説明

建築用型枠の間隔保持部材

【課題】 コンクリート注入時の障害を少なくしコンクリートの円滑な流れを保障してコンクリート欠損の発生を回避し、またコンクリート躯体の熱伝導率を低下させて、建物の断熱性を向上させ、さらに作業性を向上とコストダウンを図ることができる。
【解決手段】 建築用型枠の間隔保持部材Aは、線径φが6.9mm未満の金属製丸棒により構成されて一端部にL字状の屈曲部1bを有し、他端部に雄ネジ部1cを有するL型セパレータ1と、その雄ネジ部1cにねじ込まれるコーン2とより構成され、屈曲部1bが打込型枠10に固定され、雄ネジ部1cが、コーン2を介して型枠仮設材Tに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設空間を存し、相対向して互いに平行に立て込まれる、打込型枠および仮設型枠の間隔を一定に保持し、かつコンクリートの打設後は、コンクリート躯体内に埋め込まれる、建築用型枠の間隔保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート躯体を有する建築物において、そのコンクリート躯体を成形するために、コンクリート打設空間を存して互いに平行に立て込まれる、内、外側のコンクリート型枠を複数のアッセンブリタイ(間隔保持部材)により一体に結合したものは公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−76396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記内、外のコンクリート型枠の何れか一方の型枠を、断熱型枠などの打込型枠(コンクリート躯体の成型後に解体せずにそのまま残してコンクリート躯体の建材、たとえば、断熱壁として利用)とし、また、他方の型枠を、在来の合板型枠などの仮設型枠(コンクリート躯体の成型後に解体)とする建築用型枠が従来より知られている。このように、片側の型枠を打込型枠とし、他側の型枠を仮設型枠とした場合には、他側の仮設型枠を解体する必要があることから両型枠を一定間隔に固定するアッセンブリタイとしては、L型セパレータが用いられる。
【0004】
ところが、汎用品であるL型セパレータは、その線径φが6.95mmであり、この汎用L型セパレータを、前述の打込型枠と仮設型枠の間隔保持部材として使用すると、線径φ6.95mmのL型セパレータが注入コンクリートの流れを阻害して打設コンクリートの欠損を回避するのが難しくなることに加えて、コンクリート注入の際の障害となり、施行不良の一因になるという問題があり、また、このL型セパレータの線径φ6.95mmは、本来必要とする線径φを超えていることからコスト高を招き、さらに、L型セパレータを構成する丸形鋼材などの金属材の熱伝導率は、コンクリートのそれよりもはるかに高い(約30倍)ので、必要以上に線径φの大きいL型セパレータを使用すれば、建物の断熱性を低下させる原因になるという問題もある。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、前記問題を解決できるようにした、新規な建築用型枠の間隔保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、コンクリートの打設空間を存し、相対向して互いに平行に立て込まれる、断熱型枠などの打込型枠および合板型枠などの仮設型枠の間隔を一定に保持し、かつコンクリートの打設後は、コンクリート躯体内に埋め込まれる、建築用型枠の間隔保持部材であって、
線径φが6.9mm未満の金属製丸棒により構成されて一端部にL字状の屈曲部を有し 、他端部に雄ネジ部を有するL型セパレータと、このL型セパレータの雄ネジ部に螺着されるコーンとを備え、
前記L型セパレータは、その屈曲部が前記打込型枠に差込み支持され、またその雄ネジ部が前記仮設型枠の外側に配設される型枠仮設材と前記コーンとの間に固定されて前記型枠仮設材に着脱可能に支持されることを特徴としている。
【0007】
また、上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、前記請求項1記載のものにおいて、L型セパレータの屈曲部の屈曲角は略85°であることを特徴としている。
【0008】
さらに、上記目的を達成するために、請求項3記載の発明は、前記請求項1または2記載のものにおいて、前記型枠仮設材は、仮設型枠の外側に組み込まれるL型鋼材を備え、そのL型鋼材によりL型セパレータが支持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本請求項各項の発明によれば、コンクリート注入時の障害を少なくしコンクリートの円滑な流れを保障してコンクリート欠損の発生を回避することができ、また、コンクリート躯体の熱伝導率を低下させて、建物の断熱性を向上させることができ、さらに間隔保持部材を構成するL型セパレータは、その軽量化に伴い作業性を向上させることができ、またそのコストダウンを図ることができる。
【0010】
また本請求項2項の発明によれば、L型セパレータの屈曲部の打込型枠への差込強度が高められる。
【0011】
また、請求項3項の発明によれば、型枠仮設材の構造の簡略化と、軽量化が可能になり、作業能率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0013】
図1〜図5は、本発明の第1実施例を示すもので、図1は、間隔保持部材の分解斜視図、図2は、間隔保持部材の分解断面図、図3は、間隔保持部材の型枠への組み付け途中の状態を示す斜視図、図4は、間隔保持部材の型枠への組み付完了状態の断面図、図5は、図4の5矢視仮想線囲い部分の拡大図である。
【0014】
図1,2に示すように、間隔保持部材Aは、L型セパレータ1とコーン2とより構成される。
【0015】
L型セパレータ1は、鋼材などの金属材よりなる線径φ6.9mm未満、好ましくは5〜6mm、この実施例では線径φ6mmの丸棒により作られており、直状の本体部1aと、その本体部1aの一端よりL字状に屈曲される屈曲部1bと、前記本体部1aの他端部の雄ネジ部1cとよりなり、屈曲部1bの本体部1aに対する屈曲角は85°であり、その端部は先鋭に形成されていて、後述する連結バー15の連結孔19に差し込み易く、かつ抜けにくくしてある。
【0016】
前記コーン2は、硬質の合成樹脂材により截頭円錐形に形成されており、その小径側端部に雌ネジ管3が埋設固定され、またその大径側端部に、雄ネジ杆4の基端が埋設固定される。前記雌ネジ管3は、L型セパレータ1の雄ねじ部1cにナット5と共にに螺着され、そのナット5の締め付けによりコーン2はL型セパレータ1の雄ねじ部1cに固定される。また、雄ネジ杆4には、後述する型枠仮設材Tのフォームタイ30が螺着される。
【0017】
コンクリート躯体を成形するための建築用型枠Mの一方、すなわち打込型枠(コンクリート躯体の成型後、解体せずに断熱建材として利用)としての断熱型枠10は、図3に示すように、硬質の断熱合成樹脂材により、全体が横長の長方形の板状に形成されており、その上端面には、連結バー15が、該断熱型枠10の全長にわたり固定される。
【0018】
前記断熱型枠10は、高断熱性であり、しかも軽量であるポリスチレン、ポリウレタンなどの硬質の発泡合成樹脂材により構成されており、その外面および内面は、いずれも平坦面に形成されている。また、断熱型枠10の上端面および下端面には、その全長にわたりその厚み方向の中間部にスリット11が形成される。
【0019】
図3〜5において、前記連結バー15は、金属板または硬質合成樹脂板により形成され、断熱型枠10の長手方向の長さと略同じ長さを有しており、平坦な板状に形成される水平部16と、この水平部16の一端より上下方向に略直角に対称的に起立形成される上、下差込部17,18とを備えて横断面横T状に形成される。前記水平部10には、その長手方向に間隔をあけて複数の連結孔19が穿設されて断熱型枠10の厚み幅よりも若干幅狭に形成されていて断熱型枠10が立て込まれるとき、それらの上端面と下端面との間に挟持される。また、前記上、下差込部17,18は、それらの先端に鋸歯状の抜止め歯17a,18aが一体に形成され、断熱型枠10のスリット11,11に差し込み結合される際に、抜止め歯17a,18aはスリット11,11に食い込んでその抜け出しが防止される。
【0020】
また、図3〜5に示すように、建築用型枠Mの他方は、仮設型枠で、この実施例では、合板型枠20(コンクリート躯体の成型後に解体される)が使用される。この合板型枠20には、後述の型枠仮設材Tのフォームタイ30を挿通するための複数の挿通孔21が穿設される。
【0021】
建築用型枠M、すなわち打込型枠10および仮設型枠20を建て込むための型枠仮設材(支保工)Tは、コーン2の雄ネジ杆3に螺挿されるフォームタイ30、単管よりなる縦、横端太材31,32、フォームタイ30にナット34で固定されるリブ座金33より構成されている。
【0022】
図4に示すように、コンクリートの打設空間Sを存して互いに平行に立て込まれる打込型枠、すなわち断熱型枠10と、仮設型枠、すなわち合板型枠20は複数の、本発明にかかる間隔保持枠部材Aにより一体に連結される。
【0023】
断熱型枠10に間隔保持枠部材Aを連結するには、図3,4に示すように、断熱型枠10の上面に予め固定されている連結バー14の連結穴19に、その上方からL型セパレータ1の屈曲部1bを差し込み連結する。
【0024】
つぎに、図 3〜5を参照して、複数の間隔保持部材Aを、互いに平行に建て込まれる断熱型枠10と合板型枠20との間に、型枠仮設材(支保工)Tを用いて固定する手順について説明する。
【0025】
断熱型枠10上の連結バー15の複数の連結孔19に、間隔保持部材AのL型セパレータ1の屈曲部1bをそれぞれ差し込み連結する。これにより、その屈曲部1bは、断熱型枠10に固定される。また、間隔保持部材Aの他端のコーン2の雄ネジ杆4を合板型枠20の挿通孔21を貫通させ、コーン2と型枠仮設材Tで合板型枠20に間隔保持部材Aを固定する。すなわち、合板型枠20の外側には、単管よりなる縦、横端太材31,32が縦横に組み付けられ、コーン2の雄ネジ杆4にねじ込み固定されるフォームタイ30は、縦、横の端太材31,32にリブ座金33を介してナット34により固定される。これにより、間隔保持部材のL型セパレータ1の雄ネジ部1cは、コーン2と型枠仮設材Tとで合板型枠20に固定される。複数の間隔保持部材Aの相互間の縦、横の施行ピッチは、約300mmである。
【0026】
図4に示すように、断熱型枠10と合板型枠20との間のコンクリート打設空間Sに、生コンクリートを打設することにより、建物のコンクリート躯体が成形される。
【0027】
コンクリート躯体の成形完了後は、一方の断熱型枠10は、解体することなく、そのまま建物の断熱建材として使用することができ、その際に、それらの平坦な外面には、モルタルなどの湿式外装材、あるいはタイルなどの乾式外装材を積層するのが容易である。また他方の合板型枠20は、型枠仮設材(支保工)Tの解体により、コンクリート躯体から分離して解体される。このとき、間隔保持部材Aは、L型セパレータ1を用いていることにより、合板型枠20のコンクリート躯体からの分離が容易になり、コンクリート躯体のコンクリート欠損の有無の確認が容易となる。
【0028】
ところで、間隔保持部材Aを構成するL型セパレータ1は、この実施例では、その線径φが6mmであり、すなわち汎用のL型セパレータの線径φ6.95mmよりも細くしたことで、L型セパレータ1として必要な強度を十分に維持しながら、コンクリート注入時の障害を少なくしてコンクリート欠損を避けることができる。また、熱伝導率の高い金属製L型セパレータ1の線径φを6mmとしたことにより、コンクリート躯体全体の熱伝導率を低下させ、建物の断熱性を向上させることができる。さらに、L型セパレータ1は、軽量であることから、その作業性がよく、またその製造コストの低減が可能である。
【0029】
なお、前記実施例では、L型セパレータ1の線径φを6mmとしているが、この線径φ6.9mm未満であればよい。
【0030】
つぎに、図6を参照して、本発明の第2実施例について説明する。
【0031】
図6は、間隔保持部材を、型枠に取り付けたときの断面図(前記第1実施例の図5対応図)である。
【0032】
この第2実施例は、型枠仮設材Tの構造が前記第1実施例と相違しており、型枠仮設材Tの端太材としてL型鋼材36が使用される。
【0033】
合板型枠20の外側には、単管よりなる縦端太材31の外側に横端太材として軽量なL型鋼材36(単管の約1/2の重量)が組み付けられる。コーン2に固定されるフォームタイ30は、L型鋼材36の通孔37を貫通して、ナット34によりL型鋼材36に固定される。L型セパレータ1は、施行ピッチが300mmであり、一本あたりの分担荷重が小さく、軽いL型鋼材36により荷重を受けることが可能になり、作業能率を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0035】
たとえば、前記実施例では、仮設型枠として合板型枠を用いた場合を説明したが、この合板型枠に代えて合成樹脂型枠、断熱型枠などの他の仮設型枠を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】間隔保持部材の分解斜視図
【図2】間隔保持部材の分解断面図
【図3】間隔保持部材の型枠への組み付け途中の状態を示す斜視図
【図4】間隔保持部材の型枠への組み付完了状態の断面図
【図5】図4の5矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図6】間隔保持部材を型枠に取り付けたときの断面図(第2実施例)
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・・・・・・・L型セパレータ
1b・・・・・・・・・・屈曲部
1c・・・・・・・・・・雄ネジ部
2・・・・・・・・・・・コーン
10・・・・・・・・・・打込型枠(断熱型枠)
20・・・・・・・・・・仮設型枠(合板型枠)
36・・・・・・・・・・L型鋼材
S・・・・・・・・・・・コンクリート打設空間
T・・・・・・・・・・・型枠仮設材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設空間(S)を存し、相対向して互いに平行に立て込まれる、断熱型枠などの打込型枠(10)および合板型枠などの仮設型枠(20)の間隔を一定に保持し、かつコンクリートの打設後は、コンクリート躯体内に埋め込まれる、建築用型枠の間隔保持部材であって、
線径φが6.9mm未満の金属製丸棒により構成されて一端部にL字状の屈曲部(1b)を有し、他端部に雄ネジ部(1c)を有するL型セパレータ(1)と、このL型セパレータ(1)の雄ネジ部(1c)に螺着されるコーン(2)とを備え、
前記L型セパレータ(1)は、その屈曲部(1b)が前記打込型枠(10)に差込み支持され、またその雄ネジ部(1c)が、前記仮設型枠(20)の外側に配設される型枠仮設材(T)と前記コーン(2)との間に固定されて前記型枠仮設材(T)に着脱可能に支持されることを特徴とする、建築用型枠の間隔保持部材。
【請求項2】
L型セパレータ(1)の屈曲部(1b)の屈曲角は略85°であることを特徴とする、前記請求項1記載の建築用型枠の間隔保持部材。
【請求項3】
前記型枠仮設材(T)は、仮設型枠(20)の外側に組み込まれるL型鋼材(36)を備え、そのL型鋼材(36)によりL型セパレータ(1)が支持されることを特徴とする、前記請求項1または2記載の建築用型枠の間隔保持部材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−41327(P2009−41327A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209815(P2007−209815)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(396000433)日崎建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】