説明

廃棄物処理装置および廃棄物処理方法

【課題】破壊後の残渣物が微小な粉塵となって空気中に飛散することを防止できる廃棄物処理装置1および廃棄物処理方法を提供する。
【解決手段】廃棄物処理装置1に、油化対象を投入許容する油化槽10と、該油化槽10を加熱する加熱装置15と、前記加熱装置15による加熱温度を、前記油化対象を油化する油化温度(約400℃〜450℃)と、前記油化の後に前記油化槽10内に残った残渣物を溶解する溶解温度(約1,000℃〜1,400℃)とに調節する制御装置20とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄物を破壊する廃棄物処理装置および廃棄物処理方法に関し、特にFRP(Fiber Reinforced Plastics)や光ファイバー等、ガラス成分が含まれている材料により形成された物品を破壊した後の取扱容易性を高めるような廃棄物処理装置および廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用の終了した廃棄物は、破壊等されて廃棄されるか、分別して再利用されている。廃棄物を破壊する方法としては、例えば、廃プラスチックを約140°で加熱し、廃プラスチック中の発砲スチロールを減容し、廃プラスチックを微粉砕する廃プラスチック分別回収方法が提案されている(特許文献1参照)。また、電子部品搭載プリント配線基板を低温乾留して可燃部分を炭化させ、冷却して破砕する電子部品搭載プリント配線基板の処理方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、これらの方法は、ガラス成分が含まれている物品の廃棄物を破壊するのに適した方法ではなかった。すなわち、破壊後の残渣物が微小な粉塵になると、空気中に容易に飛散してしまう。このため、係員は防塵マスクを着用するなどして、灰に粉塵が入らないようにする必要が生じる。前記各方法は、このような粉塵の処理に適したものではなかった。
【特許文献1】特開2000−153525号公報
【特許文献2】特開2001−81519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上述の問題に鑑み、破壊後の残渣物が微小な粉塵となって空気中に飛散することを防止できる廃棄物処理装置および廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、油化対象を投入許容する油化槽と、該油化槽を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による加熱温度を、前記油化対象を油化する油化温度と、前記油化の後に前記油化槽内に残った残渣物を溶解する溶解温度とに調節する温度調節手段とを備えた廃棄物処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明により、破壊後の残渣物が微小な粉塵となって空気中に飛散することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、廃棄物処理装置1の構成図を示し、図2は、廃棄物処理装置1のブロック図を示す。
廃棄物処理装置1は、図1に示すように、油化槽10、該油化槽10を加熱する加熱装置15、油化槽10の後段の塩素除去装置21、塩素除去装置21の後段の冷却装置23、冷却装置23の後段の油水分離装置25、油水分離装置25の後段の油槽33、及び油化槽10の後段の破砕装置31が設けられている。また、図2に示すように、廃棄物処理装置1には、温度センサ17、操作部18、および制御装置20も設けられている。
【0008】
油化槽10は、油化対象を密閉状態で熱分解する熱分解槽14で構成されている。ここで、油化対象は、熱可塑性樹脂、FRP、廃プラスチック、電線、廃タイヤ、賞味期限切れコンビニ弁当(コンビニエンスストア等で販売されるプラスチック製容器に食料が収納された弁当)、建設廃材(木屑、金属屑、電線屑、ガラス、陶器等)、および制服等などの廃棄物、あるいは廃油など、様々な固体または液体で構成することができ、またこれらを混合することもできる。この油化槽10は、投入された油化対象から油成分を抽出することができる。このため、油成分そのものを取得して再利用できるとともに、油成分が油化対象から流れ出ることで油化対象を脆化させることができる。この脆化機能により、FRPのように破壊が困難な物質も容易に破壊可能になる。
【0009】
熱分解槽14の上部には、廃油や廃棄物などの油化対象を投入許容する油化対象投入部11と、油成分が含まれている蒸気を排出する蒸気排出路12とが個別に設けられている。
【0010】
熱分解槽14は、内部に投入された廃油や廃棄物を密閉状態で加熱して油成分を蒸発させる。この熱分解槽14は、投入された廃油や廃棄物を適宜の攪拌手段で攪拌することが好ましい。これにより、特に廃油が熱分解槽14の表面にこびりつくといったことを防止できる。
【0011】
加熱装置15は、制御装置20の制御信号に従って、熱分解槽14を適宜の温度に加熱する。この適宜の温度は、油化させるための油化温度と、水を蒸発させるための水蒸発温度とすることができ、係員が任意に設定可能である。
【0012】
温度センサ17は、熱分解槽14の温度を検知して制御装置20に送信する。
操作部18は、運転開始や運転停止、モード変更といった係員の操作入力を受け付け、入力された入力信号を制御装置20に送信する。変更可能なモードには、まず自動モードと手動モードがある。自動モードには、第1加熱モードと第2加熱モードがある。第1加熱モードは、A重油抽出モード(約400℃〜450℃に加熱してA重油を抽出する)、C重油抽出モード(約600℃に加熱してC重油を抽出する)、軽油抽出モード(約200℃に加熱して軽油を抽出する)がある。第2加熱モードは、溶解モード(約1,000℃〜1,400℃に加熱してガラスを溶かす)、および滅菌モード(約800℃〜1,000℃に加熱して滅菌する)などが含まれる。また、前記第1加熱モードのいずれかを実行した後に前記第2加熱モードのいずれかを実行する複合連続モードもある。
【0013】
制御装置20は、温度センサ17からの温度情報、および操作部18からの入力情報を受け取り、加熱装置15、塩素除去装置21、冷却装置23、油水分離装置25、破砕装置31、および油槽33の動作を制御する。
【0014】
塩素除去装置21は、熱分解槽14から蒸気排出路12を経由して流れてくる蒸気から塩素を除去する装置である。この塩素除去装置21は、例えば反応装置と中和装置で構成することができる。この場合、反応装置は、流れてくる蒸気を脱硫触媒(純鉄、酸化鉄、亜鉛、またはニッケル等)と反応させて脱硫するとよい。また、中和装置は、反応装置で反応した後の物質を石灰または炭酸カルシウムにより中和するとよい。これにより塩素等を中和して塩酸が生じることを防止できる。
【0015】
冷却装置23は、流れてきた蒸気を冷却し、凝縮液化する。
油水分離装置25は、凝縮液化した液体を油と水に分離する。
破砕装置31は、熱分解槽14に残った残渣物を破砕する。
油槽33は、油水分離装置25で分離された油を貯留する。
【0016】
図3は、廃棄物処理装置1の制御装置20が実行する動作を示すフローチャートである。
【0017】
制御装置20は、まず熱分解槽14に廃油や廃棄物等の油化対象が投入されることを許容し、油化対象が投入されて油化対象投入部11が閉鎖されることを図示省略する検知手段で検知するまで待機する(ステップS1)。
【0018】
制御装置20は、係員による操作部18の操作入力を受け付ける(ステップS2)。ここでの操作入力は、モード設定の操作入力と、運転開始の操作入力を受け付ける。この実施例では、廃棄物の破壊に適した複合連続モードとして、A重油抽出モードを実行した後に続けて溶解モードを実行するモードが選択されたものとして説明する。
【0019】
制御装置20は、A重油抽出モードを実行し、加熱装置15により熱分解槽14を加熱する(ステップS3)。このとき、熱分解槽14内に事前に水を投入しておくことが好ましい。水を投入しておくと、熱分解槽14の温度が上昇する段階でまず沸点の低い水(沸点約100℃)が蒸発する。これにより、熱分解槽14内に水蒸気が充満し、酸素が蒸気排出路12から後段へ排出される。制御装置20は、加熱装置15により熱分解槽14をさらに加熱する。
【0020】
熱分解槽14内の温度が油成分の蒸発温度(例えば約400℃〜450℃)まで上昇すると、油化対象の油成分が蒸発し始め、蒸気排出路12から後段へ向けて排出される。
【0021】
制御装置20は、油化対象から油成分が十分に抽出されてこれ以上抽出できなくなる程度まで加熱を継続する(ステップS4:No)。これにより、熱分解槽14内の投入されている油化対象が、FRPなどの破壊困難な物質であっても、油成分が抜け出すことで脆化しており容易に破壊できる。また、この破壊によって油化対象の一部あるいは全部が粉塵化する。
【0022】
油化が完了すると(ステップS4:Yes)、制御装置20は、第2加熱モードとして溶解モードに切り替えて加熱装置15によりさらに加熱し、熱分解槽14内の温度を溶解温度(約1,000℃〜1,400℃)まで上昇させる(ステップS5)。このとき、油化槽10は、油化対象投入部11が閉鎖しているだけでなく、蒸気排出路12も図示省略するシャッタにより閉鎖する。この閉鎖状態で温度上昇させることにより、油化槽10内を加圧することができ、油化槽10内の温度上昇を効率よく行うことができる。このようにして溶解温度まで温度上昇させることにより、粉塵化したガラス成分が溶解し、各粉塵が互いに結合する。
【0023】
なお、第2加熱モードが滅菌モードである場合は、加熱装置15により熱分解槽14内の温度を滅菌温度(約800℃〜1,000℃)に加熱し、滅菌処理を行う。
【0024】
一定時間が経過すると(ステップS6:YES)、制御装置20は、加熱装置15による加熱を停止し(ステップS7)、処理を終了する。加熱を停止することで熱分解槽14内の温度が下降し、溶解していたガラス成分が凝縮固体化する。従って、粉塵であったガラス成分等を一旦溶解させてから再度凝縮することで、残渣物から粉塵の存在を排除することができる。
【0025】
なお、残渣物は、破砕装置31により適度な大きさに破砕すると良い。この場合、油化工程にて油成分が抜け出して脆化し粉塵化していた物質であっても、溶解工程にてガラス成分により凝縮固体化しているため、適度な大きさに粉砕しても粉塵が発生することを防止できる。
【0026】
以上に説明した廃棄物処理装置1により、残渣物に含まれる粉塵を一旦溶解して固体化させることができる。したがって、粉塵の存在による残渣物の取扱困難性を排除して取扱容易にすることができる。
【0027】
詳述すると、そもそもFRP等の熱硬化性樹脂は破壊が非常に困難であり、廃棄が難しいという問題点を有している。廃棄物処理装置1は、このように破壊困難なFRP等の熱硬化性樹脂から油成分を抽出することで脆化させ、容易に破壊できるようにする点で非常に利便性が高いものである。一方で、FRP等の熱硬化性樹脂を脆化した残渣物を粉砕すると、微小な粉塵が生じて飛散性が高まり、取り扱いがわずらわしくなってしまうという新たな問題が生じる。これに対して、本実施例の廃棄物処理装置1は、粉末化(防塵化)した残渣物をさらに高温で加熱し、含有されているガラス成分を溶融させることで再度固形化させ、取り扱いを容易にすることができる。従って、廃棄物処理装置1は、破壊困難であったFRPを容易に破壊できる上に、最終的に排出する残渣物も容易に取り扱える非常に利便性の高いものである。
【0028】
また、廃棄物処理装置1は、制御装置20の制御により動作を管理することで、廃棄物処理装置1を安定稼動させることができる。このため、係員の利便性を向上させることができる。
【0029】
また、廃棄物処理装置1は、操作部18によってモードを任意に選択できる。このため、係員は用途や目的によって各モードを任意に切り替え、最適なモードを選択することができる。
【0030】
また、第2加熱モードを滅菌モードとした場合は、残渣物を滅菌することができるため、例えば医療施設で発生する廃棄物を油化、減容および滅菌することができる。これにより、廃棄物から油成分を抽出し、該廃棄物を減容し、さらに滅菌することができ、利便性が向上する。
【0031】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の加圧手段は、実施形態の蒸気排出路12を閉鎖するシャッタに対応し、
以下同様に、
加熱手段は、加熱装置15に対応し、
操作入力手段は、操作部18に対応し、
温度調節手段および制御手段は、制御装置20に対応し、
油化温度は、約400℃〜450℃に対応し、
溶解温度は、約1,000℃〜1,400℃に対応し、
油化工程は、ステップS3に対応し、
溶解工程は、ステップS5に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】廃棄物処理装置の構成図。
【図2】廃棄物処理装置のブロック図。
【図3】廃棄物処理装置の制御装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0033】
1…廃棄物処理装置、10…油化槽、12…蒸気排出路、15…加熱装置、18…操作部、20…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油化対象を投入許容する油化槽と、
該油化槽を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段による加熱温度を、前記油化対象を油化する油化温度と、前記油化の後に前記油化槽内に残った残渣物を溶解する溶解温度とに調節する温度調節手段とを備えた
廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記温度調整手段を、前記油化温度による油化工程と前記溶解温度による溶解工程とをこの順で実行するように前記加熱手段を制御する制御手段により構成した
請求項1記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記油化槽内を加圧する加圧手段を備えた
請求項1または2記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記油化温度または溶解温度の少なくとも一方を変更する操作入力を許容する操作入力手段を備えた
請求項1、2または3記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記油化槽内を定められた油化温度まで加熱手段で加熱して油化対象を油化する油化工程と、
前記油化槽内を定められた溶解温度まで前記加熱手段で加熱して前記油化工程の後に前記油化槽内に残った残渣物を溶解する溶解工程とを実行する
廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−6282(P2009−6282A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170857(P2007−170857)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(597120972)オリエント測器コンピュータ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】