説明

廃棄物処理方法及びシステム

【課題】繊維質を含む廃棄物のメタン発酵におけるバイオガス回収量を増加できるとともに、還元剤、活性炭等を用いずに酸化剤含有排水の還元処理を行うことができる廃棄物処理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】飲料・食品工場から排出される繊維質を含む廃棄物10をメタン発酵するメタン発酵槽2と、メタン発酵液を固液分離する固液分離装置3とを備え、メタン発酵槽2より上流側若しくは該メタン発酵槽2と固液分離装置3の間に、滅菌、洗浄用の過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水11を投入して混合するとともに、該酸化剤含有排水11が混合されたメタン発酵液の少なくとも一部をメタン発酵槽2より上流側に返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維質を含む廃棄物と過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水を処理する技術であって、特に、飲料・食品工場から排出される廃棄物をメタン発酵してバイオガスを回収するとともに、該工場にて滅菌、洗浄に用いられた酸化剤含有排水を処理することができる廃棄物処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料工場若しくは食品工場(以下、飲料・食品工場と称する)から排出される廃棄物には、飲料・食品加工残渣等の固形状廃棄物、製品の残液等の液状廃棄物、或いは製品容器や機器の洗浄に用いられた洗浄排水などがある。飲料工場を例に挙げて説明すると、図5に示すように、製品の加工工程では、例えばコーヒー豆や茶葉等の原料から液を抽出101した後に抽出液を調合102する工程において、コーヒー粕や茶葉等の加工残渣が発生する。一方、ボトリング工程では、ペットボトルの内側を酸化剤含有洗浄水により滅菌・洗浄103した後に抽出液を充填104し、ペットボトルを密封105した後、キャップの内側でペットボトルの外側ネジ部を水洗浄(106)する。さらに、工場内の各種機器等を洗浄するためにも酸化剤や洗浄水が用いられるため、ここでも酸化剤含有排水が発生する。
【0003】
製品を入れる容器や工場内の各種機器を滅菌、洗浄するために各種薬剤が用いられている。従来のホット充填システムでは容器内の洗浄に次亜塩素酸等の塩素系薬剤が多く用いられていたが、近年では無菌充填システムの伸張により過酢酸や過酸化水素等の過酸化系酸化剤が使用されることが多くなってきた。従って、飲料・食品工場にて発生する排水中には過酸化系酸化剤が残存するプラントもある。酸化剤含有排水を処理する場合、還元剤による中和処理(特許文献1等参照)、触媒活性炭による分解処理(特許文献2等参照)などが一般的である。
【0004】
飲料・食品工場では、上記したような複数種類の廃棄物が排出されるため、複数系統の処理工程が設けられている。図6に示すように、食料・食品加工残渣60等の固形性廃棄物は、混合調整槽51にて水分調整、温度調整等をした後、メタン発酵槽52に供給されてメタン発酵され、メタン発酵液は固液分離装置53にて固液分離される。分離液は廃水処理設備54にて活性汚泥処理等の処理が施される。工場から排出される他の廃水65も同時に処理される。また、廃水処理にて発生した汚泥は汚泥貯槽58にて一旦貯留された後に脱水機59にて脱水され脱水汚泥と分離液に分離される。分離液は廃水処理設備54にて処理される。脱水汚泥はコンポスト化、焼却、埋め立て等により処理される。
一方、過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水61は、還元設備66にて還元処理されて放流又は廃水処理設備へ送られる。
【0005】
このように、従来は個別に複数の処理系統を備えていたが、これらを有機的に結びつけた方法が特許文献3(特開2004−9017号公報)に開示されている。特許文献3には、過酸化水素や過酢酸等の過酸化物を含有する排水を処理する方法として、生物処理すべき排水を嫌気処理した後、その嫌気処理水を過酸化物含有排水と混合して過酸化物含有排水中の過酸化物を分解する方法が開示されている。これにより、還元剤や触媒等を別途必要とせずに排水中の過酸化物を分解して生物処理することを可能としている。
【0006】
一方、飲料・食品工場で排出される固形状廃棄物には、繊維質を多量に含むものが多い。繊維質が多い廃棄物の場合、メタン発酵し難いためバイオガスの回収量が少ない。
そこで、特許文献4(特許第3600566号)では、難分解性成分を含む有機性廃棄物をメタン発酵しバイオガスを回収する方法として、メタン発酵処理した汚泥をオゾン酸化して可溶化し、固液分離した後に分離汚泥をメタン発酵槽に返送する方法が提案されている。このように難分解性物質を可溶化処理することによりメタン発酵が促進され、バイオガス回収率を高めることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−267666号公報
【特許文献2】特開2003−211168号公報
【特許文献3】特開2004−9017号公報
【特許文献4】特許第3600566号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化剤は殺菌効果が高いため、活性汚泥などの排水処理設備に直接投入することができず、高価な還元剤や活性炭による処理が必要でコストが嵩むという問題があった。また、酸化剤が過酢酸(CHCOOOH)の場合、還元処理後に酢酸(CHCOOH)、過酸化水素(H)が発生するため、廃水処理設備の負荷が増大する。特許文献3では還元剤や活性炭等が不要となるが、過酸化物を単に分解し処理するのみであり、有効利用が図れていない。
また、コーヒー粕や茶葉などの繊維質が多い廃棄物が排出される場合、メタン発酵し難いためバイオガスの回収量が少ないという問題があった。特許文献4のように可溶化を行うことはメタン発酵に有効な手段であるが、酸化剤含有排水は別途処理しなければならない。また可溶化処理でオゾン添加を行う場合、放電により生成させるため発生コストが高い。また、保管が難しいためオゾン発生器を場内に設ける必要があった。さらに、ガス状物質であるため周囲に拡散しないように排ガス処理や封じ込めが必要であるといった問題があり、効率的な可溶化処理が求められている。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、繊維質を含む廃棄物をメタン発酵する際にバイオガス回収量を増加できるとともに、還元剤、活性炭等を用いずに酸化剤含有排水の還元処理を行うことができる廃棄物処理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、繊維質を含む廃棄物をメタン発酵により処理するとともに、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水を処理する廃棄物処理方法において、
前記酸化剤含有排水を、前記メタン発酵より上流側で前記廃棄物に混合することを特徴とする。
【0011】
本発明では、繊維質を含む廃棄物に投入された酸化剤含有排水は、その酸化力により廃棄物に含まれる繊維質を低分子化し、廃棄物を可溶化する。可溶化された廃棄物はメタン発酵されやすくバイオガス回収量が増加する。また同時に、酸化剤は還元処理されるため別途還元処理する必要がなく、還元剤、活性炭等が不要となりランニングコストを低減できる。
【0012】
また、繊維質を含む廃棄物をメタン発酵により処理するとともに、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水を処理する廃棄物処理方法において、
前記メタン発酵にて発生するメタン発酵液に前記酸化剤含有排水を混合し、該混合したメタン発酵液の少なくとも一部及び/又はメタン発酵液を固液分離した分離汚泥の少なくとも一部を前記メタン発酵より上流側に返送することを特徴とする。
【0013】
このように酸化剤含有排水をメタン発酵の下流側に投入する場合、メタン発酵液に酸化剤含有排水が混合されることとなる。メタン発酵液自体はC/N比(炭素(C)/窒素(N))が低いが、酸化分解することでC/N比を向上でき、これにより後段に設けた廃水処理設備にて脱窒処理を行う場合に、炭素源として添加するメタノール等の栄養源の量を低減できる。
また本発明では、酸化剤含有排水と混合したメタン発酵液の少なくとも一部をメタン発酵より上流側へ返送するようにしており、酸化剤含有排水の混合により可溶化した返送汚泥がメタン発酵に導入されることとなり、メタン発酵が促進され、バイオガス回収量が増加する。さらに、前記した発明と同様に、投入した酸化剤含有排水が還元されるが、メタン発酵液中には嫌気性成分が多く含有されるため、還元効果が極めて高い。
【0014】
また、これらの発明において、前記繊維質を含む廃棄物が、飲料・食品工場から排出される廃棄物であり、前記酸化剤含有排水が、前記飲料・食品工場にて殺菌・洗浄に用いられた酸化剤を含有する排水であることを特徴とする。
飲料・食品工場では、飲料・食品加工残渣等の繊維質を多く含む廃棄物と、製品容器や機器の洗浄に用いられた洗浄排水等の酸化剤含有排水が発生する。従って、本発明は、工場から排出される廃棄物、排水の処理を有機的に結びつけることにより外部より供給する薬剤コストを削減し、複合的な処理を可能として処理効率を向上させることができる。
【0015】
さらに、廃水若しくは前記メタン発酵後のメタン発酵液を固液分離した分離液を活性汚泥処理する方法であって、
前記活性汚泥処理が曝気工程と沈殿工程を有し、該沈殿工程にて得られる余剰汚泥の少なくとも一部を前記曝気工程に返送するようにし、該返送する余剰汚泥の少なくとも一部に、前記酸化剤含有排水を混合することを特徴とする。
これにより、活性汚泥処理後の余剰汚泥が酸化されて可溶化されるため、余剰汚泥発生量が低減し、同時に酸化剤含有排水が還元される。
尚、本発明を飲料・食品工場に適用する場合、前記廃水としては、同工場から排出される濃厚排水、一般排水、希薄排水のような廃水が挙げられる。
【0016】
また、前記メタン発酵に投入する廃棄物若しくは該メタン発酵に返送するメタン発酵液を、処理系内で発生した廃熱若しくは廃アルカリにより可溶化処理することを特徴とする。
一般的に、メタン発酵に投入する廃棄物若しくはメタン発酵液は、メタン発酵する前に水分調整、温度調整等が行われるが、本発明ではさらに可溶化処理を施すことによりメタン発酵を促進させる構成としている。このとき、本発明の処理系内で発生した廃熱や廃アルカリを可溶化処理に利用することが好ましく、これによりメタン発酵を促進できるとともに省エネルギー且つ低コストの処理を提供することができる。
【0017】
さらにまた、これらの発明において、前記過酸化系酸化剤が過酢酸を主成分とすることが好適である。
過酸化系酸化剤が過酢酸を主成分とする場合、過酢酸から過酸化水素と酢酸が生成するが、生成した過酸化水素が酸化剤として機能し、廃棄物の低分子化に寄与する。一方、過酢酸の還元により生成した酢酸はメタン発酵の原料となるため、より一層バイオガスの回収量を増加できる。
【0018】
また、繊維質を含む廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽と、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水の処理手段とを備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記メタン発酵槽より上流側に、前記廃棄物に前記酸化剤含有排水を混合する手段を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、繊維質を含む廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽と、メタン発酵液を固液分離する固液分離装置と、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水の処理手段とを備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記メタン発酵槽と前記固液分離装置の間に、前記メタン発酵液に前記酸化剤含有排水を混合する手段を設けるとともに、該酸化剤含有排水が混合されたメタン発酵液の少なくとも一部及び/又はメタン発酵液を固液分離した分離汚泥の少なくとも一部を前記メタン発酵槽より上流側に返送する返送ラインを備えたことを特徴とする。
また、これらの発明においては、前記繊維質を含む廃棄物が、飲料・食品工場から排出される廃棄物であり、前記酸化剤含有排水が、前記飲料・食品工場にて殺菌・洗浄に用いられた酸化剤を含有する排水であることが好適である。
【0020】
さらに、廃水、若しくは前記メタン発酵後のメタン発酵液を固液分離した分離液を活性汚泥処理する活性汚泥処理設備を備え、
前記活性汚泥処理設備が曝気槽と沈殿槽を有し、該沈殿槽にて得られる余剰汚泥の少なくとも一部を前記曝気槽に返送する返送ラインを備えており、
前記返送ライン上に、前記余剰汚泥の少なくとも一部に前記酸化剤含有排水を混合する手段を設けたことを特徴とする。
また、前記メタン発酵槽の前段に混合調整槽を設け、システム内で発生した廃熱若しくは廃アルカリを該混合調整槽に供給して前記廃棄物若しくは前記メタン発酵液を可溶化処理することを特徴とする。
さらにまた、前記過酸化系酸化剤が過酢酸を主成分とすることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
以上記載のごとく本発明によれば、繊維質を含む廃棄物であっても、酸化剤含有排水を有効に利用することで効率的にメタン発酵を行うことができ、バイオガス回収量を増加させることができる。また、同時に酸化剤含有排水を還元処理することもできるため、還元剤や活性炭等の供給が不要となり、ランニングコストを低減できる。
さらに、酸化剤含有排水をメタン発酵、若しくはメタン発酵と活性汚泥処理の両方に投入することにより、生物処理の分解が促進されるため、汚泥発生量を低減でき、処理コストも低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係る廃棄物処理システムの主要構成を示す概略図、図2は本発明の実施例1に係る廃棄物処理システムの全体構成図、図3は本発明の実施例2に係る廃棄物処理システムの全体構成図、図4は本発明の実施例3に係る廃棄物処理システムの全体構成図である。
【0023】
図1を参照して本実施例の主要構成につき説明する。処理対象は、コーヒー粕、茶粕、果実搾汁粕等の飲料・食品加工残渣10などのような繊維質を含む廃棄物と、システム内の滅菌、洗浄に用いられた酸化剤を含有する酸化剤含有排水11である。酸化剤としては、過酢酸、過酸化水素等の過酸化系酸化剤が挙げられるが、特に過酢酸を含む酸化剤に適用することが好ましい。
本実施例では、同図に示されるように飲料・食品加工残渣10をメタン発酵に適した状態に調整する混合調整槽1と、該混合調整後の飲料・食品加工残渣10をメタン発酵するメタン発酵槽2と、該メタン発酵後のメタン発酵液を固液分離する固液分離装置3と、固液分離にて得られた分離液を水処理する廃水処理設備4と、廃水処理にて発生した汚泥を貯留する汚泥貯槽8と、該汚泥を脱水する脱水機9とを備える。
【0024】
混合調整槽1では、飲料・食品加工残渣10の水分調整、温度調整等が行われるが、他にも、システム内で発生した廃アルカリ12や廃熱13を加えて、飲料・食品加工残渣10を可溶化してもよい。
メタン発酵槽2は、槽内にメタン発酵菌等の嫌気性微生物が繁殖しており、嫌気性微生物が卓越して繁殖できる環境に温度、pH等の条件が維持されており、槽内で有機性廃棄物20中の有機物を主にガス化反応によって分解処理することによりバイオガスを生成させる周知の装置である。
【0025】
廃水処理設備4は、固液分離にて得られた分離液に生物処理を主とする水処理を施す設備であり、活性汚泥処理が好適に用いられる。活性汚泥処理は、直列に接続された曝気槽5と沈殿槽6と、該沈殿槽6にて得られた余剰汚泥の少なくとも一部を返送汚泥16として曝気槽5に返送する。返送ライン上には混合槽7が設けられる。
沈殿槽6にて分離された分離液17は、放流若しくは他の水処理系へ送られる。一方、分離汚泥18は汚泥貯槽8に一旦貯留された後、適宜脱水機9に投入され、脱水される。脱水分離液は、工場内で発生した他の廃水15とともに廃水処理設備4にて処理することが好ましい。
【0026】
さらに本実施例では、酸化剤含有排水11をメタン発酵槽2より上流側、若しくはメタン発酵槽2より下流側で且つ固液分離装置3より上流側へ投入する構成となっている。
酸化剤含有排水11をメタン発酵槽2より上流側に投入する場合、混合調整槽1、若しくは混合調整槽1の前段、或いは混合調整槽1とメタン発酵槽2の間に投入することができ、この投入位置は特に限定されない。飲料・食品加工残渣10に投入された酸化剤含有排水11は、その酸化力により該残渣10に含まれる繊維質を低分子化し、飲料・食品加工残渣10を可溶化する。可溶化された廃棄物はメタン発酵され易いため、バイオガス回収量が増加する。また、同時に酸化剤は還元処理されるという利点も有する。
【0027】
酸化剤含有排水11が過酢酸を含む場合、過酢酸は以下の式(1)のような平衡状態で存在するため、生成した過酸化水素が酸化剤として機能し、飲料・食品加工残渣10の低分子化に寄与する。一方、過酢酸の還元により酢酸が生成するが、酢酸はメタン発酵の原料となるため、より一層バイオガスの回収量を増加できる。
CHCOOOH+HO→CHCOOH+H ・・・(1)
【0028】
酸化剤含有排水11をメタン発酵槽2と固液分離装置3の間に投入する場合、メタン発酵後のメタン発酵液に酸化剤含有排水11が混合されることとなる。メタン発酵液自体はC/N比(炭素(C)/窒素(N))が低いが、酸化分解することでC/N比を向上でき、これにより後段の廃水処理設備4にて脱窒処理を行う場合に、炭素源として添加するメタノール等の栄養源の量を低減できる。
またこの場合、酸化剤含有排水11と混合したメタン発酵液の少なくとも一部及び/又は該メタン発酵液を固液分離装置3にて固液分離した分離汚泥の少なくとも一部を、返送汚泥14、14’としてメタン発酵槽2より上流側へ返送するようにしている。このため、酸化剤含有排水11の混合により可溶化した返送汚泥14、14’がメタン発酵槽2に導入されることとなり、メタン発酵が促進され、バイオガス回収量が増加する。さらに、前述した構成と同様に、投入した酸化剤含有排水11が還元されるが、メタン発酵液中には嫌気性成分が多く含有されるため、還元効果が極めて高い。従って、処理すべき酸化剤含有排水11の量が多い場合には、本構成を採用することが好ましい。
勿論、酸化剤含有排水11を、メタン発酵槽2より上流側と下流側の両方に供給するようにしてもよい。
【0029】
また、上記した何れかの構成に加えて、廃水処理設備4に酸化剤含有排水11を投入するようにしてもよい。沈殿槽6からの余剰汚泥の少なくとも一部を返送汚泥16として曝気槽7に返送するようにし、返送ライン上に混合槽7を設け、該混合槽7に酸化剤含有排水11を投入する。これにより、活性汚泥処理後の余剰汚泥が酸化されて可溶化されるため、余剰汚泥発生量が低減する。酸化剤含有排水11が過酢酸を含む場合に発生する酢酸は、曝気槽にて分解される。
【実施例1】
【0030】
以下、図2乃至図4に示した実施例1乃至実施例3にて、本実施例の具体的な構成例を説明する。これらの実施例では、一例として飲料工場における廃棄物処理を目的としている。
図2に示されるように、一般的な飲料工場では濃厚排水、一般排水、希薄排水、廃棄物、酸化剤含有排水が発生する。ここで、濃厚排水は製品ブロー、一次洗浄排水等で、一般排水はレトルト排水、パストライザ排水、洗びん機排水、CIP排水、ユーティリティ排水等で、希薄排水はブレンド冷却排水、抽出冷却排水、リンサ排水、用水洗浄排水等で、廃棄物はコーヒー粕、茶粕等で、酸化剤含有排水は過酢酸又は過酸化水素を含有する排水である。
【0031】
濃厚排水は、一旦貯槽20に貯留された後、適宜酸発酵21され、EGSBリアクタ222にて嫌気性生物処理される。EGSB(Expanded Granuler Sludge Bed)リアクタは、 嫌気性細菌を使った生物処理装置であり、高負荷に対応可能であるため濃厚排水に適している。
一般排水は、中和処理23を施された後に油分離24し、貯槽25に貯留される。貯槽25ではEGSBリアクタ22にて処理後の処理液も受け入れる。貯槽25の排水は適宜活性汚泥処理26等の生物処理が施されて有機物、BOD等を分解した後に、凝集27、沈殿28により無機物、リン等が除去され、沈殿分離液は貯槽29に送られる。その後、生物膜濾過30等の処理を施した後、貯槽31に貯留されて処理水は放流される。
【0032】
希薄排水は有機物濃度が極めて低いため、一旦貯槽20に貯留された後、一般排水処理工程の後段側、即ち本実施例では貯槽29に送給され、一般排水の沈殿分離液とともに生物膜濾過30を施された後に放流される。希薄排水の水質によっては、回収設備33に回収し、有機物濃度が高い場合には一般排水の上流側、本実施例では貯槽25に送給して活性汚泥処理26から処理を始めるようにする。また、回収水として他の目的で再利用するようにしてもよい。
【0033】
廃棄物は、一旦ホッパ34に貯留された後必要に応じて粉砕35され、混合調整槽1(図1参照)にて調整36されるとともに、酸化剤含有排水が混合される。廃棄物は酸化剤含有排水の酸化力により可溶化し、酸化剤は中和される。可溶化した廃棄物はメタン発酵槽2にてメタン発酵37される。
メタン発酵37により発生したメタン発酵液は脱水機(固液分離装置3)にて脱水され、分離水は一般排水処理工程の貯槽25に送られ、活性汚泥処理26等が施される。一方、脱水汚泥は乾燥39した後にコンポスト原料として用いられたり、焼却、埋め立て等により処理される。
メタン発酵37にて発生したバイオガスは、ガスタンク40に回収され、必要に応じて脱硫処理等を施した後にガスタービン41の燃料として用いられる。本実施例では、ガスタービン41とボイラ42を併設しており、ボイラ42で発生させた蒸気を脱水汚泥の乾燥39等に有効利用することが好ましい。また、ガスタービンで発電した電気は、場内利用することが好ましい。
【0034】
このように、本実施例1によれば、飲料工場で発生する廃棄物の処理工程に、該工場で発生する酸化剤含有排水の処理工程を有効に組み合わせることで、メタン発酵を促進し、バイオガスの回収量を増加させるとともに、酸化剤含有排水の中和を行うことができる。また、系内から発生する汚泥量を低減することができる。
【実施例2】
【0035】
図3に本実施例2に係る廃棄物処理システムの全体構成を示す。以下、実施例2及び実施例3において、実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2では、廃棄物処理工程のメタン発酵37前には酸化剤含有排水を混合せずに、メタン発酵37後のメタン発酵液に酸化剤含有排水を混合36’している。混合36’後のメタン発酵液の少なくとも一部はメタン発酵37より上流側に返送し、再度メタン発酵する。これにより、可溶化したメタン発酵液が返送されてメタン発酵37が促進され、また、メタン発酵液中には嫌気性成分が多く含有されるため、酸化剤の還元効果が極めて高くなる。
【実施例3】
【0036】
図4に本実施例3に係る廃棄物処理システムの全体構成を示す。
本実施例3では、上記した実施例1若しくは実施例2の構成に加えて、酸化剤含有排水を、一般排水処理工程の活性汚泥処理26に投入するようにしている。活性汚泥処理26は曝気26aと、沈殿26bと、混合26cからなり、一般排水を曝気槽5(図1参照)にて曝気26aした後に沈殿槽6にて沈殿26bさせ、分離液の少なくとも一部を、混合槽7を介して曝気26aに返送させる。このとき、混合槽7に酸化剤含有排水を供給する。
混合槽7にて余剰汚泥と酸化剤含有排水を混合することにより、活性汚泥処理後の余剰汚泥が酸化されて可溶化されるため、余剰汚泥発生量が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に係る廃棄物処理システムの主要構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る廃棄物処理システムの全体構成図である。
【図3】本発明の実施例2に係る廃棄物処理システムの全体構成図である。
【図4】本発明の実施例3に係る廃棄物処理システムの全体構成図である。
【図5】飲料工場における製造・洗浄工程を示すフロー図である。
【図6】従来の廃棄物処理システムの主要構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 混合調整槽
2 メタン発酵槽
3 固液分離装置
4 廃水処理設備
5 曝気槽
6 沈殿槽
7 混合槽
9 脱水機
26 活性汚泥処理
26a 曝気
26b 沈殿
26c 混合
36、36’ 混合
37 メタン発酵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質を含む廃棄物をメタン発酵により処理するとともに、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水を処理する廃棄物処理方法において、
前記酸化剤含有排水を、前記メタン発酵より上流側で前記廃棄物に混合することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
繊維質を含む廃棄物をメタン発酵により処理するとともに、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水を処理する廃棄物処理方法において、
前記メタン発酵にて発生するメタン発酵液に前記酸化剤含有排水を混合し、該混合したメタン発酵液の少なくとも一部及び/又はメタン発酵液を固液分離した分離汚泥の少なくとも一部を前記メタン発酵より上流側に返送することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記繊維質を含む廃棄物が、飲料・食品工場から排出される廃棄物であり、前記酸化剤含有排水が、前記飲料・食品工場にて殺菌・洗浄に用いられた酸化剤を含有する排水であることを特徴とする請求項1若しくは2記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
廃水若しくは前記メタン発酵後のメタン発酵液を固液分離した分離液を活性汚泥処理する方法であって、
前記活性汚泥処理が曝気工程と沈殿工程を有し、該沈殿工程にて得られる余剰汚泥の少なくとも一部を前記曝気工程に返送するようにし、該返送する余剰汚泥の少なくとも一部に、前記酸化剤含有排水を混合することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の廃棄物処理方法。
【請求項5】
前記メタン発酵に投入する廃棄物若しくは該メタン発酵に返送するメタン発酵液を、処理系内で発生した廃熱若しくは廃アルカリにより可溶化処理することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記過酸化系酸化剤が過酢酸を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の廃棄物処理方法。
【請求項7】
繊維質を含む廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽と、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水の処理手段とを備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記メタン発酵槽より上流側に、前記廃棄物に前記酸化剤含有排水を混合する手段を設けたことを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項8】
繊維質を含む廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽と、メタン発酵液を固液分離する固液分離装置と、過酢酸若しくは過酸化水素を含有した過酸化系酸化剤を含む酸化剤含有排水の処理手段とを備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記メタン発酵槽と前記固液分離装置の間に、前記メタン発酵液に前記酸化剤含有排水を混合する手段を設けるとともに、該酸化剤含有排水が混合されたメタン発酵液の少なくとも一部及び/又はメタン発酵液を固液分離した分離汚泥の少なくとも一部を前記メタン発酵槽より上流側に返送する返送ラインを備えたことを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項9】
前記繊維質を含む廃棄物が、飲料・食品工場から排出される廃棄物であり、前記酸化剤含有排水が、前記飲料・食品工場にて殺菌・洗浄に用いられた酸化剤を含有する排水であることを特徴とする請求項7若しくは8記載の廃棄物処理システム。
【請求項10】
廃水、若しくは前記メタン発酵後のメタン発酵液を固液分離した分離液を活性汚泥処理する活性汚泥処理設備を備え、
前記活性汚泥処理設備が曝気槽と沈殿槽を有し、該沈殿槽にて得られる余剰汚泥の少なくとも一部を前記曝気槽に返送する返送ラインを備えており、
前記返送ライン上に、前記余剰汚泥の少なくとも一部に前記酸化剤含有排水を混合する手段を設けたことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の廃棄物処理システム。
【請求項11】
前記メタン発酵槽の前段に混合調整槽を設け、システム内で発生した廃熱若しくは廃アルカリを該混合調整槽に供給して前記廃棄物若しくは前記メタン発酵液を可溶化処理することを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の廃棄物処理システム。
【請求項12】
前記過酸化系酸化剤が過酢酸を主成分とすることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の廃棄物処理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−326070(P2007−326070A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160735(P2006−160735)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】