説明

建材の製造方法

【課題】質感の高い建材を得ることができる建材の製造方法を提供する。
【解決手段】異なる色に着色された複数種の樹脂材料1、2を成形型3に別々にセットした後、これら樹脂材料1、2を成形型3でプレス成形して一体化する建材Aの製造方法に関する。上記複数種の樹脂材料1、2の色差が2〜8である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の外壁材や屋根材、装飾部材などとして使用される建材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントを主成分とする成形材料をプレス成形して石材柄やレンガ柄などの凹凸模様を表面に有する無機質建材が製造されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような無機質建材の廃材(端材)と樹脂(廃材であっても良い)とを混合混練して樹脂材料を調製し、これをプレス成形して石材柄やレンガ柄などの凹凸模様を表面に有する建材を形成することも行われている。この場合、廃材を再利用可能な資源として利用することができて新たな製品を製造することができる。
【0003】
上記のような樹脂材料を用いた建材において、その表面を塗装によって化粧すると、エナメル質感が強くでて本物の石材やレンガ材の質感が発現されにくい。また、深い凹模様に対してはその底部分まで塗装することが困難であった。そこで、樹脂材料に顔料を配合することにより着色することが行われている。この場合、樹脂材料の調製時に顔料を配合して混合混練して樹脂材料自体を着色することにより、塗装での意匠表現ではなく、着色による意匠表現を行うものである。
【0004】
しかし、顔料を配合することにより着色した建材は可能であるが、建材全体が単色になって、本物感や高級感などの質感を高くすることができないという問題があった。
【特許文献1】特開2005−48485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、質感の高い建材を得ることができる建材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る建材Aの製造方法は、異なる色に着色された複数種の樹脂材料1、2を成形型3に別々にセットした後、これら樹脂材料1、2を成形型3でプレス成形して一体化する建材Aの製造方法であって、上記複数種の樹脂材料1、2の色差が2〜8であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る建材Aの製造方法は、請求項1において、樹脂材料1、2が無機質建材の廃材4と熱可塑性樹脂5を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、色の異なる複数の樹脂材料1、2のそれぞれからなる部分を形成することができ、全体的に単色になることなく、部分的に色が異なることになり、天然石調などの本物の石材やレンガ材などを用いたような本物感や高級感などの質感を有する建材を得ることができるものである。しかも、色が異なる部分の色差が2〜8であるために、意匠性が高くて色デザインのバランスの良い建材を得ることができるものである。
【0009】
請求項2の発明では、廃材4を有効利用することができ、環境保護を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
本発明の建材Aは、異なる色に着色された複数種の樹脂材料1、2を用いて製造する。樹脂材料1、2としては、無機粉粒体と、熱可塑性樹脂と、着色剤とを配合した成形材料を用いるのが好ましい。これにより、窯業系無機質建材の廃材やプラスチック製品の廃材を大量に再利用して、高い曲げ強度を維持しつつ衝撃強度に優れた建材を作製することができる。
【0012】
上記の無機粉粒体としては、無機質材料を粉砕したものを用いることができるものであり、例えば繊維セメント板など、窯業系無機質建材の廃材を粉砕したものを使用することができる。窯業系無機質建材の廃材は、製造段階から、建築物解体段階に至るまで発生し、累積発生量は大量となる。このような窯業系無機質建材の廃材を粉砕して原料として使用すれば、廃材の有効利用が可能になって、環境保護を有効に達成することができるものである。無機粉粒体は上記のような窯業系無機質建材の廃材を粉砕したものの他に、フライアッシュ、ペーパースラッジ灰、焼却灰、その溶融スラグなどの焼却灰を用いることもできる。これらの産業廃棄物にあっても、大量の有効再利用が可能になるものである。またこれらはもともと粉粒状であるため、粉砕を行なうことが不要であり、製造コストを低く抑えることができるものである。無機粉粒体の粒径は特に制限されるものではないが、平均粒径が0.01〜7mmの範囲のものを用いるのが好ましい。
【0013】
また、上記の熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂の成形品からなるプラスチック製品の廃材を用いることができるものである。プラスチック製品の廃材も窯業系無機質建材と同様に発生量は大量であるので、プラスチック製品を原料として使用すれば、廃材の有効利用が可能になるものである。プラスチック製品を構成する熱可塑性樹脂としては特に制限されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレンなど任意のものを用いることができる。
【0014】
また、上記の着色剤としては、顔料などを用いることができ、特に、耐候性の高い無機顔料(例えば、大日精化(株)製の酸化チタンや酸化鉄イエローなど)を用いるのが好ましい。また、顔料の色も特に限定はなく、例えば、イエローなどを用いることができる。
【0015】
そして、上記の無機粉粒体と熱可塑性樹脂と着色剤とを配合し、混合・混練することによって樹脂材料1、2を得ることができるが、樹脂材料1と樹脂材料2の色を異ならせるにあたっては、各樹脂材料1、2に配合する着色剤の色を変えたり同色の着色剤の配合量を変えたりする。ここで、樹脂材料1と樹脂材料2の色差(△E)は2〜8にする。この色差が2未満の場合は、樹脂材料1と樹脂材料2の色の違いが明確でなく、複数色を用いて意匠性を向上させるという効果が得にくくなる。また、色差が8より大きくなると、樹脂材料1と樹脂材料2の色の違いが大きくなりすぎて、色デザイン(配色)のバランスが悪くなって意匠性が低下するおそれがある。
【0016】
尚、上記の色差を計測するにあたっては、例えば、X−Rite社(エックスライト社)製の「SP−64」を用いることができる。これは積分球分光測色計である。
【0017】
また、上記の樹脂材料1、2は更にエラストマーを配合して調製することができる。エラストマーとしては特に限定されるものではなく、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の適宜のものを用いることができる。成形材料中の無機粉粒体と熱可塑性樹脂とエラストマーの配合量は特に限定されるものではなく、各材料の特性をバランス良く発揮させるために適宜の割合で配合する。
【0018】
また、樹脂材料1、2中に配合される熱可塑性樹脂及びエラストマーとしては、その一部又は全部として、エラストマーが添加された熱可塑性樹脂の成形品を用いることもでき、このときは、このような成形品からなるプラスチック製品の廃材を用いることができる。このようなプラスチック製品も例えば自動車のバンパー等として広く用いられているため、その廃材も窯業系無機質建材と同様に発生量は大量であるので、プラスチック製品を原料として使用すれば、エラストマーの供給源としても廃材の有効利用が可能になるものである。
【0019】
そして、無機粉粒体と熱可塑性樹脂と着色剤及び必要に応じてエラストマーを配合し、これを熱可塑性樹脂の溶融温度付近に加熱しながら強制的に混合・混練することによって、樹脂材料1、2を得ることができる。ここで、樹脂材料1、2中の各成分の配合量は適宜調整されるものであるが、特に無機粉粒体の含有量が樹脂材料1、2の全体量に対して50〜85質量%の範囲となるようにすることが好ましい。このとき、樹脂材料1、2を無機粉粒体と、エラストマーが添加された熱可塑性樹脂のプラスチック製品とで調製する場合には、樹脂材料1、2中のプラスチック製品の配合量が樹脂材料1、2の全体量に対して50〜15質量%の範囲となる。このように無機粉粒体の含有量を85質量%以下とすると樹脂材料1、2を溶融した場合の流動性が良好なものとなり、この樹脂材料1、2を成形する際にショートの発生を抑制することができ、また曲げ強度や衝撃強度を更に向上することができると共に、比重を低減することもできるものである。また、特に前記含有量が65質量%未満であれば、樹脂材料1、2の流動性を更に良好なものとすることができ、複雑な形状を有するプラスチック製品を製造する場合であってもショート等の不良発生率を低減することができる。また、無機粉粒体の含有量を50質量%以上とすることで、樹脂材料1、2の粘着性を低減することができて樹脂材料1、2を混練機等から型へ移す際の混練機等への付着が生じにくくなり作業性が向上するものであり、さらに線膨張率を低減することができて熱寸法安定性が向上するものである。また、着色剤の配合量は他の成分の色やどの程度の色差を必要とするかなどを考慮して設定することができるが、例えば、樹脂材料1、2の全体量に対して外割配合(外掛け)で2〜20質量%にするのが好ましい。
【0020】
そして、本発明の建材は以下のようにして製造する。まず、図1(a)に示すように、熱可塑性樹脂5と廃材4の無機粉粒体と着色剤6とをニーダー等の混練機7で混合混練する。ここで、色の異なる樹脂材料1と樹脂材料2は別の混練機7又は別の工程でそれぞれ混合混練して調製する。この場合、樹脂材料1と樹脂材料2は着色剤の配合量のみを異ならせて(例えば、一方を20質量%、他方を10質量%)調製することができる。次に、混練後の溶融状態にある樹脂材料1、2を成形型3にそれぞれ別々に配置してセットする。例えば、図1(b)に示すように、複数個の樹脂材料1の塊(ネタ)を成形型3の上面の成形面8に部分的に配置し、その後、図1(c)に示すように、成形面8に配置した上記樹脂材料1を覆うようにして、複数個の樹脂材料2の塊を成形型3に配置することができる。尚、成形面8は建材の表面に形成される凹凸模様に対応した凹凸面として形成されている。この後、図1(d)に示すように、成形型3にセットした上記樹脂材料2の上からプレス機9を用いてプレス成形により加熱加圧成形することによって、樹脂材料1、2を略板状に成形しながら一体化する。この後、成形型3中で樹脂材料1、2を冷却固化させた後に脱型することによって、図2に示すような、建材Aを製造することができるものである。この建材Aではその表面に凹凸模様10が形成されていると共に樹脂材料1からなる部分と樹脂材料2からなる部分とが混在した表面状態となる。そして、樹脂材料1と樹脂材料2との色が異なるため、建材Aが全体的に単色になることなく、部分的に色が異なることになり、天然石調などの本物の石材やレンガ材などを用いたような本物感や高級感などの質感を有するものとなる。
【0021】
また、本発明の建材Aは、熱可塑性樹脂5をバインダーとして無機粉粒体を結合させたものであり、無機粉粒体と熱可塑性樹脂5が建材A中の大部分を占めるので、無機粉粒体として窯業系無機質建材の廃材4を用いる場合、また熱可塑性樹脂5としてプラスチック製品の廃材を用いる場合、これらの廃材を大量に有効再利用することが可能になるものである。また熱可塑性樹脂5をバインダーとしているために、高い曲げ強度を得ることができるものである。しかもエラストマーを配合すると、建材Aの耐衝撃性を向上することができ、曲げ強度に加えて衝撃強度が高い建材Aを得ることができるものである。
【0022】
図3に成形型3に樹脂材料1を配置する状態の他例を示す。図1(b)のように、大きな塊で樹脂材料1をセットした場合、建材Aへと成形した後に各塊から形成される部分の界面が明確となり、意匠性が低下するおそれがある。そこで、図3では、より小さな塊で樹脂材料1を成形型3にセットするものであり、これにより、建材Aへと成形した後に各塊から形成される部分の界面が明確とならず、意匠性が低下するのを防止することができる。
【0023】
尚、上記では二種類の色の異なる樹脂材料1、2を用いて説明したが、三種類以上の色の異なる樹脂材料を用いても良いのは当然であるが、この場合も全種類の樹脂材料の色差が2〜8の範囲になるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)〜(d)は概略図である。
【図2】同上の建材を示す正面図である。
【図3】同上の他例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 樹脂材料
2 樹脂材料
3 成形型
4 廃材
5 熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色に着色された複数種の樹脂材料を成形型に別々にセットした後、これら樹脂材料を成形型でプレス成形して一体化する建材の製造方法であって、上記複数種の樹脂材料の色差が2〜8であることを特徴とする建材の製造方法。
【請求項2】
樹脂材料が無機質建材の廃材と熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−274658(P2008−274658A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120012(P2007−120012)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】