説明

建具

【課題】障子により開口をより確実に閉止して閉止状態を維持することが可能であり、障子と枠体側との間における止水性に優れた建具を提供する。
【解決手段】2つの空間を連通する開口を形成する枠体と、前記開口を開閉自在に前記枠体に支持される障子と、前記障子が閉じられたときに当該障子の戸先框と前記枠体との間に配置される中間部材と、を有し、前記戸先框と前記中間部材とには、前記障子が閉じられた状態にて互いに対向する部位に各々磁性体が設けられており、前記磁性体の磁力により引き付けられて前記障子の閉止状態が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの空間を連通する開口を形成する枠体に支持されて開口を開閉自在に設けられる障子を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの空間を連通する開口を形成する枠体に支持されて開口を開閉自在に設けられる障子を有する建具としては、例えば浴室と脱衣室との間の出入口を開閉自在な障子が設けられた建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような浴室の建具は、障子を閉じた際に戸先框と枠体との間、特に、枠体の入隅部における戸先框と枠体との間にて浴室側の水が脱衣室側に漏れないように、枠体の入隅部に水返し等の機能を備えた部材が設けられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−223274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、縦枠の入隅部に水返し部材が設けられていても、障子の反りなどの施工条件により障子の戸先框と枠体側との間に隙間が生じてしまう虞がある。戸先框と枠体側との間に隙間が生じてしまうと、開口が確実に閉止されないばかりでなく、止水性が低下して枠体と障子との間から水が浸入する虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、障子により開口をより確実に閉止して閉止状態を維持することが可能であり、障子と枠体側との間における止水性に優れた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、2つの空間を連通する開口を形成する枠体と、前記開口を開閉自在に前記枠体に支持される障子と、前記枠体に設けられ、前記障子が閉じられたときに当該障子の戸先框と前記枠体との間に配置される中間部材と、を有し、前記戸先框と前記中間部材とには、前記障子が閉じられた状態にて互いに対向する部位に各々磁性体が設けられており、前記磁性体の磁力により引き付けられて前記障子の閉止状態が維持されることを特徴とする建具である。
このような建具によれば、開口を開閉自在に枠体に支持された障子が閉じられたときに障子の戸先框と枠体との間に配置される中間部材、及び、戸先框の、互いに対向する部位にそれぞれ磁性体が設けられており、障子を閉じたときには、戸先框の磁性体と中間部材の磁性体とが対向して引き付けられるので、障子に僅かな歪み等が生じていても戸先框と中間部材との間に隙間が生じることを防止することが可能である。また、戸先框の磁性体と中間部材の磁性体とが対向して互いに引き付けているので、障子を閉じる操作の際には、障子が閉じる方向に付勢され、容易にかつ確実に閉止することが可能である。このため、障子により開口をより確実に閉止して閉止状態を維持することが可能であり、障子と枠体側との間における止水性に優れた建具を提供することが可能である。
【0007】
かかる建具であって、前記枠体は上下の横枠と左右の縦枠とが接合されて矩形状をなしており、前記中間部材は、前記枠体の入隅部に設けられて前記横枠と前記縦枠との接合部を止水するためのコーナーブロックであることが望ましい。
このような建具によれば、障子が閉じられたときに障子の戸先框と枠体との間に配置される中間部材は、矩形状をなす枠体の入隅部に設けられて横枠と縦枠との接合部を止水するためのコーナーブロックなので、縦枠の入隅部における横枠と縦枠との接合部からの水の浸入も防止することが可能である。
【0008】
かかる建具であって、前記戸先框に設けられた前記磁性体と前記中間部材に設けられた前記磁性体とが対向する方向は、見込み方向と所定の角度をなしていることが望ましい。
このような建具によれば、障子を閉止状態に維持する保持力を確保しつつも、障子を開く操作に必要な力を低減することが可能である。より具体的には、障子が閉じた状態から障子を開く際には、障子の戸先側を見込み方向に移動させる必要がある。このため、障子が閉じた状態にて戸先框に設けられた磁性体と中間部材に設けられた磁性体とが見込み方向に並べて配置されていると、磁力により互いに引き付け合う力が大きいので、障子を開くために大きな力が必要となる。ところが、上記建具のように戸先框に設けられた磁性体と中間部材に設けられた磁性体とが対向する方向が、見込み方向に対し所定の角度をなしている場合には、障子を開く操作の方向とは反対方向に作用する磁力が緩和され、両磁性体の見込み方向に互いに引き付ける力が軽減されるので、障子を閉止する力を大きく保ちつつ、障子を開きやすい建具を提供することが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記左右の縦枠の一方は、前記障子が閉じられた際に前記戸先框側に位置する戸先側縦枠であり、前記戸先側縦枠には、当該戸先側縦枠と前記戸先框との間を止水し、弾性変形可能な止水部材が前記戸先側縦枠に沿って上下方向に設けられており、前記止水部材は、前記障子が閉じられた際に前記戸先框と前記中間部材との間に介在されることが望ましい。
このような建具によれば、障子が閉じられた際に戸先框側に位置する戸先側縦枠に、戸先側縦枠と戸先框との間を止水し、弾性変形可能な止水部材が戸先側縦枠に沿って上下方向に設けられているので、障子と戸先側縦枠との間の止水性に優れた建具を提供することが可能である。また、前記障子が閉じられた際には戸先框と中間部材との間に止水部材が介在されるので、障子を閉じた際に、戸先框が戸先側縦枠に近づいて戸先框が戸先側縦枠側に引き寄せられたときの衝撃や振動及び接触音の発生を抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、障子により開口をより確実に閉止して閉止状態を維持することが可能であり、障子と枠体側との間における止水性に優れた建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る建具の横断面図である。
【図2】枠体の入隅部に設けられたコーナーブロックと戸先側縦枠に設けられた縦止水部材とを示す斜視図である。
【図3】障子が閉じられたときの戸先框を説明するための斜視図である。
【図4】障子開閉時の戸先框及びコーナーブロックに設けられたマグネットの位置を示す横断面図である。
【図5】建具に設けられるマグネットの配置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図を参照して説明する。
【0013】
本実施形態に係る建具10は、図1に示すような、2つの空間としての浴室と脱衣室を連通する開口10a(図2)を形成する枠体11に支持されて開口10aを開閉自在に設けられる障子20を備えた浴室用の建具10を例に挙げて説明する。
【0014】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の浴室用の建具10を浴室側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、浴室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、浴室用の建具10が備える各部材は、単体として説明する場合であっても、建物等に取り付けられた状態で上下方向、見付け方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0015】
本実施形態の建具10は、浴室と脱衣室とを連通する矩形状の開口10aを形成する枠体11と、枠体11に戸尻側が回動自在に支持されて、回動することにより開口10aを開閉自在に設けられた障子20と、矩形状をなす枠体11の浴室側の入隅部に設けられ、障子20を閉じた際に戸先框24と枠体11との間に配置される中間部材としてのコーナーブロック30、31と、を有している。
【0016】
枠体11は、開口10aの上縁をなし上の横枠としての上枠12と、開口10aの下縁をなし下の横枠としての下枠13と、開口10aの左右の縁をなし、障子20の戸尻側に位置する戸尻側縦枠14と、障子20の戸先側に位置する戸先側縦枠15と、を有している。そして、上下に間隔を隔てて対向する上枠12及び下枠13の両端に戸尻側縦枠14及び戸先側縦枠15が突き当てられるとともに、戸尻側縦枠14及び戸先側縦枠15をそれぞれ見付け方向に貫通するビスが上枠12または下枠13に螺合されて矩形状に枠組みされている。ここで、上枠12、下枠13、戸尻側縦枠14、戸先側縦枠15は、いずれも押出成形部材である。
【0017】
上枠12は、図2に示すように、断面がほぼ矩形状をなす上中空部12aと、上中空部12aを構成し脱衣室に臨む上内面12bを有する上脱衣室側壁部12cが下方に延出されて、上脱衣室側壁部12cとともに上内面12bを形成する下方延出板状部12dとを有しており、下方延出板状部12dの下端部には、浴室側に向かって開放され見付け方向に沿って形成されて上止水部材(不図示)が嵌合される溝状の上止水部材嵌合部12eが設けられている。
【0018】
下枠13は、図2に示すように、脱衣室側の床(不図示)の浴室側端部を上から覆う床覆い部13aと、床覆い部13aより浴室側に位置して床覆い部13aより低く形成された浴室側下枠部13bと、を有している。床覆い部13aの浴室側の端部には、上方に向かって開放され見付け方向に沿って形成されて下止水部材(不図示)が嵌合される溝状の下止水部材嵌合部13dが設けられている。そして、下止水部材嵌合部13dと浴室側下枠部13bとの境界部分は、浴室側下枠部13bの方が低くなるような段差を有している。
【0019】
浴室側下枠部13bは、浴室内側に位置する内上面13eと、下止水部材嵌合部13d側に位置する外上面13fとを有しており、内上面13eと外上面13fとは互いに異なる角度の傾斜をなすように形成されている。具体的には、内上面13eと外上面13fとは、いずれも浴室側に向かって高さが低くなるような傾斜をなしており、内上面13eの方が外上面13fより傾斜が大きくなっている。
【0020】
戸尻側縦枠14及び戸先側縦枠15は、図1に示すように左右が反転した対称の形状をなしている。戸尻側縦枠14及び戸先側縦枠15は、開口10a(図2)に臨み互いに対面する平面を有する戸尻側壁部14a及び戸先側壁部15aと、戸尻側壁部14a及び戸先側壁部15aからそれぞれ開口10aの中央側に向かって突出され浴室に臨む面を有する戸尻側突出板状部14b及び戸先側突出板状部15bと、を有しており、戸尻側突出板状部14b及び戸先側突出板状部15bの開口10a側の部位には、浴室側に向かって開放され上下方向に沿って形成されて縦止水部材18が嵌合される溝状の縦止水部材嵌合部14c、15cが設けられている。
【0021】
上枠12の下方延出板状部12dと戸尻側突出板状部14b及び戸先側突出板状部15bとは、上枠12と戸尻側縦枠14及び戸先側縦枠15とが接合された際に、同一平面を形成するように構成されている。また、上止水部材嵌合部12eに上止水部材(不図示)が、下止水部材嵌合部13dに下止水部材(不図示)が、戸尻側縦枠14及び戸先側縦枠15の縦止水部材嵌合部14c、15cに縦止水部材18が、それぞれ取り付けられると、障子20を閉じた際に、上止水部材、下止水部材、縦止水部材18が障子20の框21、22、23、24に全周に亘って当接されるように構成されている。ここで上止水部材、下止水部材、縦止水部材18は、いずれも弾性変形可能な樹脂製の部材である。
【0022】
障子20は、開口10aを仕切る面材25と、面材25の上下に位置する上框21(図4)及び下框22(図4)と、面材25の左右に位置する戸尻框23及び戸先框24と、障子20を開閉するための操作部となるハンドル50と、を有し、面材25の周端部を収容しつつ上框21、下框22、戸尻框23、戸先框24とが枠組みされている。ここで、上框21、下框22、戸尻框23、戸先框24はいずれも押出成形部材であり、上框21及び下框22は、断面がほほ矩形状をなす中空の部材であり、戸尻框23及び戸先框24の断面は、障子20の見付け方向の端部側に配置される部位が円弧状をなす中空の部材である。
【0023】
戸尻框23及び戸先框24には、図3に示すように、上下端部に端部キャップ26が設けられている。端部キャップ26は、戸尻框23及び戸先框24の小口形状に合わせて形成されており、戸尻框23及び戸先框24の小口に当接される端部当接部26aと、端部当接部26aと一体となって戸尻框23及び戸先框24内に収容され、戸尻框23及び戸先框24に嵌合される端部被収容部26bと、を有している。
【0024】
また、戸先框24の端部キャップ26には、端部被収容部26b内に、端部被収容部26bの内面に当接または近接させて磁性体としてのマグネット27が嵌め込まれている。より具体的には、図1に示すように、マグネット27は、戸先框24の戸先側にて断面が円弧状をなす部位であって、障子20を閉じた状態において端部キャップ26の見込み方向において半分より脱衣室側にて、見込み方向に対して所定の角度αをなすように並べて配置されている。
【0025】
コーナーブロック30、31は、戸先側縦枠15が有する戸先側突出板状部15bの浴室側の上下の端部側に設けられている。上側に位置する上コーナーブロック30は、上枠12と戸先側縦枠15との接合部を覆うように設けられており、障子20に設けられた端部キャップ26の上下方向の長さとほぼ同じ長さを有している。上コーナーブロック30は、戸先側縦枠15の戸先側突出板状部15b及び戸先側壁部15aと上枠12の上中空部12aを構成し開口10aに臨む下枠対向面12fを有する下壁部12gとに当接され、見付け方向には縦止水部材嵌合部15cとほぼ同じ位置まで突出されている。また、障子20が閉じられた際に戸先框24側に臨む部位は、所定の角度αとほぼ直交する障子対向面30aを有している。さらに、上コーナーブロック30における、枠体11の入隅部側には、上枠12と戸先側縦枠15との接合部に向かって漸次浴室側に突出する傾斜面30bが設けられている。
【0026】
上コーナーブロック30には、障子対向面30aの内側に障子対向面30aに沿うようにマグネット27が嵌め込まれている。このマグネット27は、上側の端部キャップ26に設けられたマグネット27とほぼ同一の幅を有し、障子20を閉じた状態にて、戸先框24の上側の端部キャップ26に設けられたマグネット27と互いに対向し互いに引き合うように配置されている。
【0027】
下側に位置する下コーナーブロック31は、下枠13と戸先側縦枠15との接合部を覆うとともに浴室側から脱衣室側に向かって進入する水を浴室側に戻すように設けられており、障子20に設けられた端部キャップ26の上下方向の長さとほぼ同じ長さを有している。下コーナーブロック31は、戸先側縦枠15の戸先側突出板状部15b及び戸先側壁部15aと下枠13の外上面13fとに当接され、見付け方向には縦止水部材嵌合部15cとほぼ同じ位置まで突出されている。また、障子20が閉じられた際に戸先框24に臨む部位は、所定の角度αとほぼ直交する障子対向面31aを有している。さらに、下コーナーブロック31における、枠体11の入隅部側には、下枠13と戸先側縦枠15との接合部に向かって漸次浴室側に突出する傾斜面31bが設けられている。
【0028】
下コーナーブロック31には、障子対向面31aの内側に障子対向面31aに沿うようにマグネット27が嵌め込まれている。このマグネット27は、下側の端部キャップ26に設けられたマグネット27とほぼ同一の幅を有し、障子20を閉じた状態にて、戸先框24の下側の端部キャップ26に設けられたマグネット27と互いに対向し互いに引き合うように配置されている。
【0029】
そして、本実施形態の建具10の障子20が閉じられるときには、図4に示すように、戸先側縦枠15の縦止水部材嵌合部15cに嵌合された縦止水部材18が、戸先框24の上端側及び下端側にて、戸先框24と上コーナーブロック30及び下コーナーブロック31とに狭持されるように構成されている。すなわち、障子20が閉じられたときに、戸先框24と上コーナーブロック30及び下コーナーブロック31とは縦止水部材18を介して対向し、戸先框24及び上下のコーナーブロック30、31に設けられたマグネット27により互いに引き付けられて、縦止水部材18が戸先框24と上下のコーナーブロック30、31とにて狭持される。このとき、上下の端部キャップ26に嵌め込まれているマグネット27と、上下のコーナーブロック30、31に嵌め込まれたマグネット27とが引き付け合うことにより縦止水部材18は、確実に狭持される。
【0030】
本実施形態の建具10は、障子20を閉じた状態に維持するための、所謂ラッチは設けられておらず、障子20の戸先框24と、上コーナーブロック30及び下コーナーブロック31とに設けられたマグネット27の磁力により引き付けられて障子20が閉じた状態が維持されるように構成されている。そして、枠体11に設けられた上止水部材、下止水部材、縦止水部材18が弾性変形して、障子20の上框21、下框22、戸尻框23、戸先框24にそれぞれ押圧されることにより、障子20と枠体11との間を止水している。このとき、障子20の戸尻框23は枠体11に支持されているため、戸尻框23と縦止水部材18とは押圧された状態が安定して維持されるが、開閉操作により縦止水部材18との位置関係が変化する戸先框24側は、縦止水部材18が押圧された状態は維持されない。このため、開閉されて特に止水性を確保しにくい戸先側の入隅部に設けられている上下のコーナーブロック30、31と、戸先框24の端部キャップ26とにマグネット27を備え、互いに引き寄せることにより、止水性を高めている。
【0031】
本実施形態の建具10によれば、開口10aを開閉自在に枠体11に支持された障子20が閉じられたときに障子20の戸先框24と枠体11との間に配置されるコーナーブロック30、31、及び、戸先框24の、互いに対向する部位にそれぞれマグネット27が設けられており、障子20を閉じたときには、戸先框24のマグネット27とコーナーブロック30、31のマグネット27とが対向して互いに引き付け合うので、障子20に歪み等が生じていても戸先框24とコーナーブロック30、31との間に隙間が生じることを防止することが可能である。また、戸先框24のマグネット27とコーナーブロック30、31のマグネット27とが対向して互いに引き付けているので、障子20を閉じる操作の際には、障子20は閉じる方向に付勢されて、容易にかつ確実に障子20を閉止することが可能である。また、浴室の内側に向かって障子20が開くように構成された建具10において、マグネット27により障子20が閉じる方向に付勢されている場合には、浴室内の換気扇を作動させることにより障子20が開く方向に力が作用しても、障子20が開かないように磁力が作用するので、閉止状態にて障子20を保持することが可能である。このため、障子20により開口10aをより確実に閉止して閉止状態を維持することが可能であり、障子20と枠体11側との間における止水性及び操作性に優れた建具10を提供することが可能である。
【0032】
また、障子20が閉じられたときに障子20の戸先框24と枠体11との間に配置されるコーナーブロック30、31は、上枠12と戸先側縦枠15との接合部及び下枠13と戸先側縦枠との接合部を覆って止水するので、より高い止水性を備えることが可能である。
【0033】
本実施形態の建具10は、障子20が閉じた状態から障子20を開く際には、障子20の戸先側を見込み方向に移動させる必要がある。このため、障子20が閉じた状態にて戸先框24に設けられたマグネット27とコーナーブロック30、31に設けられたマグネット27とが見込み方向に並べて配置されていると、磁力による互いに引き付け合う力が大きいので、障子20を開くために大きな力が必要となる。ところが、本実施形態の建具10のように戸先框24に設けられたマグネット27とコーナーブロック30、31に設けられたマグネット27とが対向する方向が、見込み方向に対し所定の角度αをなしている場合には、両マグネット27により見込み方向に互いに引き付ける力が軽減されるので、障子20を閉止する力を大きく保ちつつも障子20を開く操作に必要な力が抑えられた、障子20の操作性に優れた建具10を提供することが可能である。
【0034】
また、上コーナーブロック30に嵌め込まれているマグネット27と上側の端部キャップ26に設けられたマグネット27、及び、下コーナーブロック31に嵌め込まれたマグネット27と下側の端部キャップ26に設けられたマグネット27とは、いずれもほぼ同一の幅を有して対向するように構成されている。このため、障子20を閉じるべく回動させたときには、マグネット27の磁力により端部キャップ26側のマグネット27とコーナーブロック30、31側のマグネット27とが対向する位置に戸先框24が引き寄せられる。すなわち、端部キャップ26側のマグネット27とコーナーブロック30、31側のマグネット27とを、意図する所定の位置にて対向するように配置することにより、障子20を所望の位置にて閉止状態とすることが可能であり、また、閉止状態にて障子20を保持させることが可能である。そして、マグネット27が対向した状態にて障子20を閉止状態にするとともに、マグネット27が対向した状態にて一定の磁力を作用させて障子20の閉止状態を維持させることが可能である。
【0035】
また、戸先側縦枠15には、障子20が閉じられた際に戸先側縦枠15と戸先框24との間を止水し、弾性変形可能な縦止水部材18が戸先側縦枠15に沿って上下方向に設けられているので、障子20と戸先側縦枠15との間の止水性に優れた建具10を提供することが可能である。また、障子20が閉じられた際には戸先框24とコーナーブロック30、31との間に縦止水部材18が介在されるので、障子20を閉じた際に、戸先框24が戸先側縦枠15に近づいて戸先框24が戸先側縦枠15側に引き寄せられたときの接触音の発生を抑えることが可能である。
【0036】
また、本実施形態の建具10は、障子20の閉止状態を戸先框24のマグネット27とコーナーブロック30、31のマグネット27との磁力により維持させることとしたので、所謂ラッチ機構を設ける必要がない。このため、ラッチ機構のような突出部を有していない本実施形態の戸先框24は美観に優れており、また、戸先框24へのラッチ機構の組み込みや、戸先側縦枠15への加工も必要ないので製造性にも優れ、さらに、障子20の開閉時にハンドルの回動操作も不要なので操作性にも優れている。また、ラッチ機構の係合時のように、完全な閉止状態となる前に部材同士が接触して本来不要な負荷が生じることはなく、また、その際の衝撃や振動及び接触音などの発生を抑えつつ障子20を閉止することが可能である。さらに、戸先框24のマグネット27と引き付け合うマグネット27をコーナーブロック30、31に設けたので、枠体11側にマグネット27を設けるための部材を新たに設けることなく枠体11側にマグネット27を設けることが可能である。
【0037】
上記実施形態においては、戸先框24における上端部及び下端部の端部キャップ26にマグネット27を備え、戸先框24の上下端部をコーナーブロック30、31側に引き寄せて止水する形態について説明したが、これに限るものではない。例えば、図5に示すように、戸先框24の中央近傍にマグネット27を備えたブロック材28を設け、戸先側縦枠15の、戸先框24の中央近傍と対向する部位にマグネットを備えたブロック材(不図示)を設けて、戸先框24の上下端部及び中央近傍を戸先側縦枠15側に引き寄せても良い。また、戸先框24を戸先側縦枠15側に引き寄せるためのマグネット27は、上下の端部キャップ26の間に複数備えていても良い。
【0038】
また、上記実施形態においては、建具がラッチ機構を備えない例について説明したが、戸先框にラッチ機構を備え、戸先框のラッチ機構から離れた位置にマグネットにより閉止する機構を備えることとしてもよい。
【0039】
上記実施形態においては、戸尻框23が回動自在に支持された開き戸タイプの建具10を例に挙げて説明したが、折れ戸タイプ、引き違いタイプ、及び、片引きタイプなどの建具であっても構わない。
【0040】
上記実施形態においては、浴室建具を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、屋内外の境界部に設けられる建具であっても構わない。この場合には、水が侵入する方向が本願と逆になる。すなわち、浴室建具の場合には、浴室側の水が脱衣室側、すなわち浴室内側から浴室外側への水の浸入を防止するが、屋内外の境界に設けられる建具の場合には、屋外側から屋内側への水の浸入を防止することになる。
【0041】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10 建具、10a 開口、11 枠体、12 上枠、13 下枠、
13b 浴室側下枠部、13f 外上面、14 戸尻側縦枠、
15 戸先側縦枠、18 縦止水部材、20 障子、24 戸先框、
26 端部キャップ、27 マグネット、28 ブロック材、
30 上コーナーブロック、30a 障子対向面、31 下コーナーブロック、
31a 障子対向面、
α 所定の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの空間を連通する開口を形成する枠体と、
前記開口を開閉自在に前記枠体に支持される障子と、
前記枠体に設けられ、前記障子が閉じられたときに当該障子の戸先框と前記枠体との間に配置される中間部材と、
を有し、
前記戸先框と前記中間部材とには、前記障子が閉じられた状態にて互いに対向する部位に各々磁性体が設けられており、前記磁性体の磁力により引き付けられて前記障子の閉止状態が維持されることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記枠体は上下の横枠と左右の縦枠とが接合されて矩形状をなしており、
前記中間部材は、前記枠体の入隅部に設けられて前記横枠と前記縦枠との接合部を止水するためのコーナーブロックであることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記戸先框に設けられた前記磁性体と前記中間部材に設けられた前記磁性体とが対向する方向は、見込み方向と所定の角度をなしていることを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建具であって、
前記左右の縦枠の一方は、前記障子が閉じられた際に前記戸先框側に位置する戸先側縦枠であり、
前記戸先側縦枠には、当該戸先側縦枠と前記戸先框との間を止水し、弾性変形可能な止水部材が前記戸先側縦枠に沿って上下方向に設けられており、
前記止水部材は、前記障子が閉じられた際に前記戸先框と前記中間部材との間に介在されることを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241452(P2012−241452A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113912(P2011−113912)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】