本実施形態では、区画部(部屋36、37、38、廊下50等)のうち、(特定の区画部とされる第1区画部としての)部屋36は、レクリエーションスペース等のように区画部内の全域で衝撃音が発生し得る空間とされている。部屋36の範囲内下方におけるフローリング14Cの全領域36Zは、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域、すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分とされ、床特定領域としての全領域36Zの下方に、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)が配置されている。図中の二点鎖線で囲まれた配置範囲45は、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)が配置される範囲であり、この配置範囲45内に動吸振器25が配置される(図8では、フローリング14Cの全領域36Zは、二点鎖線で囲まれた配置範囲45と同じ範囲で示される。)。
【0080】
また、複数の区画部(部屋36、37、38、廊下50等)のうち、部屋36以外の第2区画部としての部屋37、38、廊下50の範囲内下方におけるフローリング14Cの一部領域が、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域(中央部領域37B、38B、周囲部領域37D、38D、通路領域50C)となっており、その下方が動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)の配置範囲44B、44C、44E、44F、44Gとされる(第4の実施形態と同様)。
【0081】
なお、配置範囲45、44B、44C、44E、44F、44Gの範囲外となる範囲には、標準床支持具15A(図1参照)が配置される。
【0082】
このように、フローリング14Cにおいて、重量物(家具・電化製品等)を支持する部位や歩行する可能性の少ない部屋の隅等の下方には、標準床支持具15A(図1参照)を配置し、部屋37、38の中央部等、廊下50等の居住者が歩く可能性の高い部位等の下方には、高吸振床支持具15Bを配置して衝撃音遮断構造とし、さらに、区画部内の全域で衝撃音が発生し得る部屋36内の全域の下方にも高吸振床支持具15Bを配置して(屋内スペースの用途等に応じた)衝撃音遮断構造とすることで、床衝撃音の遮断性能が良好となり、また、施工性を向上させることができる。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態における床構造について、図9を参照しながら説明する(図9においては、紙面手前側が床構造10(図1参照)における上方であり、紙面奥側が床構造10(図1参照)における下方である。)。なお、第6の実施形態は、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15Bの配置位置を除き、第1の実施形態と同様の構成であるので、同一構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
第6の実施形態は、フローリング14C(図1参照)の上方が区画されていない状態とされており、フローリング14Cの全領域14Zで衝撃音が発生し得る用途に用いられている。すなわち、振動が発生しやすいと想定される部分は、フローリング14Cの全領域14Zとなっている。
【0084】
このため、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域が全領域14Zとなっている。これに対応して、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)は、床スラブ12(図2参照)上の全領域に配置されている。図中の二点鎖線で囲まれた配置範囲46は、動吸振器25を備えた高吸振床支持具15B(図2参照)が配置される範囲であり、この配置範囲46内に動吸振器25が配置される(図9では、フローリング14Cの全領域14Zは、二点鎖線で囲まれた配置範囲46と同じ範囲で示される。)。これにより、床全域における振動抑制が可能となる。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態における床構造について、図10を参照しながら説明する。第1〜第6の実施形態では、振動減衰手段として動吸振器25を適用した場合について説明したが、第7の実施形態は、振動減衰手段として高減衰防振ゴム54を適用した点が特徴である。他の構成については、第1〜第6の実施形態とほぼ同様の構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
図10に示されるように、第7の実施形態における床構造10は、第1の実施形態における高吸振床支持具15B(図1参照)の代わりに、高減衰床支持具15Cが配置されている。高減衰床支持具15Cは、標準床支持具15Aにおける防振ゴム18(図1参照)が高減衰防振ゴム54に置き換えられた構成とされている。
【0086】
高減衰床支持具15Cの上方で発生した床衝撃音(例えば、歩行音等)の振動は、上床材14からパネル受け部材24、支持ボルト22、及び、中間受け部材20を介して高減衰防振ゴム54へ伝わる。ここで、高減衰防振ゴム54が振動を吸収するように弾性変形することで、効果的に振動を減衰する。
【0087】
このように、床スラブ12における振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域の下方に、高減衰防振ゴム54を備えた高減衰床支持具15Cを配置しても、床衝撃音の遮断性能が良好で施工性を向上させる床構造10を得ることができる。
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態における床構造について、図11を参照しながら説明する。なお、第1〜第7の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
図11に示されるように、床構造10は、床スラブ12と上床材14との間に、所定の間隔で複数本並べられた標準床支持具15Aを介在させている。
【0089】
ここで、床スラブ12における振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域(例えば、振動の腹となる床特定領域等)の下方、における範囲内にのみ、振動減衰手段としての高比重遮音材14Dが設けられている。高比重遮音材14Dは、床下地パネル14Aと捨張合板14Bとの間に配置され、振動を減衰させて衝撃音を低減するようになっている。
【0090】
なお、高比重遮音材14Dが配置される範囲に対応する床下地パネル14Aと、高比重遮音材14Dが配置されない範囲に対応する床下地パネル14Aとは、床下地パネル14Aの端部同士が離れた状態とされている。ここで、高比重遮音材14Dが配置されない範囲に対応する床下地パネル14Aの端部に緩衝材を取り付けてもよい。
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態における床構造について、図12を参照しながら説明する。なお、第1〜第7の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
図12に示されるように、第9の実施形態の床構造70は、直貼り床の構造とされる。床スラブ12の上方に下部合板14Dが配置されると共に、フローリング14Cの下方に上部合板14Eが配置される。下部合板14Dと上部合板14Eとの間には、桟木14Fが間隔をおいて配置されている。
【0092】
ここで、下部合板14Dと上部合板14Eとの間においては、床スラブ12における振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、フローリング14Cにおける振動の発生しやすい床特定領域(例えば、振動の腹となる床特定領域等)の下方、における範囲内にのみ、振動減衰手段としての低反発ウレタンフォーム14Gが設けられており、振動を減衰させて衝撃音を低減するようになっている。
(試験例)
上記実施形態の床構造における床衝撃音の遮断性能を確認するために、以下に示す3種類の実施例に係る床構造(以下、実施例1、実施例2、実施例3という)と、動吸振器を全く取り付けない構成の床構造との比較試験を行った。
【0093】
実施例1は、第5の実施形態と同様の構成であり(図8参照)、実施例2は、第2の実施形態と同様の構成であり(図4参照)、実施例3は、第4の実施形態と同様の構成である(図7参照)。
【0094】
図8、図4、図7に示される部屋36で床衝撃音を発生させ、動吸振器を全く取り付けない構成の床構造における重量床衝撃音レベルを基準にして、重量床衝撃音レベルの改善量(dB)を調べた。なお、比較した周波数は、63Hz、125Hz、250Hz、500Hzとした。
【0095】
試験結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

実施例1のように、スラブ床全域に配置した場合に、重量床衝撃音レベルが最も改善されたが、実施例2、実施例3のように、振動が発生しやすい部分(影響の大きい部分)へ局所配置した場合も、重量床衝撃音レベルが十分に改善された。
(他の実施形態)
なお、上記第1〜第6の実施形態では、動吸振器25における弾性部材としてのクッション台座26が、支持手段としての支持部16に支持されているが、動吸振器における弾性部材が床材の床下地材に支持される構成としてもよい。
【0097】
また、上記第1〜第6の実施形態では、弾性部材が軟質ゴムで構成されたクッション台座26である場合を例に挙げて説明したが、弾性部材は、例えば、圧縮コイルバネ等のような弾性変形可能な他の弾性部材であってもよい。
【0098】
さらに、上記第1〜第6実施形態では、弾性部材としてのクッション台座26が接着剤等によって中間受け部材20に固着されているが、弾性部材は、例えば、支持部材に直接固着される等のように、上記実施形態以外の配置された位置に固着される構成としてもよい。また、弾性部材は、機械的接合によって中間受け部等の配置された位置に取り付けられてもよい。
【0099】
さらにまた、上記実施形態では、中間受け部としての中間受け部材20が、支持部材としての支持ボルト22に取り付けられて一体化されているが、支持部材の一部に中間受け部を形成してもよい。
【0100】
なお、上記実施形態では、床スラブ12がコンクリート製であるコンクリート床の場合について説明したが、床スラブは、木製等の床基盤であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る床構造の縦断面を示す断面図である。
【図2】図1の高吸振床支持具を拡大した拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における動吸振器を備えた高吸振床支持具の配置範囲を示す水平断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における動吸振器を備えた高吸振床支持具の配置範囲を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における動吸振器を備えた高吸振床支持具の配置範囲を示す水平断面図である。
【図6】床スラブの振動状態を示す模式図である。図6(A)は、一次曲げ振動の状態を示す。図6(B)は、二次曲げ振動の状態を示す。
【図7】本発明の第4の実施形態における動吸振器を備えた高吸振床支持具の配置範囲を示す平面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態における動吸振器を備えた高吸振床支持具の配置範囲を示す平面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態における動吸振器を備えた高吸振床支持具の配置範囲を示す平面図である。
【図10】本発明の第7の実施形態に係る床構造の縦断面を示す断面図である。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る床構造の縦断面を示す断面図である。
【図12】本発明の第9の実施形態に係る床構造の縦断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0102】
10 床構造
12 床スラブ
12B 中央部領域(スラブ特定領域)
12C 中央領域(スラブ特定領域)
12D 周囲部領域(スラブ特定領域)
12M 中央点(振動の腹となる位置)
12N 振動の腹となる位置
14C フローリング(床仕上材)
14Z 全領域(床特定領域)
16 支持部(支持手段)
25 動吸振器(振動減衰手段)
26 クッション台座(弾性部材)
28 質量体
36 部屋(区画部、第1区画部)
36B 中央部領域(中央領域(床特定領域))
36C 中央領域(床特定領域)
36D 周囲部領域(床特定領域)
36Z 全領域(床特定領域)
37 部屋(区画部、第2区画部)
37B 中央部領域(中央領域(床特定領域)、一部領域)
37D 周囲部領域(床特定領域、一部領域)
38 部屋(区画部、第2区画部)
38B 中央部領域(中央領域(床特定領域)、一部領域)
38D 周囲部領域(床特定領域、一部領域)
50 廊下(歩行用通路、区画部、第2区画部)
50C 通路領域(床特定領域)
52 収容部
52A 載置領域(床特定領域)
54 高減衰防振ゴム(振動減衰手段)
61 振動機器設置部
61A 機器設置領域(床特定領域)
70 床構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブの上方に設けられる床仕上材と、
前記床スラブと前記床仕上材との間に設けられ、前記床スラブにおける振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、前記床仕上材における振動の発生しやすい床特定領域の下方、における範囲内にのみ設けられ、振動を減衰させて衝撃音を低減する振動減衰手段と、
を有することを特徴とする床構造。
【請求項2】
床スラブ上に設けられる支持手段と、
前記支持手段に支持され、前記床スラブとの間に間隔をもって配置される床仕上材と、
前記支持手段に支持され、前記床スラブにおける振動の発生しやすいスラブ特定領域の上方、又は、前記床仕上材における振動の発生しやすい床特定領域の下方、における範囲内にのみ設けられ、振動を減衰させて衝撃音を低減する振動減衰手段と、
を有することを特徴とする床構造。
【請求項3】
前記振動減衰手段が、前記支持手段又は前記床仕上材に支持されて弾性変形可能であって振動を減衰させる弾性部材と、前記弾性部材に支持されて前記弾性部材の弾性変形によって変位して振動を減衰させる質量体と、を備えた動吸振器であることを特徴とする請求項2記載の床構造。
【請求項4】
前記床スラブの中央領域を前記スラブ特定領域とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項5】
前記床仕上材の上方が区画された状態では、区画された区画部の範囲内下方における前記床仕上材の中央領域を前記床特定領域とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項6】
前記床仕上材の上方に収容部を備えた状態では、前記収容部の下方となる前記床仕上材の載置領域を前記床特定領域とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項7】
前記床仕上材の上方に歩行用通路を備えた状態では、前記歩行用通路の下方となる前記床仕上材の通路領域を前記床特定領域とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項8】
前記床仕上材の上方が区画されて複数の区画部が形成された状態では、前記床特定領域が、複数の前記区画部のうちの特定の区画部とされる第1区画部の範囲内下方における前記床仕上材の全領域と、複数の前記区画部のうちの前記第1区画部以外の第2区画部の範囲内下方における前記床仕上材の一部領域と、の両方を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項9】
前記床スラブにおける振動の腹となる位置を含む領域を前記スラブ特定領域とすることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項10】
前記床仕上材の上方に振動機器設置部を備えた状態では、前記振動機器設置部の下方となる機器設置領域を前記床特定領域とすることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−132081(P2007−132081A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325967(P2005−325967)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】