説明

建築用吸音パネル

【課題】ショッピングモール、体育館、教会等の建築物の内壁として、室内で発生する騒音を吸音することで快適な室内空間の維持するとともに高品格なインテリア仕上材や商品の陳列棚を設置することのできる、吸音、遮音機能を有する建築用吸音パネル。
【解決手段】前面で騒音を放射、乱反射、吸音、遮音できるように奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部20と、騒音乱反射突出部20間の板材10に騒音吸音孔をアルミニウム等の押出成形板にて形成し、板材10の裏面には騒音吸音孔と密着する吸音材50を設け、騒音吸音効果を増大させる。吸音材50は板材10に形成された間隔保持片11に形成された翼片に嵌め合わせたりケース55に収容して取付ける。製造が容易であり、内壁面の装飾機能を発揮できる。さらに騒音乱反射突出部20に商品陳列棚を載せられる棚ブラケットを締結して商品を陳列することができ利便性を増大できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多くの人々が集まるショッピングモール、体育館、教会等の建築物の内壁として構成され、室内で発生する騒音を吸音することで快適な室内空間を維持するとともに高品格なインテリア仕上材として利用することができ、ショッピングモール等では商品の陳列棚を設置することのできる、吸音、遮音機能を有する建築用の吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
都市生活が発展するにつれて、多くの人々が集まるショッピングモール、体育館、教会、テーマパーク、劇場、音楽堂、室内公演場、スタジオ、ホームシアタールームなど、大型の建築物が建築されている。他方、生活水準の向上に伴って快適な文化的生活が求められており、室内の騒音規制は強化されている。
【0003】
特に、多くの人々が往来するショッピングモールでは、訪問客の声、販売員による宣伝、ショッピングカート等から発生する騒音によって、気楽に心地よくショッピングすることができなくなり、それにつれて商品の販売実績も低下し、また多くの消費者が精神的、肉体的にも疲れを感じてしまって、買い物を避けてしまうこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした問題点を改善するために、ショッピングモールでは騒音低減性や遮音性のある機能性パネルを内壁に設置している。しかしながら、そのような既存の機能性パネルは構造が複雑であり、特にショッピングモールの内壁については機能性だけでなく外観における美観性も要求され、それらを同時に提供しているものは無い。
【0005】
既存の吸音パネルで知られているように、吸音性に優れる岩綿、ガラス繊維、不織布等の無機繊維系の圧縮パネルを内壁面に設け、その外皮として繊維織物又は一般的な壁紙などを付けることで、騒音の低減と美観の増大を達成しようとするものがある。しかしながら不織布等は火災に弱く、ガラス繊維等は人体に有害であるとして建築法で使用が規制されており、岩綿等は重量が重く価格が高いという欠点がある。
【0006】
また、このような従来の吸音パネルによる防音施設は施工が難しい上に、吸音パネルとは別にインテリア仕上材も必要となるため、費用及び工事期間が増加するという問題点があり、しかも騒音の遮音効果も低いという短所もある。
【0007】
このような弊害を改善するための先行技術として、大韓民国実用新案登録第20−0337820号では、岩綿、ガラス繊維、不織布等の無機繊維系の圧縮パネルにおける両端に、組立て突起と組立て溝を形成することで、複数枚のパネルの連結を可能とする一方で、前面に半円形状の線形突出部を形成し、その線形突出部の間に吸音孔を形成し、裏面に吸音孔よりも大きな空間を有する音波減衰吸音孔を設けることにより騒音を低減させる技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、この先行技術は岩綿、不織布等にて形成するものであることから、製造が困難であり、またパネルの外面を2次装飾しなければならないという短所があり、しかも、単に吸音孔と連通する音波減衰吸音孔を設けるだけでは効果的に吸音、遮音機能を発揮するのが難しく、ショッピングモールのような大型建築物内では消音効果を期待し難いという短所がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような従来技術の問題点を解消するために提案された本発明は、アルミニウム等の金属板を押出成形するが、前面で騒音を放射、乱反射、吸音、遮音できるように奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部を設ける。また、上下で隣接する騒音乱反射突出部どうしの間の板材部分には騒音吸音孔を設けて騒音を吸音できるようにする。さらに、板材の裏面に騒音吸音孔と密着する公知の吸音材を設けることで、騒音吸音効果を増大させる。吸音材は、板材に突設した間隔保持片から上下方向に形成された翼片の内側に位置するように嵌め合わせて取付けたり、板材に取付可能なケースに収容して取付けることができる。
【0010】
このような本発明は、容易に製造することができ、吸音パネルだけでも内壁面の装飾機能を発揮することができるとともに、騒音乱反射突出部には商品陳列棚を載せることができ、棚ブラケットを締結して商品を陳列できるようにすることにより、利便性を増大することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アルミニウム等の金属板を押出成形するが、前面で騒音を放射、乱反射、吸音、遮音できるように奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部によって、また上下で隣接する騒音乱反射突出部どうしの間の板材の部分に騒音吸音孔を設けることによって、騒音を吸音することができる。板材の裏面に騒音吸音孔と密着する公知の吸音材を設けることで、騒音吸音効果を増大させることができる。上記吸音材は板材に突出形成された間隔保持片から上下に延長形成された翼片の内側に位置するように嵌め合わせたり、あるいは板材に取付け可能なケースに収容して取付けることができ、本発明は容易に製造することができる。また、吸音パネルだけでも内壁面の装飾機能を発揮できるとともに、騒音乱反射突出部に商品陳列棚を載せられる棚ブラケットを締結して商品を陳列できるようにすることにより利便性を増大することができる。さらに、耐湿性に優れており、例えば室内プールの内壁にも適用可能である。そして、多様なカラー演出も容易にできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の望ましい実施形態について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態による吸音パネル、吸音材、ケースの分解斜視図であり、図2は図1の使用状態を図示した断面図である。
【0014】
図3の分図(a)は、本発明の第2実施形態に基づく吸音パネル、吸音材の分解斜視図であり、分図(b)は、本発明の吸音パネルに騒音吸収孔を穿孔した状態の斜視図である。図4は図3の使用状態を示す断面図である。
【0015】
図5の分図(a)(b)(c)(d)(e)(f)は本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔を図示したものであり、図6の分図(a)(b)(c)は本発明の吸音パネルの他の形状を示す斜視図である。
【0016】
図7は、本発明の吸音パネルに実施可能な棚ブラケットを締結した状態を示す断面図である。
【0017】
本発明の第1実施形態は、図1、図2で示すように、アルミニウム等の金属又は樹脂板を押出成形して形成するが、板材(10)の前面で騒音を放射、乱反射、吸音、遮音できるように奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部(20)を一定の間隔で形成する。また、板材(10)の上端部と下端部には、“コ”形の締結部(30)と“L”形の締結部(30)を形成する。そして上部仕上げ材(40)及び下部仕上げ材(40)と複数の吸音パネル(100)を連続的に締結することで、壁面を構成できるようにしている。
【0018】
上端の“コ”形の締結部(30)の内側面には、溝部分が形成されている。下端の“L”形の締結部(30)には、その溝部分と嵌合する突出部が形成されている。そして、上側の板材(10)の“L”形の締結部(30)の突出部が、下側の板材(10)の“コ”形の締結部(30)の溝部分と結合することで、上下の吸音パネル(100)どうしを連結することができる。また、上部仕上げ材(40)と下部仕上げ材(40)は、締結部(30)として結合する凹凸部とともに、1つの騒音乱反射突出部(20)を有するように構成される。
【0019】
以上のような本発明の第1実施形態によれば、図2で示すように、建築物の壁面(200)に対してねじで締結され、吸音パネル(100)としての機能を発揮するとともに、騒音乱反射突出部(20)の凹凸形状による装飾効果を発揮することができる。そして、この騒音乱反射突出部(20)に公知の棚ブラケット(60)を固定して、商品陳列棚(61)を簡単に取付けることができるようになっている。
【0020】
本発明の第2実施形態では、図3、図4で示すように、騒音を放射、乱反射、吸音、遮音できるように奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部(20)を設けた板材(10)の裏面に、一定間隔ごとに突出する間隔保持片(11)と、間隔保持片(11)の突出端部から上下方向に延長する翼片(12)とを形成し、そして翼片(12)の内側に締結板(51)と吸音材(50)を嵌合し固定することで、騒音の吸音と遮音性を向上した建築用吸音パネル(100)を構成する。
【0021】
本発明は、図4及び第1実施形態で図示したとおり、建築物の壁面(200)にねじで締結されて吸音パネル(100)としての機能を発揮するとともに、騒音乱反射突出部(20)の凹凸形状による装飾効果を発揮することができる。そして、この騒音乱反射突出部(20)に公知の棚ブラケット(60)を固定して、商品陳列棚(61)を簡単に取付けることができるようになっている。
【0022】
第2実施形態の板材(10)における上下で隣接する騒音乱反射突出部(20)の間の部分には、図3(b)に示す騒音吸音孔(15)のうちの少なくとも何れか1つを穿孔することで、騒音が容易に吸音材(50)により吸音できるようにすることが望ましい。もちろん、図3(a)で示すように、騒音吸音孔(15)を穿孔しないようにすることもできる。
【0023】
なお、まだ説明していない符号300は、壁面に本発明の吸音パネル(100)を固定するための木製の支持材である。
【0024】
以上のように構成される本発明の吸音パネルの作用・効果を、添付図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明は、多くの人々の往来によって大きな騒音が発生するショッピングモール、講堂、会議室、教会等の内壁面として構成することができる。すなわち、騒音が多い建築物で騒音を吸収するために、図2、図4で示すように、壁面(200)に木製の支持材(300)を縦方向に取付けた状態とし、この支持材(300)に下部仕上げ材(40)を壁面と交差する下部に締結して固定したり、または支持材(300)における吸音パネル(100)を設置する位置に下部仕上げ材(40)をねじ等で壁面に締結して固定する。
【0026】
このようにして固定した下部仕上げ材(40)の上端に、図1、図2で示すように吸音材(50)を締結した第1の吸音パネル(100)の下端締結部(30)を嵌め合わせるようにし、その第1の吸音パネル(100)の板材(10)の上端部分を、ねじを利用して支持材(300)に締結して固定する。そして、第1の吸音パネル(100)の板材(10)の上端部に、第2の吸音パネル(100)を連続して締結し、以降同様にして第3、第4・・・のようにさらに他の吸音パネル(100)を連結していくことで、壁面を構成する。
【0027】
この際、支持材(300)は、ケース(55)を受容可能な深さと、吸音パネル(100)と密着した状態でねじを締結可能な高さと、をもつ突出部として構成するのが望ましい。
【0028】
このような吸音パネル(100)によって壁面が構成され、最終的には最上端の吸音パネル(100)の板材(10)の上端部に上部仕上げ材(40)を連結し、ねじで固定することで壁面を構成することができる。
【0029】
また、第2実施形態では、上記のとおり吸音パネル(100)の裏面から突出する翼片(12)に対して、締結板(51)と吸音材(50)とを一緒に嵌め入れて安定的に固定しておく。そして、この吸音パネル(100)を、上記の第1実施例と同様に、壁面(200)に締結された支持材(300)に下部仕上げ材(40)を締結し、この下部仕上げ材(40)に第1の吸音パネル(100)を連結し、さらに第2、第3・・・のように他の吸音パネル(100)を連結していくことで、壁面を構成する。
【0030】
以上のようにして吸音パネル(100)と吸音パネル(100)を簡便に締結できる簡単な構成によって、簡単な作業で壁面を構築することができる。また、吸音パネル(100)の前面に突出する騒音乱反射突出部(20)によって、吸音、乱反射等の騒音低減機能を発揮するとともに、室内のインテリア効果を発揮することができる。さらに、これらの効果を発揮する吸音パネルは押出成形によって容易に製造することができる。
【0031】
以上のような吸音パネル(100)には、使用状態図と同様に、商品陳列棚(61)を載置することのできる棚ブラケット(60)を嵌め合わせることにより、ショッピングモール等において、壁面での商品陳列を容易に行うことができる。棚ブラケット(60)は、図7の分図(a)(b)(c)(d)のうちの何れかを選択して使用することが可能であり、もちろんその他の棚ブラケットを使用することもできる。
【0032】
本発明の吸音パネル(100)で騒音を吸音、乱反射、低減するための中空形状の騒音乱反射突出部(20)は、図示の形状だけでなく、吸音、低減効果の増大を目的として他の形状に形成することができ、その形状は騒音減少機能を高めるためのものであり、特に音波減衰機能を高められる形状だとすればさらに望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態による吸音パネル、吸音材、ケースを分離して示す分解斜視図。
【図2】図1の吸音パネルの使用状態を示す断面図。
【図3a】本発明の第2実施形態による吸音パネル、吸音材の分解斜視図。
【図3b】第2実施形態の吸音パネルに騒音吸音孔を穿孔する例を示す斜視図。
【図4】図3の吸音パネルの使用状態を示す断面図。
【図5a】本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔の一例を示す説明図。
【図5b】本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔の一例を示す説明図。
【図5c】本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔の一例を示す説明図。
【図5d】本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔の一例を示す説明図。
【図5e】本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔の一例を示す説明図。
【図5f】本発明の吸音パネルの板材に設ける騒音吸音孔の一例を示す説明図。
【図6a】本発明の吸音パネルの他の形状を示す斜視図。
【図6b】本発明の吸音パネルの他の形状を示す斜視図。
【図6c】本発明の吸音パネルの他の形状を示す斜視図。
【図7】本発明の吸音パネルに棚を設置した実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
10 板材
11 間隔保持片
12 翼片
13 締結凹凸部
15 騒音吸音孔
20 騒音乱反射突出部
30 締結部
40 上部仕上げ材、下部仕上げ材
50 吸音材
51 締結板
55 ケース
60 棚ブラケット
61 商品陳列棚
100 吸音パネル
200 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形された板材(10)を有しており、
該板材(10)の前面には、奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部(20)が所定間隔で突出形成されており、該板材の上下端部には、他の板材(10)又は仕上げ材(40)を連結する締結部(30)が形成されており、該板材の裏面には、間隔保持片(11)が突出形成されており、
該間隔保持片(11)には、吸音材(50)を板材(10)と密着させて保持するケース(55)を取付ける締結凹凸部(13)を形成したことを特徴とする建築用吸音パネル。
【請求項2】
請求項1記載の建築用吸音パネルであって、
奥に空間部が形成される騒音乱反射突出部(20)を形成した板材(10)の裏面に、該裏面に突出する間隔保持片(11)と、その端部から上下に延長した翼片(12)とを形成し、翼片(12)の内側に締結板(51)と吸音材(50)とを嵌めて固定することを特徴とする建築用吸音パネル。
【請求項3】
請求項1記載の建築用吸音パネルであって、
騒音乱反射突出部(20)は、奥に空間部が形成される円形、楕円形、四角、三角、多角形のうち何れか1つの形状で形成されることを特徴とする建築用吸音パネル。
【請求項4】
請求項1記載の建築用吸音パネルであって、
騒音乱反射突出部(20)に棚ブラケットを固定し、棚ブラケットに商品陳列棚(61)を設けることを特徴とする建築用吸音パネル。
【請求項5】
請求項1記載の建築用吸音パネルであって、
隣接する騒音乱反射突出部(20)どうしの間の板材(10)の部分に、円形、四角、多角形のうち何れか1つの騒音吸音孔(15)を形成したことを特徴とする建築用吸音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−261207(P2008−261207A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88207(P2008−88207)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(504382176)
【Fターム(参考)】