説明

廃棄物炭化処理設備

【課題】 廃棄物の炭化処理導入のために新設する機器点数を削減できるようにする。
【解決手段】 熱分解キルン炉1より熱分解ガス13を取り出すための熱分解ガスライン16を、既設ボイラ33に設けた熱分解ガス供給ノズル38に接続する。既設ボイラ33よりボイラ排ガス39を取り出すための排ガス取出ライン40を、熱分解キルン炉1の加熱流路6の加熱ガス入口18に接続する。熱分解キルン炉1にて廃棄物12を外熱により熱分解、炭化処理し、生成する炭化物14は回収する。熱分解ガス3は既設ボイラ33へ導いて化石燃料34と共に混焼させ、この混焼により発生する高温のボイラ排ガス39の一部を、排ガス取出ライン40を介して熱分解キルン炉1の加熱流路6へ導くことで、ボイラ排ガス39を熱源として廃棄物12の熱分解、炭化処理を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を外熱により熱分解、炭化処理して燃料等として利用可能な炭化物を製造するための廃棄物炭化処理設備に関するもので、特に、食品関連工場や植物油製造工場やその他、既設のボイラを有する施設、又は、既設の燃焼炉を有する施設にて、廃棄物の熱分解、炭化処理を新たに導入する場合に適した廃棄物炭化処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品関連工場や植物油製造工場等では、原料を蒸したり殺菌するため、あるいは、所要機器の加熱用の熱源としたり、更には、発電を行うこと等を目的として蒸気が用いられることがあり、そのために、化石燃料やその他の所要の燃料を燃焼させて蒸気を発生させるためのボイラが装備されていることが多い。
【0003】
たとえば、パーム油を製造する工場では、通常、原料となるパーム椰子の実を房ごと搬入した後、この搬入されたパーム椰子の房を殺菌のために蒸気を用いて蒸し、その後、房よりパーム椰子の実を取り出して、この房より取り出された実を原料としてパーム油を製造するようにしてあり、したがって、上記パーム椰子の房を蒸すための蒸気を発生させるボイラを備えるようにしてある。
【0004】
又、種々の工場施設等においては、所要の燃料を燃焼させるようにしてある燃焼炉が装備されていることも多い。
【0005】
ところで、上記パーム油の製造工場では、上記したように、パーム椰子の房より取り出した実のみを原料としてパーム油を製造するようにしてあるため、実を取り出した後のパーム椰子の房が大量に排出されるようになるが、現状では、このパーム椰子の房については埋設処分等による処分が行われていて、特に有効利用が図られていないというのが実状である。
【0006】
又、大豆油を製造する工場では、原料となる大豆より油を抽出すると、原料重量の約80%もの大量の油かすが発生するため、これを処分する必要がある。
【0007】
一方、近年、地球温暖化対策や、循環型社会を構築すること等を目的として、一般廃棄物、産業廃棄物、バイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源)からなる廃棄物等の廃棄物を、単に焼却処分したり、埋設処分するのではなく、資源として有効利用する取り組みが世界的に行われるようになってきている。
【0008】
この種の廃棄物の資源化を図るための手法の1つとして、廃棄物を低酸素雰囲気で加熱することにより熱分解、炭化させて、可燃性の熱分解ガスと、熱分解残渣としての炭化物(チャー)及び灰分を発生させ、上記熱分解ガスを所要の燃焼炉で燃焼させた後、排ガス処理を施してから大気へ放出させるようにし、一方、熱分解残渣は、選別、粉砕をして燃料等として利用可能な炭化物として回収するようにした廃棄物の熱分解、炭化処理システムが開発され、実用化されてきている。
【0009】
上記廃棄物の熱分解、炭化処理を実施するための廃棄物炭化処理設備としては、図4にその一例の概略を示す如き構成のものが提案されている。
【0010】
すなわち、図4に示す廃棄物炭化処理設備は、一端の入口2側に供給管2aを一体に接続し且つ他端の出口3側に排出管3aを一体に接続した内筒4と、該内筒4の外側に同心状に配置した外筒5との間に、加熱流路6を形成し、上記外筒5と内筒4を一体で回転できるようにした熱分解キルン炉1を構成する。上記熱分解キルン炉1は、一端の入口2側よりも他端の出口3側が僅かに低くなるように傾斜させて横置きに配置し、外筒5の外周面に設けたリングギヤ7に、モータ8の出力軸のピニオン9を噛合させて、該モータ8の駆動により上記熱分解キルン炉1を回転できるようにしてある。
【0011】
又、上記熱分解キルン炉1の入口2には、給じん機10が供給管2aの内側に挿入して設けてあり、投入ホッパ11に投入された廃棄物12を、給じん機10により入口2へ供給するようにしてある。一方、上記熱分解キルン炉1の出口3には、熱分解ガス13と熱分解残渣14とを分離する分離室15を設け、該分離室15の上端部に熱分解ガスライン16を接続すると共に、分離室15の底部に熱分解残渣ライン17を接続して、熱分解ガス13を熱分解ガスライン16より、又、熱分解残渣14を熱分解残渣ライン17よりそれぞれ取り出すことができるようにしてある。
【0012】
更に、上記熱分解キルン炉1の出口3側には、上記加熱流路6に連通する加熱ガス入口18を備えて、熱風発生炉19と上記加熱ガス入口18とを加熱ガス供給ライン20で接続し、これにより、上記熱風発生炉19で所要の燃料を燃焼させて発生させた高温の加熱ガス(熱風)21を、加熱ガス供給ライン20を通して加熱ガス入口18より加熱流路6内へ供給するようにしてある。又、上記熱分解キルン炉1の入口2側には、上記加熱流路6に連通させた加熱ガス出口22が設けてあり、該加熱ガス出口22に接続した加熱ガス循環ライン23を上記熱風発生炉19に接続して、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6を通過した後の加熱ガス21aを熱風発生炉19へ循環させ、余りのガスを加熱ガス循環ライン23の途中より分岐させた余剰ガスライン24を通して下流の余剰ガスの燃焼炉(図示せず)へ送ることができるようにしてある。これにより、熱分解キルン炉1をモータ8の駆動により低速で回転させた状態において、投入ホッパ11内の廃棄物12を給じん機10により熱分解キルン炉1内へ徐々に供給しつつ、熱風発生炉19で発生した高温の加熱ガス(熱風)21を、加熱ガス供給ライン20、加熱ガス入口18を経て加熱流路6に供給して流通させることにより、内筒4内の廃棄物12を加熱ガス21による外熱により間接加熱して、熱分解、炭化させるようにしてある。
【0013】
又、上記熱分解ガスライン16は、下流の図示しない余剰ガスの燃焼炉や溶融炉へ接続すると共に、その途中に熱分解ガス13を熱分解キルン炉1から取り出して下流へ圧送させるための熱分解ガスファン25を設けて、該熱分解ガスファン25を運転して分離室15より熱分解ガス13を吸引して取り出すことにより、熱分解キルン炉1の内圧を一定(一般的には負圧)に保つようにしてある。
【0014】
上記熱分解ガスライン16の熱分解ガスファン25の下流側には、開閉を調節するようにしてあるバルブ26が設けてある。更に、上記熱分解ガスライン16における熱分解ガスファン25とバルブ26との間より分岐させて設けた回収ライン27を、上記熱風発生炉19に接続すると共に、該回収ライン27の途中に設けた開度を調節するためのバルブ28と、上記熱分解ガスライン16上のバルブ26が、加熱ガス供給ライン20に設けた温度調節器29からの信号に基づいて開閉が調節されるようにしてある。これにより、上記熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理によって発生する熱分解ガス13は、上記熱分解ガスファン25の運転により熱分解ガスライン16を通して上記図示しない余剰ガスの燃焼炉や溶融炉へ導いて燃焼させるようにすると共に、該熱分解ガス13の一部を上記熱風発生炉19へ供給して加熱ガス21を発生させるための燃料として燃焼させるようにしてある。更に、この際、上記加熱ガス供給ライン20を流通する加熱ガス21の温度を検出する温度調節器29からの信号に基づいて、上記回収ライン27上のバルブ28と、熱分解ガスライン16上のバルブ26の開度をそれぞれ調整して、熱風発生炉19へ供給する熱分解ガス13の供給量を調整することで、該熱風発生炉19より加熱ガス供給ライン20を経て熱分解キルン炉1へ供給される加熱ガス21の温度が、該熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理に必要な温度以上となるようにしてある。
【0015】
更に、上記加熱ガス循環ライン23における余剰ガスライン24の分岐位置よりも上流側には、ダンパ30と加熱ガス循環ファン31が上流側より順に設けてあり、該加熱ガス循環ファン31により、熱分解キルン炉1の加熱流路6より加熱ガス21aを誘引して熱風発生炉19や下流の燃焼炉等へ圧送できるようにしてあり、この際、上記熱分解ガスライン16に設けた温度調節器32からの信号に基づいて上記ダンパ30の開度を調整することで、熱分解キルン炉1より熱分解ガスライン16へ導かれる熱分解ガス13の温度が所定温度に保たれるように、上記熱分解キルン1の加熱流路6を流通する加熱ガス21の流量が調節されるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0016】
なお、上記廃棄物炭化処理設備では、熱分解キルン炉1での廃棄物12の加熱を、内筒4の鉄皮を介した間接加熱により行わせるようにしてあるため、廃棄物12の熱分解温度としては450℃程度とする温度条件が一般的に採用されている。そのために、上記熱風発生炉19より熱分解キルン炉1の加熱流路6へ供給する加熱ガス21の温度は、500〜550℃程度とすることが望まれる。したがって、上記熱風発生炉19では、上記熱分解ガス13を燃焼させる際に、熱分解キルン炉1の加熱流路6にて廃棄物12の間接加熱に供されることによって350℃程度まで温度低下した状態で加熱ガス出口22より排出される加熱ガス21aを、加熱ガス循環ライン23を経て該熱風発生炉19へ循環させることで、上記500〜550℃程度の温度条件となる加熱ガス21を発生させることができるようにしてある。
【0017】
【特許文献1】特開平11−193912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、前述したように多量のパーム椰子の房が排出されるパーム油の製造工場や、多量の油かすが排出される大豆油の製造工場等、バイオマスからなる廃棄物や、その他の一般廃棄物や産業廃棄物が生じている既存の施設にて、これらの廃棄物の有効利用を目的として、廃棄物を熱分解、炭化処理して燃料等として利用可能な炭化物を回収する廃棄物炭化処理設備を導入する場合は、図4に示した如き廃棄物炭化処理設備の各構成機器、すなわち、熱分解キルン炉1、熱風発生炉19、余剰の熱分解ガス13を燃焼させるための図示しない燃焼炉や溶融炉、更には、該燃焼炉や溶融炉で発生する排ガスを処理するための排ガス処理設備等を、専用の設備として新たに設けることになるため、新たに設置する機器の点数が多く、そのため、広い設置スペースを確保する必要があると共に、設備費やランニングコストが嵩むというのが実状である。
【0019】
そこで、本発明は、既設のボイラ又は既設の燃焼炉を備えてなる工場施設等にて、廃棄物の熱分解、炭化処理を新たに導入する場合に、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉を利用して廃棄物の熱分解、炭化処理を実施する設備を構築でき、よって、新設する機器の点数を削減できて、設置スペースを削減できると共に、設備費及びランニングコストの低減化を図ることができ、更に、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉の燃料が化石燃料の場合は、化石燃料由来の温室効果ガスの削減化を図ることが可能な廃棄物炭化処理設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、加熱流路を流通させる高温のガスにより廃棄物を間接加熱して熱分解、炭化処理し、生成する熱分解ガスと炭化物を分離して回収できるようにしてある熱分解炉より上記熱分解ガスを取り出す熱分解ガスラインを、既設のボイラ又は既設の燃焼炉に接続して、該ボイラ又は燃焼炉で上記熱分解ガスを所要の燃料と混焼できるようにし、更に、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉より上記熱分解ガスと所要の燃料との混焼により生じる混焼排ガスの一部を取り出す排ガス取出ラインを、上記熱分解炉の加熱流路の加熱ガス入口に接続して、上記混焼排ガスを熱分解炉へ廃棄物の熱分解用熱源として供給できるようにしてなる構成とする。
【0021】
又、上記構成において、排ガス取出ラインの途中位置に、熱分解炉の加熱流路の加熱ガス出口に接続してある循環ファン付きの排ガス循環ラインの下流側端部を接続し、且つ、該排ガス循環ラインにおける循環ファンよりも下流側位置に、余剰の混焼排ガスを排出するための余剰ガスラインを分岐させて設けるようにした構成とする。
【0022】
更に、上記構成において、排ガス取出ラインにおける排ガス循環ラインの接続位置よりも上流側にバルブを設けると共に、上記排ガス取出ラインにおける排ガス循環ラインの接続位置よりも下流側に、排ガス取出ラインを流れる混焼排ガスの温度に応じて上記排ガス取出ラインのバルブの開閉を制御するための温度調節器を設け、更に、上記排ガス循環ラインにおける余剰ガスラインの分岐位置よりも下流側にバルブを設けると共に、該バルブの下流側位置に、排ガス循環ラインの下流側端部における圧力の検出値に応じて上記排ガス循環ラインのバルブの開閉を制御するための圧力調節器を設けるようにした構成とする。
【0023】
上述の各構成において、既設のボイラ又は既設の燃焼炉から、混焼排ガスを排出するための排ガスラインに排ガス処理設備と誘引通風機を順に具備して、上記排ガスラインにおける排ガス処理設備と誘引通風機との間にダンパを設けると共に、上記ダンパの開閉量を熱分解炉の炉内圧力に応じて制御するための圧力調節器を熱分解炉に設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の廃棄物炭化処理設備によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)加熱流路を流通させる高温のガスにより廃棄物を間接加熱して熱分解、炭化処理し、生成する熱分解ガスと炭化物を分離して回収できるようにしてある熱分解炉より上記熱分解ガスを取り出す熱分解ガスラインを、既設のボイラ又は既設の燃焼炉に接続して、該ボイラ又は燃焼炉で上記熱分解ガスを所要の燃料と混焼できるようにし、更に、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉より上記熱分解ガスと所要の燃料との混焼により生じる混焼排ガスの一部を取り出す排ガス取出ラインを、上記熱分解炉の加熱流路の加熱ガス入口に接続して、上記混焼排ガスを熱分解炉へ廃棄物の熱分解用熱源として供給できるようにしてなる構成としてあるので、上記熱分解炉の加熱流路に流通させるための高温のガスを発生させるための熱風発生炉や、熱分解ガスを燃焼させるための燃焼炉や溶融炉を不要にできる。したがって、既設のボイラ又は既設の燃焼炉を有する施設に対し、廃棄物の熱分解、炭化処理を導入すべく廃棄物炭化処理設備を構築するために新設すべき機器の点数を削減できて、該廃棄物炭化処理設備の設置に要する設置スペースを削減できると共に、設備費及びランニングコストの低減化を図ることができる。
(2)既設のボイラ又は既設の燃焼炉では、廃棄物の熱分解ガスを燃焼させることができるようになるため、燃料の使用量を低減でき、該既設のボイラ又は既設の燃焼炉のランニングコストを削減できる。更に、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉の燃料が化石燃料である場合は、該化石燃料に由来する二酸化炭素等の温室効果ガスの発生量も削減することが可能になる。
(3)熱分解炉で廃棄物の熱分解、炭化処理により生じる熱分解ガスに腐食性ガスが含まれていても、既設のボイラ又は既設の燃焼炉で上記熱分解ガスと混焼させる燃料が塩素や硫黄分をほとんど含まないクリーンな燃料であれば、このクリーンな燃料の燃焼によって生じるクリーンな燃焼ガスで上記熱分解ガスに含まれている腐食性ガスを希釈することが可能になる。これにより、廃棄物の熱分解ガスの燃焼ガスを熱分解炉の加熱流路へ流通させる場合に比して、熱分解炉の耐久性を高める効果が期待できる。
(4)排ガス取出ラインの途中位置に、熱分解炉の加熱流路の加熱ガス出口に接続してある循環ファン付きの排ガス循環ラインの下流側端部を接続し、且つ、該排ガス循環ラインにおける循環ファンよりも下流側位置に、余剰の混焼排ガスを排出するための余剰ガスラインを分岐させて設けるようにした構成とすることにより、既設のボイラ又は既設の燃焼炉より排ガス取出ラインへ取り出される混焼排ガスに対して、熱分解炉の加熱流路を流通することで廃棄物の間接加熱用の熱源に供された後の温度低下した混焼排ガスを混入させることができる。これにより、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉より排ガス取出ラインへ取り出される混焼排ガスの温度が、熱分解炉における廃棄物の熱分解用の熱源に要求される温度条件より高い場合であっても、適宜温度を調節してから熱分解炉の加熱流路へ供給することができる。
(5)排ガス取出ラインにおける排ガス循環ラインの接続位置よりも上流側にバルブを設けると共に、上記排ガス取出ラインにおける排ガス循環ラインの接続位置よりも下流側に、排ガス取出ラインを流れる混焼排ガスの温度に応じて上記排ガス取出ラインのバルブの開閉を制御するための温度調節器を設け、更に、上記排ガス循環ラインにおける余剰ガスラインの分岐位置よりも下流側にバルブを設けると共に、該バルブの下流側位置に、排ガス循環ラインの下流側端部における圧力の検出値に応じて上記排ガス循環ラインのバルブの開閉を制御するための圧力調節器を設けるようにした構成とすることにより、上記(4)で示したように既設のボイラ又は既設の燃焼炉より排ガス取出ラインへ取り出される混焼排ガスに対し、排ガス循環ラインを通して導かれる熱分解炉における廃棄物の間接加熱用熱源に供された後の温度低下した混焼排ガスを混入させる際に、両者の混合割合を、熱分解炉の加熱流路へ供給される混焼排ガスの温度に応じて調整することができる。更には、排ガス循環ラインのバルブの開度を圧力調整器で制御して、排ガス循環ラインの排ガス循環ファンの吸込側(1次側)に存在している熱分解炉の加熱流路の内圧を、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉の内圧よりも低減させることで、上記排ガス取出ラインへ取り出される混焼排ガスを、熱分解炉の加熱流路へ確実に導くことができる。
(6)既設のボイラ又は既設の燃焼炉から、混焼排ガスを排出するための排ガスラインに排ガス処理設備と誘引通風機を順に具備して、上記排ガスラインにおける排ガス処理設備と誘引通風機との間にダンパを設けると共に、上記ダンパの開閉量を熱分解炉の炉内圧力に応じて制御するための圧力調節器を熱分解炉に設けるようにした構成とすることにより、廃棄物の熱分解ガスを上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉で燃焼させることによって生じる燃焼ガスは、既設のボイラ又は既設の燃焼炉に供給されている燃料の燃焼ガスと一緒に混焼排ガスとして上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉に装備された排ガス処理設備で処理できる。これにより、従来、廃棄物の熱分解ガスを燃焼させるための専用の燃焼炉や溶融炉を設ける場合に新設するようにしていた排ガス処理設備を不要にできるため、このことによっても廃棄物炭化処理設備を構築するために新設すべき機器の点数を削減できて、該廃棄物炭化処理設備の設置に要する設置スペースを削減できると共に、設備費及びランニングコストの低減化を図ることができる。しかも、上記圧力調整器によって上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉の排ガスライン上のダンパの開度を適宜制御することで、熱分解炉で発生する廃棄物の熱分解ガスを、該既設のボイラ又は既設の燃焼炉の排ガスラインに設けた誘引通風機の誘引通風作用によって既設のボイラ又は既設の燃焼炉へ導くことができるため、上記熱分解炉と既設のボイラ又は既設の燃焼炉とを接続する熱分解ラインに、ファンや弁を設ける必要をなくすことができる。したがって、上記熱分解ガスにタール分が含まれている場合であっても、熱分解ガスライン内に上記タール分が付着して不具合が生じる虞を大幅に低減させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1は本発明の廃棄物炭化処理設備の実施の一形態を示すもので、所要の燃焼用の燃料、たとえば、化石燃料34を燃焼させて蒸気を発生させるようにしてある既設のボイラ33を有し、且つ該既設ボイラ33の排ガスライン35に、排ガス処理設備36と、誘引通風機37とを上流側より順に具備してなる構成を有する既存の工場施設について、上記既設ボイラ33の燃焼室33aの所要位置(図では上下方向中間部の側壁)に、熱分解ガス供給ノズル38を設けて、熱分解炉としての図4に示したと同様の熱分解キルン炉1の分離室15より熱分解ガス13を取り出すための熱分解ガスライン16の先端部(下流側端部)を接続する。更に、上記既設ボイラ33における上記化石燃料34と上記熱分解ガス13との混焼によって生じる混焼排ガスとしてのボイラ排ガス39の温度が上記熱分解キルン炉1で廃棄物12を熱分解、炭化処理するための熱源に要求される温度以上となる所要個所、たとえば、燃焼室33aの上部側壁に、ボイラ排ガス39の一部を取り出すための排ガス取出ライン40の上流側端部となる一端部を接続すると共に、該排ガス取出ライン40の下流側端部となる他端部を、上記熱分解キルン炉1の加熱ガス入口18に接続する。これにより、上記熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理により発生した後、分離室15にて炭化物14と分離されて上記熱分解ガスライン16へ回収される可燃性の熱分解ガス13を、上記熱分解ガス供給ノズル38より上記既設ボイラ33の燃焼室33aへ供給して、該既設ボイラ33へ別途供給されている上記化石燃料34と混焼させる。更に、該既設ボイラ33の燃焼室33aにて上記化石燃料34と熱分解ガス13の混焼によって発生する高温のボイラ排ガス39の一部を、燃焼排ガス取出ライン40を通して上記熱分解キルン炉1の加熱ガス入口18へ導いて、該ボイラ排ガス39を、加熱ガスとして加熱流路6に流通させることで、該熱分解キルン炉1の内筒4内に供給された廃棄物12を、上記ボイラ排ガス39を熱源として間接加熱して、該廃棄物12の熱分解、炭化処理を行わせることができるようにしてある。
【0027】
詳述すると、上記排ガス取出ライン40には、開度を調整するためのバルブ41と、該バルブ41を制御するための温度調節器42と、サイクロン43が上流側より順に設けてある。更に、上記排ガス取出ライン40における上記温度調節器42とバルブ41との間の位置には、上記熱分解キルン炉1の加熱ガス出口22に上流側端部を接続した排ガス循環ライン44の下流側端部が接続してある。
【0028】
上記排ガス循環ライン44の途中位置には、余剰のボイラ排ガス39を外部へ排出するための開閉バルブ46付きの余剰ガスライン45が分岐させて設けてある。
【0029】
更に、上記加熱ガス循環ライン44における余剰ガスライン45の分岐位置よりも上流側には、ダンパ47と、ボイラ排ガス39を循環させるための循環ファン48と、上記ダンパ47の開閉量を制御するための流量調節器49が上流側より順に設けてある。又、上記排ガス循環ライン44における余剰ガスライン45の分岐位置よりも下流側には、開度を調整するためのバルブ50と、該バルブ50を制御する圧力調節器51が上流側より順に設けてある。
【0030】
ここで、上記流量調節器49と温度調節器42と圧力調節器51の機能について説明する。上記流量調節器49は、排ガス循環ライン44の循環ファン48の上流側に設けてあるダンパ47の開度を制御して、排ガス循環ライン44における上記流量調節器49の設置個所を流通するボイラ排ガス39aの流量、すなわち、循環ファン48の吸入量の調整を行うことで、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6を流通するボイラ排ガス39の流量を変化させることができるようにしてある。したがって、たとえば、熱分解キルン炉1へ装入される廃棄物12の量や性状に応じて上記流量調節器49の設定を適宜変更することで、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6に流通させるボイラ排ガス39の流量を適切に設定することができるようにしてある。
【0031】
次に、上記温度調節器42は、上記循環ファン48の運転により、上記流量調節器49によって設定された流量でボイラ排ガス39が排ガス取出ライン40より上記熱分解キルン炉1の加熱ガス入口18へ誘引されるときに、上記燃焼排ガス取出ライン40上のバルブ41の開度を制御することで、上記既設ボイラ33より新たに排ガス取出ライン40へ取り出されて上記加熱ガス入口18へ向かう高温のボイラ排ガス39の量と、上記熱分解キルン炉1にて廃棄物12の熱分解、炭化処理用の熱源に供されることによって約350℃まで温度低下した状態で加熱ガス出口22より排出された後、上記排ガス循環ライン44を経て上記燃焼排ガス取出ライン40へ流入させられるボイラ排ガス39aの量とを適宜変更できるようにしてある。したがって、上記既設ボイラ33より新たに取り出された高温のボイラ排ガス39に対し、上記約350℃まで温度低下したボイラ排ガス39aの混入量を適宜調整することで、排ガス取出ライン40を通して上記加熱ガス入口18へ達するボイラ排ガス39の温度を、500〜550℃程度となるように調節できるようにしてある。
【0032】
更に、上記圧力調節器51は、上記既設ボイラ33が、通常、誘引通風機37によって燃焼室33aの内圧が負圧になるよう制御されていることに鑑みて、このように既設ボイラ33の燃焼室33aが負圧になっていても、上述したように流量調節器49により設定された流量で、且つ上記温度調節器42により上記所定の温度条件に調節されたボイラ排ガス39を上記排ガス取出ライン40を通して熱分解キルン炉1の加熱流路6へ供給できるようにするために、排ガス循環ライン44における循環ファン48の設置位置よりも下流側の流路を絞ることで、該循環ファン48の吸入作用によって、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6の内圧を、上記既設ボイラ33の燃焼室33aの内圧よりも低い圧力に保持することができるようにしてある。
【0033】
更に又、上記既設ボイラ33の排ガスライン35上における排ガス処理設備36と誘引通風機37との間に、ダンパ52を設けると共に、熱分解キルン炉1に、該熱分解キルン炉1の炉内圧力に応じて上記ダンパ52の開閉量を制御するための圧力調節器53を設けて、該圧力調節器53により、上記排ガスライン35上のダンパ52の開閉量を制御することで、熱分解キルン炉1の熱分解ガス13を熱分解ガスライン16を通して導くようにしてある上記既設ボイラ33から排ガスライン35へ排出されるボイラ排ガス39の誘引通風量を調節して、上記熱分解キルン炉1の炉内圧力を常に負圧に保持できるようにしてある。
【0034】
その他、図4に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0035】
以上の構成としてある廃棄物炭化処理設備を使用して廃棄物12の熱分解炭化処理を行なう場合は、既設ボイラ33を化石燃料34の燃焼により稼動させた状態において、排ガス循環ライン44上の循環ファン48を運転して、該循環ファン48の吸引作用により上記既設ボイラ33より排ガス取出ライン40へ取り出したボイラ排ガス39を、上記流量調節器49で設定された流量で、且つ上記温度調節器42により調節された所定の温度となるようにした状態で、サイクロン43により集塵処理した後、上記熱分解キルン炉1の加熱ガス入口18へ供給して加熱流路6を流通させる。この状態で、図4に示したものと同様に、モータ8により熱分解キルン炉1を低速で回転させると共に、投入ホッパ11内の廃棄物12を給じん機10により熱分解キルン炉1内へ徐々に供給すると、内筒4内の廃棄物12は、上記加熱流路6を流通する上記ボイラ排ガス39による外熱により間接加熱されて、熱分解、炭化処理されるようになる。
【0036】
上記熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理によって発生する熱分解ガス13と炭化物14のうち、炭化物14は、図4に示したものと同様に、分離室15で熱分解ガス13と分離した後、炭化物取出ライン17へ取り出されるようになる。よって、その後は、適宜選別、粉砕を行うことにより燃料等として利用可能な炭化物14として回収するようにすればよい。
【0037】
一方、上記分離室15にて炭化物14と分離された熱分解ガス13は、既設ボイラ33の排ガスライン35に設けてある誘引通風機37の作用によって熱分解ガスライン16を通して誘引され、熱分解ガス供給ノズル38より上記既設ボイラ33の燃焼室33aへ供給された後、該既設ボイラ33の燃焼室33aで燃焼させられるようになる。
【0038】
その後、上記既設ボイラ33にて化石燃料34と上記熱分解ガス13を混焼させることによって生じるボイラ排ガス39の一部が、上述したボイラ排ガス39と同様にして排ガス取出ライン40を通して熱分解キルン炉1の加熱ガス入口18まで導かれて加熱流路6を流通させられることで、この化石燃料34と熱分解ガス13の燃焼によるボイラ排ガス39を熱源として、熱分解キルン炉1にて廃棄物12の熱分解、炭化処理が継続して行われるようになる。
【0039】
上記熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理のための熱源に供された後、温度低下した状態で加熱ガス出口22より排ガス循環ライン44へ導かれるボイラ排ガス39aは、その一部が、排ガス取出ライン40へ戻されて循環させられ、上記温度調節器42によって流量が制御されるボイラ排ガス39の温度調整のために用いられ、ボイラ排ガス39aの余剰分となる残部は、開閉バルブ46を開くことで、余剰ガスライン45より大気中へ放出されるようになる。
【0040】
このように、本発明の廃棄物炭化処理設備によれば、熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解により発生する熱分解ガス13は、既設ボイラ33で化石燃料34と共に混焼させることができると共に、この熱分解ガス13と化石燃料34の混焼で生じたボイラ排ガス39は、上記既設ボイラ33の排ガスライン35に装備されている排ガス処理設備36によって処理できる。更に、上記既設ボイラ33で上記熱分解ガス13を該既設ボイラ33を稼動させるための本来の燃料である化石燃料34と混焼させることによって生じるボイラ排ガス39の一部を、上記熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理用の熱源として用いるようにしてあることから、図4に示した如き従来の廃棄物炭化処理設備に装備されていた廃棄物12の熱分解、炭化処理用の熱源とするための加熱ガス21を発生させるための熱風炉19や、熱分解ガス13を燃焼させるための燃焼炉や溶融炉、更には、該燃焼炉や溶融炉の排ガスを処理するための排ガス処理設備を不要にできる。
【0041】
したがって、廃棄物12の有効利用を図るために、廃棄物12を熱分解、炭化処理して燃料等として使用可能な炭化物14を回収するという処理を新たに導入する場合に、廃棄物炭化処理設備を構築するために新設する機器の点数を削減できる。よって、廃棄物炭化処理設備の構成をシンプルなものとすることができると共に、該設備の設置に要する設置スペースを削減できると共に、設備費及びランニングコストの低減化を図ることが可能となる。これにより、廃棄物炭化処理設備の導入を容易なものとすることができて、従来、単に焼却処分や埋設処分されていたバイオマス等の廃棄物の有効利用を促進する効果が期待できる。
【0042】
又、上記既設ボイラ33では、高温のボイラ排ガス39の一部が、排ガス取出ライン40へ取り出されて上記熱分解キルン炉1における廃棄物12の熱分解、炭化処理のための熱源に供されるようになるが、上記熱分解キルン炉1より導かれる熱分解ガス13の燃焼により、上記排ガス取出ライン40へ取り出されるボイラ排ガス39によって失う以上の熱量が得られることから、該既設ボイラ33における化石燃料34の使用量を低減できる。これにより、上記既設ボイラ33のランニングコストを削減できると共に、化石燃料34に由来する二酸化炭素等の温室効果ガスの発生量も削減することが可能になる。
【0043】
更に、上記熱分解キルン炉1で発生する熱分解ガス13の熱分解ガスライン16を介しての既設ボイラ33への供給は、既設ボイラ33の排ガスライン35の誘引通風機37による誘引通風作用に基づいて行われるようにしてあるため、上記熱分解ガスライン16には、ファンや弁を設ける必要がない。したがって、上記熱分解ガス13にタール分が含まれている場合であっても、熱分解ガスライン16内における上記タール分の付着による不具合が発生する虞を大幅に低減させることが可能になる。
【0044】
更に又、上記熱分解キルン炉1で熱分解、炭化処理する廃棄物12中に塩素や硫黄分が含まれていることに起因して、この廃棄物12の熱分解ガス13に腐食性ガスが含まれている場合であっても、該熱分解ガス13は、上記既設ボイラ33で化石燃料34と混焼するようにしてあるため、該化石燃料34が塩素や硫黄分をほとんど含まないクリーンな燃料であれば、このクリーンな化石燃料34の燃焼によって生じるクリーンな燃焼ガスによって上記熱分解ガス13に含まれている腐食性ガスを希釈することが可能になる。これにより、該既設ボイラ33で発生するボイラ排ガス39は、腐食性の低減されたガスとなるため、図4に示した従来の廃棄物炭化処理設備のように、廃棄物12の熱分解ガス13を熱風発生炉19で単に燃焼させて発生させる加熱ガス21を、そのまま熱分解キルン炉1の加熱流路6へ流通させる場合に比して、熱分解キルン炉1の耐久性を高める効果が期待できる。
【0045】
次に、図2は本発明の実施の他の形態として、図1の実施の形態の変形例を示すもので、図1に示したと同様の構成において、排ガス取出ライン40にサイクロンを設けると共に、余剰ガスライン45の下流側を大気に開放させてなる構成に代えて、排ガス取出ライン40の下流側端部を、サイクロンを介することなく熱分解キルン炉1の加熱ガス入口に接続すると共に、余剰ガスライン45の下流側端部を、既設ボイラ33の排ガスライン35における排ガス処理設備36よりも上流側位置に接続するようにしたものである。
【0046】
その他の構成は図1に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0047】
本実施の形態によっても上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
又、既設ボイラ33にて化石燃料34と廃棄物12の熱分解ガス13とを混焼させて発生させるボイラ排ガス39の一部を排ガス取出ライン40へ取り出すと、該排ガス取出ライン40へ取り出されたボイラ排ガス39は、集塵処理されることなくそのまま熱分解キルン炉1の加熱流路6へ供給されるようになるが、該加熱流路6を通過した後に排ガス循環ライン44へ取り出されるボイラ排ガス39aのうち、排ガス取出ライン40へ循環させる分を除く余剰分は、余剰ガスライン45を通して既設ボイラ33の排ガスライン35へ導いて、該排ガスライン35を流通するボイラ排ガス39と一緒に排ガス処理設備36へ送って、排ガス処理を確実に行わせることができる。
【0049】
次いで、図3は本発明の実施の更に他の形態として、既設ボイラ33が、熱分解キルン炉1で廃棄物12を熱分解、炭化処理するための熱源に要求される温度とほぼ同等のガス温度、たとえば、500〜550℃程度のボイラ排ガス39を発生させる形式のボイラである場合の適用例を示すもので、以下のようにしてある。
【0050】
すなわち、本実施の形態では、上記既設ボイラ33で発生するボイラ排ガス39は、500〜550℃程度の温度条件となっているため、何ら温度調整することなく熱分解キルン炉1の加熱流路6へ流通させることで、廃棄物12の熱分解、炭化処理のための熱源として使用することが可能となる。このことに鑑みて、本実施の形態は、図2に示したと同様の構成において、熱分解キルン炉1の加熱ガス出口22に接続した排ガス循環ライン44の下流側端部を排ガス取出ライン40の途中位置に接続した構成に代えて、上記熱分解キルン炉1の加熱ガス出口22に、排ガス排出ライン54の上流側端部となる一端部を接続すると共に、該排ガス排出ライン54の下流側端部となる他端部を、既設ボイラ33の排ガスライン35における排ガス処理設備36よりも上流側位置に接続するようにする。
【0051】
上記排ガス排出ライン54には、図2に示した排ガス循環ライン44に設けたダンパ47と循環ファン48と流量調節器49と同様のダンパ47とファン48aと流量調節器49が上流側より順に設けてあり、上記流量調節器49により上記ダンパ47の開度を制御することで、上記ファン48aの吸入量の調整を行って、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6を流通するボイラ排ガス39の流量を変化させることができるようにしてある。
【0052】
更に、上記既設ボイラ33より排ガス取出ライン40へ取り出すボイラ排ガス39は、何ら温度調整することなく熱分解キルン炉1の加熱流路6へ供給すればよいため、該排ガス取出ライン40には、バルブ41と温度調節器42とを設けることに代えて、温度検出アラーム55を設けた構成としてある。これにより、上記既設ボイラ33より排ガス取出ライン40へ取り出されるボイラ排ガス39の温度が、上記熱分解キルン炉1で廃棄物12を熱分解、炭化処理するための熱源に要求される所定の温度範囲を超えているときには、上記温度検出アラーム55より警報を発することができるようにしてある。したがって、上記温度検出アラーム55により警報が発せられた場合は、上記排ガス排出ライン54上のファン48aの運転を一時停止させるか、又は、上記既設ボイラ33の燃焼量を抑えるようにして、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6へ上記所定の温度範囲を超える温度のボイラ排ガス39が導かれることを阻止するようにすればよい。なお、上記ファン48aの運転停止や、既設ボイラ33の燃焼量の抑制は、手動又は自動のいずれで行わせるようにしてもよい。
【0053】
更に、図3に二点鎖線で示す如く、上記排ガス取出ライン40における上記温度検出アラーム55の設置位置よりも上流側に、開閉弁57付きの空気吸込口56を設けておき、上記温度検出アラーム55により警報が発せられるときに上記空気吸込口56の開閉弁57を自動又は手動で所要時間開くことで、上記所定の温度範囲を超える温度のボイラ排ガス39に対し外気を導入して温度を低下させるようにして、上記熱分解キルン炉1の加熱流路6へ上記所定の温度範囲を超える温度のボイラ排ガス39が導かれることを阻止するようにしてもよい。
【0054】
その他の構成は図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0055】
本実施の形態によっても、図2に示した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、廃棄物12の熱分解炉は、高温のガスにより廃棄物12を間接加熱して熱分解、炭化処理した後、生成する熱分解ガス13と炭化物14を分離して取り出すことができるようにしてあれば、熱分解キルン炉以外のいかなる形式の熱分解炉を用いるようにしてもよい。
【0057】
既設ボイラ33は、本来使用しているボイラ燃料と、廃棄物12の熱分解ガス13とを混焼させることができれば、化石燃料以外の燃料を燃焼させて蒸気を発生させる形式のボイラを用いるようにしてもよい。
【0058】
熱分解キルン炉1の加熱流路6へ供給するために所望される温度条件のボイラ排ガス39を取り出すことができるようにしてあれば、既設ボイラ33よりボイラ排ガス39を取り出す個所は、燃焼室33a以外のいかなる個所であってもよい。
【0059】
既設のボイラ33を有し、且つバイオマスからなる廃棄物や、その他の一般廃棄物や産業廃棄物の有効利用を目的として、これらの廃棄物の熱分解、炭化処理の導入を望む施設であれば、パーム油製造工場や大豆油製造工場以外のいかなる施設においても採用できる。
【0060】
既設のボイラ33に代えて、バイオマスからなる廃棄物や、その他の一般廃棄物や産業廃棄物の有効利用を目的として、これらの廃棄物の熱分解、炭化処理の導入を望む施設に装備されている化石燃料やその他、所要の燃料を燃焼させるようにしてなる既設の燃焼炉を用いるようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の廃棄物炭化処理設備の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の更に他の形態を示す概要図である。
【図4】従来提案されている廃棄物炭化処理設備の一例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0062】
1 熱分解キルン炉(熱分解炉)
6 加熱流路
12 廃棄物
13 熱分解ガス
14 炭化物
16 熱分解ガスライン
18 加熱ガス入口
22 加熱ガス出口
33 既設ボイラ
34 化石燃料(所要の燃料)
35 排ガスライン
36 排ガス処理設備
37 誘引通風機
39,39a ボイラ排ガス(混焼排ガス)
40 排ガス取出ライン
41 バルブ
42 温度調節器
44 排ガス循環ライン
45 余剰ガスライン
48 循環ファン
50 バルブ
51 圧力調節器
52 ダンパ
53 圧力調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱流路を流通させる高温のガスにより廃棄物を間接加熱して熱分解、炭化処理し、生成する熱分解ガスと炭化物を分離して回収できるようにしてある熱分解炉より上記熱分解ガスを取り出す熱分解ガスラインを、既設のボイラ又は既設の燃焼炉に接続して、該ボイラ又は燃焼炉で上記熱分解ガスを所要の燃料と混焼できるようにし、更に、上記既設のボイラ又は既設の燃焼炉より上記熱分解ガスと所要の燃料との混焼により生じる混焼排ガスの一部を取り出す排ガス取出ラインを、上記熱分解炉の加熱流路の加熱ガス入口に接続して、上記混焼排ガスを熱分解炉へ廃棄物の熱分解用熱源として供給できるようにしてなる構成を有することを特徴とする廃棄物炭化処理設備。
【請求項2】
排ガス取出ラインの途中位置に、熱分解炉の加熱流路の加熱ガス出口に接続してある循環ファン付きの排ガス循環ラインの下流側端部を接続し、且つ、該排ガス循環ラインにおける循環ファンよりも下流側位置に、余剰の混焼排ガスを排出するための余剰ガスラインを分岐させて設けるようにした請求項1記載の廃棄物炭化処理設備。
【請求項3】
排ガス取出ラインにおける排ガス循環ラインの接続位置よりも上流側にバルブを設けると共に、上記排ガス取出ラインにおける排ガス循環ラインの接続位置よりも下流側に、排ガス取出ラインを流れる混焼排ガスの温度に応じて上記排ガス取出ラインのバルブの開閉を制御するための温度調節器を設け、更に、上記排ガス循環ラインにおける余剰ガスラインの分岐位置よりも下流側にバルブを設けると共に、該バルブの下流側位置に、排ガス循環ラインの下流側端部における圧力の検出値に応じて上記排ガス循環ラインのバルブの開閉を制御するための圧力調節器を設けるようにした請求項2記載の廃棄物炭化処理設備。
【請求項4】
既設のボイラ又は既設の燃焼炉から混焼排ガスを排出するための排ガスラインに排ガス処理設備と誘引通風機を順に具備して、上記排ガスラインにおける排ガス処理設備と誘引通風機との間にダンパを設けると共に、上記ダンパの開閉量を熱分解炉の炉内圧力に応じて制御するための圧力調節器を熱分解炉に設けるようにした請求項1、2又は3記載の廃棄物炭化処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−96943(P2009−96943A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272028(P2007−272028)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】