説明

廃熱利用装置

【課題】廃熱利用装置において用いられる回転電機を冷却する効率を向上すると共に、廃熱回収効率を向上する。
【解決手段】ランキンサイクル回路は、膨張機72、凝縮器、ギヤポンプ67、及びボイラによって構成されている。ポンプ室64の吐出室には吐出通路47が接続されている。吐出通路47には分岐通路48が分岐接続されており、分岐通路48の終端には絞り通路49が設けられている。絞り通路49は、発電機ハウジング37内の内部空間Kに開口している。発電機ハウジング37の周壁372の底部には張り出し部44が張り出し形成されており、張り出し部44の内側には貯留空間68が凹み形成されている。貯留空間68の上部開口の一部は、ステータ42の外周面によって覆われており、貯留空間68は、内部空間Kに連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱源の廃熱を利用して回転電機の駆動軸に回転力を付与する膨張機を備えた廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機である発電機のコイルの温度が上昇すると、電気抵抗が増大し、発電効率が低下する。そのため、発電機のコイルを冷却することが望ましい。特許文献1に開示のランキンサイクルシステムでは、膨張機及び発電機を収容する密閉容器内にポンプから液状の作動流体(液冷媒)が送り込まれ、発電機が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−174494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、液冷媒が発電機のロータに接触するため、回転トルクが増大する。回転トルクの増大は、廃熱回収効率の低下をもたらす。
本発明は、廃熱利用装置において用いられる回転電機を冷却する効率を向上すると共に、廃熱回収効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、循環冷媒流路を流れる冷媒に廃熱源の廃熱を伝達する第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通過した冷媒を利用して前記回転電機の駆動軸に回転力を付与する膨張機と、前記膨張機を通過した冷媒から熱を奪う第2熱交換器と、前記第1熱交換器より上流、かつ前記第2熱交換器より下流の前記循環冷媒流路に設けられて液冷媒を送り出すとともに前記循環冷媒流路から前記回転電機を収納する回転電機ハウジング内へ液冷媒を供給するポンプとを備えた廃熱利用装置を対象とし、請求項1の発明では、前記回転電機ハウジング内に連通して液冷媒を収容する貯留空間が前記回転電機ハウジングの少なくとも一部によって前記回転電機の下方に区画されている。
【0006】
回転電機ハウジング内へ送り込まれた冷媒は、回転電機を冷却するが、この液冷媒は、回転電機の下方に区画されている貯留空間に溜められるので、回転電機のロータが貯留された液冷媒を撹拌することはない。貯留空間内の液冷媒は、ステータの発熱によって気化され、気化した冷媒は、貯留空間外へ流出する。
【0007】
好適な例では、前記貯留空間は、前記回転電機のステータの直下に前記ステータの一部によって区画されている。
ステータの一部によって貯留空間を区画する構成は、貯留空間内の液冷媒を効率良く気化し、回転電機の高温化の抑制効果が高い。
【0008】
好適な例では、前記貯留空間は、前記ステータの下側に位置する前記ハウジングの周壁によって区画されている。
好適な例では、前記貯留空間は、前記ハウジングの周壁と、前記周壁の外週面に取り付けられたパンとの間に区画されている。
【0009】
好適な例では、前記貯留空間は、前記ハウジングの周壁に貫設された貫通孔であり、前記貫通孔は、前記貫通孔に嵌合された栓によって外部と遮断されている。
貫通孔を栓で塞ぐ構成は、貯留空間を区画形成する上で簡便な構成である。
【0010】
好適な例では、前記ポンプより下流の前記冷媒の循環流路に分岐接続し、且つ前記回転電機ハウジング内に接続する分岐通路が設けられており、前記第1熱交換器より下流、かつ前記第2熱交換器より上流の前記循環冷媒流路と前記回転電機ハウジング内とを接続する流出通路が設けられている。
【0011】
好適な例では、流出通路は前記膨張機よりも下流、かつ前記第2熱交換器より上流の前記循環冷媒流路と前記回転電機ハウジング内とを接続する。
第1熱交換器よりも下流であっても、膨張機よりも下流側の方が膨張機より上流側より圧力が小さく、流出通路を介して回転電機ハウジング内から循環冷媒流路に液冷媒を戻し易い。
【0012】
好適な例では、前記流出通路の入口は、前記回転電機のロータより下側に設けられている。
回転電機ハウジング内に液冷媒が溜まった場合にも、その液面は、前記入口以下となり、ロータが液冷媒を撹拌することはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、廃熱利用装置において用いられる回転電機を冷却する効率を向上すると共に、廃熱回収効率を向上することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態を示す部分側断面図。
【図2】第1の実施形態の廃熱利用装置を示す模式図。
【図3】図1のA−A線拡大断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】第2の実施形態の部分側断面図。
【図6】第3の実施形態の廃熱利用装置を示す模式図。
【図7】第3の実施形態の部分側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図2に示すように、廃熱利用装置11は、廃熱源としてのエンジン12(燃焼機関)と、ランキンサイクル回路13とを備えている。ランキンサイクル回路13では、エンジン12からの廃熱によって加熱される冷媒が循環する。廃熱利用装置11を構成する廃熱回収機器34は、ランキンサイクル回路13の一部を構成している。
【0016】
図1に示すように、廃熱回収機器34を構成する全体ハウジング35は、筒状をなすセンターハウジング36と、センターハウジング36の前端〔図1において左端〕に連結された回転電機ハウジングとしての発電機ハウジング37と、センターハウジング36の後端〔図1において右端〕に連結されたリヤハウジング39とから構成されている。
【0017】
センターハウジング36に一体形成された隔壁361と発電機ハウジング37の前端壁371とには駆動軸40が軸受51,52を介して回転可能に支持されており、発電機ハウジング37内の駆動軸40にはロータ41が固定されている。発電機ハウジング37の内周面にはステータ42がロータ41を取り囲むように固定されている。駆動軸40、コイル421を備えたステータ42及びロータ41は、オルタネータ43(回転電機)を構成する。駆動軸40は、オルタネータ43のロータ軸である。オルタネータ43は、ロータ41が回転することによってステータ42のコイル421に電力を生じさせる機能を有する。
【0018】
オルタネータ43にはバッテリ45が電気的に接続されている。オルタネータ43で生じた電力は、バッテリ45に蓄電されるようになっている。
駆動軸40は、前端壁371を貫通して外部に突出しており、駆動軸40の突出端部にはプーリ57が止着されている。プーリ57にはベルト59が巻き掛けられている。ベルト59は、エンジン12の回転出力軸であるクランク軸68〔図2参照〕に止着されたプーリ69〔図2参照〕に巻き掛けられている。
【0019】
センターハウジング36の後部内にはサイドプレート62が隔壁361に対向するように固設されている。隔壁361とサイドプレート62との間にはポンプ室64が区画されている。駆動軸40は、隔壁361及びサイドプレート62を貫通している。
【0020】
図3及び図4に示すように、ポンプ室64内には駆動軸40に止着された駆動ギヤ65と、駆動ギヤ65に噛合する従動ギヤ66とが配設されている。ポンプ室64、駆動ギヤ65及び従動ギヤ66は、ギヤポンプ67を構成する。図3に示すように、駆動ギヤ65及び従動ギヤ66は、ポンプ室64内を吸入室641と吐出室642とに区画する。
【0021】
図1に示すように、センターハウジング36の後部内には支持ブロック63が固設されている。支持ブロック63には回転軸70が軸受71によって回転可能に支持されている。回転軸70は、駆動軸40と同軸上で駆動軸40に連結されている。
【0022】
支持ブロック63とリヤハウジング39との間にはスクロール式の膨張機72が設けられている。
次に、膨張機72の構成を説明する。
【0023】
回転軸70の後端には偏心軸73が設けられている。偏心軸73は、回転軸70の回転により回転軸70の回転軸線の周りを公転する。偏心軸73には可動スクロール74がブッシュ75及び軸受76を介して回転可能に支持されている。可動スクロール74は、軸受76に支持された可動側端板741と、可動側端板741から突設された渦巻状の可動側渦巻壁742とを備えている。
【0024】
センターハウジング36の後部内には固定スクロール77が可動スクロール74と対向するように固設されている。固定スクロール77は、固定側端板771と、固定側端板771から支持ブロック63に向けて突設された渦巻状の固定側渦巻壁772とを備えている。可動スクロール74の可動側渦巻壁742と、固定スクロール77の固定側渦巻壁772とは、互いに噛み合わされて容積変更可能な膨張室78を区画する。
【0025】
固定側端板771とリヤハウジング39との間には供給室79が区画されており、固定側端板771の中央部には供給口773が供給室79に連通するように形成されている。リヤハウジング39には導入ポート391が形成されている。サイドプレート62と支持ブロック63との間には排出室80が形成されている。膨張室78の冷媒は、排出室80へ排出される。センターハウジング36の周壁には排出ポート362が排出室80に連通するように形成されている。
【0026】
次に、廃熱利用装置11におけるランキンサイクル回路13について説明する。
図2に示すように、ランキンサイクル回路13は、廃熱回収機器34を構成する膨張機72、凝縮器29、廃熱回収機器34を構成するギヤポンプ67、第1ボイラ20、及び第2ボイラ21によって構成されている。
【0027】
第1ボイラ20は、吸熱器202と放熱器201とを備える。ギヤポンプ67におけるポンプ室64〔図3,4参照〕の吐出側には第1ボイラ20の吸熱器202が第1流路22を介して接続されている。放熱器201は、エンジン12に接続された冷却水循環経路23上に設けられている。冷却水循環経路23上にはラジエータ24が設けられている。車両のエンジン12を冷却した冷却水(冷却流体)は、冷却水循環経路23を循環して放熱器201及びラジエータ24で放熱する。
【0028】
第2ボイラ21は、吸熱器212と放熱器211とを備える。第1ボイラ20の吸熱器202の吐出側には第2ボイラ21の吸熱器212が接続流路25を介して接続されている。放熱器211は、エンジン12に接続された排気通路26上に設けられている。エンジン12からの排気は、放熱器211で放熱した後、マフラ27から排気される。ギヤポンプ67から吐出された冷媒は、第1ボイラ20及び第2ボイラ21の吸熱器202,212と放熱器201,211との間での熱交換によりエンジン12からの廃熱によって加熱される。
【0029】
第2ボイラ21の吸熱器212の吐出側には膨張機72における導入ポート391〔図1参照〕が供給流路28を介して接続されている。第1ボイラ20及び第2ボイラ21で加熱された高温高圧の冷媒は、供給流路28を介して膨張機72に導入されるようになっている。膨張機72側の排出ポート362〔図1参照〕には凝縮器29が排出流路30を介して接続されている。膨張機72で膨張した低圧の冷媒は、排出流路30を介して凝縮器29へ排出されるようになっている。凝縮器29の下流側にはギヤポンプ67のポンプ室64〔図1参照〕が第2流路31を介して接続されている。
【0030】
第2流路31、第1流路22、接続流路25、供給流路28及び排出流路30は、ランキンサイクル回路の循環冷媒流路を構成する。
図3に示すように、ポンプ室64の吸入室641には吸入通路46が接続されており、ポンプ室64の吐出室642には吐出通路47が接続されている。吸入通路46は、第2流路31の一部を構成しており、吐出通路47は、第1流路22の一部を構成する。つまり、吸入通路46及び吐出通路47は、循環冷媒通路の一部を構成する。ポンプ室64、吐出通路47及び吸入通路46は、隔壁361の端面に凹み形成されている。
【0031】
吐出通路47には分岐通路48が分岐接続されており、分岐通路48の終端には絞り通路49が設けられている。絞り通路49は、発電機ハウジング37内の内部空間Kに開口している。
【0032】
図2に示すように、ギヤポンプ67は、循環冷媒流路の一部である第1流路22と分岐通路48との分岐部480と、第2熱交換器である凝縮器29との間の循環冷媒流路に設けられている。つまり、ギヤポンプ67は、第1熱交換器である第1ボイラ20及び第2ボイラ21より上流、かつ第2熱交換器である凝縮器29より下流の循環冷媒流路に設けられている。
【0033】
図4に示すように、センターハウジング36の隔壁361及びサイドプレート62には流出通路50が貫設されている。流出通路50の入口501は、オルタネータ43のロータ41より下側に設けられている。内部空間Kは、流出通路50を介して排出室80に連通している。
【0034】
ギヤポンプ67のポンプ作用により、第2流路31内の冷媒は、ポンプ室64の吸入室641に吸入されて吐出室642へ送られる。吐出室642へ送られた冷媒の一部は、第1流路22、第1ボイラ20、第2ボイラ21、膨張機72及び凝縮器29を通過してポンプ室64の吸入室641へ還流する。吐出室642へ送られた冷媒の残りは、分岐通路48及び絞り通路49を経由して内部空間Kへ流入する。内部空間Kへ流入した冷媒は、流出通路50、排出室80、排出ポート362、排出流路30及び凝縮器29を通過してポンプ室64の吸入室641へ還流する。
【0035】
図1及び図3に示すように、発電機ハウジング37の周壁372の底部の外周面373には張り出し部44が張り出し形成されており、張り出し部44の内側には貯留空間68が凹み形成されている。図1に示すように、貯留空間68の上部開口の一部は、ステータ42の外周面によって覆われており、貯留空間68は、内部空間Kに連通している。貯留空間68は、発電機ハウジング37の周壁372の一部と、センターハウジング36の隔壁361の一部と、ステータ42の一部とによってステータ42の直下に区画されている。
【0036】
貯留空間68は、流出通路50の入口501よりも下側にある。
次に、廃熱利用装置11の作用について説明する。
エンジン12が始動されると、ベルト59及びプーリ57を介してエンジン12から駆動力が伝達されるために駆動軸40が回転し、オルタネータ43が発電する。オルタネータ43によって発電された電気は、バッテリ45に蓄えられる。
【0037】
駆動軸40が回転開始すると、ギヤポンプ67の駆動ギヤ65及び膨張機72の回転軸70が駆動軸40と一体的に回転開始する。ギヤポンプ67の駆動ギヤ65の回転は、従動ギヤ66に伝達され、駆動ギヤ65及び従動ギヤ66が噛合しながら互いに逆方向に回転する。これにより第2流路31の冷媒がギヤポンプ67を通過して第1流路22へ送られる。
【0038】
第1流路22へ送られた冷媒の一部は、第1ボイラ20の吸熱器202、接続流路25、及び第2ボイラ21の吸熱器212を通過して供給流路28へ送られる。第1ボイラ20の吸熱器202及び第2ボイラ21の吸熱器212を通過する冷媒は、エンジン12からの廃熱によって加熱される。
【0039】
第1流路22へ送られた冷媒の残りは、分岐通路48及び絞り通路49を経由して内部空間Kへ流入する。絞り通路49を通過した液冷媒は、霧状になって内部空間Kへ噴出する。凝縮器29を通過して第2流路31を流れる冷媒は、冷却されて液化しており、ギヤポンプ67から送り出された液冷媒は、低温である。従って、内部空間Kへ流入した低温の液冷媒は、内部空間K内でオルタネータ43を冷却する。オルタネータ43を冷却した冷媒は、流出通路50を経由して排出室80へ流出し、排出室80へ流出した冷媒は、排出流路30及び凝縮器29を経由してギヤポンプ67へ還流する。
【0040】
第1ボイラ20及び第2ボイラ21(第1熱交換器)で加熱された高圧の冷媒は、導入ポート391から膨張機72の供給室79を経て膨張室78に導入されて膨張する。この冷媒の膨張により膨張機72が機械的エネルギー(回転付与力)を出力し、この回転付与力によって回転軸70及び駆動軸40の回転がアシストされる。膨張機72は、冷媒を利用してオルタネータ43の駆動軸40に回転力を付与する。膨張して圧力が低下した冷媒は、排出流路30へ排出される。排出流路30へ排出された冷媒は、凝縮器29を通過してギヤポンプ67へ還流する。
【0041】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
内部空間Kへ送り込まれた液冷媒は、オルタネータ43を冷却するが、この液冷媒は、貯留空間68に溜められる。貯留空間68は、ステータ42の直下にあるため、貯留空間68内の液冷媒は、ステータ42の発熱によって気化される。オルタネータ43は、液冷媒の気化によって冷却され、気化した冷媒は、流出通路50から排出室80(内部空間K外)へ流出する。
【0042】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)オルタネータ43を冷却した冷媒は、第2熱交換器である凝縮器29にて熱を奪われて液冷媒となり、凝縮器29にて冷却された液冷媒の一部は、オルタネータ43の内部空間Kへ流れる。凝縮器29にて低温化された液冷媒によってオルタネータ43を冷却する構造は、オルタネータ43を冷却する効率の向上に寄与する。
【0043】
内部空間Kに存在する液冷媒は、貯留空間68に溜められる。貯留空間68は、ロータ41よりも下側にある。そのため、貯留空間68内の貯留油がロータ41によって撹拌されることはなく、廃熱回収効率が向上する。
【0044】
(2)貯留空間68内の液冷媒は、ステータ42の発熱によって気化され、気化した冷媒は、内部空間K外へ流出する。貯留空間68は、ステータ42の直下にあるため、貯留空間68内の液冷媒の気化が促進され、液冷媒が内部空間Kの底部に過剰に溜まることはない。
【0045】
(3)貯留空間68がステータ42の外周面の一部によって区画されているため、ステータ42の熱が貯留空間68内の液冷媒に伝わり易く、貯留空間68内の液冷媒の気化が効率良く促進される。液冷媒の気化の促進は、液冷媒の溜まり過ぎの回避に寄与する。
【0046】
(4)流出通路50の入口501がロータ41より下側に設けられているため、貯留空間68から液冷媒が溢れたとしても、その液面は、入口501以下となり、ロータ41が液冷媒を撹拌することはない。
【0047】
(5)貯留空間68は、発電機ハウジング37を型成形する際に同時に形成することができ、貯留空間68の形成が容易である。
(6)エンジン12の回転力によって発電するオルタネータ43を廃熱利用によって発電する発電機として兼用するため、廃熱利用の新たな発電機が不要である。
【0048】
次に、図5の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
発電機ハウジング37の周壁372の底部の外周面373にはパン69がねじ83によって止着されており、パン69と外周面373との間には貯留空間68Aが区画されている。ステータ42の直下にある貯留空間68Aは、周壁372に貫設された孔84を介して内部空間Kに連通している。
【0049】
内部空間K内に存在する液冷媒は、孔84を介して貯留空間68Aに流入して溜められる。ステータ42の熱は、周壁372を介して貯留空間68A内の液冷媒に伝わり、貯留空間68Aに溜められた液冷媒は、ステータ42の熱によって気化する。気化した冷媒は、孔84、内部空間K及び流出通路50を経由して排出室80に流出する。
【0050】
第2の実施形態では、第1の実施形態における(1),(2),(4),(6)項と同様の効果が得られる。又、ステータ42の外周面に接する周壁372の一部によって貯留空間68Aが区画されているため、ステータ42の熱が貯留空間68A内の液冷媒に伝わり易く、貯留空間68A内の液冷媒の気化が効率良く促進される。
【0051】
次に、図6及び図7の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図6は、廃熱回収装置を示す。回転電機としてのモータジェネレータ43Aは、モータとしてランキンサイクル作動開始時にはギヤポンプ67を駆動すると共に、膨張機72の回転によって発電する。
【0052】
図7に示すように、廃熱回収機器34Bを構成する全体ハウジング85は、センターハウジング36と、センターハウジング36の前端〔図7において左端〕に連結されたモータジェネレータハウジング37Aと、センターハウジング36の後端〔図7において右端〕に連結されたリヤハウジング39とから構成されている。
【0053】
モータジェネレータハウジング37Aの周壁372Aの底部には貫通孔86が内部空間Kと全体ハウジング85外とを繋ぐように貫設されており、貫通孔86には袋筒状の栓87が嵌合されている。貫通孔86及び栓87の筒内871は、周壁372Aの一部及び栓87によって区画された貯留空間68Bとなる。貯留空間68Bは、コイル421Aの下方にあって内部空間Kに連通している。
【0054】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第3の実施形態において、袋筒状の栓87の代わりに中実の栓を用いてもよい。
○貯留空間が発電機ハウジング37を通らない通路を介して排出室80に連通していてもよい。
【0055】
○ポンプとして、ギヤポンプに代えてロータリー式などの他の形式のポンプを採用してもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
【0056】
(イ)前記廃熱源は、燃焼機関であり、前記回転電機は、前記燃焼機関の回転出力軸の回転によって発電するオルタネータである請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の廃熱利用装置。
【符号の説明】
【0057】
11…廃熱利用装置。12…廃熱源としてのエンジン。20,21…第1熱交換器としての第1ボイラ及び第2ボイラ。29…第2熱交換器としての凝縮器。35,85…全体ハウジング。37…回転電機ハウジングとしての発電機ハウジング。37A…回転電機ハウジングとしてのモータジェネレータハウジング。372,372A…周壁。373…外周面。40…駆動軸。41…ロータ。42…ステータ。43…回転電機としてのオルタネータ。43A…回転電機としてのモータジェネレータ。47…循環冷媒流路を構成する吐出通路。48…分岐通路。50…流出通路。501…入口。67…ポンプとしてのギヤポンプ。68,68A,68B…貯留空間。69…パン。72…膨張機。86…貫通孔。87…栓。K…内部空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環冷媒流路を流れる冷媒に廃熱源の廃熱を伝達する第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通過した冷媒を利用して回転電機の駆動軸に回転力を付与する膨張機と、前記膨張機を通過した冷媒から熱を奪う第2熱交換器と、前記第1熱交換器より上流、かつ前記第2熱交換器より下流の前記循環冷媒流路に設けられて液冷媒を送り出すとともに前記循環冷媒流路から前記回転電機を収納する回転電機ハウジング内へ液冷媒を供給するポンプとを備えた廃熱利用装置において、
前記回転電機ハウジング内に連通して液冷媒を収容する貯留空間が前記回転電機ハウジングの少なくとも一部によって前記回転電機の下方に区画されている廃熱利用装置。
【請求項2】
前記貯留空間は、前記回転電機のステータの直下に前記ステータの一部によって区画されている請求項1に記載の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記貯留空間は、前記ステータの下側に位置する前記ハウジングの周壁によって区画されている請求項2に記載の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記貯留空間は、前記ハウジングの周壁と、前記周壁の外周面に取り付けられたパンとの間に区画されている請求項1に記載の廃熱利用装置。
【請求項5】
前記貯留空間は、前記ハウジングの周壁に貫設された貫通孔であり、前記貫通孔は、前記貫通孔に嵌合された栓によって外部と遮断されている請求項2に記載の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記ポンプより下流の前記循環冷媒流路に分岐接続し、且つ前記回転電機ハウジング内に接続する分岐通路が設けられており、
前記第1熱交換器より下流、かつ前記第2熱交換器より上流の前記循環冷媒流路と前記回転電機ハウジング内とを接続する流出通路が設けられている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記流出通路は、前記膨張機よりも下流、かつ前記第2熱交換器より上流の前記循環冷媒流路と前記回転電機ハウジング内とを接続する請求項6に記載の廃熱利用装置。
【請求項8】
前記流出通路の入口は、前記回転電機のロータより下側に設けられている請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87658(P2013−87658A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227018(P2011−227018)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】