説明

建設機械におけるメンテナンス構造

【課題】 エンジンルームの上方に、オペレータが座するシートの取付台座が配された建設機械において、シートの下方のエンジンルーム内に収納された機械装置のメンテナンスを、容易に行えるようにする。
【解決手段】 シート取付台座21bにメンテナンス用開口21cを開設し、該メンテナンス用開口21cを着脱自在なプレート22で覆蓋すると共に、該プレート22の上面部にシート6を取付けて、シート6と共にプレート22をシート取付台座22bから取り外すことでメンテナンス用開口21cが開くように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールロ−ダ等の建設機械におけるメンテナンス構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホイールローダ等の建設機械には、エンジンや該エンジンの動力により駆動する油圧ポンプ等の機械装置が収納されるエンジンルームが備えられているが、該エンジンルームは、収納されているエンジンや機械装置の点検、修理等のメンテナンスを行うことができるように、開閉自在に覆蓋する必要がある。
ところで、例えばミニホイールロ−ダのような小型の建設機械においては、スペース的に余裕がなく、そこで従来、前記エンジンルームの上方を開閉自在に覆蓋するエンジンフードの上面部に、建設機械を運転するオペレータが座するシートを取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このものでは、メンテナンスを行うべくエンジンフードを開閉すると、該エンジンフードと一体的にシートも動くことになる。
【特許文献1】特開平6−128982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、前記エンジンフードの上面部にシートを取付けたものでは、エンジンフード全体の重量が重くなるため、エンジンフードの開閉が煩わしく、メンテナンス性に劣るという問題がある。
また、前記ミニホイールロ−ダのような小型の建設機械であっても、オペレータの作業環境を向上させるため、シートの周囲をキャブで覆うことが要求される場合がある。ところが、前記エンジンフードの上面部にシートを取付けたものにおいて、シートの周囲をキャブで覆った場合、該キャブがエンジンフードの開閉の邪魔になるため、エンジンフードの開閉の度にキャブを取外さなければならず、面倒である許りか、寒冷地等においては、キャブ内の暖まった空気が外部に逃げてしまうという問題が生じる。
そこで、エンジンルームの上方全体を開閉自在なエンジンフードで覆うのではなく、シート取付部よりも後方側の部分のみを開閉自在なエンジンフードで覆うようにして、エンジンフードの重量が重くならないようにすると共に、キャブを取外すことなくエンジンフードを開閉できるように構成することが提唱される。しかるにこのものでは、メンテナンスを行うべくエンジンフードを開けてもシートは動かないため、該シートの下方に収納される機械装置のメンテナンス作業がしづらく、作業性に劣るという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、オペレータが座するシートの取付台座をエンジンルームの上方に配設してなる建設機械において、前記シート取付台座にメンテナンス用開口を開設し、該メンテナンス用開口を着脱自在なプレートで覆蓋すると共に、該プレートにシートを取付けたことを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、シートと共にプレートをシート取付台座から取外すことでメンテナンス用開口が開くことになり、ここからシートの下方のエンジンルーム内のメンテナンスを行えることになって、メンテナンス性に優れる。
請求項2の発明は、請求項1において、プレートは、該プレートにシートを取付けた状態で、シート取付台座に着脱自在に止着されることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、シートを取付けたままの状態でプレートの着脱を行えることになって、プレートの着脱が容易となり、メンテナンス性に優れる。
請求項3の発明は、請求項1または2において、シート取付台座に、エンジンルームを覆うカバー体を取付支持せしめると共に、プレートは、カバー体をシート取付台座に取付けた状態で、シート取付台座に着脱自在に止着されることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、カバー体を取付けたまま状態でプレートの着脱を行えることになって、プレートの着脱が容易となり、メンテナンス性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はホイールローダであって、該ホイールローダ1は、後輪2が設けられる後部車両1Aと、前輪3が設けられる前部車両1Bとを、連結部1Cを介して左右揺動自在に連結して構成されている。そして、後部車両1Aには、エンジン4等の機械装置が収納されるエンジンルーム5、オペレータが座するシート6やステアリングホイール7等が配される運転席部8、図示しない燃料タンク、作動油タンク等の各種部材が設けられる一方、前部車両1Bには、バケット9、アーム10等からなる作業装置11が装着されている等の基本的構成は従来通りであるが、本実施の形態のホイールローダ1の運転席部8は、キャブ12によって覆われている。
【0006】
13は前記後部車両1Aの基台となるリヤフレームであって、該リヤフレーム13は、運転席部8の床面を形成する架台フレーム14や、該架台フレーム14から垂下し、前後方向を向く面を有する左右一対のサイドフレーム15L、15R等から構成されている。そして、該左右のサイドフレーム15L、15Rの前端部間には上記連結部1Cが取付支持されると共に、該連結部1Cの後方側の左右のサイドフレーム15L、15Rのあいだには、前記エンジンルーム5の下半部が形成されている。
【0007】
一方、架台フレーム14は、左右のサイドフレーム15L、15Rの前半部の上端部間に支架される架台フレーム中央部14Sと、架台フレーム中央部14Sの左右両側に一体形成され、サイドフレーム15L、15Rから左右外方に突出する左右の架台フレームサイド部14L、14Rとから形成されているが、該架台フレームサイド部14L、14Rの後半部は、架台フレーム中央部14Sの後端よりも後方に延設された状態となっている。而して、架台フレームサイド部14L、14Rの後半部間は開口した状態になっており、これにより、架台フレームサイド部14L、14Rの後半部間の上方に、前記左右のサイドフレーム15L、15R間に形成されるエンジンルーム5の下半部と連続する状態でエンジンルーム5の上半部が形成されている。
【0008】
前記エンジンルーム5には、エンジン4、ラジエータやオイルクーラー等の冷却装置16、エンジン4の動力により駆動する油圧ポンプやHST装置等の油圧機器17、図示しないバッテリなど、各種の機械装置が収納されるが、該エンジンルーム5の下半部は、前記左右のサイドフレーム15L、15Rとカウンタウエイト18とによって囲繞される一方、エンジンルーム5の上半部は、前半側が後述するカバー体19によって覆蓋され、また後半側が開閉自在なエンジンフード20によって覆蓋されている。
【0009】
ここで、前記カバー体19の後端上部には、運転席部8を覆うキャブ12の後面下端部が支持されている共に、エンジンフード20の前端上部がヒンジ装置(図示せず)を介して開閉自在に支持されているが、この場合、キャブ12が支持される部位よりもエンジンフード20が支持される部位の方が後側に位置するように設計されており、これにより、キャブ12に邪魔されることなくエンジンフード20を開閉できるようになっている。そして、該エンジンフード20を開けることで、エンジンルーム5の後半側に収納される機械装置、例えばエンジン4や冷却装置16、バッテリ等のメンテナンスを日常的に行えるようになっている。尚、キャブ12の前後の支柱12aは、架台フレーム14に取付支持されている。
【0010】
一方、21はオペレータが座するシート6を支持するためのシートサポートであって、該シートサポート21は、下端部が前記左右の架台フレームサイド部14L、14Rにボルト止めされる四本の脚部21aと、これら四本の脚部21aの上部間に固定される水平方向を向いたシート取付台座21bとを備えている。
【0011】
前記シートサポート21のシート取付台座21bは、エンジンルーム5の前半側の上方に位置しているが、該シート取付台座21bにはメンテナンス用開口21cが開設されており、ここからエンジンルーム5の前半側に収納される機械装置、例えば油圧ポンプ等の油圧機器17のメンテナンスを行えるようになっている。
【0012】
22は前記メンテナンス用開口21cを覆蓋するためのプレートであって、該プレート22は、メンテナンス用開口21cよりも大きな寸法に設定されている。そして、該プレート22をシート取付台座21bの上面部にボルト23を介して着脱自在に止着することにより、メンテナンス用開口21cを開閉自在に覆蓋できるようになっているが、該プレート22のシート取付台座21bへの着脱については、後述する。
【0013】
前記プレート22の上面部には、シート6を前後移動自在にガイドするシートガイド24がボルト25止めされている。そしてシート6は、シートガイド24を介してプレート22の上面側に前後位置調節可能に取付けられているが、該シート6をプレート22に取付けたままの状態でプレート22をシート取付台座21bに着脱することができるよう、プレート22をシート取付台座21bに止着するためのボルト23は、シート6の下面の外側に位置するように設定されている。尚、26はシート6を前後移動させるためのレバーである。
【0014】
また、前記プレート22の下面部には、メンテナンス用開口21cに嵌入できる寸法の断熱材27が固着されており、該断熱材27によって、エンジン4の熱がシート6に座したオペレータに伝わってしまうことを防止できるようになっている。
【0015】
一方、前記エンジンルーム5の上半部の前半側を覆蓋するカバー体19は、前述したシートサポート21を介して、架台フレーム14に取付支持されている。つまり、カバー体19は、中央部に四角孔状のシート配設部19aを有すると共に、該シート配設部19aの左右両側および後側は、一体形成される左右のコンソール19b、19cおよび後面部19dによって連続状に囲繞されている。上記左右のコンソール19b、19cには、操作レバー28や図示しない操作スイッチ等の操作具が配されるが、さらに、該左右のコンソール19b、19cからは、下方に延びるスカート部19eが延設されている。そして、カバー体19は、前記シートサポート21のシート取付台座21bの上面の四隅部に、シート配設部19aの外周側部をボルト29止めすることによりシートサポート21に取付支持されるが、この状態で、スカート部19eがシートサポート21の四本の脚部21aの外周側を覆うと共に、スカート部19eの下端縁部が架台フレーム14の上面に当接するようになっており、而して、該カバー体19によって、エンジンルーム5の上半部の前半側が覆蓋されるように構成されている。
【0016】
ここで、前記カバー体19のシート配設部19aは、前述したメンテナンス用開口21cを塞ぐプレート22と略同形状で、且つプレート22を内嵌できる大きさに寸法設定されている。そして、カバー体19をシート取付台座21bに取付けた状態で、シート配設部19aの内周側にメンテナンス用開口21cが位置し、且つ、該メンテナンス用開口21cを塞ぐプレート22がシート配設部19a内に納まるようになっている。而して、カバー体19をシート取付台座21bに取付けたままの状態で、該カバー体19のシート配設部19aに、シート6が取付けられたプレート22を嵌め込み、この状態でプレート22をシート取付台座21bにボルト23止めすることにより、シート配設部19aにシート6が配設されると共に、プレート22によりメンテナンス用開口21cが覆蓋されるようになっている(図4参照。尚、図4では、シート6は省略してある。)。一方、メンテナンス用開口21cを開ける場合には、ボルト23を弛めてプレート22をシート取付台座21bから取り外せば良い。
【0017】
また、運転席部8の床面を形成する架台フレーム14には、前記カバー体19の前方側の部位にメンテナンス用孔30が開設されていると共に、該メンテナンス用孔30は、着脱自在な蓋体31によって塞がれている。そして、該蓋体31を取外すことにより、エンジンルーム5の前部に収納される機械装置、例えばHST装置用の油圧機器17等のメンテナンスを行えるようになっている。
【0018】
叙述の如く構成された本形態において、エンジンルーム5は、後半側が開閉自在なエンジンフード20によって覆蓋される一方、前半側は、架台フレーム14にシートサポート21を介して固定されるカバー体19により覆蓋されている。そして、オペレータが座するシート6は、シートサポート21のシート取付台座21bに取付支持される状態でカバー体19のシート配設部19aに配設されると共に、該シート6を覆うキャブ12の後面下端部は、カバー体19の後端上部に支持されている。
【0019】
この様に、本実施の形態にあっては、エンジンルーム5の上方にシート6が配されていても、該シート6は、開閉自在なエンジンフード20に設けられているのではなく、架台フレーム14側に固定されるカバー体19に配されているため、エンジンフードにシートを取付けたもののようにエンジンフード20全体の重量が重くなってしまうことなく、また、キャブ12に邪魔されるなくエンジンフード20を開閉できることになって、エンジンフード20の開閉を容易に行えることになるが、このものにおいて、シート6の下方のエンジンルーム5内に収容される機械装置のメンテナンスを行う場合には、シート取付台座21bに開設されたメンテナンス用開口21cを開けて行うことになる。
【0020】
即ち、前記シート取付台座21bには、メンテナンス用開口21cが開設されていると共に、該メンテナンス用開口21cは、シート取付台座21bに着脱自在にボルト23止めされるプレート22によって開閉自在に覆蓋されている。そしてシート6は、該プレート22の上面部に取付けられており、而して、シート6と共にプレート22をシート取付台座21bから取外すことによりメンテナンス用開口21cが開いて、ここからエンジンルーム5内のメンテナンスを行えることになる。
【0021】
しかも、前記プレート22は、該プレート22にシート6に取付けたままの状態で、さらには、カバー体19をシート取付台座21bに取付けたままの状態で、シート取付台座21bに着脱できる構成となっているから、メンテナンス用開口21cの開閉は、プレート22を着脱するだけで行えることになる。
【0022】
この結果、エンジンルーム5の上方に配されるシート6が、架台フレーム14側に固定されるシート取付台座21bに取付支持されるものであっても、シート6の下方のエンジンルーム5内に収納される機械装置のメンテナンスを容易に行えることになって、メンテナンス性に優れる。
【0023】
尚、本実施の形態では、キャブが設けられたホイールローダを例にとって説明したが、キャブが設けられていない建設機械であっても、エンジンルームの上方にシートの取付台座が配設されていれば、本発明を実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ホイールローダの側面図である。
【図2】シートサポートの斜視図である。
【図3】プレートを取外した状態のカバー体およびエンジンフード部分の平面図である。
【図4】プレートの取付けを示す斜視図である。
【図5】カバー体を省略したシート取付部分の側面図である。
【図6】図5のX−X矢視図である。
【図7】図5のY−Y矢視図である。
【図8】(A)はプレートの平面図、(B)は(A)のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0025】
5 エンジンルーム
6 シート
19 カバー体
21b 取付台座
21c メンテナンス用開口
22 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが座するシートの取付台座をエンジンルームの上方に配設してなる建設機械において、前記シート取付台座にメンテナンス用開口を開設し、該メンテナンス用開口を着脱自在なプレートで覆蓋すると共に、該プレートにシートを取付けたことを特徴とする建設機械におけるメンテナンス構造。
【請求項2】
請求項1において、プレートは、該プレートにシートを取付けた状態で、シート取付台座に着脱自在に止着されることを特徴とする建設機械におけるメンテナンス構造。
【請求項3】
請求項1または2において、シート取付台座に、エンジンルームを覆うカバー体を取付支持せしめると共に、プレートは、カバー体をシート取付台座に取付けた状態で、シート取付台座に着脱自在に止着されることを特徴とする建設機械におけるメンテナンス構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−168612(P2006−168612A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365965(P2004−365965)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】