説明

建築物用消火装置

【課題】 密閉性の高い小区画の内部空間が存在する建築物でも、安全性を高めて酸欠等の発生を抑えると共に、火災発生時の消火性能を向上できるようにする。
【解決手段】 建物1の(n+2)〜(n−1)階に設けた2次側配管21〜24内に対し、窒素ガスと加圧空気とを選択的に導入する。密閉性の高い小さな区画室2B,3Bに対しては、該当する2次側配管21,22内に酸素含有の加圧空気を供給する。これにより、区画室2B,3B内の酸素濃度が低下するのを防止し、安全性を高めて酸欠等の発生を抑えるようにする。また、密閉性の低い(n),(n−1)階の内部空間に対しては、該当する2次側配管23,24内に窒素ガスを積極的に供給する。これにより、これらの2次側配管23,24内に錆等が発生するのを抑えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木造家屋、鉄筋・鉄骨コンクリート製の集合住宅またはビル等の建物に消火設備として好適に用いられる建築物用消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビル等の建築物には、防火用設備として所謂スプリンクラーと呼ばれる消火設備が設けられている。そして、スプリンクラーの誤動作や配管の凍結等を抑えるため、通常時には配管内を加圧空気で満たすように構成した予作動式スプリンクラー装置、乾式スプリンクラー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−105927号公報
【0004】
この種の従来技術による予作動式スプリンクラー装置では、建築物の天井側に吐出側配管が設けられ、該吐出側配管の途中には各部屋毎にスプリンクラーヘッドが取付けられている。そして、各スプリンクラーヘッドの吐出口には、常時は吐出口を閉塞し、火災発生時には熱により溶融して吐出口を開口させる可溶性物質が設けられている。
【0005】
また、前記吐出側配管は、スプリンクラーヘッドが取付けられる所謂2次側配管となり、消火物質(消火剤となる水、泡等)を供給する消火物質供給配管と加圧空気を供給するガス供給配管とからなる1次側配管に対し、例えば三方向弁であるアラーム弁を介して接続される。そして、ガス供給配管は加圧空気の供給源に接続され、消火物質供給配管は消火物質の供給ポンプに接続されている。
【0006】
この場合、前記アラーム弁は、通常時にあって2次側配管内に所定圧の空気が供給されることにより閉弁状態となり、2次側配管内の空気圧がガス漏れ等により規定圧以下まで低下すると、アラーム弁が開弁することによって前記ガス供給配管から2次側配管内に加圧空気が供給(補充)され、2次側配管内の圧力を所定圧に保つものである。
【0007】
そして、建築物の部屋内で火災が発生したときには、火災検知用のセンサ等から検知信号が出力されることにより消火物質の供給ポンプが作動され、このときに2次側配管は、アラーム弁を介して消火物質供給配管と接続され、例えば水、泡等の消火物質が2次側配管内に導入される。そして、火災が発生した部屋内では、前記スプリンクラーヘッドの可溶性物質が加熱により溶融されるため、スプリンクラーヘッドの吐出口が開口して2次側配管内の消火物質を部屋内に向けて放出するものである。
【0008】
このように予作動式スプリンクラー装置は、火災が発生するまでの通常時に2次側配管内を加圧空気で満たすことにより、スプリンクラーヘッド側のトラブル等で、建築物の部屋内に吐出口から誤って放水が行われる等の不具合を防ぐことができるという利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来技術の建築物用消火装置では、火災が発生するまでの通常時に2次側配管内を加圧空気で満たす構成としている。しかし、例えば配管内への通水試験等を行った後に水分が残ったままの状態で、2次側配管内に加圧空気を供給すると、2次側配管内が湿った空気で満たされることになる。
【0010】
そして、このような状態が長年にわたって続くと、2次側配管内には湿気等が原因となって錆が発生し易くなり、場合によっては火災発生時の放水性能、消火性能が錆発生部により低下してしまうという問題がある。
【0011】
一方、このような問題を解消するために、錆(酸化物)の発生を抑える窒素ガスを配管内に供給することが提案されている。しかし、窒素ガスで2次側配管内を満たすようにすると、錆の発生は抑えることができるものの、下記のような未解決な問題が生じてしまう。
【0012】
即ち、ビル等の建築物内には、例えばスタジオ、カラオケボックス等のように防音性能を高めるために狭く密閉された小区画の部屋が存在する。そして、このような小区画の部屋においては、2次側配管内を窒素ガスで満たした場合に、部屋内のスプリンクラーヘッド等から窒素ガスが仮に漏洩(リーク)すると、小区画の部屋内では酸素濃度が低下し、部屋内が酸欠状態になる可能性もある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、例えば密閉性の高い小区画の内部空間が存在する建築物においても、安全性を高めて酸欠等の発生を抑えることができると共に、火災発生時の消火性能を向上することができるようにした建築物用消火装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、酸素含有ガスと低活性ガスとを適宜に選択して配管内に供給することにより、例えば小区画の内部空間で酸素濃度が低下する等の不具合を解消でき、他の内部空間側では配管内に錆が発生するのを抑えることができるようにした建築物用消火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成は、建築物に一または複数の吐出口を有する配管ラインを配置して設け、火災の発生時に前記配管ラインの吐出口から消火物質を放出してなる建築物用消火装置において、前記配管ラインには、前記消火物質の他に低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に導入する構成としたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項2の発明による建築物用消火装置は、建築物に配置して設けられ一または複数の吐出口を有した配管ラインと、火災発生時の熱に応じて該配管ラインの吐出口を開通させる開通手段と、前記配管ライン内の圧力が予め決められた規定圧力になるまで前記配管ライン内に酸素含有ガスと低活性ガスとを選択的に供給するガス供給手段と、前記配管ライン内のガス圧が前記規定圧力よりも十分に低い圧力値まで低下したときに、前記配管ラインの吐出口から消火物資を放出する消火物質放出手段とから構成したことにある。
【0017】
また、請求項3の発明によると、前記配管ラインは、前記消火物質を供給する消火物質供給配管と、前記低活性ガス及び/又は酸素含有ガスを供給するガス供給配管と、前記吐出口が設けられた吐出側配管と、該吐出側配管を前記消火物質供給配管とガス供給配管とのいずれか一方に選択的に接続する弁装置とにより構成している。
【0018】
また、請求項4の発明によると、前記ガス供給配管は、前記吐出側配管に向けて低活性ガスを供給する低活性ガス供給配管と、前記吐出側配管に向けて酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給配管とにより構成している。
【0019】
一方、請求項5の発明によると、前記建築物に設けられた複数の内部空間のうち少なくとも一の内部空間には酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段を設け、該酸素濃度検出手段による前記内部空間内の酸素濃度が基準値の範囲内にあるときには、前記配管ラインに低活性ガスを供給し、前記酸素濃度が基準値以下となったときには、前記配管ラインに酸素含有ガスを供給する構成としている。
【0020】
また、請求項6の発明によると、前記吐出側配管は、前記消火物質供給配管とガス供給配管とに対し複数本に分岐して設け、これら複数の吐出側配管のうち一の吐出側配管には酸素含有ガスを供給し、他の吐出側配管には低活性ガスを供給する構成としている。
【0021】
また、請求項7の発明によると、前記ガス供給配管は、一側が低活性ガスと酸素含有ガスを選択的に供給可能なガス供給源に接続され他側が前記一の吐出側配管と他の吐出側配管とのいずれかに制御装置によって選択的に接続される構成とし、該制御装置は、前記ガス供給源からガス供給配管に酸素含有ガスが供給されるときに前記ガス供給配管を一の吐出側配管に接続し、前記ガス供給源からガス供給配管に低活性ガスが供給されるときには前記ガス供給配管を他の吐出側配管に接続する制御を行う構成としている。
【0022】
また、請求項8の発明によると、前記一の吐出側配管には配管内の酸素濃度を検出する配管内酸素濃度検出手段を設け、前記制御装置は、該配管内酸素濃度検出手段が所定の酸素濃度以下になったことを検知したときに、前記ガス供給源からガス供給配管を介して前記一の吐出側配管に酸素含有ガスを供給する制御を行う構成としている。
【0023】
さらに、請求項9の発明によると、前記ガス供給源は、低活性ガスである窒素ガスと酸素含有ガスである加圧空気とを供給する窒素ガス発生装置により構成している。
【発明の効果】
【0024】
上述の如く、請求項1に記載の発明によれば、建築物に設けられ複数の吐出口を有した配管ラインに、消火物質の他に低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に導入する構成としているので、例えば火災が発生する前の通常時においては、配管ライン内に低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に導入することにより、配管ラインの吐出口から建築物の部屋内に水、泡等の消火物質が誤って放出されるのを防ぐことができる。
【0025】
そして、建築物に設けられた複数の部屋(内部空間)のうち、例えば密閉性の高い小区画の内部空間に対しては、該当する配管ライン内に酸素含有ガスを供給することにより、内部空間の酸素濃度が低下するのを確実に防止でき、安全性を高めて酸欠等の発生を抑えることができる。また、密閉性の低い部屋(内部空間)に対しては、該当する配管ライン内に低活性ガスを供給することにより、配管ライン内に錆が発生するのを抑えることができ、火災発生時の消火性能を向上することができる。
【0026】
また、請求項2に記載の発明によれば、建築物に設けた配管ライン内の圧力が予め決められた規定圧力になるまでは、ガス供給手段によって前記配管ライン内に酸素含有ガスと低活性ガスとを選択的に供給し、前記配管ライン内のガス圧が前記規定圧力よりも十分に低い圧力値まで低下したときには、例えば火災発生時であるので、このときの熱で配管ラインの吐出口が開通手段によって開通され、消火物質放出手段により配管ラインの吐出口から消火物資を放出する構成としている。このため、請求項1の発明と同様に火災が発生する前の通常時において、配管ライン内に低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に導入することができ、配管ラインの吐出口から建築物の部屋内に水、泡等の消火物質が誤って放出されるのを防ぐことができる。
【0027】
そして、配管ライン内には酸素含有ガスと低活性ガスとを適宜に選択して供給することにより、例えば小区画の内部空間で酸素濃度が低下する等の不具合を解消でき、他の内部空間側では配管内に錆が発生するのを抑えることができる。従って、火災発生時の消火性能を高めることができ、建築物用消火装置としての安全性、信頼性を向上することができる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明は、配管ラインを、消火物質供給配管、ガス供給配管、吐出口が設けられた吐出側配管および弁装置により構成しているので、火災が発生する前の通常時においては、ガス供給配管を吐出側配管に弁装置を介して接続することができ、これにより吐出側配管内に低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に導入することができる。一方、火災の発生時には、消火物質供給配管を吐出側配管に弁装置を介して接続することができ、これにより消火物質を吐出側配管内に供給して、複数の吐出口から建築物の部屋内に消火物質を放出することができる。
【0029】
また、請求項4に記載の発明は、ガス供給配管を低活性ガス供給配管と酸素含有ガス供給配管とにより構成しているので、配管ラインの吐出側配管に対して低活性ガス供給配管を接続するか、酸素含有ガス供給配管を接続するかを任意に選択することができ、前記吐出側配管に向けて低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に供給する制御を円滑に高精度で行うことができる。
【0030】
一方、請求項5に記載の発明は、少なくとも一の内部空間に酸素濃度検出手段を設け、該酸素濃度検出手段の検出結果に従って配管ラインに低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に供給する構成としているので、前記内部空間内の酸素濃度が基準値の範囲内にあるときには、前記配管ラインに低活性ガスを供給して防錆性を高めることができ、前記酸素濃度が基準値以下となったときには、前記配管ラインに酸素含有ガスを供給して内部空間が酸欠状態になるのを防ぎ、安全性、信頼性を向上することができる。
【0031】
また、請求項6に記載の発明によると、吐出側配管は消火物質供給配管とガス供給配管とに対し複数本に分岐して設け、これら複数の吐出側配管のうち一の吐出側配管には酸素含有ガスを供給し、他の吐出側配管には低活性ガスを供給する構成としているので、複数の吐出側配管に対して酸素含有ガスと低活性ガスとを選択的に供給することができる。
【0032】
また、請求項7に記載の発明は、ガス供給配管の一側を低活性ガスと酸素含有ガスを選択的に供給可能なガス供給源に接続し、他側が一の吐出側配管と他の吐出側配管とのいずれかに制御装置によって選択的に接続される構成としているので、例えばガス供給源からガス供給配管に酸素含有ガスを供給するときには、前記ガス供給配管を一の吐出側配管に接続でき、一の吐出側配管内には酸素含有ガスを供給することができる。また、前記ガス供給源からガス供給配管に低活性ガスを供給するときには、前記ガス供給配管を他の吐出側配管に接続でき、他の吐出側配管内には低活性ガスを供給することができる。
【0033】
また、請求項8に記載の発明は、一の吐出側配管に配管内酸素濃度検出手段を設ける構成としているので、一の吐出側配管内で酸素濃度が所定の濃度以下となったときには、ガス供給源からガス供給配管を介して前記一の吐出側配管に酸素含有ガスを供給することにより、一の吐出側配管内での酸素濃度を所定の濃度以上に高めることができ、例えば密閉性の高い内部空間の酸素濃度が下がる等の問題をなくすことができる。
【0034】
さらに、請求項9に記載の発明は、ガス供給源を窒素ガス発生装置により構成しているので、このような窒素ガス発生装置を用いることにより、低活性ガスである窒素ガスと酸素含有ガスである加圧空気とを、ガス供給配管から吐出側配管内へと選択的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態による建築物用消火装置を、例えば商業用ビル等の建物に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0036】
ここで、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建築物としての建物で、この建物1は、例えば(n−1)階、(n)階、(n+1)階、(n+2)階からなる複数階の建築物を構成している。そして、建物1は、例えば(n+2)階が最上階となり、その天井側が屋上部1Aとなっている。
【0037】
また、建物1の(n+2)階には、例えば3つの内部空間からなる区画室2A,2B,2Cが形成され、これらの区画室2A〜2Cのうち区画室2Bは、小区画に密閉された防音室となっている。また、(n+1)階には、例えば2つの区画室3A,3Bが形成され、小さい方の区画室3Bは密閉された防音室となっている。一方、建物1の(n)階は、広い内部空間を有し、(n−1)階は、例えば地下室を構成するものである。
【0038】
4は(n−1)階の床下側に設けられた消火水槽で、該消火水槽4内には、火災発生時の消火用水が貯留されている。そして、消火水槽4内の水は、後述の泡と共に消火物質(消火剤)を構成するものである。
【0039】
5はスプリンクラーポンプとしての揚水ポンプを示し、該揚水ポンプ5は、後述の泡消火ポンプ8と共に消火物質の供給ポンプを構成している。そして、揚水ポンプ5は、消火水槽4内の吸水フィルタ5A側から消火用水を汲上げつつ、これを消火物質供給配管としての揚水管6内に吐出するものである。
【0040】
ここで、揚水管6は、図1に示すように先端側が上,下の給水管6A,6Bとなって分岐し、上向きの給水管6Aは、建物1の屋上部1Aまで延びて高架水槽7に接続されている。また、下向きの給水管6Bは、(n−1)階の内部空間において後述のアラーム弁20に接続されている。
【0041】
8は消火物質の供給ポンプを構成する泡消火ポンプで、該泡消火ポンプ8は、消火水槽4内の吸水フィルタ8A側から消火用水を汲上げつつ、泡状の消火剤(図示せず)を消火物質供給配管としての泡供給管9内に吐出するものである。そして、泡供給管9は、図1に示す如く(n−1)階の天井側に沿って延設され、その先端側が後述のアラーム弁43に接続されている。
【0042】
10はガス供給源を構成する窒素ガス発生装置で、この窒素ガス発生装置10は、図1に示す如く空気圧縮機11、窒素発生機12、ガス分離バルブ13および空気供給バルブ14により大略構成されている。そして、窒素ガス発生装置10は、後述の通気管16内に酸素含有ガスとしての加圧空気を供給するときにガス分離バルブ13を閉じて空気供給バルブ14を開弁することにより、空気圧縮機11から吐出された圧縮空気を通気管16内に流通させる。
【0043】
また、窒素ガス発生装置10は、通気管16内に低活性ガスとしての窒素ガスを供給するときにガス分離バルブ13を開弁させ、空気供給バルブ14を閉弁することにより、空気圧縮機11から窒素発生機12に向けて圧縮空気を吐出させる。そして、窒素発生機12は、圧縮空気中の窒素と酸素とを分離することにより、例えば後述の規定圧よりも僅かに高い圧力の窒素ガスを通気管16に加圧状態で吐出するものである。
【0044】
この場合、窒素ガス発生装置10の窒素発生機12は、運転開始時に初期段階から窒素ガスを吐出することはできない。即ち、窒素発生機12から吐出されるガスは、初期段階では窒素ガスの濃度が低く、酸素と窒素の比率が大気中の濃度とほとんど変わりはない。しかし、窒素発生機12の運転を続けるうちに徐々に窒素ガスの濃度が高くなって、酸素を含まない低活性ガスとしての窒素ガスが得られるものである。
【0045】
15は建物1の(n−1)階から(n+2)階にわたってほぼ全体に延びるように配置して設けられた配管ラインで、この配管ライン15は、消火物質供給配管としての揚水管6、給水管6A,6Bおよび泡供給管9と、後述の通気管16、アラーム弁17〜20および各階毎の2次側配管21〜24等とにより構成されるものである。
【0046】
16はガス供給配管を構成する通気管で、この通気管16は、一側がガス供給源としての窒素ガス発生装置10に接続され、他側が分岐点16Aの位置で3本の分岐管16B,16C,16Dに接続されている。そして、上向きの分岐管16Bは、給水管6Aと並行して延び、それぞれの階で後述のアラーム弁17〜19に接続されている。
【0047】
また、下向きに延びる分岐管16Cは、給水管6Bと並行して延び、(n−1)階で後述のアラーム弁20に接続されている。一方、別の分岐管16Dは、泡供給管9と同様に(n−1)階の天井側に沿って延設され、その先端側が後述の一斉開放弁44に接続されている。
【0048】
17は建物1の(n+2)階に設けられた弁装置としてのアラーム弁で、該アラーム弁17は、例えば三方弁等により構成され、2つの流入側が給水管6Aと分岐管16B(通気管16)とに接続されている。また、アラーム弁17の流出側は、後述の2次側配管21に接続されている。
【0049】
ここで、アラーム弁17は、通常の状態で分岐管16Bを2次側配管21に連通させ、例えば加圧空気が分岐管16Bから2次側配管21に向けて流通するのを許す。そして、2次側配管21内の圧力が後述の規定圧(例えば、0.1MPa)に達すると、アラーム弁17は、分岐管16Bと2次側配管21との間を遮断し、2次側配管21内の圧力が規定圧よりも過剰に高くなるのを防ぐものである。
【0050】
また、アラーム弁17は、後述の如く火災が発生したときに揚水ポンプ5の駆動に伴う給水管6A内の圧力上昇と、例えば2次側配管21内の圧力低下に伴って開弁され、このときには給水管6Aから2次側配管21に向けて消火用水が大きな流量で勢いよく流通するのを許すものである。
【0051】
18は建物1の(n+1)階に設けられた弁装置としてのアラーム弁で、該アラーム弁18は、前述した(n+2)階のアラーム弁17と同様に構成されている。また、建物1の(n)階には、弁装置としてのアラーム弁19が同様に設けられ、(n−1)階にも、同様に弁装置としてのアラーム弁20が設けられている。
【0052】
21は(n+2)階の天井側に沿って配置された吐出側配管としての2次側配管で、この2次側配管21は、一側がアラーム弁17を介して給水管6Aと通気管16(分岐管16B)とに選択的に接続され、他側は後述する末端バルブ25の位置まで延びている。そして、2次側配管21の途中には、複数のスプリンクラーヘッド21A,21B,21C,21C,…が互いに間隔をもって設けられ、スプリンクラーヘッド21Aは区画室2Aに、スプリンクラーヘッド21Bは区画室2Bに、他のスプリンクラーヘッド21C,21C,…は区画室2Cにそれぞれ配設されている。
【0053】
ここで、スプリンクラーヘッド21A,21B,21C,…は、2次側配管21(配管ライン15)の吐出口を構成し、その開口部は開通手段としての可溶性物質(図示せず)により閉塞されている。そして、スプリンクラーヘッド21A〜21Cは、火災発生時の高熱が及ぶと少なくとも一のスプリンクラーヘッド側で前記可溶性物質が溶融されることにより、該当するスプリンクラーヘッド21A〜21Cのいずれかが開口して後述の如く放水が行われるものである。
【0054】
22は(n+1)階の天井側に沿って配置された吐出側配管としての2次側配管で、該2次側配管22は、一側がアラーム弁18を介して給水管6Aと通気管16(分岐管16B)とに選択的に接続され、他側は後述する末端バルブ26の位置まで延びている。そして、2次側配管22の途中には、複数のスプリンクラーヘッド22A,22A,…,22Bが互いに間隔をもって設けられ、これらのスプリンクラーヘッド22A,22Bも、前述したスプリンクラーヘッド21A〜21Cと同様に構成されている。
【0055】
ここで、スプリンクラーヘッド22A,22A,…は、(n+1)階のうち大きい方の区画室3A側に配置され、スプリンクラーヘッド22Bは、密閉された防音室となる小さい方の区画室3B側に配設されている。
【0056】
23は(n)階の天井側に沿って配置された吐出側配管としての2次側配管、24は(n−1)階の天井側に沿って配置された吐出側配管としての2次側配管を示している。そして、これらの2次側配管23,24も、一側がアラーム弁19,20を介して給水管6Aと通気管16(分岐管16B)とに選択的に接続され、他側は後述する末端バルブ27,28の位置まで延びている。
【0057】
また、建物1の(n)階には、2次側配管23の途中に複数のスプリンクラーヘッド23A,23A,…が互いに間隔をもって設けられ、(n−1)階には、2次側配管24の途中に複数のスプリンクラーヘッド24Aが互いに間隔をもって設けられている。
【0058】
25は建物1の(n+2)階において2次側配管21の先端側(他側)に設けられた末端バルブで、該末端バルブ25は、後述の制御装置47によりアクチュエータ(図示せず)を介して開,閉制御される。そして、末端バルブ25を開弁したときには、2次側配管21内が大気に連通して大気圧(0.0MPa)状態となり、後述の如く2次側配管21内の圧力を規定圧力としての規定圧(例えば、0.1MPa)以上に上昇させるときには、末端バルブ25を閉弁状態に保持するものである。
【0059】
ここで、建物1の(n+1)階には、2次側配管22の先端側(他側)に同様な末端バルブ26が設けられ、(n)階には2次側配管23の先端側に同様の末端バルブ27が設けられている。また、(n−1)階には2次側配管24の先端側に同様の末端バルブ28が設けられている。
【0060】
29は建物1の(n−1)階において分岐管16Cの下端側に設けられた排出弁で、該排出弁29は、例えば通気管16(分岐管16B〜16D)内のガス種を入れ替えるとき等に後述の制御装置47によりアクチュエータ(図示せず)を介して開,閉制御され、常時は閉弁状態に保持されるものである。
【0061】
即ち、排出弁29は、通気管16(分岐管16B〜16D)内に供給するガスを、例えば窒素ガスから加圧空気(または、これと逆)に入れ替えるときに開弁され、ガス供給配管である通気管16(分岐管16B〜16D)のガス種を入れ替えた状態で閉弁されるものである。
【0062】
30,31,32,33は2次側配管21,22,23,24の途中に設けられた圧力センサで、該圧力センサ30〜33のうち、圧力センサ30は2次側配管21内の圧力を検出し、圧力センサ31は2次側配管22内の圧力を検出する。また、圧力センサ32は2次側配管23内の圧力を検出し、圧力センサ33は2次側配管24内の圧力(大気圧との差圧)を検出するものである。
【0063】
また、他の圧力センサ34は、後述する感知配管45内の圧力を検出する。そして、これらの圧力センサ30〜34は、後述する制御装置47の入力側に図2に示す如く接続されている。
【0064】
35,36,37,38は2次側配管21,22,23,24の途中に設けられた配管内酸素濃度検出手段としての酸素センサ(以下、配管内センサ35〜38という)で、該配管内センサ35〜38のうち、配管内センサ35は2次側配管21内の酸素濃度を検出し、配管内センサ36は2次側配管22内の酸素濃度を検出するものである。
【0065】
また、配管内センサ37は2次側配管23内の酸素濃度を検出し、配管内センサ38は2次側配管24内の酸素濃度を検出するものである。また、他の酸素センサである配管内センサ39は、後述する感知配管45内の酸素濃度を検出する構成となっている。
【0066】
40は建物1の(n+2)階において区画室2B内に設けられた酸素濃度検出手段としての酸素センサで、該酸素センサ40は、密閉性の高い防音室等からなる区画室2Bで内部の酸素濃度を検出し、その検出信号を後述の制御装置47に出力するものである。
【0067】
41は建物1の(n+1)階において区画室3B内に設けられた酸素濃度検出手段としての酸素センサで、該酸素センサ41も、密閉性の高い防音室等からなる区画室3Bで内部の酸素濃度を検出し、その検出信号を後述の制御装置47に出力するものである。
【0068】
42は建物1の(n−1)階に設けられた泡消火管で、該泡消火管42は、図1に示すように泡供給管9の先端側にアラーム弁43、一斉開放弁44を介して接続されている。また、泡消火管42の途中には、複数の泡ヘッド42A,42A,…が設けられ、これらの泡ヘッド42Aも前述したスプリンクラーヘッド21A,21B,21C等と同様に可溶性物質により閉塞されている。
【0069】
45は建物1の(n−1)階に泡消火管42と並行して延びるように配設された感知配管を示し、該感知配管45は、一側が通気管16の分岐管16Dに一斉開放弁44を介して接続され、他側は泡手動起動弁46の位置まで延びている。また、感知配管45の途中には、複数の感知ヘッド45A,45A,…が設けられ、これらの感知ヘッド45Aも前述したスプリンクラーヘッド21A等と同様に可溶性物質により閉塞されている。
【0070】
47はマイクロコンピュータ等によって構成された制御装置で、該制御装置47は、図2に示す如く入力側が圧力センサ30〜34、配管内センサ35〜39、酸素センサ40,41および火災検知器等からなる火災センサ48等に接続され、出力側が揚水ポンプ5、泡消火ポンプ8、窒素ガス発生装置10の空気圧縮機11、ガス分離バルブ13、空気供給バルブ14、末端バルブ25〜28、排出弁29および報知装置49等に接続されている。
【0071】
また、制御装置47は、ROM、RAM等からなる記憶部47Aを有し、この記憶部47A内には、火災発生時の消火制御処理(図示せず)、これに伴う前処理としてのガス供給処理(図3参照)およびガス漏洩対策処理(図4参照)等を行うための処理プログラム、後述のタイマT、時間T1 (例えば、1〜15分程度)、基準値A1 (例えば、残留酸素濃度18%に対応)等が格納されている。
【0072】
そして、制御装置47は、図3に一例として示した処理手順に従って2次側配管21〜24に対するガス供給処理を行うガス供給手段を実現し、図4に例示したガス漏洩対策処理等を行うものである。また、制御装置47は、火災の発生時に圧力センサ30〜33のいずれかで2次側配管21〜24の圧力が急激に低下すると、これに伴ってアラーム弁17〜20のいずれかを開弁させ、後述の如く消火用水を放出させる消火物質放出手段を構成している。
【0073】
また、前記報知装置49は、警報ブザー、音声合成装置、報知ランプまたはディスプレイ等により構成され、例えば密閉性の高い区画室2B内で酸素濃度が低下したときに、図4中のステップ13に示す如く報知するものである。なお、報知装置49は、例えば火災発生時の報知等を行う構成としてもよいものである。
【0074】
本実施の形態による建築物用消火装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、制御装置47による2次側配管21〜24へのガス供給処理について図3を参照して説明する。
【0075】
まず、(n+2)〜(n−1)階の2次側配管21〜24内が大気圧(0.0MPa)の状態で処理動作をスタートすると、ステップ1では窒素ガス発生装置10の駆動を開始すると共に、タイマTをスタートさせる。この場合、窒素ガス発生装置10はガス分離バルブ13を開弁し、空気供給バルブ14を閉弁した状態で空気圧縮機11の運転を開始することにより、空気圧縮機11から窒素発生機12に向けて圧縮空気(加圧空気)を吐出させる。
【0076】
そして、窒素ガス発生装置10の窒素発生機12は、圧縮空気中の窒素と酸素とを分離することにより、加圧状態の窒素ガスを通気管16に向けて吐出する。しかし、窒素発生機12から吐出されるガスは、運転開始時の初期段階において窒素ガスの濃度が低く、後述の時間T1 に達するまでは、酸素と窒素の比率が大気中の空気とほとんど変わりがない。
【0077】
そこで、ステップ2では各階のアラーム弁17〜20を介して2次側配管21〜24内に空気が供給される。即ち、この段階では、窒素発生機12から通気管16、分岐管16B,16C,16Dに酸素含有ガスとしての加圧空気が供給され、この加圧空気は各階のアラーム弁17〜20を開弁させて2次側配管21〜24内に導入される。
【0078】
そして、ステップ3では、各階の2次側配管21〜24において、その内圧が規定圧(0.1MPa)に達すると各階のアラーム弁17〜20が自動的に閉弁し、2次側配管21〜24内への加圧空気の供給は停止される。この段階で各階の2次側配管21〜24は、その内部が加圧空気により大気圧よりも高い規定圧(例えば、0.1MPa程度)に保たれている。
【0079】
次に、この状態でタイマTが予め決められた時間T1 (例えば、1〜15分程度)以上に達し、ステップ4で「YES」と判定される。即ち、窒素ガス発生装置10は運転を続けるうちに、窒素発生機12から供給されるガスが空気から徐々に窒素ガスに切り替わり、酸素を含まない低活性ガスとしての窒素ガスが、通気管16、分岐管16B,16C,16Dに向けて供給される。
【0080】
そして、次なるステップ5では、特定階となる例えば(n),(n−1)階の末端バルブ27,28を開弁させ、2次側配管23,24内の圧力を大気圧まで下げるようにする。また、この段階で(n−1)階の泡手動起動弁46を開くことによって、感知配管45内も大気圧にするのがよい。
【0081】
次に、ステップ6では、(n),(n−1)階のアラーム弁19,20を介して2次側配管23,24内に、通気管16の分岐管16B,16Cから窒素ガスを供給し、2次側配管23,24内の空気を窒素ガスと入れ替えるようにして末端バルブ27,28を閉弁させる。また、(n−1)階の感知配管45内も、通気管16の分岐管16Dから一斉開放弁44等を介して窒素ガスを供給し、空気を窒素ガスと入れ替えるようにして泡手動起動弁46を閉弁させる。
【0082】
そして、ステップ7に移り、(n),(n−1)階の2次側配管23,24、感知配管45内が窒素ガスにより規定圧(例えば、0.1MPa)まで上昇すると、アラーム弁19,20,43が自動的に閉弁され、2次側配管23,24、感知配管45内に向けた窒素ガスの供給は停止される。
【0083】
また、次なるステップ8のように、仮に2次側配管21〜24のいずれかでスプリンクラーヘッド21A〜21C,22A,22B,23A,24A等から僅かなガス漏れが発生し、2次側配管21,22,23または24内の圧力が規定圧よりも低下すると、圧力が低下した2次側配管内には、通気管16の分岐管16B,16Cからアラーム弁17,18,19または20を介して窒素ガスが補充(供給)される。
【0084】
そして、該当する2次側配管21,22,23または24の内圧が規定圧まで上昇すると、再びアラーム弁17,18,19または20が自動的に閉弁されて窒素ガスの補充(供給)は停止される。また、(n−1)階の感知配管45についても、感知ヘッド45A等から僅かなガス漏れが発生すると、アラーム弁43、一斉開放弁44を介して感知配管45内には同様に窒素ガスを補充(供給)する。そして、図3中のステップ9でメインの制御処理にリターンする。
【0085】
これにより、(n+2)〜(n−1)階の2次側配管21〜24内は、スプリンクラーヘッド21A〜21C,22A,22B,23A,24Aのいずれかでガス漏れ等が発生すると、前述の如く2次側配管21,22,23または24内に窒素ガスが漸次供給(補充)されるため、例えば2次側配管21,22内も規定圧の窒素ガスで満たされることになる。
【0086】
次に、例えば(n+2)階の密閉された小さな区画室2B内でガス漏れが発生した場合のガス漏洩対策処理について、図4を参照して説明する。
【0087】
この場合、まず、ステップ11では(n+2)階の区画室2B内に設けた酸素センサ40から検出信号Aを読込む。そして、ステップ12では、検出信号Aが予め決められた基準値A1 (例えば、残留酸素濃度18%に対応)以下まで低下し、区画室2B内の酸素濃度が希薄濃度になっているか否かを判定する。
【0088】
そして、ステップ12で「NO」と判定する間は、区画室2B内の酸素濃度が大気中の酸素濃度と比較して希薄にはなっていないので、ステップ11に戻り、ステップ12で「YES」と判定するまで待機する。そして、ステップ12で「YES」と判定したときには、次なるステップ13に移って報知装置49(図2参照)を作動させ、区画室2B内の酸素濃度が低下していることを報知する。
【0089】
次に、ステップ14では、(n+2)階の末端バルブ25を開弁して2次側配管21内を大気に連通させる。そして、ステップ15では、窒素ガス発生装置10のガス分離バルブ13(図1参照)を閉じ、空気供給バルブ14を開弁することにより、空気圧縮機11から通気管16内に向けて加圧空気(圧縮空気)を吐出するように供給する。
【0090】
これにより、(n+2)階の2次側配管21内には、通気管16の分岐管16Bからアラーム弁17を介して加圧空気が供給され、2次側配管21内を窒素ガスから空気へと入れ替えるようにして末端バルブ25を閉弁させる。そして、次なるステップ16では、(n+2)階の2次側配管21内が加圧空気により規定圧まで上昇すると、アラーム弁17が閉弁されて加圧空気の供給を停止し、その後はステップ17でメインの制御処理にリターンする。
【0091】
この結果、図3に示すステップ8の処理と図4に示すガス漏洩対策処理とにより、例えば(n+2)階の密閉された区画室2B内で酸素濃度が基準値の範囲内にあるときには、2次側配管21内に窒素ガスを供給して防錆性を高めることができ、前記酸素濃度が基準値以下となったときには、2次側配管21内に加圧空気を供給することができる。
【0092】
このため、例えば2次側配管21のスプリンクラーヘッド21Bから配管内部のガスが区画室2B内にガス漏れが生じても、2次側配管21内を加圧空気で満たすことにより、加圧空気の一部をスプリンクラーヘッド21Bを介して区画室2B内に徐々に流出させて、防音室からなる区画室2B内が酸欠状態になるのを防ぎ、安全性、信頼性を向上することができる。
【0093】
また、(n+1)階の小さな区画室3B内でガス漏れが発生した場合にも、図4に例示したガス漏洩対策処理と同様の処理を実行することにより、2次側配管22内を加圧空気で満たすことができ、加圧空気の一部をスプリンクラーヘッド22Bを介して区画室3B内に徐々に流出させて、防音室からなる区画室3B内が酸欠状態になるのを防ぎ、安全性、信頼性を向上することができる。
【0094】
一方、建物1内で仮に火災が発生したときには、これを火災センサ48で検知することにより、制御装置47は揚水ポンプ5を駆動すると共に、窒素ガス発生装置10の作動を停止させる。これによって、火災が発生した階、例えば(n)階ではアラーム弁19が、揚水ポンプ5の駆動に伴う給水管6A内の圧力上昇と2次側配管23内の圧力低下とに伴って開弁される。
【0095】
この場合、例えば2次側配管23に設けた複数のスプリンクラーヘッド23Aのいずれかに火災発生時の高熱が及ぶと、このスプリンクラーヘッド23A側で可溶性物質が溶融されることにより、当該スプリンクラーヘッド23Aが開口して2次側配管23内から窒素ガスが噴出し、2次側配管23内の圧力は大気圧程度まで急激に低下する。
【0096】
このため、火災発生階、例えば(n)階のアラーム弁19は、これに伴って給水管6Aから2次側配管23内に消火用水を導入するように開弁し、給水管6Aから2次側配管23に向けて消火用水が流通するのを許すと共に、可溶性物質が溶融されたスプリンクラーヘッド23Aからは、建物1の内部空間に向けて大きな流量で勢いよく放水を行うことができる。このとき、制御装置47は、アラーム弁19、2次側配管23等と共に消火物質放出手段を構成するものである。
【0097】
かくして、本実施の形態によれば、建物1の(n+2)〜(n−1)階に設けた2次側配管21〜24内に対し、例えば消火用水を供給する前の段階(火災が発生していない通常状態)で低活性ガスとしての窒素ガスと酸素含有ガスとしての加圧空気とを選択的に導入する構成としている。
【0098】
このため、例えば火災が発生する前の通常時においては、2次側配管21〜24内に窒素ガスまたは加圧空気を充満させることにより、2次側配管21〜24の吐出口となるスプリンクラーヘッド21A,21B,21C,22A,22B,23A,24Aから区画室2A,2B,2C,3A,3B等に水、泡等の消火物質が誤って放出されるのを防ぐことができる。
【0099】
そして、建物1内に設けた複数の内部空間(例えば、区画室2A,2B,2C,3A,3B等)のうち、例えば密閉性の高い小さな区画室2B,3Bに対しては、該当する2次側配管21,22内に酸素含有の加圧空気を供給することにより、区画室2B,3B内の酸素濃度が低下するのを確実に防止でき、安全性を高めて酸欠等の発生を抑えることができる。
【0100】
また、密閉性の低い(n),(n−1)階の内部空間に対しては、該当する2次側配管23,24内に窒素ガス(低活性ガス)を積極的に供給することにより、これらの2次側配管23,24内に錆(酸化物)が発生するのを抑えることができ、火災発生時の消火用水が錆により邪魔されて放水性能が低下するのを防止できると共に、消火性能を向上することができる。
【0101】
また、各階の2次側配管21〜24、感知配管45の途中には、配管内センサ35〜39をそれぞれ設けているので、2次側配管21〜24、感知配管45内の酸素濃度を配管内センサ35〜39を用いて常に監視することができ、例えば密閉性の高い区画室2B,3Bに延びる2次側配管21,22内で酸素濃度が所定の濃度以下に低下したときには、図4中のステップ14〜16と同様の処理を行うことができる。
【0102】
この結果、空気圧縮機12から通気管16、分岐管16B、アラーム弁17,18を介して2次側配管21,22内に加圧空気(酸素含有ガス)を供給することができ、2次側配管21,22内の酸素濃度を所定の濃度以上に高めることができると共に、例えば区画室2B,3Bのように密閉性の高い内部空間内で酸素濃度が下がる等の問題をなくすことができる。
【0103】
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0104】
しかし、本実施の形態の特徴は、各階の2次側配管21〜24内が規定圧になるまで窒素ガスを供給した後に、例えば区画室2B,3Bのように密閉性の高い内部空間内で酸素濃度が下がると、該当する2次側配管21,22内に加圧空気を供給する構成としたことにある。
【0105】
即ち、本実施の形態にあっては、制御装置47(図2参照)の記憶部47A内に、図5に例示したガス供給処理がガス漏洩対策処理(図4参照)等と共に格納されている。
【0106】
そして、図5に示すガス供給処理では、処理動作がスタートすると、ステップ21で窒素ガス発生装置10の駆動を開始すると共に、タイマTをスタートさせる。次に、ステップ22では、(n+2)〜(n−1)階の末端バルブ25〜28を全て開弁し、各階の2次側配管21〜24内を大気圧(0.0MPa)の状態におく。
【0107】
また、ステップ23では、タイマTが時間T1 に達したか否かを判定し、「NO」と判定する間はステップ22に戻る。そして、ステップ23で「YES」と判定したときには、窒素ガス発生装置10の窒素発生機12から供給されるガスが空気から徐々に窒素ガスに切替わり、酸素を含まない低活性ガスとしての窒素ガスが通気管16、分岐管16B〜16Dに向けて供給されている。
【0108】
そこで、ステップ24では、各階のアラーム弁17〜20を介して2次側配管21〜24内に窒素ガスを供給すると共に、この段階で各階の末端バルブ25〜28を全て閉弁するようにする。なお、(n−1)階の感知配管45に対しても、同様に窒素ガスを供給する。また、この段階で酸素センサ40,41からの検出信号により、例えば密閉性の高い小さな区画室2B,3B内における酸素濃度を監視する。
【0109】
そして、次なるステップ25では、各階の2次側配管21〜24、感知配管45において内圧が規定圧(0.1MPa)に達すると、各階のアラーム弁17〜20、一斉開放弁44が自動的に閉弁し、2次側配管21〜24内への窒素ガスの供給は停止される。この段階で各階の2次側配管21〜24、感知配管45は、その内部が窒素ガスにより大気圧よりも高い規定圧(例えば、0.1MPa程度)に保たれている。
【0110】
次に、ステップ26では、仮に2次側配管21〜24のいずれかでスプリンクラーヘッド21A〜21C,22A,22B,23A,24A等から僅かなガス漏れが発生し、2次側配管21,22,23または24内の圧力が規定圧よりも低下すると、圧力が低下した2次側配管内には、通気管16の分岐管16B,16Cからアラーム弁17,18,19または20を介して窒素ガスが補充(供給)される。そして、その後はステップ27でメインの制御処理にリターンする。
【0111】
そして、該当する2次側配管21,22,23または24の内圧が規定圧まで上昇すると、再びアラーム弁17,18,19または20が自動的に閉弁されて窒素ガスの補充(供給)は停止される。また、(n−1)階の感知配管45についても、感知ヘッド45A等から僅かなガス漏れが発生すると、アラーム弁43、一斉開放弁44を介して感知配管45内には同様に窒素ガスを補充(供給)するものである。
【0112】
これにより、(n+2)〜(n−1)階の2次側配管21〜24内は、スプリンクラーヘッド21A〜21C,22A,22B,23A,24Aのいずれかでガス漏れ等が発生すると、前述の如く2次側配管21,22,23または24内には、窒素ガスが漸次供給(補充)されるため、例えば2次側配管21,22内も規定圧の窒素ガスで満たされることになる。
【0113】
次に、例えば(n+2)階の密閉された小さな区画室2B内でガス漏れが発生した場合には、前述した図4に示す処理と同様にガス漏洩対策処理が実行され、(n+2)階の2次側配管21内には、通気管16の分岐管16Bからアラーム弁17を介して加圧空気が供給され、2次側配管21内を窒素ガスから空気へと入れ替えるものである。
【0114】
また、(n+1)階の小さな区画室3B内でガス漏れが発生した場合にも、図4に例示したガス漏洩対策処理と同様の処理を実行することにより、2次側配管22内を加圧空気で満たすことができ、加圧空気の一部をスプリンクラーヘッド22Bを介して区画室3B内に徐々に流出させて、防音室からなる区画室3B内が酸欠状態になるのを防ぎ、安全性、信頼性を向上することができる。
【0115】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、密閉された区画室2B,3B内で酸素濃度が基準値の範囲内にあるときには、2次側配管21,22内に窒素ガスを供給して防錆性を高めることができ、前記酸素濃度が基準値以下となったときには、2次側配管21,22内に加圧空気を供給することができ、これによって、前述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0116】
次に、図6ないし図8は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ガス供給源を低活性ガスの供給源と酸素含有ガスの供給源とに別けると共に、ガス供給配管を低活性ガス供給配管と酸素含有ガス供給配管とにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0117】
図中、51は酸素含有ガス用のガス供給源となる加圧空気源で、この加圧空気源51は、例えば空気圧縮機等により構成されている。そして、加圧空気源51は、例えば0.1MPa程度の規定圧(規定圧力)よりも僅かに高い圧力の加圧空気を後述の空気配管54内に向けて供給するものである。
【0118】
52は低活性ガス用のガス供給源となる窒素ガス源で、該窒素ガス源52は、例えば第1の実施の形態で述べた窒素ガス発生装置10と同様の装置等により構成されている。そして、窒素ガス源52は、例えば0.1MPa程度の規定圧よりも僅かに高い圧力の窒素ガスを後述の窒素配管55内に向けて供給するものである。
【0119】
53は本実施の形態で採用した配管ラインで、該配管ライン53は、第1の実施の形態で述べた配管ライン15とほぼ同様に、消火物質供給配管としての揚水管6、給水管6A,6Bおよび泡供給管9と、各階毎の2次側配管21〜24等とにより構成されるものである。しかし、この場合の配管ライン53は、後述の空気配管54、窒素配管55等を含んで構成される点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0120】
54はガス供給配管を構成する空気配管で、該空気配管54は、一側がガス供給源としての加圧空気源51に接続され、他側が分岐点54Aの位置で3本の空気導管54B,54C,54Dに接続されている。そして、上向きの空気導管54Bは、給水管6Aと並行して延び、それぞれの階で後述の切替バルブ56〜58を介してアラーム弁17〜19に接続されている。
【0121】
また、下向きに延びる空気導管54Cは、給水管6Bと並行して延び、(n−1)階で後述の切替バルブ59を介してアラーム弁20に接続されている。一方、別の空気導管54Dは、泡供給管9と同様に(n−1)階の天井側に沿って延設され、その先端側が後述の切替バルブ60に接続されている。
【0122】
55は空気配管54と共にガス供給配管を構成する窒素配管で、該窒素配管55は、一側がガス供給源としての窒素ガス源52に接続され、他側が分岐点55Aの位置で3本の窒素導管55B,55C,55Dに接続されている。そして、上向きの窒素導管55Bは、給水管6A、空気導管54Bと並行して延び、それぞれの階で後述の切替バルブ56〜58を介してアラーム弁17〜19に接続されている。
【0123】
また、下向きに延びる窒素導管55Cは、給水管6B、空気導管54Cと並行して延び、(n−1)階で後述の切替バルブ59を介してアラーム弁20に接続されている。一方、別の窒素導管55Dは、泡供給管9、空気導管54Dと同様に(n−1)階の天井側に沿って延設され、その先端側が後述の切替バルブ60に接続されている。
【0124】
56は建物1の(n+2)階に設けられたガス選択手段を構成する切替バルブで、該切替バルブ56は、例えば三方弁等の電磁式方向制御弁により構成され、2つの流入側が空気導管54Bと窒素導管55Bとに接続されている。また、切替バルブ56の流出側は通気管部56Aとなり、この通気管部56Aは、第1の実施の形態で述べた分岐管16Bに替わってアラーム弁17の一方の流入側に接続されている。
【0125】
ここで、切替バルブ56は、後述の指令装置62により制御装置61を介して切替制御され、空気導管54Bと窒素導管55Bのいずれか一方を通気管部56Aに接続する。これにより、切替バルブ56は、その通気管部56Aをアラーム弁17を介して2次側配管21に連通させ、空気導管54Bまたは窒素導管55Bから2次側配管21に向けて加圧空気または窒素ガスが流通するのを許すものである。
【0126】
57は建物1の(n+1)階に設けられたガス選択手段としての切替バルブを示し、該切替バルブ57は、前述した(n+2)階の切替バルブ56と同様に構成され、アラーム弁18の流入側に接続される通気管部57Aを有している。また、建物1の(n)階には、通気管部58Aを有する切替バルブ58が同様に設けられ、(n−1)階にも、通気管部59Aを有する切替バルブ59と、通気管部60Aを有する切替バルブ60とが同様に設けられている。
【0127】
61はマイクロコンピュータ等によって構成された制御装置で、該制御装置61は、第1の実施の形態で述べた制御装置47とほぼ同様に構成され、図7に示す如く入力側が圧力センサ30〜34、配管内センサ35〜39、酸素センサ40,41、火災検知器等からなる火災センサ48および指令装置62等に接続されている。
【0128】
そして、制御装置61は、出力側が揚水ポンプ5、泡消火ポンプ8、末端バルブ25〜28、報知装置49、加圧空気源51、窒素ガス源52および切替バルブ56〜60等に接続されている。
【0129】
また、制御装置61は、ROM、RAM等からなる記憶部61Aを有し、この記憶部61A内には、火災発生時の消火制御処理(図示せず)、これに伴う前処理としてのガス供給処理(図8参照)等を行うための処理プログラム等が格納されている。そして、制御装置61は、図8に一例として示した処理手順に従って2次側配管21〜24に対するガス供給処理を行うガス供給手段を実現するものである。
【0130】
また、制御装置61は、火災の発生時に圧力センサ30〜33のいずれかで2次側配管21〜24の圧力が急激に低下すると、これに伴ってアラーム弁17〜20のいずれかを開弁させ、消火用水を放出させる消火物質放出手段を構成するものである。
【0131】
また、前記指令装置62は、手動操作される選択スイッチ等により構成され、例えば(n+2)〜(n−1)階の切替バルブ56〜60を、空気導管54B,54C,54Dと窒素導管55B,55C,55Dとのいずれか一方に選択的に切替えるための操作を行うものである。
【0132】
ここで、制御装置61によるガス供給処理について、図8を参照して説明するに、処理動作がスタートすると、ステップ31で各階、即ち(n+2)〜(n−1)階の末端バルブ25〜28を全て開き、加圧空気源51を作動させると共に、窒素ガス源52も作動させる。
【0133】
次に、ステップ32では、指令装置62からの指令信号に従って所定階としての特定階、例えば(n+2),(n+1)階の切替バルブ56,57を空気導管54B側に切替制御し、(n+2),(n+1)階の2次側配管21,22内に切替バルブ56,57の通気管部56A,57A、アラーム弁17,18を介して加圧空気を導入する。
【0134】
また、ステップ33では、指令装置62からの指令信号に従って残りの階、例えば(n),(n−1)階の切替バルブ58,59,60を窒素導管55B,55C,55D側に切替制御し、(n),(n−1)階の2次側配管23,24、感知配管45内に切替バルブ58,59,60の通気管部58A,59A,60A、アラーム弁19,20、一斉開放弁44等を介して窒素ガスを導入する。
【0135】
次に、ステップ34では、所定階である(n+2),(n+1)階の末端バルブ25,26を閉じ、所定階の2次側配管21,22内を空気導管54Bからの加圧空気で満たすようにする。
【0136】
また、ステップ35では残りの他の階、例えば(n),(n−1)階の末端バルブ27,28を閉じ、2次側配管23,24、感知配管45内を窒素導管55B,55C,55Dからの窒素ガスで満たすようにする。
【0137】
そして、次なるステップ36では、各階の2次側配管21〜24、感知配管45において内圧が規定圧(0.1MPa)に達すると、各階のアラーム弁17〜20、一斉開放弁44が自動的に閉弁し、2次側配管21〜24、感知配管45内への加圧空気または窒素ガスの供給は停止される。この段階で各階の2次側配管21〜24、感知配管45は、その内部が加圧空気または窒素ガスにより大気圧よりも高い規定圧(例えば、0.1MPa程度)に保たれている。
【0138】
次に、ステップ37では、仮に2次側配管21〜24のいずれかでスプリンクラーヘッド21A〜21C,22A,22B,23A,24A等から僅かなガス漏れが発生し、2次側配管21,22,23または24内の圧力が規定圧よりも低下すると、圧力が低下した2次側配管内には、それぞれ選択したガスが規定圧になるまで補充される。
【0139】
即ち、2次側配管21,22内でガス漏れによる圧力低下が発生すると、空気導管54B側から切替バルブ56,57、通気管部56A,57A、アラーム弁17,18を介して2次側配管21,22内に加圧空気が補充(供給)される。また、2次側配管23,24内でガス漏れによる圧力低下が発生すると、窒素導管55B,55Cから切替バルブ58,59の通気管部58A,59A、アラーム弁19,20等を介して2次側配管23,24内に窒素ガスが補充される。
【0140】
そして、該当する2次側配管21,22,23または24の内圧が規定圧まで上昇すると、再びアラーム弁17,18,19または20が自動的に閉弁されて選択したガスの補充は停止される。また、(n−1)階の感知配管45についても、感知ヘッド45A等から僅かなガス漏れが発生すると、切替バルブ60の通気管部60A、アラーム弁43、一斉開放弁44等を介して感知配管45内には同様に窒素ガスを補充するものである。そして、その後はステップ38でメインの制御処理にリターンする。
【0141】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができ、例えば密閉性の高い小さな区画室2B,3B等が存在する建物1においても、安全性を高めて酸欠等の発生を抑えることができると共に、火災発生時の消火性能を向上することができる。
【0142】
特に、本実施の形態では、各階毎に切替バルブ56〜60を設けると共に、指令装置62の選択操作によって、切替バルブ56〜60を空気導管54B,54C,54Dと窒素導管55B,55C,55Dとのいずれか一方に選択的に切替えて接続する構成としている。
【0143】
このため、配管ライン53の2次側配管21〜24に対して空気導管54B,54Cを接続するか、窒素導管55B,55Cを接続するかを指令装置62側で任意に選択することができ、2次側配管21〜24内に向けて加圧空気と窒素ガスとを選択的に供給する制御を円滑に高精度で行うことができる。そして、例えば小さな区画室2B,3B等で酸素濃度が低下する等の不具合を解消でき、他の内部空間側では2次側配管内に錆が発生するのを抑えることができる。
【0144】
次に、図9は本発明の変形例を示し、この変形例でも、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号付し、その説明を省略する。しかし、この変形例においては、弁装置としてアラーム弁17〜20(図1参照)を外部から開,閉制御可能な構成としているものである。
【0145】
そして、図9の変形例によるガス供給処理では、各階の2次側配管21〜24内が大気圧の状態で処理動作がスタートし、ステップ41では特定階、例えば(n+2),(n+1)階のアラーム弁17,18を開き、他の階である(n),(n−1)階ではアラーム弁19,20を閉弁状態に保つ制御を行う。
【0146】
次に、ステップ42では、窒素ガス発生装置10を駆動し、特定階である(n+2),(n+1)階の2次側配管21,22内に加圧空気を供給する。即ち、窒素ガス発生装置10は運転開始時の初期段階において窒素ガスの濃度が低く、酸素と窒素の比率が大気中の空気とほとんど変わりがないので、この段階では、窒素発生機12から通気管16、分岐管16B,16C等に加圧空気が供給され、この加圧空気はアラーム弁17,18を介して2次側配管21,22内に供給される。
【0147】
そして、次なるステップ43では、特定階である(n+2),(n+1)階の2次側配管21,22内が加圧空気によって規定圧(0.1MPa)まで上昇すると、特定階のアラーム弁17,18が自動的に閉弁し、2次側配管21,22内への加圧空気の供給は停止される。
【0148】
また、ステップ44では、他の階である(n),(n−1)階においてアラーム弁19,20を開弁させると共に、末端バルブ27,28を予め決められた所定時間だけ開弁させる。このため、(n),(n−1)階の2次側配管23,24内では、内部の空気が窒素発生機12からのガス(窒素ガスの濃度が高くなっているガス)により末端バルブ27,28から排出される。
【0149】
そして、2次側配管23,24内が窒素ガスで満たされるようになると、末端バルブ27,28が閉弁される。そして、次なるステップ45では、他の階である(n),(n−1)階の2次側配管23,24内が窒素ガスによって規定圧まで上昇すると、アラーム弁19,20が自動的に開弁され、2次側配管23,24内に向けた窒素ガスの供給は停止される。
【0150】
また、次なるステップ46のように、仮に他の階の2次側配管23または24において、スプリンクラーヘッド23Aまたは24Aから僅かなガス漏れ等が発生し、内部の圧力が規定圧よりも低下すると、圧力が低下した2次側配管23または24内には、通気管16の分岐管16B,16Cからアラーム弁19または20を介して窒素ガスが補充(供給)される。
【0151】
そして、該当する2次側配管23または24の内圧が規定圧まで上昇すると、再びアラーム弁19または20が閉弁されて窒素ガスの補充(供給)は停止される。また、(n−1)階の感知配管45についても、感知ヘッド45A等から僅かなガス漏れが発生すると、アラーム弁43、一斉開放弁44を介して感知配管45内には同様に窒素ガスを補充(供給)することができる。
【0152】
また、ステップ47のように、仮に特定階の2次側配管21,22のいずれかでスプリンクラーヘッド21A〜21C,22A,22B等から僅かなガス漏れが発生し、2次側配管21または22内の圧力が規定圧よりも低下すると、圧力が低下した2次側配管内には、下記のように加圧空気を補充(供給)し、その後はステップ48でメインの制御処理にリターンする。
【0153】
即ち、この場合には図1に示す窒素ガス発生装置10のガス分離バルブ13を閉じ、空気供給バルブ14を開弁することにより、空気圧縮機11から通気管16内に向けて加圧空気(圧縮空気)を吐出できるようにする。また、分岐管16Cの下端側に設けた排出弁29を一時的に開弁し、通気管16の分岐管16B,16C等から窒素ガスを排出させる。
【0154】
これにより、特定階の2次側配管21または22内には、通気管16の分岐管16Bからアラーム弁17を介して加圧空気が供給され、2次側配管21または22内が加圧空気により規定圧まで上昇すると、アラーム弁17または18が閉弁されて加圧空気の補充(供給)が停止される。
【0155】
かくして、このような構成を有する変形例においても、前記第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができ、例えばガス漏れ等の原因で2次側配管21,22,23または24内の圧力が規定圧よりも低下したときには、圧力が低下した2次側配管内にそれぞれ選択したガスを規定圧になるまで補充することができる。
【0156】
なお、前記各実施の形態では、(n−1)〜(n+2)階の建物1に消火装置を適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1階または2階建ての建築物、3階建て以上の建築物、中,高層階の建築物等にも消火装置として広く適用できるものである。
【0157】
また、前記各実施の形態では、(n−1)階に泡消火管42と感知配管45とを配設した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば(n)〜(n+2)階においても、消火管42および感知配管45等からなる泡消火設備を設ける構成としてもよいものである。
【0158】
また、前記各実施の形態では、アラーム弁17〜20を三方弁等により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2次側配管21〜24内が予め決められた所定圧以下になると、この2次側配管21〜24をガス供給配管(例えば、通気管16、空気配管54または窒素配管55)側に連通(接続)させるパイロット弁等により構成してもよいものである。
【0159】
さらに、前記各実施の形態では、低活性ガスとして窒素ガスを用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば常温かつ配管内の最高圧力において、不活性なガスであればよく、例えばヘリウム等を低活性ガスとして用いてもよい。そして、ヘリウム等の低活性ガスを用いる場合には、ガス供給源としてガスボンベ等を用いるようにすればよい。このため、ヘリウムよりも窒素ガスの方が好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1の実施の形態による消火装置を建物に適用した場合を示す全体構成図である。
【図2】図1に示す消火装置の制御ブロック図である。
【図3】図1中の2次側配管に対するガス供給処理を示す流れ図である。
【図4】図2中の制御装置によるガス漏洩対策処理を示す流れ図である。
【図5】第2の実施の形態によるガス供給処理を示す流れ図である。
【図6】第3の実施の形態による消火装置を建物に適用した場合を示す全体構成図である。
【図7】図6に示す消火装置の制御ブロック図である。
【図8】図7中の2次側配管に対するガス供給処理を示す流れ図である。
【図9】本発明の変形例によるガス供給処理を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0161】
1 建物(建築物)
2A,2B,2C,3A,3B 区画室(内部空間)
4 消火水槽
5 揚水ポンプ(スプリンクラーポンプ)
6A,6B 給水管(消火物質供給配管)
8 泡消火ポンプ
9 泡供給配管(消火物質供給配管)
10 窒素ガス発生装置(ガス供給源)
11 空気圧縮機
12 窒素発生機
13 ガス分離バルブ
14 空気供給バルブ
15,53 配管ライン
16 通気管(ガス供給配管)
16B,16C 分岐管(ガス供給配管)
17,18,19,20 アラーム弁(弁装置)
21,22,23,24 2次側配管(吐出側配管)
21A,21B,21C,22A,22B,23A,24A スプリンクラーヘッド(吐出口)
25,26,27,28 末端バルブ
29 排出弁
30,31,32,33,34 圧力センサ
35,36,37,38,39 配管内センサ(配管内酸素濃度検出手段)
40,41 酸素センサ(酸素濃度検出手段)
42 泡消火管
42A 泡ヘッド(吐出口)
43 アラーム弁
44 一斉開放弁
45 感知配管
45A 感知ヘッド
46 泡手動起動弁
47,61 制御装置
48 火災センサ
49 報知装置
51 加圧空気源(ガス供給源)
52 窒素ガス源(ガス供給源)
54 空気配管(ガス供給配管)
54B,54C 空気導管(ガス供給配管)
55 窒素配管(ガス供給配管)
55B,55C 窒素導管(ガス供給配管)
56,57,58,59 切替バルブ
62 指令装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に一または複数の吐出口を有する配管ラインを配置して設け、火災の発生時に前記配管ラインの吐出口から消火物質を放出してなる建築物用消火装置において、
前記配管ラインには、前記消火物質の他に低活性ガスと酸素含有ガスとを選択的に導入する構成としたことを特徴とする建築物用消火装置。
【請求項2】
建築物に配置して設けられ一または複数の吐出口を有した配管ラインと、
火災発生時の熱に応じて該配管ラインの吐出口を開通させる開通手段と、
前記配管ライン内の圧力が予め決められた規定圧力になるまで前記配管ライン内に酸素含有ガスと低活性ガスとを選択的に供給するガス供給手段と、
前記配管ライン内のガス圧が前記規定圧力よりも十分に低い圧力値まで低下したときに、前記配管ラインの吐出口から消火物資を放出する消火物質放出手段とから構成してなる建築物用消火装置。
【請求項3】
前記配管ラインは、前記消火物質を供給する消火物質供給配管と、前記低活性ガス及び/又は酸素含有ガスを供給するガス供給配管と、前記吐出口が設けられた吐出側配管と、該吐出側配管を前記消火物質供給配管とガス供給配管とのいずれか一方に選択的に接続する弁装置とにより構成してなる請求項1または2に記載の建築物用消火装置。
【請求項4】
前記ガス供給配管は、前記吐出側配管に向けて低活性ガスを供給する低活性ガス供給配管と、前記吐出側配管に向けて酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給配管とにより構成してなる請求項3に記載の建築物用消火装置。
【請求項5】
前記建築物に設けられた複数の内部空間のうち少なくとも一の内部空間には酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段を設け、該酸素濃度検出手段による前記内部空間内の酸素濃度が基準値の範囲内にあるときには、前記配管ラインに低活性ガスを供給し、前記酸素濃度が基準値以下となったときには、前記配管ラインに酸素含有ガスを供給する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の建築物用消火装置。
【請求項6】
前記吐出側配管は、前記消火物質供給配管とガス供給配管とに対し複数本に分岐して設け、これら複数の吐出側配管のうち一の吐出側配管には酸素含有ガスを供給し、他の吐出側配管には低活性ガスを供給する構成としてなる請求項3または4に記載の建築物用消火装置。
【請求項7】
前記ガス供給配管は、一側が低活性ガスと酸素含有ガスを選択的に供給可能なガス供給源に接続され他側が前記一の吐出側配管と他の吐出側配管とのいずれかに制御装置によって選択的に接続される構成とし、該制御装置は、前記ガス供給源からガス供給配管に酸素含有ガスが供給されるときに前記ガス供給配管を一の吐出側配管に接続し、前記ガス供給源からガス供給配管に低活性ガスが供給されるときには前記ガス供給配管を他の吐出側配管に接続する制御を行う構成としてなる請求項6に記載の建築物用消火装置。
【請求項8】
前記一の吐出側配管には配管内の酸素濃度を検出する配管内酸素濃度検出手段を設け、前記制御装置は、該配管内酸素濃度検出手段が所定の酸素濃度以下になったことを検知したときに、前記ガス供給源からガス供給配管を介して前記一の吐出側配管に酸素含有ガスを供給する制御を行う構成としてなる請求項7に記載の建築物用消火装置。
【請求項9】
前記ガス供給源は、低活性ガスである窒素ガスと酸素含有ガスである加圧空気とを供給する窒素ガス発生装置により構成してなる請求項7または8に記載の建築物用消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−79946(P2008−79946A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265005(P2006−265005)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(591200656)斎久工業株式会社 (5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】