建物
【課題】電力等のエネルギ使用を控えながら、屋内の空気環境を向上させて快適さを実現できる建物を提供すること。
【解決手段】住宅10は、その一階部分31に階段空間42を有しており、その階段空間42の床下には土間71が設けられている。階段空間42の床と土間71との間には土間空間72が形成され、その土間空間72は屋外の水盤W1,W2と隣接している。階段空間42の床部には開口板部材47が設けられ、開口板部材47の開口部を通じて、階段空間42と土間空間72との間が通気可能とされている。また、土間空間72と水盤W1,W2の上方空間とを仕切る基礎部分Kbには通気口81が設けられ、その通気口81を通じて、土間空間72と水盤W1,W2の上方空間との間が通気可能とされている。
【解決手段】住宅10は、その一階部分31に階段空間42を有しており、その階段空間42の床下には土間71が設けられている。階段空間42の床と土間71との間には土間空間72が形成され、その土間空間72は屋外の水盤W1,W2と隣接している。階段空間42の床部には開口板部材47が設けられ、開口板部材47の開口部を通じて、階段空間42と土間空間72との間が通気可能とされている。また、土間空間72と水盤W1,W2の上方空間とを仕切る基礎部分Kbには通気口81が設けられ、その通気口81を通じて、土間空間72と水盤W1,W2の上方空間との間が通気可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物一階部分に設けられた空間部の床下に土間を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物では、その屋内の空気環境を向上させて快適に過ごせるようにするために、各種の対策が提案されている。例えば、エアコンや床暖房等の冷暖房装置を屋内空間部に設置することは、広く一般的に普及した対策の一つといえる。また、玄関土間に井戸水等の冷却水を流通させる配管を埋設して、夏季の炎天下でも、涼しい玄関土間を形成する対策も、その一つとして提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したエアコンや床暖房等の冷暖房装置には、その駆動に電力やガスが必要となり、エネルギを消費する。近年では、これらの冷暖房装置にも省エネルギ化が実現されているが、それでもエネルギの消費は避けられない。また、冷却水を流通させる配管を埋設する場合であっても、井戸水が存在しない場所には適用できないし、過剰な使用は井戸水を枯らしてうこともあり、汎用性に乏しいという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、電力等のエネルギ使用を控えながら、屋内の空気環境を向上させて快適さを実現できる建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、第1の発明では、建物一階部分に設けられた屋内空間部と、その屋内空間部の床下に設けられた土間と、前記屋内空間部の床部と前記土間との間に設けられた土間空間と、前記屋内空間部の床部に設けられ、その屋内空間部と前記土間空間との間で上下方向に通気させる第1通気部と、前記土間空間へ同土間空間外から水または空気を取り込む取込部と、を備えた。
【0008】
この第1の発明によれば、取込部を介して土間空間外から土間空間へ水または空気が取り込まれることで、その土間空間の空気環境が変更され、それが第1通気部を介して屋内空間部に反映される。これにより、土間空間を通じて屋内の空気環境を向上させることができる。
【0009】
第2の発明では、少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接する空間領域が形成され、前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記土間空間と前記空間領域との間で横方向に通気させる第2通気部であるとした。
【0010】
この第2の発明によれば、空間領域のうち土間空間に隣接する部分の空気が第2通気部を通じてその土間空間に取り込まれると、取り込まれた空気は第1通気部を通じて屋内空間部へ取り込まれる。さらには、屋内空間部と通気可能とされた建物内の他の空間部へも通気される。これにより、土間空間に隣接する部分での空気環境が、建物内のそれよりも快適さを備えている場合には、その空気環境を取り入れて、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0011】
なお、前記空間領域は水盤を有する屋外空間であって、前記土間空間と隣接する部分は前記水盤の上方空間であることが好ましい。これにより、水盤の上方を通過して冷やされた空気が、前記第2通気部を通じて土間空間に取り込まれるようになる。これにより、特に夏季においては、屋内よりも快適さを備えた空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0012】
また、前記空間領域は、前記屋内空間部(第1屋内空間部)と横並びで隣接する別の屋内空間部(第2屋内空間部)の床下に設けられて、その空間領域全体が前記土間空間と隣接する床下空間であることが好ましい。これにより、第2屋内空間部の床下空間の空気が、前記第2通気部を通じて土間空間に取り込まれる。特に、夏季においては、床上空間の空気に比べて、地面に接して存在する床下空間の空気は冷やされた状態にある。この冷やされた床下空間の空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0013】
次に、第3の発明では、少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接し、水盤を有する屋外空間が形成され、前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記水盤の水を前記土間空間へ流し入れる流入口と、その流入口を開閉する流入口開閉体とを有するとした。
【0014】
この第3の発明によれば、流入口開閉体を開状態とすることで、水盤の水が流入口を通じて土間空間に流入する。これにより、土間は水が張られた状態となるため、特に夏季においては、その水によって土間空間の空気をより冷やすことができる。その冷やされた空気を屋内空間部に取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0015】
この場合、土間空間に流入した水を排水し、水盤からは継続して水が流入するようにすることが好ましい。これにより、土間には小川のせせらぎのような水の流れが形成されることになり、空気冷却効果が高められるし、水がよどむことの防止にもつながる。
【0016】
第4の発明では、前記屋内空間部は、建物二階部分に連通する吹き抜け空間の一部とされ、前記吹き抜け空間の二階部分を有する空間の天井部には、開閉式の天窓部が設けられている。
【0017】
この第4の発明によれば、屋内空間部は吹き抜け空間の一部とされ、天井部には天窓部が設けられているため、天窓部を開状態とすれば、その天窓部と吹き抜け空間との煙突効果により、土間空間及び屋内空間部への空気を取り込みを促進させることができる。
【0018】
この場合、前記屋内空間部は、一階部分から二階部分へ通じる階段が設けられる階段空間であることが好ましい。このような階段空間であれば、リビングやダイニング等の居室と異なり、その床部に前記第1通気部が設けられていても、日常生活に不便をきたすおそれを低減できる。特に、多数の開口部を有する開口板部材(例えば、グレーチング)が設けられて、その各開口部が前記第1通気部とされている場合には、そのメリットは大きい。なお、前記階段は、オープン階段であることが好ましい。これにより、通気性が阻害されないからである。
【0019】
第5の発明では、前記屋内空間部は、建物一階部分を構成する建物内空間において、平面上の略中央部に配置されているとした。
【0020】
この第5の発明によれば、土間空間への空気の取り込み先を、土間空間の周囲に配置させることが可能となる。これにより、より多くの空気取込先から土間空間へ快適な空気を取り込んで、屋内環境をより向上させることができる。
【0021】
第6の発明では、建物一階部分には、太陽光を前記屋内空間部に取り込んでその床部に届かせる採光部が設けられ、前記土間は前記第1通気部を通じて照射された太陽光の熱を蓄えるとともに、その蓄えた熱を放射する放熱機能を有する蓄熱材によって構成されている。
【0022】
この第6の発明によれば、特に太陽高度が低い冬季において、採光部から屋内空間部に取り込まれた太陽光はその屋内空間部の床部に届き、さらに第1通気部を通じて土間の上面に照射される。土間は蓄熱材によって構成されているため、照射された太陽光の熱は土間に蓄えられる。この蓄えられた熱は、蓄熱材の放熱機能により、土間空間、ひいては第1通気部を通じて屋内空間部に向けて放射されるため、屋内を暖めることができる。
【0023】
第7の発明では、前記取込部は、水または空気の取り込み状態と、その取り込み停止状態とに切り替え可能に構成され、屋内の温度を検出する屋内温度検出手段と、前記屋内温度検出手段により検出された屋内温度に応じて、前記取込部を切替制御する制御手段と、を有する通気通水制御システムを備えた。
【0024】
この第7の発明によれば、検出された屋内温度に応じて、取込部からの水または空気の取り込みを制御して、屋内環境を向上させることができる。例えば、夏季において、土間空間の空気を屋内空間部に取り込むだけでは温度低下が不十分な場合に、土間空間外の水または空気の取り込みを開始する、といった制御を行える。これにより、効率的な制御が可能となる。
【0025】
なお、複数階建ての建物である場合、屋内温度検出手段による屋内温度の検出は、一階部分又はその上階部分の少なくともいずれか一方で検出されればよい。もっとも、両階の温度を別々に検出して建物内の温度を均一化させるといったきめ細かな制御を実現できるよう、両階部分それぞれに温度検出手段が設けられることが好ましい。
【0026】
第8の発明では、前記屋内空間部は、建物一階部分と二階部分とを連通する吹き抜け空間のうちの一階部分にあたり、前記吹き抜け空間の二階部分を有する建物内空間の天井部には、開閉式の天窓部及びファン装置が設けられた建物であって、前記制御手段は前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も駆動制御するものとし、前記屋内温度検出手段によって検出された屋内温度に応じて、前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も併せて制御するようにした。
【0027】
この第8の発明によれば、天窓部の開閉やファン装置の回転動作の制御がさらに組み合わされることで、より細やかな通気制御を実現できる。例えば、夏季には、天窓部を開状態とし、かつファン装置を上昇気流が発生するように回転駆動させれば、吹き抜け空間とされた屋内空間部への空気の取り込みを促進させることができる。また、冬季には、逆に天窓部を閉状態とし、かつファン装置を下降気流が発生するように回転駆動させれば、天井側に滞留する暖かい空気を一階部分へ送り出すことができる。その場合には、蓄熱材からの放熱による屋内空間部の温度変化も考慮できる。
【0028】
第9の発明では、前記屋内空間部は一の建物ユニットによって構成され、その建物ユニットは建物一階部分から二階部分へ通じる階段が設けられた階段ユニットであるとした。
【0029】
この第9の発明によれば、屋内空間部が階段ユニットとされていることにより、一階部分を構成する他の建物ユニットに階段を設置する必要がなくなる。このため、他の建物ユニットには、階段設置による制約のない広い屋内空間を形成することができる。
【0030】
第10の発明では、前記階段ユニットを含め、建物を構築する建物ユニットが直方体状に形成されており、前記階段ユニットの一桁面に対し、それ以外の複数の通常建物ユニットをその妻面が合わさるように連結させ、前記階段ユニットの長辺側天井大梁と平行をなす前記各通常建物ユニットの短辺側天井大梁同士をさらに連結して、その連結部分における前記各通常建物ユニットの柱が除去されている。
【0031】
この第10の発明によれば、階段ユニットとそれ以外の複数の通常建物ユニットとが連結された状態で、いわゆるワイドスパンとされることにより、同一階部分に、柱を除去した大空間が形成される。これにより、建物内空間を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】住宅の全体構造を示す分解斜視図。
【図2】主構成部の各階部分における平面概略図。
【図3】住宅の間取りを示す平面図。
【図4】階段空間の床下部分周辺の基礎を示す平面図。
【図5】通気装置の概略図(図4のA−A断面図)であり、(a)は非通気状態を、(b)は通気状態を示す。
【図6】流水ゲート装置の概略図(図4のB−B断面図)であり、(a)はゲート閉状態を、(b)はゲート開状態を示す。
【図7】通気制御システムの電気的構成を示すブロック図。
【図8】夏季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(南北方向切断)。
【図9】夏季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(東西方向切断)。
【図10】夏季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(南北方向切断)であり、水を流入させた状態を示す。
【図11】冬季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(南北方向切断)。
【図12】冬季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(東西方向切断)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の建物を具体化した一実施の形態である、二階建て住宅(以下、住宅という)について、図面を参照しながら説明する。この住宅は、複数の建物ユニットが連結されてなるユニット式建物として構築されている。
【0034】
はじめに、この住宅の全体構造及び間取りを、図1乃至図3を参照して説明する。
【0035】
図1は、住宅の全体構造を示す分解斜視図である。この図1に示されているように、住宅10は、直方体状をなす建物ユニット11が複数連結されてなり、屋内に設けられる部屋等の種類によって複数(この実施形態では3つ)の構成部21〜23に区分されている。具体的には、主構成部21、付属構成部22及び縁側構成部23より構成されている。
【0036】
主構成部21は、リビング、ダイニング、寝室、子供室、階段等の主要な住人生活空間が設けられる部分である。一階部分31及び二階部分32よりなり、各階部分31,32で、複数の建物ユニット11が連結されている。具体的には、中央の第1建物ユニット11aの桁面両側それぞれに対して、複数の第2建物ユニット11bがその妻面を合わせるようにして配置されている。つまり、第1建物ユニット11aの妻方向と第2建物ユニット11bの妻方向とが直交するように配置されている。
【0037】
図2は、主構成部21の各階部分31,32における平面概略図である。この図2に示されているように、個々の建物ユニット11はその四隅に柱12を有している。ただ、ワイドスパンとされて、平面中央部Aに存在する柱12が除去されている。この場合、桁面同士が合わさった第2建物ユニット11bにおいて、その短辺側の天井大梁同士が連結板13で連結されている。これにより、柱12が除去されていても、十分な強度が確保されている。そして、このようなワイドスパンにより、主構成部21の各階部分31,32では、その平面全域にわたる大空間Rを形成することが可能となっている。
【0038】
図1に戻り、前記付属構成部22は、前記主構成部21には含まれない機能的空間、例えば、エントランス、トイレや浴室等が主として設けられる部分である。場合によっては、この付属構成部22にも、洋室や書斎等の居室や階段などが設けられることもある。主構成部21と同様に上下階部分31,32よりなり、2つの付属構成部22(図では22a,22b)を有している。その両付属構成部22a,22bの間に所定間隔をあけた状態で、それぞれが前記主構成部21の北面に連結されている。
【0039】
また、前記縁側構成部23は、縁側が設けられる部分である。一階部分31のみからなり、2つの縁側構成部23(図では23a,23b)を有している。縁側である以上、その日当たりを確保する必要がある。このため、両縁側構成部23a、23bの間に所定間隔をあけた状態で、それぞれが前記主構成部21の一階南面に連結されている。
【0040】
住宅10は、このような全体構造を有し、その間取りは次のようになっている。図3はその間取りを示す平面図であり、一階部分31及び二階部分32をそれぞれ示している。
【0041】
この図3に示されているように、一階部分31には、前記主構成部21において、リビング41、階段空間42、ダイニング43及びキッチン44が、順に横並びで設けられている。キッチン44には、パントリー(食品庫)45が併設されている。
【0042】
階段空間42は吹き抜け空間Fとされており、一階部分31と二階部分32とが上下に連通している(後述する図8及び図9参照)。この階段空間42に設置されている階段61は、踏板間に隙間が形成されたオープン階段である。これにより、階段空間42を通じた上下階の通気性が高められている。主構成部21では、ワイドスパンによって大空間Rとされているため、各部屋41〜44を仕切る内壁が存在しないものの、階段空間42は横引き開閉式の間仕切りパネル62によって隣接する部屋と仕切られている。
【0043】
また、階段空間42の南側には、開閉可能な採光窓63が設けられている。この採光窓63は縦長形状に形成され、一階部分31の床部から天井部の略全域にわたる縦幅を有している。横幅も、太陽光を階段空間42へ取り込むのに十分な寸法が確保されており、比較的大開口とされている。このため、冬季のように太陽高度が低い場合には、太陽光を階段空間42の奥側まで取り込むことが可能となる。
【0044】
なお、階段空間42は、前記第1建物ユニット11aにより形成される空間部である。このため、一階部分31での第1建物ユニット11aは階段ユニットに相当し、第2建物ユニット11bは通常ユニットに相当する。
【0045】
一対の付属構成部22a,22bにおいては、その一方の第1付属構成部22aにエントランス46が設けられ、他方の第2付属構成部22bにはトイレ47や浴室48等が設けられている。両付属構成部22a,22bの間に挟まれた屋外空間には、水盤W1が設けられている。また、一対の縁側構成部23a,23bにおいては、そのいずれにも縁側49が設けられている。両縁側構成部23a,23bの間に挟まれた屋外空間にも、水盤W2が設けられている。付属構成部22側の前記水盤W1と、縁側構成部23側の前記水盤W2は、いずれも前記主構成部21における階段空間42を南北から挟むようにして設けられている。
【0046】
一方、二階部分32には、前記主構成部21において、主寝室51、吹き抜け空間Fの上階部分を有する階段部52、オープンスペース53及び第1洋室54が順に横並びで設けられている。階段部52の天井部には、開閉式の天窓部64が設けられている。この天窓部64は開閉駆動部65を有しており、それにより天窓部64が開閉駆動されるようになっている。また、同じく階段部52の天井部には、シーリングファン66が設けられている(後述する図8及び図9参照)。これら天窓部64やシーリングファン66を用いることにより、吹き抜け空間Fを通じて、一階部分31と二階部分32との間で空気流が形成される。なお、階段部52は、一階部分31と同じく、第1建物ユニット11aにより形成されている。
【0047】
一対の付属構成部22a,22bでは、その一方の第1付属構成部22aに書斎55が設けられ、他方の第2付属構成部22bには前記オープンスペース53の一部となる空間及び前記第1洋室54に並ぶ第2洋室56が設けられている。
【0048】
以上が本実施形態における住宅10の全体構造及び間取りである。次いで、この住宅10が備える特徴的構成を、より詳細に見ていくことにする。
【0049】
まず、前記一階部分31における階段空間42において、その床部は、多数の開口部を有する開口板部材67によって構成されている。例えば、金属や合成樹脂等によって形成されたグレーチングを採用することができる。そして、その床下では、地面に蓄熱材としてのコンクリートが敷き詰められることにより、土間71が形成されている(後述する図5及び図6参照)。その土間71と階段空間42の床部との間は土間空間72が形成され、その土間空間72と階段空間42との間では、開口板部材67の開口部を通じて通気が常に確保されている。また、採光窓63より取り込まれた太陽光は、開口板部材67の開口部を通過して土間空間72に導入され、土間71の上面に照射される。
【0050】
なお、この説明によれば、階段空間42は屋内空間部に、前記開口板部材67の開口部が第1通気部に、また、採光窓63が採光部にそれぞれ相当する。
【0051】
これに加え、前記土間空間72は、それに隣接する空間領域との間でも通気可能とされている。さらには、階段空間42の床下にある土間空間72も、前記水盤W1,W2に隣接してその両者に挟まれて配置されているが、これら両水盤W1,W2から土間空間72へ水を流入させることも可能となっている。それらを実現する構成は、次の通りである。
【0052】
図4は、階段空間42の床下部分周辺の基礎を示す平面図である。ここでは、基礎の立ち上り部を水平面で切断した断面図として図示されている。この図4に示されているように、階段空間42の床下に設けられた前記土間空間72を囲うようにして、基礎Kが設けられている。その周囲を囲う基礎Kは、平面視において長方形状をなしている。長辺部分Kaにより、階段空間42と隣接するリビング41やダイニング43の床下空間73,74と土間空間72とが仕切られている。また、短辺部分Kbにより、屋外空間と土間空間72とが仕切られている。その仕切られた屋外空間には、前記水盤W1,W2が設けられている。
【0053】
基礎Kの長辺部分Ka及び短辺部分Kbには、それぞれ溝部75(図では75a〜75f)が設けられている。長辺部分Kaに設けられた溝部75a〜75dを通じて、土間空間72と床下空間73,74とが連通されている。また、短辺部分Kbに設けられた溝部75e,75fを通じて、土間空間72と水盤W1,W2が設けられた屋外空間とが連通されている。この連通により、図示のように、空気や水の流入が可能となる。
【0054】
なお、この説明によれば、リビング41やダイニング43が第2屋内空間部に相当する。また、水盤W1,W2が設けられた屋外空間が空間領域に相当し、そのうち水盤W1,W2の上方空間が土間空間72に隣接する部分に相当する。床下空間73,74も、領域全体が土間空間72に隣接する空間領域に相当する。さらに、基礎Kの長辺部分Kaや短辺部分Kbが仕切部に相当する。
【0055】
より具体的にみると、これら各溝部75a〜75fには通気装置76が設けられるとともに、短辺部分Kbの溝部75e,75fについてはさらに流水ゲート装置77も併せて設けられている。これらの装置76,77は次のような構成を有している。
【0056】
図5は、図4におけるA−A断面図であり、通気装置76の概略を示している。図中の(a)は非通気状態を、(b)は通気状態を示している。この図5に示されているように、土間空間72を囲う基礎Kの長辺部分Kaには、その天端に第1建物ユニット11a及び第2建物ユニット11bがそれぞれ据え付けられている。この長辺部分Kaに設けられた溝部75a,75cに、通気装置76が設置されている。
【0057】
通気装置76は、取込部及び第2通気部としての通気口81と、通気開閉体としてのスラット82と、電気モータ等で構成されるスラット駆動部83とを備えている。スラット駆動部83の動作によりスラット82が駆動して通気口81が開閉され、通気状態と非通気状態とが切り替えられる。通気口81は土間空間72と床下空間73,74との間を連通する開口であり、その通気口81に複数(図では例示的に2つ)のスラット82が設けられている。各スラット82は、その長手方向を長辺部分Kaの延びる方向に向け、上下方向に並んで配置されている。当初の非通気状態では、図5(a)に示されているように、上下に隣接するスラット82はその一部が重なっている。そして、前記長手方向に延びる回動軸を有しており、その回動軸を中心として回動可能に設置されている。スラット駆動部83は、その各スラット82を回転駆動させる。
【0058】
そして、各スラット82が回動して傾斜状態になると、図5(b)に示されているように、上下に隣接するスラット82間に隙間が形成される。この隙間を通じて、床下空間73,74の空気を土間空間72に流入させることができる。その通気状態から、各スラット82を逆方向に回動すれば、再び、非通気状態に戻すことができる。
【0059】
続いて、図6は、図4におけるB−B断面図であり、流水ゲート装置77の概略を示している。図中の(a)はゲート閉状態を、(b)はゲート開状態を示している。ここでは、一方の溝部75bだけが図示されているが、他方の溝部75dについても同様の構成を備えている。
【0060】
図6に示されているように、土間空間72を囲う基礎Kの短辺部分Kbには、その天端に第1建物ユニット11aが据え付けられている。この短辺部分Kbに設けられた溝部75eに、流水ゲート装置77が設置されている。そこには、前記通気装置76も併せて設置されている。通気装置76の構成に関しては、前述した通りである。
【0061】
両装置76,77の設置態様として、流水ゲート装置77の上に通気装置76が設置され、通気装置76の前記通気口81が水盤W1の水面よりも上方に配置される。これにより、流水ゲート装置77を用いて水盤W1の水が土間71側に取り入れられる一方、通気装置76を用いて水盤W1上の空気が土間空間72に取り入れられる。このように、溝部75bは2つの装置76,77が上下に設置されるため、前記長辺部分Kaに設けられた溝部75a,75cよりも深く形成されている。
【0062】
流水ゲート装置77は、流入口84と、流入口開閉体としての流水ゲート85と、電気モータ等で構成されるゲート駆動部86とを備えている。流入口84及び流水ゲート85は、取込部に相当する。流入口84は水盤W1の水を流入させる開口であり、水盤W1を形成する水槽87に設けられた開口部87aを通じて水槽87の内部と連通している。流入口84を形成する底面は、土間71の上面と同じ高さに設定されている。
【0063】
流水ゲート85はその流入口84を開閉する開閉板部材であり、図6(a)に示されているように、流入口84の下端から起立して設けられている。その起立状態では、流入口84が閉じられる。この場合、水槽87に水を張って水盤W1が形成されると、水槽87の開口部87aより流入口84に水が流れ込むが、流水ゲート85によって堰き止められる。これにより、水盤W1の水が土間71側に流れ込むことが防止される。
【0064】
一方、流水ゲート85は、その下端部を支点として、起立した状態から土間71側に倒れ込むことが可能となっている。その動作はゲート駆動部86の駆動によって行われ、倒れ込みにより、図6(b)に示されているように、流入口84は開状態となる。すると、流水ゲート85によって堰き止められていた水が土間側に流入する。この場合、土間71側に流入した水は、土間71に設けられた排水口78(前述した図4参照)より排出される。その排出された水は、再び水盤W1に注がれるように循環させてもよいし、そのまま下水等に排水してもよい。継続して水が流れ込むように、水槽87には随時、水(循環水、水道水、井戸水等)が補給される。
【0065】
なお、流水ゲート85が土間71側に倒れ込んで流入口84が開けられたゲート開状態より、その流水ゲート85を起立させると、再び流入口84が閉じられてゲート閉状態に戻る。
【0066】
次に、住宅10に設けられた上記各装置を駆動制御することにより、住宅10の通気を制御する通気制御システムについて説明する。図7は、通気制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
【0067】
図7に示されているように、この通気制御システムは、制御手段としてのコントローラ91を備えている。コントローラ91は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、リビング41等の居室壁面に設けられている。
【0068】
コントローラ91には、前記天窓部64の開閉駆動部65、前記シーリングファン66、前記通気装置76のスラット駆動部83及び前記流水ゲート装置77のゲート駆動部86がそれぞれ接続されている。コントローラ91は、指令信号を出力することにより、これら各駆動部65,83,86やシーリングファン66の動作制御を行う。また、モニタ装置を接続してもよく、その場合には、当該モニタ装置に制御状況等を表示することにより、住人がその通気制御の状況等を把握できる。
【0069】
このコントローラ91には、住宅10の屋内温度を検出する温度センサ92,93が接続されている。屋内温度検出手段としての温度センサ92,93は、住宅10の一階部分31及び二階部分32にそれぞれ設置されている。一階部分31の温度センサ92は、例えば、リビング41等の居室壁面に設けられ、二階部分32の温度センサ93は、例えば、オープンスペース53等の居室に設けられている。コントローラ91は、これら各温度センサ92,93より温度検出信号を取得することで、センサ設置箇所における室温を把握することができる。そして、検出された室温に基づいて、前記各駆動部65,83,86やシーリングファン66の動作制御し、住宅10における室温環境を制御する。
【0070】
次いで、コントローラ91において実行される通気制御の内容と、それによる空気の流れについて、図8乃至図12を参照しながら説明する。なお、この通気制御の内容は夏季と冬季とで異なっているため、説明は季節ごとに分けて行う。図8乃至図10は夏季における空気の流れを示している。そのうち、図8及び図10は南北方向に沿った住宅10の縦断面図であり、図9は東西方向に沿った縦断面図である。一方、図11及び図12は冬季における空気の流れを示している。そのうち、図11は南北方向に沿った住宅10の縦断面図であり、図12は東西方向に沿った縦断面図である。
【0071】
まず、夏季における制御内容は、次の通りである。温度センサ92,93による室温検出により、一階部分31又は二階部分32のいずれかで室温が所定値(例えば、28度)を超えると、通気状態を形成する動作を実施する。この場合、通気装置76のスラット駆動部83を駆動することにより、スラット82を回動させて通気状態とする。さらに、天窓部64の開閉駆動部65を駆動することにより、天窓部64を開状態とする。
【0072】
すると、図8に示されているように、水盤W1,W2の上方を通過して冷やされた空気が、基礎Kの短辺部分Kbに設けられた通気装置76の通気口81を通じ、土間空間72に流入する。また、図9に示されているように、床下空間73,74の冷やされた空気も、基礎Kの長辺部分Kaに設けられた通気装置76の通気口81を通じ、土間空間72に流入する。
【0073】
そして、両図に示されているように、その流入した空気は、土間空間72の冷やされた空気とともに、開口板部材67の開口部を通じて階段空間42に流入する。さらに、オープン階段61、及び吹き抜け空間Fを通じて二階部分32の階段部52へ上昇する。その流れの途中で室内の空気を伴いながら、最終的には天窓部64より排気される。この場合、縦に長い吹き抜け空間Fとその天井部分の天窓部64とで煙突効果が得られ、上昇気流が生じやすくなっている。これに併せて、シーリングファン66を上昇気流が生じる方向に回転駆動させれば、空気の流れがさらに促進される。こうして、水盤W1,W2で冷やされた空気や、土間空間72の冷やされた空気を室内に取り込むことにより、室内の温度を低下させることができる。
【0074】
もっとも、夏季の暑い時期には、このような空気流が形成されても室温低下の効果が十分に得られず、一階部分31又は二階部分32における室温が前記所定値を超えた状態が継続する場合もある。そのような場合には、水盤W1,W2の水を土間71側へ流入させる流水状態を形成する。つまり、流水ゲート装置77のゲート駆動部86を駆動することにより、流水ゲート85を開状態とする。
【0075】
すると、図10に示されているように、水盤W1,W2の水が土間空間72に流れ込み、土間71は水が張られた状態となる。そして、この流入した水は排水口78より排水されるとともに、水盤W1、W2からは継続して水が流入する。このため、土間71には小川のせせらぎのような水の流れが形成されることになる。この水の流れにより、土間空間72はより一層冷やされ、その冷やされた空気は、開口板部材67の開口部を通じて階段空間42に流入する。これにより、前述した通気とあいまって、室内の温度をより一層低下させることができる。
【0076】
続いて、冬季における制御内容は、次の通りである。一般に、暖かい空気は上昇するため、一階部分31よりも二階部分32の室温の方が高い。そこで、温度センサ92,93による室温検出により、一階部分31の室温と二階部分32の室温との差が所定値(例えば、5度前後)を超えると、シーリングファン66を下降気流が生じる方向に回転駆動させる。これにより、図11及び図12に示されているように、二階部分32に滞留する暖かい空気が一階部分31の部屋に送り込まれるため、一階部分31と二階部分32との寒暖の差を縮めることができる。
【0077】
なお、この冬季の期間中、屋外空間の空気や水盤W1,W2の水を取り入れる装置76,77(基礎Kの短辺部分Kbに設けられたもの)は、通常、非通気状態及び非流入状態を維持する。また、天窓部64も、通常は、閉状態を維持することになる。
【0078】
ここで、冬季においては、夏季に比べて太陽高度が低くなる。このため、図11に示されているように、日中は、階段空間42の南側に設けられた採光窓63より、階段空間42の奥側まで太陽光が取り込まれるようになる。
【0079】
すると、その取り込まれた太陽光は、開口板部材67の開口部を通過して土間空間72に導入され、土間71の上面に照射される。土間71は熱容量が高くて蓄熱機能を有するコンクリートによって構成されているため、太陽光による熱は土間71に蓄えられる。この蓄えられた熱が放射されることにより、この放射熱が開口板部材67の開口部を通じて階段空間42に至り、階段空間42、ひいては、その階段空間42と連通する他の部屋を暖めることができる。日没後においても、土間71に蓄えられた熱の放射は継続して行われるため、その放射熱によって、日中と同様に、階段空間42や他の部屋を暖めることができる。
【0080】
また、図12に示されているように、床下空間73,74に暖房装置101が設置された場合であれば、その床下空間73,74が暖房装置101の熱で暖められることになる。この場合、一階部分31の室温が所定値(例えば、20度)を下回ると、コントローラ91は、暖房装置101を駆動する。併せて、床下空間73,74の空気を取り込む通気装置76(基礎Kの長辺部分Kaに設けられたもの)のスラット駆動部83を駆動することにより、スラット82を回動させて通気状態とする。
【0081】
これにより、暖められた床下空間73,74の空気が通気口81を通じて土間空間72に流入し、それが開口板部材67の開口部を通じて階段空間42や他の部屋に取り込まれる。その取り込まれた空気により、一階部分31を暖めることができる。この住宅10では、階段空間42と土間空間72とが、開口板部材67の開口部によって常時通気状態とされているため、特に、冬季では、土間空間72の冷たい空気の影響を受けて、階段空間42が冷やされるという懸念がある。床下空間73,74の暖かい空気を導入すれば、このような懸念を排除して、冬季でも快適な室内環境を形成できる。
【0082】
以上をまとめると、この実施の形態によれば、以下に示す有利な効果が得られる。
【0083】
(1)階段空間42の床下には土間空間72が設けられるとともに、階段空間42の床部は開口板部材67により構成され、階段空間42と土間空間72との間が通気可能となっている。また、土間空間72とそれに隣接する空間(水盤W1,W2の上方空間や床下空間73,74)とを仕切る基礎Kには通気装置76が設けられ、その通気口81により両者間が通気可能とされている。これにより、その隣接空間の快適な空気が、土間空間72、階段空間42、他の部屋へと順に取り込まれ、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0084】
(2)階段空間42の床部が開口板部材67により構成されて、土間空間72からそこに空気が取り入れられる。多数の開口部を有する開口板部材67が、リビング41やダイニング43等の居室の床部に設けられていると、それら開口部の存在によって日常生活が不便となりがちであるが、そのような不便さを低減できる。
【0085】
(3)階段空間42は吹き抜け空間Fとされ、その二階部分となる階段部52の天井部には、開閉式の天窓部64が設けられている。このため、天窓部64を開状態とすれば、その天窓部64と吹き抜け空間Fとの煙突効果により、土間空間72及び階段空間42への空気を取り込みを促進できる。しかも、設置される階段61はオープン階段であるため、階段61の存在によって通気性が阻害されることも防止できる。
【0086】
(4)土間空間72に隣接して水盤W1,W2が屋外に設けられ、通気装置76のスラット82を開状態とすれば、水盤W1,W2の上方を通過して冷やされた空気が、土間空間72に導入される。これにより、特に夏季においては、屋内よりも快適な空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0087】
その上、流水ゲート装置77の流水ゲート85も併せて開状態とすれば、前記水盤W1,W2の水が土間空間72に流入する。これにより、土間空間72の空気がより冷やされることになり、その空気を階段空間42に取り込んで、快適さをより向上させることができる。
【0088】
(5)階段空間42と隣り合うリビング41やダイニング43の床下空間73,74が土間空間72に隣接し、通気装置76のスラット82を開状態とすれば、その床下空間の空気が土間空間72に導入されるようになっている。これにより、特に、夏季においては、床下の冷やされた空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0089】
(6)階段空間42は、一階部分31を構成する屋内空間において、平面上の略中央部に配置されている。このため、その床下にある土間空間72の周囲には、その土間空間72を挟む込むようにして水盤W1,W2や床下空間73,74が配置される。これにより、より多くの空間領域からそこに存在する快適な空気を土間空間72へ取り込むことができる。
【0090】
(7)階段空間42の南側には、その階段空間42に太陽光を取り込んで床部に届かせる採光窓63が設けられ、その取り込まれた太陽光が開口板部材67の開口部を通じて土間71に照射されるようになっている。土間71はコンクリートにより構成されているため、その照射された太陽光の熱は土間71に蓄えられる。これにより、特に太陽高度が低い冬季では、土間71に蓄えられた熱が土間空間72、ひいては階段空間42に向けて放射されることで、屋内を暖めることができる。
【0091】
(8)階段空間42は、第1建物ユニット(階段ユニット)11aによって構成されているため、第2建物ユニット11bに階段61を設置する必要がなくなる。これにより、第2建物ユニット11bでは、階段61を設置することによる制約のない、広い屋内空間を形成できる。
【0092】
(9)住宅10の主構成部21では、第1建物ユニット11aの桁面に対して、複数の第2建物ユニット11bがその妻面を合わさせるように配置されている。さらに、各第2建物ユニット11bにおいて、その短辺側の天井大梁同士を連結部材13で連結してその連結部分の柱12を除去し、ワイドスパンによる大空間Rを形成している。これにより、屋内空間を有効利用できる。
【0093】
(10)通気制御システムを備えており、一階部分31又は二階部分32で検出された室温に応じて、天窓部64、シーリングファン66、通気装置76及び流水ゲート装置77の各装置がコントローラ91によって駆動制御されるようになっている。これにより、屋内環境を向上させることができる。例えば、夏季において、当初は空気の取り入れのみとし、それでも不十分な場合に水を流し入れる、といった制御が行える。これにより、効率的な通気制御が可能となる。
【0094】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0095】
(a)上記実施の形態では、吹き抜け空間Fとされた階段空間42を第1屋内空間部としたが、例えば、パントリー45等の収納庫など、他の建物内空間を第1屋内空間部としてもよい。つまり、第1屋内空間部が吹き抜け空間Fである必要はない。住宅10が一階建ての平屋とされた場合、一般にはその屋内に階段61が設置されないため、階段空間42ではない他の屋内空間が第1屋内空間部とされることになる。また、倉庫等のように居住性を考慮する必要がない建物の場合には、一階部分31に設けられた空間部全域が第1屋内空間部とされる構成であってもよい。
【0096】
(b)上記実施の形態では、住宅10は通気制御システムを備え、室内温度が所定値を超えると自動的に各装置64,66,76,77が駆動制御されるが、住人が所定の入力操作をした場合にもそれらが駆動制御されるようにしてもよい。また、コントローラ91の制御による通気制御システムそのものは必須の構成ではなく、天窓部64、通気装置76及び流水ゲート装置77が、それぞれ個別に手動で開閉される構成を採用してもよい。
【0097】
(c)上記実施の形態では、土間空間72に隣接して水盤W1,W2が設けられているが、この水盤W1,W2を省略してもよい。床下空間73,74の冷やされた空気を室内に取り込むだけでも、冷却効果が得られるからである。また、水盤W1,W2の上方を通過した空気と床下空間73,74の空気の両者が取り込まれる構成とすることも必須ではなく、少なくともそのいずれかの空気が取り込まれるようにすれば足りる。
【0098】
(d)上記実施の形態では、流水ゲート装置77を設けて水盤W1,W2の水を土間空間72に流入させるようにしているが、その構成を省略してもよい。水盤W1,W2の上方を通過して冷やされた空気や、床下空間73,74の冷やされた空気を室内に取り込むだけでも、冷却効果が得られるからである。
【0099】
(e)上記実施の形態では、土間71はコンクリートが敷き詰められただけの構成であるが、そこにタイル等を貼り付けた構成を採用してもよい。タイル等のセラミック材もコンクリートと同様に熱容量が高いため、蓄熱材としての役割をもたせることが可能だからである。
【0100】
(f)上記実施の形態では、通気装置76においてスラット82が開状態とされると、自然な空気の流れで空気が取り込まれるようになっているが、ここにファン装置を設置することにより強制的に空気流を形成するようにしてもよい。前記天窓部64は必須の構成ではなく、これを省略することも可能であるが、その天窓部64を省略すると自然な上昇気流が形成されにくくなるため、かかるファン装置を設置することが好ましい。
【0101】
(g)上記実施の形態では、住宅10が南向き、つまり、リビング41等が南側に面して建てられているが、例えば、南東・北東方向等、他の方角を向いた状態で建ててもよい。採光窓63より階段空間42に太陽光を取り込むという点では、住宅10を南向きとすることが好ましいが、敷地による制約があるし、土間空間72への空気の取り込みという点では、住宅10の向きはあまり問題にならないからである。
【0102】
(h)上記実施の形態では、ユニット式建物として構築された住宅10を建物の例として説明したが、商店や倉庫等の住宅以外の建物であってもよいし、鉄骨軸組工法や在来工法等によって建てられた建物であってもよい。また、二階建てではなく、一階建ての平屋でも三階建て以上の複数階建てであってもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…住宅(建物)、11…建物ユニット、11a…第1建物ユニット(階段ユニット)、11b…第2建物ユニット(通常建物ユニット)、31…一階部分、32…二階部分、42…階段空間(屋内空間部)、63…採光窓(採光部)、64…天窓部、67…開口板部材(開口部が第1通気部に相当)、71…土間、72…土間空間、81…通気口(取込部、第2通気部)、82…スラット(通気開閉体)、84…流入口(取込部)、85…流水ゲート(取込部、流入口開閉体)、91…コントローラ(制御手段)、92,93…温度センサ(屋内温度検出手段)、F…吹き抜け空間、K…基礎(仕切部)、W…水盤。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物一階部分に設けられた空間部の床下に土間を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物では、その屋内の空気環境を向上させて快適に過ごせるようにするために、各種の対策が提案されている。例えば、エアコンや床暖房等の冷暖房装置を屋内空間部に設置することは、広く一般的に普及した対策の一つといえる。また、玄関土間に井戸水等の冷却水を流通させる配管を埋設して、夏季の炎天下でも、涼しい玄関土間を形成する対策も、その一つとして提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したエアコンや床暖房等の冷暖房装置には、その駆動に電力やガスが必要となり、エネルギを消費する。近年では、これらの冷暖房装置にも省エネルギ化が実現されているが、それでもエネルギの消費は避けられない。また、冷却水を流通させる配管を埋設する場合であっても、井戸水が存在しない場所には適用できないし、過剰な使用は井戸水を枯らしてうこともあり、汎用性に乏しいという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、電力等のエネルギ使用を控えながら、屋内の空気環境を向上させて快適さを実現できる建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、第1の発明では、建物一階部分に設けられた屋内空間部と、その屋内空間部の床下に設けられた土間と、前記屋内空間部の床部と前記土間との間に設けられた土間空間と、前記屋内空間部の床部に設けられ、その屋内空間部と前記土間空間との間で上下方向に通気させる第1通気部と、前記土間空間へ同土間空間外から水または空気を取り込む取込部と、を備えた。
【0008】
この第1の発明によれば、取込部を介して土間空間外から土間空間へ水または空気が取り込まれることで、その土間空間の空気環境が変更され、それが第1通気部を介して屋内空間部に反映される。これにより、土間空間を通じて屋内の空気環境を向上させることができる。
【0009】
第2の発明では、少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接する空間領域が形成され、前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記土間空間と前記空間領域との間で横方向に通気させる第2通気部であるとした。
【0010】
この第2の発明によれば、空間領域のうち土間空間に隣接する部分の空気が第2通気部を通じてその土間空間に取り込まれると、取り込まれた空気は第1通気部を通じて屋内空間部へ取り込まれる。さらには、屋内空間部と通気可能とされた建物内の他の空間部へも通気される。これにより、土間空間に隣接する部分での空気環境が、建物内のそれよりも快適さを備えている場合には、その空気環境を取り入れて、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0011】
なお、前記空間領域は水盤を有する屋外空間であって、前記土間空間と隣接する部分は前記水盤の上方空間であることが好ましい。これにより、水盤の上方を通過して冷やされた空気が、前記第2通気部を通じて土間空間に取り込まれるようになる。これにより、特に夏季においては、屋内よりも快適さを備えた空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0012】
また、前記空間領域は、前記屋内空間部(第1屋内空間部)と横並びで隣接する別の屋内空間部(第2屋内空間部)の床下に設けられて、その空間領域全体が前記土間空間と隣接する床下空間であることが好ましい。これにより、第2屋内空間部の床下空間の空気が、前記第2通気部を通じて土間空間に取り込まれる。特に、夏季においては、床上空間の空気に比べて、地面に接して存在する床下空間の空気は冷やされた状態にある。この冷やされた床下空間の空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0013】
次に、第3の発明では、少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接し、水盤を有する屋外空間が形成され、前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記水盤の水を前記土間空間へ流し入れる流入口と、その流入口を開閉する流入口開閉体とを有するとした。
【0014】
この第3の発明によれば、流入口開閉体を開状態とすることで、水盤の水が流入口を通じて土間空間に流入する。これにより、土間は水が張られた状態となるため、特に夏季においては、その水によって土間空間の空気をより冷やすことができる。その冷やされた空気を屋内空間部に取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0015】
この場合、土間空間に流入した水を排水し、水盤からは継続して水が流入するようにすることが好ましい。これにより、土間には小川のせせらぎのような水の流れが形成されることになり、空気冷却効果が高められるし、水がよどむことの防止にもつながる。
【0016】
第4の発明では、前記屋内空間部は、建物二階部分に連通する吹き抜け空間の一部とされ、前記吹き抜け空間の二階部分を有する空間の天井部には、開閉式の天窓部が設けられている。
【0017】
この第4の発明によれば、屋内空間部は吹き抜け空間の一部とされ、天井部には天窓部が設けられているため、天窓部を開状態とすれば、その天窓部と吹き抜け空間との煙突効果により、土間空間及び屋内空間部への空気を取り込みを促進させることができる。
【0018】
この場合、前記屋内空間部は、一階部分から二階部分へ通じる階段が設けられる階段空間であることが好ましい。このような階段空間であれば、リビングやダイニング等の居室と異なり、その床部に前記第1通気部が設けられていても、日常生活に不便をきたすおそれを低減できる。特に、多数の開口部を有する開口板部材(例えば、グレーチング)が設けられて、その各開口部が前記第1通気部とされている場合には、そのメリットは大きい。なお、前記階段は、オープン階段であることが好ましい。これにより、通気性が阻害されないからである。
【0019】
第5の発明では、前記屋内空間部は、建物一階部分を構成する建物内空間において、平面上の略中央部に配置されているとした。
【0020】
この第5の発明によれば、土間空間への空気の取り込み先を、土間空間の周囲に配置させることが可能となる。これにより、より多くの空気取込先から土間空間へ快適な空気を取り込んで、屋内環境をより向上させることができる。
【0021】
第6の発明では、建物一階部分には、太陽光を前記屋内空間部に取り込んでその床部に届かせる採光部が設けられ、前記土間は前記第1通気部を通じて照射された太陽光の熱を蓄えるとともに、その蓄えた熱を放射する放熱機能を有する蓄熱材によって構成されている。
【0022】
この第6の発明によれば、特に太陽高度が低い冬季において、採光部から屋内空間部に取り込まれた太陽光はその屋内空間部の床部に届き、さらに第1通気部を通じて土間の上面に照射される。土間は蓄熱材によって構成されているため、照射された太陽光の熱は土間に蓄えられる。この蓄えられた熱は、蓄熱材の放熱機能により、土間空間、ひいては第1通気部を通じて屋内空間部に向けて放射されるため、屋内を暖めることができる。
【0023】
第7の発明では、前記取込部は、水または空気の取り込み状態と、その取り込み停止状態とに切り替え可能に構成され、屋内の温度を検出する屋内温度検出手段と、前記屋内温度検出手段により検出された屋内温度に応じて、前記取込部を切替制御する制御手段と、を有する通気通水制御システムを備えた。
【0024】
この第7の発明によれば、検出された屋内温度に応じて、取込部からの水または空気の取り込みを制御して、屋内環境を向上させることができる。例えば、夏季において、土間空間の空気を屋内空間部に取り込むだけでは温度低下が不十分な場合に、土間空間外の水または空気の取り込みを開始する、といった制御を行える。これにより、効率的な制御が可能となる。
【0025】
なお、複数階建ての建物である場合、屋内温度検出手段による屋内温度の検出は、一階部分又はその上階部分の少なくともいずれか一方で検出されればよい。もっとも、両階の温度を別々に検出して建物内の温度を均一化させるといったきめ細かな制御を実現できるよう、両階部分それぞれに温度検出手段が設けられることが好ましい。
【0026】
第8の発明では、前記屋内空間部は、建物一階部分と二階部分とを連通する吹き抜け空間のうちの一階部分にあたり、前記吹き抜け空間の二階部分を有する建物内空間の天井部には、開閉式の天窓部及びファン装置が設けられた建物であって、前記制御手段は前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も駆動制御するものとし、前記屋内温度検出手段によって検出された屋内温度に応じて、前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も併せて制御するようにした。
【0027】
この第8の発明によれば、天窓部の開閉やファン装置の回転動作の制御がさらに組み合わされることで、より細やかな通気制御を実現できる。例えば、夏季には、天窓部を開状態とし、かつファン装置を上昇気流が発生するように回転駆動させれば、吹き抜け空間とされた屋内空間部への空気の取り込みを促進させることができる。また、冬季には、逆に天窓部を閉状態とし、かつファン装置を下降気流が発生するように回転駆動させれば、天井側に滞留する暖かい空気を一階部分へ送り出すことができる。その場合には、蓄熱材からの放熱による屋内空間部の温度変化も考慮できる。
【0028】
第9の発明では、前記屋内空間部は一の建物ユニットによって構成され、その建物ユニットは建物一階部分から二階部分へ通じる階段が設けられた階段ユニットであるとした。
【0029】
この第9の発明によれば、屋内空間部が階段ユニットとされていることにより、一階部分を構成する他の建物ユニットに階段を設置する必要がなくなる。このため、他の建物ユニットには、階段設置による制約のない広い屋内空間を形成することができる。
【0030】
第10の発明では、前記階段ユニットを含め、建物を構築する建物ユニットが直方体状に形成されており、前記階段ユニットの一桁面に対し、それ以外の複数の通常建物ユニットをその妻面が合わさるように連結させ、前記階段ユニットの長辺側天井大梁と平行をなす前記各通常建物ユニットの短辺側天井大梁同士をさらに連結して、その連結部分における前記各通常建物ユニットの柱が除去されている。
【0031】
この第10の発明によれば、階段ユニットとそれ以外の複数の通常建物ユニットとが連結された状態で、いわゆるワイドスパンとされることにより、同一階部分に、柱を除去した大空間が形成される。これにより、建物内空間を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】住宅の全体構造を示す分解斜視図。
【図2】主構成部の各階部分における平面概略図。
【図3】住宅の間取りを示す平面図。
【図4】階段空間の床下部分周辺の基礎を示す平面図。
【図5】通気装置の概略図(図4のA−A断面図)であり、(a)は非通気状態を、(b)は通気状態を示す。
【図6】流水ゲート装置の概略図(図4のB−B断面図)であり、(a)はゲート閉状態を、(b)はゲート開状態を示す。
【図7】通気制御システムの電気的構成を示すブロック図。
【図8】夏季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(南北方向切断)。
【図9】夏季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(東西方向切断)。
【図10】夏季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(南北方向切断)であり、水を流入させた状態を示す。
【図11】冬季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(南北方向切断)。
【図12】冬季における空気の流れを示す住宅の縦断面図(東西方向切断)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の建物を具体化した一実施の形態である、二階建て住宅(以下、住宅という)について、図面を参照しながら説明する。この住宅は、複数の建物ユニットが連結されてなるユニット式建物として構築されている。
【0034】
はじめに、この住宅の全体構造及び間取りを、図1乃至図3を参照して説明する。
【0035】
図1は、住宅の全体構造を示す分解斜視図である。この図1に示されているように、住宅10は、直方体状をなす建物ユニット11が複数連結されてなり、屋内に設けられる部屋等の種類によって複数(この実施形態では3つ)の構成部21〜23に区分されている。具体的には、主構成部21、付属構成部22及び縁側構成部23より構成されている。
【0036】
主構成部21は、リビング、ダイニング、寝室、子供室、階段等の主要な住人生活空間が設けられる部分である。一階部分31及び二階部分32よりなり、各階部分31,32で、複数の建物ユニット11が連結されている。具体的には、中央の第1建物ユニット11aの桁面両側それぞれに対して、複数の第2建物ユニット11bがその妻面を合わせるようにして配置されている。つまり、第1建物ユニット11aの妻方向と第2建物ユニット11bの妻方向とが直交するように配置されている。
【0037】
図2は、主構成部21の各階部分31,32における平面概略図である。この図2に示されているように、個々の建物ユニット11はその四隅に柱12を有している。ただ、ワイドスパンとされて、平面中央部Aに存在する柱12が除去されている。この場合、桁面同士が合わさった第2建物ユニット11bにおいて、その短辺側の天井大梁同士が連結板13で連結されている。これにより、柱12が除去されていても、十分な強度が確保されている。そして、このようなワイドスパンにより、主構成部21の各階部分31,32では、その平面全域にわたる大空間Rを形成することが可能となっている。
【0038】
図1に戻り、前記付属構成部22は、前記主構成部21には含まれない機能的空間、例えば、エントランス、トイレや浴室等が主として設けられる部分である。場合によっては、この付属構成部22にも、洋室や書斎等の居室や階段などが設けられることもある。主構成部21と同様に上下階部分31,32よりなり、2つの付属構成部22(図では22a,22b)を有している。その両付属構成部22a,22bの間に所定間隔をあけた状態で、それぞれが前記主構成部21の北面に連結されている。
【0039】
また、前記縁側構成部23は、縁側が設けられる部分である。一階部分31のみからなり、2つの縁側構成部23(図では23a,23b)を有している。縁側である以上、その日当たりを確保する必要がある。このため、両縁側構成部23a、23bの間に所定間隔をあけた状態で、それぞれが前記主構成部21の一階南面に連結されている。
【0040】
住宅10は、このような全体構造を有し、その間取りは次のようになっている。図3はその間取りを示す平面図であり、一階部分31及び二階部分32をそれぞれ示している。
【0041】
この図3に示されているように、一階部分31には、前記主構成部21において、リビング41、階段空間42、ダイニング43及びキッチン44が、順に横並びで設けられている。キッチン44には、パントリー(食品庫)45が併設されている。
【0042】
階段空間42は吹き抜け空間Fとされており、一階部分31と二階部分32とが上下に連通している(後述する図8及び図9参照)。この階段空間42に設置されている階段61は、踏板間に隙間が形成されたオープン階段である。これにより、階段空間42を通じた上下階の通気性が高められている。主構成部21では、ワイドスパンによって大空間Rとされているため、各部屋41〜44を仕切る内壁が存在しないものの、階段空間42は横引き開閉式の間仕切りパネル62によって隣接する部屋と仕切られている。
【0043】
また、階段空間42の南側には、開閉可能な採光窓63が設けられている。この採光窓63は縦長形状に形成され、一階部分31の床部から天井部の略全域にわたる縦幅を有している。横幅も、太陽光を階段空間42へ取り込むのに十分な寸法が確保されており、比較的大開口とされている。このため、冬季のように太陽高度が低い場合には、太陽光を階段空間42の奥側まで取り込むことが可能となる。
【0044】
なお、階段空間42は、前記第1建物ユニット11aにより形成される空間部である。このため、一階部分31での第1建物ユニット11aは階段ユニットに相当し、第2建物ユニット11bは通常ユニットに相当する。
【0045】
一対の付属構成部22a,22bにおいては、その一方の第1付属構成部22aにエントランス46が設けられ、他方の第2付属構成部22bにはトイレ47や浴室48等が設けられている。両付属構成部22a,22bの間に挟まれた屋外空間には、水盤W1が設けられている。また、一対の縁側構成部23a,23bにおいては、そのいずれにも縁側49が設けられている。両縁側構成部23a,23bの間に挟まれた屋外空間にも、水盤W2が設けられている。付属構成部22側の前記水盤W1と、縁側構成部23側の前記水盤W2は、いずれも前記主構成部21における階段空間42を南北から挟むようにして設けられている。
【0046】
一方、二階部分32には、前記主構成部21において、主寝室51、吹き抜け空間Fの上階部分を有する階段部52、オープンスペース53及び第1洋室54が順に横並びで設けられている。階段部52の天井部には、開閉式の天窓部64が設けられている。この天窓部64は開閉駆動部65を有しており、それにより天窓部64が開閉駆動されるようになっている。また、同じく階段部52の天井部には、シーリングファン66が設けられている(後述する図8及び図9参照)。これら天窓部64やシーリングファン66を用いることにより、吹き抜け空間Fを通じて、一階部分31と二階部分32との間で空気流が形成される。なお、階段部52は、一階部分31と同じく、第1建物ユニット11aにより形成されている。
【0047】
一対の付属構成部22a,22bでは、その一方の第1付属構成部22aに書斎55が設けられ、他方の第2付属構成部22bには前記オープンスペース53の一部となる空間及び前記第1洋室54に並ぶ第2洋室56が設けられている。
【0048】
以上が本実施形態における住宅10の全体構造及び間取りである。次いで、この住宅10が備える特徴的構成を、より詳細に見ていくことにする。
【0049】
まず、前記一階部分31における階段空間42において、その床部は、多数の開口部を有する開口板部材67によって構成されている。例えば、金属や合成樹脂等によって形成されたグレーチングを採用することができる。そして、その床下では、地面に蓄熱材としてのコンクリートが敷き詰められることにより、土間71が形成されている(後述する図5及び図6参照)。その土間71と階段空間42の床部との間は土間空間72が形成され、その土間空間72と階段空間42との間では、開口板部材67の開口部を通じて通気が常に確保されている。また、採光窓63より取り込まれた太陽光は、開口板部材67の開口部を通過して土間空間72に導入され、土間71の上面に照射される。
【0050】
なお、この説明によれば、階段空間42は屋内空間部に、前記開口板部材67の開口部が第1通気部に、また、採光窓63が採光部にそれぞれ相当する。
【0051】
これに加え、前記土間空間72は、それに隣接する空間領域との間でも通気可能とされている。さらには、階段空間42の床下にある土間空間72も、前記水盤W1,W2に隣接してその両者に挟まれて配置されているが、これら両水盤W1,W2から土間空間72へ水を流入させることも可能となっている。それらを実現する構成は、次の通りである。
【0052】
図4は、階段空間42の床下部分周辺の基礎を示す平面図である。ここでは、基礎の立ち上り部を水平面で切断した断面図として図示されている。この図4に示されているように、階段空間42の床下に設けられた前記土間空間72を囲うようにして、基礎Kが設けられている。その周囲を囲う基礎Kは、平面視において長方形状をなしている。長辺部分Kaにより、階段空間42と隣接するリビング41やダイニング43の床下空間73,74と土間空間72とが仕切られている。また、短辺部分Kbにより、屋外空間と土間空間72とが仕切られている。その仕切られた屋外空間には、前記水盤W1,W2が設けられている。
【0053】
基礎Kの長辺部分Ka及び短辺部分Kbには、それぞれ溝部75(図では75a〜75f)が設けられている。長辺部分Kaに設けられた溝部75a〜75dを通じて、土間空間72と床下空間73,74とが連通されている。また、短辺部分Kbに設けられた溝部75e,75fを通じて、土間空間72と水盤W1,W2が設けられた屋外空間とが連通されている。この連通により、図示のように、空気や水の流入が可能となる。
【0054】
なお、この説明によれば、リビング41やダイニング43が第2屋内空間部に相当する。また、水盤W1,W2が設けられた屋外空間が空間領域に相当し、そのうち水盤W1,W2の上方空間が土間空間72に隣接する部分に相当する。床下空間73,74も、領域全体が土間空間72に隣接する空間領域に相当する。さらに、基礎Kの長辺部分Kaや短辺部分Kbが仕切部に相当する。
【0055】
より具体的にみると、これら各溝部75a〜75fには通気装置76が設けられるとともに、短辺部分Kbの溝部75e,75fについてはさらに流水ゲート装置77も併せて設けられている。これらの装置76,77は次のような構成を有している。
【0056】
図5は、図4におけるA−A断面図であり、通気装置76の概略を示している。図中の(a)は非通気状態を、(b)は通気状態を示している。この図5に示されているように、土間空間72を囲う基礎Kの長辺部分Kaには、その天端に第1建物ユニット11a及び第2建物ユニット11bがそれぞれ据え付けられている。この長辺部分Kaに設けられた溝部75a,75cに、通気装置76が設置されている。
【0057】
通気装置76は、取込部及び第2通気部としての通気口81と、通気開閉体としてのスラット82と、電気モータ等で構成されるスラット駆動部83とを備えている。スラット駆動部83の動作によりスラット82が駆動して通気口81が開閉され、通気状態と非通気状態とが切り替えられる。通気口81は土間空間72と床下空間73,74との間を連通する開口であり、その通気口81に複数(図では例示的に2つ)のスラット82が設けられている。各スラット82は、その長手方向を長辺部分Kaの延びる方向に向け、上下方向に並んで配置されている。当初の非通気状態では、図5(a)に示されているように、上下に隣接するスラット82はその一部が重なっている。そして、前記長手方向に延びる回動軸を有しており、その回動軸を中心として回動可能に設置されている。スラット駆動部83は、その各スラット82を回転駆動させる。
【0058】
そして、各スラット82が回動して傾斜状態になると、図5(b)に示されているように、上下に隣接するスラット82間に隙間が形成される。この隙間を通じて、床下空間73,74の空気を土間空間72に流入させることができる。その通気状態から、各スラット82を逆方向に回動すれば、再び、非通気状態に戻すことができる。
【0059】
続いて、図6は、図4におけるB−B断面図であり、流水ゲート装置77の概略を示している。図中の(a)はゲート閉状態を、(b)はゲート開状態を示している。ここでは、一方の溝部75bだけが図示されているが、他方の溝部75dについても同様の構成を備えている。
【0060】
図6に示されているように、土間空間72を囲う基礎Kの短辺部分Kbには、その天端に第1建物ユニット11aが据え付けられている。この短辺部分Kbに設けられた溝部75eに、流水ゲート装置77が設置されている。そこには、前記通気装置76も併せて設置されている。通気装置76の構成に関しては、前述した通りである。
【0061】
両装置76,77の設置態様として、流水ゲート装置77の上に通気装置76が設置され、通気装置76の前記通気口81が水盤W1の水面よりも上方に配置される。これにより、流水ゲート装置77を用いて水盤W1の水が土間71側に取り入れられる一方、通気装置76を用いて水盤W1上の空気が土間空間72に取り入れられる。このように、溝部75bは2つの装置76,77が上下に設置されるため、前記長辺部分Kaに設けられた溝部75a,75cよりも深く形成されている。
【0062】
流水ゲート装置77は、流入口84と、流入口開閉体としての流水ゲート85と、電気モータ等で構成されるゲート駆動部86とを備えている。流入口84及び流水ゲート85は、取込部に相当する。流入口84は水盤W1の水を流入させる開口であり、水盤W1を形成する水槽87に設けられた開口部87aを通じて水槽87の内部と連通している。流入口84を形成する底面は、土間71の上面と同じ高さに設定されている。
【0063】
流水ゲート85はその流入口84を開閉する開閉板部材であり、図6(a)に示されているように、流入口84の下端から起立して設けられている。その起立状態では、流入口84が閉じられる。この場合、水槽87に水を張って水盤W1が形成されると、水槽87の開口部87aより流入口84に水が流れ込むが、流水ゲート85によって堰き止められる。これにより、水盤W1の水が土間71側に流れ込むことが防止される。
【0064】
一方、流水ゲート85は、その下端部を支点として、起立した状態から土間71側に倒れ込むことが可能となっている。その動作はゲート駆動部86の駆動によって行われ、倒れ込みにより、図6(b)に示されているように、流入口84は開状態となる。すると、流水ゲート85によって堰き止められていた水が土間側に流入する。この場合、土間71側に流入した水は、土間71に設けられた排水口78(前述した図4参照)より排出される。その排出された水は、再び水盤W1に注がれるように循環させてもよいし、そのまま下水等に排水してもよい。継続して水が流れ込むように、水槽87には随時、水(循環水、水道水、井戸水等)が補給される。
【0065】
なお、流水ゲート85が土間71側に倒れ込んで流入口84が開けられたゲート開状態より、その流水ゲート85を起立させると、再び流入口84が閉じられてゲート閉状態に戻る。
【0066】
次に、住宅10に設けられた上記各装置を駆動制御することにより、住宅10の通気を制御する通気制御システムについて説明する。図7は、通気制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
【0067】
図7に示されているように、この通気制御システムは、制御手段としてのコントローラ91を備えている。コントローラ91は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、リビング41等の居室壁面に設けられている。
【0068】
コントローラ91には、前記天窓部64の開閉駆動部65、前記シーリングファン66、前記通気装置76のスラット駆動部83及び前記流水ゲート装置77のゲート駆動部86がそれぞれ接続されている。コントローラ91は、指令信号を出力することにより、これら各駆動部65,83,86やシーリングファン66の動作制御を行う。また、モニタ装置を接続してもよく、その場合には、当該モニタ装置に制御状況等を表示することにより、住人がその通気制御の状況等を把握できる。
【0069】
このコントローラ91には、住宅10の屋内温度を検出する温度センサ92,93が接続されている。屋内温度検出手段としての温度センサ92,93は、住宅10の一階部分31及び二階部分32にそれぞれ設置されている。一階部分31の温度センサ92は、例えば、リビング41等の居室壁面に設けられ、二階部分32の温度センサ93は、例えば、オープンスペース53等の居室に設けられている。コントローラ91は、これら各温度センサ92,93より温度検出信号を取得することで、センサ設置箇所における室温を把握することができる。そして、検出された室温に基づいて、前記各駆動部65,83,86やシーリングファン66の動作制御し、住宅10における室温環境を制御する。
【0070】
次いで、コントローラ91において実行される通気制御の内容と、それによる空気の流れについて、図8乃至図12を参照しながら説明する。なお、この通気制御の内容は夏季と冬季とで異なっているため、説明は季節ごとに分けて行う。図8乃至図10は夏季における空気の流れを示している。そのうち、図8及び図10は南北方向に沿った住宅10の縦断面図であり、図9は東西方向に沿った縦断面図である。一方、図11及び図12は冬季における空気の流れを示している。そのうち、図11は南北方向に沿った住宅10の縦断面図であり、図12は東西方向に沿った縦断面図である。
【0071】
まず、夏季における制御内容は、次の通りである。温度センサ92,93による室温検出により、一階部分31又は二階部分32のいずれかで室温が所定値(例えば、28度)を超えると、通気状態を形成する動作を実施する。この場合、通気装置76のスラット駆動部83を駆動することにより、スラット82を回動させて通気状態とする。さらに、天窓部64の開閉駆動部65を駆動することにより、天窓部64を開状態とする。
【0072】
すると、図8に示されているように、水盤W1,W2の上方を通過して冷やされた空気が、基礎Kの短辺部分Kbに設けられた通気装置76の通気口81を通じ、土間空間72に流入する。また、図9に示されているように、床下空間73,74の冷やされた空気も、基礎Kの長辺部分Kaに設けられた通気装置76の通気口81を通じ、土間空間72に流入する。
【0073】
そして、両図に示されているように、その流入した空気は、土間空間72の冷やされた空気とともに、開口板部材67の開口部を通じて階段空間42に流入する。さらに、オープン階段61、及び吹き抜け空間Fを通じて二階部分32の階段部52へ上昇する。その流れの途中で室内の空気を伴いながら、最終的には天窓部64より排気される。この場合、縦に長い吹き抜け空間Fとその天井部分の天窓部64とで煙突効果が得られ、上昇気流が生じやすくなっている。これに併せて、シーリングファン66を上昇気流が生じる方向に回転駆動させれば、空気の流れがさらに促進される。こうして、水盤W1,W2で冷やされた空気や、土間空間72の冷やされた空気を室内に取り込むことにより、室内の温度を低下させることができる。
【0074】
もっとも、夏季の暑い時期には、このような空気流が形成されても室温低下の効果が十分に得られず、一階部分31又は二階部分32における室温が前記所定値を超えた状態が継続する場合もある。そのような場合には、水盤W1,W2の水を土間71側へ流入させる流水状態を形成する。つまり、流水ゲート装置77のゲート駆動部86を駆動することにより、流水ゲート85を開状態とする。
【0075】
すると、図10に示されているように、水盤W1,W2の水が土間空間72に流れ込み、土間71は水が張られた状態となる。そして、この流入した水は排水口78より排水されるとともに、水盤W1、W2からは継続して水が流入する。このため、土間71には小川のせせらぎのような水の流れが形成されることになる。この水の流れにより、土間空間72はより一層冷やされ、その冷やされた空気は、開口板部材67の開口部を通じて階段空間42に流入する。これにより、前述した通気とあいまって、室内の温度をより一層低下させることができる。
【0076】
続いて、冬季における制御内容は、次の通りである。一般に、暖かい空気は上昇するため、一階部分31よりも二階部分32の室温の方が高い。そこで、温度センサ92,93による室温検出により、一階部分31の室温と二階部分32の室温との差が所定値(例えば、5度前後)を超えると、シーリングファン66を下降気流が生じる方向に回転駆動させる。これにより、図11及び図12に示されているように、二階部分32に滞留する暖かい空気が一階部分31の部屋に送り込まれるため、一階部分31と二階部分32との寒暖の差を縮めることができる。
【0077】
なお、この冬季の期間中、屋外空間の空気や水盤W1,W2の水を取り入れる装置76,77(基礎Kの短辺部分Kbに設けられたもの)は、通常、非通気状態及び非流入状態を維持する。また、天窓部64も、通常は、閉状態を維持することになる。
【0078】
ここで、冬季においては、夏季に比べて太陽高度が低くなる。このため、図11に示されているように、日中は、階段空間42の南側に設けられた採光窓63より、階段空間42の奥側まで太陽光が取り込まれるようになる。
【0079】
すると、その取り込まれた太陽光は、開口板部材67の開口部を通過して土間空間72に導入され、土間71の上面に照射される。土間71は熱容量が高くて蓄熱機能を有するコンクリートによって構成されているため、太陽光による熱は土間71に蓄えられる。この蓄えられた熱が放射されることにより、この放射熱が開口板部材67の開口部を通じて階段空間42に至り、階段空間42、ひいては、その階段空間42と連通する他の部屋を暖めることができる。日没後においても、土間71に蓄えられた熱の放射は継続して行われるため、その放射熱によって、日中と同様に、階段空間42や他の部屋を暖めることができる。
【0080】
また、図12に示されているように、床下空間73,74に暖房装置101が設置された場合であれば、その床下空間73,74が暖房装置101の熱で暖められることになる。この場合、一階部分31の室温が所定値(例えば、20度)を下回ると、コントローラ91は、暖房装置101を駆動する。併せて、床下空間73,74の空気を取り込む通気装置76(基礎Kの長辺部分Kaに設けられたもの)のスラット駆動部83を駆動することにより、スラット82を回動させて通気状態とする。
【0081】
これにより、暖められた床下空間73,74の空気が通気口81を通じて土間空間72に流入し、それが開口板部材67の開口部を通じて階段空間42や他の部屋に取り込まれる。その取り込まれた空気により、一階部分31を暖めることができる。この住宅10では、階段空間42と土間空間72とが、開口板部材67の開口部によって常時通気状態とされているため、特に、冬季では、土間空間72の冷たい空気の影響を受けて、階段空間42が冷やされるという懸念がある。床下空間73,74の暖かい空気を導入すれば、このような懸念を排除して、冬季でも快適な室内環境を形成できる。
【0082】
以上をまとめると、この実施の形態によれば、以下に示す有利な効果が得られる。
【0083】
(1)階段空間42の床下には土間空間72が設けられるとともに、階段空間42の床部は開口板部材67により構成され、階段空間42と土間空間72との間が通気可能となっている。また、土間空間72とそれに隣接する空間(水盤W1,W2の上方空間や床下空間73,74)とを仕切る基礎Kには通気装置76が設けられ、その通気口81により両者間が通気可能とされている。これにより、その隣接空間の快適な空気が、土間空間72、階段空間42、他の部屋へと順に取り込まれ、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0084】
(2)階段空間42の床部が開口板部材67により構成されて、土間空間72からそこに空気が取り入れられる。多数の開口部を有する開口板部材67が、リビング41やダイニング43等の居室の床部に設けられていると、それら開口部の存在によって日常生活が不便となりがちであるが、そのような不便さを低減できる。
【0085】
(3)階段空間42は吹き抜け空間Fとされ、その二階部分となる階段部52の天井部には、開閉式の天窓部64が設けられている。このため、天窓部64を開状態とすれば、その天窓部64と吹き抜け空間Fとの煙突効果により、土間空間72及び階段空間42への空気を取り込みを促進できる。しかも、設置される階段61はオープン階段であるため、階段61の存在によって通気性が阻害されることも防止できる。
【0086】
(4)土間空間72に隣接して水盤W1,W2が屋外に設けられ、通気装置76のスラット82を開状態とすれば、水盤W1,W2の上方を通過して冷やされた空気が、土間空間72に導入される。これにより、特に夏季においては、屋内よりも快適な空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0087】
その上、流水ゲート装置77の流水ゲート85も併せて開状態とすれば、前記水盤W1,W2の水が土間空間72に流入する。これにより、土間空間72の空気がより冷やされることになり、その空気を階段空間42に取り込んで、快適さをより向上させることができる。
【0088】
(5)階段空間42と隣り合うリビング41やダイニング43の床下空間73,74が土間空間72に隣接し、通気装置76のスラット82を開状態とすれば、その床下空間の空気が土間空間72に導入されるようになっている。これにより、特に、夏季においては、床下の冷やされた空気を取り込んで、屋内環境の快適さを向上させることができる。
【0089】
(6)階段空間42は、一階部分31を構成する屋内空間において、平面上の略中央部に配置されている。このため、その床下にある土間空間72の周囲には、その土間空間72を挟む込むようにして水盤W1,W2や床下空間73,74が配置される。これにより、より多くの空間領域からそこに存在する快適な空気を土間空間72へ取り込むことができる。
【0090】
(7)階段空間42の南側には、その階段空間42に太陽光を取り込んで床部に届かせる採光窓63が設けられ、その取り込まれた太陽光が開口板部材67の開口部を通じて土間71に照射されるようになっている。土間71はコンクリートにより構成されているため、その照射された太陽光の熱は土間71に蓄えられる。これにより、特に太陽高度が低い冬季では、土間71に蓄えられた熱が土間空間72、ひいては階段空間42に向けて放射されることで、屋内を暖めることができる。
【0091】
(8)階段空間42は、第1建物ユニット(階段ユニット)11aによって構成されているため、第2建物ユニット11bに階段61を設置する必要がなくなる。これにより、第2建物ユニット11bでは、階段61を設置することによる制約のない、広い屋内空間を形成できる。
【0092】
(9)住宅10の主構成部21では、第1建物ユニット11aの桁面に対して、複数の第2建物ユニット11bがその妻面を合わさせるように配置されている。さらに、各第2建物ユニット11bにおいて、その短辺側の天井大梁同士を連結部材13で連結してその連結部分の柱12を除去し、ワイドスパンによる大空間Rを形成している。これにより、屋内空間を有効利用できる。
【0093】
(10)通気制御システムを備えており、一階部分31又は二階部分32で検出された室温に応じて、天窓部64、シーリングファン66、通気装置76及び流水ゲート装置77の各装置がコントローラ91によって駆動制御されるようになっている。これにより、屋内環境を向上させることができる。例えば、夏季において、当初は空気の取り入れのみとし、それでも不十分な場合に水を流し入れる、といった制御が行える。これにより、効率的な通気制御が可能となる。
【0094】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0095】
(a)上記実施の形態では、吹き抜け空間Fとされた階段空間42を第1屋内空間部としたが、例えば、パントリー45等の収納庫など、他の建物内空間を第1屋内空間部としてもよい。つまり、第1屋内空間部が吹き抜け空間Fである必要はない。住宅10が一階建ての平屋とされた場合、一般にはその屋内に階段61が設置されないため、階段空間42ではない他の屋内空間が第1屋内空間部とされることになる。また、倉庫等のように居住性を考慮する必要がない建物の場合には、一階部分31に設けられた空間部全域が第1屋内空間部とされる構成であってもよい。
【0096】
(b)上記実施の形態では、住宅10は通気制御システムを備え、室内温度が所定値を超えると自動的に各装置64,66,76,77が駆動制御されるが、住人が所定の入力操作をした場合にもそれらが駆動制御されるようにしてもよい。また、コントローラ91の制御による通気制御システムそのものは必須の構成ではなく、天窓部64、通気装置76及び流水ゲート装置77が、それぞれ個別に手動で開閉される構成を採用してもよい。
【0097】
(c)上記実施の形態では、土間空間72に隣接して水盤W1,W2が設けられているが、この水盤W1,W2を省略してもよい。床下空間73,74の冷やされた空気を室内に取り込むだけでも、冷却効果が得られるからである。また、水盤W1,W2の上方を通過した空気と床下空間73,74の空気の両者が取り込まれる構成とすることも必須ではなく、少なくともそのいずれかの空気が取り込まれるようにすれば足りる。
【0098】
(d)上記実施の形態では、流水ゲート装置77を設けて水盤W1,W2の水を土間空間72に流入させるようにしているが、その構成を省略してもよい。水盤W1,W2の上方を通過して冷やされた空気や、床下空間73,74の冷やされた空気を室内に取り込むだけでも、冷却効果が得られるからである。
【0099】
(e)上記実施の形態では、土間71はコンクリートが敷き詰められただけの構成であるが、そこにタイル等を貼り付けた構成を採用してもよい。タイル等のセラミック材もコンクリートと同様に熱容量が高いため、蓄熱材としての役割をもたせることが可能だからである。
【0100】
(f)上記実施の形態では、通気装置76においてスラット82が開状態とされると、自然な空気の流れで空気が取り込まれるようになっているが、ここにファン装置を設置することにより強制的に空気流を形成するようにしてもよい。前記天窓部64は必須の構成ではなく、これを省略することも可能であるが、その天窓部64を省略すると自然な上昇気流が形成されにくくなるため、かかるファン装置を設置することが好ましい。
【0101】
(g)上記実施の形態では、住宅10が南向き、つまり、リビング41等が南側に面して建てられているが、例えば、南東・北東方向等、他の方角を向いた状態で建ててもよい。採光窓63より階段空間42に太陽光を取り込むという点では、住宅10を南向きとすることが好ましいが、敷地による制約があるし、土間空間72への空気の取り込みという点では、住宅10の向きはあまり問題にならないからである。
【0102】
(h)上記実施の形態では、ユニット式建物として構築された住宅10を建物の例として説明したが、商店や倉庫等の住宅以外の建物であってもよいし、鉄骨軸組工法や在来工法等によって建てられた建物であってもよい。また、二階建てではなく、一階建ての平屋でも三階建て以上の複数階建てであってもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…住宅(建物)、11…建物ユニット、11a…第1建物ユニット(階段ユニット)、11b…第2建物ユニット(通常建物ユニット)、31…一階部分、32…二階部分、42…階段空間(屋内空間部)、63…採光窓(採光部)、64…天窓部、67…開口板部材(開口部が第1通気部に相当)、71…土間、72…土間空間、81…通気口(取込部、第2通気部)、82…スラット(通気開閉体)、84…流入口(取込部)、85…流水ゲート(取込部、流入口開閉体)、91…コントローラ(制御手段)、92,93…温度センサ(屋内温度検出手段)、F…吹き抜け空間、K…基礎(仕切部)、W…水盤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物一階部分に設けられた屋内空間部と、
その屋内空間部の床下に設けられた土間と、
前記屋内空間部の床部と前記土間との間に設けられた土間空間と、
前記屋内空間部の床部に設けられ、その屋内空間部と前記土間空間との間で上下方向に通気させる第1通気部と、
前記土間空間へ同土間空間外から水または空気を取り込む取込部と、
を備えたことを特徴とする建物。
【請求項2】
少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接する空間領域が形成され、
前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記土間空間と前記空間領域との間で横方向に通気させる第2通気部であることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接し、水盤を有する屋外空間が形成され、
前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記水盤の水を前記土間空間へ流し入れる流入口と、その流入口を開閉する流入口開閉体とを有することを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記屋内空間部は、建物二階部分に連通する吹き抜け空間の一部とされ、前記吹き抜け空間の二階部分を有する建物内空間の天井部には、開閉式の天窓部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記屋内空間部は、建物一階部分を構成する建物内空間において平面上の略中央部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
建物一階部分には、太陽光を前記屋内空間部に取り込んでその床部に届かせる採光部が設けられ、前記土間は前記第1通気部を通過して照射された太陽光の熱を蓄えるとともに、その蓄えた熱を放射する放熱機能を有する蓄熱材によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物。
【請求項7】
前記取込部は、水または空気の取り込み状態と、その取り込み停止状態とに切り替え可能に構成され、
屋内の温度を検出する屋内温度検出手段と、
前記屋内温度検出手段により検出された屋内温度に応じて、前記取込部を切替制御する制御手段と、
を有する通気通水制御システムを備えたことを特徴とする請求項6に記載の建物。
【請求項8】
前記屋内空間部は、建物一階部分と二階部分とを連通する吹き抜け空間のうちの一階部分にあたり、前記吹き抜け空間の二階部分を有する建物内空間の天井部には、開閉式の天窓部とファン装置とが設けられた建物であって、
前記制御手段は前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も駆動制御するものとし、前記屋内温度検出手段によって検出された屋内温度に応じて、前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も併せて制御するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の建物。
【請求項9】
前記屋内空間部は一の建物ユニットによって構成され、その建物ユニットは建物一階部分から二階部分へ通じる階段が設けられた階段ユニットであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の建物。
【請求項10】
前記階段ユニットを含め、建物を構築する建物ユニットが直方体状に形成されており、
前記階段ユニットの一桁面に対し、それ以外の複数の通常建物ユニットをその妻面が合わさるように連結させ、前記階段ユニットの長辺側天井大梁と平行をなす前記各通常建物ユニットの短辺側天井大梁同士をさらに連結して、その連結部分における前記各通常建物ユニットの柱が除去されていることを特徴とする請求項9に記載の建物。
【請求項1】
建物一階部分に設けられた屋内空間部と、
その屋内空間部の床下に設けられた土間と、
前記屋内空間部の床部と前記土間との間に設けられた土間空間と、
前記屋内空間部の床部に設けられ、その屋内空間部と前記土間空間との間で上下方向に通気させる第1通気部と、
前記土間空間へ同土間空間外から水または空気を取り込む取込部と、
を備えたことを特徴とする建物。
【請求項2】
少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接する空間領域が形成され、
前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記土間空間と前記空間領域との間で横方向に通気させる第2通気部であることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
少なくとも一部が仕切部を挟んで前記土間空間と横並びで隣接し、水盤を有する屋外空間が形成され、
前記取込部は、前記仕切部に設けられ、前記水盤の水を前記土間空間へ流し入れる流入口と、その流入口を開閉する流入口開閉体とを有することを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記屋内空間部は、建物二階部分に連通する吹き抜け空間の一部とされ、前記吹き抜け空間の二階部分を有する建物内空間の天井部には、開閉式の天窓部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記屋内空間部は、建物一階部分を構成する建物内空間において平面上の略中央部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
建物一階部分には、太陽光を前記屋内空間部に取り込んでその床部に届かせる採光部が設けられ、前記土間は前記第1通気部を通過して照射された太陽光の熱を蓄えるとともに、その蓄えた熱を放射する放熱機能を有する蓄熱材によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物。
【請求項7】
前記取込部は、水または空気の取り込み状態と、その取り込み停止状態とに切り替え可能に構成され、
屋内の温度を検出する屋内温度検出手段と、
前記屋内温度検出手段により検出された屋内温度に応じて、前記取込部を切替制御する制御手段と、
を有する通気通水制御システムを備えたことを特徴とする請求項6に記載の建物。
【請求項8】
前記屋内空間部は、建物一階部分と二階部分とを連通する吹き抜け空間のうちの一階部分にあたり、前記吹き抜け空間の二階部分を有する建物内空間の天井部には、開閉式の天窓部とファン装置とが設けられた建物であって、
前記制御手段は前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も駆動制御するものとし、前記屋内温度検出手段によって検出された屋内温度に応じて、前記天窓部の開閉及び前記ファン装置の回転動作も併せて制御するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の建物。
【請求項9】
前記屋内空間部は一の建物ユニットによって構成され、その建物ユニットは建物一階部分から二階部分へ通じる階段が設けられた階段ユニットであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の建物。
【請求項10】
前記階段ユニットを含め、建物を構築する建物ユニットが直方体状に形成されており、
前記階段ユニットの一桁面に対し、それ以外の複数の通常建物ユニットをその妻面が合わさるように連結させ、前記階段ユニットの長辺側天井大梁と平行をなす前記各通常建物ユニットの短辺側天井大梁同士をさらに連結して、その連結部分における前記各通常建物ユニットの柱が除去されていることを特徴とする請求項9に記載の建物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−26105(P2012−26105A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163569(P2010−163569)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】
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