説明

建物基礎用金具および建物基礎構造

【課題】柱の揺れを抑制し、建物の耐震性を高めることができる建物基礎用金具および建物基礎構造を提供する。
【解決手段】キャップ部11が、地面に打ち込まれた建物基礎用の複数のパイル1の頭部に固定可能で、土台2を載せるための載置面26bを有している。固定基部12が、載置面26bに上方に向かって突出するよう設けられている。柱取付部15が、固定基部12より上方に伸びるよう、固定基部12に着脱可能に設けられている。土台2が、固定基部12を挿入可能に厚みを貫通して設けられた貫通孔2aを有している。土台2は、貫通孔2aに固定基部12を挿入して載置面26bに載せられ、土台固定部材14により固定基部12に固定されている。柱材5が、柱取付部15により固定されて、土台2の上部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎用金具および建物基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物の杭基礎構造として、地面に打ち込まれた複数の建物基礎用のパイルの上に、複数の受け材を取り付け、上側に向いた各受け材の溝に土台を嵌め込んで形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この場合、一般的な建物の基礎構造と同様に、柱は、土台の上に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−4300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の建物の基礎構造や一般的な建物の基礎構造では、柱が土台を介して基礎に固定されているため、基礎を頑丈に形成しても、土台と柱との接合状態により、柱の構造が弱くなる可能性があった。すなわち、地震などにより震動するとき、基礎の揺れの大きさよりも、柱の揺れが大きくなり、建物全体の震動が大きくなるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、柱の揺れを抑制し、建物の耐震性を高めることができる建物基礎用金具および建物基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る建物基礎用金具は、地面に打ち込まれた建物基礎用のパイルに取り付けて使用される建物基礎用金具であって、前記パイルの頭部に固定可能で、土台を載せるための載置面を有するキャップ部と、前記載置面に上方に向かって突出するよう設けられた固定基部と、前記固定基部より上方に伸びるよう前記固定基部に着脱可能に設けられた柱取付部と、前記載置面に載せられた前記土台を前記固定基部に固定するための土台固定部材とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る建物基礎構造は、地面に打ち込まれた複数のパイルと、各パイルの頭部に固定された本発明に係る複数の建物基礎用金具と、前記固定基部を挿入可能に厚みを貫通して設けられた貫通孔を有し、前記貫通孔に前記固定基部を挿入して前記載置面に載せられ、前記土台固定部材により前記固定基部に固定された土台と、前記柱取付部により固定されて前記土台の上部に設けられた柱材とを有することを、特徴とする。
【0008】
本発明に係る建物基礎用金具および建物基礎構造は、柱取付部により、土台を介することなく、柱材を基礎のパイルに直接固定することができる。このため、土台を介して柱を基礎に固定する場合に比べ、地震などによる震動時の柱の揺れを抑制することができる。これにより、建物全体の震動を抑制することができ、建物の耐震性を高めることができる。土台および柱材を基礎に直接固定することができ、土台と柱材とを接合する必要がないため、その接合部の加工が不要である。このため、土台や柱材の加工および施工が容易である。
【0009】
本発明に係る建物基礎用金具で、前記柱取付部は伸長方向と水平面との成す角を変更可能に、前記固定基部に回転可能に設けられていてもよい。この場合、柱取付部により、柱材が水平面と成す角度を調節することができる。これにより、鉛直に伸びるよう柱材を固定することができ、建物の施工不良を防止することができる。
【0010】
本発明に係る建物基礎用金具は、前記土台固定部材により前記土台とともに固定可能で、前記土台の伸長方向に対して垂直横方向に突出するよう設けられた土台取付部材を有することが好ましい。この場合、土台固定部材により水平に伸びるよう固定基部に固定された土台に対して垂直を成すよう、土台取付部材により他の土台や大引、梁を固定することができる。これにより、土台や大引、梁を水平面内で十字型やT字型に配置して固定することができる。
【0011】
本発明に係る建物基礎用金具は、前記キャップ部の前記載置面の高さおよび角度、ならびに前記固定基部の水平位置を調整可能に構成されていることが好ましい。この場合、パイルが鉛直でなかったり、パイルの高さがそろっていなかったり、水平面内でパイルの位置がずれていたりしたときでも、載置面の高さや角度、固定基部の水平位置を調整することにより、土台や柱材の施工位置や角度等を調節することができる。このため、精度良く施工することができ、建物の施工不良を防止することができる。また、長年の使用や地震などによる建物の歪みを、記載置面の高さや角度、固定基部の水平位置を調整することにより解消することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柱の揺れを抑制し、建物の耐震性を高めることができる建物基礎用金具および建物基礎構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の建物基礎構造を示す正面図である。
【図2】図1に示す建物基礎構造の右側面図である。
【図3】図1に示す建物基礎構造の、柱材を外した状態の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態の建物基礎用金具を示す分解斜視図である。
【図5】図4に示す建物基礎用金具の分解縦断面図である。
【図6】図4に示す建物基礎用金具の(a)正面図、(b)右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図6は、本発明の実施の形態の建物基礎用金具および建物基礎構造を示している。
図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態の建物基礎構造は、複数のパイル1と土台2と複数の建物基礎用金具3と大引4と柱材5とを有している。
【0015】
複数のパイル1は、鋼管杭から成り、所定の配置で地面に鉛直に打ち込まれている。
土台2は、所定の長さを有する木製の角材から成っている。土台2は、各パイル1の配置に合わせて配置されている。土台2は、各パイル1に対応する位置に、上下方向に厚みを貫通して設けられ、所定の径を有する貫通孔2aを有している。
【0016】
各建物基礎用金具3は、各パイル1の頭部に固定されている。図1乃至図6に示すように、各建物基礎用金具3は、キャップ部11と固定基部12と固定ボルト13と土台固定部材14と柱取付部15と土台取付部材16とを有している。図4乃至図6に示すように、キャップ部11は、パイルキャップ21とパイプボルト22と偏芯座金23とハンドルプレート24とロックプレート25と土台受け鋼板26とを有している。
【0017】
パイルキャップ21は、金属製で、上端および下端が開口した筒状を成し、横断面が正方形の枠状を成すよう形成されている。パイルキャップ21は、上端に固定された鋼板製の蓋部材21aを有し、蓋部材21aの中央部にパイルキャップ21の内部に連通する円形孔21bが形成されている。蓋部材21aは、円形孔21bの内側面に、雌ネジが形成されている。パイルキャップ21は、下端の開口からパイル1の頭部を挿入するようにして、パイル1の頭部に被せて取り付けられている。図1および図2に示すように、パイルキャップ21は、固定用のボルト31を側面およびパイル1に貫通させて、パイル1に固定可能になっている。
【0018】
図4乃至図6に示すように、パイプボルト22は、金属製で円筒形状を成し、外側面に蓋部材21aの円形孔21bの雌ネジに螺合する雄ネジが形成されている。パイプボルト22は、外側面の雄ネジを、パイルキャップ21の円形孔21bの雌ネジに螺合させて、パイルキャップ21に対して上下動可能に取り付けられている。
【0019】
偏芯座金23は、金属製で円盤形状を成し、パイプボルト22の内径と同じ外径を有している。偏芯座金23は、上面の中央部に、その周辺部より上方に盛り上がって厚く形成された円形凸部23aを有している。また、偏芯座金23は、固定ボルト13を挿入可能に厚みを貫通し、中心部から周縁部に向かって伸びるよう形成されたスライド孔23bを有している。偏芯座金23は、パイプボルト22の上端内部に嵌め合わせて固定されている。
【0020】
ハンドルプレート24は、金属製で薄い円環状を成し、偏芯座金23の円形凸部23aの外径と同じ内径を有している。ハンドルプレート24は、中心に対して対称な外縁部の位置から外側に向かって突出するよう設けられた1対のハンドル部24aを有している。ハンドルプレート24は、内部に偏芯座金23の円形凸部23aを嵌め合わせて、偏芯座金23およびパイプボルト22に固定されている。
【0021】
ロックプレート25は、金属製で円盤形状を成し、中心に固定ボルト13を挿入可能に設けられた第1挿入孔25aを有している。ロックプレート25は、ハンドルプレート24および偏芯座金23の上部に配置されている。土台受け鋼板26は、正方形の金属製の板から成り、中心に固定ボルト13を挿入可能に設けられた第2挿入孔26aを有している。土台受け鋼板26は、ロックプレート25の上部に配置されている。土台受け鋼板26は、上面が土台2を載せるための載置面26bを成している。
【0022】
図5および図6に示すように、固定基部12は、金属製で、載置面26bの上部に配置されている。固定基部12は、矩形状の取付板12aと、取付板12aの両端から取付板12aに対して垂直上方に向かって互いに平行に伸びるよう設けられた矩形状の1対の固定板12bとを有している。取付板12aは、中心に固定ボルト13を挿入可能に設けられた第3挿入孔12cを有している。各固定板12bは、中心よりやや上方の互いに対向する位置に、厚みを貫通して設けられた固定用孔12dを有している。各固定板12bは、載置面26bに対して、上方に向かって突出するよう設けられている。各固定板12bは、土台2の貫通孔2aに挿入可能になっている。
【0023】
固定ボルト13は、頭を下にして、パイルキャップ21の内部から先端を偏芯座金23のスライド孔23b、ロックプレート25の第1挿入孔25a、土台受け鋼板26の第2挿入孔26a、固定基部12の第3挿入孔12cに挿入し、固定基部12の各固定板12bの間でナット13aで締めて固定されている。各建物基礎用金具3は、この状態でハンドルプレート24のハンドル部24aを回転させることにより、ハンドルプレート24とともにパイプボルト22が回転してパイルキャップ21に対して上下動するため、キャップ部11の載置面26bの高さを調製可能になっている。また、偏芯座金23のスライド孔23bに沿って固定ボルト13の挿入位置をずらすことにより、固定基部12の水平位置を調整可能になっている。ボルト31によりパイルキャップ21をパイル1の頭部に取り付けるとき、その取付角度を調節することにより、載置面26bの角度を調節可能になっている。
【0024】
図1および図2に示すように、土台固定部材14は、1組のボルトおよびナットから成っている。土台固定部材14は、固定基部12の各固定板12bを貫通孔2aに挿入して載置面26bに載せられた土台2を、固定基部12に固定している。土台固定部材14は、貫通孔2aの位置で土台2を横方向に貫通するとともに、各固定板12bの固定用孔12dに挿入することにより、土台2を固定基部12に固定している。
【0025】
図1、図2および図6(b)に示すように、柱取付部15は、金属製のパイプ状の部材から成り、下端部および上端部に、それぞれ横方向に貫通した取付孔15aおよび柱固定孔15bを有している。柱取付部15は、下端部を固定基部12の各固定板12bの間に挿入し、土台固定部材14を取付孔15aに挿入することにより、固定基部12より上方に伸びるよう固定基部12に着脱可能に取り付けられている。柱取付部15は、土台固定部材14により、土台2とともに固定基部12に取り付けられている。柱取付部15は、伸長方向と水平面との成す角を変更可能に、土台固定部材14を軸として固定基部12に回転可能に取り付けられている。
【0026】
図2および図3に示すように、土台取付部材16は、金属製で、矩形状の当て板16aと、当て板16aの両側縁から当て板16aに対して同じ面側に垂直に、互いに平行に伸びるよう設けられた矩形状の1対の受け板16bとを有している。当て板16aは、土台固定部材14を挿入可能に設けられた第4挿入孔16cを有している。土台取付部材16は、土台2の側面に固定されている。土台取付部材16は、各受け板16bが垂直面内で土台2の伸長方向に対して垂直横方向に突出するよう、当て板16aを土台2の側面に当て、土台固定部材14を第4挿入孔16cに挿入することにより固定されている。土台取付部材16は、土台固定部材14により、柱取付部15および土台2とともに固定されている。
【0027】
大引4は、所定の長さを有する木製の角材から成っている。大引4は、両端面に土台取付部材16の各受け板16bを挿入可能な挿入溝4aを有している。大引4は、挿入溝4aに土台取付部材16の各受け板16bを挿入し、固定用のドリフトピン32を側面および各受け板16bに貫通させて固定されている。大引4は、土台2の側面に垂直横方向に伸びるよう設けられている。
【0028】
図1および図2に示すように、柱材5は、所定の長さを有する木製の角材から成っている。柱材5は、下端面に柱取付部15を挿入可能な取付用孔5aを有している。柱材5は、取付用孔5aに上端部から柱取付部15を挿入し、固定用のドリフトピン33を側面および柱取付部15の柱固定孔15bに貫通させて、柱取付部15に固定されている。柱材5は、土台2の上部に、鉛直上方に伸びるよう設けられている。
【0029】
次に、作用について説明する。
本発明の実施の形態の建物基礎構造で、建物基礎用金具3は、地面に打ち込まれた建物基礎用のパイル1に取り付けて使用される。建物基礎用金具3は、柱取付部15により、土台2を介することなく、柱材5を基礎のパイル1に直接固定することができる。このため、土台2を介して柱を基礎に固定する場合に比べ、地震などによる震動時の柱の揺れを抑制することができる。これにより、建物全体の震動を抑制することができ、建物の耐震性を高めることができる。土台2および柱材5を基礎のパイル1に直接固定することができ、土台2と柱材5とを接合する必要がないため、その接合部の加工が不要である。このため、土台2や柱材5の加工および施工が容易である。
【0030】
柱取付部15により、柱材5が水平面と成す角度を調節することができるため、鉛直に伸びるよう柱材5を固定することができ、建物の施工不良を防止することができる。パイル1が鉛直でなかったり、パイル1の高さがそろっていなかったり、水平面内でパイル1の位置がずれていたりしたときでも、載置面26bの高さや角度、固定基部12の水平位置を調整することにより、土台2や柱材5の施工位置や角度等を調節することができる。このため、精度良く施工することができ、建物の施工不良を防止することができる。また、長年の使用や地震などによる建物の歪みを、記載置面26bの高さや角度、固定基部12の水平位置を調整することにより解消することもできる。
【0031】
土台取付部材16により、大引4に限らず梁や他の土台を、土台2に対して垂直横方向に伸びるよう固定することができる。これにより、土台2や大引4、梁を水平面内で十字型やT字型に配置して固定することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 パイル
2 土台
3 建物基礎用金具
4 大引
5 柱材
11 キャップ部
12 固定基部
13 固定ボルト
14 土台固定部材
15 柱取付部
16 土台取付部材
21 パイルキャップ
22 パイプボルト
23 偏芯座金
24 ハンドルプレート
25 ロックプレート
26 土台受け鋼板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に打ち込まれた建物基礎用のパイルに取り付けて使用される建物基礎用金具であって、
前記パイルの頭部に固定可能で、土台を載せるための載置面を有するキャップ部と、
前記載置面に上方に向かって突出するよう設けられた固定基部と、
前記固定基部より上方に伸びるよう前記固定基部に着脱可能に設けられた柱取付部と、
前記載置面に載せられた前記土台を前記固定基部に固定するための土台固定部材とを、
有することを特徴とする建物基礎用金具。
【請求項2】
前記柱取付部は伸長方向と水平面との成す角を変更可能に、前記固定基部に回転可能に設けられていることを、特徴とする請求項1記載の建物基礎用金具。
【請求項3】
前記土台固定部材により前記土台とともに固定可能で、前記土台の伸長方向に対して垂直横方向に突出するよう設けられた土台取付部材を有することを、特徴とする請求項1または2記載の建物基礎用金具。
【請求項4】
前記キャップ部の前記載置面の高さおよび角度、ならびに前記固定基部の水平位置を調整可能に構成されていることを、特徴とする請求項1、2または3記載の建物基礎用金具。
【請求項5】
地面に打ち込まれた複数のパイルと、
各パイルの頭部に固定された複数の請求項1、2、3または4記載の建物基礎用金具と、
前記固定基部を挿入可能に厚みを貫通して設けられた貫通孔を有し、前記貫通孔に前記固定基部を挿入して前記載置面に載せられ、前記土台固定部材により前記固定基部に固定された土台と、
前記柱取付部により固定されて前記土台の上部に設けられた柱材とを有することを、
特徴とする建物基礎構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196286(P2010−196286A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40030(P2009−40030)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(308031887)フォースワンホールディングス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】