説明

廃液収容容器、画像形成装置

【課題】堆積を生じる廃液を収容する場合に、堆積物の成長によって吸収体で廃液を吸収できるにも係わらず満タン検知がされてしまう。
【解決手段】ケース本体101内に廃インクを吸収する吸収体102が設けられ、ケース本体101に設けた仕切り壁であるリブ107によって廃液の投入部位(廃液投入口部104に対応する部位)から廃液が満タンになったことが検知される廃液満タンセンサ112による検知部位まで、吸収体102による折り返した廃液吸収経路110が形成され、更にリブ107には廃液投入部位の傍らに切り欠き部108が形成されて検知部位の傍らの部分よりも高さを低くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃液収容容器及び画像形成装置に関し、特に記録液の液滴を吐出する記録ヘッドの性能を維持するための維持回復動作によって生じる前記記録液の廃液を収容する廃液収容容器及びこの廃液収容容器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、ファックス、コピア、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、インクともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうインクジェット記録装置などがある。
【0003】
なお、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、「液体」とは、記録液、インクに限るものではなく、吐出されるときに流体となるものであれば特に限定されるものではない(ただし、以下では「インク」という。)。また、「液体吐出装置」とは液体吐出ヘッドから液体を吐出する装置を意味し、画像形成を行うものに限定されない。
【0004】
また、液体吐出ヘッドを備える画像形成装置としては、ヘッドをキャリッジに搭載して用紙の送り方向と直交する主走査方向に移動させることで記録を行うシリアル型画像記録装置と、記録領域の略全幅にわたって液滴を吐出する複数の吐出口(ノズル)を列設したライン型ヘッドを用いるライン型画像記録装置がある。
【0005】
このような記録液を使用する画像形成装置における記録ヘッドは、圧力発生室で加圧した記録液をノズルから用紙に吐出させて記録を行なう関係上、ノズルからの溶媒の蒸発に起因する記録液粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出不良の状態となり、記録不良を起こすという問題を抱えている。
【0006】
そこで、液体吐出方式の画像形成装置では、非記録時に記録ヘッドのノズルを封止するためのキャッピング手段と、必要に応じてノズル形成面を清掃するワイピング部材が備えられ、また、記録に寄与しない空吐出を行なう空吐出受けを備えている。キャッピング手段は、ノズルのインクの乾燥を防止する蓋として機能するだけでなく、ノズルに目詰まりなどが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズルからインクを吸引排出(ヘッド吸引)させてノズルの目詰まりを解消する機能をも備えている。
【0007】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行なうインクの強制的な吸引排出処理は、クリーニング動作と呼ばれており、例えば記録装置の長時間の休止後に記録を再開する場合や、記録中の所定間隔ごとや、ユーザーが記録状態の不良を認識してクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、記録ヘッドからインクを排出させた後にゴムなどの弾性部材からなるワイピング部材により、記録ヘッドのノズル面(ノズルが形成された面)を払拭する清浄化動作が伴われる。また、記録中には所要のタイミングで空吐出が行なわれる。
【0008】
そして、上述したクリーニング動作に伴ってキャッピング手段内に排出された記録ヘッドからの廃液は、吸引ポンプの駆動により廃液収容容器(以下「廃液タンク」ともいう。)に廃棄することができるように構成されている。この廃液タンクには、一般に多孔質材料により構成された廃液吸収材(吸収体)が収納されており、この廃液吸収材によって廃液を吸収した形で保持するようになされている。
【0009】
このような廃液吸収材を収納した廃液タンクとしては、例えば特許文献1に記載されているように、インク収容部を構成するケーシング内にインク吸収材を備え、インク収容部には、当該インク収容部全体の連通を保ちつつ、廃インクの一方向への移動を妨げる堰となる壁が設けられているものがある。
【特許文献1】特開2005−297495号公報
【0010】
また、特許文献2に記載されているように、容器本体内に廃液を吸収する吸収体を備え、この吸収体は部分的な押圧によって圧縮率が他の部分と異なる部分を有し、廃液が供給される部位に対応して空間が形成され、この吸収体の前記空間の壁面の一部を覆う仕切り壁部材が設けられているものがある。
【特許文献2】特開2006−150872号公報
【0011】
また、特許文献3には記録液の液滴を吐出して被記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、廃液を収容する空間を有する廃液収容容器と、この廃液収容容器の空間内における廃液の堆積状況に相関する相関値を求める手段と、前記相関値が予め定めた基準値を越えたか否かを判別する手段とを備えている画像形成装置が記載されている。
【特許文献3】特開2006−159465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、画像形成装置の記録速度の高速化によってインクには速乾燥性などが求められることから、高粘度(5cP以上を高粘度と定義する。)の顔料系インクが使用されるようになっている。このような顔料濃度が高い高粘度インクなど、インクの増粘が著しい廃インクを収容する廃液タンクにおいては、特許文献2、3に記載されているように、廃液タンク内に投入された廃インクが半固形化し、堆積物として堆積する現象が発生している。この廃液タンク内における廃インクの堆積速度は装置の使用頻度、使用環境などにより大きく異なる。
【0013】
また、廃液タンクには、投入された廃インク液を吸収保持するために設けられた廃液吸収体が廃インクを完全に吸収し終わったことにより廃液タンクの寿命を検知することを目的とする満タンセンサが設けられる。
【0014】
この満タンセンサは、吸収体の廃インク吸収終了を的確に検知できるため非常に信頼性が高いことから、吸収体へ浸透した廃インクのみならず堆積インクの堆積による廃液タンクの満タンも検知できれば、廃液タンクからの堆積インク溢れを未然に回避することができ、かつ、堆積インクの満タンもより高い精度で検知することが可能となるため、信頼性の向上を図れるとともに、廃液タンクをこれまで以上に満タンまで使い切ることができるようになる。
【0015】
しかしながら、従来の廃液タンクや画像形成装置では廃液投入部位に投入された廃インクが吸収体に吸収され、吸収体による廃液吸収経路を通じて満タンセンサによる検知部位に対応する吸収体の部位が廃インクを吸収した状態になる前に、堆積物から直接的に満タンセンサによる検知部位に廃インクが流入して満タン検知されたり、ソフト的な検知であるために、吸収体に未吸収部分があるにもかかわらず満タン検知されたりしてしまい、吸収体の有効利用が図れていないという課題がある。
【0016】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、堆積を生じる廃液を収容する廃液収容容器の寿命の長期化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明に係る廃液収容容器は、記録液の液滴を吐出する記録ヘッドの性能を維持するための維持回復動作によって生じる記録液の廃液を収容する廃液収容容器において、容器本体内に廃液を吸収する吸収体が敷設され、容器本体内に設けられた仕切り壁で廃液の投入部位から廃液が満タンになったことが検知される検知部位まで、吸収体による折り返した廃液吸収経路が形成され、仕切り壁は廃液投入部位の傍らの部分の高さが検知部位の傍らの部分の高さより低く形成されている構成とした。
【0018】
ここで、仕切り壁には廃液投入部位の傍らの部分に切り欠き部が形成されている構成、あるいは、仕切り壁は検知部位の傍らの部分から廃液投入部位の傍らの部分に向かって高さが低くなるように傾斜している構成とすることができる。
【0019】
また、吸収体の高さが仕切り壁の高さよりも高い構成とできる。また、吸収体は複数の層からなり、各層の密度は上層になるほど低くなっている構成とできる。また、吸収体は仕切り壁の廃液投入部位の傍らの部分に対応する部分の密度が他の部分の密度よりも高い構成とできる。また、廃液投入部位にも吸収体が敷設されている構成とできる。
【0020】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る廃液収容容器を備えたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る廃液収容容器によれば、容器本体内に廃液を吸収する吸収体が敷設され、容器本体内に設けられた仕切り壁で廃液の投入部位から廃液が満タンになったことが検知される検知部位まで、吸収体による折り返した廃液吸収経路が形成され、仕切り壁は廃液投入部位の傍らの部分の高さが検知部位の傍らの部分の高さより低く形成されている構成としたので、廃液の堆積物が成長したときに、検知部位から離れた位置で仕切り壁の相対的に低く形成された部分を通じて廃液吸収経路の途中から吸収体への吸収が開始され、堆積物の成長が抑制されることで、満タン検知までの吸収体の使用効率が向上し、寿命を長くすることができる。
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る廃液収容容器を備えているので、廃液収容容器の寿命が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る液滴を吐出する装置を含む本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0024】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
【0025】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0026】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0027】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0028】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0029】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には各色の供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられている。
【0030】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0031】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0032】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0033】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0034】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0035】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構81を配置している。
【0036】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0037】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0038】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0039】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0040】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0041】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などには空吐出受けなどに向けて記録と関係しないインク(液体の液滴)を吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0042】
次に、この画像形成装置における廃液収容容器である廃液タンク100の一例について図4ないし図8を参照して説明する。なお、図4は同廃液タンクの斜視説明図、図5は同廃液タンクの蓋部材を除いた斜視説明図、図6は図4の断面Aに沿う模式的断面説明図、図7は同廃液タンクの模式的平面説明図、図8は同廃液タンクの模式的側断面説明図である。
【0043】
この廃液タンク100は、タンクケース本体(容器本体)101と、このケース本体101内に収納した液体状の廃液を吸収する積層体からなる吸収部材(吸収体)102と、ケース本体101の上部を覆う蓋部材103を備えている。
【0044】
この廃液タンク100には、前述した維持回復機構81から排出される廃液が、蓋部材103に設けた廃液投入口部104からケース本体101内に投入(供給)される。そして、この廃液投入口部104を介して廃液が投入される部位に対応して、吸収体102を設けない部分を形成することで、ケース本体101の底面を露出させた空間105を形成している。
【0045】
これにより、廃液を吸収体102に直接投入しないで、空間105を通じてケース本体101の底面に直接到達させることができ、廃液中の流動性が少なく粘度が高いものは空間105内に堆積させて収容できるようにするとともに、空間105に投入された廃液中の流動性の高い液体は吸収体102で吸収できるようにする。
【0046】
また、ケース本体101には空間105の側壁面を仕切る仕切り壁であるリブ107を形成している。これにより、吸収部材102の一部102aが空間105に臨むことになり、この一部102aの壁面部分からしか液体状の廃液が吸収部材102に浸透しなくなる。
【0047】
さらに、蓋部材103には、廃液タンク100が装着されているか否かを検知する廃液タンク有無センサを兼ねた、廃液タンク100内の廃液が満タンになったことを検出する廃液満タン検知手段である反射型フォトセンサからなる廃液満タンセンサ112を、廃液投入口部104のリブ107を挟んで吸収部材102上に配置している(図8参照)。
【0048】
このようにして、ケース本体101に設けた仕切り壁であるリブ107によって廃液の投入部位(廃液投入口部104に対応する部位)から廃液が満タンになったことが検知される廃液満タンセンサ112による検知部位まで、吸収体102による折り返した廃液吸収経路(図6参照に白抜き矢印で示す経路)110が形成される。
【0049】
そして、リブ107の空間105の側壁面に切り欠き部108が形成され、リブ107の廃液投入部位の傍らの部分の高さが検知部位(廃液満タンセンサ112による検知部位)の傍らの部分の高さより低く形成されている。つまり、この切り欠き部108は、吸収体102の入り口部分102aをバイパスして廃インクを吸収体102に送り込むバイパスとなる。
【0050】
このように構成した廃液タンク100においては、維持回復機構81の例えば空吐出受け84から排出された廃インクは、図8に示すように、廃液タンク100の廃インク投入口部104の空間105に投入される。この空間105に投入された廃インクは液体状の廃インクであれば吸収部材102の部位102aから吸収され、それ以外の廃インクは図6及び図7に示すように空間105内に堆積物121として堆積して行く。
【0051】
そして、堆積物121が成長してリブ107の切り欠き部108の高さに達すると、廃液投入口部4から投入される廃インクは、流動性が残っている状態では、図6に示すように、一部が矢印500で示すように切り欠き部108から廃液吸収経路100の途中から吸収体102側に流れ込んで吸収される。これによって、堆積物121の成長速度が抑制されるとともに、吸収体102の使用効率が向上する。
【0052】
つまり、堆積物121がある程度成長するまで廃液吸収経路110の1つの入り口部分(吸収体102の端部102a)から流動性の残っている廃インクの吸収を行うが、堆積物121がある程度成長した後は廃液吸収経路110の入り口部分と終端部分(廃液満タンセンサ112による検知部位)との間にもう1つの入り口部分が形成されて、この入り口部分からも流動性の残っている廃インクの吸収を行うことで、堆積物の成長を抑制し、吸収体の使用効率を向上している。
【0053】
これによって、堆積物の成長によって吸収体に未使用部分が残っているにもかかわらず廃液タンク100が満タンであると検知させることを防止することができる。
【0054】
この点について、図11及び図12に示す比較例1、図13及び図14に示す比較例2との対比において説明する。
比較例1は、上記実施形態と異なって、仕切り壁であるリブ107に切り欠き部を設けていない場合である。廃液タンク100の寿命は、吸収体102中を廃液が浸透しきり満タンセンサ112により検知されたとき、または、堆積物121が堆積しきったときである。
【0055】
この構成では満タンセンサ112によって堆積物121の成長を検知できないので、堆積物121の堆積度合いは廃液投入量や頻度などから算出された値がある閾値に達した時をもってソフト的に検知することになる。この場合、閾値は一般的にあらゆる印刷条件のうち最も堆積速度の速い条件下で算出された値としなければならない。そのため、閾値を設定する上で前提とした印刷条件で印刷が行われる場合、廃液タンク100が実際には満タンでない(タンクを使い切っていない)状況でソフト的に満タン検知される場合が生じることになり、また、ソフト的な検知は満タンセンサによる検知よりも検知精度が低下する。
【0056】
また、比較例2は、上記実施形態と異なって、廃液投入部位を満タンセンサ112の傍らとして、仕切り壁であるリブ107に満タンセンサ112と廃液投入部位の空間との間の切り欠き部128を設けることで、堆積物121が成長したときには流動性の廃インクが切り欠き部128を介して検知部位側に流れ込むことで、満タンセンサ112が満タンを検知するようにしている。
【0057】
この構成では、堆積物121が成長したことを満タンセンサ112を用いて検出できるという利点があるものの、堆積物121の成長そのものが抑制されているわけではないので、吸収体102が吸収できる状況であるにもかかわらず、堆積物121の成長によって満タンとして廃液タンク100が寿命を迎えることになる。
【0058】
これらに対して、上記のように廃液投入口部位の傍らに廃液吸収経路の入り口をバイパスするためのバイパス(この例では切り欠き部108)を形成することによって、堆積物の成長を抑制できるので、吸収体102に吸収余裕があるにもかかわらず満タン検知されて廃液タンク100が寿命とされる場合が少なくなる。
【0059】
このように、容器本体内に設けられた仕切り壁で廃液の投入部位から廃液が満タンになったことが検知される検知部位まで、吸収体による折り返した廃液吸収経路が形成され、仕切り壁は廃液投入部位の傍らの部分の高さが検知部位の傍らの部分の高さより低く形成されていることで、廃液の堆積物が成長したときに、検知部位から離れた位置で仕切り壁の相対的に低く形成された部分を通じて廃液吸収経路の途中から吸収体への吸収が開始され、堆積物の成長が抑制されることで、満タン検知までの吸収体の使用効率が向上し、寿命を長くすることができる。
【0060】
上記実施形態において、吸収体102の高さが仕切り壁(リブ107)の高さよりも高い構成とすることで、堆積物121から仕切り壁を乗り越えて吸収体102へ廃インクが流入したとき、吸収体102にその廃インクを浸透させることができる。
【0061】
また、吸収体102は複数の層からなる積層体とし、各層の密度は上層になるほど低くなっている構成とすることで、廃インクが空間105に堆積するより速やかに仕切り壁を乗り越えた廃インクの吸収体102への浸透が行われるため、堆積物121の堆積速度を抑制できる。
【0062】
また、吸収体102は仕切り壁の廃液投入部位の傍らの部分に対応する部分(切り欠き部108に対応する部分)の密度が他の部分の密度よりも高い構成とすることで、堆積物121から仕切り壁を乗り越えて吸収体102へ廃インクが流入したとき、吸収体102にその廃インクを浸透させることができる。
【0063】
また、廃液投入部位にも吸収体が敷設されている、つまり、空間105の底面部に吸収体を配置した構成とすることで、廃液タンク100に投入された廃インクは速やかに吸収体へと浸透するため、投入され吸収体に吸収されるまでの間の水分蒸発を免れ廃インクの粘度上昇を避けられる結果、増粘インクの堆積速度の抑制を図れる。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態に係る廃液タンクについて図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同廃液タンクの模式的平面説明図、図10は同廃液タンクの模式的側断面説明図である。
この廃液タンク100では、仕切り壁であるリブ107は廃液満タンセンサ112による検知部位の傍らの部分から廃液投入部位の傍らの部分に向かって高さが低くなるように傾斜させて形成している。
【0065】
このように構成した場合には、堆積物121の高さに応じて吸収体102への浸透を制御することができる。
【0066】
理想的には、吸収体102を使い切ると同時に堆積物121が満タンになることが好ましい。つまり、吸収体102に1/3インクが浸透した段階で堆積物121が1/3溜まり、吸収体102に半分インクが浸透した段階で堆積物121が満タン状態の半分溜まり、吸収体102が廃インクで満たされるとき堆積物121も満タンになることが好ましい。
【0067】
そこで、上述したようにリブ107の高さを傾斜させることで、堆積物121の高さが低いときには吸収体102の満タンセンサ112による検知部位から遠い吸収体部位に堆積物121からインクが流入し、堆積物121がより溜まるにしたがって満タンセンサ112近くの吸収体部位に流入するようする。これにより、最終的には堆積物121が廃液タンク100より溢れる直前で満タンセンサ112近傍の吸収体102に廃液が流入して満タンが検知される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の概略を示す構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同画像形成装置の廃液タンクの一例を示す斜視説明図である。
【図5】同じく蓋部材を除いて示す斜視説明図である。
【図6】同廃液タンクの模式的平面説明図である。
【図7】同廃液タンクの模式的側断面説明図である。
【図8】図4の断面Aに沿う模式的断面説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る廃液タンクの模式的平面説明図である。
【図10】同廃液タンクの模式的側断面説明図である。
【図11】比較例1の廃液タンクの模式的平面説明図である。
【図12】同廃液タンクの模式的側断面説明図である。
【図13】比較例2の廃液タンクの模式的平面説明図である。
【図14】同廃液タンクの模式的側断面説明図である。
【符号の説明】
【0069】
10…インクカートリッジ
33…キャリッジ
34a、34b…記録ヘッド
81…維持回復機構
100…廃液タンク
101…タンクケース本体
102…吸収部材
103…蓋部材
104…廃液投入口部
105…空間
107…リブ
108…切り欠き部
112…廃液満タンセンサ(満タン検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液の液滴を吐出する記録ヘッドの性能を維持するための維持回復動作によって生じる前記記録液の廃液を収容する廃液収容容器において、
容器本体内に前記廃液を吸収する吸収体が敷設され、
前記容器本体内に設けられた仕切り壁で前記廃液の投入部位から廃液が満タンになったことが検知される検知部位まで、前記吸収体による折り返した廃液吸収経路が形成され、
前記仕切り壁は前記廃液投入部位の傍らの部分の高さが前記検知部位の傍らの部分の高さより低く形成されている
ことを特徴とする廃液収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液収容容器において、前記仕切り壁には前記廃液投入部位の傍らの部分に切り欠き部が形成されていることを特徴とする廃液収容容器。
【請求項3】
請求項1に記載の廃液収容容器において、前記仕切り壁は前記検知部位の傍らの部分から前記廃液投入部位の傍らの部分に向かって高さが低くなるように傾斜していることを特徴とする廃液収容容器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の廃液収容容器において、前記吸収体の高さが前記仕切り壁の高さよりも高いことを特徴とする廃液収容容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の廃液収容容器において、前記吸収体は複数の層からなり、各層の密度は上層になるほど低くなっていることを特徴とする廃液収容容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の廃液収容容器において、前記吸収体は前記仕切り壁の前記廃液投入部位の傍らの部分に対応する部分の密度が他の部分の密度よりも高いことを特徴とする廃液収容容器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の廃液収容容器において、前記廃液投入部位にも吸収体が敷設されていることを特徴とする廃液収容容器。
【請求項8】
記録ヘッドから記録液の液滴を吐出して被記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、請求項1ないし7のいずれかに記載の廃液収容容器を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−302501(P2008−302501A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148968(P2007−148968)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】