説明

廃水処理方法及び装置

【課題】分離膜の膜面に付着する汚泥量を減少させ、汚泥除去のための消費電力を削減すること、また、処理施設をコンパクト化し、効率的でバルキングの発生等の心配がない汚泥分離処理を行うとともに、余剰汚泥の削減、汚泥臭の低減、脱窒,脱リン処理の促進等を図ることを目的とする。
【解決手段】有機物を含む廃水原水を低曝気により生物学的処理する低曝気処理工程2と、低曝気処理工程2の処理水を膜分離により汚泥分離する膜分離処理工程3と、膜分離処理工程3で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化処理工程4とを有し、汚泥消化処理工程4の処理水を電子受容体調整水として低曝気処理工程2に返送する。低曝気処理工程3の溶存酸素量は3mg/L以下、好ましくは1mg/L以下である。膜分離処理工程3の分離膜5は、中空糸膜モジュール5が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機物を含む廃水を、低曝気処理法と膜分離法により浄化処理する方法及び装置に関するもののである。
【背景技術】
【0002】
廃水処理方法として、活性汚泥槽に膜モジュールを浸漬し、処理水と汚泥とに分離する膜分離活性汚泥法が近年注目されている。この方法は、活性汚泥のMLSS(混合液浮遊性固形物)濃度を高く維持しているため、膜モジュールに多量の汚泥等が付着し、目詰まりにより膜分離効率が低下するという問題がある。この汚泥等の除去は、強曝気により膜面を振動させ物理的に洗浄する方法が一般的に行われているが、このほかにも薬液を通水して化学的に洗浄する薬品洗浄法も多数提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
一方、従来の好気性微生物主動の標準活性汚泥法に代わる新たな廃水処理方法として、本発明者の一人により硝酸呼吸微生物主動の低曝気活性汚泥法が開発された。低曝気活性汚泥法は、基本的に反応槽ー沈殿槽ー汚泥消化槽から構成されており、反応槽と汚泥消化槽のDO値(溶存酸素量)を低く抑えて曝気するとともに、汚泥消化槽の上澄水の一部を電子受容体調整水として反応槽の廃水流入水に返送する方法である。この方法により、余剰汚泥の大幅な減容化と全処理工程での無臭化が可能となった(特許文献2)。
【0004】
また、上記発明者は低曝気汚泥活性法に関連して、電子受容体調整水を硝酸呼吸主動の微生物群を構成するような呼吸因子とするため、DO値を0.1mg/L〜3mg/Lに調整し、ORP(酸化還元電位)を0〜300mVに維持して曝気する方法を提案した。これにより、廃水中のBOD、COD等が変化しても、効率的で安定した低曝気汚泥活性法の実施が可能となった(特許文献3)。
【0005】
なお、上記発明者は低曝気処理槽に出現する微生物群をメタゲノム解析し、分析することにより脱窒菌を主体とする微生物群のバイオフィルムを生成するための条件手法や、低曝気処理槽に出現する微生物群を採取培養し、DNAシークエンス解析で同定した知見に基づき、特定の真菌共生菌群で有機性廃棄物を分解浄化する手法も提案している(特許文献4,5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−61697号公報
【特許文献2】特許第3667254号公報
【特許文献3】特許第4112549号公報
【特許文献4】特開2007−117790号公報
【特許文献5】特開2004−248618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
膜分離活性汚泥法は、上述したように膜モジュールの膜面に付着した多量の汚泥等を除去するために曝気の通風量を高くする必要があり、消費電力が増大するという問題がある。また、活性汚泥法には、多量の余剰汚泥が発生、悪臭の発生、窒素,リンの残留等の問題もある。
【0008】
一方、低曝気活性汚泥法は、従来の標準活性汚泥法に特有の問題は解消されるが、低曝気処理槽の後に沈殿槽を設けているため処理施設が大型化し、沈殿槽での汚泥沈降分離処理に時間がかかるという問題がある。また、沈殿槽の管理に不備があるとバルキングが発生する心配がある等の問題もある。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するために提案されたものであり、分離膜の膜面に付着する汚泥量を減少させ、汚泥除去のための消費電力を削減することを目的とする。
【0010】
また本発明は、処理施設をコンパクト化し、効率的でバルキングの発生等の心配がない汚泥分離処理を行うとともに、余剰汚泥の削減、汚泥臭の低減、脱窒,脱リン処理の促進等を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の廃水処理方法は、
有機物を含む廃水原水を低曝気により生物学的処理する低曝気処理工程と、
前記低曝気処理工程の処理水を膜分離により汚泥分離する膜分離処理工程と、
前記膜分離処理工程で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化処理工程と、
を有し、
前記汚泥消化処理工程の処理水を電子受容体調整水として前記低曝気処理工程及び/又は前記廃水原水に返送することを特徴とする。
【0012】
このような廃水処理方法によれば、低曝気処理工程において汚泥消化処理工程から返送された電子受容体調整水を主たる呼吸因子として微生物の硝酸呼吸を活性化させ、廃水に含まれる有機物を分解する。硝酸呼吸は嫌気呼吸に近く、発生するエネルギーが少ないため、余剰汚泥の生産を抑えることができる。また、硝酸呼吸における最終生成物は窒素ガスと水と二酸化炭素であり、臭気の発生が少ない。さらに、低曝気の環境下では有機物の好気性酸化とアンモニア性窒素の硝化、脱窒が同時に進行し、脱リンも進行する。
【0013】
電子受容体調整水は、硝酸塩、硫酸塩等の電子受容体を含んだ無機溶液であり、その他にも鉄分、マンガン等の化学物質を含んでいる。低曝気により供給される酸素も電子受容体となる。酸素は好ましい呼吸因子として優先的に消費されるが、その量が3mg/Lを超えると、酸素呼吸主動のいわゆる従来型標準活性汚泥法となり、好気性微生物群が増殖する。DO1mg/L以下にすると微生物の硝酸呼吸環境として最適となる。
【0014】
DO値の下限は微生物群が酸素を消費し尽くしている状態を意味する0でもよいが、最小限の呼吸因子として、DO0.1mg/Lを超える酸素量とするのがよい。なお、酸素量には、電子受容体としての使用目的以外に、他の菌体の酸化(たとえば硝酸菌による硝化)に使用する分も含まれる。
【0015】
上述のDO値は厳格に解釈すべきではなく、上限値をわずかに超えていても本発明が期待する効果が実現できれば本発明の規定するDO値に含まれる。本発明では、刻々変化する廃水の流入量に対応するため一時的にDO値を高くすることもあり、低曝気槽の廃水流入側はDO値が高くなっていることもある。このように、一時的又は部分的にDO値が上限値を超えたとしても、平均的又は最終的なDO値が上限値を超えなければよい。
【0016】
低曝気処理工程において、電子受容体を構成する酸素(溶存酸素)、硝酸塩、硫酸塩等を適正範囲に維持し、硝酸呼吸を主とした微生物群を構成するためにはORPを0〜300mVに維持するのがよい。ORPが0mV以下では電子受容体としての酸素が不足し、微生物群のバランスが硫黄化合物使用菌の方向に傾く。また、300mV以上では、電子受容体としての酸素が多すぎるため、微生物群のバランスが酸素使用菌の方向に傾くことになる(標準活性汚泥法となる)。
【0017】
なお、本発明の廃水処理方法で処理される廃水は、屎尿廃水、家畜糞尿廃水、工場廃水等のあらゆる生活廃水又は産業廃水が含まれる。
【0018】
膜分離処理工程では、低曝気処理工程の処理水の固液分離処理(汚泥分離処理)が行われる。ここで使用される膜材は、多孔質の平膜、管状膜、パラレル膜等を使用してもよいが、コンパクトで濾過面積が広い中空糸膜が好ましく、なかでも洗浄処理、メンテナンス等が容易な外圧型中空糸膜が好適である。外圧型中空糸膜は、中空糸膜を多数束ねて長さ方向両端部を結合しモジュール化したものであり、中空糸膜内部の下端部側から上端部側に向かってポンプ等により吸引力を与え、中空糸膜の外周側の原水(低曝気処理工程の処理水)を、中空糸膜面を介して吸引することにより汚泥を分離するものである。
【0019】
膜材としては、耐薬品性が高く、高水質処理が可能なポリフッ化ビニリデン多孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜等が好ましいが、その他にもポリアクリルニトリル多孔質膜、ポリイミド多孔質膜、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜等の各種の多孔質膜が使用できる。また無機系膜材として、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等のセラミック膜が使用できる。セラミック膜は、有機膜に比較し耐熱性、耐薬品性に優れており、また、機械的、電気的な微振動を与えて膜材の付着物を除去することができる。
【0020】
膜分離により膜外に堆積した汚泥の一部は次の汚泥消化処理工程に移送されるとともに、残りは低曝気処理工程に返送され、低曝気処理工程での汚泥調整として利用される。また、処理水(分離水)は、中空糸膜内部を通して中空糸膜モジュールの上端部側から外部に導出され、必要により殺菌処理された後に河川等に放流される。
【0021】
汚泥消化処理工程では、膜分離処理工程で膜分離された汚泥が上述の低曝気処理工程と同じ条件で再び低曝気処理され、電子受容体調整水となる上澄水の生成、余剰汚泥の減容化及び脱リンの促進が行なわれる。上澄水は、硝酸塩、硫酸塩、鉄分、リン、炭酸塩(二酸化酸素)などの無機質を多量に含んでおり、電子受容体調整水として前記低曝気処理工程に返送される。なお、電子受容体調整水は、たとえば廃水原水の貯留槽に返送し、この混合廃水原水を低曝気処理工程に移送してもよく、要するに、電子受容体調整水を間接的に低曝気処理工程に返送する実施態様も含まれる。
【0022】
低曝気処理工程における脱リン処理が不十分なときは、凝集剤を添加し、リン成分を含む溶液を凝集させ、これを回収除去又は次の膜分離処理工程で膜分離処理することもできる。凝集剤としては、塩化第二鉄,ポリ硫酸第二鉄等の鉄系凝集剤、硫酸アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム系凝集剤、水酸化カルシウム,酸化カルシウム等のカルシウム系凝集剤、その他の無機凝集剤又は各種の有機高分子凝集剤を使用することができる。
【0023】
膜分離処理工程での膜洗浄処理は、従来と同じように連続的または間欠的に曝気することにより膜面に振動を与え、付着した汚泥等を膜面から除去する。本発明では、低曝気処理工程での余剰汚泥の発生が少ないため、膜面への付着量も従来の標準活性汚泥法に比べると少なくすることができる。したがって、短時間の強曝気処理又は比較的長時間の低曝気処理により膜面を洗浄することができ、消費電力が大幅に削減できる。膜洗浄処理法は逆洗処理法であってもよい。
【0024】
本発明では、曝気による膜洗浄処理に代えて、又はこれと併用して薬品洗浄処理を行うこともできる。薬品洗浄は、たとえば中空糸膜の内部の上端部側から下端部側に向かって洗浄液を注入し、膜面を化学的に洗浄処理するものである。洗浄液としては、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性洗浄液を使用するのが一般的であるが、必要によりクエン酸、シュウ酸等の酸性洗浄液を使用することもできる。
【0025】
また、本発明の別の廃水処理方法は、
有機物を含む廃水原水を、第一の低曝気処理工程及び第二の低曝気処理工程に分散して移送し、各低曝気処理工程で低曝気により生物学的処理する工程と、
前記第一及び第二の低曝気処理工程の処理水を膜分離により汚泥分離する膜分離処理工程と、
前記膜分離処理工程で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化処理工程と、
を有し、
前記汚泥消化処理工程の処理水を電子受容体調整水として前記低曝気処理工程の両方又は一方、及び/又は前記廃水原水に返送することを特徴とする。
【0026】
このような廃水処理方法によれば、低曝気処理工程の中央部に膜分離処理工程を配置することにより、廃水原水を第一及び第二の低曝気処理工程に分散させ、両工程で効率的に低曝気処理を行い、その処理水を膜分離処理工程で集中して汚泥分離処理ことができる。このため、処理時間が短縮し、処理設備全体のコンパクト化を図ることができ、また、既存の大型槽を改造して大量の廃水処理を行うことも可能となる。その他は、上述した各処理工程の条件と同じである。
【0027】
上述した本発明の廃水処理方法を実現するための廃水処理装置は、
有機物を含む廃水原水を低曝気により生物学的処理する低曝気槽と、
前記低曝気槽の処理水を膜分離により汚泥を分離する膜分離槽と、
前記膜分離槽で分離された汚泥を低曝気する汚泥消化槽と、
前記汚泥消化処理槽の処理水を前記低曝気槽及び/又は前記廃水原水に返送する返送手段、
を有していることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の別の廃水処理装置は、
有機物を含む廃水原水を、低曝気により生物学的処理する第一の低曝気槽及び第二の低曝気槽と、
前記第一及び第二の低曝気槽に前記廃水を分散して移送する手段と
前記第一及び第二の曝気槽の処理水を膜分離により汚泥を分離する膜分離槽と、
前記膜分離槽で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化槽と、
前記汚泥消化槽の処理水を前記低曝気槽の両方又は一方、及び/又は前記廃水原水に返送する返送手段、
を有していることを特徴とする。
【0029】
前記各低曝気槽は、通常使用される曝気槽でよく、エアー供給量を上記DO値となるように制御しながら供給するための送気ポンプ、バルブ、制御装置等を備えている。各低曝気槽は単槽式でも複数に区画した多段式でもよい。多段式とした場合、DO値を上流側から徐々に低下させてもよい。
【0030】
膜分離槽は、上述した中空糸膜モジュールを槽内に多数設置した浸漬型膜分離装置が好ましい。中空糸膜モジュールは、たとえば上端部と下端部を接着剤等で固定するとともに、下端部に気体導入口部、上端部に処理水導出口部を装着した構成となっており、処理水導出口側からポンプ等で吸引することにより、中空糸膜の膜面を通過した処理水(分離水)が導出口側から引き抜かれるようになっている。
【0031】
浸漬型には、低曝気槽とは別に膜分離槽を設置する槽別置型と、低曝気槽の内部に中空糸膜モジュールを設置する一体型があるが、何れの方式でもよい。一体型の場合、低曝気槽の内部に膜分離槽を設置してもよく、低曝気槽内に中空糸膜モジュールを直接設置してもよい。後者の場合、中空糸膜モジュール設置部分を膜分離槽と解釈する。また、本発明では、中空糸膜モジュールをケーシング等に収納し、このケーシングを低曝気槽の外部に設置する槽外型を採用することもできる。
【0032】
中空糸膜モジュールは、支持枠に中空糸膜モジュールを複数本装着したユニット体とすることができ、このユニット体を膜分離槽の内部に複数設置することができる。具体的な中空糸膜の濾過面積、内径、孔径、さらには中空糸膜モジュール(またはユニット)の設置形態、設置本数等は、処理水量、汚泥性状(MLSS、SS等)等に応じて最適なものが選定される。
【0033】
汚泥消化槽は基本的には低曝気槽と同じ構成である。汚泥消化槽の処理水(上澄水)を一時的に貯留する貯留槽を付設してもよい。汚泥消化槽で発生した僅かな余剰汚泥は、低曝気槽又は膜分離槽に返送するか、廃棄処分してもよい。なお、汚泥消化槽の処理水を低曝気槽に返送する手段は、通常は返送パイプ、返送ポンプ等から構成される。汚泥処理槽の処理水は、第一の低曝気槽、第二の低曝気槽の両方に返送してもよく、一方に返送してもよい。また、汚泥消化槽の処理水は、廃水原水の貯留槽に返送する形態も含まれる。
【発明の効果】
【0034】
上述した本発明によれば、低曝気活性汚泥法と膜分離法を組み合わせたことにより、低曝気活性汚泥法で生成される活性汚泥の性状が、標準活性汚泥法で生成される活性汚泥に比較して粘着性が低く、また余剰汚泥の発生が低減することも相俟って、分離膜の膜面に付着する汚泥量が減少し、汚泥除去のための消費電力を削減することができる。また、沈殿槽が不要となるため処理設備をコンパクト化することができ、バルキング等の発生の心配のない効率的な汚泥分離処理が可能となる。また、既設設備をわずかに改良するだけで安価に建設することができる。さらに、低曝気活性汚泥法により余剰汚泥の削減、汚泥臭の低減、脱窒,脱リン処理の促進等を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態を説明するための概略図である。
【図2】本発明の別の実施形態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
「実施態様1」
図1は本発明の廃水処理システムの概略図を示しており、廃水原水の貯留槽1と、低曝気槽2と、膜分離槽3と、汚泥消化槽4から構成されている。貯留槽1は、流入する廃水原水を一旦ここに貯留して流量調整を行うとともに、必要によりスクリーニング処理が行なわれる。貯留槽1の流入水量(処理水量)は、ここでは6000m/dである。
【0037】
低曝気槽2では、貯留槽1からの廃水原水を、ここではDO1mg/L以下で低曝気処理を行う。MLSSは3000mg/L〜15000mg/Lである。低曝気槽2では塩化第二鉄等の凝集剤を添加して処理廃水中に含まれるリン成分を凝集することもできる。
【0038】
低曝気槽2の処理水は膜分離槽3に移送され、槽内に設置された分離膜5により汚泥の分離処理が行われる。膜分離槽3の分離膜5は、ここでは外圧式中空糸膜モジュールを使用している。膜材はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、公称孔径0.1μmであり、モジュールの膜面積は12000mである。各中空糸膜の内部には下端部から上端部に向かってエアー吸引されており、各中空糸膜の膜面を介して外面側の汚泥と内面側の処理水(分離水)に固液分離される。膜分離された汚泥は膜分離槽3の底部に沈降し、その一部は汚泥消化槽4に移送され、残りは低曝気槽2に返送される。
【0039】
膜分離槽3では、分離膜5に付着した汚泥等を除去するため、連続的又は間欠的にエアー供給量を増大させて強曝気を行い、その気泡により膜面を振動させて汚泥を除去している。本発明では、低曝気槽2の低曝気処理で生成される活性汚泥の性状が、標準活性汚泥法で生成される活性汚泥に比較して粘着性が低く、また余剰汚泥の発生が低減することも相俟って、分離膜5の膜面に付着する汚泥量が低減する。このため、強曝気を短時間行なうことにより、又は低曝気を少し長く行うことによって汚泥の除去が可能となり、従来の膜分離活性汚泥法に比較して消費電力が大幅に削減できる。
【0040】
また、上述の曝気による膜洗浄処理に代えて、又はこれと併用して薬品洗浄処理を行なうことができる。薬品洗浄は、次亜塩素酸ナトリウム等の洗浄液を、送給ポンプ等で各中空糸膜の内部に注入し、膜面を化学的に洗浄処理するものである。
【0041】
汚泥消化槽4では、膜分離槽3から移送された汚泥が再度低曝気処理(ここではDO1mg/L以下)され、余剰汚泥の消化、減容化が行われる。また、この汚泥消化槽4では電子受容体となる硝酸塩、硫酸塩等の無機化合物が多量に生成され、これを電子受容体調整水として低曝気槽2又は廃水原水貯留槽1に返送される。この場合、汚泥消化槽4の低曝気を一時的に停止し、又は汚泥消化槽4の処理水を別の貯留槽に移送して静置し、上澄水を低曝気槽2又は廃水原水貯留槽1に返送してもよい。
【0042】
「実施態様2」
図2に示す廃水処理システムは、膜分離槽3のつぎに第二の低曝気槽2aを設置したものであり、ここでは低曝気槽2は第一の低曝気槽となる。他の各槽の構成は図1のシステムと同じである。第二の低曝気槽2aには、膜分離槽3で分離された汚泥が移送され、ここで低曝気処理が行われる。DO値は第一の低曝気槽2と同じ1mg/L以下でもよいし、低曝気槽2よりも異なる低DO値で低曝気してもよい。
【0043】
図1の廃水処理システムでは、脱リン凝集剤を低曝気槽2で添加しているが、図2の廃水処理システムでは第二の低曝気槽2aで添加する。このリンを含む凝集汚泥を第一の低曝気槽2に返送するとともに、汚泥消化槽4に移送し、上述と同じように汚泥消化処理を行い、その処理水を第一の低曝気槽2又は廃水原水貯留槽1に返送する。
【0044】
上述した実施態様は、本発明の一例を示したものであり、たとえば図1、図2では低曝気槽2又は2aと膜分離槽3が仕切板で区画された形態となっているが、仕切板が無い形態であってもよい(いわゆる一体浸漬型となる)。また、必要に応じて低曝気槽の手前に嫌気曝気工程及び/又は好曝気工程を設け、脱窒、脱リン処理等を行ってもよい。さらに図2の第二の低曝気槽2aのあとに、別の膜分離槽と低曝気槽を設置することもできる。その他、本発明の要旨に従って、廃水処理システムの細部の構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
1は貯留槽
2は低曝気槽(第一の低曝気槽)
2aは第二の低曝気槽
3は膜分離槽
4は汚泥消化槽
5は分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む廃水原水を低曝気により生物学的処理する低曝気処理工程と、
前記低曝気処理工程の処理水を膜分離により汚泥分離する膜分離処理工程と、
前記膜分離処理工程で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化処理工程と、
を有し、
前記汚泥消化処理工程の処理水を電子受容体調整水として前記低曝気処理工程及び/又は前記廃水原水に返送することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
有機物を含む廃水原水を、第一の低曝気処理工程及び第二の低曝気処理工程に分散して移送し、各低曝気処理工程で低曝気により生物学的処理する工程と、
前記第一及び第二の低曝気処理工程の処理水を膜分離により汚泥分離する膜分離処理工程と、
前記膜分離処理工程で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化処理工程と、
を有し、
前記汚泥消化処理工程の処理水を電子受容体調整水として前記低曝気処理工程の両方又は一方、及び/又は前記廃水原水に返送することを特徴とする廃水処理方法。
【請求項3】
前記低曝気処理工程の溶存酸素量は3mg/L以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項4】
前記膜分離処理工程は、中空糸膜モジュールを通して汚泥を分離することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃水処理方法。
【請求項5】
前記低曝気処理工程に脱リン凝集剤を混入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃水処理方法。
【請求項6】
前記膜分離処理工程を強曝気して分離膜を洗浄することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の廃水処理方法。
【請求項7】
前記膜分離処理工程に薬品洗浄液を混入して膜洗浄することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の廃水処理方法。
【請求項8】
有機物を含む廃水原水を低曝気により生物学的処理する低曝気槽と、
前記低曝気槽の処理水を分離膜により汚泥を分離する膜分離槽と、
前記膜分離槽で分離された汚泥を低曝気する汚泥消化槽と、
前記汚泥消化処理槽の処理水を前記低曝気槽及び/又は前記廃水原水に返送する返送手段、
を有していることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項9】
有機物を含む廃水原水を、低曝気により生物学的処理する第一の低曝気槽及び第二の低曝気槽と、
前記第一及び第二の低曝気槽に前記廃水原水を分散して移送する手段と、
前記第一及び第二の曝気槽の処理水を膜分離により汚泥を分離する膜分離槽と、
前記膜分離槽で分離された汚泥を低曝気処理する汚泥消化槽と、
前記汚泥消化槽の処理水を前記低曝気槽の両方又は一方、及び/又は前記廃水原水に返送する返送手段、
を有していることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項10】
前記膜分離槽の分離膜は、外圧型中空糸膜モジュールであることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の廃水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−20050(P2011−20050A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167094(P2009−167094)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(505397896)クラリス環境株式会社 (7)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】